(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】自動車外装用水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230213BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230213BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230213BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20230213BHJP
C09D 101/00 20060101ALI20230213BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230213BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230213BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D175/04
C09D133/00
C09D167/00
C09D101/00
C09D5/00
B05D7/24 301F
B05D7/24 303G
B05D7/24 303E
B05D7/14 L
(21)【出願番号】P 2022541774
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016615
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021096364
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池浦 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】横田 玄
(72)【発明者】
【氏名】西口 英佑
(72)【発明者】
【氏名】山田 紘彰
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/142639(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175468(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/139138(WO,A1)
【文献】特開2018-076495(JP,A)
【文献】特開2019-001918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)及びナノセルロース(D)を含有する自動車外装用水性塗料組成物であって、該ナノセルロース(D)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し固形分量で0.5~2.0質量部であり、かつ塗料固形分濃度が45~65質量%の範囲内であり、かつブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度が350~1200mPa・sの範囲内であることを特徴とする自動車外装用水性塗料組成物。
【請求項2】
前記樹脂粒子(A)の平均粒子径が300~800nmの範囲内である、請求項1に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
【請求項3】
前記ナノセルロース(D)が、セルロースナノファイバー(D1)及びセルロースナノクリスタル(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
【請求項4】
20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)を含有しないか、又は該20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し19質量部以下である、請求項1に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
【請求項5】
前記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し1~19質量部の範囲内である、請求項4に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
【請求項6】
樹脂粒子(A)が、ウレタン樹脂粒子(A1)、アクリル樹脂粒子(A2)、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)、ポリエステル樹脂粒子(A4)及びアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含有する請求項1に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の自動車外装用水性塗料組成物が塗装された自動車。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の自動車外装用水性塗料組成物を被塗物に塗装することを含む塗膜形成方法。
【請求項9】
工程(1):被塗物に請求項1~
6のいずれか1項に記載の自動車外装用水性塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):未硬化の該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):未硬化の該第2着色塗膜上にクリヤコート塗料組成物を塗装してクリヤコート塗膜を形成せしめる工程、ならびに
工程(4):該未硬化の、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤコート塗膜を同時に加熱硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外装用水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、塗料から放出される揮発性有機化合物(VOC)を低減することが要求されており、産業機械、建設機械、鋼製家具及び物置、自動車外板、自動車部品等の工業製品塗装の各分野で有機溶剤型塗料から水性塗料への置換が進んでいる。
【0003】
自動車の塗装においても、以前は大量の有機溶剤型塗料が使用され、それらの塗料から排出されるVOCの低減が急務となっていたが、自動車の下塗り、中塗り及び上塗り塗装工程で用いられる各種塗料に関して、有機溶剤型塗料から水性塗料への置換が進められ、現在では、水性塗料による塗装が主流となっている。また、該水性塗料が、溶媒の一部として有機溶剤を含有する場合、該有機溶剤の含有量を低減することが求められている。
【0004】
また、以前は中塗り、上塗りの塗膜層ごとに行われていた加熱硬化工程を一部省略(主に中塗り塗装後の加熱硬化工程やプレヒート工程を省略)することによる塗装工程の短縮も環境負荷低減のために開発が進められ、省工程での自動車塗装も主流になりつつある。
【0005】
さらに水性塗料は、溶媒である水の蒸発潜熱が高く、極性も高いため塗装作業幅(塗装作業性が成立する温湿度条件の許容範囲)が狭く、有機溶剤型塗料より適正な塗装環境とするためのエネルギーコスト(塗装ブース環境の空調等)も要するため、塗装環境の空調にかかるコスト低減も求められている。
【0006】
空調に必要な設備等の観点から、夏場の冷房よりも冬場の暖房の方がエネルギーコストを要し、冬場の低温環境下は溶媒である水が蒸発しにくく、塗装作業性からはタレ性に厳しい条件であり、タレ性向上のため、水性塗料の塗装固形分を高濃度化することが改良手法として有望視され、水性塗料の塗装環境の空調にかかる環境負荷低減のために、水性塗料の高固形分濃度化(ハイソリッド化)の開発も進められている。
【0007】
例えば、特許文献1には、平均粒子径が300~1000nmである樹脂粒子(A)、
数平均分子量300~2000のポリオキシアルキレン基含有ポリオール(B)及び/又は特定の構造を有するジエステル化合物(C)、ならびに架橋剤(D)を含有し、ポリオキシアルキレン基含有ポリオール(B)及びジエステル化合物(C)の固形分総量が、樹脂粒子(A)、ポリオキシアルキレン基含有ポリオール(B)、ジエステル化合物(C)及び架橋剤(D)の固形分総量に対して、5~25質量%である、水性塗料組成物が、塗装作業幅が広く、仕上がり外観及び耐チッピング性等の塗膜性能にも優れ、高固形分であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の水性塗料組成物は、耐ワキ性が不十分となる場合があった。ここで、ワキとは、塗膜表面の泡状の塗膜欠陥であり、塗膜内部に残留している溶媒が、加熱硬化中に急激に蒸発して塗膜内に気泡を生じ、これと同時に塗膜中の樹脂成分が固形化することにより、気泡が生じた部分が泡状欠陥となって現れるものである。上記ワキはピンホールと呼ばれる場合もある。
【0010】
そこで、本発明は、塗料固形分濃度が高く、かつ耐タレ性及び耐ワキ性に優れた自動車外装用水性塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)及びナノセルロース(D)を含有する水性塗料組成物であって、該ナノセルロース(D)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し固形分量で0.5~2.0質量部の範囲内であり、かつ塗料固形分濃度が45~65質量%の範囲内であり、かつブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度が350~1200mPa・sの範囲内であることを特徴とする自動車外装用水性塗料組成物によれば、上記目的を達成できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は下記<1>~<8>に関するものである。
<1>樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)及びナノセルロース(D)を含有する自動車外装用水性塗料組成物であって、該ナノセルロース(D)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し固形分量で0.5~2.0質量部であり、かつ塗料固形分濃度が45~65質量%の範囲内であり、かつブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度が350~1200mPa・sの範囲内であることを特徴とする自動車外装用水性塗料組成物。
<2>前記樹脂粒子(A)の平均粒子径が300~800nmの範囲内である、<1>に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
<3>前記ナノセルロース(D)が、セルロースナノファイバー(D1)及びセルロースナノクリスタル(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である<1>又は<2>に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
<4>20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)を含有しないか、又は該20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し19質量部以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
<5>前記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し1~19質量部の範囲内である、<4>に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
<6><1>~<5>のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物が塗装された自動車。
<7><1>~<5>のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物を被塗物に塗装することを含む塗膜形成方法。
<8>工程(1):被塗物に<1>~<5>のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):未硬化の該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):未硬化の該第2着色塗膜上にクリヤコート塗料組成物を塗装してクリヤコート塗膜を形成せしめる工程、ならびに
工程(4):該未硬化の、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤコート塗膜を同時に加熱硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗料固形分濃度が高く、かつ耐タレ性及び耐ワキ性に優れた自動車外装用水性塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)及びナノセルロース(D)を含有する水性塗料組成物であって、該ナノセルロース(D)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し固形分量で0.5~2.0質量部であり、かつ塗料固形分濃度が45~65質量%であり、かつブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度が350~1200mPa・sの範囲内であることを特徴とする自動車外装用水性塗料組成物である。
【0015】
なお、本明細書において、「固形分」は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、樹脂、硬化剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。上記固形分は、例えば、アルミ箔カップ等の耐熱容器に試料を量り取り、容器底面に該試料を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する成分の質量を秤量して求めることができる。
【0016】
また、本明細書において、「固形分濃度」は、組成物中の上記固形分の含有質量割合を意味する。このため、例えば、組成物の固形分濃度は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に組成物を量り取り、容器底面に該組成物を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する組成物中の成分の質量を秤量して、乾燥前の組成物の全質量に対する乾燥後に残存する成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
【0017】
<樹脂粒子(A)>
樹脂粒子(A)は、樹脂粒子である限り樹脂の種類は特に限定されない。本明細書において樹脂粒子は、水又は水及び有機溶剤の混合溶媒である水性溶媒に粒子の状態で分散し、レーザ回折・散乱法によるサブミクロン粒度分布測定装置で測定した際に粒子径を有する状態で水又は水性溶媒中に存在しうる樹脂を意味する。上記レーザ回折・散乱法によるサブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いることができる。
【0018】
上記樹脂粒子(A)の平均粒子径は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐ワキ性及び形成される塗膜の平滑性等の観点から、50~1000nmの範囲内であることが好ましく、70~800nmの範囲内であることが好ましい。なかでも、得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化及び耐ワキ性等の観点から、300~800nmの範囲内であることが好ましく、320~750nmの範囲内であることがさらに好ましく、330~730nmの範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0019】
本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、前記レーザ回折・散乱法によるサブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。
【0020】
上記樹脂粒子の種類としては、例えば、ウレタン樹脂粒子(A1)、アクリル樹脂粒子(A2)、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)、ポリエステル樹脂粒子(A4)、アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)、エポキシ樹脂粒子等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
なかでも、得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐タレ性向上及び得られる塗膜の仕上がり外観向上等の観点から、樹脂粒子(A)が、ウレタン樹脂粒子(A1)、アクリル樹脂粒子(A2)、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)、ポリエステル樹脂粒子(A4)及びアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含有することが好ましく、ウレタン樹脂粒子(A1)、アクリル樹脂粒子(A2)及びアクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含有することがさらに好ましい。なかでも、ウレタン樹脂粒子(A1)及びアクリル樹脂粒子(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含有することがさらに好ましく、ウレタン樹脂粒子(A1)及びアクリル樹脂粒子(A2)を含有することが特に好ましい。
【0022】
また、上記樹脂粒子(A)は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の硬化性等の観点から、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有していることが好ましい。なかでも、上記樹脂粒子(A)が、水酸基及び/又はカルボキシル基を有することが好ましく、水酸基を有することがさらに好ましい。
【0023】
また、前記樹脂粒子(A)は、水酸基を有する場合、得られる自動車外装用水性塗料組成物の硬化性等の観点から、水酸基価が1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~100mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、5~90mgKOH/gの範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0024】
また、樹脂粒子(A)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、樹脂粒子(A)の安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、酸価が1~100mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、3~30mgKOH/gの範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0025】
また、上記樹脂粒子(A)は、コア/シェル型構造を有するものであってもよい。ここで、「シェル部」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。上記コア/シェル型構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよく、あるいはコア部の一部にシェル部の構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、該樹脂粒子(A)においてコア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。コア/シェル構造は、例えば、組成の異なる単量体組成物を多段階で、反応を行うことにより得ることができる。
【0026】
上記樹脂粒子(A)が酸基を有する場合には、水分散にあたり、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうことが、水分散性を向上させる観点から好ましい。
【0027】
上記中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、2-アミノプロパノール、3-アミノプロパノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール等の第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン等の第2級モノアミン化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン等の第3級モノアミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン化合物;ピリジン;モルホリン等を挙げることができる。
【0028】
これらのうち、第1級モノアミン化合物、第2級モノアミン化合物、第3級モノアミン化合物及びポリアミン化合物を使用することが好ましい。
【0029】
前記樹脂粒子(A)を水分散体としたときの粘度は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の粘度等の観点から、ブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における粘度が、1~10000mPa・sの範囲内であることが好ましく、200~8000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、300~7000mPa・sの範囲内であることが特に好ましい。
【0030】
<ウレタン樹脂粒子(A1)>
ウレタン樹脂粒子(A1)は、一般に、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含む構成成分から得ることができる。
【0031】
ポリイソシアネート成分としては、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0032】
上記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トランス-1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0033】
上記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0034】
上記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
上記1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネートとしては、例えば、上記例示のジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物、ビューレット三量化物、トリメチロールプロパンアダクト化物等;トリフェニルメタントリイソシアネート、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート等の三官能以上のポリイソシアネート等を挙げることができ、これらのイソシアネート化合物はカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよい。
【0036】
上記のポリイソシアネートは、ブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
【0037】
前記ポリオール成分としては、例えば、低分子量のものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の4価のアルコール等を挙げることができる。高分子量のものとして、ポリカーボネートポリオール、エステル結合を有するポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができる。
【0038】
上記ポリカーボネートポリオールは、常法により、公知のポリオールとカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得られる化合物である。ポリオールとしては、ジオール、3価以上のアルコール等の多価アルコールを挙げることができる。
【0039】
上記ジオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール及び1,10-デカンジオール等の直鎖状ジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3- プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の分岐ジオール;1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式系ジオール;p-キシレンジオール、p-テトラクロロキシレンジオール等の芳香族系ジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテル系ジオール等を挙げることができる。これらのジオールは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0040】
上記3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンの2量体、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの3価以上のアルコールは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0041】
上記カルボニル化剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、ホスゲン等を挙げることができ、これらの1種を又は2種以上を組合せて使用することができる。これらのうち好ましいものとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
【0042】
上記エステル結合を有するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。
【0043】
上記のポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性誘導体との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られるものを挙げることができる。
【0044】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のアルコール類を挙げることができる。
【0045】
上記多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-ジカルボキシルメチレンシクロヘキサン、ナジック酸、メチルナジック酸等の脂環式ジカルボン酸類、トリメリット酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類等の多価カルボン酸、これらの多価カルボン酸の酸無水物、該多価カルボン酸のクロライド、ブロマイド等のハライド、該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級エステルや、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、ジメチル-ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン等のラクトン類を挙げることができる。
【0046】
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンジオール等のカプロラクトンの開環重合物等を挙げることができる。
【0047】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記の低分子ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。
【0048】
上記シリコーンポリオールとしては、分子中に、シロキサン結合を有する末端がヒドロキシル基のシリコーンオイル類等を挙げることができる。
【0049】
また、ポリオール成分として、カルボキシル基含有ジオールを使用することができる。該カルボキシル基含有ジオールは、ポリウレタン分子に親水性基を導入するために用いられる。親水性基はカルボキシル基である。具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等を挙げることができる。
【0050】
ポリイソシアネート成分及びポリオール成分の他、必要に応じてアミン成分を使用することができる。アミン成分としては、モノアミン化合物、ジアミン化合物等を挙げることができる。
【0051】
上記モノアミン化合物としては、特に制限を受けず、周知一般のモノアミン化合物を単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。該モノアミン化合物としては、エチルアミン、プロピルアミン、2-プロピルアミン、ブチルアミン、2-ブチルアミン、第三ブチルアミン、イソブチルアミン等のアルキルアミン;アニリン、メチルアニリン、フェニルナフチルアミン、ナフチルアミン等の芳香族アミン;シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;2-メトキシエチルアミン、3メトキシプロピルアミン、2-(2-メトキシエトキシ)エチルアミン等のエーテルアミン;エタノールアミン、プロパノールアミン、ブチルエタノールアミン、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルアミノプロピルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。なかでもアルカノールアミンがポリウレタン分子に対して良好な水分散安定性を与え得るので好ましく、2-アミノエタノール、ジエタノールアミンが供給安定性等の観点から特に好ましい。
【0052】
上記ジアミン化合物としては、特に制限を受けず、周知一般のジアミン化合物を単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。該ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の前記例示の低分子ジオールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものである低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m-キシレンジアミン、α-(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類;ヒドラジン;上記のポリエステルポリオールに用いられる多価カルボン酸で例示したジカルボン酸とヒドラジンとの化合物であるジカルボン酸ジヒドラジド化合物等を挙げることができる。これらのジアミン化合物のなかでは、低分子ジアミン類が取扱い作業性等の観点から好ましく、なかでもエチレンジアミンが特に好ましい。
【0053】
前記ウレタン樹脂粒子(A1)には、上記各成分の他に、ポリウレタン分子に分岐や架橋構造を与える内部分岐剤及び内部架橋剤を用いてもよい。これらの内部分岐剤及び内部架橋剤としては、3価以上のポリオールを好適に使用することができ、例えばトリメチロールプロパンを挙げることができる。
【0054】
上記ウレタン樹脂粒子(A1)の製造方法については、特に制限を受けず、周知一般の方法を適用することができる。製造方法としては、反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒中でプレポリマー又はポリマーを合成してから、これを水にフィードして分散させる方法が好ましい。例えば、(i)上記溶媒中でポリイソシアネート成分及びポリオール成分からプレポリマーを合成して、これを水中で必要に応じて使用されるアミン成分と反応させる方法、(ii)ポリイソシアネート成分、ポリオール成分及び必要に応じて使用されるアミン成分からポリマーを合成して、これを水中にフィードして分散させる方法等を挙げることができる。また、必要に応じて使用される中和剤成分は、予めフィードする水中に加えておいてもよく、フィードの後で加えてもよい。
【0055】
上記の好適な製造方法に使用される、上記反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン等を挙げることができる。これらの溶媒は、通常、プレポリマー又はポリマーを製造するために用いられる上記原料の合計量に対して、3~100質量%使用することができる。
【0056】
上記の製造方法において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分及び必要に応じて使用されるアミン成分との配合比は、特に制限を受けるものではない。該配合比は、反応させる段階でのポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、ポリオール成分及びアミン成分中のイソシアネート反応性基とのモル比に置き換えることができる。
【0057】
上記ポリオール成分及びアミン成分中のイソシアネート反応性基は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の分散安定性、形成される塗膜の物性及び基材との密着性等の観点から、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基1モルに対して、0.5~2.0モルの範囲内が好ましい。
【0058】
また、必要に応じて使用される中和剤による中和率は、得られるウレタン樹脂粒子(A1)に対し、充分な分散安定性を与える範囲に設定することが好ましい。該ウレタン樹脂粒子(A1)中のカルボキシル基のモル数1に対して、0.5~2.0倍当量の範囲内が好ましく、0.7~1.5倍当量の範囲内がさらに好ましい。
【0059】
上記ウレタン樹脂粒子(A1)の分散性を向上させるために、界面活性剤等の乳化剤を使用することもできる。
【0060】
上記乳化剤としては、ウレタン樹脂エマルションに使用される周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができ、これらのうち、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を好適に使用することができる。該アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤等を使用することもできる。
【0061】
ウレタン樹脂粒子(A1)の平均粒子径は、原材料(ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、アミン成分等)組成、乳化剤の種類、乳化剤の量、乳化剤の仕込み配分、中和剤の種類、中和剤の量等の粒径制御要因を調整することにより、所望の平均粒子径とすることができる。
【0062】
また、ウレタン樹脂粒子(A1)の水分散体において、その固形分は、特に限定されないが、得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化及びウレタン樹脂粒子(A1)の分散安定性等の観点から、該固形分は25~55質量%の範囲内であることが好ましく、30~50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0063】
<アクリル樹脂粒子(A2)>
アクリル樹脂粒子(A2)は、乳化重合により合成されるもの及び溶液重合により合成されるもののいずれであってもよく、両者を併用することもできるが、得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化等の観点から、乳化重合により合成されるものを好適に使用することができる。
【0064】
上記乳化重合は、シード重合法、ミニエマルション重合法等の従来公知の方法により行うことができ、例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用して重合性不飽和モノマーを乳化重合することにより、行うことができる。
【0065】
上記乳化重合は、さらに具体的には、水、又は必要に応じてアルコール等の有機溶媒を含む水性溶媒中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、重合性不飽和モノマー及び重合開始剤を滴下することにより行うことができる。乳化剤と水とを用いて予め乳化した重合性不飽和モノマーを同様に滴下することもできる。
【0066】
上記乳化剤としては、前記ウレタン樹脂粒子(A1)の説明で例示したアニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤を同様に好適に使用することができる。
【0067】
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの総量を基準にして、0.1~15質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~10質量%の範囲内であることがさらに好ましく、1~5質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0068】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組合せて使用することができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤とすることもできる。
【0069】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの総量を基準にして、0.1~5質量%程度、特に0.2~3質量%程度が好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性溶媒に含有させてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0070】
また、得られるアクリル樹脂粒子の分子量を調整する目的で、連鎖移動剤を使用することもできる。該連鎖移動剤としては、メルカプト基を有する化合物が包含され、具体的には例えば、ラウリルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2-メチル-5-tert-ブチルチオフェノール、メルカプトエタノール、チオグリセロール、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート等を挙げることができる。該連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、一般に、使用される全モノマーの総量を基準にして、0.05~10質量%の範囲内、特に0.1~5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0071】
反応温度は主として、前記重合開始剤の種類により決定されるものであり、例えば、アゾ化合物では60~90℃であり、レドックス開始剤では30~70℃で行うことが好ましい。一般に、反応時間は1~8時間とすることができる。
【0072】
重合性不飽和モノマーとしては、従来から公知のものが使用でき、例えば、下記モノマー(i)~(xxi)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。但し、本発明においては、後述する(xviii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、後述する(x)水酸基含有重合性不飽和モノマーからは除かれる。上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物:N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) 水酸基含有重合性不飽和モノマー:2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等。
(xi) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等。
(xii) 含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xiii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等。
(xiv) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii) リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xviii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2-ヒドロキシ-4(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等。
(xix) 光安定性重合性不飽和モノマー:4-(メタ)アクリロイルオキシ1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等。
(xx) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xxi) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー:無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0073】
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0074】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0075】
アクリル樹脂粒子(A2)は、架橋樹脂粒子であってもよく、架橋樹脂粒子は、例えば、前記(xiii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーをモノマー成分として使用することにより得ることができる。
【0076】
前記(xiii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、なかでも、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0077】
アクリル樹脂粒子(A2)のガラス転移温度は、形成される塗膜の平滑性等の観点から、-50~80℃の範囲内であることが好ましく、-50~60℃の範囲内であることがさらに好ましく、-40~60℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0078】
本明細書において、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下記式により算出される値である。1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)-273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成したときの静的ガラス転移温度とする。
【0079】
該静的ガラス転移温度は、例えば示差走査熱量計「DSC-50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で-100℃~150℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側における最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とすることによって、測定することができる。
【0080】
アクリル樹脂粒子(A2)の平均粒子径は、モノマー組成、乳化剤の種類、乳化剤の量、乳化剤の仕込み配分、中和剤の種類、中和剤の量等の粒径制御要因を調整することにより、所望の平均粒子径とすることができる。
【0081】
また、アクリル樹脂粒子(A2)の水分散体において、その固形分は、特に限定されない。得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化及びアクリル樹脂粒子(A2)の分散安定性等の観点から、該固形分は20~70質量%の範囲内であることが好ましく、25~65質量%の範囲内であることがさらに好ましく、30~60質量%の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0082】
<アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)>
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)は、同一ミセル内にウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とが存在してなる複合樹脂粒子である。本発明の自動車外装用水性塗料組成物において、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)の形態は特に限定されない。
【0083】
上記アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)の上記ウレタン樹脂成分と上記アクリル樹脂成分との構成比率は、形成される塗膜の耐チッピング性及び得られる自動車外装用水性塗料組成物の洗浄性(例えば、塗装作業終了後、塗装機を洗浄して塗装機に付着した塗料組成物を落とす際の汚れの落としやすさ)等の観点から、ウレタン樹脂:アクリル樹脂=5:95~90:10(質量比)とすることが好ましく、10:90~80:20とすることがさらに好ましい。
【0084】
上記ウレタン樹脂成分は、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用して合成することができる。
【0085】
上記ウレタン樹脂成分は、例えば、以下のようにして合成することができる。
【0086】
イソシアネート基との反応性を有しない(メタ)アクリレートモノマー中で、ポリイソシアネート化合物、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を反応させて、イソシアネート基末端もしくは、水酸基末端のウレタンプレポリマーを生成させる。
【0087】
ここで上記ポリオールはコスト及び形成される塗膜の耐チッピング性等の観点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールを含むことが好ましい。
【0088】
この反応において、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物のイソシアネート反応性基の合計は、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基1モルに対して、0.3~1.2モルの範囲内であることが好ましい。
【0089】
上記プレポリマー化反応は50~100℃の範囲内で行うことが好ましく、後述する(メタ)アクリレートモノマーの熱による重合を防ぐため、空気の存在下で、p-メトキシフェノール等の重合禁止剤を(メタ)アクリルモノマーに対して20~3000ppm程度の範囲で添加して行なうことが好ましい。
【0090】
また、この際、ウレタン化反応の触媒としてジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物、トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等の有機ビスマス化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を必要に応じて使用することができる。このようにしてイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーの(メタ)アクリレートモノマー溶液を得ることができる。
【0091】
上記ポリイソシアネート化合物及び上記ポリオールとしては、前記ウレタン樹脂粒子(A1)の説明において例示したポリイソシアネート成分及びポリオール成分を同様に使用することができる。
【0092】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物等を挙げることができる。この化合物は、ウレタン樹脂中でイオン形成基として作用する。
【0093】
分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1-カルボキシ-1,5-ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸等のアルカノールカルボン酸類、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等を挙げることができる。
【0094】
分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物としては、例えば、2-スルホン酸-1,4-ブタンジオール、5-スルホン酸-ジ-β-ヒドロキシエチルイソフタレート、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸等を挙げることができる。
【0095】
活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物として分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基、もしくは分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物を使用した場合、塩を形成し親水性化するために中和剤として前記樹脂粒子(A)の説明において例示した中和剤を使用することができる。カルボキシル基もしくはスルホン酸に対する中和率により、粒子径を調整することができる。
【0096】
上記中和剤としては、形成される塗膜の耐水性等の観点からトリエチルアミンもしくは、ジメチルエタノールアミンが好ましい。
【0097】
前記アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)における前記アクリル樹脂成分は、重合性不飽和モノマーを重合して得ることができる。
【0098】
上記重合性不飽和モノマーとしては、前記アクリル樹脂粒子(A2)において例示した重合性不飽和モノマーを同様に使用することができる。該重合性不飽和モノマーは、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0099】
上記アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)の上記アクリル樹脂成分は、形成される塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~180mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、5~170mgKOH/gの範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0100】
また、上記アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)のアクリル樹脂成分は、形成される塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、酸価が0~60mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、0~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、0~40mgKOH/gの範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0101】
さらに、上記アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)の上記アクリル樹脂成分のガラス転移温度は、形成される塗膜の平滑性等の観点から、-60~60℃の範囲内であることが好ましく、-55~55℃の範囲内であることがさらに好ましく、-50~50℃の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0102】
前記のイソシアネート基との反応性を有しない(メタ)アクリレートモノマー中でウレタンプレポリマーを生成させることで得られるウレタンプレポリマーの(メタ)アクリレートモノマー溶液に、さらに(メタ)アクリレートモノマーを追加する場合、追加時期は特に限定されず、後述のウレタンプレポリマーの中和工程の前または後の任意の時期に添加することができる。また、中和したウレタンプレポリマーを水に分散させた後、この分散液に(メタ)アクリレートモノマーを添加することもできる。
【0103】
更に、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーの(メタ)アクリルモノマー溶液に、イソシアネート基と反応性を有する活性水素基をもつ(メタ)アクリルモノマーを反応させることにより、後の(メタ)アクリルモノマーの重合工程にて、ウレタンプレポリマーとアクリル樹脂とのグラフト化反応をさせることもできる。
【0104】
前記アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)の代表的な製造方法を以下に示すが、この方法に限定されるものではなく、従来既知のアクリルウレタン複合樹脂粒子の製造方法も使用することができる。
【0105】
前記ウレタン樹脂成分のウレタンプレポリマー生成までの方法は、前記したとおりである。この方法において、ウレタンプレポリマーの合成は、イソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマー((メタ)アクリルモノマー)中で行う。
【0106】
ここで、このイソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)は、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分(アクリル樹脂成分が、コアシェル構造を有するものである場合は、アクリル樹脂成分の中心部分(コア部))の一部又は全部となるものである。
【0107】
次いで重合反応液に中和剤を添加した後、水を加えて油層と水層を転相して水に分散させて水分散液を得る。この水分散液に重合開始剤を加えて、重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)の重合反応を行う。必要に応じて、ウレタン樹脂成分(ウレタンプレポリマー)の鎖伸長反応(イソシアネート基同士を水で鎖伸長反応させる)もさらに行うことにより、すべての重合反応を完結させる。
【0108】
上記水分散液を得る方法としては、必要に応じて次にあげるような方法も行うことができる。
【0109】
上記ウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)溶液を水に分散する際、ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートモノマーを添加することによって、水への分散が良好となり尚かつ均一でより安定な水分散液を得ることができる。ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートモノマーとは、末端にヒドロキシ基、又は炭素数1~3のアルキレンオキシ基を有し、且つポリオキシエチレン基、及び/又はポリオキシプロピレン基を有する重合性不飽和モノマーである。
【0110】
また、上記ウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)溶液の水分散液の安定性及び重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)を重合する際の安定性向上等の観点から、少量の乳化剤を併用することもできる。
【0111】
乳化剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が好適であり、前記ウレタン樹脂粒子(A1)の説明において例示した乳化剤を同様に使用することができる。
【0112】
上記ウレタンプレポリマーの不飽和モノマー((メタ)アクリルモノマー)溶液を水に分散する方法としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
【0113】
上記のようにしてウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)溶液の水分散液を得た後、これに重合開始剤を添加して温度を上昇させて重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)の重合温度の範囲内で、必要に応じてウレタンプレポリマーの水による鎖延長を行うと共に、重合性不飽和モノマー((メタ)アクリルモノマー)の重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得ることができる。
【0114】
該水分散液における重合反応は、公知のラジカル重合反応により行うことができる。上記重合開始剤は水溶性開始剤及び油溶性開始剤のいずれも使用することができる。油溶性開始剤を使用する場合は、水分散液とする前に予めウレタンプレポリマーの不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)溶液に添加しておくことが好ましい。
【0115】
上記重合開始剤は、通常、重合性不飽和モノマー((メタ)アクリルモノマー)の総量に対して、0.05~5質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0116】
上記重合開始剤としては、前記アクリル樹脂粒子(A2)の説明で例示した重合開始剤を同様に使用することができる。該重合開始剤は、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0117】
有機又は無機過酸化物は、還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することもできる。該還元剤としては、L-アスコルビン酸、L-ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ロンガリット等を挙げることができる。
【0118】
上記重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性溶媒に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。また、始めに全量を一括仕込みする方法、全量を時間をかけて滴下する方法、始めに一部を仕込んで残りを後から追加する方法等のいずれの方法でも行うことができる。
【0119】
また、重合反応を十分に行い、残存モノマーを削減する観点から、重合反応の途中、或いは一旦重合を終えた後に重合開始剤を追加して、さらに重合反応を行うこともできる。この際、重合開始剤の組み合わせは任意に選ぶことができる。
【0120】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1~5質量%程度であることが好ましく、0.2~3質量%程度であることがさらに好ましい。
【0121】
重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)の重合において、分子量を調節する目的で公知の連鎖移動剤を使用することができる。該連鎖移動剤としては、前記アクリル樹脂粒子(A2)の説明で例示したものを同様に使用することができる。
【0122】
前記アクリル樹脂成分を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0123】
ウレタンプレポリマーの鎖伸長を行う場合、必要に応じて水以外の鎖伸長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることもできる。鎖伸長剤としては、活性水素を有する公知の鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン化合物、ヒドラジン等を挙げることができる。
【0124】
前記アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体において、各樹脂成分(アクリル樹脂成分、ウレタン樹脂成分)の組成、反応条件等を調整することにより、コアシェル構造、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分の一部或いは全部が混在する形態等の所望の形態を有するアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得ることができる。
【0125】
前記した、アクリル樹脂成分を、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなるコアシェル構造とする場合は、組成の異なる2種以上の重合性不飽和モノマー((メタ)アクリレートモノマー)混合物を使用して、多段階(例えば、組成の異なる不飽和モノマー混合物を準備し、各重合性不飽和モノマー混合物ごとに多段階で添加して反応を行う)で反応させることにより、アクリル樹脂成分として、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなるコアシェル構造を有するアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得ることができる。
【0126】
このアクリル樹脂成分として、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなるコアシェル構造を有する形態のアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体においては、特に、そのアクリル樹脂成分の中心部分(コア)は、ウレタン樹脂成分が混在する態様であっても良い。
【0127】
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)の平均粒子径は、原材料(アクリル樹脂成分、ウレタン樹脂成分等)組成、乳化剤種、乳化剤量、乳化剤の仕込み配分、中和剤種、中和剤量等の粒径制御要因を調整することにより、所望の平均粒子径とすることができる。
【0128】
また、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)の水分散体において、その固形分は、特に限定されないが、得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化及びアクリルウレタン複合樹脂粒子の分散安定性等の観点から、該固形分は25~60質量%の範囲内であることが好ましく、30~55質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0129】
<ポリエステル樹脂粒子(A4)>
前記ポリエステル樹脂粒子(A4)は、アルコール成分として2以上の水酸基を有するポリオール及び酸成分として2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を縮合させることによって得られる。
【0130】
上記ポリオールとしては、1分子中に2以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0131】
また、ポリエステル樹脂粒子(A4)の製造には、上記ポリオールに加えて、上記ポリオール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られるアルコール化合物等が挙げられる。
【0132】
前記ポリカルボン酸としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、通常使用される化合物を使用することができる。かかるポリカルボン酸としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0133】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物、及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1~6、好ましくは1~4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0134】
上記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1以上の脂環式構造と2以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物、及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4~6員環構造であることができる。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1~6、好ましくは1~4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0135】
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物、及び該芳香族化合物のエステル化物である。芳香族多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1~6、好ましくは1~4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0136】
また、ポリエステル樹脂粒子(A4)の製造には、上記ポリカルボン酸に加えて、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0137】
前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、通常のポリエステル樹脂の製造方法に従って行なうことができる。例えば、前記アルコール成分と前記酸成分とを、窒素気流中、150~250℃程度で、5~10時間程度加熱し、該酸成分と該アルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、該ポリエステル樹脂粒子(A4)を製造することができる。
【0138】
上記アルコール成分及び上記酸成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらの成分を一度に添加してもよいし、一方又は両者を数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られる水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基含有ポリエステル樹脂粒子としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて上記ポリエステル樹脂粒子(A4)を製造してもよい。
【0139】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0140】
また、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)は、該樹脂の製造中又は製造後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0141】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0142】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
【0143】
前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の数平均分子量は、形成される塗膜の付着性等の観点から、500~50,000の範囲内であることが好ましく、1,000~30,000の範囲内であることがさらに好ましく、1,200~10,000の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0144】
本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/minの条件下で測定することができる。
【0145】
また、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)のガラス転移温度(Tg)は、形成される塗膜の耐水性及び付着性等の観点から、-30℃~50℃の範囲内であることが好ましく、-25℃~40℃の範囲内であることがさらに好ましく、-20℃~30℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0146】
本明細書において、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、静的ガラス転移温度である。該静的ガラス転移温度は、例えば示差走査熱量計「DSC-50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で-100℃~150℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側における最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とすることによって、測定することができる。
【0147】
ポリエステル樹脂粒子(A4)は、通常、酸基を有するバインダーであり、水分散する場合、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうことが、水分散性を向上させる観点から好ましい。該中和剤としては、前記樹脂粒子(A)の説明欄において記載した中和剤を使用することができる。
【0148】
また、前記中和剤によって中和を行う場合、その中和率は、得られるポリエステル樹脂粒子に対し、充分な分散安定性を与える範囲に設定することが好ましく、該ポリエステル樹脂粒子中のカルボキシル基のモル数1に対して、0.5~2.0倍当量が好ましく、0.7~1.5倍当量がさらに好ましい。
【0149】
<アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)>
本発明のアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)としては、特に限定されることはなく、既知の方法で得られたアクリルポリエステル複合樹脂粒子を用いることができる。該既知の方法としては、例えば、不飽和基含有ポリエステル樹脂と重合性不飽和モノマーの混合物を重合する方法、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とのエステル化反応による方法等を挙げることができる。
【0150】
アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)を、不飽和基含有ポリエステル樹脂と重合性不飽和モノマーの混合物を重合することによって得る方法とは、ポリエステル樹脂中の不飽和基をグラフト点として、重合性不飽和モノマーを重合することで、該ポリエステル樹脂をアクリル変性する方法である。上記不飽和基含有ポリエステル樹脂を得る方法は特に限定されないが、例えば、常法によりポリエステル樹脂を合成し、ポリエステル樹脂の水酸基と酸無水物基含有重合性不飽和モノマーを反応させることによって、ポリエステル樹脂にグラフト点を付与することができ、あるいはまた、不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分と、アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって合成することもできる。合成の簡便性の観点からは、不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分と、アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応する方法により合成することが好ましい。なかでも特に、不飽和基を有する多塩基酸として酸無水物基含有重合性不飽和モノマーを含む酸成分を使用することが貯蔵安定性等の観点から好ましい。
【0151】
ここで該酸無水物基含有重合性不飽和モノマーとは、1分子中に酸無水物基と不飽和基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有する化合物である。具体的には、炭素原子数6未満の化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水2-ペンテン二酸、無水メチレンコハク酸、無水アセチレンジカルボン酸、炭素原子数6以上の化合物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水アリルマロン酸、無水イソプロピリデンコハク酸、2,4-ヘキサジエン二酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。なかでも反応性等の観点から無水マレイン酸が好ましい。
【0152】
酸無水物基含有重合性不飽和モノマー以外の酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0153】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物、及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の説明欄における脂肪族多塩基酸の説明において例示した化合物等を挙げることができる。上記脂肪族多塩基酸は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0154】
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物、及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の説明欄における脂環族多塩基酸の説明において例示した化合物等を挙げることができる。上記脂環族多塩基酸は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0155】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、を用いることが好ましく、なかでも、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0156】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の説明欄における芳香族多塩基酸の説明において例示した化合物等を挙げることができる。上記芳香族多塩基酸は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0157】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0158】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の説明欄における酸成分の説明において例示した化合物等を挙げることができる。これらの酸成分は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0159】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の説明欄における多価アルコールの説明において例示した化合物等を挙げることができる。
【0160】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、前記ポリエステル樹脂粒子(A4)の説明欄における多価アルコール以外のアルコール成分の説明において例示した化合物等を挙げることができる。
【0161】
不飽和基含有ポリエステル樹脂を得る他の方法としては、多価アルコールなどの多塩基酸を含む酸成分に加えて、酸成分の一部としてオレイン酸及びミリスチン酸(いずれも炭素原子数6以上の化合物)のような不飽和脂肪酸を使用する方法も挙げることができる。かかる方法では不飽和脂肪酸の不飽和基をグラフト点として使用する。
【0162】
不飽和基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、常法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150~250℃で、5~10時間加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なうことにより、不飽和基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0163】
上記酸成分とアルコール成分とをエステル化反応又はエステル交換反応する際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて又は連続的に添加してもよい。また、まず、不飽和基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた不飽和基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させて不飽和基、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂とすることもできる。また、まず、不飽和基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加して不飽和基、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂とすることもできる。
【0164】
また、前記不飽和基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0165】
上記のごとくして得られた不飽和基含有ポリエステル樹脂と混合して重合させる重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記アクリル樹脂粒子(A2)の説明欄において例示した重合性不飽和モノマーを使用することができる。重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0166】
前記アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)は、例えば、前記不飽和基含有ポリエステル樹脂と前記重合性不飽和モノマーとを、公知の方法で共重合することによって合成することができる。
【0167】
具体的には、例えば、反応容器中に不飽和基含有ポリエステル樹脂、重合性不飽和モノマー、重合開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤を添加し、90~160℃で1~5時間加熱することにより合成することができる。また、反応温度の制御の点から、反応容器中に不飽和基含有ポリエステル樹脂を先に仕込み、他の原材料を時間をかけながら添加することもできる。
【0168】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物を使用することができる。該重合開始剤としては、例えば、前記アクリル樹脂粒子(A2)の説明欄において例示した重合開始剤を挙げることができる。また、上記連鎖移動剤としては、前記アクリル樹脂粒子(A2)の説明欄において例示した連鎖移動剤等を挙げることができる。
【0169】
一方、前記アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)を、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とのエステル化反応によって得る方法は、該ポリエステル樹脂の一部を該アクリル樹脂とエステル交換反応させてグラフトする方法である。
【0170】
上記アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)の上記アクリル部と上記ポリエステル部の比率は、形成される塗膜の物性等の観点から、該アクリルポリエステル複合樹脂粒子(アクリル部とポリエステル部の総量)に対して、該アクリル部が、5~40質量%の範囲内であることが好ましく、5~30質量%の範囲内であることがさらに好ましく、5~25質量%の範囲内であることがさらに特に好ましく、該ポリエステル部が、60~95質量%の範囲内であることが好ましく、70~95質量%の範囲内であることがさらに好ましく、75~95質量%の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0171】
アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)は、中和、水分散することにより水性分散液とすることができる。中和剤としては、アミン化合物及びアンモニアを使用することができる。アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等を挙げることができる。なかでも特にトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンを好適に使用することができる。中和の程度は、特に限定されるものではないが、樹脂中の酸基1モルに対して通常0.3~1.0当量の範囲内であることが好ましい。
【0172】
アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)の水性分散液の水性溶媒は、水のみであってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。
【0173】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等が好ましい。具体的には、例えば、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤等を挙げることができる。また、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等も使用することができる。
【0174】
アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)を水性溶媒中に中和、分散するには、常法に従い、例えば、中和剤を含有する水性溶媒中に撹拌下、アクリルポリエステル複合樹脂を徐々に添加する方法、アクリルポリエステル複合樹脂を中和剤によって中和した後、撹拌下、水性溶媒を添加する方法、又は該中和物を水性溶媒中に添加する方法等を挙げることができる。
【0175】
本発明において、上記樹脂粒子(A)の含有量は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化並びに形成される塗膜の耐候性及び硬度等の観点から、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、30~85質量部の範囲内であることが好ましく、40~75質量部の範囲内であることがさらに好ましく、45~70質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0176】
<架橋剤(B)>
架橋剤(B)は特に制限されるものではない。例えば、樹脂粒子(A)が架橋反応性基を有する場合の架橋反応性基に応じて、該架橋反応性基との反応性を有する架橋剤を使用することができる。なかでも、上記樹脂粒子(A)が架橋反応性基として水酸基を有し、かつ上記架橋剤(B)が該水酸基との反応性を有する化合物であることが好ましい。
【0177】
架橋剤(B)としては、公知の架橋剤、具体的には、例えば、アミノ樹脂(B1)、ポリイソシアネート化合物(B2)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸等を挙げることができる。なかでも、架橋剤(B)が、アミノ樹脂(B1)、ポリイソシアネート化合物(B2)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。架橋剤(B)は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0178】
<アミノ樹脂(B1)>
上記アミノ樹脂(B1)としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0179】
上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を適当なアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いうるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等が挙げられる。
【0180】
上記アミノ樹脂(B1)としてはメラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をエチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したエチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0181】
また、上記メラミン樹脂の重量平均分子量は、450~6,000の範囲内であることが好ましく、500~4,000の範囲内であることがさらに好ましく、550~3,000の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0182】
メラミン樹脂としては市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル254」、「サイメル303」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1130」(以上、オルネクスジャパン社製);「ユーバン20SE60」、「ユーバン28-60」(以上、三井化学社製);等が挙げられる。
【0183】
架橋剤(B)として、上記メラミン樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を使用することができる。
【0184】
前記アミノ樹脂(B1)は、例えば、水酸基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0185】
<ポリイソシアネート化合物(B2)>
前記ポリイソシアネート化合物(B2)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0186】
上記ポリイソシアネート化合物(B2)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0187】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0188】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)又はその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0189】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-もしくは1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0190】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-もしくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート又はその混合物、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0191】
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0192】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが好適である。
【0193】
また、前記ポリイソシアネート化合物(B2)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーを使用することもできる。
【0194】
架橋剤(B)としてポリイソシアネート化合物(B2)を使用する場合、必要に応じて硬化触媒として、有機金属化合物、酸化合物、塩基化合物等を使用することができる。
【0195】
上記ポリイソシアネート化合物(B2)は、例えば、水酸基及び/又はアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0196】
<ブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)>
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)は、前記ポリイソシアネート化合物(B2)のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
【0197】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0198】
ブロック剤としては、なかでも、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が好適である。
【0199】
また、上記ブロック剤として、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸等を使用することもできる。
【0200】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、ブロック化ポリイソシアネートを使用する場合、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
【0201】
架橋剤(B)としてブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)を使用する場合、必要に応じて硬化触媒として、有機金属化合物、酸化合物、塩基化合物等を使用することができる。
【0202】
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)は、例えば、水酸基及び/又はアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0203】
本発明において、上記架橋剤(B)の含有量は、形成される塗膜の耐候性及び硬度等の観点から、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、15~55質量部の範囲内であることが好ましく、20~50質量部の範囲内であることがさらに好ましく、25~45質量部の範囲内であることが特に好ましい。
【0204】
<顔料(C)>
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は顔料(C)を含有する。
【0205】
また、本発明の自動車外装用水性塗料組成物は硬化膜厚で30μm塗装した場合に下層の塗膜の色を隠蔽できることが好ましい。
【0206】
上記顔料(C)としては、例えば、着色顔料(C1)、体質顔料(C2)、光輝性顔料(C3)等を挙げることができる。該顔料(C)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0207】
上記着色顔料(C1)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン及び/又はカーボンブラックを好適に使用することができる。
【0208】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物が、上記着色顔料(C1)を含有する場合、該着色顔料(C1)の含有量は、自動車外装用水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1~180質量部の範囲内であることが好ましく、5~140質量部の範囲内であることがさらに好ましく、10~120質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0209】
また、前記体質顔料(C2)としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、なかでも硫酸バリウム及び/又はタルクを好適に使用することができる。
【0210】
なかでも、本発明の自動車外装用水性塗料組成物が、上記体質顔料(C2)として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01~0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0211】
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム粒子20個の最大径を平均した値である。
【0212】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物が、上記体質顔料(C2)を含有する場合、該体質顔料(C2)の含有量は、自動車外装用水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1~150質量部の範囲内であることが好ましく、5~130質量部の範囲内であることがさらに好ましく、10~110質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0213】
また、前記光輝性顔料(C3)としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。なかでも、アルミニウム顔料を使用することが好ましい。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム顔料とリーフィング型アルミニウム顔料があるが、いずれも使用することができる。なかでも、形成される塗膜の密着性等の観点から、ノンリーフィング型アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
【0214】
上記光輝性顔料(C3)はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(C3)としては、長手方向寸法が1~100μm、特に5~40μm、厚さが0.001~5μm、特に0.01~2μmの範囲内にあるものが適している。
【0215】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物が、上記光輝性顔料(C3)を含有する場合、該光輝性顔料(C3)の含有量は、自動車外装用水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1~100質量部の範囲内であることが好ましく、2~60質量部の範囲内であることがさらに好ましく、3~40質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0216】
また、本発明において、上記顔料(C)の含有量は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の安定性及び形成される塗膜の耐候性等の観点から、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1~180質量部の範囲内であることが好ましく、5~170質量部の範囲内であることがさらに好ましく、10~160質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0217】
<ナノセルロース(D)>
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、ナノセルロース(D)を、該自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、固形分量で0.5~2.0質量部含有する。
【0218】
上記ナノセルロース(D)は、セルロース繊維をナノサイズレベルまで解きほぐした(解繊処理した)セルロースである。
【0219】
上記セルロース繊維としては、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、半合成セルロース繊維、変性セルロース繊維等が挙げられる。
【0220】
上記天然セルロース繊維は、天然に存在するセルロース繊維含有物から精製工程を経て不純物を除去したものである。天然のセルロース繊維含有物としては、例えば、針葉樹及び広葉樹等の木質、コットンリンター及びコットンリント等のコットン、さとうきび及び砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート及びケナフ等の靭皮繊維、サイザル及びパイナップル等の葉脈繊維、アバカ及びバナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニア及びシオグサ等の海草ないしホヤの被嚢等が挙げられる。
【0221】
上記再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。また、上記半合成セルロース繊維としては、例えば、アセテート等が挙げられる。
【0222】
上記変性セルロース繊維としては、セルロースに対して各種の化学変性を行うことで得られるものを使用することができる。化学変性の種類としては、例えば、カルボキシメチル化、アシル化、リン酸化等のエステル化、カルボキシル化等の酸化、スルホン化、フッ素化、カチオン化、シランカップリング剤による処理等が挙げられる。
【0223】
また、上記ナノセルロース(D)は、解繊処理した後に上記化学変性がされていてもよい。
【0224】
また、上記ナノセルロース(D)は、中和剤で中和されていてもよい。該中和剤としては、例えば、前記樹脂粒子(A)の説明欄において記載した中和剤を使用することができる。
【0225】
上記ナノセルロース(D)の数平均繊維径は、1~500nmの範囲内であることが好ましい。
【0226】
また、上記ナノセルロース(D)の数平均長さは、10~10,000nmの範囲内であることが好ましい。
【0227】
上記ナノセルロース(D)の数平均繊維径と数平均長さについてはSEM解析により調べることができ、例えば、ナノセルロース(D)50本を調べてその平均値で算出することができる。
【0228】
上記ナノセルロース(D)の数平均長さの数平均繊維径に対する比(数平均長さ/数平均繊維径)は、得られる自動車外装用塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、3~10,000の範囲内であることが好ましく、5~500の範囲内であることがより好ましい。
【0229】
本発明において、ナノセルロース(D)としては、具体的には、例えば、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」と略称する場合がある)(D1)、セルロースナノクリスタル(以下、「CNC」と略称する場合がある)(D2)、セルロースナノファイバー(D1)及びセルロースナノクリスタル(D2)の複合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0230】
なかでも、本発明のナノセルロース(D)は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、セルロースナノファイバー(D1)及びセルロースナノクリスタル(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0231】
<セルロースナノファイバー(D1)>
上記セルロースナノファイバー(D1)は公知の方法によって得ることができる。例えば、セルロース原料を解繊処理し、繊維径がナノサイズになるまで微細化することによって、セルロースナノファイバー(D1)とすることができる。セルロース原料の解繊処理方法としては、例えば、機械的解繊処理や、N-オキシル化合物を含む酸化触媒液による処理等の薬品処理等が挙げられる。
【0232】
セルロース原料としては、セルロースを含むものであれば特に限定されないが、例えば、各種木材パルプ、非木材パルプ、バクテリアセルロース、再生セルロース、古紙パルプ、コットン、バロニアセルロース、ホヤセルロース等が挙げられる。また、市販されている各種セルロース粉末や微結晶セルロース粉末を使用してもよい。
【0233】
また、上記セルロースナノファイバー(D1)は、各種の化学変性がされたものを使用することができる。化学変性の種類としては、例えば、カルボキシメチル化、アシル化、リン酸化等のエステル化、カルボキシル化等の酸化、スルホン化、フッ素化、カチオン化、シランカップリング剤による処理等が挙げられる。
【0234】
また、上記セルロースナノファイバー(D1)は、中和剤で中和されていてもよい。該中和剤としては、例えば、前記樹脂粒子(A)の説明欄において記載した中和剤を使用することができる。
【0235】
前記セルロースナノファイバー(D1)の数平均繊維径は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、1~500nmの範囲内であることが好ましく、1~250nmの範囲内であることがさらに好ましく、2~50nmの範囲内であることが特に好ましい
前記セルロースナノファイバー(D1)の数平均長さは、得られる自動車外装用塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、200~10,000nmの範囲内であることが好ましく、200~5,000nmの範囲内であることがさらに好ましく、300~2,500nmの範囲内であることが特に好ましく、200~1,000nmの範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0236】
本明細書において、セルロースナノファイバー(D1)は、数平均長さの数平均繊維径に対する比(数平均長さ/数平均繊維径)が、50以上のものである。
【0237】
前記セルロースナノファイバー(D1)の数平均長さの数平均繊維径に対する比(数平均長さ/数平均繊維径)は、得られる自動車外装用塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、50~500の範囲内であることが好ましく、50~200の範囲内であることがさらに好ましく、50~150の範囲内であることが特に好ましい。
【0238】
上記セルロースナノファイバー(D1)の市販品としては、例えば、「ナノセルロースファイバー」(中越パルプ工業社製)、「BiNFi-s」(スギノマシン社製)、「レオクリスタ」(第一工業製薬社製)、「セルロースナノファイバー」(モリマシナリー社製)、「セレンピア」(日本製紙社製)、「アウロ・ヴィスコ」(王子ホールディング社製)等が挙げられる。
【0239】
<セルロースナノクリスタル(D2)>
セルロースナノクリスタル(D2)は公知の方法によって得ることができる。例えば、セルロース原料を硫酸等の酸によって処理することによって非結晶部分を加水分解して取り除き、次いで、機械的解繊処理することによりセルロースナノクリスタル(D2)を得ることができる。
【0240】
セルロース原料としては、セルロースを含むものであれば特に限定されず、前記セルロースナノファイバー(D1)の原料と同様のセルロース原料を用いることができる。また、機械解繊処理についても特に限定されず、従来公知の方法、例えば、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、1軸または2軸押出機等の装置を用いた方法を用いることができる。
【0241】
また、上記セルロースナノクリスタル(D2)は、各種の化学変性がされたものを使用することができる。化学変性の種類としては、例えば、カルボキシメチル化、アシル化、リン酸化等のエステル化、カルボキシル化等の酸化、スルホン化、フッ素化、カチオン化、シランカップリング剤による処理等が挙げられる。
【0242】
また、上記セルロースナノクリスタル(D2)は、中和剤で中和されていてもよい。該中和剤としては、例えば、前記樹脂粒子(A)の説明欄において記載した中和剤を使用することができる。
【0243】
上記セルロースナノクリスタル(D2)の数平均繊維径は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、1~50nmの範囲内であることが好ましく、1~30nmの範囲内であることがさらに好ましく、1~15nmの範囲内であることが特に好ましく、1~5nmの範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0244】
また、前記セルロースナノクリスタル(D2)の数平均長さは、得られる自動車外装用塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、10~500nmの範囲内であることが好ましく、10~300nmの範囲内であることがさらに好ましく、20~250nmの範囲内であることが特に好ましく、30~150nmの範囲内であることさらに特に好ましい。
【0245】
本明細書において、セルロースナノクリスタル(D2)は、数平均長さの数平均繊維径に対する比(数平均長さ/数平均繊維径)が、50未満のものである。
【0246】
前記セルロースナノクリスタル(D2)の数平均長さの数平均繊維径に対する比(数平均長さ/数平均繊維径)は、得られる自動車外装用塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、3以上50未満であることが好ましく、5以上50未満であることがさらに好ましく、10以上50未満であることがさらに特に好ましい。
【0247】
また、上記セルロースナノクリスタル(D2)の市販品としては、例えば、「Celluforce NCC」(Celluforce社製)等が挙げられる。
【0248】
本発明において、上記ナノセルロース(D)の含有量は、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.5~2.0質量部の範囲内である。なかでも、該ナノセルロース(D)の含有量は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化、耐ワキ性及び耐タレ性等の観点から、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.6~1.8質量部の範囲内であることが好ましく、0.7~1.7質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0249】
<その他の成分>
<水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)>
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、有機溶剤の含有量低減、並びに得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐ワキ性及び耐タレ性等の観点から、20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)を含有しないか、又は該20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し19質量部以下であることが好ましい。
【0250】
なかでも、有機溶剤の含有量低減、並びに得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐ワキ性及び耐タレ性等の観点から、該20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が、自動車外装用水性塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、1~19質量部の範囲内であることが好ましく、3~17質量部の範囲内であることがさらに好ましく、8~16質量部の範囲内であることが特に好ましく、10~15質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0251】
上記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)は、20℃において、水に対して有機溶剤を限界まで溶解した際の、水及び該有機溶剤の合計質量に対する、該有機溶剤の含有割合が4質量%以下である、有機溶剤のことである。
【0252】
上記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)としては、例えば、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤;1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピオン酸n-ブチル等のエステル系溶剤;ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、エチルn-アミルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0253】
上記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)としては、耐ワキ性の向上及び形成される塗膜の平滑性等の観点から、アルコール系溶剤を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7~14のアルコール系溶剤が好ましく、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール及びエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系溶剤がさらに好ましく、2-エチル-1-ヘキサノールが特に好ましい。
【0254】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、さらに必要に応じて、前記樹脂粒子(A)以外の樹脂、上記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)以外の有機溶剤、増粘剤、架橋剤(B)の硬化触媒以外の硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0255】
上記樹脂粒子(A)以外の樹脂としては、水溶性樹脂を使用することができる。本明細書において、該水溶性樹脂は、水又は水及び有機溶媒の混合溶媒である水性溶媒に溶解し、前記レーザ回折・散乱法によるサブミクロン粒度分布測定装置で測定した際に粒子径を有しない状態で水又は水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。
【0256】
上記水溶性樹脂としては、例えば、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン複合樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アクリルポリエステル複合樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性エポキシ樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0257】
上記水溶性アクリル樹脂は、水等の分散媒中において粒子形態として合成されるアクリル樹脂粒子(A2)とは異なり、親水性基等の水分散性基により、水中に溶解された形態とすることができるアクリル樹脂である。したがって、水溶性アクリル樹脂は通常、酸基等の水分散性基を有している。
【0258】
上記水溶性アクリル樹脂は、例えば、水分散性基含有重合性不飽和モノマー及び該水分散性基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、常法により、例えば、有機溶媒中での溶液重合等の方法により、共重合することによって合成することができる。
【0259】
上記重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記アクリル樹脂粒子(A2)の説明欄において記載した重合性不飽和モノマーを使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0260】
水溶性アクリル樹脂の合成は、特に制限されるものではないが、例えば、有機溶剤の存在下で加熱しながらモノマー混合物を滴下して重合させることにより合成を行うことができる。
【0261】
重合させる際の反応温度は通常約60~約200℃、好ましくは約70~約160℃程度の範囲内であり、反応時間は通常約10時間以下、好ましくは約0.5~約6時間程度である。
【0262】
上記の反応において、重合開始剤としては、例えば、前記アクリル樹脂粒子(A2)の説明欄において例示した重合開始剤等を挙げることができる。これら重合開始剤は単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0263】
重合開始剤の使用量としては、重合性不飽和モノマーの総量に基づいて、重合反応性等の観点から、通常、0.01~20質量%、特に0.1~15質量%、さらに特に0.3~10質量%の範囲内とすることができる。
【0264】
水溶性アクリル樹脂の合成は、有機溶剤の存在下で行うことが製造の観点から好ましい。有機溶剤は、重合温度、また、アクリル樹脂の水への溶解性、分散性等を考慮して適宜選択することができる。
【0265】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤等が好ましい。具体的には、例えば、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のカルビトール系溶剤等を挙げることができる。
【0266】
また、有機溶剤としては、上記以外の水と混合しない有機溶剤も上記水溶性アクリル樹脂の水への溶解性に支障を来たさない範囲で使用可能であり、このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。
【0267】
また、前記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)以外の有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸3-メトキシブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等のアルコール系溶剤;ジオキサン等のエーテル系溶剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0268】
上記有機溶剤(E)以外の有機溶剤の含有量は、本発明の自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、0~100質量部の範囲内であることが好ましく、0~50質量部の範囲内であることがさらに好ましく、0~20質量部の範囲内であることが特に好ましい。
【0269】
また、本発明の自動車外装用水性塗料組成物中の有機溶剤の合計含有量は、該自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、0~100質量部の範囲内であることが好ましく、1~50質量部の範囲内であることがさらに好ましく、5~40質量部の範囲内であることが特に好ましく、8~35質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0270】
また、本発明の自動車外装用水性塗料組成物の溶媒は水性溶媒である。水性溶媒は、水を主体とするものであれば特に限定されない。水性溶媒としては、例えば、水、又は水及び有機溶剤を含む水-有機溶剤混合溶液などを挙げることができる。このうち、水-有機溶剤混合溶液中の有機溶剤の含有量は、水-有機溶剤混合溶液の0.8~45質量%の範囲内であることが好ましく、0.9~30質量%の範囲内の範囲内であることがさらに好ましく、1.0~15質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0271】
前記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニック(登録商標)ポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等が挙げられる。
【0272】
これらの増粘剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0273】
前記架橋剤(B)以外の硬化触媒としては、例えば、有機金属化合物、酸化合物、塩基化合物等を挙げることができる。
【0274】
上記有機金属化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸リチウム、アセチルアセトン鉄(III)、2-エチルヘキサン酸亜鉛、酢酸銅、三塩化バナジウム、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、テトラブチル錫、ジブチル錫オキシド、テトラ-n-ブチル-1,3-ジアセチルオキシジスタノキサン、テトラ-n-プロピル-1,3-ジアセチルオキシジスタノキサン、テトラ-n-ブチル-1,3-ジラウリルオキシジスタノキサン等の金属触媒を挙げることができ、特に、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジスタノキサン類等の有機錫系化合物が好ましい。
【0275】
上記酸化合物としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、オクチルリン酸、ジ2-エチルヘキシルリン酸などのアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミンとの塩等を触媒として使用することができる。
【0276】
上記塩基化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、N-ペンタメチルジエチレントリアミン、2-メチル-1,4-ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物を挙げることができる。
【0277】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を挙げることができる。
【0278】
前記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0279】
<自動車外装用水性塗料組成物>
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、上記樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)、ナノセルロース(D)、及び必要に応じて他の成分を、通常の塗料化手段により、溶媒中に混合することにより調製することができる。上記溶媒としては、水性溶媒、例えば、有機溶剤、水又は水及び有機溶剤の混合溶媒等を使用することができる。
【0280】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、塗料固形分濃度が45~65質量%の範囲内であり、かつブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度が350~1200mPa・sの範囲内である。上記ブルックフィールド型粘度計としては、「LVDV-I」(商品名、BROOKFIELD社製、ブルックフィールドB型粘度計)を使用することができる。
【0281】
なかでも、本発明の自動車外装用水性塗料組成物の塗料固形分濃度は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の高固形分化の観点から、46質量%以上であることが好ましく、47質量%以上であることがさらに好ましい。また、該自動車外装用水性塗料組成物の安定性の観点から、上記塗料固形分濃度は、64質量%以下であることが好ましく、63質量%以下であることがさらに好ましい。
【0282】
上記塗料固形分濃度は、例えば、前記溶媒の量を調節することによって、調整することができる。
【0283】
また、本発明の自動車外装用水性塗料組成物の、ブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、500~1200mPa・sの範囲内であることが好ましく、600~1100mPa・sの範囲内であることがさらに好ましく、650~1000mPa・sの範囲内であることが特に好ましい。
【0284】
また、本発明の自動車外装用水性塗料組成物のブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料Ti値(チクソトロピックインデックス)は、得られる自動車外装用水性塗料組成物の耐タレ性及び耐ワキ性等の観点から、2.3~6.0の範囲内であることが好ましく、2.5~5.5の範囲内であることがさらに好ましく、3.0~5.0の範囲内であることが特に好ましい。
【0285】
本明細書において、上記Ti値(チクソトロピックインデックス)は、ブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度6rpmの測定条件における塗料粘度(mPa・s)を、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度(mPa・s)で除した値であり、換言すると、Ti値=(6rpmにおける塗料粘度)/(60rpmにおける塗料粘度)である。
【0286】
<塗装物品>
被塗物に本発明の自動車外装用水性塗料組成物を塗装して未硬化の塗膜を形成し、その後、該未硬化の塗膜を硬化させることにより、被塗物上に本発明の自動車外装用水性塗料組成物が硬化した塗膜を形成することができる。かくして、本発明の自動車外装用水性塗料組成物が硬化した塗膜を有する物品を得ることができる。
【0287】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物の塗装は、従来から知られている方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、インクジェット塗装等により行なうことができる。上記塗装方法としては、なかでも、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装が好ましく、塗着効率及び形成される塗膜の平滑性等の観点から、回転霧化塗装が好ましい。
【0288】
また、塗着効率向上の観点から、塗装の際に、静電印加を行なうことが好ましい。
【0289】
また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。その膜厚は硬化塗膜に基づいて、3~100μmの範囲内、特に5~60μmの範囲内であることが好ましく、その塗膜は、例えば、室温~170℃で、必要に応じて加熱することにより硬化させることができる。室温は約15℃~25℃の範囲で変動し得る。加熱硬化は、それ自体既知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、電磁誘導加熱炉等の乾燥炉を用いて行うことができる。必要に応じて加熱硬化を行なう前に溶媒等の揮発成分の揮散を促進するために、50~110℃程度の温度で1~30分間程度のプレヒートを行なってもよい。
【0290】
被塗物(基材)としては、特に制限はないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属素材;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等の樹脂素材が好ましい。
【0291】
また、該被塗物は、金属基材や上記車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0292】
また、上記金属基材、車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、該下塗り塗膜の上に中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。また、バンパー等のプラスチック基材にプライマー塗膜が形成されたものであってもよい。また、上記中塗り塗膜及びプライマー塗膜は未硬化のものであってもよい。
【0293】
上記被塗物は、表面処理が施されたものであってもよい金属基材上に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成されたものであることが好ましく、該電着塗料によって形成された下塗り塗膜が加熱硬化されたものであることがさらに好ましい。
【0294】
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、その使用に際して、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
【0295】
<複層塗膜形成方法>
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、特に以下の4工程からなる3層の複層塗膜形成方法の第1着色塗膜を形成する自動車外装用水性塗料組成物として好適に使用することができる。
【0296】
工程(1):被塗物に本発明の自動車外装用水性塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):未硬化の該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):未硬化の該第2着色塗膜上にクリヤコート塗料組成物を塗装してクリヤコート塗膜を形成せしめる工程、ならびに
工程(4):該未硬化の、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤコート塗膜を同時に加熱硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
【0297】
<工程(1)>
本発明の自動車外装用水性塗料組成物は、上記被塗物上に、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機、インクジェット型塗装機等により塗装することができる。本複層塗膜形成方法において、上記被塗物は、表面処理が施されたものであってもよい金属基材上に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成されたものであることが好ましく、該電着塗料によって形成された下塗り塗膜が加熱硬化されたものであることがさらに好ましい。
【0298】
また、上記塗装方法は、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装が好ましい。また、塗装の際に、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚として、通常、5~70μm、好ましくは10~50μm、より好ましくは10~40μmとなる量であるのが好ましい。
【0299】
<工程(2)>
上記の如くして形成される第1着色塗膜上には、さらに、水性第2着色塗料組成物が塗装される。
【0300】
上記水性第2着色塗料組成物が塗装される時の上記第1着色塗膜の固形分含有率は、耐ワキ性、耐タレ性及び形成される塗膜の平滑性等の観点から、70~100質量%の範囲内であることが好ましく、80~100質量%の範囲内であることがさらに好ましく、85~100質量%の範囲内にあることがさらに特に好ましい。
【0301】
上記第1着色塗膜の固形分含有率は、水性第2着色塗料組成物を塗装する前に、例えば、予備加熱(プレヒート)、エアブロー等を行なうことにより調整することができる。
【0302】
上記予備加熱は、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で50~110℃、好ましくは60~90℃の温度で1~30分間程度直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。
【0303】
また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃~90℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0304】
また、前記第1着色塗膜の固形分含有率は、例えば以下の方法により測定することができる。
【0305】
まず、被塗物と同時に、予め質量(W1)を測定しておいたアルミホイル上に、本発明の自動車外装用水性塗料組成物を塗装する。続いて、塗装後、必要に応じて予備加熱などがされた該アルミホイルを、水性第2着色塗料組成物が塗装される直前に回収し、その質量(W2)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で1時間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W3)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
【0306】
固形分含有率(質量%)={(W3-W1)/(W2-W1)}×100
上記水性第2着色塗料組成物としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の基体樹脂と、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等の架橋剤とからなる被膜形成性成分を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。
【0307】
上記水性第2着色塗料組成物中の基体樹脂としては、例えば、前記樹脂粒子(A)の説明欄において記載した樹脂粒子、前記その他の成分の説明において記載した水溶性樹脂等を使用することができる。また、上記水性第2着色塗料組成物中の架橋剤としては、例えば、前記架橋剤(B)の説明欄において記載した架橋剤等を使用することができる。なかでも、基体樹脂の少なくともその一種として水酸基含有アクリル樹脂及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂を含有し、かつ架橋剤の少なくともその一種としてメラミン樹脂及び/又はブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含有する熱硬化型水性塗料を好適に用いることができる。
【0308】
顔料成分としては、前記顔料(C)の説明において例示した着色顔料、光輝性顔料、体質顔料等を使用することが可能であり、顔料成分の少なくとも1種として光輝性顔料を用いることによって、メタリック調又はパール調の塗膜を形成せしめることができる。
【0309】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料は単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0310】
また、上記光輝性顔料は鱗片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、平均長手方向寸法が1~100μmの範囲内であることが好ましく、5~40μmの範囲内であることがさらに好ましく、平均厚さが0.0001~5μmの範囲内であることが好ましく、0.001~2μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0311】
水性第2着色塗料組成物が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、水性第2着色塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~50質量部の範囲内であることが好ましく、2~30質量部の範囲内であることがさらに好ましく、3~20質量部の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0312】
水性第2着色塗料組成物の塗装は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機、インクジェット型塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚として、5~40μmの範囲内、好ましくは10~30μmの範囲内とすることができる。
【0313】
また、水性第2着色塗料組成物は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を単独でもしくは2種以上組合せて含有することができる。
【0314】
水性第2着色塗料組成物を塗装して得られる第2着色塗膜は、例えば、プレヒート、エアブロー等により、50~110℃の範囲内、好ましくは60~90℃の範囲内の温度で1~60分間程度加熱することにより乾燥することができる。
【0315】
<工程(3)>
上記の如くして形成される第2着色塗膜上には、さらに、クリヤコート塗料組成物が塗装される。
【0316】
クリヤコート塗料組成物としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用される公知の熱硬化性クリヤ塗料組成物を使用することができる。例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する水性熱硬化性塗料組成物、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。なかでも、形成される複層塗膜の耐タレ性、耐ワキ性及び仕上がり外観等の観点から、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物が好ましい。
【0317】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0318】
クリヤコート塗料組成物の基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0319】
また、上記クリヤコート塗料組成物は、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0320】
また、上記クリヤコート塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0321】
上記クリヤコート塗料組成物は、前記第2着色塗膜上に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機、インクジェット型塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚として、10~80μmの範囲内、好ましくは20~50μmの範囲内となるように塗装することができる。
【0322】
<工程(4)>
以上に述べた如くして形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤコート塗膜の3層の塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により、60~180℃の範囲内、好ましくは70~160℃の範囲内の温度で、15~60分間程度の範囲内で加熱して同時に硬化させることができる。
【0323】
本発明は以下の構成を採用することもできる。
項1.樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)及びナノセルロース(D)を含有する自動車外装用水性塗料組成物であって、該ナノセルロース(D)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し固形分量で0.5~2.0質量部であり、かつ塗料固形分濃度が45~65質量%の範囲内であり、かつブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度が350~1200mPa・sの範囲内であることを特徴とする自動車外装用水性塗料組成物。
項2.前記樹脂粒子(A)の平均粒子径が300~800nmの範囲内である、項1に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項3.前記ナノセルロース(D)が、セルロースナノファイバー(D1)及びセルロースナノクリスタル(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1又は項2に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項4.20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)を含有しないか、又は該20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し19質量部以下である、項1~3のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項5.前記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し1~19質量部の範囲内である、項4に記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項6.樹脂粒子(A)が、ウレタン樹脂粒子(A1)、アクリル樹脂粒子(A2)、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A3)、ポリエステル樹脂粒子、およびアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含有する項1~5のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項7.樹脂粒子(A)が、ウレタン樹脂粒子(A1)及びアクリル樹脂粒子(A2)成る群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含有する項1~5のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項8.樹脂粒子(A)の含有量が、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、30~85質量部の範囲内である項1~7のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項9.前記架橋剤(B)が、アミノ樹脂(B1)、ポリイソシアネート化合物(B2)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む項1~8のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項10.前記架橋剤(B)の含有量が、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、15~55質量部の範囲内である項1~9のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項11.前記顔料(C)が、着色顔料(C1)を含む項1~10のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項12.前記顔料(C)の含有量が、自動車外装用水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~180質量部の範囲内である項1~11のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項13.前記20℃における水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)が炭素数7~14のアルコールである項1~12のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物。
項14.項1~13のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物が塗装された自動車。
項15.項1~13のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物を被塗物に塗装することを含む塗膜形成方法。
項16.工程(1):被塗物に項1~13のいずれか1つに記載の自動車外装用水性塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):未硬化の該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):未硬化の該第2着色塗膜上にクリヤコート塗料組成物を塗装してクリヤコート塗膜を形成せしめる工程、ならびに
工程(4):該未硬化の、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤコート塗膜を同時に加熱硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
【実施例】
【0324】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0325】
<樹脂粒子(A)の製造>
<アクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5)>
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌機、加熱装置及び精留塔を具備した反応装置に、イソフタル酸19.0部、アジピン酸32.4部、無水マレイン酸0.7部、及び1,6-ヘキサンジオール45.1部を仕込み、攪拌しながら160℃まで昇温した。次いで、内容物を160℃から230℃まで3.5時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。230℃で90分間反応を続けた後、精留塔を水分離器と置換し、内容物にトルエン約4部を加え、水とトルエンを共沸させて縮合水を除去した。トルエン添加の1時間後から酸価の測定を開始し、酸価が6未満になったことを確認して加熱を停止し、トルエンを減圧除去した後、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル20部を加え希釈し、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(Mw1000)2.1部を加えた。
【0326】
次いで130℃まで冷却し、スチレン3部、アクリル酸3.3部、n-ブチルアクリレート6.6部及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.75部の混合物を30分間かけて滴下した。その後、130℃で30分間熟成し、追加触媒として、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.05部を添加してさらに1時間熟成した。
【0327】
その後、85℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンで中和し、脱イオン水を加え、水分散を行い、固形分40%のアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5-1)の水分散体を得た。得られたアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5-1)は、酸価30mgKOH/g、水酸基価47mgKOH/g、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定)、数平均分子量3000(ポリエステル部の数平均分子量1850)であった。
【0328】
<ポリエステル樹脂粒子(A4)>
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、ポリエステル樹脂粒子(A4-1)の水分散体を得た。得られたポリエステル樹脂粒子(A4-1)は、酸価35mgKOH/g、水酸基価128mgKOH/g、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定)、数平均分子量1500であった。
【0329】
<ウレタン樹脂粒子(A1)>
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、「PTMG-1000」(商品名、三菱ケミカル社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量約1000)68.9部、及びジメチロールプロピオン酸3.6部、トリメチロールプロパン1.5部、「ネオスタン U-600」(商品名、日東化成製、ビスマス系触媒)0.1部、メチルエチルケトン溶剤100部を仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温させた後、イソホロンジイソシアネート26.1部を30分かけて滴下した。その後80℃を保持してNCO価が6.1mg/g以下となるまで反応させ、室温まで冷却することにより、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂のプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマーの数平均分子量は9000であった。
【0330】
その後攪拌を続け、メチルエチルケトン溶剤100部で樹脂粘度を低減させた後、ジメチルエタノールアミン2.1部を添加して中和を行い、脱イオン水148.8部を適時添加しながら水分散(転相乳化)を行った。
【0331】
水分散(乳化)完了後、エチレンジアミン0.6部を添加し、40℃に昇温して2時間撹拌した。これによりウレタン樹脂の末端イソシアネート基とジアミンとの鎖伸長反応を行った。
【0332】
その後、攪拌を続け、60℃まで昇温しながら減圧脱溶剤を行った。配合したメチルエチルケトン溶剤を全て留去した時点で常圧に戻し、冷却後、過剰に留去された脱イオン水を補正することで、固形分濃度40%のウレタン樹脂粒子(A1-1)の水分散体を得た。
【0333】
得られたウレタン樹脂粒子(A1-1)の平均粒子径は90nm(サブミクロン粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定)、酸価は12mgKOH/g、水酸基価は0mgKOH/g、温度20℃、ローター回転速度60rpmにおけるブルックフィールド粘度計による粘度は5,000mPa・sであった。数平均分子量は、GPC測定装置の排除限界能力を超えており、測定不能であった。(およそ100万以上と推定される)。
【0334】
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、「PTMG-1000」(商品名、三菱ケミカル社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量約1000)68.9部、及びジメチロールプロピオン酸2.9部、トリメチロールプロパン1.5部、「ネオスタン U-600」(商品名、日東化成製、ビスマス系触媒)0.1部、メチルエチルケトン溶剤100部を仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温させた後、イソホロンジイソシアネート26.1部を30分かけて滴下した。その後80℃を保持してNCO価が6.2mg/g以下となるまで反応させ、室温まで冷却することにより、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂のプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマーの数平均分子量は9000であった。
【0335】
その後攪拌を続け、メチルエチルケトン溶剤100部で樹脂粘度を低減させた後、ジメチルエタノールアミン1.0部を添加して中和を行い、脱イオン水148.8部を適時添加しながら水分散(転相乳化)を行った。
【0336】
水分散(乳化)完了後、エチレンジアミン0.6部を添加し、40℃に昇温して2時間撹拌した。これによりウレタン樹脂の末端イソシアネート基とジアミンとの鎖伸長反応を行った。
【0337】
その後、攪拌を続け、60℃まで昇温しながら減圧脱溶剤を行った。配合したメチルエチルケトン溶剤を全て留去した時点で常圧に戻し、冷却後、過剰に留去された脱イオン水を補正することで、固形分濃度40%のウレタン樹脂粒子(A1-2)の水分散体を得た。
【0338】
得られたウレタン樹脂粒子(A1-2)の平均粒子径は400nm(サブミクロン粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定)、酸価は12mgKOH/g、水酸基価は0mgKOH/g、温度20℃、ローター回転速度60rpmにおけるブルックフィールド粘度計による粘度は270mPa・sであった。数平均分子量は、GPC測定装置の排除限界能力を超えており、測定不能であった。(およそ100万以上と推定される)。
【0339】
<アクリル樹脂粒子(A2)>
製造例5
ガラスビーカー中で、2-エチルヘキシルアクリレート67.2部及びアリルメタクリレート2.8部を混合し、次いで「Newcol707SF」7部(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、有効成分30%)、脱イオン水70部を加え、ディスパーにて2000rpmで15分間攪拌し、予備乳化液(1)を調製した。この予備乳化液(1)を高圧乳化装置(スギノマシン社製 アルティマイザー)にて高圧処理することにより、平均粒子径60nmのモノマー乳化物(1)を得た。
【0340】
また別のガラスビーカー中で、アリルメタクリレート1.2部、4-ヒドロキシブチルアクリレート4.8部、メタクリル酸1.2部及びメチルメタクリレート22.8部を混合し、次いで「Newcol707SF」3部、過硫酸アンモニウム0.03部、脱イオン水20部を加え、ディスパーにて2000rpmで15分間攪拌し、モノマー乳化液(2)を調製した。
【0341】
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に上記モノマー乳化物(1)を移し、脱イオン水59部にて希釈した。その後80℃まで昇温させ、過硫酸アンモニウム0.7部を投入し、温度を80℃に保持しながら3時間撹拌した。
【0342】
更に、上記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、30℃まで冷却し、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液を反応容器に徐々に加えながらpHを8.0まで調整した。更に脱イオン水にて固形分濃度が30%となるよう希釈し、アクリル樹脂粒子(A2-1)分散液を得た。
【0343】
得られたアクリル樹脂粒子(A2-1)は、平均粒子径が100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、水酸基価が19mgKOH/g、酸価が8mgKOH/gであった。
【0344】
製造例6
上記製造例5の、モノマー乳化物(1)を得る際の高圧乳化処理において、圧力を調整することにより、平均粒子径が320nmのモノマー乳化物(1)を得る以外は、製造例5と同様にして、固形分濃度が30%のアクリル樹脂粒子(A2-2)分散液を得た。
【0345】
得られたアクリル樹脂粒子(A2-2)は、平均粒子径が350nm(サブミクロン粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、水酸基価が19mgKOH/g、酸価が8mgKOH/gであった。
【0346】
製造例7
上記製造例5の、モノマー乳化物(1)を得る際の高圧乳化処理において、圧力を調整することにより、平均粒子径が690nmのモノマー乳化物(1)を得る以外は、製造例5と同様にして、固形分濃度が30%のアクリル樹脂粒子(A2-3)分散液を得た。
【0347】
得られたアクリル樹脂粒子(A2-3)は、平均粒子径が700nm(サブミクロン粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3000」(商品名、マイクロトラック社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、水酸基価が19mgKOH/g、酸価が8mgKOH/gであった。
【0348】
<水溶性アクリル樹脂の製造>
製造例8
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート43部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート29部、ヒドロキシエチルアクリレート2部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.1部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分濃度55%、酸価47mgKOH/g、水酸基価10mgKOH/gの水溶性アクリル樹脂(Ac-1)溶液を得た。
【0349】
<顔料分散ペーストの製造>
製造例9
製造例1で得たアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5-1)の水分散体87.5部(固形分35部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)9.5部、「カーボンMA-100」(商品名、ケミカル社製、カーボンブラック)1.9部、「バリエースB-35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)65部及び脱イオン水5部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P-1)を得た。
【0350】
製造例10
製造例2で得たポリエステル樹脂粒子(A4-1)の水分散体77.8部(固形分35部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)9.5部、「カーボンMA-100」(商品名、三菱ケミカル社製、カーボンブラック)1.9部、「バリエースB-35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)65部及び脱イオン水5部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P-2)を得た。
【0351】
製造例11
製造例1で得たアクリルポリエステル複合樹脂粒子(A5-1)の水分散体87.5部(固形分35部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)125部及び脱イオン水5部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P-3)を得た。
【0352】
<自動車外装用水性塗料組成物の製造>
実施例1
製造例9で得た顔料分散ペースト168.9部(固形分111.4部)、製造例3で得たウレタン樹脂粒子(A1-1)分散液25部(樹脂固形分10部)、製造例5で得たアクリル樹脂粒子(A2-1)分散液33.3部(樹脂固形分10部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部(樹脂固形分30部)、「バイヒジュールVPLS2310」(商品名、住化コベストロウレタン社製、オキシムブロックポリイソシアネート化合物、固形分38%)26.3部(樹脂固形分10部)、「セレンピアTC-01A」(商品名、日本製紙社製、セルロースナノファイバー、固形分1%)75部(固形分0.75部)、2-エチル-1-ヘキサノール(20℃における水への溶解性:0.07質量%)14部及び製造例8で得た水溶性アクリル樹脂(Ac-1)溶液9.1部(樹脂固形分5部)を均一に混合した。
【0353】
次いで、得られた混合物に、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分濃度45%、温度20℃、ローター回転数60rpmにおけるブルックフィールド粘度計による塗料粘度が700mPa・s、ブルックフィールド粘度計で測定した(ローター回転数6rpmにおける塗料粘度)/(ローター回転数60rpmにおける塗料粘度)であるTi値が3.7の自動車外装用水性塗料組成物No.1を得た。
【0354】
実施例2~20、比較例1~9
実施例1において、配合組成を下記表1に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして、自動車外装用水性塗料組成物No.2~29を得た。なお、比較例9の自動車外装用水性塗料組成物No.29については、塗料組成物中に凝集物が存在し、かつ、温度20℃、ローター回転数6rpmにおけるブルックフィールド粘度計による塗料粘度が、粘度計の測定限界より高く測定不能であったため、評価を行わなかった。
【0355】
表1において、水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)は添加量が記載され、該水への溶解性が4質量%以下である有機溶剤(E)以外の成分は、固形分が記載されている。また、表1に記載の各成分は以下の通りである。
(注1)「CelluForce NCC」:商品名、CelluForce社製、スルホン酸ナトリウム塩型ナノセルロースクリスタル、
(注2)「UH-752」:商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤、
(注3) 「プライマル ASE-60」:商品名、ダウケミカル社製、ポリアクリル酸系増粘剤。
【0356】
(試験用被塗物の作製)
11cm×45cmの大きさとしたリン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT-10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて電着塗装鋼板を得た。次いで、得られた電着塗装鋼板の長尺側の端部から3cmの部分に、直径5mmのポンチ孔を、2cm間隔で21個一列状に設けて試験用被塗物とした。
【0357】
<耐タレ性の評価>
(耐タレ性評価用塗装板の作製)
上記試験用被塗物に、各自動車外装用水性塗料組成物を、27℃、相対湿度50%の条件下で回転霧化型の静電塗装機を用いて、長尺方向にほぼ30μm~60μmの膜厚が得られるように膜厚勾配をつけて塗装し、該塗装板をほぼ垂直に立てて、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、塗膜を硬化させることにより各耐タレ性評価用塗装板を作製した。
【0358】
(耐タレ性)
得られた各耐タレ性評価用塗装板について、ポンチ孔の下端部から5mm以上の塗膜のタレが観察されるポンチ孔の中で、最も膜厚が薄いポンチ孔の位置の膜厚であるタレ限界膜厚(μm)を測定し、以下の基準で耐タレ性の評価を行なった。タレ限界膜厚が大きいほど耐タレ性は良好であり、A及びBが合格である。
A:タレ限界膜厚が45μm以上、
B:タレ限界膜厚が40μm以上45μm未満、
C:タレ限界膜厚が35μm以上40μm未満、
D:タレ限界膜厚が35μm未満。
【0359】
<耐ワキ性の評価>
(耐ワキ性評価用塗装板の作製)
上記試験用被塗物に、第1着色塗料として、各自動車外装用水性塗料組成物を、27℃、相対湿度50%の条件下で回転霧化型の静電塗装機を用いて、長尺方向にほぼ30μm~60μmの膜厚が得られるように膜厚勾配をつけて塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化の第1着色塗膜上に「WBC-713T No.1F7」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系水性ベースコート塗料、シルバー塗色)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
【0360】
次いで、該未硬化の第2着色塗膜上に、「KINO-1209」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)を硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜からなる該複層塗膜を硬化させることにより各耐ワキ性評価用塗装板を作製した。
【0361】
得られた各ワキ性評価用塗装板のワキが観察される位置を調べ、該位置の膜厚であるワキ限界膜厚(μm)を測定し、以下の基準で耐ワキ性の評価を行なった。ワキ限界膜厚が大きいほど耐ワキ性は良好であり、A及びBが合格である。
A:ワキ限界膜厚が40μm以上
B:ワキ限界膜厚が35μm以上40μm未満
C:ワキ限界膜厚が35μm未満
【0362】
【0363】
【0364】
【0365】
【0366】
【要約】
樹脂粒子(A)、架橋剤(B)、顔料(C)及びナノセルロース(D)を含有する自動車外装用水性塗料組成物であって、該ナノセルロース(D)の含有量が塗料中の樹脂固形分100質量部に対し固形分量で0.5~2.0質量部であり、かつ塗料固形分濃度が45~65質量%であり、かつブルックフィールド型粘度計による、温度20℃、ローター回転速度60rpmの測定条件における塗料粘度が350~1200mPa・sであることを特徴とする自動車外装用水性塗料組成物。