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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】パンツ型紙おむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/539 20060101AFI20230214BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230214BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20230214BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61F13/539
A61F13/49 319
A61F13/49 413
A61F13/496
A61F13/51
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019085451
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020178988
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀憲
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500126(JP,A)
【文献】特開2017-064225(JP,A)
【文献】特開2016-123643(JP,A)
【文献】特開2016-189819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両端部にサイドシールをそれぞれ備える前身頃及び後身頃からなる外装体と、内装パッドを有し、前記前身頃と前記後身頃を重ね合わせ、前記サイドシール同士を溶着することでパンツ型となる構造であり、着用したときにボクサーパンツ型となるパンツ型紙おむつであって、
前記外装体は、延伸状態の弾性フィルムの両面に溶着により不織布を貼合した伸縮性複合材料であり、
前記サイドシール同士を溶着する前の展開した状態で、前記弾性フィルムは、幅方向と直交する縦方向平行線上の距離で30mm以上100mm以下の間隔を空けて、それぞれ不織布と貼合した、幅方向の長さが同一である二枚の弾性フィルムからなり、
前記二枚の弾性フィルムのそれぞれの隣接する端部の辺を幅方向に延伸した直線から、前記サイドシールのうち、弾性フィルムと縦方向中心線を境界として同じ側にあるサイドシールの、前記外装体の内側の端部を縦方向平行に延伸した直線と脚周り用のカットラインの交点までの、縦方向平行線上の距離が、20mm以上45mm以下である、脚周り用のカットラインを有し、
前記内装パッドと、前記外装体とは、前記二枚の弾性フィルムの間の弾性フィルムを含まない領域と、前記内装パッドの縦方向の両端の三か所で接着されることを特徴とする、パンツ型紙おむつ。
【請求項2】
前記内装パッドは、開繊時に高吸収性ポリマー粒子を担持したアセテートトウを用いる吸収体と、前記吸収体を包むキャリアシートとを有し、
開繊する工程で前記高吸収性ポリマー粒子を担持した前記吸収体が、縦方向の両端のみ前記キャリアシートに接着剤で固定されており、
前記接着剤で固定される接着領域は、前記サイドシールの下端よりそれぞれ上側にあることを特徴とする、請求項1に記載のパンツ型紙おむつ。
【請求項3】
前記内装パッドは、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートを有し、
前記キャリアシートと前記液透過性のトップシート側及び前記液不透過性のバックシート側の接着は、前記吸収体と前記キャリアシートを固定している接着領域と同じ領域内で接着されていることを特徴とする、請求項2に記載のパンツ型紙おむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型紙おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
脚周り被覆部を備えたボクサーパンツ型の紙おむつは、従来のパンツ型紙おむつよりも股間での密着性が高く、脚の動きに伴う吸収体と体の間の隙間ができにくく、漏れにくい特徴がある。
【0003】
一般にパンツ型の紙おむつの製法は、例えば特許文献1で例示されているように、パンツ型紙おむつの製品幅方向になる方向に流れる原料シートを加工し、連続して展開した形状にしたのち、最終的に折り畳み前身頃と後身頃の両側部をサイドシールし、両側部を切断、単離することでパンツ型紙おむつとなる。
この製法でボクサーパンツ型の紙おむつを製造する方法は、従来から知られている。脚周り被覆部は筒状に形成しているのではなく、着用時に脚周り近くと股間部の外装体が変形することで、着用したときに形成される。
【0004】
パンツ型紙おむつは、製品幅方向になる方向に加工される。そのため、伸縮部材も基本的には製品幅方向に延伸された状態で接合され、紙おむつの伸縮も幅方向が基本である。伸縮部材として糸ゴムを使用した場合には、斜めに配置することで斜め方向への伸縮性を付与することもあるが、糸ゴムを蛇行させながら配置させていくため、使用できる箇所や本数には制限がある。
ボクサーパンツ型の紙おむつは、着用時の複雑な変形に対応し、フィット性を高める工夫が必要となる。特許文献2及び特許文献3に代表されるように通常のパンツ型紙おむつより多くの糸ゴムを使用し、複雑な配置に糸ゴムを設置する必要がある。
【0005】
一方、伸縮部材として糸ゴムではなく弾性フィルムを利用する方法がある。糸ゴムとの違いの大きな点は、弾性フィルム自体は資材の流れ方向(MD方向)だけでなく、資材の流れ方向と直角の方向(CD方向)にも伸縮可能なことである。延伸状態の弾性フィルムと不織布を、超音波溶着などで貼合した複合材(以下、伸縮性複合材料)に加工したもので外装体とするが、そのときの溶着により、CD方向への動きは制限されるようになるものの、パターンの選択によっては斜めへの伸縮は大きく制限されないため、複雑な伸縮を必要とするボクサーパンツ型の紙おむつの外装体としては最適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-035582号公報
【文献】特開2010-082133号公報
【文献】特開2018-083019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、伸縮性複合材料を使用したボクサーパンツ型の紙おむつの例は見られない。その理由としては伸縮特性が最適な伸縮性複合材料を外装体に用いても、股間部で内装パッドと接合するときに、伸縮性によって内装パッド自体も変形してしまうことや、フラッフパルプを厚めに使用した吸収体の場合には、吸収体のコワサにより着用時に伸縮性複合材料が複雑な変形ができなくなることもあり、吸収体と伸縮性複合材料が相互に悪影響を与えてしまうからである。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な接着性と、履いた時の適切な変形を両立し得るボクサーパンツ型の紙おむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、ボクサーパンツ型の紙おむつにおいて、伸縮性複合材料に用いる二枚の弾性フィルムの間を縦方向平行線上の距離と、一方の弾性フィルムの縦方向中心側の端部を幅方向に延伸した線と縦方向中心線を境界として同じ側にある、該サイドシールの外装体の内側の端部を縦方向平行に延伸した直線と脚周り用のカットラインの交点までの、縦方向平行線上の距離を調整することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、幅方向の両端部にサイドシールをそれぞれ備える前身頃及び後身頃からなる外装体と、内装パッドを有し、前記前身頃と前記後身頃を重ね合わせ、前記サイドシール同士を溶着することでパンツ型となる構造であり、着用したときにボクサーパンツ型となるパンツ型紙おむつであって、前記外装体は、延伸状態の弾性フィルムの両面に溶着により不織布を貼合した伸縮性複合材料であり、前記サイドシール同士を溶着する前の展開した状態で、前記弾性フィルムは、幅方向と直交する縦方向平行線上の距離で30mm以上100mm以下の間隔を空けて、それぞれ不織布と貼合した、幅方向の長さが同一である二枚の弾性フィルムからなり、前記二枚の弾性フィルムのそれぞれの隣接する端部の辺を幅方向に延伸した直線から、前記サイドシールのうち、弾性フィルムと縦方向中心線を境界として同じ側にあるサイドシールの、前記外装体の内側の端部を縦方向平行に延伸した直線と脚周り用のカットラインの交点までの、縦方向平行線上の距離が、20mm以上45mm以下である、脚周り用のカットラインを有し、前記内装パッドと、前記外装体とは、前記二枚の弾性フィルムの間の弾性フィルムを含まない領域と、前記内装パッドの縦方向の両端の三か所で接着されることを特徴とする、パンツ型紙おむつである。
【0011】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のパンツ型紙おむつであって、前記内装パッドは、開繊時に高吸収性ポリマー粒子を担持したアセテートトウを用いる吸収体と、前記吸収体を包むキャリアシートとを有し、開繊する工程で前記高吸収性ポリマー粒子を担持した前記吸収体が、縦方向の両端のみ前記キャリアシートに接着剤で固定されており、前記接着剤で固定される接着領域は、前記サイドシールの下端よりそれぞれ上側にあることを特徴とするものである。
【0012】
(3)本発明の第3の態様は、(2)に記載のパンツ型紙おむつであって、前記内装パッドは、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートを有し、前記キャリアシートと前記液透過性のトップシート側及び前記液不透過性のバックシート側の接着は、前記吸収体と前記キャリアシートを固定している接着領域と同じ領域内で接着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
よって、本発明によれば、良好な接着性と、履いた時の適切な変形を両立し得るボクサーパンツ型紙おむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの展開図である。
図2図1のY-Y’断面図である。
図3図1のX-X’断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの脚周りの拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの脚周り被覆部内腿側の説明図である。
図6】本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの吸収体で用いるアセテートトウ吸収体について説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの着用状態を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの外装体で用いられる伸縮性複合材料の溶着パターンについての説明図である。
図9】本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの内装パッドで用いられる伸縮性複合材料の加工工程についての説明図である。
図10】本発明の別の実施形態に係るパンツ型紙おむつの展開図である。
図11】本発明の別の実施形態に係るパンツ型紙おむつの脚周りの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたものであり、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付する。また、本明細書の説明において、パンツ型紙おむつ1の幅方向とは、パンツ型紙おむつ1が展開した状態で、前身頃又は後身頃において両端部のサイドシール同士を結ぶ方向であり、図中、符号Xで示す方向である。また、パンツ型紙おむつ1の縦方向とは、幅方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Yで示す方向である。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつ1の展開図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつ1は、幅方向の両端部にサイドシール18をそれぞれ備える前身頃11及び後身頃12からなる外装体10と、内装パッド20を有し、着用したときにボクサーパンツ型の形状になるものである。
【0017】
外装体10は、延伸状態の弾性フィルム10bの両面に超音波溶着により不織布10aを貼合した伸縮性複合材料である。また、内装パッド20は、開繊時に高吸収性ポリマー(SAP)粒子を担持したアセテートトウを吸収体23として用いている。パンツ型紙おむつ1は、前身頃11と後身頃12を重ね合わせ、幅方向のサイドシール18同士を溶着することでパンツ型となる構造である。
【0018】
図1に示すように、外装体10のサイドシール18同士を溶着する前の展開した状態で、パンツ型紙おむつ1の縦方向中央、内装パッド20の両サイド横に外装体10と内装パッド20の接着領域29aが存在し、後述する二枚の弾性フィルム101b及び102bのそれぞれ隣接する端部の辺を延伸した直線A1と直線A2から、前身頃11側及び後身頃12側に対しそれぞれ同じ角度で伸びる略直線の脚周り用のカットラインKを有する。
ここで、外装体10は、延伸状態の弾性フィルム10bの両面に溶着により不織布10aを貼合した伸縮性複合材料であるが、弾性フィルム10bは、縦方向平行線上の距離Lsが30mm以上100mm以下となるように間隔を空けて、それぞれ不織布10aと貼合した、幅方向の長さが同一である二枚の弾性フィルム101b及び102bからなる。Lsを30mm以上100mm以下として、二枚の弾性フィルム101b及び102bを不織布10aと貼合し、カットラインKをそれよりも上又は下に設けることで、良好な接着性と、履いた時の適切な変形を両立し得るパンツ型紙おむつ1となる。
なお、縦方向平行線上の距離Lsとは、二枚の弾性フィルム101b及び102bのそれぞれ隣接する端部の辺を延伸した直線A1と直線A2の間の縦方向平行線上の距離であり、60mm以上90mm以下であることが好ましい。図9に示すように、二枚の弾性フィルム101b及び102bの不織布10aとの貼合工程において、加工方向Tと垂直な方向に距離Lsを空けて加工することにより、距離Lsが形成される。
【0019】
図2は、図1のY-Y’断面図であり、図3は、図1のX-X’断面図である。図2及び図3に示すように、内装パッド20は、液透過性のトップシート21と、液不透過性のバックシート22と、吸収体23と、キャリアシート24と、立体ギャザー25とを有する。なお、内装パッド20の幅方向の長さは、80mm以上120mm以下であることが好ましい。
開繊する工程でSAPを担持したアセテートトウを用いる吸収体23を、縦方向の両端のみキャリアシート24に接着剤で固定し、接着層26とする。この接着層26の接着領域26aは、図1のサイドシール18の下端より上側にあることが好ましい。
キャリアシート24と液透過性のトップシート21側及び液不透過性のバックシート22側の接着は、吸収体23とキャリアシート24を固定している接着層26と同じ領域内の接着層27’及び接着層27でそれぞれ接着されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、内装パッド20は、吸収体23とキャリアシート24を固定している接着層26とそれぞれ同じ領域内の接着層28、及び内装パッド縦方向中央にあり、外装体10の内部において二枚の弾性フィルム101b及び102bの間の弾性フィルムを含まない非伸縮領域13と同じ領域内の接着層29の三か所で接着されている。非伸縮領域13は、直線A1及び直線A2とそれぞれ直交する直線B1と直線B2の間の、縦方向平行線上の距離Lsの間の領域であり、接着層29の接着領域29aと同じ領域である。また、非伸縮領域13において、不織布10a同士は接着層29’で接着されている。
【0021】
図4は、本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつ1の脚周りの拡大図である。図5は、本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつの脚周り被覆部の説明図である。図4及び図5を用いて、本実施形態に係るパンツ型紙おむつ1の着用時について説明する。
本発明のパンツ型紙おむつ1は、着用前はボクサーパンツ型の特徴である筒状の脚周り被覆部は形成されていない。
【0022】
このとき、カットラインKにおいて、二枚の弾性フィルム101b及び102bのそれぞれの下端(すなわち、図1においてはそれぞれの隣接する端部の辺)を幅方向に延伸した直線A1及びA2から、サイドシール18のうち、それぞれの弾性フィルムと縦方向中心線を境界として同じ側にあるサイドシールの、外装体10の内側の端部を縦方向平行に延伸した直線A3とカットラインKの交点Cまでの、縦方向平行線上の距離Lcが、20mm以上45mm以下である。
【0023】
本実施形態のパンツ型紙おむつ1では、距離Lcが20mm未満であるか、又は45mmを超えると着用時にボクサーパンツ型に変形しなくなる。なお、距離Lcは30mm以上40mm以下であることが好ましい。図4においては一部分の脚周りのみLcを規定しているが、当該規定は残りの脚周りにも同様に適用される。
【0024】
本実施形態では、脚周りにおける略直線のカットラインKは、図1に示すようにそのまま真っ直ぐにサイドシール18の下端まで到達する形状でも問題ないが、図10に示すように、その手前から上方へ弧を描くラインにすることで、着用時にサイドシール18の下にスリット部16が形成されるため好ましい。このスリット部16があることで、パンツ型紙おむつ1の両サイドにスリットが設けられ、脚周り被覆部15による締め付けすぎにより脚の動きが抑制されることを防ぐことができる。
【0025】
外装体10がスリット部16を有する場合、交点Cは図11に示すようにカットラインKの延長線とサイドシール18の外装体10の内側の端部を縦方向平行に延伸した直線A3との交点となる。
なお、本実施形態の説明の図ではカットラインKを略直線で示したが、より身体の線にあうように曲線が含まれても問題ない。
【0026】
図7は、本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつ1の着用状態を説明する図である。図7に示すように、脚周り被覆部15を構成するとき、脚周りに近い部分ほど、外装体10は幅方向だけでなく上下方向にも延伸される複雑な変形を伴う。そのため本実施形態では、外装体10は、図2及び図3に示すように、二枚の弾性フィルム101b及び102bと不織布10aを貼合した伸縮性複合材料を使用することが最適である。
【0027】
また、図5に示すように、本実施形態では、上述のように二枚の弾性フィルム101b及び102bの間を距離Lsの分だけ空けることで、当該部分は履いた時に内腿側の脚周りを被覆するが、二枚の弾性フィルム101b及び102bが伸縮性を持つことにより当該部分を前後に引っ張り、それにより内装パッド20も前後にしっかりと張られるため、着用者が動いた時に内装パッド20がよれずにフィット性が良くなる。さらに、後述する図6で示すように、内装パッド20の吸収体23はアセテートトウ吸収体30であり、両端で固定されることにより、その間で自由に幅を変えることで体の動きや股間の開き具合に併せて形状を変えることができ、二枚の弾性フィルム101b及び102bの間の距離Lsを空けた効果と相乗する。
【0028】
図6は、本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつ1の吸収体23でも用いるアセテートトウ吸収体30について説明する図であり、(a)はアセテートトウ吸収体30の非変形時、(b)はアセテートトウ吸収体30の変形時を示している。上述したように、本発明の実施形態では吸収体23として開繊時にSAPを担持させたアセテートトウを用いる。アセテートトウへのSAPの固定には、トリアセチンなどの可塑剤を使用することができる。
【0029】
SAPの担持体として広く用いられているフラッフパルプと比較しアセテートトウは、それ自体が尿を保持する能力は低いものの、逆に内部で尿の拡散が優れるという特徴がある。また長繊維であるため崩れることはなく、例えば両端を引っ張っても戻る弾力性もある。本発明の実施形態ではこのようなアセテートトウの長繊維である特徴を利用している。開繊しながらSAPを担持したアセテートを長方形に成型したアセテートトウ吸収体30を、上述したキャリアシート24で包む。
このとき、図6に示したようにアセテートトウ吸収体30の両端のみ接着剤で固定し、接着領域26aとする。このようにして固定されたアセテートトウ吸収体30は、接着領域26aの間では自由に幅を変えることができる。
【0030】
パンツ型紙おむつに加工後、股間で挟まれたとき、吸収体23全体でなく、股間にくる場所だけ図7のように折れまがるだけでなく、幅方向へ縮むことができるため、より柔軟にフィットする。また固定された両端でテンションがかかっているため、座ったときに脚を開いたときに戻ろうとする力が発生して、吸収体23が着用者の身体の動きに合わせフィットすることができる。このような特徴を発生させるため、上述したように両端の接着領域26aはサイドシール18の下端より上側に設ける。
【0031】
サイドシール18の下端より下の領域は、脚周り被覆部15を形成するために複雑に動く領域であるため、ここに接着領域26aが重ならないようにすることが必要である。またキャリアシート24と液不透過性のバックシート22の接着層27及び内装パッド20と外装体10の接着層28も、この接着領域26a内で行わなければならない。
内装パッド20と外装体10の接着はこの両端部の領域だけだと、股間で外装体10と内装パッド20が別の動きをし、ずれるおそれがある。そのため外装体10の縦方向中央にある非伸縮領域13にある接着層29で内装パッド20を接着する。
このとき、接着層29の接着領域29aは非伸縮領域13全面を使っても構わないが、図1で示したように幅方向両端部が接着されていればよい。本発明ではこの領域は脚周り被覆部15の内腿になる部分であり、上述の二枚の弾性フィルム101b及び102bによる前後の伸縮領域によって引っ張られることにより、内装パッド20のよれが起こらない。この特徴を活かすためには少なくとも幅方向両端部が接着されていることが必要である。
【0032】
本実施形態によれば、外装体10に伸縮性複合材料を使用し、吸収体23にアセテートトウを使用することでフィット性が高く、見た目もより下着らしくなる。
【0033】
(伸縮性複合材料)
外装体10の伸縮性複合材料は、図2及び図3に示すように、延伸状態の弾性フィルム10bの表裏に不織布10aを貼合(ラミネート)する。弾性フィルム10bの表裏に不織布10aを貼合する方法は超音波溶着がのぞましい。貼合するときの弾性フィルム10bの延伸率は2.5倍以上4.0倍以下が好ましく、より好ましいのは3.0倍以上3.5倍以下である。ラミネート時に延伸された弾性フィルム10bは永久ひずみが残るため自然長になっても元の長さにならない。
【0034】
また、弾性フィルム10bは不織布10aに溶着点で固定されるため、ラミネート時に伸ばした以上には延伸できない。そのため加工された伸縮性複合材料の延伸能力はラミネート時の延伸率より低下する。したがって、ラミネート時に2.5倍未満で延伸した場合には伸縮性複合材料は2倍程度の延伸能力しかなく、外装体10として使用するには延伸能力が低い。
【0035】
一方、ラミネート時の延伸率が高いほど、弾性フィルム10bのネックインが大きくなる。ネックイン状態で不織布10aに溶着点で固定された弾性フィルム10bは自然長状態になっても元の幅にもどりにくく、上下の不織布10aの間で皺となることがあり、伸縮性複合材料の仕上がりがフラットでなくうねりをともなってしまう。
【0036】
そのためラミネート時の弾性フィルム10bの延伸率は4.0倍以下であることが好ましい。弾性フィルム10bと不織布10aの溶着は熱又は超音波による方法などで行うことができるが、仕上がりの肌触りが柔らかくなることから超音波溶着が適している。超音波溶着によるラミネートはホーンからの振動と溶着パターンと同じ形状で設けられた凸部をもつアンビルロールの間に延伸した弾性フィルム10bと不織布10aを通すことで行われる。そのため伸縮性複合材料の性能は処理時の弾性フィルム10bの延伸率と溶着パターンで決まる。
【0037】
図8は、本発明の実施形態に係るパンツ型紙おむつ1の外装体10で用いられる伸縮性複合材料の溶着パターンについての説明図である。本発明では溶着パターンに特に制限はないが、図8に示すように、千鳥パターンがラミネート後の伸縮性の低下が少なく、なおかつ少ない溶着点で伸縮性複合材料の厚みが薄くなることから望ましい。
またアンビルロール軸方向に対し角度θ’の傾斜を持たせることにより、装置の耐久性を高めることができるため望ましい。傾斜を持たない場合、ホーンはアンビルロールの凸部と接触しているときとしていないときを繰り返すため、衝撃が大きい。一方、傾斜を持たせる場合、ホーンは常にアンビルロールの凸部と接触しているため、ホーンへの衝撃による負荷が軽減される。
【0038】
ラミネート処理方向の溶着点間距離Dは伸縮性複合材料の厚みに影響する。タオルのような、よりソフトで温かみのある風合いにしたいときには、溶着点間距離Dを大きくし、伸縮性複合材料に形成される不織布10aの波の高さを高くすればよい。その場合、溶着点間距離Dは2.0mm以上4.0mm以下が好ましい。逆によりフラットで木綿のような風合いにしたい場合には、溶着点間距離Dを0.8mm以上1.5mm以下にするのが好ましい。
溶着点の幅方向の間隔は、溶着点間距離Dを設定したあとに、適宜決めることができる。溶着点の幅方向の間隔が狭すぎると、溶着点の面積率が高くなり、超音波溶着時の処理条件が高いエネルギーを必要とするため好ましくない。溶着点の幅方向の間隔が広すぎると超音波溶着時に発生した弾性フィルム10bのネックインからの戻りにより縦ジワが発生する可能性がある。
以上のことから溶着点間距離Dは、好ましくは0.8mm以上4.0mm以下で加工条件と仕上がりのバランスがよいものを選択することができる。
【0039】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 パンツ型紙おむつ
10 外装体
10a 不織布
10b、101b、102b 弾性フィルム
13 非伸縮領域
15 脚周り被覆部
16 スリット部
18 サイドシール
K カットライン
20 内装パッド
21 トップシート
22 バックシート
23 吸収体
24 キャリアシート
25 立体ギャザー
26、27、27’、28、29、29’ 接着層
26a、29a 接着領域
30 アセテートトウ吸収体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11