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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】軽失禁用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/515 20060101AFI20230214BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61F13/515
A61F13/47 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019085321
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020178981
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 桂子
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-219646(JP,A)
【文献】特開2012-090837(JP,A)
【文献】特開2012-005521(JP,A)
【文献】特開2016-067507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有し、長手方向の両端部が円弧状である吸収性物品であって、
前記長手方向の両端部に、熱又は超音波で前記トップシートと前記バックシートを融着したシール領域を有し、
前記シール領域の外縁の形状は、幅方向の両端部に対峙する、吸収性物品の長手方向に平行な直線Aと、吸収性物品の内側で前記直線Aとそれぞれ直交し略直角Bを形成する直線Cと、前記直線Aの他端同士を接続し、吸収性物品の外縁に沿う円弧Dと、前記直線Cの他端同士を接続し、前記吸収体の外縁に沿う円弧Eとからなり、
前記略直角Bは、Rを0.8mm以上2.0mm以下として角丸加工されており、
前記直線Cのそれぞれの長さは、前記シール領域の幅方向の最長幅の3%以上8%以下であり、
前記円弧EのRは、吸収性物品の前記長手方向の両端部の円弧のRに対し80%以上130%以下であり、
前記直線Aのそれぞれの長さは、前記円弧Dと前記円弧Eとの長手方向平行線上の最大離間距離Fの、50%以上であることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記シール領域の面積に対する、前記シール領域におけるシール部分の合計の面積率は、15%以上60%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記シール領域の幅方向の最長幅は、吸収性物品の幅方向の寸法の40%以上であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかにに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記直線Cの各々と、前記円弧Eとの接続部とで形成される2つの略広角Gが、いずれもRを0.8mm以上2.0mm以下として角丸加工されていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽失禁用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。このような吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の装着感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な工夫がなされている。
【0003】
従来の技術では、特に吸水後の製品前後からの吸収体の主たる構成物のフラッフパルプや高吸収性ポリマー(SAP)の漏れ防止として、吸収体物品の製品の長手方向の前後両端部にシール部が設けられる。
【0004】
特許文献1には、長手方向の両端部に、トップシートとバックシートとを一体化するシール部を有し、当該シール部は非連続の多数の接合部からなっており、当該接合部の間の離間部分が、当該接合部の長手方向長さよりも大きいため、柔軟性に優れ、着用装着感が高く、シール強度に優れた吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、長手方向または幅方向に凹部、凸部のピッチや面積が異なる凹凸状のシール部分を有し、接着不良や損傷等のない、防漏性に優れた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-219646号公報
【文献】特開2001-129019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸収性物品のシール部の形状に関しては、一般的には、図1に示すような直線パターンと、図2に示すような製品両端部のカットと並行の円弧状パターンの2種類のシール形状がある。しかし、直線パターンの場合、長手方向の長さを十分に確保すると、シール中央部の長手方向平行線上の最大幅F2が無駄に長くなってしまい、硬いシール部分の面積が過多となり、肌ざわりが悪くなる。長手方向の長さが短いと、シール端部の長手方向平行線上の幅F3に十分な長さが確保できず、シール部分の強度が不足するために、吸収体が漏れる可能性が増大する。
一方で、円弧パターンの場合、シール部の長さは製品の長手方向で常に一定であるため問題ない。しかし、端部の角B2が鋭角であり、シール工程においてロールが製品の長手方向に回転してシールされる際に、圧力がB2の一点に集中するために、圧力がかかりすぎて融着しすぎ、結果としてシートに穴が開きやすく、漏れ防止、及び美粧性の点で劣る。
【0008】
したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、十分なシール強度を確保することができ、かつ、吸収体の漏れ防止、美粧性、及び肌触りに優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、シール領域の外縁の形状を規定し、シール領域の外縁の形状の、幅方向の両端部における長手方向直辺の長さを十分に確保し、長手方向直辺と直交する幅方向直辺を設け、さらに、シール領域の外縁の形状の内側円弧辺を製品外縁のカーブと合わせることで、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、少なくとも、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有し、長手方向の両端部が円弧状である吸収性物品であって、前記長手方向の両端部に、熱又は超音波で前記トップシートと前記バックシートを融着したシール領域を有し、前記シール領域の外縁の形状は、幅方向の両端部に対峙する、吸収性物品の長手方向に平行な直線Aと、吸収性物品の内側で前記直線Aとそれぞれ直交し略直角Bを形成する直線Cと、前記直線Aの他端同士を接続し、吸収性物品の外縁に沿う円弧Dと、前記直線Cの他端同士を接続し、前記吸収体の外縁に沿う円弧Eとからなり、前記略直角Bは、Rを0.8mm以上2.0mm以下として角丸加工されており、前記直線Cのそれぞれの長さは、前記シール領域の幅方向の最長幅の3%以上8%以下であり、前記円弧EのRは、吸収性物品の長手方向の両端部の円弧のRに対し80%以上130%以下であり、前記直線Aのそれぞれの長さは、前記円弧Dと前記円弧Eとの長手方向平行線上の最大離間距離Fの、50%以上であることを特徴とする、吸収性物品である。
【0011】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記シール領域の面積に対する、前記シール領域におけるシール部分の合計の面積率は、15%以上60%以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記シール領域の幅方向の最長幅は、吸収性物品の幅方向の寸法の40%以上であることを特徴とするものである。
【0013】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記直線Cの各々と、前記円弧Eとの接続部とで形成される2つの略広角Gが、いずれもRを0.8mm以上2.0mm以下として角丸加工されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
したがって、本発明によれば、十分なシール強度を確保することができ、かつ、吸収体の漏れ防止、美粧性、及び肌触りに優れた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の吸収性物品の、直線パターンのシール領域を示した図である。
図2】従来の吸収性物品の、円弧パターンのシール領域を示した図である。
図3】本発明の吸収性物品の平面図である。
図4図3のX-Xの断面図である。
図5】本発明の吸収性物品における、シール領域のシールパターンの一例の拡大図である。
図6図3の吸収性物品における、一方のシール領域の詳細を示した図である。
図7】本発明の実施例及び比較例における、シール領域の各外縁を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付する。
【0017】
また、本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1としては、ベビー用又は成人用を問わず、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつが例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0018】
<吸収性物品>
図3は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図である。図3に示すように、吸収性物品1は、肌当接面側に配された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して非肌当接面側に配置された液不透過性のバックシート20と、トップシート10とバックシート20との間に配置された吸収体30と、を備える。これにより、吸収体30は、トップシート10とバックシート20の間に挟まれた構造となっている。また、吸収性物品1の長手方向の両端部は円弧状である。
【0019】
吸収性物品1の、長手方向の寸法は100mm以上800mm以下、幅方向の寸法は50mm以上500mmであることが好ましい。吸収性物品1の寸法を上記の範囲に調整することにより、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等に適した吸収性物品1を得ることができる。
【0020】
また、吸収性物品1には、図4に示すように、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10上に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザー70を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー70の外端は、バックシート20に固定され、その内端はトップシート10に固着され、その中央はトップシート10に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー70が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0021】
<トップシート>
トップシート10は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0022】
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、18g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体30へと誘導するために必要とされる、吸収体30を覆う形状であればよい。
【0023】
<バックシート>
バックシート20は、吸収体30が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0024】
強度及び加工性の点から、バックシート20の坪量は、15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート20には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート20に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート20にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0025】
<吸収体>
本発明の吸収性物品1において、吸収体30の長手方向の寸法LOは、100mm以上800mm以下であることが好ましく、150mm以上500mm以下であることがより好ましい。吸収体30の幅方向の寸法WOは、50mm以上500mm以下であることが好ましく、70mm以上105mm以下であることがより好ましい。また、本発明の吸収体30は、図4に示すように、肌当接面側に位置する上層吸収体31と、非肌当接面側に位置する下層吸収体32からの二層となってもよく、上層吸収体31と下層吸収体32の間に、後述するキャリアシート60を配置してもよい(図示しない)。
【0026】
(吸収性繊維)
吸収体30は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)とを含有する。
吸収体30に用いられる吸収性繊維としては、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体30の基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、100g/m以上800g/m以下であることが好ましく、325g/m以上615g/m以下であることがより好ましい。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収させることができる。
【0027】
(高吸収性ポリマー)
吸収体30に用いられる高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0028】
吸収体30に含有されるSAPの坪量は、240g/m以上450g/m以下であることが好ましく、245g/m以上445g/m以下であることがより好ましい。上記の数値範囲内とすることで、吸収体30におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体30において多量の体液を吸収させることができる。
【0029】
また、吸収体30において、吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、フラッフパルプの重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、高吸収性ポリマーの重量/フラッフパルプの重量×100(%)が、40%以上120%以下であることが好ましく、50%以上100%以下であることがより好ましい。
【0030】
吸収体30において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。また、図4に示すように、SAP粒子の漏洩防止や吸収体30の形状の安定化の目的から、吸収体30をキャリアシート60に包んでもよい。キャリアシート60の基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシート60を複数備える場合は、複数のキャリアシート60の基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0031】
<シール領域及びシールパターン>
シールは、図3に示すように、吸収性物品1の長手方向両端部のシール領域80及び81において、熱又は超音波によってトップシート10とバックシート20を融着することにより形成される。シール領域80及び81は、領域全体がシールされているのではなく、特定のパターンによってシールされている。領域80及び81におけるシールパターンは、拡大図である図5に示すように、シール部分82が略矩形であるパターンが好ましいが、シール強度が十分なものであれば、略円形や略正方形等、特にパターンの形状は問わない。
また、シール領域80又は81の面積に対する、シール領域80又は81におけるシール部分82の合計の面積率は、15%以上60%以下であることが好ましく、25%以上50%以下であることがより好ましい。シール部分82の面積率が60%を超えるとシール領域80又は81が固くて吸収性物品1の肌ざわりに劣り、面積率が15%未満であるとシール強度が足りずに吸収体30が漏れる可能性がある。
【0032】
シール領域80及び81における、幅方向の最長幅の寸法WSは、20mm以上200mm以下であることが好ましく、30mm以上85mm以下であることがより好ましい。また、長手方向の最長幅の寸法LSは、5mm以上40mm以下であることが好ましく、7mm以上25mm以下であることがより好ましい。また、シール領域80及び81の幅方向の最長幅の寸法WSは、吸収性物品1の幅方向の寸法WOの40%以上であることが好ましく、50%以上80%以下であることがより好ましい。
【0033】
シール領域80及び81の外縁の形状は、図6に示すように、幅方向の両端部に対峙する、吸収性物品1の長手方向に平行な直線Aと、吸収性物品1の内側で直線Aとそれぞれ直交し略直角Bを形成する直線Cと、直線Aの他端同士を接続し、吸収性物品1の外縁に沿う円弧Dと、直線Cの他端同士を接続し、吸収体30の外縁に沿う円弧Eとからなる。シール領域80及び81において、円弧Eがより吸収性物品1の内側にあり、吸収体30の上方部分と重なってしまうと、吸収体30の厚みよりも、トップシート10やバックシート20のみが重なっている部分の厚みが薄いために、シール工程においてしかるべき箇所に圧力がかからず、きちんとシールされない可能性がある。
ここで、略直角BはRを0.8mm以上2.0mm以下として角丸加工されている。略直角Bが角丸加工されていることにより、シール工程においてロールが吸収性物品1の長手方向に回転してシールされる際に、圧力がBの一点に集中せず分散するため、圧力がかかりすぎて融着することがなく、シール領域80及び81に穴が開くのを防ぐことができる。なお、略直角BのRは0.8mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0034】
また、直線Cのそれぞれの長さは、シール領域80及び81の幅方向の最長幅の寸法WSの3%以上8%以下である。直線Cのそれぞれの長さをWSと比較して上記の範囲内とすることにより、直線Cが十分な長さとなり、シール形成時の圧力が分散されるために、シール領域80及び81に穴が開くなどのおそれがなくなり、シールによる漏れ防止性に加えて、美粧性も達成できる。なお、直線Cのそれぞれの長さは、シール領域80及び81の幅方向の最長幅の寸法WSの、4%以上7%以下であることがより好ましい。
【0035】
また、円弧EのRは、吸収性物品1の長手方向の両端部の円弧のRに対し80%以上130%以下である。円弧EのRが両端部の円弧のRに対し80%以上130%以下である、すなわち円弧Eのカーブを吸収性物品1の製品の外縁のカーブと合わせることにより、余分なシール領域が発生しなくなり、吸収性物品1の肌触り性がよくなり、着用快適性が向上し、さらには美粧性も達成できる。なお、吸収性物品1の長手方向の両端部の円弧のRに対する円弧EのRの比率は、95%以上120%以下であることが好ましい。
【0036】
さらに、直線Aのそれぞれの長さは、円弧Dと円弧Eとの長手方向平行線上の最大離間距離Fの、50%以上である。直線Aのそれぞれの長さを、最大離間距離Fと比較して、上記の範囲内とすることにより、直線Aの長さが十分に確保され、シールの強度不足による吸収体30からの液体の漏れを予防することができる。なお、直線Aのそれぞれの長さは、円弧Dと円弧Eとの長手方向平行線上の最大離間距離Fの、50%以上75%以下であることが好ましい。
【0037】
なお、直線Cの各々と、円弧Eとの接続部とで形成される2つの略広角Gも、いずれもRを0.8mm以上2.0mm以下として角丸加工されていることが好ましい。略広角Gがいずれも角丸加工されることにより、圧力がGの一点に集中せず分散するため、シール領域80及び81に穴が開くのを防ぐことができる。また、略広角GのRは0.8mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。
【0038】
<開孔フィルム>
また、本発明の吸収性物品1は、図4に示すように、トップシート10と吸収体30との間に、複数の漏斗状の開孔を有する開孔フィルム50を備えることが好ましい。
開孔フィルム50は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性及び液拡散性を備えていることが好ましい。なお、開孔フィルム50と後述する吸収体30を覆うキャリアシート60との接着は、柔らかさを維持する観点から、ホットメルト接着剤のスパイラル塗布方式が好ましい。
【0039】
<セカンドシート>
さらに、図4に示すように、トップシート10と開孔フィルム50との間には、吸収性物品1の液拡散性を向上させ、かつ、開孔フィルム50の硬さを抑制し、肌触りを良くするために、液拡散性のセカンドシート40を配置することが好ましい。セカンドシート40の基材は、体液の透過速度がトップシート10より速く、体液を吸収体30へ素早く拡散するものであればよく、例えば、親水性不織布、特に、エアスルー不織布が好ましい。セカンドシート40の厚さは、0.1mm以上が好ましく、その坪量は、10g/m以上60g/m以下が好ましく、15g/m以上40g/m以下がより好ましい。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が10g/m未満もしくは60g/mより大きいと、吸収体30の上面全体への液体の拡散が十分に行われない。また、セカンドシート40の形状は、特に制限はないが、体液が、くまなく吸収体30に拡散するように、吸収体30の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。なお、シール領域80及び81を形成するときに、トップシート10とバックシート20の間にセカンドシート40を挟み込んで融着してもよい。
【0040】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0041】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(熱融着サンプルの作成)
実施例1において、トップシートとして、エアスルー不織布(坪量25g/m)を用い、液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m)を用い、セカンドシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m2)を用いた。
図7に示す実1の外縁で、シール面積率28.4%の金属製のパターンロールを準備し、パターンロールを160℃、アンビルロール(金属ロール)を120℃に熱し、速度40m/min、クリアランス15μmの条件で、前述のトップシート、セカンドシート及びバックシートを重ねた状態でプレスし、熱融着した。
【0043】
実施例2において、シール領域の外縁を図7に示す実2とした以外は、実施例1と同様にして熱融着サンプルを作成し、実施例2のサンプルとした。実施例3において、シール領域の外縁を図7に示す実3とした以外は、実施例1と同様にして熱融着サンプルを作成し、実施例3のサンプルとした。
【0044】
比較例1において、シール領域の外縁を図7に示す比1とした以外は、実施例1と同様にして熱融着サンプルを作成し、比較例1のサンプルとした。また、比較例2において、シール領域の外縁を図7に示す比2とした以外は、実施例1と同様にして熱融着サンプルを作成し、比較例2のサンプルとした。また、比較例3において、シール領域の外縁を図7に示す比3とした以外は、実施例1と同様にして熱融着サンプルを作成し、比較例3のサンプルとした。また、比較例4において、シール領域の外縁を図7に示す比4とした以外は、実施1と同様にして熱融着サンプルを作成し、比較例4のサンプルとした。
【0045】
また、比較例5において、シール領域の外縁を図7に示す比5とした以外は、実施例と同様にして熱融着サンプルを作成し、比較例5のサンプルとした。また、比較例6において、シール領域の外縁を図7に示す比6とした以外は、実施例と同様にして熱融着サンプルを作成し、比較例6のサンプルとした。また、比較例7において、シール領域の外縁を図7に示す比7とした以外は、実施例と同様にして熱融着サンプルを作成し、比較例7のサンプルとした。
なお、実施例1~3及び比較例1~7におけるそれぞれのシール領域の各パラメーターは、表1に示す通りである。
【0046】
(引張強さ)
熱融着サンプルを長さ80mmに断裁し、チャック間距離50mmの状態で、トップシートとセカンドシートが上側、バックシートが下側となるようチャックに挟んでセットし、速度300mm/minで引張強さを測定した。破壊までの最大の引張強さを、「最大引張強さ」とした。結果を表1に示す。
【0047】
(吸収体の漏れにくさ)
長さ80mm、幅75mmに断裁した熱融着サンプルのセカンドシートとバックシートとの間に、基材であるフラッフパルプ1.0gの中にSAP0.7gを混合して60mm×60mmの大きさに形成して作製した吸収体を挟み、4辺(シール領域以外の3辺+シールの左右の非シール領域)をテープで目止めし、吸収性物品を作製した。
トップシート側から、吸収体中央へ生理食塩水20mlを注水し、3分静置後、吸収性物品上で3kgのローラーを1往復させ、吸収体からの液体の漏れの状態を評価した。吸収性物品10枚で評価を実施し、吸収体の漏れが発生したサンプルが6枚以上10枚以下の時を「〇」、3枚以上5枚以下の時を「△」、1枚もしくは2枚の時、もしくはすべてのサンプルから漏れが発生した時を「×」とした。結果を表1に示す。
【0048】
(美粧性)
8名のパネラーが、熱融着サンプルの美粧性を評価した。熱融着サンプルのシール領域を比較し、「美粧性が良好だと感じた」評価者が6人以上8人以下のときを「○」、「美粧性が良好だと感じた」評価者が3人以上5人以下のときを「△」、「美粧性が良好だと感じた」評価者が1人もしくは2人のとき、又は「美粧性が良好だと感じた」評価者が1人もいないときを「×」とした。結果を表1に示す。
【0049】
(肌ざわり)
8名のパネラーが、熱融着サンプルの肌ざわりを評価した。熱融着サンプルのシール領域を触り比べ、「肌ざわりが良好だと感じた」評価者が6人以上8人以下のときを「○」、「肌ざわりが良好だと感じた」評価者が3人以上5人以下のときを「△」、「肌ざわりが良好だと感じた」評価者が1人もしくは2人のとき、又は「肌ざわりが良好だと感じた」評価者が1人もいないときを「×」とした。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から、略直角BのRが大きく、直線Aの長さが円弧Dと円弧Eとの長手方向平行線上の最大離間距離Fと比較して小さい比較例1は、美粧性及び肌触りに優れるものの、吸収体が漏れやすかった。略直角Bが角丸加工されておらず、シール領域の幅方向の最長幅が小さい比較例2は吸収体が漏れにくかったものの、美粧性及び肌触りに劣っていた。円弧EのRが長手方向の両端部の円弧のRと比較して、小さい比較例3は美粧性及び肌触りに劣り、大きい比較例4は吸収体が漏れやすかった。
また、角丸加工された略直角B、直線C及び円弧Eのいずれも有しない比較例5~7のうち、比較例5は吸収体が漏れやすく、かつ、美粧性に劣り、比較例6及び7はいずれも美粧性及び肌触りに劣る結果となった。
一方、角丸加工された略直角B、直線C及び円弧Eを有し、かつ、略直角BのR、直線Cの長さとシール領域の幅方向の最長幅との比率、円弧EのRと長手方向の両端部の円弧のRとの比率、及び直線Aの長さと円弧Dと円弧Eとの長手方向平行線上の最大離間距離Fとの比率を適切な値とした実施例1~3は、いずれも吸収体が漏れにくく、かつ、美粧性及び肌触りに優れるという結果となった。
【0052】
よって、本発明によれば、十分なシール強度を確保することができ、かつ、吸収体の漏れ防止、美粧性、及び肌触りに優れた吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 吸収性物品
10 トップシート
20 バックシート
30、31、32 吸収体
40 セカンドシート
50 開孔フィルム
60 キャリアシート
70 立体ギャザー
80、81 シール領域
82 シール部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7