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特許7225402識別支援システム、識別支援サーバ、及び識別支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】識別支援システム、識別支援サーバ、及び識別支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20230213BHJP
   G06F 16/2457 20190101ALI20230213BHJP
   G06F 16/36 20190101ALI20230213BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20230213BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20230213BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G06F16/90
G06F16/2457
G06F16/36
G16H20/10
G10L15/00 200T
G10L15/22 470Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021530614
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025508
(87)【国際公開番号】W WO2021006094
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019125891
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】長谷 航記
(72)【発明者】
【氏名】畝 孝雄
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-58142(JP,U)
【文献】特開2015-47362(JP,A)
【文献】特開2001-331583(JP,A)
【文献】特開2018-45584(JP,A)
【文献】特開平9-231240(JP,A)
【文献】特開2005-25296(JP,A)
【文献】保険薬識別コード検索システム「Quick Drug」,医療とコンピュータ,有限会社ネットワーク,1993年02月28日,pp.60-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G16H 20/10
G10L 15/00
G10L 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音声を認識して第1のテキストとして出力する音声認識部と、
薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書を参照して前記第1のテキストを修正して第2のテキストを生成するテキスト修正部と、
薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、前記薬剤の外観情報と、が関連付けてテキスト情報として記憶された薬剤データベースと、
前記第2のテキストをキーワードとして前記薬剤データベースを検索して、前記第2のテキストが示す薬剤の候補である候補薬剤について前記識別情報を取得する検索部と、
前記候補薬剤についての前記識別情報を出力する出力部と、
を備え
前記検索部は前記第2のテキストを前記キーワードとした部分一致検索を行い、前記部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行い、
前記検索部は、前記あいまい検索では前記第2のテキストと、前記テキスト情報に含まれるテキストである第3のテキストと、の類似度を算出し、前記類似度がしきい値以上である前記第3のテキストに対応する薬剤を前記候補薬剤とし、
前記検索部は、前記第3のテキストから前記第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出して前記類似度を算出する識別支援システム。
【請求項2】
前記薬剤検索用辞書は薬剤の識別に用いられる単語が変換候補として登録された変換辞書である請求項1に記載の識別支援システム。
【請求項3】
前記音声認識部は、前記識別情報と、前記外観情報と、を教師データとした機械学習により構成された学習済みモデルを用いて前記第1のテキストを生成する請求項1または2に記載の識別支援システム。
【請求項4】
前記検索部は前記第2のテキストを正規化して正規化テキストを生成し、前記正規化テキストを用いて前記部分一致検索を行う請求項1に記載の識別支援システム。
【請求項5】
前記テキスト修正部は前記第2のテキストに対する修正を受け付け、前記受け付けた修正に基づいて前記薬剤検索用辞書に追加学習を実行させる請求項1から4のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項6】
前記外観情報は前記薬剤の刻印情報及び/または印字情報と、形状情報と、色彩情報と、のうち少なくとも一つを含む請求項1から5のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項7】
前記出力部は前記候補薬剤の中から選択された薬剤についての前記識別情報をファイルとして出力する請求項1から6のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項8】
前記薬剤データベースは前記薬剤の前記識別情報と前記薬剤の画像とを関連付けて記憶し、
前記出力部は前記候補薬剤についての前記画像を前記識別情報と関連付けて表示装置に出力する請求項1から7のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項9】
識別支援サーバと、前記識別支援サーバとネットワークを介して接続された識別支援クライアントと、を備える識別支援システムであって、
前記識別支援クライアントは、
入力された音声を認識して第1のテキストとして出力する音声認識部と、
薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書を参照して前記第1のテキストを修正して、第2のテキストを生成するテキスト修正部と、
前記第2のテキストを示す情報を前記識別支援サーバに送信するクライアント側送信部と、
前記第2のテキストに対応する薬剤の候補である候補薬剤について、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報を前記識別支援サーバから受信するクライアント側受信部と、
前記識別情報を出力する出力部と、
を備え、
前記識別支援サーバは、
薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、前記薬剤の外観情報と、がテキスト情報として関連付けて記憶された薬剤データベースと、
前記第2のテキストを示す情報を前記識別支援クライアントから受信するサーバ側受信部と、
前記第2のテキストを示す情報をキーワードとして前記薬剤データベースを検索して、前記第2のテキストが示す薬剤の候補である候補薬剤について前記識別情報を取得する検索部と、
前記取得した前記識別情報を前記識別支援クライアントに送信するサーバ側送信部と、
を備え、
前記検索部は、前記識別支援クライアントから受信した前記第2のテキストを前記キーワードとした部分一致検索を行い、前記部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行い、
前記検索部は、前記あいまい検索では前記第2のテキストと、薬剤データベースに記憶された前記テキスト情報に含まれるテキストである第3のテキストと、の類似度を算出し、前記類似度がしきい値以上である前記第3のテキストに対応する薬剤を前記候補薬剤とし、
前記検索部は、前記第3のテキストから前記第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出して前記類似度を算出する、
識別支援システム。
【請求項10】
前記識別支援クライアントにおいて、前記薬剤検索用辞書は薬剤の識別に用いられる単語が変換候補として登録された変換辞書である請求項9に記載の識別支援システム。
【請求項11】
前記識別支援クライアントにおいて、前記音声認識部は、前記識別情報と、前記外観情報と、を教師データとした機械学習により構成された学習済みモデルを用いて前記第1のテキストを生成する請求項9または10に記載の識別支援システム。
【請求項12】
前記識別支援サーバにおいて、前記検索部は前記第2のテキストを正規化して正規化テキストを生成し、前記正規化テキストを用いて前記部分一致検索を行う請求項9から11のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項13】
前記識別支援クライアントにおいて、前記テキスト修正部は前記第2のテキストに対する修正を受け付け、前記受け付けた修正に基づいて前記薬剤検索用辞書に追加学習を実行させる請求項9から12のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項14】
前記識別支援サーバの前記薬剤データベースにおいて、前記外観情報は前記薬剤の刻印情報及び/または印字情報と、形状情報と、色彩情報と、のうち少なくとも一つを含む請求項9から13のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項15】
前記識別支援クライアントにおいて、前記出力部は前記候補薬剤の中から選択された薬剤についての前記識別情報をファイルとして出力する請求項9から14のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項16】
前記識別支援サーバにおいて、前記薬剤データベースは前記薬剤の前記識別情報と前記薬剤の画像とを関連付けて記憶し、
前記識別支援クライアントにおいて、前記出力部は前記候補薬剤についての前記画像を前記識別情報と関連付けて表示装置に出力する請求項9から15のいずれか1項に記載の識別支援システム。
【請求項17】
薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、前記薬剤の外観情報と、がテキスト情報として関連付けて記憶された薬剤データベースと、
薬剤についての第2のテキストを示す情報を識別支援クライアントから受信するサーバ側受信部と、
前記第2のテキストをキーワードとして前記薬剤データベースを検索して、前記第2のテキストが示す薬剤の候補である候補薬剤について前記識別情報を取得する検索部と、
前記取得した前記識別情報を前記識別支援クライアントに送信するサーバ側送信部と、
を備える識別支援サーバであって、
前記検索部は、前記第2のテキストを前記キーワードとした部分一致検索を行い、前記部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行い、
前記検索部は、前記あいまい検索では前記第2のテキストと、前記薬剤データベースに記憶された前記テキスト情報に含まれるテキストである第3のテキストと、の類似度を算出し、前記類似度がしきい値以上である前記第3のテキストに対応する薬剤を前記候補薬剤とし、
前記検索部は、前記第3のテキストから前記第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出して前記類似度を算出する識別支援サーバ。
【請求項18】
入力された音声を認識して第1のテキストとして出力する音声認識工程と、
薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書を参照して前記第1のテキストを修正して、第2のテキストを生成するテキスト修正工程と、
前記第2のテキストをキーワードとして、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、前記薬剤の外観情報と、が関連付けてテキスト情報として記憶された薬剤データベースを検索して、前記第2のテキストが示す薬剤の候補である候補薬剤について前記識別情報を取得する検索工程と、
前記候補薬剤についての前記識別情報を出力する出力工程と、
を含むコンピュータによって実行する識別支援方法であって、
前記検索工程では、前記第2のテキストを前記キーワードとした部分一致検索を行い、前記部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行い、
前記検索工程では、前記あいまい検索では前記第2のテキストと、前記テキスト情報に含まれるテキストである第3のテキストと、の類似度を算出し、前記類似度がしきい値以上である前記第3のテキストに対応する薬剤を前記候補薬剤とし、
前記検索工程では、前記第3のテキストから前記第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出して前記類似度を算出する、識別支援方法。
【請求項19】
薬剤についての第2のテキストを識別支援クライアントから受信する工程と、
前記第2のテキストをキーワードとして、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、前記薬剤の外観情報と、がテキスト情報として関連付けて記憶された薬剤データベースを検索して、前記第2のテキストが示す薬剤の候補である候補薬剤について前記識別情報を取得する工程と、
前記取得した前記識別情報を前記識別支援クライアントに送信する工程と、
をコンピュータによって実行する識別支援方法であって、
前記検索において、前記識別支援クライアントから受信した前記第2のテキストを前記キーワードとした部分一致検索を行い、前記部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行い、
前記あいまい検索では前記第2のテキストと、前記薬剤データベースに記憶された前記テキスト情報に含まれるテキストである第3のテキストと、の類似度を算出し、前記類似度がしきい値以上である前記第3のテキストに対応する薬剤を前記候補薬剤とし、
前記類似度は、前記第3のテキストから前記第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出して算出される、識別支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の識別支援システム、識別支援サーバ、及び識別支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院、薬局等の医療現場では、患者に提供する薬剤の監査や患者が持参する薬剤の鑑別が行われるが、手入力による監査や鑑別は作業時間が長くユーザ(医師、薬剤師等)の負担が高い。そこで、監査や鑑別に音声認識を用いることが考えられる。例えば、特許文献1には、医療現場で使用する薬剤名をユーザが音声で指示し、指示された薬剤を使用薬剤のリストに登録することが記載されている。また、特許文献2には、薬剤名を音声認識して、認識された薬剤の情報を提示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-064672号公報
【文献】特開2016-218998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のような従来の技術は、音声入力の誤りや薬剤の識別に特有の表現について考慮されておらず、単に「音声入力や音声認識を用いる」だけであり、ユーザの負担が軽減されるものではなかった。本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ユーザが正確かつ容易に薬剤の識別を行うことができる識別支援システム及び識別支援方法を提供することを目的とする。また、本発明は薬剤の識別に利用可能な識別支援サーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る識別支援システムは、入力された音声を認識して第1のテキストとして出力する音声認識部と、薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書を参照して第1のテキストを修正して第2のテキストを生成するテキスト修正部と、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、薬剤の外観情報と、が関連付けてテキスト情報として記憶された薬剤データベースと、第2のテキストをキーワードとして薬剤データベースを検索して、第2のテキストが示す薬剤の候補である候補薬剤について識別情報を取得する検索部と、候補薬剤についての識別情報を出力する出力部と、を備える。
【0006】
第1の態様によれば、音声認識の結果である第1のテキストを修正するので音声認識の誤りを修正することが可能であり、また薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書を参照して第1のテキストを修正するので、薬剤の識別に特有の表現を考慮することができる。ユーザは薬剤のコード及び/または名称だけでなく、外観情報を発声することで検索を実行させることができ、コードや名称が不明な場合でも外観情報により検索を行うことができる。第1の態様において、「外観情報」とはユーザが視覚により認識できる薬剤の特徴を示す情報である。なお、キーワードは1つでもよいし、2つ以上でもよい。
【0007】
このように、第1の態様によれば、ユーザは正確かつ容易に薬剤の識別を行うことができる。なお、第1の態様においてシステムの構成要素は一つの筐体に収納されていてもよいし、複数の筐体に分けて収納されていてもよい。また、複数の装置がネットワークを介して接続され全体として第1の態様の構成要件を満たしていてもよい。
【0008】
第2の態様に係る識別支援システムは第1の態様において、薬剤検索用辞書は薬剤の識別に用いられる単語が変換候補として登録された変換辞書である。「薬剤の識別に用いられる単語」の一例としては、数字、アルファベット、製薬会社名及びその屋号や略称等を挙げることができる。これらの情報は刻印及び/または印字、包装への印刷やラベル貼付等により薬剤に付される場合があり、変換辞書への登録により、意図した単語を検索のキーワードとして入力することができる。
【0009】
第3の態様に係る識別支援システムは第1または第2の態様において、音声認識部は、識別情報と、外観情報と、を教師データとした機械学習により構成された学習済みモデルを用いて第1のテキストを生成する。学習済みモデルはニューラルネットワークを用いた学習済みモデルでもよい。
【0010】
第4の態様に係る識別支援システムは第1から第3の態様のいずれか1つにおいて、検索部は第2のテキストをキーワードとした部分一致検索を行い、部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行う。第4の態様では部分一致検索を行うので、例えば錠剤や包装の分割等によりコードや名称、外観情報の一部しか分からない状態でも検索が可能である。なお、第4の態様では、例えば検索のヒット数がしきい値以下である場合やゼロである場合にあいまい検索を行うことができる。
【0011】
第5の態様に係る識別支援システムは第4の態様において、検索部は第2のテキストを正規化して正規化テキストを生成し、正規化テキストを用いて部分一致検索を行う。検索部は、「正規化」として例えば大文字から小文字へ、全角から半角へ、漢字及び/またはひらがなからカタカナへ、の変換を行うことができる。また、あいまい検索は、音声認識結果が意図した文字列と異なることにより部分検索では検索困難な場合に有効である。
【0012】
第6の態様に係る識別支援システムは第4または第5の態様において、検索部は、あいまい検索では第2のテキストとテキスト情報に含まれるテキストである第3のテキストとの類似度を算出し、類似度がしきい値以上である第3のテキストに対応する薬剤を候補薬剤とする。第6の態様において、検索部はテキスト同士の距離を用いて類似度を算出してもよい。
【0013】
第7の態様に係る識別支援システムは第6の態様において、検索部は、第3のテキストから第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出して類似度を算出する。音声入力では短いキーワードとなることが多いが、キーワードが短い場合短いテキスト情報の方が相対的に類似度が高くなってしまい、適切な検索結果が得られない場合がある。しかしながら、このような場合でも、第7の態様のように第3のテキストから第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出して類似度を算出することにより、適切な検索結果を得やすくなる。
【0014】
第8の態様に係る識別支援システムは第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、テキスト修正部は第2のテキストに対する修正を受け付け、受け付けた修正に基づいて薬剤検索用辞書に追加学習を実行させる。第8の態様によれば、追加学習により検索の精度を向上させることができる。
【0015】
第9の態様に係る識別支援システムは第1から第8の態様のいずれか1つにおいて、外観情報は薬剤の刻印情報及び/または印字情報と、形状情報と、色彩情報と、のうち少なくとも一つを含む。第9の態様は外観情報の具体的態様を規定するものである。形状情報は例えば円形や楕円形、錠剤であるかカプセル型であるか等の情報であり、色彩情報は例えば薬剤が白色、青色、赤色である等の情報である。
【0016】
第10の態様に係る識別支援システムは第1から第9の態様のいずれか1つにおいて、出力部は候補薬剤の中から選択された薬剤についての識別情報をファイルとして出力する。
【0017】
第11の態様に係る識別支援システムは第1から第10の態様のいずれか1つにおいて、薬剤データベースは薬剤の識別情報と薬剤の画像とを関連付けて記憶し、出力部は候補薬剤についての画像を識別情報と関連付けて表示装置に出力する。第11の態様によれば、ユーザは検索や鑑別が適切であるか否かを視覚により容易に判断することができる。なお、薬剤の画像は、薬剤自体ではなく薬剤の包装(PTPシート等)の画像でもよい。
【0018】
上述した目的を達成するため、本発明の第12の態様に係る識別支援クライアントは、入力された音声を認識して第1のテキストとして出力する音声認識部と、薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書を参照して第1のテキストを修正して、第2のテキストを生成するテキスト修正部と、第2のテキストを示す情報を識別支援サーバに送信するクライアント側送信部と、第2のテキストに対応する薬剤の候補である候補薬剤について、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報を識別支援サーバから受信するクライアント側受信部と、識別情報を出力する出力部と、を備える。第12の態様によれば、ユーザは正確かつ容易に薬剤の識別を行うことができる。なお、第12の態様に係る識別支援クライアントは第2~第11の態様に係る構成を備えていてもよい。
【0019】
上述した目的を達成するため、本発明の第13の態様に係る識別支援サーバは、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、薬剤の外観情報と、がテキスト情報として関連付けて記憶された薬剤データベースと、薬剤についてのテキスト情報を識別支援クライアントから受信するサーバ側受信部と、テキスト情報をキーワードとして薬剤データベースを検索して、テキスト情報が示す薬剤の候補である候補薬剤について識別情報を取得する検索部と、取得した識別情報を識別支援クライアントに送信するサーバ側送信部と、を備える。第13の態様に係る識別支援サーバは、音声入力による薬剤の識別支援に用いることができる。なお、第13の態様に係る識別支援クライアントは第2~第11の態様に係る構成を備えていてもよい。また、第12の態様に係る識別支援クライアントと第13の態様に係る識別支援サーバとにより、第1の態様に係る識別支援システムと同様のシステムを構成することができる。
【0020】
上述した目的を達成するため、本発明の第14の態様に係る識別支援方法は、入力された音声を認識して第1のテキストとして出力する音声認識工程と、薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書を参照して第1のテキストを修正して、第2のテキストを生成するテキスト修正工程と、第2のテキストをキーワードとして、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、薬剤の外観情報と、が関連付けてテキスト情報として記憶された薬剤データベースを検索して、第2のテキストが示す薬剤の候補である候補薬剤について識別情報を取得する検索工程と、候補薬剤についての識別情報を出力する出力工程と、を含む。第14の態様によれば、第1の態様と同様に、ユーザは音声入力により正確かつ容易に薬剤の識別を行うことができる。なお、第14の態様に係る識別支援方法は第2~第11の態様と同等の構成を備えていてもよい。また、これら態様の識別支援方法を識別支援システムやコンピュータに実行させるプログラム、及び当該プログラムのコンピュータ読み取り可能なコードを記録した非一時的記録媒体も、本発明の態様として挙げることができる。
【0021】
なお、上述した態様の識別支援システム、識別支援サーバ、及び識別支援方法は、薬剤の鑑別支援及び/または監査支援に用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の識別支援システム及び識別支援方法によれば、ユーザは正確かつ容易に薬剤の識別を行うことができる。また、本発明の識別支援サーバは、薬剤の識別に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1の実施形態に係る識別支援システムの構成を示す図である。
図2図2は、処理部の機能ブロック図である。
図3図3は、記憶部に記憶される情報を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る識別支援方法の処理を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係る識別支援システムの構成を示す図である。
図6図6は、クライアント処理部の機能ブロック図である。
図7図7は、クライアント記憶部に記憶される情報を示す図である。
図8図8は、サーバ処理部の機能ブロック図である。
図9図9は、サーバ記憶部に記憶される情報を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る識別支援方法の処理を示すフローチャートである。
図11図11は、第2の実施形態に係る識別支援方法の処理を示す他のフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態に係る識別支援方法の処理を示すさらに他のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る識別支援システム、識別支援サーバ、及び識別支援方法の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る識別支援システム10(識別支援システム)の構成を示すブロック図である。識別支援システム10は薬剤の識別を支援するシステムであり、コンピュータを用いて実現することができる。図1に示すように、識別支援システム10は処理部100、記憶部200、表示部300、及び操作部400を備え、互いに接続されて必要な情報が送受信される。また、識別支援システム10は通信制御部110(図2参照)及び不図示のネットワークを介して不図示の外部サーバや外部データベース等に接続し、必要に応じて情報を取得することができる。
【0026】
なお、識別支援システム10は、患者が持参した薬剤等に対する鑑別の支援や、患者に提供する薬剤に対する監査の支援に適用することができる。
【0027】
<処理部の構成>
図2は処理部100の構成を示す図である。処理部100は音声認識部102(音声認識部)、テキスト修正部104(テキスト修正部)、検索部106(検索部)、出力部108(出力部)、及び通信制御部110を備える。処理部100は、さらに不図示のCPU(CPU:Central Processing Unit)、ROM(ROM:Read Only Memory)、及びRAM(RAM:Random Access Memory)を備える。なお、これらの各部による処理はCPUの制御の下で行われる。
【0028】
上述した処理部100の各部の機能は、各種のプロセッサ(processor)を用いて実現できる。各種のプロセッサには、例えばソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能を実現する汎用的なプロセッサであるCPUが含まれる。また、上述した各種のプロセッサには、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)も含まれる。さらに、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路なども上述した各種のプロセッサに含まれる。
【0029】
各部の機能は1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ)で実現されてもよい。また、1つのプロセッサが複数の機能を実現してもよい。複数の機能を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント、サーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能として実現する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、システム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能は、ハードウェア的な構造として、上述した各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0030】
上述したプロセッサあるいは電気回路がソフトウェア(プログラム)を実行する際は、実行するソフトウェアのコンピュータ(例えば、処理部100を構成する各種のプロセッサや電気回路、及び/またはそれらの組み合わせ)で読み取り可能なコードをROM等の非一時的記録媒体に記憶しておき、プロセッサがそのソフトウェアを参照する。非一時的記録媒体に記憶しておくソフトウェアは、本発明に係る識別支援方法を実行するためのプログラム(識別支援プログラム)を含む。プログラムのコードは、ROMではなく各種光磁気記録装置、半導体メモリ等の非一時的記録媒体に記録されていてもよい。ソフトウェアを用いた処理の際には例えばRAMが一時的記憶領域として用いられ、また例えば不図示のEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)に記憶されたデータを参照することもできる。
【0031】
<記憶部の構成>
記憶部200はDVD(Digital Versatile Disk)、ハードディスク(Hard Disk)、各種半導体メモリ等の非一時的記録媒体及びその制御部により構成され、図3に示すように薬剤検索用辞書202(薬剤検索用辞書)、薬剤マスタ204(薬剤マスタ)、薬剤画像206(薬剤の画像)、及び追加学習用データ208が記憶される。薬剤検索用辞書202は薬剤の識別に用いられる表現を学習させた辞書であり、例えば、数字、アルファベット、会社名及びその屋号や略称等が変換候補として登録され、これにより意図した単語が検索のキーワードとして入力される可能性を高めることができる。
【0032】
薬剤マスタ204には、薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報と、薬剤の外観情報と、が関連付けてテキスト情報として記憶されている。「コード」は例えばYJコード(英数字12桁で構成される個別医薬品コード)であり、名称は有効成分の容量を含んでいてもよい。また、「外観情報」は薬剤の刻印情報及び/または印字情報と、形状情報と、色彩情報と、のうち少なくとも一つを含む。刻印及び印字については、薬剤の表面及び裏面のそれぞれについて情報を記憶することが好ましい。薬剤マスタ204は、薬剤の一般名称と個々の製品の情報、あるいは先発医薬品の情報と後発医薬品の情報とを関連付けて記憶してもよい。薬剤画像206は、薬剤マスタ204と関連付けて記憶されている。薬剤画像206も、薬剤の表面及び裏面のそれぞれについて情報を記憶することが好ましい。
【0033】
<表示部及び操作部の構成>
表示部300はモニタ310(表示装置)を備えており、記憶部200に記憶された情報、処理部100による処理の結果等を表示することができる。操作部400は入力デバイスあるいはポインティングデバイスとしてのキーボード410及びマウス420と、音声入力デバイスとしてのマイク430(音声認識部)を含んでおり、ユーザはこれらのデバイス及びモニタ310の画面を介して、本発明に係る識別支援方法の実行に必要な操作を行うことができる(後述)。モニタ310をタッチパネルにより構成し、ユーザがそのタッチパネルを介して操作を行えるようにしてもよい。
【0034】
<識別支援方法の処理>
以下、図4のフローチャートを参照しつつ、上述した構成の識別支援システム10による識別支援方法について説明する。
【0035】
<音声認識>
ユーザは対象とする薬剤の情報を読み上げる。例えば、ユーザは、ジェネリック薬を「アカサタナハマ錠、50mg、『ABC』、白」や「アカサタナハマ、錠剤、50、『ABC』、白」のように薬剤のコード、名称、製薬会社名またはその屋号や略称、刻印及び/または印字、形状(錠剤かカプセル剤か、円形か楕円型か等)、色彩(外観情報の一例)等を読み上げる。読み上げるのは、上述した情報の全ての項目でなく一部の項目でもよい。また、名称、刻印及び/または印字は一部分でもよい。また、薬剤の名称、製薬会社名またはその屋号や略称、刻印及び/または印字は薬剤の包装(PTPシート等)に付されたものでもよい。マイク430は音声を入力し(ステップS100:音声認識工程)、音声認識部102は入力された音声を認識して第1のテキストとして出力する(ステップS100:音声認識工程)。音声認識部102は1または複数の単語を認識及び出力することができ、また入力なしの状態が一定時間継続した後に単語を認識した場合は別の単語と判断することができる。
【0036】
<テキストの修正>
一般的な音声認識モデルは汎用的な単語を想定しているため、薬剤の識別においては意図した単語と異なる単語(テキスト)が出力される可能性がある。そこで第1の実施形態において、テキスト修正部104は、薬剤の識別に用いられる表現を学習させた薬剤検索用辞書202(薬剤検索用辞書)を参照して第1のテキストを修正して、第2のテキストを生成する(ステップS110:テキスト修正工程)。薬剤検索用辞書202(薬剤検索用辞書)は、薬剤の識別に用いられる単語が変換候補として登録された変換辞書であり、例えば数字、アルファベット、製薬会社名及びその屋号や略称等が登録される。これらの情報は刻印及び/または印字、包装への印刷やラベル貼付等により薬剤に付される場合があり、薬剤検索用辞書202への登録により、意図した単語を検索のキーワードとして入力して正確な検索を行うことができる。なお、テキスト修正部104は第2のテキストに対する修正を受け付け、受け付けた修正に基づいて薬剤検索用辞書202に追加学習を実行させてもよい(後述)。
【0037】
<検索>
検索部106は、以下に詳細を説明するように、第2のテキストをキーワードとした部分一致検索を行い(ステップS120:検索工程、部分一致検索工程)、部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行う(ステップS130,S140:検索工程、あいまい検索工程)。
【0038】
<テキストの正規化>
検索部106は、第2のテキストを正規化して正規化テキストを生成し、正規化テキストを用いて部分一致検索を行う(ステップS120:検索工程、正規化工程、部分一致検索工程)。検索部106は、「正規化」として例えば大文字から小文字へ、全角から半角へ、漢字及び/またはひらがなからカタカナへ、の変換(またはこれら変換の逆)を行うことができ、これによりテキストの表現を統一して検索精度を向上させることができる。検索部106は、薬剤マスタ204における識別情報の表現形式(大文字と小文字のいずれを用いているか、等)に合わせた変換を行うことが好ましい。
【0039】
<部分一致検索>
検索部106は、ステップS120において、薬剤名、刻印及び/または印字(表面、裏面のそれぞれ)等についての第2のテキストをキーワードとして薬剤マスタ204を部分一致検索(キーワードが複数存在する場合は複数キーワードのAND検索)して一致度を算出する。検索部106は検索結果を一致度でソートして、しきい値以上の薬剤を候補薬剤(第2のテキストが示す薬剤の候補)として、記憶部200(薬剤データベース)から薬剤のコード及び/または名称を含む識別情報(刻印及び/または印字の情報を含めてもよい)、及びその識別情報に対応する画像を取得する(ステップS120)。検索部106は、「一致度」として「マッチ率(=一致した文字数/全体文字数)」及び/または「一致位置率(=一致先頭文字位置/全体文字数)」を算出してもよい。
【0040】
<あいまい検索>
検索部106は、部分一致検索の結果に応じてあいまい検索を行う。例えば、検索部106は部分一致検索でヒットがあるか否か(候補薬剤が一つ以上存在するか否か)判断し(ステップS130:検索工程)、ヒットがない場合(ステップS130でNO)にあいまい検索を行う(ステップS140)。
【0041】
ステップS140において、検索部106はステップS110で修正したテキスト(第2のテキスト)と薬剤マスタ204に記憶されたテキスト情報(識別情報、外観情報;第3のテキスト)との類似度を算出し、類似度がしきい値以上である薬剤(候補薬剤)の識別情報及び画像を取得する(検索工程、あいまい検索工程)。検索部106は、テキスト(文字列)の類似度を示す指標として、レーベンシュタイン距離、Damerau-Levenshtein距離、ハミング距離、ジャロ・ウィンクラー距離等を用いることができる。
【0042】
<キーワードの文字数を考慮した類似度の算出>
薬剤の名称等を音声入力して識別する場合、ユーザが名称等の全部ではなく一部のみを読み上げ、その結果キーワードが短くなることが多い。この場合、長い薬剤名よりも短い薬剤名の方が、キーワードとの類似度が相対的に高くなり、適切な検索結果が得られない場合がある。そこで、識別支援システム10では、以下のようにキーワードの文字数を考慮して類似度を算出することができる。具体的には、検索部106は、(修正後のテキスト(第2のテキスト)の文字数)が(薬剤マスタ204に記憶されたテキスト情報(第3のテキスト)の文字数)未満である場合、第3のテキストから第2のテキストと同じ長さの文字列を抜き出し、抜き出した文字列と第2のテキストとの類似度を算出し、類似度が最大の場合の値を利用する(ステップS140:検索工程、あいまい検索工程)。一方、(修正後のテキストの文字数)が(薬剤マスタ204に記憶されたテキスト情報の文字数)以上である場合、検索部106は文字列の抽出を行わずそのまま類似度を算出する(ステップS140:検索工程、あいまい検索工程)。
【0043】
このように、キーワードの文字数を考慮した類似度の算出により、正確な検索結果が得られやすくなる。
【0044】
<検索結果及び画像の表示>
出力部108は、候補薬剤についての識別情報及び画像をモニタ310(表示装置)に表示(出力)させる(ステップS150:出力工程)。識別情報及び画像を表示することで、ユーザは検索結果が所望の薬剤であるか否か容易に把握することができる。識別支援システム10(検索部106)は、「候補薬剤が、ユーザが所望する薬剤でない」と判断した場合(ステップS160でNO)、及び「全薬剤についての検索が終了していない」と判断した場合(ステップS170でNO)は、ステップS100に戻って処理を繰り返す。識別支援システム10は、これらの判断を、操作部400を介したユーザの操作に基づいて行うことができる。
【0045】
<検索結果のファイル出力>
識別支援システム10(検索部106)が「候補薬剤が、ユーザが所望する薬剤である」(ステップS160でYES)、かつ「全薬剤についての検索が終了した」(ステップS170でYES)と判断した場合、出力部108は検索結果のファイル出力指示があったか否かを判断する(ステップS180:ファイル出力工程)。ファイル出力指示があった場合、出力部108は、候補薬剤の中から選択された薬剤についての識別情報(薬剤のコード及び/または名称を含む情報)をファイルとして出力する(ステップS185:ファイル出力工程)。出力部108は、そのファイルを記憶部200に記憶してもよい。出力部108は、ファイル出力指示の有無及びいずれの薬剤が選択されたかを、操作部400を介したユーザの操作に基づいて判断することができる。なお、出力されたファイルは、持参薬オーダーシステム等、他のシステムで利用することができる。
【0046】
<追加学習>
テキスト修正部104は、操作部400を介したユーザの指示に応じて第2のテキストに対する修正を受け付け、受け付けた修正に基づいて薬剤検索用辞書202に追加学習を実行させることができる。追加学習としては、修正後のテキスト(単語)により薬剤検索用辞書202を更新する、あるいは修正後のテキストを教師データとして学習済みモデル(後述)に追加学習を行わせる、等が可能である。テキスト修正部104は、第2のテキストに対する修正を受け付けた場合は、受け付けた修正の内容に応じて追加学習用データ208を生成する(ステップS190:データ生成工程)。テキスト修正部104は、追加学習用データを生成するごとに追加学習を行わせてもよいし、定期的に、あるいは操作部400を介したユーザの指示に応じて随時行わせてもよい。このような追加学習により、第1,第2のテキストの生成精度を向上させることができる。
【0047】
<第1の実施形態の効果>
以上説明したように、第1の実施形態に係る識別支援システム10及び識別支援方法によれば、ユーザは正確かつ容易に薬剤の識別を行うことができる。
【0048】
<学習済みモデルによるテキストの生成>
上述した第1の実施形態では、テキスト修正部104が薬剤検索用辞書202を参照して音声認識の結果(第1のテキスト)を修正する態様について説明したが、本発明の識別支援システムでは、識別情報と外観情報とを教師データとした機械学習により構成された学習済みモデルを用いて第1のテキストを生成してもよい。このような学習済みモデルは、自然言語処理のアルゴリズムに基づいて、RNN(Recurrent Neural Network:ニューラルネットワークの一態様)により構成することができる。RNNは入力層、隠れ層、及び出力層を有し、隠れ層が現在の時刻(時刻t)の状態を示す第1の隠れ層と過去の時刻(時刻t-1)の状態を示す第2の隠れ層とを有する点で他のニューラルネットワーク(畳み込みニューラルネットワーク等)と異なる。RNNによる学習済みモデルは、時刻t-1における隠れ層の状態を保持して次の時刻tの入力に使うことにより、自然言語のように時系列的に入力される情報の過去の履歴(本実施形態では、音声認識における文字や単語の前後関係)を利用した推定を行うことができる。なお、学習済みモデルは、RNNの一種であるLSTM(Long Short-Term Memory)を用いて構成されていてもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る識別支援システム20(識別支援システム)の構成を示す図である。識別支援システム20は全体として第1の実施形態に係る識別支援システム10と同様の機能を有するが、システムが識別支援クライアント11(識別支援クライアント)と識別支援サーバ30(識別支援サーバ)とを含んで構成される点で第1の実施形態と異なる。なお、識別支援システム20に関し、第1の実施形態に係る識別支援システム10と共通する構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
<識別支援クライアントの構成>
識別支援クライアント11は処理部101と、記憶部201と、表示部300と、操作部400を備え、後述するように音声認識や識別支援サーバ30との間のデータ送受信、結果表示等を行う。識別支援クライアント11はパーソナルコンピュータ等のコンピュータやスマートフォン等の携帯端末を用いて実現することができ、タッチパネル型のモニタを用いることにより表示部300と操作部400とを一体として構成してもよい。
【0051】
図6は処理部101の機能構成を示す図である。処理部101は、音声認識部102(音声認識部)と、テキスト修正部104(テキスト修正部)と、出力部108(出力部)と、クライアント側送信部112(クライアント側送信部)と、クライアント側受信部114(クライアント側送信部)と、を備える。これら各部は、処理部100について上述したのと同様に各種のプロセッサや電気回路を用いて実現することができ、プロセッサあるいは電気回路がソフトウェア(プログラム)を実行する際は、ROM、RAM等が用いられる。
【0052】
図7は記憶部201の構成を示す図である。記憶部201には、薬剤検索用辞書202(図3参照)と追加学習用データ208(図3参照)が記憶される。
【0053】
<識別支援サーバの構成>
識別支援サーバ30はクラウドCL(図5参照)上のサーバであり、サーバ本体500と記憶部510(薬剤データベース)とを有する。サーバ本体500は、図8に示すように検索部502(検索部)と、サーバ側出力部504(サーバ側出力部)と、サーバ側送信部506(サーバ側送信部)と、サーバ側受信部508(サーバ側受信部)と、を備える。図9に示すように、記憶部510には薬剤マスタ512(図3の薬剤マスタ204と同様)及び薬剤画像(図3の薬剤画像206と同様)が記憶される。
【0054】
<識別支援方法の処理>
図10~12は第2の実施形態に係る識別支援方法の処理を示すフローチャートである。これら図の左側は識別支援クライアント11における処理を示し、右側は識別支援サーバ30における処理を示す。識別支援クライアント11の音声認識部102及びテキスト修正部104は、第1の実施形態について上述したステップS100,S110と同様にステップS200,S210の処理(音声認識による第1のテキストの生成、テキスト修正による第2のテキストの生成;音声認識工程、テキスト修正工程)を実行する。テキスト修正部104は、第1の実施形態と同様に学習済みモデルを用いてテキストを生成してもよい。クライアント側送信部112は薬剤についてのテキスト情報(検索用テキスト;第2のテキスト)を識別支援サーバ30に送信し、識別支援サーバ30のサーバ側受信部508(サーバ側受信部)はそのテキスト情報を受信する(ステップS400)。
【0055】
検索部502は、上述したステップS120~S140と同様に、受信したテキスト情報をキーワードとして薬剤マスタ512(薬剤データベース)を検索して候補薬剤についての識別情報及び画像を取得する(ステップS410~S430;検索工程、正規化工程、部分一致検索工程、あいまい検索工程)。サーバ側送信部506は検索結果(識別情報及び画像)を識別支援クライアント11に送信し(ステップS440)、クライアント側受信部114が検索結果を受信して(ステップS230)、出力部108が候補薬剤についての識別情報及び画像をモニタ310(表示装置)に表示させる(ステップS240:出力工程)。識別支援クライアント11は、上述したステップS160~S190と同様に、全薬剤についての処理が終了するまで(ステップS260でYESになるまで)ステップS200~S250の処理を繰り返す。
【0056】
なお、第2の実施形態では、識別支援クライアント11のシステム負荷を考慮して識別支援サーバ30の記憶部510が薬剤の画像(薬剤画像514)を記憶する場合について説明しているが、識別支援クライアント11の処理能力が十分である場合は、識別支援クライアント11の記憶部201が薬剤の画像を記憶してもよい。
【0057】
出力部108は、検索結果のファイル出力指示があったか否かを判断し(ステップS270:ファイル出力工程)、ファイル出力指示があった場合、クライアント側送信部112が識別支援サーバ30にファイル出力要求を送信して(ステップS280:ファイル出力工程)、サーバ側受信部508がそのファイル出力要求を受信する(ステップS450)。サーバ側出力部504は、ファイル出力要求の受信に応じて、候補薬剤の中から選択された薬剤についての識別情報(薬剤のコード及び/または名称を含む情報)をファイルとして出力し(ステップS460:ファイル出力工程)、サーバ側送信部506はファイルの格納先を示すURL(Uniform Resource Locator)を識別支援クライアント11に送信する(ステップS470)。ファイルの格納先は記憶部510でもよいし、その他の記憶装置でもよい。クライアント側受信部114がそのURLを受信して、出力部108が指定されたURLからファイルをダウンロードする(ステップS300)。出力部108は、ダウンロードしたファイルを記憶部200に記憶してもよい。
【0058】
識別支援クライアント11のテキスト修正部104は、ステップS190と同様に追加学習用データを生成する(ステップS310)。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態に係る識別支援システム及び識別支援方法においても、第1の実施形態と同様にユーザは正確かつ容易に薬剤の識別を行うことができる。
【0060】
以上で本発明の実施形態及び他の例に関して説明してきたが、本発明は上述した態様に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 識別支援システム
11 識別支援クライアント
20 識別支援システム
30 識別支援サーバ
100 処理部
101 処理部
102 音声認識部
104 テキスト修正部
106 検索部
108 出力部
110 通信制御部
112 クライアント側送信部
114 クライアント側受信部
200 記憶部
201 記憶部
202 薬剤検索用辞書
204 薬剤マスタ
206 薬剤画像
208 追加学習用データ
300 表示部
310 モニタ
400 操作部
410 キーボード
420 マウス
430 マイク
500 サーバ本体
502 検索部
504 サーバ側出力部
506 サーバ側送信部
508 サーバ側受信部
510 記憶部
512 薬剤マスタ
514 薬剤画像
CL クラウド
S100~S470 識別支援方法の各ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12