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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】蓄電池管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230213BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230213BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230213BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20230213BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G01R31/392
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H01M10/44 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021545005
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035541
(87)【国際公開番号】W WO2021048920
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】五反田 武志
(72)【発明者】
【氏名】布施 和人
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】森田 朋和
(72)【発明者】
【氏名】戸張 智博
(72)【発明者】
【氏名】高田 光則
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026142(WO,A1)
【文献】特開2005-43059(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147194(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/106754(WO,A1)
【文献】特開2019-78771(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132586(WO,A1)
【文献】特開2019-70621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
G01R 31/36
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池の充放電を制御する制御装置と、
前記蓄電池の劣化状態であるSOHを管理し、前記蓄電池の充電スケジュールを算定する管理装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記蓄電池の状態情報を取得する状態情報取得部と、
前記状態情報を前記管理装置に送信する状態情報送信部と、
前記蓄電池のSOHを推定する第1推定部と、
前記第1推定部により推定したSOHを前記管理装置に送信するSOH送信部と、
を有し、
前記管理装置は、
前記状態情報から前記第1推定部よりも高い精度でSOHを推定する第2推定部と、
前記第2推定部により得たSOH又は前記第1推定部により得た最新のSOHを用いて前記充電スケジュールを算定する充電スケジュール算定部と、
を有し、
前記SOH送信部が前記第1推定部により推定されたSOHを送信する頻度が、前記第2推定部によりSOHを推定してから時間が経過するとともに増加する、
蓄電池管理システム。
【請求項2】
前記状態情報は、前記蓄電池の充電曲線であり、
前記第2推定部は、前記充電曲線から充電曲線解析法によりSOHを推定する、
請求項1記載の蓄電池管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記第2推定部により推定したSOHを前記制御装置に送信するSOH送信部を有し、
前記制御装置は、
前記第1推定部が、前記管理装置の前記SOH送信部から受信したSOHを基準として前記蓄電池のSOHを推定する、
請求項1又は2記載の蓄電池管理システム。
【請求項4】
前記充電スケジュール算定部は、前記第2推定部により推定されたSOHと充電レートとから前記蓄電池の充電スケジュールを算定する、
請求項1~3の何れかに記載の蓄電池管理システム。
【請求項5】
前記蓄電池の状態情報は、前記蓄電池の放電量を含み、
前記管理装置は、
前記制御装置を制御する制御信号を生成する状態情報送信指令部を有し、
前記状態情報送信指令部は、前記放電量が第1の閾値よりも大きい場合に、前記状態情報として前記蓄電池の充電曲線を前記状態情報取得部に取得させる制御信号を、前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、
前記制御信号を受信した前記状態情報取得部により前記充電曲線を取得し、当該取得した前記充電曲線を前記状態情報送信部により前記管理装置に送信する、
請求項1~4の何れかに記載の蓄電池管理システム。
【請求項6】
前記状態情報送信指令部は、前記放電量が前記第1の閾値より小さい第2の閾値より小さい場合には、前記制御信号を前記制御装置に送信しない、
請求項5記載の蓄電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の自由化や技術革新によって、点在する再生可能エネルギー発電や蓄電池などの設備と電力需要とを管理して、一つの発電所のように機能させるいわゆる仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)が注目されている。このVPPにおいて、アグリゲータが複数の需要家の太陽光発電等の発電設備、蓄電池などのエネルギーリソースを統括管理、制御し、これらの発電設備、蓄電池により得られる電力量を束ねて送配電事業者や小売電気事業者などの事業者と電力取引を行う。
【0003】
このアグリゲータは、具体的には、リソースアグリゲータとアグリゲーションコーディネータとに大別される。リソースアグリゲータは、複数の需要家と直接、当該需要家が有するエネルギーリソースの制御に関する契約を結び、再生可能エネルギー発電設備の統合管理、蓄電池や空調などに対する遠隔制御、統合管理を行う事業者である。アグリゲーションコーディネータは、リソースアグリゲータが制御して得た電力量を束ね、送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-171620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のVPPにおいて、蓄電池は電力需給の調整をする上で重要な役割を果たす設備であり、その使用態様も多種多様である。蓄電池は、使用により劣化することから、蓄電池の劣化状態も多種多様であり、単純に使用年数から蓄電池の劣化状態を把握することができない。そのため、蓄電池の状態が正確に把握できず、蓄電池の運用効率が悪化する場合があった。
【0006】
本発明の実施形態は、上記のような問題を解決するものであり、蓄電池の運用効率を向上させることのできる蓄電池管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本実施形態の蓄電池管理システムは、蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する制御装置と、前記蓄電池の劣化状態であるSOHを管理し、前記蓄電池の充電スケジュールを算定する管理装置と、を備え、前記制御装置は、前記蓄電池の状態情報を取得する状態情報取得部と、前記状態情報を前記管理装置に送信する状態情報送信部と、前記蓄電池のSOHを推定する第1推定部と、前記第1推定部により推定したSOHを前記管理装置に送信するSOH送信部と、を有し、前記管理装置は、前記状態情報から前記第1推定部よりも高い精度でSOHを推定する第2推定部と、前記第2推定部により得たSOH又は前記第1推定部により得た最新のSOHを用いて前記充電スケジュールを算定する充電スケジュール算定部と、を有し、前記SOH送信部が前記第1推定部により推定されたSOHを送信する頻度が、前記第2推定部によりSOHを推定してから時間が経過するとともに増加することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る蓄電池管理システムの構成を示す図である。
図2】実施形態に係る蓄電池管理システムの機能ブロック図である。
図3】実施形態に係る蓄電池管理システムのシーケンス図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、本実施形態に係る蓄電池管理システムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
[構成]
図1は、実施形態に係る蓄電池管理システムの構成を示す図である。図2は、実施形態に係る蓄電池管理システムの機能ブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る蓄電池管理システムは、蓄電池1、制御装置2、及び管理装置3を備え、制御装置2により蓄電池1の状態を監視及び制御し、管理装置3により蓄電池1の劣化状態を管理し、当該蓄電池1の運用計画を算定する。制御装置2と管理装置3とは、ネットワークNを介して接続されており、各装置2、3が有する情報及び信号を互いに送受信可能に構成されている。
【0012】
蓄電池1は、例えば、需要家が有するリチウムイオン電池などの二次電池である。蓄電池1は、例えば需要家の住宅に設けられ、系統電源、需要家の太陽光発電設備などの電源と、需要家の照明、空調などの負荷と接続されており、電源から電力供給を受けて充電し、蓄電した電力を負荷に供給する。
【0013】
図2に示すように、制御装置2は、所謂バッテリーマネジメントユニット(BMU)を含み構成され、蓄電池1の状態を監視し、充放電を制御する。具体的には、制御装置2は、状態情報取得部21、状態情報送信部22、充放電制御部23、第1推定部24、SOH送信部25、及び記憶部26を有する。
【0014】
状態情報取得部21は、蓄電池1の状態情報を取得する。例えば、蓄電池1には、電圧センサ、電流センサ、温度センサが設けられており、状態情報取得部21は、これらのセンサにより測定された、各時刻における蓄電池1の電圧、電流、温度を取得する。状態情報は、例えば、蓄電池1の充電曲線、放電曲線、放電量である。蓄電池1は複数の単電池が直列または並列に接続されて構成されたものであり、状態情報取得部21は蓄電池1の全体の電圧に加え、直列に接続された各単電池の電圧を取得してもよい。充電曲線は、横軸が充電量、縦軸が蓄電池1の電圧又は蓄電池1を構成する直列単位の電圧であり、状態情報取得部21が、充電中に測定した蓄電池1の電圧、電流により求める。充電中の各時刻までの電流値を積算し求めた充電容量に対し蓄電池1の電圧をプロットすることで蓄電池1の充電曲線が得られる。放電曲線は、横軸が放電量、縦軸が蓄電池1の電圧又は蓄電池1を構成する直列単位の電圧であり、状態情報取得部21が、放電中に測定した蓄電池1の電圧、電流により求める。放電中の各時刻までの電流値を積算し求めた放電容量に対し蓄電池1の電圧をプロットすることで蓄電池1の放電曲線が得られる。放電量は、蓄電池1が放電した量であり、放電中に測定した蓄電池1の電流値を積算することにより得ることができる。
【0015】
状態情報送信部22は、状態情報取得部21により取得した状態情報を、管理装置3に送信する。状態情報送信部22は、ネットワークを介して有線又は無線により接続されている。状態情報送信部22は、例えば、CPU、ネットワークアダプタを含み構成される。
【0016】
充放電制御部23は、例えばCPUを含み構成され、蓄電池1の充放電を制御する。例えば、充放電制御部23は、状態情報取得部21により取得した状態情報を監視し、過電圧、急激な温度上昇が生じないように充放電を制御する。
【0017】
充放電制御部23は、管理装置3から受信した後述の充電スケジュールに従って蓄電池1の充電を制御する。また、充放電制御部23は、管理装置3が受信した後述の充電レートに従って蓄電池1の充電を制御しても良い。
【0018】
第1推定部24は、例えばCPUを含み構成され、蓄電池1の劣化状態であるSOH(States of Health)を推定する。この推定方法は、管理装置3の後述する第2推定部31による推定方法よりも簡易的かつ低精度でSOHを推定する方法を用いることができ、例えば、過渡的差電圧法、放電微分曲線解析法、充放電履歴に基づく推定法、交流インピーダンス法、交流内部抵抗法、直流充放電測定法などを用いることができる。
【0019】
過渡的差電圧法は、充電上限電圧と放電開始後一定時間経過後の放電電圧との差分である差電圧を計測し、差電圧と電池容量および充放電効率との相関に基づき、充電容量、充放電効率を算出する。放電微分曲線解析法は、定電流での満充電時の放電曲線(電圧-放電量の曲線)の微分曲線(dV/dQ曲線など)の形状から、電池内部の劣化状態を推定する。充放電履歴に基づく推定法は、蓄電池の環境条件と、充電、放電等の使用条件に関する網羅的なデータを蓄積し、電池の劣化状態を推定する。交流インピーダンス法は、蓄電池1に対して様々な周波数の交流電流を印加し、その応答電流の解析から、蓄電池1内部のインピーダンス特性を求め、電池内部の劣化状態を推定する。交流内部抵抗法は、交流インピーダンス法におけるCole-Coleプロット図上で、縦軸(インピーダンス虚数成分)がほぼ0になる1kHzの周波数におけるインピーダンス(横軸(インピーダンス実数成分))の値を測定し、蓄電池容量との相関から、容量を推定する。直流充放電測定法は、充放電を行い、直接電池容量を測定する。内部抵抗については、一定時間のパルス電流を流して、電圧変化を計測し、内部抵抗を算出する。
【0020】
また、第1推定部24は、後述の第2推定部31により推定されたSOHを基準とすることもできる。つまり、制御装置2は、第1推定部24により推定されるSOHを、第2推定部31により推定されたSOHに置き換えることができる。
【0021】
SOH送信部25は、第1推定部24により推定したSOHを管理装置3に送信する。このSOH送信部25は、第1推定部24により想定されたSOHを送信する頻度を、第2推定部31によりSOHを推定してから時間が経過するとともに増加させるように送信する。換言すれば、第2推定部31によるSOHの推定周期に対して、SOH送信部25による送信周期を経時的に短くする。例えば、第2推定部31による推定周期が6日である場合、SOH送信部25による送信周期を3日、2日、1日と順に短くする。なお、第1推定部24によるSOHの推定周期も経時的に短くし、例えば3日、2日、1日と順に短くする。SOH送信部25は、例えば、CPU、ネットワークアダプタを含み構成される。
【0022】
記憶部26は、メモリ、HDD、SSDなどの記録媒体である。記憶部26は、演算に必要なプログラム、データベースを記憶しており、また、各種情報を記憶する。例えば、記憶部26は、状態情報取得部21により取得した状態情報を記憶する。また、管理装置3から受信した第2推定部31により得た蓄電池1のSOH、及び、第1推定部24により得た蓄電池1のSOHを記憶する。
【0023】
管理装置3は、蓄電池1の劣化状態であるSOHを管理し、当該蓄電池1の充電スケジュールを算定する。管理装置3は、例えば、ネットワークを介して制御装置2と接続されたサーバである。
【0024】
管理装置3は、第2推定部31、記憶部32、充電スケジュール算定部33、SOH送信部34、充電スケジュール送信部35、及び状態情報送信指令部36を有する。
【0025】
第2推定部31は、例えばCPUを含み構成され、制御装置2から受信した状態情報から第1推定部24よりも、高い精度でSOHを推定する。具体的には、第2推定部31は、解析部とSOH算出部とを有する。解析部は、蓄電池1の内部抵抗又は容量を算出する。解析部は、状態情報が充電曲線である場合、充電曲線解析法により、蓄電池1の内部抵抗又は容量を算出する。SOH算出部は、解析部により算出した算出値と初期状態における蓄電池1の内部抵抗又は容量とから蓄電池1のSOHを算出する。具体的には、SOHは、(現在の内部抵抗/初期状態の内部抵抗)×100、又は、(現在の容量/初期状態の容量)×100で定義される。なお、充電曲線解析法は、電圧、電流、時間などの充電曲線データから、電池内部の状態を示す各種パラメータを推定し、容量、内部抵抗など、電池の劣化進行を示す電池状態値を算出する手法である。第2推定部31は、内部抵抗又は容量の他、SOHから充電レートを算出しても良い。なお、放電曲線からSOHを推定する手法も、上記の充電曲線解析法と原理的には同様である。
【0026】
記憶部32は、メモリ、HDD、SSDなどの記録媒体である。記憶部32は、演算に必要なプログラム、データベース、各種情報が記憶されている。例えば、記憶部32には、第2推定部31でSOHの算出に用いられる蓄電池1の初期状態における内部抵抗及び容量が予め記憶されている。
【0027】
記憶部32は、各種情報を記憶する。例えば、記憶部32は、第1推定部24及び第2推定部31により得られたSOHを記憶する。すなわち、記憶部32に蓄電池1の最新のSOHを記憶することを通じて管理装置3は蓄電池1のSOHを管理する。例えば、記憶部32は、第2推定部31により推定されたSOHを記憶するが、第1推定部24により推定された最新のSOHを得た場合に、更新により最新のSOHに置き換えることができる。
【0028】
充電スケジュール算定部33は、例えばCPUを含み構成され、蓄電池1の最新のSOHを、正しいものとして用いて、当該蓄電池1の充電スケジュールを算定する。充電スケジュール算定部33は、更に充電レート、蓄電池1の使用履歴の何れか、電気料金の安い時間帯、高い時間帯又はこれらの何れか1つ以上を加味して充電スケジュールを算定しても良い。例えば、蓄電池1の負担を低減するために、充電スケジュール算定部33は、充電量が空又は空に近い状態から蓄電するときは、低レートで充電し、所定の充電量になったら充電レートを上げる充電スケジュールを算定する。また、蓄電池1が劣化してきた(SOHが所定の閾値以下になった)場合には、低レートの充電スケジュールを算定する。
【0029】
SOH送信部34は、第2推定部31により推定したSOHを制御装置2に送信する。充電スケジュール送信部35は、充電スケジュール算定部33により算定した充電スケジュールを制御装置2に送信する。充電スケジュール送信部35は、充電スケジュールだけでなく、第2推定部31により得た充電レートも併せて送信しても良い。SOH送信部34及び充電スケジュール送信部35は、例えばCPU、ネットワークアダプタを含み構成される。
【0030】
状態情報送信指令部36は、例えばCPU、ネットワークアダプタを含み構成され、制御装置2を制御する制御信号を生成し、当該制御装置2に当該制御信号を送信する。この制御信号は、制御装置2に蓄電池1の状態情報を取得し送信させる信号である。具体的には、この制御信号は、状態情報取得部21に蓄電池1の状態情報を取得させ、取得した状態情報を状態情報送信部22に管理装置3へ送信させる。ここで、状態情報は、例えば、蓄電池1の充電曲線、放電量、充電量の履歴、電池残量の履歴である。
【0031】
例えば、状態情報送信指令部36は、管理装置3が蓄電池1の充電曲線を得るために、蓄電池1の電池残量の所定期間の履歴を制御装置2に送信させる。この所定期間は、蓄電池1の初期状態からの期間であっても良いし、直近の一定期間であっても良い。電池残量が極小値となる周期的なパターンが含まれる期間であることが好ましい。
【0032】
状態情報送信指令部36は、得られた電池残量の履歴から所定期間(例えば1日)において最も電池残量が少ない時間帯から次に最も電池残量が少なくなる時間帯を推定し、当該時間帯に制御信号を生成及び送信する。好ましくは、状態情報送信指令部36は、電池残量の履歴から蓄電池1の電池残量が次に空又は空に近い状態になる日時を予測し、当該日時から測定を開始した充電曲線が得られるように、制御信号を生成及び送信する。例えば、状態情報送信指令部36は、受信した電池残量の履歴から、電池残量が周期的に極小値となるパターンを特定し、当該パターンから次回電池残量が極小値となる日時を予測する。蓄電池1が需要家の住宅に設置された電池である場合、状態情報送信指令部36は、需要家の生活サイクルにより蓄電池1の電池残量に周期的なパターンを認識することができる。
【0033】
また、状態情報送信指令部36は、蓄電池1の放電量が第1の閾値よりも大きい場合に、状態情報として蓄電池1の充電曲線を状態情報取得部21に取得させる制御信号を生成し、制御装置2に送信するようにしても良い。状態情報送信指令部36は、蓄電池1の放電量が第1の閾値より小さい第2の閾値より小さい場合には、制御信号を制御装置2に送信しないようにしても良い。第1の閾値は、例えば、蓄電池1の放電により劣化が進行していると推定される放電量とする。第2の閾値は、例えば、蓄電池1の劣化の進行が大幅に進行していないと推定される放電量とする。
【0034】
[動作]
実施形態に係る蓄電池管理システムの動作を、図3を用いて説明する。図3は、実施形態に係る蓄電池管理システムのシーケンス図の一例である。
【0035】
図3に示すように、まず、管理装置3は、状態情報送信指令部36により、制御装置2に状態情報の取得及び送信をさせる制御信号を制御装置2に送信する(ステップS01)。この状態情報には、蓄電池1の充電曲線、使用履歴(充電量、放電量、電池残量の履歴)が含まれる。
【0036】
制御装置2は、当該制御信号を受信すると、状態情報取得部21により、充電曲線及び使用履歴を含む状態情報を取得し(ステップS02)、取得した状態情報を状態情報送信部22により管理装置3に送信する(ステップS03)。
【0037】
管理装置3は、受信した状態情報から蓄電池1のSOHを算出する(ステップS04)。具体的には、第2推定部31は、解析部によって充電曲線から例えば充電曲線解析法により、蓄電池1の内部抵抗又は容量を算出し、算出された内部抵抗又は容量と、記憶部32に記憶された蓄電池1の初期状態における内部抵抗又は容量とからSOH算出部により現在のSOHを算出する。この算出されたSOHは、記憶部32に記憶される。換言すると、記憶部32に記憶された蓄電池1のSOHが更新される。
【0038】
また、充電スケジュール算定部33により、蓄電池1の最新のSOHを用いて蓄電池1の充電スケジュールを算定する(ステップS05)。ここでの最新のSOHとは、ステップS04で第2推定部31により得たSOHである。充電スケジュールの算定は、一定期間まとめて行っても良いし、例えば1日毎など短期間毎に行っても良い。
【0039】
さらに、管理装置3は、状態情報送信指令部36により、受信した蓄電池1の使用履歴から、次回の充電曲線、使用履歴を含む状態情報を取得する日時を決定する(ステップS06)。例えば、状態情報送信指令部36は、蓄電池1の使用履歴から、電池残量が周期的に極小値となる日時を特定し、極小値間の周期と最新の極小値となる日とから次回の極小値となる日時を特定し、当該日時を状態情報を取得する日時とする。
【0040】
次に、管理装置3は、SOH送信部34により、第2推定部31により得たSOHを制御装置2に送信し、充電スケジュール送信部35により、充電スケジュール算定部33により得た充電スケジュールを制御装置2に送信する(ステップS07)。
【0041】
制御装置2は、管理装置3からSOH及び充電スケジュールを受信すると、当該SOHを記憶部26に記憶し(ステップS08)、当該充電スケジュールに従って充放電制御部23により蓄電池1を充電する(ステップS09)。
【0042】
一方、制御装置2は、第1推定部24により、蓄電池1のSOHを算出し(ステップS10)、算出したSOHを記憶部26に記憶する(ステップS11)とともにSOH送信部25により管理装置3に送信する(ステップS12)。この算出、記憶、送信は、時間が経過するにつれて頻度を高くする。換言すれば、管理装置3から状態情報の取得及び送信を指令する制御信号の受信間隔に対して、次に制御信号を受信する日時が近づくにつれて、第1推定部24、SOH送信部25、記憶部26によるSOHの算出、記憶、送信の周期を短くする。例えば、制御信号の受信間隔が7日であるとすると、第1推定部24、SOH送信部25、記憶部26は、3日に1回SOHの算出、記憶、送信を行い、次に2日に1回SOHの算出、記憶、送信を行い、さらに1日に1回SOHの算出、記憶、送信を行う。
【0043】
管理装置3は、制御装置2から第1推定部24によるSOHを受信すると、その度に記憶部32に記憶する(ステップS13)。すなわち、管理装置3は、蓄電池1のSOHを受信した最新の当該SOHに更新する。例えば、第1推定部24で得たSOHを最初に記憶する場合は、記憶部32には第2推定部31により得たSOHが記憶されており、このSOHを第1推定部24により得たSOHに更新する。
【0044】
そして、最新のSOHを用いて充電スケジュール算定部33により充電スケジュールを算定し(ステップS14)、当該充電スケジュールを充電スケジュール送信部35により制御装置2に送信する(ステップS15)。
【0045】
以上のように、次に制御信号を送信する日時まで、徐々に頻度を高くして第1推定部24、SOH送信部25によるSOHの算出、送信を繰り返し、充電スケジュール算定部33による充電スケジュールの算定及び送信を繰り返す。そして、次に制御信号を送信する日時になると、管理装置3は、状態情報送信指令部36により制御信号を制御装置2に送信し、ステップS02~S15を繰り返す。蓄電池管理システムによる蓄電池1の管理が不要になったら、又は、メンテナンスを要したら、システムの動作を終了する。
【0046】
[作用・効果]
(1)本実施形態の蓄電池管理システムは、蓄電池1と、蓄電池1の充放電を制御する制御装置2と、蓄電池1の劣化状態であるSOHを管理し、蓄電池1の充電スケジュールを算定する管理装置3と、を備え、制御装置2は、蓄電池1の状態情報を取得する状態情報取得部21と、状態情報を管理装置3に送信する状態情報送信部22と、蓄電池1のSOHを推定する第1推定部24と、第1推定部24により推定したSOHを管理装置3に送信するSOH送信部25と、を有し、管理装置3は、状態情報から第1推定部24よりも高い精度でSOHを推定する第2推定部31と、第2推定部31により得たSOH又は第1推定部24により得た最新のSOHを用いて充電スケジュールを算定する充電スケジュール算定部33と、を有し、SOH送信部25が第1推定部24により推定されたSOHを送信する頻度が、第2推定部31によりSOHを推定してから時間が経過するとともに増加するようにした。
【0047】
これにより、蓄電池1の正確な劣化状態を把握し、当該劣化状態を加味して充電スケジュールを算定することができ、蓄電池1の運用効率を向上させることができる。
【0048】
例えば、本蓄電管理システムが、仮想発電所(VPP)に適用される場合、管理装置3は、リソースアグリゲータが有するサーバである。リソースアグリゲータは、需要家とエネルギーリソースの制御に関する契約を結び、再生可能エネルギー発電設備の統合管理、蓄電池や空調などに対する遠隔制御、統合管理を行う。
【0049】
ここで、リソースアグリゲータが蓄電池1の劣化状態を正確に把握できないと、蓄電池1の運用効率が悪化し、リソースアグリゲータが需要家や、送配電事業者、小売電気事業者などの事業者へのサービスが低下する虞がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、管理装置3が、推定精度が高い推定方法を採用した第2推定部31のSOHと、推定精度が低いものの簡易的に推定できる方法を採用した第1推定部24のSOHとを組み合わせるとともに、SOH送信部25が第1推定部24により推定されたSOHを送信する頻度が、第2推定部31によりSOHを推定してから時間が経過するとともに増加するようにした。
【0051】
これにより、第2推定部31によるSOHの推定の後、蓄電池1の使用により劣化状態が変化しても、第1推定部24の推定周期を徐々に短くするので、蓄電池1の最新のSOHを得ることができる。例えば、第2推定部31により得たSOHだけで充電スケジュールを算定しようとしても、状態情報の取得など第2推定部31によって次にSOHを推定するまでに時間を要し、その間に蓄電池1が使用により劣化が進行する。そうすると、充電スケジュールを算定するために管理装置3で管理しているSOHと、実際の蓄電池1のSOHとが乖離し、蓄電池1の運用効率が低下した充電スケジュールが算定される場合がある。そこで、本実施形態では、第2推定部31の推定方法が簡易的でなかったとしても、時間の経過とともに、第1推定部24の推定周期及びSOH送信部25によるSOHの送信周期を徐々に短くしているので、蓄電池1のより正確な劣化状態を管理装置3が把握することができる。そのため、より正確な劣化状態を加味して充電スケジュールを算定することで蓄電池1の運用効率を向上させることができる。その結果、リソースアグリゲータが提供するサービスの質を向上させることができる。
【0052】
(2)状態情報は、蓄電池1の充電曲線であり、第2推定部31は、充電曲線から充電曲線解析法によりSOHを推定するようにした。これにより、管理装置3において、蓄電池1のSOHを高精度に推定することができ、蓄電池1の状態に合った充電スケジュールを算定することができる。
【0053】
(3)管理装置3は、第2推定部31により推定したSOHを制御装置2に送信するSOH送信部25を有し、制御装置2は、第1推定部24が、管理装置3のSOH送信部25から受信したSOHを基準として蓄電池1のSOHを推定するようにした。これにより、制御装置2で推定するSOHの推定精度を高めることができる。
【0054】
(4)充電スケジュール算定部33は、第2推定部31により推定されたSOHと充電レートとから蓄電池1の充電スケジュールを算定するようにした。これにより、蓄電池1への負担を軽減することができる。例えば、充電スケジュール算定部33は、充電量が空又は空に近い状態から蓄電するときは、低レートで充電し、所定の充電量になったら充電レートを上げる充電スケジュールを算定することで、蓄電池1の寿命を延ばすことができる。また、充電スケジュール算定部33は、充電レートだけでなく、電気料金も加味しても良い。電気料金が安い時間帯に蓄電池1を充電し、電気料金が高い時間帯に蓄電池1を放電することで、蓄電池1の寿命を延ばすとともに、需要家が支払う電気代を安くすることができる。
【0055】
(5)蓄電池1の状態情報は、蓄電池1の放電量を含み、管理装置3は、制御装置2を制御する制御信号を生成する状態情報送信指令部36を有し、状態情報送信指令部36は、放電量が第1の閾値よりも大きい場合に、状態情報として蓄電池1の充電曲線を状態情報取得部21に取得させる制御信号を、制御装置2に送信し、制御装置2は、制御信号を受信した状態情報取得部21により充電曲線を取得し、当該取得した充電曲線を状態情報送信部22により管理装置3に送信するようにした。
【0056】
これにより、管理装置3が蓄電池1の劣化状態を正確に把握することができる。すなわち、蓄電池1の放電量が第1の閾値より大きい場合、蓄電池1の劣化が進行していると推定されるので、SOHの値に変更が生じていると考えられるからであり、この場合に管理装置3が充電曲線を受信することで、蓄電池1の正確なSOHの把握に繋げることができる。
【0057】
(6)状態情報送信指令部36は、蓄電池1の放電量が第1の閾値よりも大きい場合に、状態情報として蓄電池1の充電曲線を状態情報取得部21に取得させる制御信号を生成し、制御装置2に送信する。状態情報送信指令部36は、蓄電池1の放電量が第1の閾値より小さい第2の閾値より小さい場合には、制御信号を制御装置2に送信しないようにした。
【0058】
これにより、制御装置2の管理装置3への状態情報の通信量を抑えることができる。すなわち、蓄電池1の放電量が、第1の閾値より小さな第2の閾値より小さい場合は、蓄電池1があまり使用されていない状態であるので、劣化の進行が、前回第2推定部31により充電曲線からSOHを推定した時点からあまり進んでいないと推定される。そのため、管理装置3がSOHを管理する必要性が薄く、管理装置3による制御装置2への充電曲線の取得及び送信の指令を見送る。その結果、制御装置2の管理装置3への状態情報の通信量を抑えることができる。
【0059】
[他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、上記実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0060】
(1)上記実施形態では、管理装置3は、リソースアグリゲータの機能を実行するサーバとして例示したが、管理装置3は、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)に含まれていても良い。また、HEMSが蓄電池1の状態情報を取得し、管理装置3に送信するようにしても良い。すなわち、制御装置2又はその機能がHEMSの構成に含まれていても良い。
【0061】
(2)上記実施形態では、蓄電池1のSOHの推定は、管理装置3の第2推定部31だけでなく、制御装置2の第1推定部24でも行ったが、必ずしも第1推定部24による推定はなくても良い。第1推定部24によるSOHの推定及び送信をしない場合、第2推定部31によるSOHの推定を繰り返しても良い。この場合、制御装置2による状態情報の取得及び送信の周期を蓄電池1の劣化進行に合わせて(例えば時間の経過に合わせて)徐々に短くし、第2推定部31による推定周期も徐々に短くするようにしても良い。
【0062】
(3)上記のように、第2推定部31による推定周期を徐々に短くするとともに、第1推定部24による推定周期及び第1推定部24により得たSOHの送信周期も徐々に短くしても良い。
【0063】
(4)上記実施形態では、管理装置3が、状態情報を充電曲線として第2推定部31によりSOHを推定したが、状態情報を放電曲線として第2推定部31によりSOHを推定しても良い。また、充電曲線及び放電曲線の両方を制御装置2に取得させ、第2推定部31により両方の曲線からSOHを推定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 蓄電池
2 制御装置
21 状態情報取得部
22 状態情報送信部
23 充放電制御部
24 第1推定部
25 SOH送信部
26 記憶部
3 管理装置
31 第2推定部
32 記憶部
33 充電スケジュール算定部
34 SOH送信部
35 充電スケジュール送信部
36 状態情報送信指令部
図1
図2
図3