(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】車輪消毒装置
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20230213BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20230213BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20230213BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B62B5/00 Z
B08B3/02 B
A61L2/24
A61L2/18
(21)【出願番号】P 2022159770
(22)【出願日】2022-10-03
【審査請求日】2022-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522390308
【氏名又は名称】宗 希一朗
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗 希一朗
【審査官】谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-095074(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176547(JP,U)
【文献】特開2007-089951(JP,A)
【文献】登録実用新案第3124379(JP,U)
【文献】特開平10-203320(JP,A)
【文献】中国実用新案第214057476(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0180647(US,A1)
【文献】特開2012-115549(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164796(JP,U)
【文献】実開昭55-124348(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00 - 5/08
B60S 3/00 - 13/02
A61L 2/00 - 2/28
A47B 1/00 - 41/06
A47L 15/00 - 21/06
B08B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原による汚染の可能性のある第1区域と前記病原による汚染を抑制すべき第2区域との間で運行され、前記第1区域へ配膳される食材を収容する食事膳を運搬する食事膳運搬車
であって、全体が略直方体形状の車体本体と前記車体本体の前面に備えられた作業者用の牽引ハンドルとを有する前記食事膳運搬車の車輪の消毒を行う、食事膳運搬車の車輪消毒装置であって、
貯留された薬剤を供給する薬剤供給部と、
前記食事膳運搬車の運行ルート上に位置する所定の消毒エリアに配置され、前記薬剤供給部から供給された前記薬剤を噴出する薬剤噴出部と、
前記消毒エリア内、若しくは、前記食事膳運搬車の走行方向に沿って前記消毒エリアよりも上流側、に位置し、前記食事膳運搬車の通過を検知する通過検知部と、
前記消毒エリア内において非停止状態にある前記食事膳運搬車とともに移動しかつ回転している当該食事膳運搬車の前記車輪に対して前記薬剤の噴出を行うように、前記薬剤噴出部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、遅延タイマーを備えており、
前記通過検知部による前記食事膳運搬車の通過の検知後、前記遅延タイマーによる所定の遅延時間が経過したタイミングを前記薬剤の噴出開始時期とするように、前記薬剤噴出部を制御するものにおいて、
前記作業者が前記牽引ハンドルを用いて前記食事膳運搬車を牽引し前記薬剤噴出部上を通過移動する際に左右方向の位置合わせを行うためのガイド部材又は目印を設けた
ことを特徴とする食事膳運搬車の車輪消毒装置。
【請求項2】
請求項1記載の食事膳運搬車の車輪消毒装置において、
前記食事膳運搬車は、
進行方向最前方側にある第1輪、及び、進行方向最後方側にある第2輪、を含む、複数の前記車輪を備えており、
前記消毒エリアの前記走行方向に沿った長さは、前記第1輪と前記第2輪との間の距離よりも小さい
ことを特徴とする食事膳運搬車の車輪消毒装置。
【請求項3】
請求項2記載の食事膳運搬車の車輪消毒装置において、
前記薬剤噴出部は、
前記消毒エリア内において前記走行方向に沿って並んで配置された複数の噴出ノズルを備えており、
前記複数の噴出ノズルは、
前記消毒エリア内における設置位置を、前記走行方向又は当該走行方向に直交する方向に沿ってスライド変更可能に取り付けられている
ことを特徴とする食事膳運搬車の車輪消毒装置。
【請求項4】
請求項3記載の食事膳運搬車の車輪消毒装置において、
前記制御部は、
前記複数のノズルそれぞれからの噴出量、噴出時間、前記薬剤の種類、のうち少なくとも1つを可変に制御する
ことを特徴とする食事膳運搬車の車輪消毒装置。
【請求項5】
請求項4記載の食事膳運搬車の車輪消毒装置において、
前記食事膳運搬車は、複数設けられ、
前記複数の食事膳運搬車のそれぞれは、対応する所定情報を記録した記録媒体を備えており、
前記食事膳運搬車の車輪消毒装置は、さらに、
前記食事膳運搬車が所定距離範囲に近接した時に無線通信を介し前記記録媒体から前記所定情報を読み取る読取装置を有し、
前記制御部は、
前記読取装置が読み取った前記所定情報に応じ、前記噴出量、前記噴出時間、前記薬剤の種類、のうち少なくとも1つを可変に制御する
ことを特徴とする食事膳運搬車の車輪消毒装置。
【請求項6】
請求項5記載の食事膳運搬車の車輪消毒装置において、
前記制御部は、さらに、
前記食材の内容、及び、前記食事膳運搬車が運行される時間帯、のうち少なくとも一方に応じ、前記噴出量、前記噴出時間、前記薬剤の種類、のうち少なくとも1つを可変に制御する
ことを特徴とする食事膳運搬車の車輪消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食事膳運搬車などの車輪の消毒を行う車輪消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、病院の調理室で調理した食事を各病室に配膳する際には、多数の食事用トレイを積載可能な車体本体の底部に複数の走行車輪を備えた配膳車が利用される場合が多い。この配膳車は、病室等の不可避的に細菌や病原菌などに汚染されている可能性のある外部区画から、調理室内のように厳格に衛生管理された衛生区画へ進入する際には、車輪を消毒薬などの洗浄液で洗浄して清浄化する必要がある。
【0003】
配膳車は毎日の食事の時間ごとにそのような衛生区画と外部区画を往復するものであり、その度に上記の車輪の清浄化作業を手作業で行うことは非常に煩雑であるため、そのような車輪の清浄化作業を自動的に行える清浄処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来技術の清浄処理装置では、清浄化作業を開始するまでに作業者が配膳車を当該清浄処理装置上の所定位置に一旦停車させた上でさらに所定の手順での手動操作を行う必要があった。上述したように毎日何度も行う清浄化作業にあっては、その度に配膳車を一旦停車させる手間や手動操作自体さえも煩雑となっており、さらなる自動化が要望されていた。
【0006】
本発明の目的は、車輪の消毒作業の自動化をさらに向上させた車輪消毒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明は、病原による汚染の可能性のある第1区域と前記病原による汚染を抑制すべき第2区域との間で運行され、前記第1区域へ配膳される食材を収容する食事膳を運搬する食事膳運搬車の車輪の消毒を行う、食事膳運搬車の車輪消毒装置であって、貯留された薬剤を供給する薬剤供給部と、前記食事膳運搬車の運行ルート上に位置する所定の消毒エリアに配置され、前記薬剤供給部から供給された前記薬剤を噴出する薬剤噴出部と、前記消毒エリア内、若しくは、前記食事膳運搬車の走行方向に沿って前記消毒エリアよりも上流側、に位置し、前記食事膳運搬車の通過を検知する通過検知部と、前記消毒エリア内において非停止状態にある前記食事膳運搬車とともに移動しかつ回転している当該食事膳運搬車の前記車輪に対して前記薬剤の噴出を行うように、前記薬剤噴出部を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車輪の消毒作業の自動化をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る車輪消毒装置全体の概略的な構成図である。
【
図4】洗浄作業部での各列の噴出ノズルの連携噴出によって行われる車輪の消毒洗浄作業を説明する側方断面図である。
【
図5】全ての車輪に対して消毒洗浄作業を行うための制御タイムチャートを表す図である。
【
図6】全ての車輪を同時に洗浄する場合の洗浄作業部の平面図である。
【
図7】各車輪ごとの洗浄開始タイミング検知用のセンサを設ける場合の洗浄作業部の平面図である。
【
図8】各噴出ノズルの配置位置を調整可能に設けた場合の洗浄作業部の側方断面図である。
【
図9】洗浄作業部を床面埋め込み型とする場合と、床面設置型とする場合のそれぞれの側方断面図である。
【
図10】洗浄液として噴出する薬剤の種類を切り替える場合の噴出制御部の構成図である。
【
図11】配膳車自体が車輪の洗浄作業を行う場合の構成の配膳車の側面図と底面図である。
【
図12】配膳車自体が車輪の洗浄作業を行う場合に用いられる廃液流し場の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば下記の各構成要素を均等なものに置換した実施形態を採用することができ、それらについても本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするため、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略又は簡略化する。
【0011】
<本実施形態の車輪消毒装置の概略的な構成>
図1は、本実施形態に係る車輪消毒装置全体の概略的な構成を表す図である。車輪消毒装置1は、配膳車2と、洗浄作業部3と、噴出制御部4とを有している。なお、
図1中に示す前、後、上、下、左、右の各方向は、配膳車2を牽引中の作業者Mから見た方向を基準としており、以下の各図においても共通して参照する。
【0012】
配膳車2は、本実施形態の例において、病院内の調理室で調理された食事を各病室へ配膳するための運搬と、食後の食器を回収して調理室へ下膳するための運搬を行う車両である。配膳車2は、食材を収容する多数の食事用トレイ(特に図示せず)を積載可能な車体本体21と、当該車体本体21の底部に5輪の走行車輪22,23,24を備えており、本実施形態の例では人間の作業者Mが人力で牽引して移動させる。なお、配膳車2が食事膳運搬車の一例であり、食事用トレイが食事膳の一例である。
【0013】
洗浄作業部3は、上記配膳車2の車輪22,23,24に対して下方側から洗浄液を噴出することで消毒洗浄作業を行う部位である。本実施形態の例の洗浄作業部3は床面埋め込み型の態様であり、病室等の不可避的に細菌や病原菌など病原に汚染されている可能性のある外部区画と、この例の調理室内のように厳格に衛生管理された衛生区画との境界を跨ぐ配膳車2の運行ルート上の消毒エリアに配置されている。作業者Mは、配膳車2を牽引して外部区画から衛生区画へ進入する際には、必ず配膳車2を上記洗浄作業部3の上を停止させることなく(非停止状態)走行して通過させる。なお、配膳車2と洗浄作業部3の構成については後に詳述する。なお、洗浄作業部3が薬剤噴出部の一例であり、外部区画が第1区域の一例であり、衛生区画が第2区域の一例である。
【0014】
噴出制御部4は、洗浄液タンク41と、コンプレッサー42と、混合バルブ43と、制御盤44とを備えている。洗浄液タンク41は、薬剤成分の消毒液が貯留されている。コンプレッサー42は圧縮空気を供給し、混合バルブ43がその圧縮空気と洗浄液タンク41から供給される消毒液とを気水混合して車輪22,23,24を洗浄するための洗浄液を生成する。なお、これら洗浄液タンク41、コンプレッサー42、及び混合バルブ43をまとめて洗浄液供給部45という。この例ではコンピュータで構成される制御盤44が、コンプレッサー42の加圧制御を行うことで上記洗浄作業部3には常に一定の圧力で洗浄液が供給される。なお、コンプレッサー42と混合バルブ43の代わりに特に図示しないポンプを備え、洗浄液タンク41からの薬剤を洗浄液として直接加圧して洗浄作業部3に供給してもよい。また制御盤44は、洗浄作業部3に備えられた後述の光電センサからの検知タイミングを基準として、当該洗浄作業部3に備えられた複数の噴出ノズルのそれぞれに対する洗浄液の噴出タイミングを制御する。なお、洗浄液供給部45が薬剤供給部の一例であり、制御盤44が制御部の一例である。
【0015】
以上により本実施形態の車輪消毒装置1では、作業者Mが配膳車2を牽引して外部区画から衛生区画へ進入する際に、配膳車2を停止させることなく上記洗浄作業部3の上を通過移動させるだけで自動的に下方から洗浄液を噴出させて配膳車2の車輪22,23,24を消毒洗浄できる。
【0016】
<各部の詳細構成について>
図2(a)は、本実施形態に適用する配膳車2の側面図であり、
図2(b)は配膳車2の底面図である。この
図2において、配膳車2は、全体が略直方体形状の車体本体21と、この車体本体21の前面に備えられた牽引ハンドル25と、検出用LED26と、車体本体21の底部に備えられた5輪の走行車輪22,23,24を備えている。
【0017】
車体本体21は、側面に4つの開閉扉27が設けられており、これら開閉扉27を開けることで多数の食事用トレイを積載可能な内部棚(図示省略)にアクセスできる。牽引ハンドル25は、図示する例では丸棒形状のハンドルを水平な状態で保持する構成となっている。検出用LED26は、車体本体21の前方側端部の底面に設けられたライン型のLEDであり、特に図示しない車載バッテリーからの給電によって後述する洗浄作業部3の光電センサに向けた制御基準タイミング検出用の光照射を行う。
【0018】
5つの走行車輪22,23,24はいずれも車体本体21の底面に配置されており、そのうちの1輪は誘導車輪22として左右方向における中央位置で上記検出用LED26から後方側に距離L1だけ離間した位置に配置されている。また前輪23としての2輪は、車体本体21の左側と右側のそれぞれの位置で上記誘導車輪22から後方側に距離L2だけ離間した位置に配置されている。また後輪24としての2輪は、車体本体21の左側と右側のそれぞれの位置で上記前輪23から後方側に距離L3だけ離間した位置に配置されている。なお、誘導車輪22が第1輪の一例であり、後輪24が第2輪の一例である。
【0019】
この例では5つの走行車輪22,23,24の直径が全て同じ寸法φDに設定されており、前輪23の2輪と後輪24の2輪がそれぞれ同じ車幅Wで左右方向に離間している。また、5つの走行車輪22,23,24のうち最も前方の誘導車輪22と2つの後輪24は、いずれも車体本体21の底面に対して鉛直軸周りに回転可能に取り付けられており、2つの前輪23は左右方向に水平保持された共通の回転軸に回転可能に軸支されている。このような構成により作業者Mは、牽引ハンドル25を握っての牽引走行中でも当該配膳車2全体の旋回操作を容易に行うことができる。
【0020】
図3は洗浄作業部3を上方から見た平面図である。なお、洗浄作業部3の上面には金網状に構成されたグレーチング31が床面Fと面一となる配置で設けられるが(上記
図1参照)、この
図3においては図示の煩雑を避けるために当該グレーチング31の図示を省略している。この
図3において、本実施形態の例の洗浄作業部3は、上述したように床面埋め込み型の態様であり、床面Fから矩形形状で所定の深さに掘り込まれた空間の底面には、いずれも上方に噴出口を向けた9つの噴出ノズル32,33,34と、6つの電磁バルブC1~C3,S1~S3と、1つの光電センサ35が設けられている。
【0021】
9つの噴出ノズル32,33,34のうち、3つの中央列噴出ノズル33f,33m,33bが左右方向の中央位置で前後方向(配膳車進行方向)に整列して配置されている。また3つの左列噴出ノズル32f,32m,32bと3つの右列噴出ノズル34f,34m,34bが、それぞれ左右方向の左側位置と右側位置で前後方向に整列して配置されている。中央列噴出ノズル33f,33m,33bと、左列噴出ノズル32f,32m,32bと、右列噴出ノズル34f,34m,34bはそれぞれ配膳車2の誘導車輪22、左側車輪23,24、右側車輪23,24に対応して消毒洗浄する洗浄液を噴出するものである。そのため、左列噴出ノズル32f,32m,32bと右列噴出ノズル34f,34m,34bは左右方向で車幅Wの距離で離間するよう配置され、また中央列噴出ノズル33f,33m,33bはそれらの間の左右方向中央に配置されている。また、中央列噴出ノズル33f,33m,33bと、左列噴出ノズル32f,32m,32bと、右列噴出ノズル34f,34m,34bのそれぞれの前後方向両端の2つのノズル32f,33f,34f,32b,33b,34bは、配膳車2の各車輪22,23,24の外周(=直径φD×π)と同じ距離で離間し、各列で3つの噴出ノズルが等間隔で整列して配置されている。そして、各列の噴出ノズル32,33,34は前後方向における同じ領域(同じ位置)に配置されている。
【0022】
また、上記噴出制御部4の混合バルブ43に連通して洗浄液を供給可能な主配管36に対し、上記9つの噴出ノズル32,33,34は、それぞれ上記制御盤44からの制御信号により連通と遮断を切替可能な6つの電磁バルブC1~C3,S1~S3を介して接続されている。中央列の3つの噴出ノズル33f,33m,33bは個別に電磁バルブC1,C2,C3を介して主配管36に直接接続されていることで、それぞれ独立して洗浄液の供給と遮断を切替制御できる。左列と右列の噴出ノズル32,34は、各列で前後方向に同じ位置にある対の噴出バブルどうしで連通しており、各対を連通する連通配管37,38,39がそれぞれ電磁バルブS1,S2,S3を介して主配管36に接続されていることで、各対ごとに独立して洗浄液の供給と遮断を切替制御できる。
【0023】
光電センサ35は、上述した配膳車2の検出用LED26からの投射光を受光したか否かの検出結果を制御盤44に出力するセンサであり、中央列で最も後方側の噴出ノズル33bから前方側に距離L1だけ離間した位置に配置されている。なお、作業者Mが配膳車2を牽引して洗浄作業部3上を通過移動する際に左右方向の位置合わせが容易となるようガイド部材や目印を設けるとよい。例えば図示するように、左右方向において中央列の噴出ノズル33や光電センサ35の中央位置と一致して前後方向に延びるセンターラインCLを洗浄作業部3の後方側(進入する側から見て手前側)の床面Fに描画しておくとよい。なお、光電センサ35が通過検知部の一例である。
【0024】
そして、洗浄作業部3が上記のように構成されていることで、配膳車2の各車輪22,23,24が当該洗浄作業部3の上方を通過移動した際には車輪22,23,24の外周全体に渡って洗浄液を噴出して洗浄することが可能となる。例えば、洗浄作業部3の側方断面を表す
図4に示すように、配膳車2が外部区画を巡回して誘導車輪22が汚染状態(図中の網掛け部分参照)となったまま洗浄作業部3上を通過移動した際には、中央列の3つの噴出ノズル33がそれぞれ適切なタイミングで連携して誘導車輪22を洗浄する。なお本実施形態の例では、この洗浄作業部3上での配膳車2の通過移動中に人間の作業者Mが人力での牽引によってほぼ一定の進行速度Vを維持して移動させるものとする。
【0025】
まず、配膳車2が洗浄作業部3上への進入を開始して光電センサ35が検出用LED26の投射光を検知した際には、誘導車輪22が中央列の最も後方側の噴出ノズル33bの真上に位置していることになる。制御盤44は、この光電センサ35の検知タイミングですぐに後方側噴出ノズル33bに対応する電磁バルブC3を開放制御してそこからの洗浄液の噴出を開始することで、誘導車輪22の全周のうちの下側範囲を消毒洗浄できる。
【0026】
そして引き続き配膳車2の移動に伴い、誘導車輪22が中央列の後方側から中央→前方側の各噴出ノズル33m,33fに順次近づいたそれぞれのタイミングで、制御盤44が対応する各噴出ノズル33m,33fからの洗浄液の噴出を開始させて誘導車輪22の他の周範囲を消毒洗浄できる。ここで、中央列の3つの噴出ノズル33f,33m,33bは誘導車輪22の外周長さと同じ距離(=Dπ)の範囲で均等に配置されているので、配膳車2を一度も停止させることなく誘導車輪22を当該洗浄作業部3上に通過移動させるだけで誘導車輪22の外周の全周範囲を消毒洗浄できる。
【0027】
また制御盤44が他の電磁バルブS1,S2,S3に対しても、
図5の制御タイムチャートに示すように光電センサ35の検知タイミングXを基準とした適切なタイミングで開放制御することで、上記誘導車輪22と同様の洗浄作業を左右の前輪23と後輪24のそれぞれに対しても実施することができる。具体的には、進行速度Vで移動する1つの車輪が3つの噴出ノズルの配置領域長さφDπを通過するのに必要な時間がDπ/Vであり、この間に当該3つの噴出ノズルを順に連携噴出させる電磁バルブC1~C3,S1~S3の開放制御を1セット行うことで当該1車輪に対する洗浄作業が可能となる。
【0028】
このため、左列と右列で対応する対の噴出ノズル32,34を同時に噴出させる3つの電磁バルブS1,S2,S3の連携開放制御のセットを、光電センサ35の検知タイミングXから遅延時間L2/Vの経過後のタイミングYと、同じ検知タイミングXから遅延時間L3/Vの経過後のタイミングZのそれぞれで実行開始すればよい。なお、このような各電磁バルブC1~C3,S1~S3のタイミング制御における遅延タイマー機能ついては、本実施形態の例では全て制御盤44のコンピュータによって実現する。また、上記の3つのタイミングX,Y,Zがそれぞれ噴出開始時期の一例である。
【0029】
また以上から、洗浄作業部3全体の前後方向の長さ寸法Lsは、一列分の3つの噴出ノズルの配置領域長さ(=車輪の外周長さと同じ距離=Dπ)より少しマージンを加えた長さ程度で設定すれば十分であり、配膳車2の誘導車輪22から後輪24までの長さ(L2+L3)よりも短くできる。
【0030】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態においては、外部区画と衛生区画との間で運行される配膳車2の車輪22,23,24の消毒を行う車輪消毒装置1であって、洗浄液供給部45と、洗浄作業部3と、洗浄作業部3に備えられた光電センサ35と、制御盤44と有している。そしてこのうちの制御盤44が、消毒エリア内において配膳車2とともに移動しかつ回転している車輪22,23,24に対して洗浄液の噴出を行うように洗浄作業部3を制御する。
【0031】
これにより、作業者Mは配膳車2を洗浄作業部3上の適切な進路で進行させるだけで、車輪消毒装置1に自動的に車輪22,23,24の消毒洗浄作業を行わせることができる。つまり、配膳車2を所定位置に一旦停止させる作業や、洗浄液の噴出と停止のための所定の手順の操作作業を不要として、車輪22,23,24の消毒洗浄作業の自動化をさらに向上できる。
【0032】
また、本実施形態では特に、制御盤44が、その遅延タイマー機能により、光電センサ35による配膳車2の通過の検知後、所定の遅延時間が経過したタイミングを洗浄液の噴出開始時期とするように洗浄作業部3を制御する。これにより、各車輪22,23,24がそれぞれ対応する噴出ノズル32,33,34の上方を通過する適宜のタイミングで、当該車輪22,23,24の消毒洗浄に必要な噴出量だけで洗浄液を噴出させることができるため、洗浄液の消費を適切に抑制できる。
【0033】
なお、各電磁バルブC1~C3,S1~S3のタイミング制御における遅延タイマー機能ついては、制御盤44のコンピュータ以外にも、特に図示しない専用の電子回路や流体回路などを組み合わせて実現してもよい。また、配膳車2の通過を検知する手段としては、上記のように配膳車2側に光源としての検出用LED26と、洗浄作業部3側に光検知側としての光電センサ35を備える組み合わせに限られない。例えば、特に図示しないが、洗浄作業部3側に光源と光検知の両方を備えた投光反射検知型のものであったり、エコーなどの音波検知型のものであったり、RFIDやNFCを利用した電波検知型ものなど多様な手段を用いてもよい。またそのような検知センサの設置位置は洗浄作業部3の消毒エリア内に限られず、それよりも後方側の位置に設置してもよい。その場合には、誘導車輪22の洗浄制御セットの開始タイミングについても、その検知センサの設置位置に応じた遅延時間で制御すればよい。
【0034】
また、本実施形態では特に、洗浄作業部3全体の前後方向に沿った長さ寸法は、配膳車2の進行方向最前方側の誘導車輪22と進行方向最後方側の後輪24との間の距離(L2+L3)よりも小さく設定されている。これにより、配膳車2を一旦停止した状態で全ての車輪22,23,24を同時に洗浄する場合(後述の
図6参照)よりも、消毒エリアにおける洗浄作業部3の進行方向の設置長さを短縮化した省スペース化が可能となる。
【0035】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0036】
<全ての車輪を同時に洗浄する場合>
上記実施形態では、配膳車2の誘導車輪22、前輪23、及び後輪24をそれぞれ異なるタイミングで洗浄していたが、これに限られない。他にも
図6に示すように、洗浄作業部3において、検出用LED26(光電センサ35)の位置を基準とした誘導車輪22、前輪23、及び後輪24の各車輪にそれぞれに対応する全ての位置に噴出ノズルの列32,33,34を設けた構成としてもよい。これにより光電センサ35の検知タイミングXで一斉に全ての車輪22,23,24の洗浄作業を開始できるため、制御盤44において各車輪22,23,24別の噴出タイミング制御を行うための遅延タイマー機能が不要となり、制御構成を簡易にできる。
【0037】
<各車輪ごとの洗浄開始タイミング検知用のセンサを設ける場合>
上記実施形態では、1つの光電センサ35による検知タイミングXだけを基準として前輪23と後輪24それぞれの洗浄制御セットの開始タイミングY,Zを遅延制御していたが、これに限られない。他にも
図7に示すように距離L2と距離L3で前方に離間した第2、第3の光電センサ35A,35Bを設けることで、それぞれの検知タイミングをそのまま前輪23と後輪24の洗浄制御セットの開始タイミングY,Zとして同期させることができる。これにより制御盤44において各車輪22,23,24別の噴出タイミング制御を行うための遅延タイマー機能が不要となる他にも、作業者Mの牽引速度にムラがあっても正確な同期が可能となる。
【0038】
<各噴出ノズルの配置位置が調整可能な場合>
上記実施形態では、洗浄作業部3内における各噴出ノズル32,33,34の配置位置が固定されていたが、これに限られない。他にも
図8に示すように、同列にある各噴出ノズル33f,33m,33bが同じブラケット6上でそれぞれ前後方向の位置調整できるようスライド変更可能に設けられてもよい。また特に図示しないが、前輪23と後輪24においては左右方向での位置調整も可能となるよう設けてもよい。これにより、配膳車2における前後方向の車輪間隔L2、L3や左右方向の車輪間隔Wの仕様に合わせて適切な洗浄液の噴出位置を調整できる。
【0039】
<洗浄作業部を床面設置型とする場合>
上記実施形態では、
図9(a)に示すように洗浄作業部3を床面埋め込み型としていたが、これに限られない。他にも、
図9(b)に示すように、洗浄作業部3A全体を略直方体形状の箱体で形成し、床面F上に設置するようにしてもよい。この場合には、配膳車2が洗浄作業部3上を通過しやすいように、当該洗浄作業部3の前後に適宜の傾斜角度を有するスロープ部7を設けるとよい。これにより、洗浄作業部3の移動と設置が簡易となり、増設、削減、配置変更、配置調整などが容易に行える。
【0040】
<洗浄液の噴出量、噴出時間、薬剤の種類を可変にする場合>
上記実施形態では、洗浄液の噴出量、噴出時間、薬剤の種類を固定としていたが、これに限られない。他にも、
図10に示す噴出制御部4Aのように、貯留する薬剤の種類が異なる2つの洗浄液タンク41A,41Bを備え、制御盤44からの制御によって切替バルブ46がいずれの薬剤を混合バルブ43へ供給するかを切り替え可能としてもよい。なお切替バルブ46に変えて特に図示しない希釈バルブを備え、一方の薬剤を水又はアルコールとして希釈バルブによって他方の薬剤へ混合しその希釈濃度を調整してもよい。また、コンプレッサー42の加圧力を制御するなどにより洗浄液の噴出量を可変に制御したり、また電磁バルブC1~C3,S1~S3の開放時間を制御するなどにより個々の噴出ノズル32,33,34における洗浄液の噴出時間を可変に制御してもよい。これにより、その時点の配膳車2の状況や環境条件等に応じた洗浄作業の内容の調整が可能となる。
【0041】
具体的には、例えば生ものが多い献立が気温の高い昼食時に配膳された日に、たまたま長時間たってから下膳することになった場合は腐敗している可能性が高く、より適切な薬剤で、より念入りな洗浄が必要な場合がある。一方で、そのような特に重大な要因がない場合はできるだけ簡易に洗浄を済ませたい。このように各種の条件に応じて洗浄液の噴出量、噴出時間、薬剤の種類を可変に制御することは有用である。
【0042】
これに対して、特に図示しないが、例えば配膳車2に無線タグICを設けたり、QRコード(登録商標)などの画像コードを印刷又は表示するなどのように記録媒体による所定情報の記録を行い、洗浄作業場の付近で対応する無線通信や光学的手段を介した読取装置によりそれら情報を読み取らせる。そして制御盤44がその読み取った情報内容に基づいて洗浄液の噴出量、噴出時間、薬剤の種類を可変に制御すればよい。これにより、その時点の配膳車2の状況や時間帯などの環境条件等に応じた適切な内容の洗浄作業を実施することが可能となる。
【0043】
<配膳車自体が車輪の洗浄作業を行う参考例>
なお、参考例として、
図11に示すように、配膳車2A自体に噴出制御部4及び洗浄作業部3を設けて当該配膳車2Aの車輪22,23,24を洗浄させる構成も考えられる。この場合には、洗浄液を各車輪22,23,24に向けて噴出可能な適宜の配置に噴出ノズル32,33,34を設け、適切に接続された配管と電磁バルブ(図示省略)を介して制御盤44が噴出制御を行う。
【0044】
またこの場合、
図12に示すように、各噴出ノズル32,33,34か噴出させて車輪22,23,24を洗浄した後の廃液を受けて回収するための廃液流し場8を、外部区画と衛生区画の間の消毒エリアとして特に図示しないグレーチングとともに床面Fに設けることが好ましい。なお、この廃液流し場8の前後方向長さ寸法を図示するようにDπ程度に設定する場合には、廃液が外部に流れ出ないように各噴出ノズル32,33,34の噴出タイミングの同期を図る必要がある。その場合には、廃液流し場8側の適宜の位置に検出用LED26を設け、配膳車2側に光電センサ35を設けて、配膳車2の制御盤44に当該配膳車2の廃液流し場8への到着タイミングを検知させることもできる。これにより、配膳車2自体に車両洗浄に必要な構成のほとんどを備えさせることができ、外部環境設備への負担を大きく軽減できる。
【0045】
なお、車輪消毒装置1が洗浄消毒する対象の車両、もしくは上記のように車輪を自ら洗浄消毒する車両自体は、食事を配膳、下膳する配膳車2に限られない。他にも、外部区画から衛生区画へ進入するために車輪22,23,24を洗浄消毒する必要のある種類の車両に適用してもよい。
【0046】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0047】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0048】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 車輪消毒装置
2,2A 配膳車(食事膳運搬車)
3,3A 洗浄作業部(薬剤噴出部)
4 噴出制御部
21 車体本体
22 誘導車輪(車輪)
23 前輪(車輪)
24 後輪(車輪)
26 検出用LED
31 グレーチング
32,33,34 噴出ノズル
35 光電センサ(通過検知部)
41,41A 洗浄液タンク
,41B
42 コンプレッサー
43 混合バルブ
44 制御盤(制御部)
45 洗浄液供給部(薬剤供給部)
C1~C3, 電磁バルブ
S1~S3
F 床面
M 作業者
【要約】
【課題】車輪の消毒作業の自動化をさらに向上する。
【解決手段】病原による汚染の可能性のある外部区画と病原による汚染を抑制すべき衛生区画との間で運行される配膳車2の車輪22,23,24の消毒を行う車輪消毒装置1であって、洗浄液を供給する洗浄液供給部45と、配膳車2の運行ルート上に位置する所定の消毒エリアに配置されて洗浄液を噴出する洗浄作業部3と、配膳車2の通過を検知する光電センサ35と、消毒エリア内において走行する配膳車2とともに移動しかつ回転している当該配膳車2の車輪22,23,24に対して洗浄液の噴出を行うように、洗浄作業部3を制御する制御盤44と、を有する。
【選択図】
図3