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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20230213BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230213BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20230213BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20230213BHJP
   H04N 17/00 20060101ALI20230213BHJP
   H04N 17/02 20060101ALI20230213BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20230213BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
H04N23/60 500
G03B15/00 T
G03B15/02 G
G03B15/05
H04N17/00 200
H04N17/02 D
H04N23/56
H05K13/08 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021565206
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049403
(87)【国際公開番号】W WO2021124447
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大悟
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506060(JP,A)
【文献】特開2012-070046(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111331(WO,A1)
【文献】特開2012-198076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
G03B 15/00
G03B 15/02
G03B 15/05
H04N 17/00
H04N 17/02
H04N 23/56
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、
部品保持具を有する保持ヘッドと、
前記保持ヘッドを、少なくとも水平方向に移動させる移動装置と、
前記部品保持具に向けて波長の異なる複数の光源の光を照射可能な照明装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記部品保持具に対して波長の異なる光を照射し、前記部品保持具を撮像するように前記撮像装置に指示する撮像指示部と、
前記撮像指示部により撮像された、波長の異なる光毎の撮像画像のうちのいずれか1つの撮像画像に基づいて、当該撮像画像の分解能を演算する第1演算部と、
前記波長の異なる光毎の撮像画像に基づいて前記撮像装置のレンズ中心を演算する第2演算部と、
前記第2演算部により演算された前記レンズ中心と前記撮像装置のカメラ中心との差分を前記撮像装置の固有値として記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶された前記固有値に基づいて、前記波長の異なる光毎の撮像画像のうち、前記分解能の演算基とする撮像画像以外の撮像画像の分解能を演算するための係数値を演算する第3演算部と、
を有する
業機。
【請求項2】
前記制御装置はさらに、
前記第3演算部により演算された前記係数値を、前記第1演算部により演算された前記分解能に乗算することにより、前記分解能の演算基とする撮像画像以外の撮像画像の分解能を演算する第4演算部と、
前記第1及び第4演算部により演算された分解能に基づいて、対応する前記撮像画像を補正する補正部と、
を有する、
請求項に記載の作業機。
【請求項3】
前記部品保持具は、3つ以上の部品保持具を含み、
前記3つ以上の部品保持具は、前記保持ヘッドの下端面の外周部に等間隔で配置され、
前記第2演算部は、前記波長の異なる光毎の撮像画像にそれぞれ含まれる前記3つ以上の部品保持具のうち、少なくとも3つの部品保持具に基づいて、前記撮像装置のレンズ中心を演算する、
請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第2演算部は、前記波長の異なる光毎の撮像画像のそれぞれに対して、前記少なくとも3つの部品保持具の各先端を通る円の中心及び直径を演算し、演算した各円の中心及び直径に基づいて前記撮像装置のレンズ中心を演算する、
請求項に記載の作業機。
【請求項5】
前記第3演算部は、前記波長の異なる光毎の撮像画像のそれぞれに対して、前記少なくとも3つの部品保持具の各先端を、前記記憶部により記憶された前記固有値に基づいて前記カメラ中心から前記レンズ中心に変換し、変換後の前記少なくとも3つの部品保持具の各先端を通る各円の直径を演算し、演算した前記各円の直径に基づいて前記係数値を演算する、
請求項又はに記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基材に電子部品を実装する作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、撮像に使用する複数の光源から選んだ1以上の光源の光に対する分解能の適正値を求め、その1以上の光源の光を保持部材に保持された被写体に照射してカメラで撮像し、これにより得られた画像を処理する際に上記分解能の適正値を利用するようにした撮像ユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号 WO2019/111331 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の撮像ユニットでは、上記分解能の適正値は、撮像ユニットが取り付けられた部品実装機とは別のオフライン撮像機を用いて取得するので、オフライン撮像機を製造する手間とコストが増大する。
【0005】
そこで、本開示は、作業機とは別の装置を用いることなく、部品を撮像した画像に含まれる色収差を補正することが可能となる作業機を提供することを説明とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業機は、撮像装置と、部品保持具を有する保持ヘッドと、保持ヘッドを、少なくとも水平方向に移動させる移動装置と、部品保持具に向けて波長の異なる複数の光源の光を照射可能な照明装置と、制御装置と、を備え、制御装置は、部品保持具に対して波長の異なる光を照射し、部品保持具を撮像するように撮像装置に指示する撮像指示部と、撮像指示部により撮像された、波長の異なる光毎の撮像画像のうちのいずれか1つの撮像画像に基づいて、当該撮像画像の分解能を演算する第1演算部と、波長の異なる光毎の撮像画像に基づいて、撮像装置のレンズ中心を演算する第2演算部と、第2演算部により演算されたレンズ中心と撮像装置のカメラ中心との差分を撮像装置の固有値として記憶する記憶部と、記憶部により記憶された固有値に基づいて、波長の異なる光毎の撮像画像のうち、分解能の演算基とする撮像画像以外の撮像画像の分解能を演算するための係数値を演算する第3演算部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作業機とは別の装置を用いることなく、部品を撮像した画像に含まれる色収差を補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】部品実装機を示す斜視図である。
図2】部品実装機の部品装着装置を示す斜視図である。
図3】パーツカメラを示す概略図である。
図4】部品実装機の備える制御装置を示すブロック図である。
図5】軸上色収差((a))及び倍率色収差((b))を説明するための図である。
図6】ヘッドの下面((a))と、その撮像画像((b))を示す図である。
図7図4の制御装置が備えるコントローラが実行するキャリブレーション処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の一実施の形態に係る部品実装機10を示している。部品実装機10は、回路基材12に対する部品の実装作業を実行するための装置である。部品実装機10は、装置本体20、基材搬送保持装置22、部品装着装置24、マークカメラ26、パーツカメラ140、部品供給装置30、ばら部品供給装置32、制御装置34(図4参照)を備えている。なお、回路基材12として、回路基板、三次元構造の基材等が挙げられ、回路基板として、プリント配線板、プリント回路板等が挙げられる。
【0011】
装置本体20は、フレーム部40と、そのフレーム部40に上架されたビーム部42とによって構成されている。基材搬送保持装置22は、フレーム部40の前後方向の中央に配設されており、搬送装置50とクランプ装置52とを有している。搬送装置50は、回路基材12を搬送する装置であり、クランプ装置52は、回路基材12を保持する装置である。これにより、基材搬送保持装置22は、回路基材12を搬送するとともに、所定の位置において、回路基材12を固定的に保持する。
【0012】
なお、以下の説明において、回路基材12の搬送方向をX方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY方向と称し、鉛直方向をZ方向と称する。つまり、部品実装機10の幅方向は、X方向であり、前後方向は、Y方向である。
【0013】
部品装着装置24は、ビーム部42に配設されており、2台の作業ヘッド60,62と作業ヘッド移動装置64とを有している。各作業ヘッド60,62の下端面には、図2に示すように、吸着ノズル66が設けられており、その吸着ノズル66によって部品を吸着保持する。
【0014】
図6(a)は、一方の作業ヘッド、例えば作業ヘッド60の下端面を下方向から上方向に見た図を示している。作業ヘッド60の下端面61は、図6(a)に示すように円盤状に形成され、その外周部には、24個のホルダ65a~65xが等間隔に配置されている。ホルダ65a~65xはそれぞれ、1つの吸着ノズル66を保持するためのものである。なお、各ホルダ65には、第1番目のホルダから第24番目のホルダまで時計方向に65a~65xの符号が付けられている。同様に、各吸着ノズル66にも、第1番目のノズルから第24番目のノズルまで時計方向に66a~66xの符号が付けられている。但し、図6(a)には、ホルダ65と吸着ノズル66の符号として、本実施形態を説明をする上で必要なものについてのみ明示されている。
【0015】
下端面61全体と個々の各吸着ノズル66とは、図示しないモータを駆動源とする回転装置によってそれぞれ回転し、吸着保持した部品の外周部上の位置と、その位置での方向とを変更することができるように構成されている。
【0016】
なお、下端面61の中心には、基準マークMが付けられている。基準マークMは、4個の小円を含む円により形成されている。基準マークMの利用方法については、後述する。
【0017】
また、作業ヘッド移動装置64は、X方向移動装置68とY方向移動装置70とZ方向移動装置72とを有している。そして、X方向移動装置68とY方向移動装置70とによって、2台の作業ヘッド60,62は、一体的にフレーム部40上の任意の位置に移動することができる。また、各作業ヘッド60,62は、スライダ74,76に着脱可能に装着されており、Z方向移動装置72は、スライダ74,76を個別に上下方向に移動させる。つまり、作業ヘッド60,62は、Z方向移動装置72によって、個別に上下方向に移動することができる。
【0018】
マークカメラ26は、下方を向いた状態でスライダ74に取り付けられており、作業ヘッド60とともに、X方向,Y方向及びZ方向に移動することができる。これにより、マークカメラ26は、フレーム部40上の任意の位置を撮像する。パーツカメラ140は、図1に示すように、フレーム部40上の基材搬送保持装置22と部品供給装置30との間に、上を向いた状態で配設されている。これにより、パーツカメラ140は、作業ヘッド60,62の吸着ノズル66に保持された部品を撮像する。
【0019】
詳しくは、パーツカメラ140は、図3に示すように、照明部141と、撮像部149とを備えている。パーツカメラ140は、パーツカメラ140の上方が撮像範囲であり、吸着ノズル66a~66xに保持された部品を下方から撮像して撮像画像を生成する。
【0020】
照明部141は、撮像対象の部品に対して光を照射する。この照明部141は、ハウジング142と、連結部143と、落射光源144と、ハーフミラー146と、多段光源147と、を備えている。
【0021】
ハウジング142は、上面及び下面(底面)が八角形状に開口した椀状の部材である。ハウジング142は、下面の開口よりも上面の開口の方が大きく、下面から上面に向かって内部空間が大きくなる傾向の形状をしている。
【0022】
連結部143は、ハウジング142と撮像部149とを連結する筒状の部材である。
【0023】
落射光源144は、LED145を複数有している。
【0024】
ハーフミラー146は、落射光源144のLED145からの水平方向の光を上方に反射する。また、ハーフミラー146は、上方からの光については撮像部149に向けて透過する。
【0025】
多段光源147は、上段光源147aと、中段光源147bと、下段光源147cとを備えている。上段光源147aは、複数のLED148aを有し、中段光源147bは、複数のLED148bを有し、下段光源147cは、複数のLED148cを有している。LED148a~148cは、いずれも光軸149aから傾斜した方向に光を照射する。LED148a~148cの照射方向の光軸149aからの傾斜角は、LED148aが最も大きく、LED148aは、ほぼ水平方向に光を照射する。また、この傾斜角は、LED148cが最も小さくなっている。上段光源147aは、ほぼ水平方向に光を照射することから側射光源と称し、中段光源147bは、斜め上向きに光を照射することから傾斜光源と称する。
【0026】
本実施形態では、上段光源147aのLED148aは、青色LEDであり、中段光源147bのLED148b、下段光源147cのLED148c及び落射光源144のLED145が赤色LEDである。
【0027】
撮像部149は、受光した光に基づいて撮像画像を生成する。この撮像部149は、図示しないレンズなどの光学系及び撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device))を備えている。
【0028】
落射光源144及び多段光源147から発せられ、撮像対象の部品で反射した後の光がハーフミラー146を透過して撮像部149に到達すると、撮像部149は、この光を受光して撮像画像を生成する。
【0029】
部品供給装置30は、フレーム部40の前後方向での第1端部に配設されている。部品供給装置30は、トレイ型部品供給装置78とフィーダ型部品供給装置80(図4参照)とを有している。トレイ型部品供給装置78は、トレイ上に載置された状態の部品を供給する装置である。フィーダ型部品供給装置80は、テープフィーダ、スティックフィーダ(図示省略)によって部品を供給する装置である。
【0030】
ばら部品供給装置32は、フレーム部40の前後方向での第2端部に配設されている。ばら部品供給装置32は、ばらばらに散在された状態の複数の部品を整列させて、整列させた状態で部品を供給する装置である。つまり、任意の姿勢の複数の部品を、所定の姿勢に整列させて、所定の姿勢の部品を供給する装置である。なお、部品供給装置30及びばら部品供給装置32によって供給される部品として、電子回路部品,太陽電池の構成部品,パワーモジュールの構成部品等が挙げられる。また、電子回路部品には、リードを有する部品,リードを有さない部品等がある。
【0031】
制御装置34は、図4に示すように、コントローラ82、複数の駆動回路86、画像処理装置88を備えている。複数の駆動回路86は、上記搬送装置50、クランプ装置52、作業ヘッド60,62、作業ヘッド移動装置64、トレイ型部品供給装置78、フィーダ型部品供給装置80、ばら部品供給装置32に接続されている。コントローラ82は、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路86に接続されている。これにより、基材搬送保持装置22、部品装着装置24、及び部品供給装置30等の作動が、コントローラ82によって制御される。また、コントローラ82は、画像処理装置88にも接続されている。画像処理装置88は、マークカメラ26及びパーツカメラ140によって得られた撮像画像を処理するものであり、コントローラ82は、撮像画像から各種情報を取得する。
【0032】
次に、色収差について説明する。色収差には、軸上色収差と倍率色収差の2つがある。
【0033】
軸上色収差とは、光軸上では光軸に対して平行な光が波長による屈折率の違いにより像が一点に結ばれない現象をいう。具体的には、図5(a)に示すように、青色光であれば手前側、赤色光であれば奥手側に結像する。
【0034】
一方、倍率色収差とは、光軸に対して斜めに入射した光が像面の異なる位置に像を結んでしまうことにより画像周辺ほど色ずれが発生する現象をいう。具体的には、図5(b)に示すように、焦点の距離が同じであっても、レンズの中心線からの距離が青色光と赤色光とで異なる。
【0035】
図6(b)は、図6(a)の下端面61をパーツカメラ140により撮像して得られた撮像画像を示している。図6(b)の撮像画像は、赤色LEDを発光したときに撮像して得られた撮像画像(以下、「第1撮像画像」という)と、青色LEDを発光したときに撮像して得られた撮像画像(以下、「第2撮像画像」という)とを合成した画像を示している。
【0036】
図6(b)において、円Crは、第1撮像画像に含まれるホルダ65ar~65xrの中心、つまり、吸着ノズル66ar~66xrの先端を連結して形成した円を示している。一方、円Cbは、第2撮像画像に含まれるホルダ65ab~65xbの中心、つまり、吸着ノズル66ab~66xbの先端を連結して形成した円を示している。円Crの直径と、円Cbの直径とは、倍率色収差の影響により異なっている。そして、倍率色収差はレンズ中心に向かって起きるので、図6(b)のように、レンズ中心Olとカメラ中心Ocとがずれている場合には、円Crの中心と円Cbの中心との間にずれが生ずる。したがって、例えば、第1撮像画像における第13番目の吸着ノズル66mrの先端と第2撮像画像における第13番目の吸着ノズル66mbの先端とのずれ幅は、第1撮像画像における第1番目の吸着ノズル66arの先端と第2撮像画像における第1番目の吸着ノズル66abの先端とのずれ幅に対して、大きくなっている。
【0037】
これとは逆に、レンズ中心Olとカメラ中心Ocとが一致している場合には、円Crの中心と円Cbの中心との間にずれは生じない。しかし、レンズ中心Olは見て分からないので、パーツカメラ140を組み立てるときに、レンズ中心Olをカメラ中心Ocに合わせることはしない。したがって、パーツカメラ140を含む、多くのカメラでは、レンズ中心とカメラ中心との間にずれが生じている。
【0038】
こうした色収差の影響は、レンズ設計で解消することができるが、本実施形態では、レンズ設計で解消するのではなく、キャリブレーションによって解消する。
【0039】
図7は、上記コントローラ82が実行するキャリブレーション処理の手順を示している。以降、各処理の手順の説明において、ステップを「S」と表記する。
【0040】
キャリブレーション処理は、色収差の影響を除去する必要があるとき、具体的には、作業ヘッド60,62を他の作業ヘッドと取り替えたときや、経年変化等により色収差の影響が異なるようになったときなどに、実行される。
【0041】
キャリブレーション処理が開始されると、まず、コントローラ82は、作業ヘッド60を撮像範囲150(図6(b)参照)に移動させるように、駆動回路86を介して作業ヘッド移動装置64に指示する(S10)。なお、キャリブレーション処理は、作業ヘッド60だけではなく、作業ヘッド62に対してもなされるが、本実施形態では説明の都合上、作業ヘッド60に対してのみなされることとする。
【0042】
次に、コントローラ82は、上記照明部141からの照射光の色を決定する(S12)。本実施形態では、照射光の色は、赤色と青色の2色とするが、これに限らず、赤色及び青色を同時に照射する場合を加えて3色としてもよいし、照明部141が4色以上の照射光を照射できるものであれば、4色以上としてもよい。
【0043】
次に、コントローラ82は、決定した色の照射光を作業ヘッド60の下端面61に照射するように、照明部141に指示する(S14)。
【0044】
次に、コントローラ82は、パーツカメラ140に撮像を指示する(S16)。これに応じて、パーツカメラ140は、撮像範囲150内に位置する作業ヘッド60の下端面61を撮像し、撮像画像を画像処理装置88に出力する。
【0045】
そして、コントローラ82は、画像処理装置88から撮像画像を読み出して、例えば上記RAMに一時的に記憶する(S18)。
【0046】
次に、コントローラ82は、未だ照射していない色の照射光があるか否かを判断する(S20)。照射光として、まず赤色を照射し、次に青色を照射するとすると、まだ青色の照射光が照射されていないので、S20の判断において、未だ照射していない色の照射光があると判断され(S20:NO)、コントローラ82は、処理をS12に戻す。
【0047】
そして、コントローラ82は、青色の照射光について、上記S12~S18の処理を実行する。この処理の実行後、S20の判断において、未だ照射していない色の照射光がないと判断され(S20:YES)、コントローラ82は、処理を次のS22に進める。
【0048】
S22では、各撮像画像、つまり、上記第1及び第2撮像画像について、所定の3点を通る円の中心と直径を算出する。ここで、所定の3点とは、本実施形態では、例えば、第1番目の吸着ノズル66aの先端、第13番目の吸着ノズル66mの先端、及び第19番目の吸着ノズル66sの先端にそれぞれ対応する、第1及び第2撮像画像内の点である。なお、3点を採るようにしたのは、1つの円が確定する最小条件を満たすためである。2点では、1つの円が確定されず、4点以上では、1つの円は確定するものの、1つの円を確定させる処理の時間が、3点を採る場合より長くなるからである。但し、採用する3点は、24個の吸着ノズル66a~66xの先端のうち、いずれの3点であってもよい。また、第1及び第2撮像画像にそれぞれ含まれる所定の3点の座標が分かれば、その座標から、その3点を通る各円の中心と直径は、公知の方法により簡単に算出できるので、その算出方法についての説明は省略する。
【0049】
次に、コントローラ82は、第1及び第2撮像画像において算出した各円の中心と直径に基づいて、レンズ中心Olを算出する(S24)。具体的には、コントローラ82は、各円の中心の移動方向及び移動量と直径の縮小量とを算出し、直径が“0”に収束したときに円の中心が移動する位置を算出し、これをレンズ中心Olとする。
【0050】
次に、コントローラ82は、算出したレンズ中心Olとカメラ中心Ocとの差分を算出し、例えばRAMに一時的に記憶する(S26)。
【0051】
次に、コントローラ82は、記憶した差分に基づいて、第1及び第2撮像画像において算出した各円をレンズ中心Olの各円に変換し、変換後の各円の直径を算出する(S28)。このようにレンズ中心Olの各円に変換するのは、上述のように、倍率色収差はレンズ中心Olに向かって起きるのに対して、上記S22で算出した各円はカメラ中心Ocにおける円であり、カメラ中心Ocにおける円では、倍率色収差の影響を正しく算出できないからである。
【0052】
S28の算出処理は、具体的には、記憶した差分を(Ax,Ay)とし、第1撮像画像に含まれる第1番目、第13番目及び第19番目の吸着ノズル66ar,66mr,66srの各先端の座標を(Rx1,Ry1),(Rx2,Ry2),(Rx3,Ry3)とし、第2撮像画像に含まれる第1番目、第13番目及び第19番目の吸着ノズル66ab,66mb,66sbの各先端の座標を(Bx1,By1),(Bx2,By2),(Bx3,By3)とする。これらの座標は、カメラ中心Ocにおける座標であるので、コントローラ82は、レンズ中心Olにおける座標に変換する。つまり、コントローラ82は、第1撮像画像における座標(Rx1,Ry1),(Rx2,Ry2),(Rx3,Ry3)については、(Rx1-Ax,Ry1-Ay),(Rx2-Ax,Ry2-Ay),(Rx3-Ax,Ry3-Ay)を算出し、第2撮像画像における座標(Bx1,By1),(Bx2,By2),(Bx3,By3)については、(Bx1-Ax,By1-Ay),(Bx2-Ax,By2-Ay),(Bx3-Ax,By3-Ay)を算出する。そして、コントローラ82は、変換後の3点を通る各円を決定し、その各円の直径を算出する。
【0053】
次に、コントローラ82は、照射光の所定の1色を基準色として、基準色の円の直径に対する他の色の円の直径の比の値を算出する(S30)。基準色が、例えば赤色の場合、コントローラ82は、第2撮像画像におけるカメラ中心Ocからレンズ中心Olに変換後の円の直径/第1撮像画像におけるカメラ中心Ocからレンズ中心Olに変換後の円の直径を算出する。
【0054】
次に、コントローラ82は、算出した比の値を係数値として、照射光と対応付けて記憶する(S32)。本実施形態では、比の値は、第2撮像画像、つまり青色の照射光での撮像画像における変換後の円の直径/第1撮像画像、つまり赤色の照射光での撮像画像における変換後の円の直径であるので、算出した比の値、つまり係数値は、青色と対応付けて記憶する。但し、係数値は、キャリブレーション処理が終了した後、次のキャリブレーション処理が実行されるまで、回路基材へ電子部品(以下、「部品」と略していう)を実装する際に利用されるので、制御装置34への電源供給が停止された場合でも、係数値の記憶が保持されるメモリに記憶することが好ましい。
【0055】
次に、コントローラ82は、上記基準マークM(図6(a)参照)が撮像範囲150の4隅のうちの1隅に位置するように作業ヘッド60を移動させる指示を、駆動回路86を介して作業ヘッド移動装置64に行う(S34)。
【0056】
次に、コントローラ82は、基準色の照射光を作業ヘッド60の下端面61に照射するように、照明部141に指示する(S36)。
【0057】
続くS38,S40の各処理はそれぞれ、上記S16,S18の各処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0058】
そして、コントローラ82は、撮像範囲150において、基準マークMを位置させた1隅と、撮像範囲150の中心に対して点対称となる1隅の撮像画像を記憶したか否かを判断する(S42)。この判断において、まだ2隅の撮像画像を記憶していないと判断される場合(S42:NO)、コントローラ82は、処理をS34に戻す。
【0059】
そして、コントローラ82は、撮像範囲150におけるもう1隅に基準マークMを位置させた(S34)後、上記S36~S40の処理を実行する。この処理の実行後、S42の判断において、2隅の撮像画像を記憶したと判断され(S42:YES)、コントローラ82は、処理を次のS44に進める。
【0060】
S44では、コントローラ82は、記憶した2つの撮像画像に基づいて、基準色における分解能を算出し、記憶する。具体的には、コントローラ82は、撮像画像毎に基準マークMの中心の座標を取得し、各画像を端点とする線分の長さを算出する。そして、コントローラ82は、算出した線分の長さ/その線分に含まれるピクセル数を算出し、基準色、つまり本実施形態では、赤色の分解能として、記憶する。なお、基準色における分解能も、上記係数値と同様に、キャリブレーション処理が終了した後、次のキャリブレーション処理が実行されるまで、回路基材へ部品を実装する際に利用されるので、制御装置34への電源供給が停止された場合でも、係数値の記憶が保持されるメモリに記憶することが好ましい。
【0061】
S44の処理が終了すると、コントローラ82は、キャリブレーション処理を終了する。
【0062】
次に、キャリブレーション処理により記憶した係数値と基準色における分解能を、回路基材へ部品を実装する際にどのように利用するかを説明する。
【0063】
回路基材へ部品を実装する際には、上述のように、実装対象の部品を吸着ノズル66に保持し、保持した部品をパーツカメラ140により撮像する。そして、パーツカメラ140によって得られた撮像画像を画像処理することで、コントローラ82は、撮像画像に含まれる部品の画像から、吸着ノズル66の中心に対する部品の位置を認識する。なお、撮像画像内における吸着ノズル66の中心の位置は既知である。
【0064】
理論上、吸着ノズル66の中心は部品の所定の吸着位置(通常は部品の中心)と一致するはずである。しかし、部品の供給位置のずれ等により、吸着ノズル66の中心と部品の所定の吸着位置はずれて吸着される。したがって、コントローラ82は、部品の所定の吸着位置と吸着ノズル66の中心とのずれ量を認識する。そして、コントローラ82は、認識したずれ量を考慮して、部品が回路基材の指定位置の直上に配置されるように、駆動回路86を制御する。ここで、パーツカメラ140によって撮像された撮像画像の分解能は、照射光の色により異なる。具体的には、1ピクセルに相当する実際の距離が、照射光の色によって異なる。このため、コントローラ82は、認識したずれ量を、照射光の色に応じた分解能を用いて、実際の距離に変換して、駆動回路86を制御する。
【0065】
照射光の色が基準色である場合、コントローラ82は、基準色における分解能を用いて、認識したずれ量を実際の距離に変換する。一方、照射光の色が基準色と異なる場合、コントローラ82は、その照射光の色と対応付けて記憶した係数値を基準色における分解能に乗算して得られた分解能を用いて、認識したずれ量を実際の距離に変換する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の部品実装機10は、パーツカメラ140と、吸着ノズル66を有する作業ヘッド60,62と、作業ヘッド60,62を、少なくとも水平方向に移動させるX方向移動装置68及びY方向移動装置70と、吸着ノズル66に向けて波長の異なる複数の光源の光を照射可能な照明部141と、コントローラ82と、を備えている。
【0067】
そして、コントローラ82は、吸着ノズル66に対して波長の異なる光を照射し、吸着ノズル66を撮像するようにパーツカメラ140に指示する撮像指示部160と、撮像指示部160により撮像された、波長の異なる光毎の撮像画像のうちのいずれか1つの撮像画像に基づいて、当該撮像画像の分解能を演算する第1演算部162と、波長の異なる光毎の撮像画像に基づいてパーツカメラ140のレンズ中心を演算する第2演算部164と、第2演算部164により演算されたレンズ中心とパーツカメラ140のカメラ中心との差分をパーツカメラ140の固有値として記憶する記憶部166と、を有する。
【0068】
このように、本実施形態の部品実装機10では、部品実装機10とは別の装置を用いることなく、部品を撮像した画像に含まれる色収差を補正することが可能となる。
【0069】
ちなみに、本実施形態において、部品実装機10は、「作業機」の一例である。吸着ノズル66は、「部品保持具」の一例である。作業ヘッド60,62は、「保持ヘッド」の一例である。X方向移動装置68、Y方向移動装置70及びZ方向移動装置72は、「移動装置」の一例である。パーツカメラ140は、「撮像装置」の一例である。照明部141は、コントローラ82は、「制御装置」の一例である。
【0070】
また、コントローラ82はさらに、記憶部166により記憶された固有値に基づいて、波長の異なる光毎の撮像画像のうち、分解能の演算基とする撮像画像以外の撮像画像の分解能を演算するための係数値を演算する第3演算部168を有する。
【0071】
これにより、分解能の演算基とする撮像画像以外の撮像画像の分解能は、第3演算部168により演算された係数値を、分解能の演算基とする撮像画像の分解能に演算するだけで求まるので、波長の異なる光毎の撮像画像が複数あったとしても、1つの波長の光に対する撮像画像の分解能を演算するだけでよい。このため、演算処理を簡単化することができる。
【0072】
また、コントローラ82はさらに、第3演算部168により演算された係数値を、第1演算部162により演算された分解能に乗算することにより、分解能の演算基とする撮像画像以外の撮像画像の分解能を演算する第4演算部170と、第1及び第4演算部162,170により演算された分解能に基づいて、対応する撮像画像を補正する補正部172と、を有する。
【0073】
また、吸着ノズル66は、3つ以上の吸着ノズル66a~66xを含み、吸着ノズル66a~66xは、作業ヘッド60,62の下端面61の外周部に等間隔で配置され、第2演算部164は、波長の異なる光毎の撮像画像にそれぞれ含まれる吸着ノズル66ar~66xr,66ab~66xbのうち、少なくとも3つの吸着ノズル66ar,66mr,66sr,66ab,66mb,66sbに基づいて、パーツカメラ140のレンズ中心を演算する。
【0074】
これにより、パーツカメラ140のレンズ中心は、波長の異なる光毎の撮像画像のそれぞれについて、少なくとも3点のみ検出すれば演算できるので、画像処理を簡単化することができるとともに、演算処理も簡単化することができる。
【0075】
また、第2演算部164は、波長の異なる光毎の撮像画像のそれぞれに対して、少なくとも3つの吸着ノズル66ar,66mr,66sr,66ab,66mb,66sbの各先端を通る円Cr,Cbの中心及び直径を演算し、演算した各円Cr,Cbの中心及び直径に基づいて、パーツカメラ140のレンズ中心Olを演算する。
【0076】
また、第3演算部168は、波長の異なる光毎の撮像画像のそれぞれに対して、少なくとも3つの吸着ノズル66ar,66mr,66sr,66ab,66mb,66sbの各先端を、記憶部166により記憶された固有値に基づいてカメラ中心Ocからレンズ中心Olに変換し、変換後の少なくとも3つの吸着ノズルの各先端を通る各円の直径を演算し、演算した各円の直径に基づいて、係数値を演算する。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0078】
(1)上記実施形態では、作業ヘッド60として、下端面61に24個のホルダ65a~65xが等間隔に配置されているものを採用したが、ホルダ65は、少なくとも3つあればよい。
【0079】
(2)上記実施形態では、ホルダ65a~65xに保持された吸着ノズル66a~66xのうち、3つの先端に基づいて倍率色収差を補正するようにしたが、これに限らず、ホルダ65a~65xのうち、3つの、例えば中心に基づいて倍率色収差を補正するようにしてもよい。
【0080】
(3)上記実施形態では、色収差として、主に倍率色収差を補正するようにしたが、同様の技術的思想で、つまり、照射光の所定の1色を基準色として算出した軸上色収差の補正値に係数を乗算することにより、他の色の照射光における軸上色収差も補正するという技術的思想で、軸上色収差も補正することができる。
【符号の説明】
【0081】
10:部品実装機 60,62:作業ヘッド 66:吸着ノズル 68:X方向移動装置 70:Y方向移動装置 72:Z方向移動装置 82:コントローラ 140:パーツカメラ 141:照明部 149:撮像部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7