(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータ部材、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0223 20160101AFI20230213BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20230213BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20230213BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20230213BHJP
【FI】
H01M8/0223
H01M8/0228
H01M8/0213
H01M8/0221
(21)【出願番号】P 2022528736
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2021019240
(87)【国際公開番号】W WO2021246189
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020098939
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【氏名又は名称】長野 正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽
(72)【発明者】
【氏名】宮路 希生
(72)【発明者】
【氏名】渡部 賢一
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-129601(JP,A)
【文献】特開2006-210222(JP,A)
【文献】特表2008-513971(JP,A)
【文献】特開2006-216257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂から構成される第一樹脂層と、
前記第一樹脂層に積層され、実質的に黒鉛から形成される黒鉛層と、を備え、
前記黒鉛層の積層量が50g/m
2以下であり、
前記黒鉛の体積抵抗率が3mΩ・cm以下である、
燃料電池用セパレータ部材。
【請求項2】
前記第一樹脂層と前記黒鉛層との間には、
前記第一樹脂層側から順に、導電性繊維基材、樹脂から構成される第二樹脂層、が積層され、
前記第二樹脂層の厚さは前記第一樹脂層よりも薄い、請求項1に記載の燃料電池用セパレータ部材。
【請求項3】
前記樹脂は、熱可塑性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物である、請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータ部材。
【請求項4】
樹脂から構成される第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、
前記第一樹脂層に、積層量が50g/m
2以下である、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛から実質的に形成される黒鉛層を形成する黒鉛層形成工程と、を備える燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【請求項5】
前記黒鉛層形成工程が、前記黒鉛からなる黒鉛シートを前記第一樹脂層に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、前記黒鉛シート積層工程の後に、前記黒鉛シートを剥がす剥離工程を含む、請求項4に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【請求項6】
前記第一樹脂層形成工程は、離型処理が施されたフィルムに前記樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、半硬化状態の第一樹脂層を形成する樹脂硬化工程を含む、請求項4又は5に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【請求項7】
離型処理が施されたフィルムに樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
前記樹脂を半硬化状態に硬化させ第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、
体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛からなる黒鉛シートを前記第一樹脂層に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、
前記第一樹脂層から前記フィルムを剥がすフィルム剥離工程と、
前記フィルムを剥がした第一樹脂層の面に、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛からなる黒鉛シートを積層し、圧着する第二黒鉛シート積層工程と、
前記第一樹脂層の両面から前記黒鉛シートを剥がす剥離工程と、
を備える燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【請求項8】
樹脂から構成される第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、
樹脂から構成され、前記第一樹脂層の厚さよりも薄い、半硬化状態の第二樹脂層を形成する第二樹脂層形成工程と、
前記第二樹脂層に導電性繊維基材を積層し、加熱圧着する導電性繊維基材積層工程と、
前記導電性繊維基材が積層された第二樹脂層の樹脂面に、積層量が50g/m
2以下である、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛から実質的に形成される黒鉛層を形成する黒鉛層形成工程と、
前記第二樹脂層の前記導電性繊維基材に前記第一樹脂層を積層し、加熱加圧する第一樹脂層積層工程と、
を備える燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【請求項9】
前記第一樹脂層形成工程が、離型処理が施されたフィルムに前記樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、半硬化状態の第一樹脂層を形成する樹脂硬化工程を含む、請求項8に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【請求項10】
前記第二樹脂層形成工程が、離型処理が施されたフィルムに前記樹脂を塗布する第二樹脂塗布工程と、半硬化状態の第二樹脂層を形成する第二樹脂硬化工程を含む、請求項8又は9に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【請求項11】
前記黒鉛層形成工程は、前記黒鉛からなる黒鉛シートを前記導電性繊維基材が積層された第二樹脂層の樹脂面に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、前記黒鉛シート積層工程の後に、前記黒鉛シートを剥がす剥離工程を含む、請求項8から10のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータ部材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用セパレータ部材に求められる特性として、導電性、ガス不透過性(ガスバリア性ともいう。)などがある。燃料電池用セパレータ部材の導電性を良くするための材料として、カーボンブラック、膨張黒鉛、天然黒鉛などの導電性材料が挙げられる。そして、このような導電性材料を用いた様々な燃料電池用セパレータ部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている燃料電池用セパレータを構成する予備成形体は、膨張黒鉛シートを含む構成である。この膨張黒鉛シートは厚く、膨張黒鉛シートの靭性が低いため、膨張黒鉛シートを含む予備成形体の強度が低下するという課題を有する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、黒鉛層の厚さが薄く、導電性に優れる燃料電池用セパレータ部材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂から構成される第一樹脂層と、第一樹脂層に積層され、実質的に黒鉛から形成される黒鉛層と、を備え、黒鉛層の積層量が50g/m2以下であり、黒鉛の体積抵抗率が3mΩ・cm以下である、燃料電池用セパレータ部材が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
[1]樹脂から構成される第一樹脂層と、前記第一樹脂層に積層され、実質的に黒鉛から形成される黒鉛層と、を備え、前記黒鉛層の積層量が50g/m2以下であり、前記黒鉛の体積抵抗率が3mΩ・cm以下である、燃料電池用セパレータ部材。
【0009】
[2]前記第一樹脂層と前記黒鉛層との間には、前記第一樹脂層側から順に、導電性繊維基材、樹脂から構成される第二樹脂層、が積層され、前記第二樹脂層の厚さは前記第一樹脂層よりも薄い、上記[1]に記載の燃料電池用セパレータ部材。
【0010】
[3]前記樹脂は、熱可塑性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物である、上記[1]又は[2]に記載の燃料電池用セパレータ部材。
【0011】
[4]樹脂から構成される第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、前記第一樹脂層に、積層量が50g/m2以下である、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛から実質的に形成される黒鉛層を形成する黒鉛層形成工程と、を備える燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【0012】
[5]前記黒鉛層形成工程が、前記黒鉛からなる黒鉛シートを前記第一樹脂層に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、前記黒鉛シート積層工程の後に、前記黒鉛シートを剥がす剥離工程を含む、上記[4]に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【0013】
[6]前記第一樹脂層形成工程は、離型処理が施されたフィルムに前記樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、半硬化状態の第一樹脂層を形成する樹脂硬化工程を含む、上記[4]又は[5]に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【0014】
[7]離型処理が施されたフィルムに樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、前記樹脂を半硬化状態に硬化させ第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛からなる黒鉛シートを前記第一樹脂層に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、前記第一樹脂層から前記フィルムを剥がすフィルム剥離工程と、前記フィルムを剥がした第一樹脂層の面に、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛からなる黒鉛シートを積層し、圧着する第二黒鉛シート積層工程と、前記第一樹脂層の両面から前記黒鉛シートを剥がす剥離工程と、を備える燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【0015】
[8]樹脂から構成される第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、樹脂から構成され、前記第一樹脂層の厚さよりも薄い、半硬化状態の第二樹脂層を形成する第二樹脂層形成工程と、前記第二樹脂層に導電性繊維基材を積層し、加熱圧着する導電性繊維基材積層工程と、前記導電性繊維基材が積層された第二樹脂層の樹脂面に、積層量が50g/m2以下である、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛から実質的に形成される黒鉛層を形成する黒鉛層形成工程と、前記第二樹脂層の前記導電性繊維基材に前記第一樹脂層を積層し、加熱加圧する第一樹脂層積層工程と、を備える燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【0016】
[9]前記第一樹脂層形成工程が、離型処理が施されたフィルムに前記樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、半硬化状態の第一樹脂層を形成する樹脂硬化工程を含む、上記[8]に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【0017】
[10]前記第二樹脂層形成工程が、離型処理が施されたフィルムに前記樹脂を塗布する第二樹脂塗布工程と、半硬化状態の第二樹脂層を形成する第二樹脂硬化工程を含む、上記[8]又は[9]に記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【0018】
[11]前記黒鉛層形成工程は、前記黒鉛からなる黒鉛シートを前記導電性繊維基材が積層された第二樹脂層の樹脂面に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、前記黒鉛シート積層工程の後に、前記黒鉛シートを剥がす剥離工程を含む、上記[8]から[10]のいずれか1つに記載の燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、黒鉛層の厚さが薄く、導電性に優れる燃料電池用セパレータ部材、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態1の燃料電池用セパレータ部材の構造を示す概略断面図である。
【
図2】実施の形態1の燃料電池用セパレータ部材を製造する工程を説明する図であり、(a)は第一樹脂層を構成する樹脂を塗布する工程、(b)は第一樹脂層を乾燥する工程、(c)は第一樹脂層の両面に黒鉛シートを積層する工程、(d)は第一樹脂層の両面から黒鉛シートを剥がして積層体を形成する工程を説明する図である。
【
図3】実施の形態2の燃料電池用セパレータ部材の構造を示す概略断面図である。
【
図4A】実施の形態2の燃料電池用セパレータ部材を製造する工程を説明する図であり、(a)は第一樹脂層を構成する樹脂を塗布する工程、(a-1)は第一樹脂層を乾燥する工程、(b)は第二樹脂層を構成する樹脂を塗布する工程、(b-1)は樹脂を乾燥する工程を説明する図である。
【
図4B】実施の形態2の燃料電池用セパレータ部材を製造する工程を説明する図であり、(c)は第二樹脂層に導電性繊維基材を積層し圧着する工程、(d)は(c)工程で得た第二樹脂層に黒鉛シートを積層し圧着する工程、(e)は第二樹脂層の導電性繊維基材に第一樹脂層を積層し圧着する工程を説明する図である。
【
図4C】実施の形態2の燃料電池用セパレータ部材を製造する工程を説明する図であり、(f)は積層体から黒鉛シートを剥がす工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータ部材、及びその製造方法について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0022】
本発明の燃料電池用セパレータ部材は、燃料電池を構成するセパレータの部材として好適に用いられる。本発明でいう燃料電池用セパレータ部材とは、燃料電池用セパレータに加工される前の部材をいう。
【0023】
(実施の形態1)
(燃料電池用セパレータ部材10の構成)
実施の形態1の燃料電池用セパレータ部材10は、樹脂から構成される第一樹脂層と、第一樹脂層に積層され、実質的に黒鉛から形成される黒鉛層と、を備え、黒鉛層の積層量が50g/m2以下であり、黒鉛の体積抵抗率が3mΩ・cm以下である。
【0024】
図1は、燃料電池用セパレータ部材10を示す概略断面図である。燃料電池用セパレータ部材10は、第一樹脂層13の両面に黒鉛層11が積層された構成を有する。
【0025】
第一樹脂層13は、樹脂から構成されている。樹脂の種類は、燃料電池用セパレータ部材の第一樹脂層13を形成することができ、燃料電池用セパレータ部材を加工して燃料電池用セパレータにすることができる樹脂であれば、特に限定されるものではない。樹脂の例としては、熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
【0026】
熱硬化性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物、メラミン樹脂を主剤としたメラミン系樹脂組成物、ウレタン樹脂を主剤としたウレタン系樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂を主剤としたジアリルフタレート系樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂を主剤とした不飽和ポリエステル系樹脂組成物、シアネートエステル樹脂を主剤としたシアネートエステル系樹脂組成物が挙げられる。耐熱性、耐久性、及び加工性の観点、及び第一樹脂層13と黒鉛層11との密着性の観点からエポキシ系樹脂組成物が好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂組成物としては、アクリル樹脂を主剤としたアクリル系樹脂組成物、ポリアクリロニトリル樹脂を主剤としたポリアクリロニトリル系樹脂組成物、熱可塑性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物、ポリアミド樹脂を主剤としたポリアミド系樹脂組成物、ポリエーテルサルフォン樹脂を主剤としたポリエーテルサルフォン系樹脂組成物、フェノキシ樹脂を主剤としたフェノキシ系樹脂組成物、ポリプロピレン樹脂を主剤としたポリプロピレン系樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂を主剤としたポリカーボネート系樹脂組成物、ポリエチレン樹脂を主剤としたポリエチレン系樹脂組成物、ポリエステル樹脂を主剤としたポリエステル系樹脂組成物、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂を主剤としたアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂組成物、ポリスチレン(PS)樹脂を主剤としたポリスチレン系樹脂組成物、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を主剤としたポリフェニレンスルフィド系樹脂組成物、ポリアミドイミド(PAI)樹脂を主剤としたポリアミドイミド系樹脂組成物が挙げられる。耐熱性、耐久性、及び加工性の観点、及び第一樹脂層13と黒鉛層11との密着性の観点からポリエーテルサルフォン系樹脂組成物、及びポリプロピレン系樹脂組成物が好ましい。
【0028】
燃料電池用セパレータ部材10の導電性を高くする観点から、第一樹脂層13の樹脂に導電性材料を加えてもよい。導電性材料としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)が挙げられる。導電性及びコストの観点から、人造黒鉛及び/又は天然黒鉛を用いることが好ましい。
【0029】
導電性材料を添加する量は、加工性の観点から、固形分換算で樹脂全体の質量を100質量部とした場合、好ましくは40~90質量部であり、より好ましくは60~90質量部であり、更に好ましくは60~85質量部である。
【0030】
第一樹脂層13の厚さは、燃料電池用セパレータ自体の厚さによるが、好ましくは100~800μmであり、軽薄及び加工性の観点から、100~700μmである。
【0031】
黒鉛層11を構成する黒鉛は、特に制限はないが、体積抵抗率を低く抑える観点から、好ましくは天然黒鉛である。黒鉛層の厚さを均一かつ薄く形成できる観点から、より好ましくは膨張黒鉛である。
【0032】
黒鉛の体積抵抗率は、燃料電池用セパレータの導電性を確保する観点から、好ましくは3mΩ・cm以下であり、より好ましくは1mΩ・cm以下である。
【0033】
黒鉛層11の積層量は、軽薄性及び加工性の観点から、50g/m2以下であり、好ましくは0.3~50g/m2であり、より好ましくは、0.5~30g/m2である。
【0034】
黒鉛層11の厚さは、導電性及び加工性の観点から、好ましくは0.1μm以上50μm以下である。導電性及び軽薄化の観点から、より好ましくは0.2μm以上15μm以下である。なお、黒鉛層11の厚さは、燃料電池用セパレータ部材10を燃料電池用セパレータに加工した後の黒鉛層の厚さをいう。
【0035】
黒鉛層11は、実質的に黒鉛から形成される。「実質的に黒鉛から形成される」とは、黒鉛層11に存在する非導電材料の量が、燃料電池用セパレータ部材10の導電性を阻害しない程度に少ない状態をいう。具体的には、黒鉛の体積抵抗率が3mΩ・cm以下であり、黒鉛層11を構成する材料が95wt%以上の黒鉛から構成される状態をいう。
【0036】
実施の形態1の燃料電池用セパレータ部材10は、第一樹脂層13の両面に黒鉛層11が積層されている構成を例に説明したが、燃料電池用セパレータ部材10は、第一樹脂層13の片面のみに黒鉛層11が積層されている構成であってもよい。
【0037】
燃料電池用セパレータ部材10の別の形態として、第一樹脂層13と黒鉛層11との間に、他の層が積層されていてもよい。他の層は、単層でも多層でもよい。例えば、単層である場合、単層を構成する樹脂は、第一樹脂層13の樹脂と同じでも、異なってもよい。単層を構成する樹脂が第一樹脂層13を構成する樹脂と異なる場合は、第一樹脂層13を構成する樹脂が熱可塑性樹脂組成物から構成され、他の層が熱硬化性樹脂組成物から構成される。これにより燃料電池用セパレータ部材10を燃料電池用セパレータに加工する際に型への追従性が向上する。
【0038】
(燃料電池用セパレータ部材10の製造方法)
燃料電池用セパレータ部材10の製造方法は、樹脂から構成される第一樹脂層13を形成する第一樹脂層形成工程と、第一樹脂層13の上に、積層量が50g/m2以下である、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛から実質的に形成される黒鉛層11を形成する黒鉛層形成工程と、を備える。また、第一樹脂層形成工程は、離型処理が施されたフィルムに樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、半硬化状態の第一樹脂層13を形成する樹脂硬化工程を含む。また、黒鉛層形成工程は、黒鉛からなる黒鉛シートを第一樹脂層13に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、黒鉛シート積層工程の後に、第一樹脂層13から黒鉛シートを剥がす剥離工程を含む。
【0039】
図2は、燃料電池用セパレータ部材10を製造する方法を説明するための図である。
図2(a)を参照して樹脂塗布工程を説明する。塗布装置201は、離型処理が施されたフィルム205の離型処理面に、第一樹脂層203を構成する樹脂を塗布する。フィルム205は、少なくとも一方の面に離型処理が施されていることが好ましい。フィルム205は、硬化させた後の第一樹脂層203から剥離できれば特に限定されない。フィルム205の材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック、紙が挙げられる。離型処理に用いる材料としては、シリコーン系材料、フッ素系材料などが挙げられる。塗布装置201は特に限定されず、公知の塗布装置を採用することができる。例えば、ダイコータ、コンマコータ、グラビアコータなどを用いることができる。塗布の方法としては、例えば、
図2(a)に示すように塗布装置201が移動してフィルム205に樹脂を塗布する方法、フィルム205を移動させて樹脂を塗布する方法が挙げられる。
【0040】
図2(b)を参照して樹脂硬化工程を説明する。第一樹脂層203は、乾燥させることで半硬化状態(Bステージ状態)となる。乾燥には乾燥機を用いる。第一樹脂層203は、加熱して乾燥させることが好ましい。加熱乾燥条件は、第一樹脂層203の厚さにより適宜選択することができる。例えば、40~200℃、1~120分である。乾燥後の第一樹脂層203の表面はタック性(べたつき性)があってもよい。これにより、次の黒鉛シート積層工程で使用する黒鉛シート207と第一樹脂層203との密着性が良好となる。ここで、半硬化状態(Bステージ状態ともいう。)とは、樹脂の硬化反応が完全に進んでいない状態をいう。以下、明細書で使用する「半硬化状態」も同様の意味で用いる。
【0041】
第一樹脂層203の厚さは、燃料電池用セパレータに成形するための金型に対する形状追従性を向上させる観点、及び均一な厚さを確保する観点から、100μm以上であることが好ましい。例えば、燃料電池用セパレータ部材の厚さが数百μmである場合は、一例として、100μmの第一樹脂層203を2つ作製し、樹脂面と樹脂面とを貼り合わせて、厚さが200μmの第一樹脂層203を得ることができる。別の一例として、厚さが50~100μmの第一樹脂層203を3つ以上作製し、これらを積層して貼り合わせることで厚さが数百μmの第一樹脂層203を得ることができる。
【0042】
図2(c)を参照して黒鉛シート積層工程を説明する。半硬化状態の第一樹脂層203からフィルム205を剥がす。第一樹脂層203の両面に黒鉛シート207を積層し、ローラ209により圧着する。ローラ209は積層体206の面方向に移動する。積層体206を移動させてローラで圧着してもよい。圧着した後に、積層体206を得る。圧着は、常温で加圧してもよいし、第一樹脂層203と黒鉛シート207との密着性を向上させる観点から、加熱しながら圧着してもよい。
【0043】
ローラ209を用いる方法以外に、例えば、プレス機を用いる方法でもよい。圧着は常温で加圧しても、加熱しながら加圧してもよい。加熱加圧の条件は、黒鉛シート207の厚さ、第一樹脂層203の厚さにより適宜選択することができる。例えば、20~200℃、0.1~20MPaの条件で行うことができる。
【0044】
黒鉛シート積層工程において、第一樹脂層203の両面に黒鉛シート207を別々に積層して圧着してもよい。例えば、樹脂硬化工程後の第一樹脂層203の樹脂面に黒鉛シート207を積層し圧着する。その後に、フィルム205を剥がし、露出した第一樹脂層203の樹脂面に黒鉛シート207を積層し圧着してもよい。
【0045】
黒鉛シート207としては、結合材や添加剤を用いず天然黒鉛をシート状に成形して得られる天然黒鉛シート、又はポリイミドなどの有機フィルムを焼成して得られる人造黒鉛シートが挙げられる。天然黒鉛シートとは、天然黒鉛を酸処理した後、高温(例えば900~1000℃)状態になるまで急速に加熱し、膨張させた天然黒鉛を圧縮加工して得られる黒鉛シートをいう。体積抵抗率を低くする観点、及び積層量を均一にする観点から使用する黒鉛シート207は、天然黒鉛シートが好ましい。
【0046】
図2(d)を参照して剥離工程を説明する。黒鉛シート207の剥がし方は、積層体206から黒鉛シート207を剥がした後、第一樹脂層203の表面に黒鉛層210が形成される剥がし方であればよい。例えば、積層体206の端部から黒鉛シート207のみをめくりあげる様に剥がす方法が挙げられる。積層体206から黒鉛シート207を剥がした後、第一樹脂層203の両面には、積層量が50g/m
2以下であり、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛から実質的に形成される黒鉛層210が形成される。黒鉛層210が形成された積層体220が燃料電池用セパレータ部材10に対応する。黒鉛層210は、
図1に示す燃料電池用セパレータ部材10の黒鉛層11に対応する。第一樹脂層203は、第一樹脂層13に対応する。なお、第一樹脂層203から剥がした黒鉛シート207は、破損しない限り、複数回利用することができる。
【0047】
黒鉛層210を形成する別の方法として、ローラの外周面に黒鉛シート207を巻き付けて固定し、そのローラで第一樹脂層203を押圧して黒鉛層210を形成してもよい。また、この方法によれば、第一樹脂層形成工程と黒鉛層形成工程を1つのラインにまとめることができ、燃料電池用セパレータ部材10を連続的に製造することができる。
【0048】
第一樹脂層203の別の形成方法として、粘度調整をした無溶剤タイプの樹脂をフィルム状に延伸して第一樹脂層203を形成する方法、抄造法により繊維状の樹脂をフィルム状の基材上に堆積させ、第一樹脂層203を形成する方法が挙げられる。これらの方法によれば、第一樹脂層203に溶剤を含まないため、加工が容易となる。
【0049】
燃料電池用セパレータ部材10の別の製造方法としては、粘着フィルムの粘着面と黒鉛シートとを貼り合わせる貼合工程と、黒鉛シートから粘着フィルムを剥がし黒鉛層付き粘着フィルムを得る黒鉛層付き粘着フィルム準備工程と、樹脂から構成される第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、第一樹脂層形成工程で得た第一樹脂層の両面に、黒鉛層付き粘着フィルムの黒鉛層が接触するように積層し圧着する積層圧着工程と、積層圧着工程により得た積層体から粘着フィルムを剥がす剥離工程とを備える方法が挙げられる。この製造方法によれば、第一樹脂層が破れやすい場合、または第一樹脂層の取扱いが難しい場合であっても、第一樹脂層の形状を崩すことなく、燃料電池用セパレータ部材10を作製することができる。
【0050】
第一樹脂層13のどちらか一方の面に黒鉛層11が形成された燃料電池用セパレータ部材10の製造方法は、例えば、離型処理が施されたフィルムに樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、半硬化状態の第一樹脂層を形成する樹脂硬化工程と、黒鉛からなる黒鉛シートを第一樹脂層に積層し圧着する黒鉛シート積層工程と、黒鉛シート積層工程の後に黒鉛シートを剥がす剥離工程とを備える。これにより、第一樹脂層13の片面に黒鉛層11が形成された燃料電池用セパレータ部材10を得ることができる。第一樹脂層13のどちらか一方の面に黒鉛層11が形成された燃料電池用セパレータ部材10は、例示した方法に限定されず、他の方法を応用して製造することができる。
【0051】
燃料電池用セパレータ部材10の構成よれば、燃料電池用セパレータ部材10を燃料電池用セパレータに加工した後、燃料電池用セパレータの表面には膨れによる凹凸がない。さらに、燃料電池用セパレータ部材10を燃料電池用セパレータに加工することが容易となる。燃料電池用セパレータが膨れない点、及び燃料電池用セパレータ部材10が加工性に優れる点について、発明者らが推測するメカニズムを説明する。
【0052】
燃料電池用セパレータ部材10の黒鉛層11を上から見た場合、黒鉛層11は黒鉛が不規則に配列された状態にある。この状態は、黒鉛シートを剥がした際に形成されると推測される。また、黒鉛の不規則な配列は、黒鉛の形状も起因していると考えられる。黒鉛の形状は主面を有する薄片状である。このような形状により、黒鉛層の表面において、ある黒鉛は黒鉛の主面がXY平面(黒鉛層の主平面)に対してほぼ平行に配された状態にある。別のある黒鉛は黒鉛の主面がXY平面に対して垂直な状態にある。また、別のある黒鉛は、XY平面に対して黒鉛の主面が傾いた状態、すなわち、黒鉛の主面がXY平面に対して角度を有する状態にある。このように黒鉛層11の表面には、主面が様々な方向を向いた黒鉛が混在していると推測される。さらに、このような黒鉛の不規則な配列と、黒鉛層11の厚さが薄いこととが相俟って、第一樹脂層の硬化の際に発生するガスが黒鉛層11と第一樹脂層13との間に留まることなく、開放的に放出される。この結果、燃料電池用セパレータ部材に膨れが発生しないと推測される。
【0053】
さらに、黒鉛層11を構成する黒鉛は離型性を有しているため、燃料電池用セパレータ部材10と成形用の金型との間には、脱型を容易にする離型剤を使用する必要がない。このように離型剤が不要となるため、離型剤に起因する燃料電池用セパレータ自体の親水性の低下も抑制することができる。
【0054】
さらに、黒鉛層11と第一樹脂層13との界面及びその界面近傍には、製造の過程の圧着により第一樹脂層13を構成する樹脂と黒鉛とが混在する領域が形成される。これにより、黒鉛層11と第一樹脂層13との密着性が向上すると推察される。
【0055】
(実施の形態2)
(燃料電池用セパレータ部材30の構成)
実施の形態2の燃料電池用セパレータ部材30は、樹脂から構成される第一樹脂層と、実質的に黒鉛から形成される黒鉛層と、を備える。第一樹脂層と黒鉛層との間には、第一樹脂層側から順に、導電性繊維基材、樹脂から構成される第二樹脂層、が積層されている。第二樹脂層の厚さは第一樹脂層よりも薄い。黒鉛層の積層量は50g/m2以下であり、黒鉛の体積抵抗率は3mΩ・cm以下である。
【0056】
図3は、実施の形態2の燃料電池用セパレータ部材30の一例を示す概略断面図である。燃料電池用セパレータ部材30は、第一樹脂層37の両面に、第一樹脂層37から近い順に、導電性繊維基材35、第二樹脂層33、黒鉛層31が積層された構成を有する。
【0057】
第一樹脂層37は、燃料電池用セパレータ部材10の第一樹脂層13と同一の構成を有する。
【0058】
第二樹脂層33は樹脂から構成される。樹脂の種類は特に限定されない。樹脂の例としては、熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
【0059】
熱硬化性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物、メラミン樹脂を主剤としたメラミン系樹脂組成物、ウレタン樹脂を主剤としたウレタン系樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂を主剤としたジアリルフタレート系樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂を主剤とした不飽和ポリエステル系樹脂組成物、シアネートエステル樹脂を主剤としたシアネートエステル系樹脂組成物が挙げられる。耐熱性、耐久性、及び加工性の観点からエポキシ系樹脂組成物が好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂組成物としては、アクリル樹脂を主剤としたアクリル系樹脂組成物、ポリアクリロニトリル樹脂を主剤としたポリアクリロニトリル系樹脂組成物、熱可塑性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物、ポリアミド樹脂を主剤としたポリアミド系樹脂組成物、ポリエーテルサルフォン樹脂を主剤としたポリエーテルサルフォン系樹脂組成物、フェノキシ樹脂を主剤としたフェノキシ系樹脂組成物、ポリプロピレン樹脂を主剤としたポリプロピレン系樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂を主剤としたポリカーボネート系樹脂組成物、ポリエチレン樹脂を主剤としたポリエチレン系樹脂組成物、ポリエステル樹脂を主剤としたポリエステル系樹脂組成物、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂を主剤としたアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂組成物、ポリスチレン(PS)樹脂を主剤としたポリスチレン系樹脂組成物、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を主剤としたポリフェニレンスルフィド系樹脂組成物、ポリアミドイミド(PAI)樹脂を主剤としたポリアミドイミド系樹脂組成物が挙げられる。耐熱性、耐久性、及び加工性の観点からポリエーテルサルフォン系樹脂組成物、及びポリプロピレン系樹脂組成物が好ましい。
【0061】
第二樹脂層33を構成する樹脂は、第一樹脂層37を構成する樹脂と同じでもよいし、異なっていてもよい。表層に近い第二樹脂層33が熱による変形を起こすことなく、燃料電池用セパレータとして形状保持する観点から、第一樹脂層37を構成する樹脂が熱可塑性樹脂組成物であり、第二樹脂層33を構成する樹脂が熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0062】
燃料電池用セパレータ部材30の導電性を高くする観点から、第二樹脂層33を構成する樹脂に、導電性材料を含んでも良い。導電性材料としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)が挙げられる。導電性及びコストの観点から、人造黒鉛及び/又は天然黒鉛を用いることが好ましい。また、第二樹脂層33に導電性の短繊維を含んでも良い。
【0063】
第二樹脂層33の厚さは、第一樹脂層37よりも薄い。厚さは好ましくは3~100μmであり、軽薄、加工性の観点から、5~50μmである。
【0064】
黒鉛層31は、実質的に黒鉛から形成される。「実質的に黒鉛から形成される」とは、黒鉛層31に存在する非導電材料の量が、燃料電池用セパレータ部材30の導電性を阻害しない程度に少ない状態をいう。具体的には、黒鉛の体積抵抗率が3mΩ・cm以下であり、黒鉛層31を構成する材料が95wt%以上の黒鉛から構成される状態をいう。
【0065】
導電性繊維基材35は、シート状の形状を有し、導電性を有する繊維材料であれば特に制限はない。燃料電池用セパレータ部材30の強度及び弾性率を高める観点から、好ましくは導電性を有する短繊維及び不織布である。不織布を構成する繊維は、単一種類からなる繊維だけでなく、数種類の繊維から構成されていてもよい。短繊維及び不織布を構成する繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ポリエステルなどの化学繊維、アルミナ、シリカなどの鉱物由来の繊維などが挙げられる。耐熱性や耐薬品性の観点から、炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維が好ましい。燃料電池用セパレータ部材30の導電性を良好にする観点、及び燃料電池用セパレータ部材30の弾性率を高める観点から、より好ましくは炭素繊維からなる不織布である。
【0066】
燃料電池用セパレータ部材30を構成する導電性繊維基材35が、第一樹脂層37より表層側に位置することにより、燃料電池用セパレータ部材30を燃料電池用セパレータに加工する際、あるいは燃料電池の使用時において、燃料電池用セパレータ自体にクラックが発生することを抑制できる。
【0067】
導電性繊維基材35の重量は、加工性の観点から、好ましくは5~200g/m2であり、より好ましくは、5~50g/m2である。
【0068】
他の構成として、燃料電池用セパレータ部材30は、第一樹脂層37の片面のみに、第一樹脂層37から近い順に、導電性繊維基材35、第二樹脂層33、黒鉛層31が積層されている構成であってもよい。
【0069】
(燃料電池用セパレータ部材30の製造方法)
燃料電池用セパレータ部材30の製造方法は、樹脂から構成される第一樹脂層を形成する第一樹脂層形成工程と、樹脂から構成され、第一樹脂層の厚さよりも薄い、半硬化状態の第二樹脂層を形成する第二樹脂層形成工程と、第二樹脂層に導電性繊維基材を積層し、加熱圧着する導電性繊維基材積層工程と、導電性繊維基材が積層された第二樹脂層の樹脂面に、積層量が50g/m2以下である、体積抵抗率が3mΩ・cm以下の黒鉛から実質的に形成される黒鉛層を形成する黒鉛層形成工程と、第二樹脂層の導電性繊維基材に第一樹脂層を積層し、加熱加圧する第一樹脂層積層工程と、を備える。また、第一樹脂層形成工程は、離型処理が施されたフィルムに樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、半硬化状態の第一樹脂層を形成する樹脂硬化工程を含む。また、第二樹脂層形成工程は、離型処理が施されたフィルムに樹脂を塗布する第二樹脂塗布工程と、半硬化状態の第二樹脂層を形成する第二樹脂硬化工程を含む。また、黒鉛層形成工程は、黒鉛からなる黒鉛シートを導電性繊維基材が積層された第二樹脂層の樹脂面に積層し、圧着する黒鉛シート積層工程と、黒鉛シート積層工程の後に、黒鉛シートを剥がす剥離工程を含む。
【0070】
図4Aから
図4Cは、燃料電池用セパレータ部材30を製造する方法を説明するための図である。
【0071】
図4A(a)を参照して樹脂塗布工程を説明する。塗布装置401は、離型処理が施されたフィルム403の離型処理面に第一樹脂層402を構成する樹脂を塗布する。フィルム403は、実施の形態1で用いたフィルム205と同じものを用いることができる。塗布装置401は、実施の形態1で用いた塗布装置201と同じものを用いることができる。
【0072】
図4A(a-1)を参照して樹脂硬化工程を説明する。第一樹脂層402の乾燥は、乾燥機を用いて加熱して乾燥させることが好ましい。加熱乾燥条件は、第一樹脂層402の厚さにより適宜選択することができる。加熱乾燥条件は、例えば40~200℃、1~120℃である。乾燥後の第一樹脂層402は、半硬化状態(Bステージ状態)である。第一樹脂層203と同じように、第一樹脂層402を構成する樹脂の表面にタック性があってもよい。
【0073】
図4A(b)を参照して第二樹脂塗布工程を説明する。塗布装置409は、離型処理が施されたフィルム403の離型処理面に第二樹脂層404を構成する樹脂を塗布する。塗布装置409は、樹脂塗布工程の塗布装置401と同じものを用いることができる。
【0074】
図4A(b-1)を参照して第二樹脂硬化工程を説明する。第二樹脂層404は、乾燥機を用いて加熱して乾燥させることが好ましい。加熱乾燥条件は、第二樹脂層404の厚さにより適宜選択することができる。加熱乾燥条件は、例えば40~200℃、1~120℃である。乾燥後の第二樹脂層404は、半硬化状態(Bステージ状態)である。燃料電池用セパレータの導電性を良好にする観点、及び燃料電池用セパレータの弾性率を高くする観点から、乾燥後の第二樹脂層404の厚さは、第一樹脂層402よりも薄い方が好ましい。第一樹脂層402と同じように、第二樹脂層404を構成する樹脂の表面にタック性があってもよい。
【0075】
図4B(c)を参照して導電性繊維基材積層工程を説明する。積層体420は、フィルム403に積層された第二樹脂層404の樹脂面に導電性繊維基材405が積層されている。積層体420をプレス機により加熱及び加圧する。常温で加圧してもよい。加熱加圧の条件は、導電性繊維基材405の厚さ、第二樹脂層404の厚さにより適宜選択することができる。例えば、20~350℃、0.1~50MPaである。また、プレス機に代えてローラを用いて圧着してもよい。圧着の条件は第二樹脂層404の表面に導電性繊維基材405が密着する圧力であればよい。加熱を伴う圧着でもよい。また、導電性繊維基材405の代わりに、例えば炭素繊維からなる導電性の短繊維を第二樹脂層404の表面に均一に振りかけ、その後、押圧してもよい。
【0076】
図4B(d)を参照して黒鉛シート積層工程を説明する。積層体420からフィルム403を剥がし、第二樹脂層404の樹脂面に黒鉛シート406を積層する。その後、黒鉛シート406側からローラ408により圧着する。圧着は、圧着した後の黒鉛シート406を第二樹脂層404の樹脂面から剥がした際に、黒鉛層が形成される圧力で圧着することが好ましい。第二樹脂層404と黒鉛シート406との密着性を上げる観点から、加熱しながら圧着してもよい。圧着の条件は、黒鉛シート406の厚さ、第二樹脂層404の厚さにより適宜選択することができる。例えば、20~350℃、0.1~50MPaの条件である。ローラ408を用いる方法以外に、例えば、プレス機による加圧でもよく、加熱しながら加圧してもよい。
【0077】
図4B(e)を参照して第一樹脂層積層工程を説明する。積層体430を構成する導電性繊維基材405の表面に、フィルム403を剥がした第一樹脂層402を積層する。この第一樹脂層402の樹脂面に、もう一つの積層体430を導電性繊維基材405が接するように積層し、プレス機410で加熱加圧する。これにより、導電性繊維基材405に第一樹脂層402が積層された積層体440を得る。加熱加圧の条件は、積層体440の厚さにより適宜選択することができる。例えば、20~350℃、0.1~50MPaの条件である。
【0078】
図4C(f)を参照して剥離工程を説明する。燃料電池用セパレータ部材30の製造方法における剥離工程は、燃料電池用セパレータ部材10の製造方法における剥離工程と同じ方法により黒鉛シート406を剥がすことができる。例えば、積層体440の端部から黒鉛シート406のみをめくりあげる様に剥がす。第二樹脂層404から黒鉛シート406を剥がすことにより、黒鉛シート406の一部の黒鉛が第二樹脂層404に残り、黒鉛層407が形成され、積層体450を得る。積層体440を加熱加圧する前に、黒鉛シート406を剥がしてもよい。ここで、第一樹脂層402は、
図3に示す燃料電池用セパレータ部材30の第一樹脂層37に対応する。導電性繊維基材405は、導電性繊維基材35に対応する。第二樹脂層404は、第二樹脂層33に対応する。黒鉛層407は、黒鉛層31に対応する。
【0079】
黒鉛層407を形成する別の方法として、ローラの外周面に黒鉛シート406を巻き付けて固定し、そのローラで第二樹脂層404を押圧してもよい。これにより、第二樹脂層404に黒鉛層407を形成することができる。
【0080】
導電性繊維基材を積層する別の方法として、例えば、導電性繊維基材35として短繊維を使用する場合、短繊維を第一樹脂層37の表面に均一に振りかけて、短繊維を積層する方法が挙げられる。また、別の方法として、第二樹脂層33の樹脂表面に短繊維を均一に振りかけて加熱加圧し、第二樹脂層33の一方の面に短繊維が積層された導電性繊維基材35付き第二樹脂層33を得る方法が挙げられる。このような導電性繊維基材35付き第二樹脂層33は、第二樹脂層33自体が高い強度と高い弾性率を有する。この導電性繊維基材35付き第二樹脂層33を使用した燃料電池用セパレータ部材30は、第一樹脂層37の両面に、短繊維が接触するように、導電性繊維基材35付き第二樹脂層33を積層し、加熱加圧して得ることができる。
【実施例】
【0081】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0082】
実施例及び比較例における樹脂組成物に含まれる各成分として、具体的には以下のものを用いた。
【0083】
(第一樹脂層の材料)
(1)主剤A:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量211g/eq(日本化薬社製、EOCN-102S-70)、
(2)硬化剤A:ノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量105g/eq(アイカ工業社製、BRG-556)、
(3)強化剤:フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、YP-50)、
(4)硬化促進剤A:2-ウンデシルイミダゾール(四国化成社製、C11Z)、
(5)内部離型剤:カルナバワックス(日本ワックス社製、カルナバワックス1号粉末)、
(6)導電フィラーA:人造黒鉛、平均粒径25μm(SECカーボン社製、SGP-25)。
【0084】
(黒鉛シート)
(1)黒鉛シートA:厚さ200μm、密度1.0g/cm3、体積抵抗率0.7mΩ・cm(東洋炭素社製PF-20)、
(2)黒鉛シートB:厚さ40μm、密度2.0g/cm3、体積抵抗率0.1mΩ・cm(人造黒鉛シート)。
【0085】
(第二樹脂層の材料)
(1)主剤B:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量189g/eq(三菱ケミカル社製、JER828)、
(2)硬化剤A:ノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量105g/eq(アイカ工業社製、BRG-556)、
(3)強化剤:フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、YP-50)、
(4)硬化促進剤A:2-ウンデシルイミダゾール(四国化成社製、C11Z)、
(5)導電フィラーB:アセチレンブラック(デンカ社製 デンカブラック100%プレス)。
【0086】
(導電性繊維基材)
(1)炭素繊維不織布A:秤量10g/m2(日本ポリマー産業社製、CFP-010PV)、
(2)炭素繊維不織布B:秤量30g/m2(日本ポリマー産業社製、CFP-030PE)。
【0087】
実施例及び比較例おいてサンプルの作製、各評価方法、及び測定方法は以下の通り行った。
【0088】
(1)第一樹脂層用樹脂シート
(1-1)第一樹脂層用樹脂組成物
主剤A100質量部、硬化剤A48.8質量部、強化剤35質量部をそれぞれメチルエチルケトンで溶解させた後、容器にそれぞれを加えて混合液を調製した。その後、その混合液に、硬化促進剤A3質量部をメタノールで溶解させた溶解液、導電フィラーA560質量部、内部離型剤1質量部をそれぞれ加え、室温で十分撹拌し、粘度が100~3000mPa・sの範囲に収まるようにメチルエチルケトンを加えて、第一樹脂層用樹脂組成物を得た。
(1-2)第一樹脂層用樹脂シート
厚さ38μmの離型処理済みのフィルム(リンテック社製、PET38X)の離型面に、第一樹脂層用樹脂組成物を乾燥後の厚さが400μmとなるように塗布した後、70℃、7分の条件で乾燥させ、第一樹脂層用樹脂シートを得た。次に、互いの樹脂面が合わさるように第一樹脂層用樹脂シート2枚を積層した。その後、積層した樹脂シートをラミネート機(大成ラミネーター社製、VA-700)を用いて、80℃、0.4m/min、0.6MPaの条件で圧着させ、厚さが620μmの第一樹脂層用樹脂シートを得た。
【0089】
(2)第二樹脂層用樹脂シート
(2-1)第二樹脂層用樹脂組成物
主剤B100質量部、硬化剤A54.5質量部、強化剤35質量部をそれぞれメチルエチルケトンで溶解させた後、容器にそれぞれを加えて混合液を調整した。その後、その混合液に、硬化促進剤A3質量部をメタノールで溶解させた溶解液、導電フィラーB48質量部をそれぞれ加え、室温で十分撹拌し、粘度が100~3000mPa・sの範囲に収まるようにメチルエチルケトンを加えて、第二樹脂層用樹脂組成物を得た。
(2-2)第二樹脂層用樹脂シート
厚さ38μmの離型処理済みのフィルム(リンテック社製、PET38X)の離型面に、第二樹脂層用樹脂組成物を乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布した後、70℃、3分の条件で乾燥させ、第二樹脂層用樹脂シートを得た。
【0090】
(3)燃料電池用セパレータ部材10
燃料電池用セパレータ部材10は次のように作製した。粘着シート(日東電工社製SPVテープ)の粘着面に黒鉛シートを貼り合わせた。その粘着シートをラミネート機を用いて、80℃、0.4m/min、0.6MPaの条件で圧着した。次に粘着シートから黒鉛シートを剥がし取り、黒鉛シートの一部が付着した黒鉛付きの粘着シートを得た。この粘着シートを2枚準備し、フィルムを剥がした第一樹脂層用樹脂シートの両面に、粘着シートの黒鉛が付着した面をそれぞれ貼り合せて、80℃、0.4m/min、0.6MPaの条件で圧着した。その後、粘着シートを剥がし、両面に黒鉛層が形成された燃料電池用セパレータ部材10を得た。このとき、燃料電池用セパレータ部材10の黒鉛層の積層量は、1.8g/m2(片面0.9g/m2)であった。なお、黒鉛層の積層量は、以下の手順で求めた。黒鉛層を設ける前の第一樹脂層用樹脂シートと黒鉛層を設けた後の第一樹脂層用樹脂シートをそれぞれ準備する。各樹脂シートを10cm角の正方形にカットする。カット後の樹脂シートの質量をそれぞれ測る。次に、黒鉛層を設けた後の第一樹脂層用樹脂シートの質量から黒鉛層を設ける前の樹脂シートの質量を差し引く。その差し引いた質量をカットしたサンプルの面積で除して算出した値を、単位面積あたりの黒鉛層の積層量とした。
【0091】
(4)燃料電池用セパレータ部材30
燃料電池用セパレータ部材30を次のように作製した。まず、第二樹脂層用樹脂シートの樹脂面に炭素繊維不織布を積層し、ラミネート機を用いて、100℃、0.4m/min、0.6MPaの条件で圧着した。次に、第二樹脂層用樹脂シートからフィルムを剥がし取り、樹脂面に黒鉛シートを積層し、80℃、0.4m/min、0.6MPaの条件で圧着した後、黒鉛シートを剥がし取り、炭素繊維不織布/第二樹脂層用樹脂シート/黒鉛層の順で積層された積層体を得た。このとき、黒鉛層の積層量は12g/m2の積層量であった。この積層体を2枚準備し、第一樹脂層用樹脂シートの両面に炭素繊維不織布の面が合わさるように積層体をそれぞれ積層し、100℃、0.2m/min、0.6MPaの条件で圧着し、燃料電池用セパレータ部材30を得た。なお、燃料電池用セパレータ部材30における黒鉛層の積層量の測定方法は、黒鉛層を設ける前の第一樹脂層用樹脂シートと黒鉛層を設けた後の第一樹脂層用樹脂シートを、黒鉛層を設ける前の炭素繊維不織布付き第二樹脂層用樹脂シートと黒鉛層を設けた後の炭素繊維不織布付き第二樹脂層用樹脂シートに、変えた以外は、前述した燃料電池用セパレータ部材10の黒鉛の積層量と同じ手順で求めた。
【0092】
<体積抵抗率の測定>
導電性の評価は、体積抵抗率を測定することで行った。
(1)測定用サンプルの作製
100mm×100mmにカットした燃料電池用セパレータ部材(サンプル)を準備した。プレス機(井元製作所製、手動油圧加熱プレスIMC-185B型改)の熱板に離型剤(中京油脂社製、リムリケイN-849)を塗布した後、サンプルを載置し、180℃、3分、20MPaの条件でプレス成形し、平板の測定用サンプルを得た。
(2)測定方法
測定用サンプルは、4探針法(日置電機社製、RM3545)を用い、JIS K7194に準じて体積抵抗率(mΩ・cm)を測定した。
【0093】
<厚さの測定>
厚さは、測定用サンプルを作製した際に、マイクロメータを使用し測定した。なお、黒鉛層の厚さは、光学顕微鏡を用いて測定した。
【0094】
<強度の測定>
(1)測定用サンプルの作製
体積抵抗率を測定する際に作製したサンプルを、幅10mm、長さ20mmにカットし、測定用サンプルとした。
(2)測定方法
オートグラフ試験機(島津製作所製、AG-10)を用いて測定を行った。測定は、3点曲げ(支点間距離10mm、試験速度2mm/min)で行い、破壊荷重を測定した。強度(MPa)は、JIS K7171に準拠し、得られた破壊荷重から算出した。
【0095】
<水蒸気透過率の測定>
ガスバリア性の評価は、水蒸気透過率を測定することで行った。
(1)測定用サンプルの作製
体積抵抗率を測定する際に作製したサンプルを、直径76mmの円形状にカットして、測定用サンプルとした。
(2)測定方法
水蒸気透過率(%)は、JIS Z0208に準拠し、40℃、90%RHの条件下で測定し、1m2あたりの24時間の透湿量の値(g/m2・24h)として求めた。評価基準は以下の通りとした。
Excellent:水蒸気透過率が13%未満である。
Good:水蒸気透過率が13%以上、32%未満である。
Poor:水蒸気透過率が32%以上である。
【0096】
<加工性>
加工性は、測定用サンプルをプレスで作製する際、プレス機の熱板への樹脂の付着の有無を、目視で確認することにより評価した。評価基準は以下の通りとした。
良好:プレス機の熱板への樹脂の付着なし。
不良:プレス機の熱板への樹脂の付着あり。
【0097】
<加工後の膨れ>
加工後のサンプルについて、膨れの有無を目視で確認した。評価基準は以下の通りとした。
Good:膨れが全くないか、膨れはあるが、実用上は問題ない。
Poor:膨れがあり、実用上問題がある。
【0098】
<実施例1(燃料電池用セパレータ部材10、黒鉛層両面構成)>
(3)燃料電池用セパレータ部材10の作製手順に従い、両面に黒鉛層が形成された燃料電池用セパレータ部材10を作製した。
【0099】
<実施例2(燃料電池用セパレータ部材10、黒鉛層片面構成)>
(3)燃料電池用セパレータ部材10の作製手順に従い、片面のみに黒鉛層が形成された燃料電池用セパレータ部材10を作製した。
【0100】
<実施例3(燃料電池用セパレータ部材30、両面黒鉛層構成)>
炭素繊維不織布に炭素繊維不織布Aを用いて、(4)燃料電池用セパレータ部材30の作製手順に従い、両面に黒鉛層が形成された燃料電池用セパレータ部材30を作製した。
【0101】
<実施例4(燃料電池用セパレータ部材30、両面黒鉛層構成)>
炭素繊維不織布に炭素繊維不織布Bを用いて、(4)燃料電池用セパレータ部材30の作製手順に従い、両面に黒鉛層が形成された燃料電池用セパレータ部材30を作製した。
【0102】
<比較例1(燃料電池用セパレータ部材10、黒鉛層なし)>
(1-2)第一樹脂層用樹脂シートの作製手順に従って、厚さが約360μmの第一樹脂層用樹脂シートを作製した。これを黒鉛層がない燃料電池用セパレータ部材10として用いた。
【0103】
<比較例2(燃料電池用セパレータ部材10、黒鉛層の積層量200g/m2超過)>
(1-2)第一樹脂層用樹脂シートの作製手順に従って、厚さ100μmの第一樹脂層用樹脂シートを作製した。この樹脂シートの両面に黒鉛シートAを積層し、80℃、0.2m/min、0.6MPaの条件で圧着して、黒鉛層の片面の積層量が200g/m2の燃料電池用セパレータ部材10を作製した。
【0104】
<比較例3(燃料電池用セパレータ部材10、黒鉛層の積層量80g/m2超過)>
(1-2)第一樹脂層用樹脂シートの作製手順に従って、厚さ550μmの第一樹脂層用樹脂シートを作製した。この樹脂シートの両面に黒鉛シートBを積層し、80℃、0.2m/min、0.6MPaの条件で圧着して、黒鉛層の片面の積層量が80g/m2の燃料電池用セパレータ部材10を作製した。
【0105】
【表1】
(*)実施例2について黒鉛層が設けられていない面は、フィルムを設けて成形した。
【0106】
表1の結果より、導電率の指標となる体積抵抗率は、実施例1~4のいずれも比較例1より低く、ガスバリア性の指標となる水蒸気透過率は、実施例1~4のいずれも比較例1、2よりも良好であった。加工性及び加工後の膨れは、すべての実施例において良好であった。さらに、実施例3、4の強度は、比較例に比べて少なくとも1.7倍以上であることがわかった。
【0107】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0108】
本出願は、2020年6月5日に出願された、日本国特許出願特願2020-98939号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2020-98939号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照して取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の燃料電池用セパレータ部材は、燃料電池用セパレータの部材としての産業上利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0110】
10、30 燃料電池用セパレータ部材、
11、31、210、407 黒鉛層、
13、37、203、402 第一樹脂層、
201、401、409 塗布装置、
205、403 フィルム、
207、406 黒鉛シート、
209、408 ローラ、
33、404 第二樹脂層、
35、405 導電性繊維基材、
410 プレス機、
206、220、420、430、440、450 積層体。