IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Primetals Technologies Japan株式会社の特許一覧

特許7225394熱処理設備用の監視装置及び熱処理設備並びに熱処理設備の監視方法及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】熱処理設備用の監視装置及び熱処理設備並びに熱処理設備の監視方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 21/00 20060101AFI20230213BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20230213BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20230213BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20230213BHJP
   C21D 9/56 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F27D21/00 A
F27D19/00 D
F27B9/40
F27D1/00 V
C21D9/56 101C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021525475
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023311
(87)【国際公開番号】W WO2020250344
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝典
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080874(JP,A)
【文献】特開2015-203133(JP,A)
【文献】特開昭63-134616(JP,A)
【文献】特表2016-522382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/00
C21D 1/00
C21D 9/52-9/66
F27D 19/00
F27D 1/00
F27B 9/40
G01B 5/00-5/30
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理設備用の監視装置であって、
前記熱処理設備の炉体の外側に設けられ、前記炉体を構成する一対の炉壁の一方の水平方向の変位を検出するように構成された少なくとも1つの変位検出器
を備える熱処理設備用の監視装置。
【請求項2】
前記炉体の外側に設けられ、前記一対の炉壁の前記一方から前記炉体の外側に離間した位置に固定される静止部材と、
前記炉体の外側に設けられ、前記一対の炉壁の前記一方の変形に伴い前記一対の炉壁の前記一方とともに移動可能な可動部材と、を備え、
前記変位検出器は、前記静止部材に対する前記可動部材の水平方向における相対変位を検出可能に構成された
請求項1に記載の熱処理設備用の監視装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの変位検出器は、
前記一対の炉壁の一方側に設けられ、前記一対の炉壁の一方の水平方向の変位を検出するように構成された第1変位検出器と、
前記一対の炉壁の他方側において、前記炉体の炉内空間を挟んで前記第1変位検出器とは反対側に位置し、前記一対の炉壁の他方の水平方向の変位を検出するように構成された第2変位検出器と、
を含み、
前記第1変位検出器と前記第2変位検出器の検出結果に基づいて、前記炉体に膨張変形が生じたか否かを判定するように構成された判定部をさらに備える
請求項1又は2に記載の熱処理設備用の監視装置。
【請求項4】
前記第1変位検出器は、前記一対の炉壁の前記一方の前記炉体の外側に向かう変位を検出可能に構成され、
前記第2変位検出器は、前記一対の炉壁の前記他方の前記炉体の外側に向かう変位を検出可能に構成され、
前記判定部は、前記第1変位検出器及び前記第2変位検出器によって、前記一対の炉壁の両方が前記炉体の外側に向かって変位していることを検出したときに、前記炉体に膨張変形が生じたと判定するように構成された
請求項3に記載の熱処理設備用の監視装置。
【請求項5】
前記第1変位検出器は、前記一対の炉壁の前記一方の外側及び内側への変位量を検出可能に構成され、
前記第2変位検出器は、前記一対の炉壁の前記他方の外側及び内側への変位量を検出可能に構成され、
前記判定部は、前記第1変位検出器又は前記第2変位検出器の一方によって、前記一対の炉壁の一方が前記炉体の外側に向かって変位していることを検出し、前記第1変位検出器又は前記第2変位検出器の他方によって、前記一対の炉壁の他方が前記炉体の内側に向かって変位していることを検出し、かつ、前記一対の炉壁の前記一方の外側への前記変位量が前記一対の炉壁の前記他方の内側への前記変位量よりも大きいときに、前記炉体に膨張変形が生じたと判定するように構成された
請求項3又は4に記載の熱処理設備用の監視装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの変位検出器は、前記第1変位検出器及び前記第2変位検出器の複数のペアを含み、
前記判定部は、前記複数のペアのうち、前記炉体に膨張変形が生じたと判定した前記第1変位検出器と前記第2変位検出器のペアの数に基づいて、前記膨張変形の要因を特定するように構成された
請求項3乃至5の何れか一項に記載の熱処理設備用の監視装置。
【請求項7】
前記判定部により前記炉体が膨張変形したと判定されたとき、前記炉体の異常を通知するように構成された通知部をさらに備える
請求項3乃至6の何れか一項に記載の熱処理設備用の監視装置。
【請求項8】
互いに対向するように設けられ、炉体を構成する一対の炉壁と、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の監視装置と、
を備える熱処理設備。
【請求項9】
前記炉体の内部にて前記一対の炉壁の一方に固定される内部機器と、
前記炉体の内部にて前記一対の炉壁の他方に固定され、前記一対の炉壁の前記他方に対する水平方向の相対変位を許容しながら前記内部機器を支持するように構成された支持部と、
をさらに備える請求項8に記載の熱処理設備。
【請求項10】
前記監視装置は、前記少なくとも1つの変位検出器の検出結果に基づいて、前記炉体が膨張変形したか否かを判定するように構成された判定部を備え、
前記炉体の内部にガスを供給するガス供給部と、
前記炉体の内部から前記ガスを排出するガス排出部と、
前記判定部により前記炉体に膨張変形が生じたと判定されたとき、前記炉体の内圧が減少するように、前記ガス供給部によるガスの供給量又は前記ガス排出部によるガスの排出量を調節するように構成された調節部と、
をさらに備える請求項8又は9に記載の熱処理設備。
【請求項11】
前記炉体の外側に設けられた架構を備え、
前記少なくとも1つの変位検出器は、少なくとも部分的に、水平方向において前記一対の炉壁の一方と前記架構との間に設けられる
請求項8乃至10の何れか一項に記載の熱処理設備。
【請求項12】
前記炉体の外側にて前記一対の炉壁の前記一方から前記炉体の外側に離間して設けられた架構を備え、
前記監視装置は、
記架構に固定される静止部材と、
前記炉体の外側に設けられ、前記一対の炉壁の前記一方の変形に伴い前記一対の炉壁の前記一方とともに移動可能な可動部材と、を含み、
前記変位検出器は、前記静止部材又は前記可動部材の一方に取り付けられ、前記静止部材に対する前記可動部材の水平方向における相対変位を検出可能に構成された
請求項8乃至11の何れか一項に記載の熱処理設備。
【請求項13】
熱処理設備用の監視方法であって、
前記熱処理設備の炉体の外側において、前記炉体を構成する一対の炉壁の一方の水平方向の相対変位を検出するステップ
を備える熱処理設備の監視方法。
【請求項14】
熱処理設備の製造方法であって、
前記熱処理設備は、
互いに対向するように設けられ、炉体を構成する一対の炉壁を含み、
前記炉体の外側において、前記一対の炉壁の一方の水平方向の相対変位を検出するように構成された少なくとも1つの変位検出器を設置するステップ
を備える熱処理設備の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理設備用の監視装置及び熱処理設備並びに熱処理設備の監視方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続焼鈍炉等の熱処理設備では、熱処理炉の炉体が内圧上昇等に起因して変形する場合がある。炉体の変形が生じると、炉体を構成する壁面(炉壁)に支持されている内部機器が脱落したり破損したりするおそれがある。そこで、炉体の変形を防止するための方策が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、連続焼鈍炉の炉殻(炉体)構造において、対向配置された壁部材の間に、これらの壁部材同士を連結する引張り材(鋼管)を設けることにより、連続焼鈍炉の操業時における壁部材の熱膨張や内圧上昇に起因する炉体膨張を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6244249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される、引張り材を用いて壁部材同士を連結した構造を採用することにより、炉体の内圧上昇した場合であっても炉体の変形を抑制できると考えられる。しかしながら、この場合、炉体自体をより高圧に耐え得る構造とする必要があるため、炉体の製造コストが上昇し、したがって熱処理設備の製造コストが上昇してしまう。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、熱処理設備の製造コストの増大を抑制しながら炉体の変形を抑制可能な熱処理設備用の監視装置及び熱処理設備並びに熱処理設備の監視方法及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る熱処理設備用の監視装置は、熱処理設備用の監視装置であって、前記熱処理設備の炉体の外側に設けられ、前記炉体を構成する一対の炉壁の一方の水平方向の変位を検出するように構成された少なくとも1つの変位検出器を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、熱処理設備の製造コストの増大を抑制しながら炉体の変形を抑制可能な熱処理設備用の監視装置及び熱処理設備並びに熱処理設備の監視方法及び製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る熱処理炉の概略図である。
図2A】一実施形態に係る監視装置が適用される熱処理設備の概略図である。
図2B】一実施形態に係る内部機器及び支持部の概略図であり、図2Aの部分的な拡大図である。
図3】膨張変形が生じたときの熱処理炉の状態を示す概略図である。
図4】一実施形態に係る変位検出器を含む監視装置の概略図である。
図5】一実施形態に係る変位検出器を含む監視装置の概略図である。
図6】一実施形態に係る監視装置の構成を示す概略図である。
図7】炉体の変形の形態の一例を示す模式図である。
図8】炉体の変形の形態の一例を示す模式図である。
図9】炉体の変形の形態の一例を示す模式図である。
図10A】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図10B】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図11A】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図11B】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図12A】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図12B】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図13A】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図13B】熱処理設備における変位検出器の配置及び検出結果の例を示す模式図である。
図14】一実施形態に係る熱処理設備1の運転方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
まず、図1図2Bを参照して、幾つかの実施形態に係る熱処理設備の全体構成について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る熱処理炉の概略図である。図2Aは、一実施形態に係る監視装置が適用される熱処理設備の概略図である。なお、図2Aには、図1に示す熱処理炉の概略的なA-A矢視断面が示されている。図2Bは、一実施形態に係る内部機器及び支持部の概略図であり、図2Aの部分的な拡大図である。
【0013】
幾つかの実施形態に係る熱処理設備1は、図1及び図2Aに示す熱処理炉2を含む。
図1及び図2Aに示す熱処理炉2は、帯状の金属板S(例えば鋼板等)を連続的に焼鈍処理するための連続焼鈍炉であって、図1に示すように、予熱帯3、加熱帯4、均熱帯5、及び、冷却帯6を備えている。図示を省略するが、熱処理炉2は、冷却帯6の下流側に設けられた過時効帯等をさらに備えている。
【0014】
熱処理炉2は、炉体8(炉殻)を備えており、炉体8の内部には、金属板Sを搬送するための複数の搬送ロール10が設けられている。搬送ロール10を介して金属板Sに張力を与えることで、この張力に応じた搬送速度で金属板Sが搬送されるようになっている。
【0015】
また、熱処理炉2の内部には内部機器11が設けられている。内部機器11は、例えば、炉体8の内部で搬送される金属板Sを熱処理するための加熱手段や冷却手段を含む。図1に示す例示的な実施形態では、加熱帯4及び均熱帯5には、内部機器11として、金属板Sを加熱するためのラジアントチューブ12が設けられている。また、冷却帯6には、内部機器11として、金属板Sを冷却するための冷却ガスノズル14が設けられている。また、特に図示しないが、内部機器11として、予熱帯3にバーナが設けられていてもよく、過時効帯(不図示)に伝熱輻射管が設けられていてもよい。
【0016】
炉体8の内部は、熱処理される金属板Sの酸化防止のため、非酸化雰囲気となっており、かつ、気密構造となっている。熱処理炉2は、炉体8の内部にガス(雰囲気ガス)を供給するためのガス供給部40と、炉体8からガス(雰囲気ガス)を排出するためのガス排出部41と、を含む。
【0017】
ガス供給部40は、ガス供給ライン38と、ガス供給ライン38を介した炉体8へのガスの供給量を調節するための供給バルブ42を含む。ガス排出部41は、ガス排出ライン39と、炉体8からガス排出ライン39を介したガスの排出量を調節するための排出バルブ44を含む。ガス供給部40及びガス排出部41により、炉体8内部の圧力を調節できるようになっている。なお、炉体8内部の雰囲気ガスとしては、窒素等の不活性ガスや水素等を用いることができる。
【0018】
予熱帯3は、炉体8の入口部に設けられており、不図示の熱交換器によって炉体8内部の雰囲気ガスを加熱し、不図示の循環ファンによって金属板Sの表面に噴射させることによって予熱するように構成される。また加熱帯4からの排ガスも予熱帯3における金属板Sの予熱に用いられる。加熱帯4及び均熱帯5では、ラジアントチューブ12(内部機器11)によって金属板Sを加熱するように構成される。加熱帯4及び均熱帯5の温度は、例えば、ラジアントチューブ12への燃料供給量を増減させることにより調節可能となっている。冷却帯6では、加熱帯4及び均熱帯5で加熱された金属板Sの表面に、冷却ガスノズル14(内部機器11)によって冷却流体を噴き付けて、金属板Sを徐冷又は急冷するように構成される。過時効帯は、冷却帯6で冷却された後の金属板Sを、伝熱輻射管(内部機器)によって過時効処理を行うように構成される。
【0019】
上述の構成を有する熱処理炉2では、上述の予熱帯3、加熱帯4、均熱帯5及び冷却帯6を金属板Sが通過することにより、金属板Sの焼鈍処理が行われるようになっている。
【0020】
なお、本発明に係る熱処理炉は焼鈍炉に限定されず、幾つかの実施形態では、熱処理炉は、焼き入れ、焼き戻し、焼きならし等の焼鈍以外の熱処理を行うための熱処理炉であってもよい。
【0021】
また、金属板Sを熱処理するための内部機器11は、上述した例(ラジアントチューブ12、冷却ガスノズル14、伝熱輻射管、又は、バーナ)に限定されず、種々の物を用いることができる。
【0022】
図2Aに示すように、熱処理炉2の炉体8は、互いに対向するように設けられた一対の炉壁9A,9Bを含む。より具体的には、炉体8は、互いに対向するように設けられた第1炉壁9A及び第2炉壁9B(一対の炉壁9)を含む。
【0023】
炉体8の内部にて一対の炉壁9の一方(第1炉壁9A又は第2炉壁9B)には、上述した内部機器11(図2Aにおいてはラジアントチューブ12)が固定されている。また、炉体の内部にて一対の炉壁9の他方(第2炉壁9B又は第1炉壁9A)には、内部機器11を支持するための支持部16が固定されている。支持部16は、一対の炉壁9の他方(第2炉壁9B又は第1炉壁9A)に対する内部機器11の水平方向の相対変位を許容しながら内部機器11を支持するように構成されている。すなわち、内部機器11は、支持部16によって、水平方向においてスライド可能に支持されている。
【0024】
ラジアントチューブ12を例として、内部機器11の支持構造についてより具体的に説明する。図2Bに示すように、ラジアントチューブ12は、水平方向における一端側51において第1炉壁9Aに固定されている。また、ラジアントチューブ12は、水平方向における他端側52において、水平方向に第2炉壁9Bに向かって突出する突出部54を有している。一方、支持部16は、第2炉壁9Bから第1炉壁9Aに向けて水平方向に突出するように設けられる支持板15と、支持板15を支持するリブ17と、を含む。そして、支持部16の支持板15の上に、ラジアントチューブ12の突出部54が載せられることによって、支持板15(支持部16)と、突出部54(ラジアントチューブ12)とが、水平方向において部分的にオーバーラップした状態となっている。これにより、ラジアントチューブ12が、支持部16によって、水平方向においてスライド可能に支持されている。
【0025】
なお、図2Aに示すように、熱処理炉2に複数の内部機器11(図2Aではラジアントチューブ12)が設けられる場合、高さ方向において、第1炉壁9Aに固定される内部機器11と、第2炉壁9Bに固定される内部機器11とが交互に配置される場合がある。この場合、第1炉壁9Aに固定される内部機器11は、第2炉壁9Bに固定される支持部16に支持されるとともに、第2炉壁9Bに固定される内部機器11は、第1炉壁9Aに固定される支持部16に支持される。
【0026】
図2Aに示すように、炉体8の外側には、架構18(18A,18B)が設けられている。架構18は、炉壁9(9A,9B)の側方にて、炉壁9とは距離を空けて配置されている。架構18は、例えば、内部機器11のメンテナンス時に足場として用いられる。
【0027】
図2Aに示す例示的な実施形態では、第1炉壁9Aの側方に架構18Aが設けられているとともに、第2炉壁9Bの側方に架構18Bが設けられている。したがって、第1炉壁9A側に設けられた架構18Aは、第1炉壁9Aに固定されたラジアントチューブ12(内部機器11)のメンテナンスに用いることができる。また、第2炉壁9B側に設けられた架構18Bは、第2炉壁9Bに固定されたラジアントチューブ12(内部機器11)のメンテナンスに用いることができる。
【0028】
なお、炉体8の内部に設けられた搬送ロール10は、第1炉壁9A及び第2炉壁9Bを貫通するように設けられたロールシャフト13とともに回転するように設けられており、ロールシャフト13は、軸受19によって回転可能に支持されている。また、軸受19は、炉体8の外側に設けられる架構118に支持されている。ロールシャフト13の貫通部は図示しない伸縮管やオイルシール等により気密性を持たせてある。
【0029】
図2Aに示すように、熱処理設備1は、上述した熱処理炉2と、炉体8の外側に設けられた少なくとも1つの変位検出器24(24A,24B)と、を備えている。変位検出器24の各々は、炉体8を構成する一対の炉壁9(第1炉壁9A及び第2炉壁9B)の一方の水平方向の変位を検出するように構成されている。
【0030】
ここで、図3は、図2Aに示す熱処理炉2に膨張変形が生じたときの熱処理炉2の状態を示す概略図である。
炉体8に変形が生じると、様々な問題が生じ得る。例えば、上述した熱処理炉2のように、一対の炉壁9の一方に固定された内部機器11を、一対の炉壁9の他方に固定された支持部16により水平方向にスライド可能に支持する構造を有する場合、炉体8に膨張変形(すなわち、一対の炉壁9(9A,9B)間の距離が広がる変形)が生じると(図3参照)、水平方向における内部機器11と支持部16とのオーバーラップ量が減少する。そして、炉体8の膨張変形が拡大すると、図3に示すように、水平方向において内部機器11と支持部16とが離れて(図3中の符号Gの箇所を参照)、内部機器11が支持部16から脱落してしまう場合がある。
【0031】
この点、上述の実施形態に係る熱処理設備1では、炉体8の外側に変位検出器24を設けた簡素な構成で、炉壁9の水平方向の変位を検出することができる。したがって、この検出結果に基づいて炉体8の変形を検知することができ、これにより、例えば炉体8の変形が拡大しないように対処することが可能となる。すなわち、上述の実施形態によれば、炉体8の耐圧性能を向上させることを必要とせず、炉体8の外側に変位検出器24を設けることで炉壁9の変位を検出することで炉体8の変形を検知可能であるので、熱処理設備1の製造コスト増大を抑制しながら炉体の変形を抑制することができる。よって、炉体8の変形に起因する問題(例えば、炉壁9に支持される内部機器11の脱落等)の発生を抑制することができる。
【0032】
次に、幾つかの実施形態に係る監視装置についてより具体的に説明する。図4及び図5は、それぞれ、一実施形態に係る変位検出器を含む監視装置20の概略図である。
【0033】
図2A図4及び図5に示すように、幾つかの実施形態では、変位検出器24(第1変位検出器24A,第2変位検出器24B)は、少なくとも部分的に、水平方向において一対の炉壁9(9A、9B)の一方と架構18との間に設けられる。このように、水平方向において炉壁9と架構18との間に変位検出器24を設けることにより、足場となる架構18から変位検出器24に容易にアクセスすることができる。よって、変位検出器24のメンテナンス作業が容易となる。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば図4及び図5に示すように、監視装置20は、炉体8の外側に設けられた静止部材26及び可動部材28を用いて、変位検出器24により炉壁9の水平方向の変位を検出するようになっている。静止部材26は、炉壁9から炉体8の外側に離間した位置に固定されている。静止部材26は、例えば、架構18に固定されていてもよい。可動部材28は、炉壁9の変形に伴い炉壁9とともに移動可能となっている。そして、変位検出器24は、静止部材26に対する可動部材28の水平方向における相対変位を検出可能に構成されている。
【0035】
変位検出器24は、水平方向における静止部材26と可動部材28との距離が規定値以下になったことを検出可能に構成されていてもよい。この場合、変位検出器24は、近接スイッチ又はリミットセンサを含んでいてもよい。あるいは、変位検出器24は、水平方向における静止部材26と可動部材28との距離を計測可能に構成されていてもよい。この場合、変位検出器24は、接触子、レーザ光、又はレーダーを利用して上述の距離を計測するように構成されていてもよい。
【0036】
また、静止部材26又は可動部材28の一方は、変位検出器24を支持するように構成されていてもよい。あるいは、静止部材26又は可動部材28の一方は、変位検出器24を支持するように構成されているとともに、静止部材26又は可動部材28の他方は、変位検出器24による検出ターゲット(変位検出器24の接触の相手部材、又は、変位検出器24によるレーザやレーダーの照射ターゲット)であってもよい。
【0037】
図4に示す例示的な実施形態では、監視装置20は、静止部材26として、架構18に固定された静止ブラケット60を含み、可動部材28として、炉壁9に固定される補強材(山形鋼)58に取り付けられた可動ブラケット62を含む。静止ブラケット60は垂直方向に延びる垂直面60aを含み、可動ブラケット62は垂直方向に延びる垂直面62aを含み、垂直面60aと垂直面62aは互いに対向するように配置されている。
【0038】
静止ブラケット60の垂直面には、水平方向に延びるスリット64が設けられており、変位検出器24としての近接スイッチの接触子66が、スリット64を介して水平方向に移動可能となるように静止ブラケット60に支持されている。静止ブラケット60と可動ブラケット62の水平方向距離が規定値まで小さくなると、可動ブラケット62の端部が接触子66に接触する。接触子66はこの接触を検知するようになっており、これにより、静止ブラケット60と可動ブラケット62の距離が規定値未満に狭くなったことを検出する。これにより、静止ブラケット60に対する可動ブラケット62の水平方向の相対変位を検出することができる。
【0039】
図5に示す例示的な実施形態では、監視装置20は、静止部材26として、架構18に固定された静止ブラケット68を含み、可動部材28として、炉壁9に固定される補強材(山形鋼)58に取り付けられたターゲット板70を含む。ターゲット板70は、炉壁9とおよそ平行に設けられる。変位検出器24は、静止ブラケット68とターゲット板70との水平方向の距離を計測可能に構成されたレーザ距離計72を含む。レーザ距離計72は、ターゲット板70に向けてレーザ光を発光するとともに、ターゲット板70からの反射光を受光し、これらの波長等に基づいて、上述の距離を算出するように構成される。これにより、静止ブラケット68とターゲット板70との距離が規定値未満に狭くなったことを検出可能であるとともに、これにより、静止ブラケット68に対するターゲット板70の水平方向の相対変位を検出することができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、静止部材26と、可動部材28とは、上下方向において少なくとも部分的にオーバーラップするように設けられる。この場合、炉壁9の熱伸びにより炉壁が上下方向に延び、これに伴い可動部材28が上下方向に移動してしまった場合であっても、静止部材26と可動部材28の上下方向における離間が抑制されるため、静止部材26に対する可動部材28の水平方向における相対変位を検出しやすくなる。
【0041】
図6は、一実施形態に係る監視装置20の構成を示す概略図である。幾つかの実施形態では、監視装置20は、変位検出器24(24A,24B)から、検出結果を示す信号を受け取るように構成された制御装置22を含んでいてもよい。図6に示すように、制御装置22は、後述する判定部30や調節部32を含んでいてもよい。
【0042】
制御装置22は、CPU、メモリ(RAM)、補助記憶装置及びインターフェース等を含んでいてもよい。制御装置22は、インターフェースを介して、変位検出器24からの情報(検出結果を示す信号)受け取るように構成されている。CPUは、このようにして受け取った情報を処理するように構成される。また、CPUは、メモリに展開されるプログラムを処理するように構成される。
【0043】
上述の判定部30や調節部32等は、CPUにより実行されるプログラムとして実装され、補助記憶装置に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムはメモリに展開される。CPUは、メモリからプログラムを読み出し、必要に応じて各種センサから受け取った情報を用いて、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0044】
幾つかの実施形態では、例えば図2Aに示すように、監視装置20は、第1炉壁9A側に設けられ、第1炉壁の水平方向の変位を検出するように構成された第1変位検出器24Aと、第2炉壁9B側に設けられ、第2炉壁の水平方向の変位を検出するように構成された第2変位検出器24Bと、を含む。第2変位検出器24Bは、炉体8の炉内空間を挟んで、第1変位検出器24Aとは反対側に位置するよう設けられる。また、監視装置20は、第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bの検出結果に基づいて、炉体8に膨張変形が生じたか否かを判定するように構成された判定部30(図6参照)を備える。
【0045】
ここで、図7図9は、それぞれ、炉体8の変形の形態の一例を示す模式図である。図7図9において、x1及びx2は、それぞれ、高さ方向の代表的な位置(各図中では中央位置)における第1炉壁9A及び第2炉壁9Bの変位量を示す。また、図7図9において、二点鎖線は、変形前の炉体8の形状を示す。
【0046】
炉体8に生じる変形の形態としては、膨張や傾動等が考えられる。例えば、図7に示す例では、互いに対向する第1炉壁9A及び第2炉壁の両方が、炉体8の外側に向かって変位している。これは、炉体8には膨張変形が生じていることを示す。また、図8に示す例では、第1炉壁9Aは炉体8の内側に向かって変位し、第2炉壁9Bは炉体8の外側に向かって変位し、第2炉壁9Bの外側に向かう変位量x2が、第1炉壁9Aの内側に向かう変位量x1よりも大きい。これは、炉体8に傾動変形が生じながら膨張変形も生じていることを意味する。一方、図9に示す例では、第1炉壁9Aは炉体8の内側に向かって変位し、第2炉壁9Bは炉体8の外側に向かって変位し、第1炉壁9Aの変位量x1と第2炉壁9Bの変位量x2とが同程度である。これは、炉体8に傾動変形が生じていることを意味する。
【0047】
炉体8に傾動変形が生じているだけの場合には、第1炉壁9Aと第2炉壁9Bとの間の距離は変形前とほぼかわらないため、炉壁9に支持される内部機器11等に異常は生じない。一方、炉体8に膨張変形が生じた場合には、第1炉壁9Aと第2炉壁9Bとの間の距離が増大するため、一対の炉壁9A,9Bに支持される内部機器11が脱落する等の問題が生じ得る。
【0048】
この点、上述の実施形態では、一対の炉壁9(第1炉壁9A及び第2炉壁9B)に第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bをそれぞれ設けたので、これらの変位検出器24A,24Bによる検出結果に基づいて、炉体8に膨張変形が生じたか否かを判定することができる。よって、この判定結果に基づき、炉体8の膨張変形が拡大しないように対処することが可能となり、炉体8の膨張変形に起因する問題(例えば、一対の炉壁9に支持される内部機器11の脱落等)の発生を効果的に抑制することができる。
【0049】
なお、協働して膨張変形を検出する一対の第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bは、同程度の高さ方向位置、及び、同程度の水平方向位置に設けられていることが望ましい。例えば、図2Aに示すように、第1変位検出器24と第2変位検出器が高さ方向においてずれた位置に配置されている場合、高さ方向において隣り合う第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bとをペアとして、炉体8の膨張変形の検出に用いることが望ましい。
【0050】
幾つかの実施形態では、第1変位検出器24Aは、第1炉壁9Aの炉体8の外側に向かう変位を検出可能に構成されるとともに、第2変位検出器24Bは、第2炉壁9Bの炉体8の外側に向かう変位を検出可能に構成されている。そして、判定部30は、第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bによって、一対の炉壁9(第1炉壁9A及び第2炉壁)の両方が炉体8の外側に向かって変位していること(例えば図7に示す状態)を検出したときに、炉体8に膨張変形が生じたと判定するように構成される。これにより、炉体8の膨張変形を適切に検知可能である。
【0051】
なお、変位検出器24が一対の炉壁9間の距離を計測可能なタイプのもの(例えば、レーザ、レーダー又は接触子を用いた距離計)である場合、判定部30は、第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bにより検出される、第1炉壁9A及び第2炉壁9Bの炉体8外側に向かう変位量がそれぞれ規定値以上であるときに、炉体8に膨張変形が生じたと判定するようにしてもよい。あるいは、判定部は、第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bにより検出される、第1炉壁9A及び第2炉壁9Bの炉体8外側に向かう変位量の合計値が規定値以上であるときに、炉体8に膨張変形が生じたと判定するようにしてもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、第1変位検出器24Aは、第1炉壁9Aの炉体8の外側及び内側への変位量を検出可能に構成されるとともに、第2変位検出器24Bは、第2炉壁の炉体8の外側及び内側への変位量を検出可能に構成されている。そして、判定部30は、第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bによって、一対の炉壁9A,9Bの一方が炉体8の外側に向かって変位していることを検出し、一対の炉壁9A,9Bの他方が炉体8の内側に向かって変位していることを検出し、かつ、一対の炉壁9A,9Bの前記一方の外側への変位量が一対の炉壁9A,9Bの前記他方の内側への変位量よりも大きいときに(例えば図8に示す状態のとき)、炉体8に膨張変形が生じたと判定するように構成される。これにより、炉体の膨張変形を適切に検知可能である。
【0053】
なお、判定部30は、一対の炉壁9A,9Bの一方の炉体8の外側への変位量と、一対の炉壁9A,9Bの他方の炉体8の内側への変位量との差が規定値以上であるときに、炉体8に膨張変形が生じたと判定するようにしてもよい。
【0054】
幾つかの実施形態では、監視装置20は、第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bの複数のペアを含む。そして、判定部30は、第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bの複数のペアのうち、炉体8に膨張変形が生じたと判定した第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bのペアの数に基づいて、膨張変形の要因を特定するように構成される。
【0055】
この場合、炉体8に膨張変形が生じたと判定した第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bのペアの数(例えば、絶対数や総ペア数に対する割合)に基づいて、膨張変形の要因を特定することができる。例えば、第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bの総ペア数のうち、ある程度の数のペア(例えば総ペア数の20%以上)によって膨張変形が生じたと判定されたときには、炉体8の内圧上昇が炉体変形の要因であると推定することができる。また、第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bの総ペア数のうち、少数ペア(例えば1ペア)によって膨張変形が生じたと判定されたときには、炉壁9に支持される特定の内部機器11に何らかの異常が生じたことが炉体変形の要因であると推定することができる。
【0056】
ここで、内部機器11に生じる何らかの異常とは、例えば、内部機器11と支持部16とが固着してしまうことが挙げられる。この場合、内部機器11の水平方向における熱膨張を支持部16とのスライドで吸収できなくなるため、内部機器11の熱膨張によって、炉壁9間の距離が広くなるように炉体8に変形が生じることがあるためである。
【0057】
したがって、このように膨張変形の要因を特定することにより、特定された要因に基づいて、炉体の膨張変形が拡大しないように、適切に対処することが可能となる。
【0058】
第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bのペアによる検出結果に基づく炉体8変形の形態の特定や膨張変形の要因の特定について、図10A図13Bを参照してより具体的に説明する。図10A図13Bは、それぞれ、熱処理設備における第1変位検出器24A及び第2変位検出器24Bの配置及び検出結果の例を示す模式図である。なお、これらの図では、一対の炉壁9A,9Bに配置されたセンサの状態を見やすくするために、炉体8の形状は実際とは異なるものとなっている。図中の矢印は、炉体8の内部における金属板Sの搬送方向を示す。
【0059】
また、図10A図13Bに示す例では、符号において同一の添え字を含む第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bとが1ペアを構成する組み合わせを示し、例えば、第1変位検出器24A11と第2変位検出器24B11との組み合わせが1ペアを構成している。すなわち、第1変位検出器24A11~24A33と第2変位検出器24B11~24B33それぞれの組合せからなる9ペア(上下方向に3ペアずつ、水平方向に3ペアずつ)の変位検出器が設けられている。
【0060】
また、図10A図10Bとでは、炉体8に生じている変形は同一であるが、炉壁9の変位を検出する変位検出器24のタイプが異なる。図10Aにおける変位検出器24は、炉壁9と架構18(静止部)との水平方向の距離を計測可能に構成されたものであり、炉体8の内側及び外側に向かう炉壁9の変位を検出可能なものである。また、図10Bにおける変位検出器24は、近接スイッチなど、炉壁9と架構18との水平方向の距離が規定値以下であるか否かをOn/Offの2値で検出するものであり、炉体8の外側に向かう炉壁9の検出を可能であるが、炉体8の内側に向かう炉壁9の検出はしないものである。
図11A図13Bについても同様である。
【0061】
なお、炉体8の膨張変形の要因について、ここでは、9ペア中、3ペア以上の変位検出器24A,24Bにより膨張変形が検出された場合、炉体8の内圧上昇に起因する炉体8の膨張変形が生じていると判定し、9ペア中、1ペアの変位検出器24A,24Bにより膨張変形が検出された場合、内部機器11と支持部16とのスライド不良による炉体8の変形が生じていると判定する。
【0062】
図10A及び図10Bに示す例では、変位検出器(24A12,24B12)、(24A22,24B22)、(24A32,24B32)の3ペアにおいて、第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bの両方で炉体8の外側に向かう炉壁9の変位(膨張変形)を検出している。したがって、炉体8は膨張変形していると判定される。また、9ペア中3ペアの変位検出器24において膨張変形が検出されているので、炉体8の内圧上昇に起因して、炉体8が膨張変形したと判定される。
【0063】
図11A及び図11Bに示す例では、変位検出器(24A12,24B12)、(24A22,24B22)、(24A32,24B32)の3ペアにおいて、第1変位検出器24Aで炉体8の外側に向かう炉壁9の変位を検出し、第2変位検出器24Bでは炉壁9の変位を検出していない。したがって、これらの3ペアにおいて、炉壁の外側に向かう変位の合計量が正であるから、炉体8は膨張変形していると判定される。また、9ペア中3ペアの変位検出器24において膨張変形が検出されているので、炉体8の内圧上昇に起因して、炉体8が膨張変形したと判定される。
【0064】
図12Aに示す例では、変位検出器(24A11,24B11)、(24A12,24B12)の2ペアにおいて、第1変位検出器24Aで炉体8の外側に向かう炉壁9の変位を検出するとともに、第2変位検出器24Bで炉体8の内側に向かう炉壁9の変位を検出している。即ち、炉体8には傾動変形が生じていると判定することができる。なお、膨張変形を検出した変位検出器のペアは存在しないので、図12Aに示す例においては、炉体8に膨張変形が生じたとは判定されない。
【0065】
一方、図12Bに示す例では、変位検出器(24A11,24B11)、(24A12,24B12)の2ペアにおいて、第1変位検出器24Aで炉体8の外側に向かう炉壁9の変位を検出しているが、第2変位検出器24Bでは炉体8の変位を検出していない。このため、炉体8には傾動変形が生じている可能性があると判定することができる。なお、膨張変形を検出した変位検出器のペアは存在しないので、図12Bに示す例においては、炉体8に膨張変形が生じたとは判定されない。
【0066】
図13A及び図13Bに示す例では、変位検出器(24A11,24B11)の1ペアにおいて、第1変位検出器24Aで炉体8の外側に向かう炉壁9の変位を検出し、第2変位検出器24Bでは炉壁9の変位を検出していない。したがって、この1ペアにおいて、炉壁の外側に向かう変位の合計量が正であるから、炉体8は膨張変形していると判定される。また、9ペア中1ペアの変位検出器24において膨張変形が検出されているので、内部機器11と支持部16とのスライド不良による炉体8の変形が生じていると判定される。
【0067】
幾つかの実施形態では、監視装置20は、判定部30により炉体8が膨張変形したと判定されたとき、炉体8の異常を通知するように構成された通知部34をさらに備える(図6参照)。通知部34は、炉体8の異常を示す信号を監視装置20から受け取るように構成される。通知部34は、炉体8の異常を示す情報を視覚的に示すディスプレイ(不図示)や、炉体8の異常を示す情報を聴覚的に示すスピーカ(不図示)等を含んでいてもよい。
【0068】
このように、炉体8に膨張変形が生じたと判定されたとき、炉体8の異常を通知するようにしたので、これにより、オペレータ等が炉体8の異常を認知して、炉体8の膨張変形が拡大しないように対処することが可能となる。よって、炉体8の膨張変形を適切に抑制することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、監視装置20は、判定部30により炉体8に膨張変形が生じたと判定されたとき、炉体8の内圧が減少するように、ガス供給部40を介したガスの供給量又はガス排出部41によるガスの排出量を調節するように構成された調節部32(図6参照)をさらに備えている。
【0070】
上述の実施形態によれば、炉体8に膨張変形が生じたと判定されたとき、炉体8の内圧が減少するように、ガス供給部40によるガスの供給量又はガス排出部41によるガスの排出量を調節するようにしたので、炉体8の膨張変形の拡大を効果的に抑制することができる。よって、炉体8の変形に起因する内部機器11の脱落等の発生を効果的に抑制することができる。
【0071】
図14を参照して、ガス供給部40及びガス排出部41によるガス(雰囲気ガス)の供給及び排出の制御を含む、熱処理設備1の運転方法について説明する。図14は、一実施形態に係る熱処理設備1の運転方法のフローチャートである。
【0072】
まず、熱処理炉2の炉体8の内圧(炉圧)の設定値をPに設定する(ステップS102)。そして、通常運転時には、調節部32は、炉圧が設定値Pで一定となるように、供給バルブ42又は排出バルブ44の開度を調節して、ガス供給部40によるガスの供給量又はガス排出部41によるガスの排出量を調節する(ステップS104)。
【0073】
次に、判定部30により、変位検出器24の検出結果に基づいて、炉体8に変形が生じたか否かを判定する(ステップS106)。ステップS106にて炉体8の変形が検出されない場合(ステップS106のNO)、炉圧を設定値P0で一定に維持する運転を継続する(ステップS104に戻る)。一方、ステップS106にて炉体8の変形が検出された場合(ステップS106のYES)、その変形が炉体8の膨張変形であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0074】
ステップS108にて、膨張変形でないと判定された場合(例えば炉体8の傾動変形であると判定された場合)(ステップS108のNO)、通知部34に対して、炉体変形は生じたが膨張変形ではないことを示す通知を出力し(ステップS109)、炉圧を設定値Pで一定に維持する運転を継続する(ステップS104に戻る)。
【0075】
一方、ステップS108にて膨張変形であると判定された場合(ステップS108のYES)、通知部34に対して、炉体変形が生じたことを示す警告を出力する(ステップS110)。また、炉体8の膨張変形を検知した変位検出器24の数(又は、第1変位検出器24Aと第2変位検出器24Bのペアの数)を閾値と比較する(ステップS112)。
【0076】
ステップS112にて、炉体8の膨張変形を検知した変位検出器24の数が閾値未満である場合(ステップS112のNO)、炉体8の膨張変形の要因は内圧上昇ではないと判断できるので、炉圧を設定値Pで一定に維持する運転を継続するか(ステップS104に戻る)、あるいは、炉体8の膨張変形の要因(例えば、内部機器11と支持部16との固着)を取り除くために、熱処理設備1の運転を停止してメンテナンスを行う(不図示)。
【0077】
ステップS112にて、炉体8の膨張変形を検知した変位検出器24の数が閾値以上である場合(ステップS112のYES)、炉体8の膨張変形の要因は内圧上昇であると判断できる。そこで、炉圧設定値を初期設定値Pよりも小さいPに変更し(ステップS114)、調節部32は、炉圧が変更後の設定値Pで一定となるように、供給バルブ42又は排出バルブ44の開度を調節して、ガス供給部40によるガスの供給量又はガス排出部41によるガスの排出量を調節する(ステップS116)。
【0078】
その後、変位検出器24が炉壁9の変位を検出し続けている間は(ステップS118のNO)、炉体8の膨張変形が十分に縮小していないと判断されるため、炉圧を設定値Pで一定に維持する運転を継続する(ステップS116に戻る)。
【0079】
一方、変位検出器24が炉壁9の変位を検出しなくなった場合は(ステップS118のYES)、炉体8の膨張変形が十分に縮小したと判断できるため、炉圧の設定値を初期設定値のPに戻し、炉圧を設定値Pで一定に維持する運転に移行する(ステップS104に戻る)。
【0080】
このように、炉体8の膨張変形の検出結果に基づいて、ガス供給部40によるガスの供給量又はガス排出部41によるガスの排出量を適切に調節することにより、炉体8の膨張変形の拡大を効果的に抑制することができる。
【0081】
次に、幾つかの実施形態に係る熱処理設備1の製造方法について説明する。
一実施形態に係る熱処理設備1の製造方法は、互いに対向するように設けられ、炉体8を構成する一対の炉壁9を含む熱処理設備1の製造方法であって、炉体8の外側において、一対の炉壁9の一方の水平方向の相対変位を検出するように構成された少なくとも1つの変位検出器24を設置するステップを備える。
【0082】
上述の実施形態によれば、例えば既存の熱処理設備1に対し、炉体8の外側において、炉壁9の水平方向の変位を検出するように構成された変位検出器24を設置する、との簡易な手順により、炉壁9の水平方向の変位の検出が可能となる。これにより、あまりコストを掛けずに、炉体8の変形が拡大しないように対処することが可能となり、熱処理設備1の製造コスト増大を抑制しながら炉体8の変形を抑制することができる。よって、炉体8の変形に起因する問題(例えば、炉壁9に支持される内部機器11の脱落等)の発生を抑制することができる。
【0083】
以下、幾つかの実施形態に係る熱処理設備用の監視装置及び熱処理設備並びに熱処理設備の監視方法及び製造方法について概要を記載する。
【0084】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る熱処理設備用の監視装置は、
熱処理設備用の監視装置であって、
前記熱処理設備の炉体の外側に設けられ、前記炉体を構成する一対の炉壁の一方の水平方向の変位を検出するように構成された少なくとも1つの変位検出器を備える。
【0085】
上記(1)の構成によれば、炉体の外側に変位検出器を設けた簡素な構成で、炉壁の水平方向の変位を検出することができる。したがって、この検出結果に基づいて炉体変形を検知することができ、これにより、例えば炉体の変形が拡大しないように対処することが可能となる。すなわち、上記(1)の構成によれば、熱処理設備の製造コスト増大を抑制しながら炉体の変形を抑制することができる。よって、炉体の変形に起因する問題(例えば、炉壁に支持される内部機器の脱落等)の発生を抑制することができる。
【0086】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記監視装置は、
前記炉体の外側に設けられ、前記一対の炉壁の前記一方から前記炉体の外側に離間した位置に固定される静止部材と、
前記炉体の外側に設けられ、前記一対の炉壁の前記一方の変形に伴い前記一対の炉壁の前記一方とともに移動可能な可動部材と、を備え、
前記変位検出器は、前記静止部材に対する前記可動部材の水平方向における相対変位を検出可能に構成される。
【0087】
上記(2)の構成によれば、上述の変位検出器で静止部材に対する可動部材の水平方向における相対を検出することにより、炉体の外側に変位検出器、静止部材及び可動部材を設けた簡素な構成で、炉壁の水平方向の変位を検出することができる。よって、上記(2)の構成によれば、熱処理設備の製造コスト増大を抑制しながら炉体の変形を抑制することができる。
【0088】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも1つの変位検出器は、
前記一対の炉壁の一方側に設けられ、前記一対の炉壁の一方の水平方向の変位を検出するように構成された第1変位検出器と、
前記一対の炉壁の他方側において、前記炉体の炉内空間を挟んで前記第1変位検出器とは反対側に位置し、前記一対の炉壁の他方の水平方向の変位を検出するように構成された第2変位検出器と、
を含み、
前記監視装置は、
前記第1変位検出器と前記第2変位検出器の検出結果に基づいて、前記炉体に膨張変形が生じたか否かを判定するように構成された判定部をさらに備える。
【0089】
炉体に生じる変形の形態としては、膨張や傾動等が考えられるが、このうち膨張変形が生じた場合には、例えば、一対の炉壁に支持される内部機器が脱落する等の問題が生じ得る。この点、上記(3)の構成によれば、一対の炉壁に第1変位検出器及び第2変位検出器をそれぞれ設けたので、これらの変位検出器による検出結果に基づいて、炉体に膨張変形が生じたか否かを判定することができる。よって、この判定結果に基づき、炉体の膨張変形が拡大しないように対処することが可能となり、炉体の膨張変形に起因する問題(例えば、一対の炉壁に支持される内部機器の脱落等)の発生を効果的に抑制することができる。
【0090】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記第1変位検出器は、前記一対の炉壁の前記一方の前記炉体の外側に向かう変位を検出可能に構成され、
前記第2変位検出器は、前記一対の炉壁の前記他方の前記炉体の外側に向かう変位を検出可能に構成され、
前記判定部は、前記第1変位検出器及び前記第2変位検出器によって、前記一対の炉壁の両方が前記炉体の外側に向かって変位していることを検出したときに、前記炉体に膨張変形が生じたと判定するように構成される。
【0091】
上記(4)の構成によれば、第1変位検出器及び第2変位検出器により、一対の炉壁の両方が炉体の外側に向かって変位していることを検出したときに、炉体に膨張変形が生じたと判定するようにしたので、炉体の膨張変形を適切に検知可能である。
【0092】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、
前記第1変位検出器は、前記一対の炉壁の前記一方の外側及び内側への変位量を検出可能に構成され、
前記第2変位検出器は、前記一対の炉壁の前記他方の外側及び内側への変位量を検出可能に構成され、
前記判定部は、前記第1変位検出器又は前記第2変位検出器の一方によって、前記一対の炉壁の一方が前記炉体の外側に向かって変位していることを検出し、前記第1変位検出器又は前記第2変位検出器の他方によって、前記一対の炉壁の他方が前記炉体の内側に向かって変位していることを検出し、かつ、前記一対の炉壁の前記一方の外側への前記変位量が前記一対の炉壁の前記他方の内側への前記変位量よりも大きいときに、前記炉体に膨張変形が生じたと判定するように構成される。
【0093】
上記(5)の構成によれば、第1変位検出器及び第2変位検出器により、一対の炉壁の一方が炉体の外側に向かって変位し、一対の炉壁の他方が炉体の内側に向かって変位し、かつ、一対の炉壁の一方の外側への変位量が一対の炉壁の他方の内側への変位量よりも大きいときに、炉体に膨張変形が生じたと判定するようにしたので、炉体の膨張変形を適切に検知可能である。
【0094】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(5)の何れかの構成において、
前記少なくとも1つの変位検出器は、前記第1変位検出器及び前記第2変位検出器の複数のペアを含み、
前記判定部は、前記複数のペアのうち、前記炉体に膨張変形が生じたと判定した前記第1変位検出器と前記第2変位検出器のペアの数に基づいて、前記膨張変形の要因を特定するように構成される。
【0095】
上記(6)の構成によれば、炉体に膨張変形が生じたと判定した第1変位検出器と第2変位検出器のペアの数に基づいて、膨張変形の要因を特定することができる。例えば、第1変位検出器と第2変位検出器の総ペア数のうち、ある程度の数のペア(例えば総ペア数の20%以上)によって膨張変形が生じたと判定されたときには、炉体の内圧上昇が炉体変形の要因であると推定することができる。また、第1変位検出器と第2変位検出器の総ペア数のうち、少数ペア(例えば1ペア)によって膨張変形が生じたと判定されたときには、炉壁に支持される特定の内部機器に何らかの異常が生じたことが炉体変形の要因であると推定することができる。したがって、このように膨張変形の要因を特定することにより、特定された要因に基づいて、炉体の膨張変形が拡大しないように、適切に対処することが可能となる。
【0096】
(7)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(6)の何れかの構成において、
前記監視装置は、
前記判定部により前記炉体が膨張変形したと判定されたとき、前記炉体の異常を通知するように構成された通知部をさらに備える。
【0097】
上記(7)の構成によれば、炉体に膨張変形が生じたと判定されたとき、炉体の異常を通知するようにしたので、これにより、オペレータ等が炉体の異常を認知して、炉体の膨張変形が拡大しないように対処することが可能となる。よって、炉体の膨張変形を適切に抑制することができる。
【0098】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る熱処理設備は、
互いに対向するように設けられ、炉体を構成する一対の炉壁と、
上記(1)乃至(7)の何れか一項に記載の監視装置と、
を備える。
【0099】
上記(8)の構成によれば、炉体の外側に変位検出器を設けた簡素な構成で、炉壁の水平方向の変位を検出することができる。したがって、この検出結果に基づいて炉体変形を検知することができ、これにより、例えば炉体の変形が拡大しないように対処することが可能となる。すなわち、上記(8)の構成によれば、熱処理設備の製造コスト増大を抑制しながら炉体の変形を抑制することができる。よって、炉体の変形に起因する問題(例えば、炉壁に支持される内部機器の脱落等)の発生を抑制することができる。
【0100】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記熱処理設備は、
前記炉体の内部にて前記一対の炉壁の一方に固定される内部機器と、
前記炉体の内部にて前記一対の炉壁の他方に固定され、前記一対の炉壁の前記他方に対する水平方向の相対変位を許容しながら前記内部機器を支持するように構成された支持部と、
をさらに備える。
【0101】
上記(9)の熱処理設備では、一対の炉壁の一方に固定された内部機器を、一対の炉壁の他方に固定された支持部により水平方向の相対変位が許容しながら支持している。このような熱処理設備において炉体に膨張変形が生じると、水平方向における内部機器と支持部とのオーバーラップ量が減少する。そして、炉体の膨張変形が拡大すると、水平方向において内部機器と支持部とが離れてしまい、内部機器が支持部から脱落してしまう場合がある。
この点、上記(9)の構成によれば、炉体の外側に変位検出器を設けた簡素な構成で、炉壁の水平方向の変位を検出することができる。したがって、この検出結果に基づいて炉体の膨張変形等の変形を検知することができ、これにより、炉体の変形が拡大しないように対処することが可能となる。すなわち、上記(9)の構成によれば、熱処理設備の製造コスト増大を抑制しながら炉体の変形を抑制することができる。よって、炉体の変形に起因する内部機器の脱落等の発生を抑制することができる。
【0102】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)の構成において、
前記監視装置は、前記少なくとも1つの変位検出器の検出結果に基づいて、前記炉体が膨張変形したか否かを判定するように構成された判定部を備え、
前記熱処理設備は、
前記炉体の内部にガスを供給するガス供給部と、
前記炉体の内部から前記ガスを排出するガス排出部と、
前記判定部により前記炉体に膨張変形が生じたと判定されたとき、前記炉体の内圧が減少するように、前記ガス供給部によるガスの供給量又は前記ガス排出部によるガスの排出量を調節するように構成された調節部と、
をさらに備える。
【0103】
上記(10)の構成によれば、炉体に膨張変形が生じたと判定されたとき、炉体の内圧が減少するように、ガス供給部によるガスの供給量又はガス排出部によるガスの排出量を調節するようにしたので、炉体の膨張変形の拡大を効果的に抑制することができる。よって、炉体の変形に起因する内部機器の脱落等の発生を効果的に抑制することができる。
【0104】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)乃至(10)の何れかの構成において、
前記熱処理設備は、
前記炉体の外側に設けられた架構を備え、
前記少なくとも1つの変位検出器は、少なくとも部分的に、水平方向において前記一対の炉壁の一方と前記架構との間に設けられる。
【0105】
上記(11)の構成によれば、水平方向において炉壁と架構との間に変位検出器を設けたので、足場となる架構から変位検出器に容易にアクセスすることができる。よって、変位検出器のメンテナンス作業が容易となる。
【0106】
(12)幾つかの実施形態では、上記(8)乃至(11)の何れかの構成において、
前記熱処理設備は、
前記炉体の外側にて前記一対の炉壁の前記一方から前記炉体の外側に離間して設けられた架構を備え、
前記監視装置は、
前記前記架構に固定される静止部材と、
前記炉体の外側に設けられ、前記一対の炉壁の前記一方の変形に伴い前記一対の炉壁の前記一方とともに移動可能な可動部材と、を含み、
前記変位検出器は、前記静止部材又は前記可動部材の一方に取り付けられ、前記静止部材に対する前記可動部材の水平方向における相対変位を検出可能に構成される。
【0107】
上記(12)の構成によれば、架構に固定される静止部材、及び、炉壁とともに移動可能な可動部材を用いて、静止部材に対する可動部材の水平方向における相対変位を検出する。すなわち、架構を利用した構成で水平方向の相対変位を検出するようにしたので、監視装置の設置に要するコストを抑制しながら、炉体の変形を検知することができ、これにより、炉体の変形を抑制することができる。
【0108】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係る熱処理設備の監視方法は、
熱処理設備用の監視方法であって、
前記熱処理設備の炉体の外側において、前記炉体を構成する一対の炉壁の一方の水平方向の相対変位を検出するステップを備える。
【0109】
上記(13)の方法によれば、炉体の外側において炉壁の水平方向の変位を検出するようにしたので、この検出結果に基づいて炉体変形を検知することができ、これにより、例えば炉体の変形が拡大しないように対処することが可能となる。すなわち、上記(13)の方法によれば、熱処理設備の製造コスト増大を抑制しながら炉体の変形を抑制することができる。よって、炉体の変形に起因する問題(例えば、炉壁に支持される内部機器の脱落等)の発生を抑制することができる。
【0110】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る熱処理設備の製造方法は、
互いに対向するように設けられ、炉体を構成する一対の炉壁を含む熱処理設備の製造方法であって、
前記炉体の外側において、前記一対の炉壁の一方の水平方向の相対変位を検出するように構成された少なくとも1つの変位検出器を設置するステップを備える。
【0111】
上記(14)の方法によれば、炉体の外側において、炉壁の水平方向の変位を検出するように構成された変位検出器を設置する、との簡易な手順により、炉壁の水平方向の変位の検出が可能となる。これにより、例えば炉体の変形が拡大しないように対処することが可能となり、熱処理設備の製造コスト増大を抑制しながら炉体の変形を抑制することができる。よって、炉体の変形に起因する問題(例えば、炉壁に支持される内部機器の脱落等)の発生を抑制することができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0113】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0114】
1 熱処理設備
2 熱処理炉
3 予熱帯
4 加熱帯
5 均熱帯
6 冷却帯
8 炉体
9 炉壁
9A 第1炉壁
9B 第2炉壁
10 搬送ロール
11 内部機器
12 ラジアントチューブ
13 ロールシャフト
14 冷却ガスノズル
15 支持板
16 支持部
17 リブ
18 架構
18A 架構
18B 架構
19 軸受
20 監視装置
22 制御装置
24 変位検出器
24A 第1変位検出器
24B 第2変位検出器
26 静止部材
28 可動部材
30 判定部
32 調節部
34 通知部
38 ガス供給ライン
39 ガス排出ライン
40 ガス供給部
41 ガス排出部
42 供給バルブ
44 排出バルブ
51 一端側
52 他端側
54 突出部
60 静止ブラケット
60a 垂直面
62 可動ブラケット
62a 垂直面
64 スリット
66 接触子
68 静止ブラケット
70 ターゲット板
72 レーザ距離計
118 架構
S 金属板
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14