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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B60F 5/02 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
B60F5/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022552121
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021036536
(87)【国際公開番号】W WO2022065519
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020173596
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520401262
【氏名又は名称】田中 香織
(72)【発明者】
【氏名】田中 香織
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮平
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129301(JP,A)
【文献】特表2015-523933(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281537(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106240262(CN,A)
【文献】国際公開第2018/207398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60F 5/02
B64C 37/00
B64C 39/02
F16D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
ホイール回転軸回りに回転し、前記本体を地面上で移動させるホイールと、
プロペラ回転軸回りに回転し、前記本体を空中又は水中で移動させるプロペラと、
回転駆動源により回転されるシャフトと、
前記シャフトを前記ホイール又は前記プロペラに接続し、前記ホイールに接続する場合前記シャフトの回転で前記ホイール回転軸回りに前記ホイールのみを回転させ、前記プロペラに接続する場合前記シャフトの回転で前記プロペラ回転軸回りに前記プロペラのみを回転させる接続機構と、
前記シャフトを前記シャフトの回転軸方向にスライドさせることにより前記シャフトの接続先を前記ホイール又は前記プロペラに切り替える切替機構と、を備える移動体。
【請求項9】
前記タイヤは、非空気入りタイヤである、請求項8記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面の走行及び空中又は水中の移動が可能な移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、回転ドライブ手段により地上を走行し、ロータブレードにより飛行する移動体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、車輪の転動による陸上走行モードと、スクリュープロペラの回転に伴う推進力による水上航行モードとを切り替え可能にした水陸両用車のインホイールモータ付転舵システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-523933号公報
【文献】特開2016-22756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の移動体は、回転ドライブ手段とロータとに異なる回転機構を設けているため、構造が複雑化している。
【0006】
特許文献2のシステムは、ホイール内にモータを設置したことにより、スクリュープロペラが小さくなり、飛行のための必要な推力が得られないおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、簡易及び軽量な構造を有する移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移動体は、上述した課題を解決するために、本体と、ホイール回転軸回りに回転し、前記本体を地面上で移動させるホイールと、プロペラ回転軸回りに回転し、前記本体を空中又は水中で移動させるプロペラと、回転駆動源により回転されるシャフトと、前記シャフトを前記ホイール又は前記プロペラに接続し、前記ホイールに接続する場合前記シャフトの回転で前記ホイール回転軸回りに前記ホイールのみを回転させ、前記プロペラに接続する場合前記シャフトの回転で前記プロペラ回転軸回りに前記プロペラのみを回転させる接続機構と、前記シャフトを前記シャフトの回転軸方向にスライドさせることにより前記シャフトの接続先を前記ホイール又は前記プロペラに切り替える切替機構と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る移動体は、簡易及び軽量な構造を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】空陸両用ロボットの外観斜視図。
図2】タイヤ部の分解図。
図3】タイヤ部及びシャフトの接続機構を特に説明する図。
図4】切替機構を説明する概念図。
図5】接続機構の第1変形例を説明する概念図。
図6】接続機構の第2変形例を説明する概念図。
図7】空陸両用ロボットの第1変形例を示す外観斜視図。
図8】空陸両用ロボットの第2変形例を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る移動体の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本実施形態においては、本発明の移動体を空陸両用ロボット1に適用した場合を例として説明する。
【0012】
図1は、空陸両用ロボット1の外観斜視図である。
図2は、タイヤ部30の分解図である。
図3は、タイヤ部30及びシャフト20の接続機構を特に説明する図である。図3においては、説明のためタイヤ部30の接続機構に関連する部分のみを図示し、他の構成は省略した。
【0013】
以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、図1における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0014】
空陸両用ロボット1は、本体10と、シャフト20と、タイヤ部30と、を有する。
【0015】
本体10は、モータや、空陸両用ロボット1を制御するためのコントロールユニット16等を収容する。本体10は、左右側面の少なくとも一部であって、タイヤ部30と対向する面に、傾斜面11を有する。
【0016】
シャフト20は、本体10の左右側面においてそれぞれ前後2箇所に配置される。シャフト20は、本体10側の一端でモータ(回転駆動源)に接続されて、回転される。モータは、4本のシャフト20を独立して回転させる4つのモータ(図4のモータ60)であってもよいし、4本のシャフト20を共通で回転させる1つのモータであってもよい。シャフト20は、タイヤ部30側の他端から順に、外走行ギア12と、飛行ギア13と、内走行ギア14と、を有する。外走行ギア12、飛行ギア13及び内走行ギア14は、それぞれ外歯を有する凸状のギアである。飛行ギア13及び内走行ギア14は、互いに反対方向に凸となるように配置されており、これらの間にはストッパー15が配置される。ストッパー15は、飛行ギア13及び内走行ギア14の外径よりも大きい外径を有し、飛行ギア13及び内走行ギア14を連結する。
【0017】
タイヤ部30は、各シャフト20の他端側に接続されて、本体10の左右側面のそれぞれ前後2箇所に配置される。タイヤ部30は、シャフト20を介してモータの回転力が伝達されることにより、シャフト20の回転軸と同軸のタイヤ部回転軸30a回りに回転する。タイヤ部30は、このタイヤ部回転軸30a(ホイール回転軸30b及びプロペラ回転軸30c)が、地面(水平面)に対して非平行となるように、配置されている。
【0018】
すなわち、図1に示すように、シャフト20は、タイヤ部30側の他端が斜め上方に向かって本体10から伸びる。シャフト20の他端側には、タイヤ部30の内外側面がシャフト20と直交し、かつタイヤ部30の内外側面が地面に対して角度θをなすように、タイヤ部30が配置されている。角度θは、例えば上述した傾斜面11との関係で決定される。すなわち、角度θは、プロペラ41(後述)の回転に伴う推力を傾斜面11が受け、この傾斜面11に衝突した推力の一部を鉛直下向きの力、すなわち揚力に変換することが可能なように決定される(例えば0度<θ<10度)。また、角度θが小さいほど、推力の損失を小さくでき飛行には有効であるため、走行可能な範囲で角度θが小さい方が好ましい。
【0019】
タイヤ部30は、内ホイール31と、外ホイール35と、タイヤ38と、プロペラ41と、を有する。
【0020】
内ホイール31及び外ホイール35は、合金や樹脂からなり、一定の間隔を有して対向配置される。内ホイール31及び外ホイール35は、シャフト20の回転軸と同軸のホイール回転軸30bを有する。
【0021】
内ホイール31は、プロペラ41に関して本体10側に配置される。内ホイール31は、回転中心に、シャフト20を貫通させる内ホイール結合部32を有する。内ホイール結合部32は、プロペラ結合部42と対向する側に、内歯を有する凹状の内ホイールギア33を有する。外ホイール35は、プロペラ41に関して内ホイール31の反対側に配置される。外ホイール35は、回転中心に、シャフト20を貫通させる外ホイール結合部36を有する。外ホイール結合部36は、プロペラ結合部42と対向する側と反対側に、内歯を有する凹状の外ホイールギア37を有する。内ホイールギア33及び外ホイールギア37は、内走行ギア14及び外走行ギア12とそれぞれ噛み合い、シャフト20からモータの回転力が伝達される(図3(B)参照)。
【0022】
タイヤ38は、内ホイール31及び外ホイール35の外周に配置される。タイヤ38(及び内ホイール31、外ホイール35)は、地面等に接地しながらタイヤ部回転軸30a(ホイール回転軸30b)回りに回転することにより、空陸両用ロボット1を地面上を走行して移動させる。タイヤ38(ホイール)は、地面に対して平行な、地面に対する接地面39を有する。すなわち、タイヤ部回転軸30aが地面に対して非平行に設けられていることに伴い、地面走行時の安定性を確保する観点から、タイヤ38は、内側面側の径38aよりも大きい外側面側の径38bを有する。これにより、タイヤ部回転軸30aが地面に対して角度θをなす場合であっても、走行時において、空陸両用ロボット1は、タイヤ38の接地面積を大きくでき、効果的に加速、停止できる。
【0023】
タイヤ38は、ゴム製の空気入りタイヤや非空気入りタイヤを適用し得る。タイヤ38が非空気入りタイヤである場合、飛行時における空気圧の変化により、空気抜けやタイヤ38の破裂等のトラブルを低減できる。
【0024】
プロペラ41は、内ホイール31と外ホイール35との間に配置される。プロペラ41は、シャフト20の回転軸と同軸のプロペラ回転軸30cを有する。プロペラ41は、プロペラ回転軸30cから放射状に配置された所要数の翼45を有する。プロペラ41は、プロペラ回転軸30c回りに回転し、本体10を空中で移動させる。プロペラ41は、回転中心に、シャフト20を貫通させるプロペラ結合部42を有する。プロペラ結合部42は、内ホイール結合部32と対向する側に、内歯を有する凹状のプロペラギア43を有する。プロペラギア43は、飛行ギア13と噛み合い、シャフト20からモータの回転力が伝達される(図3(C)参照)。
【0025】
プロペラ41は、空陸両用ロボット1に求められる推力が得られるような寸法(外径)を有する。これに伴い、内ホイール31、外ホイール35及びタイヤ38は、プロペラ41の寸法に対応する寸法(内径及び外径)を有する。一例としては、プロペラ41の外径、すなわち内ホイール31と外ホイール35(以下、内ホイール31と外ホイール35をまとめて「ホイール31、35」という場合がある。)の内径は、通常の四輪自動車等のホイールの内径と車体との寸法比率よりも大きくなることが、プロペラ41の推力を得る観点から好ましい。
【0026】
なお、内ホイール結合部32、外ホイール結合部36及びプロペラ結合部42は、貫通するシャフト20の回転が伝達されず、かつシャフト20に所定位置で支持されるよう、ベアリング等の所要の構造を有している。また、内走行ギア14、外走行ギア12及び飛行ギア13と、これらと噛み合う内ホイールギア33、外ホイールギア37及びプロペラギア43は、シャフト20をホイール31、35又はプロペラ41に接続し、ホイール回転軸30b回り又はプロペラ回転軸30c回りにホイール31、35又はプロペラ41を回転させる接続機構として機能する。また、図3(A)の状態は、内走行ギア14、外走行ギア12及び飛行ギア13が、内ホイールギア33、外ホイールギア37及びプロペラギア43のいずれとも接続されていないニュートラルな状態である。
【0027】
空陸両用ロボット1は、シャフト20の接続先をホイール31、35又はプロペラ41に切り替える切替機構50をさらに有する。図4は、切替機構50を説明する概念図である。図4においては、説明の簡素化のため、左右に対向する一組のタイヤ部30及びシャフト20のみが図示され、他の構成は省略されている。
【0028】
切替機構50は、シャフト20を軸方向にスライドさせるための機構であり、第一ラック51と、第二ラック52と、第三ラック53と、第四ラック54と、第一ピニオン55と、第二ピニオン56と、第三ピニオン57と、を有する。
【0029】
第一ラック51及び第二ラック52は、地面とほぼ平行、かつ所定の間隔を介して互いに対向して配置される。第三ラック53及び第四ラック54は、シャフト20を回転させる各モータ60よりも本体10側に設けられる。第一ピニオン55は、図示しないモータにより正逆方向に回転する。第一ピニオン55は、第一ラック51及び第二ラック52と噛み合い、モータの回転方向に応じて第一ラック51及び第二ラック52を互いに左右逆方向にスライドさせる。
【0030】
第二ピニオン56は、所要の角度を形成して配置される第一ラック51及び第三ラック53と噛み合う。第二ピニオン56は、第一ラック51のスライドに伴い所定位置で回転し、その回転を第三ラック53に伝達して第三ラック53をスライドさせる。これにより、第三ラック53と接続されたシャフト20は、軸方向にスライドする。第三ピニオン57は、所要の角度を形成して配置される第一ラック51及び第四ラック54と噛み合う。第三ピニオン57は、第二ラック52のスライドに伴い所定位置で回転し、その回転を第四ラック54に伝達して第四ラック54をスライドさせる。これにより、第四ラック54と接続されたシャフト20は、軸方向にスライドする。
【0031】
このような切替機構50は、センサ等の検出結果に基づいて、コントロールユニット16により制御され、一例として、図4(A)に示す状態と図4(B)に示す状態との間で遷移する。センサは、例えばシャフト20のストッパー15に、内走行ギア14と内ホイールギア33とが適切な位置で噛み合ってること、及び飛行ギア13とプロペラギア43とが適切な位置で噛み合ってることを検出するセンサである。
【0032】
例えば空陸両用ロボット1が走行する際には、切替機構50は、内走行ギア14と内ホイールギア33とが適切な位置で噛み合ってることをセンサが検出するまで、シャフト20を本体10側にスライドさせる。また、空陸両用ロボット1が飛行する際には、切替機構50は、飛行ギア13とプロペラギア43とが適切な位置で噛み合ってることをセンサが検出するまで、シャフト20を本体10側と反対方向にスライドさせる。センサには、例えば圧力センサや近接センサ等を適用し得る。
【0033】
次に、本実施形態における空陸両用ロボット1の走行時及び飛行時の動作について説明する。
【0034】
空陸両用ロボット1は、走行時においては、モータによるシャフト20の回転力をホイール31、35に伝達してホイール31、35及びタイヤ38のみが回転するように制御する。具体的には、空陸両用ロボット1は、切替機構50を制御しシャフト20をスライドさせて、図3(B)に示すように、シャフト20の外走行ギア12及び内走行ギア14がホイール31、35の内ホイールギア33及び外ホイールギア37と噛み合うように制御する。このとき、シャフト20のストッパー15が作用し、外走行ギア12及び内走行ギア14と内ホイールギア33及び外ホイールギア37との適切な噛み合い位置でシャフト20のスライドが停止するように作用し、シャフト20やホイール31、35に軸方向の過剰な負荷がかからないようになっている。
【0035】
空陸両用ロボット1は、走行に適した回転数でモータを制御し、シャフト20を介してホイール31、35を回転させる。これにより、ホイール31、35は回転し、空陸両用ロボット1は地上を走行する。このとき、タイヤ38が接地面39を有するように内側面側の径38aよりも大きい外側面側の径38bを有するため、接地面39を有さない場合に比べて、タイヤ38と地面との接地面積を大きくできる。これにより、空陸両用ロボット1は、効果的に加速・停止ができる。
【0036】
空陸両用ロボット1は、飛行時においては、モータによるシャフト20の回転力をプロペラ41に伝達してプロペラ41のみが回転するように制御する。具体的には、空陸両用ロボット1は、切替機構50を制御しシャフト20をスライドさせて、図3(C)に示すように、シャフト20の飛行ギア13がプロペラ41のプロペラギア43と噛み合うように制御する。また、空陸両用ロボット1は、飛行に適した回転数でモータを制御し、シャフト20を介してホイール31、35を回転させる。
【0037】
プロペラ41は回転して推力を得て、空陸両用ロボット1は空中を飛行する。このとき、タイヤ部30が角度θを有して配置され、かつ本体10は傾斜面11を有する。このため、プロペラ41の推力は、本体10に衝突するが傾斜面11で鉛直下向きの力に変換され、空陸両用ロボット1は好適に揚力を得ることができる。
【0038】
このような空陸両用ロボット1は、以上のように構成することで、簡易及び軽量な構造を実現できる。すなわち、空陸両用ロボット1は、シャフト20のスライドという容易な動作で、モータの回転力の伝達先を切り替えることができ、走行と飛行を簡易に切り替えることができる。これに伴い、空陸両用ロボット1は、軽量化でき、製造コストの低減、製造工程の簡素化も実現できる。
【0039】
また、タイヤ部30が地面に対して垂直ではなく、角度θを有して配置されているため、空陸両用ロボット1は、タイヤ部30に配置されるプロペラ41の推力の損失を低減できる。また、空陸両用ロボット1は、本体10が傾斜面11を有することにより、構造上本体10への衝突が避けられない推力を鉛直下向きに変換でき、プロペラ41の推力の損失をさらに低減できる。
【0040】
さらに、タイヤ38が接地面39を有するため、空陸両用ロボット1は、安定した走行を実現できる。
【0041】
このような空陸両用ロボット1は、飛行時においては、回転しないタイヤ38がプロペラ41の防護の役割をなすため、建物及びトンネル内を点検したり、火災の際に建物に侵入したりするためのロボットとして好適に用いられる。また、空陸両用ロボット1は、原子力発電所等、人の立ち入りが困難な建物において走行及び飛行することにより、無人航空機及び無人地上車両の両者の機能を一体的に実現できる。さらに、空陸両用ロボット1は、警備用ドローンとして用いられることにより、飛行により現場に急行したり、電柱等の障害物により飛行できない領域では走行したりできるため、監視領域を拡大し、長時間の監視ができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0043】
例えば、上述した空陸両用ロボット1においては、内歯及び外歯を有するギアの噛み合いにより接続機構を実現する例を説明したが、シンクロメッシュ式の接続機構を利用してシャフトの回転をホイール及びプロペラに伝達してもよい。ここで、図5は、接続機構の第1変形例を説明する、図3に対応する概念図である。図5(A)は飛行及び走行のいずれも行わない状態、図5(B)は走行時の状態、図5(C)は飛行時の状態を示す。
【0044】
シャフト120は、タイヤ部側から順に、外スリーブ112と、内スリーブ113と、を有する。
【0045】
内ホイール結合部132は、プロペラ結合部142と対向する側に、内ホイールギア133と、シンクロナイザーリング133aと、を有する。外ホイール結合部136は、プロペラ結合部142と対向する側と反対側に、外ホイールギア137と、シンクロナイザーリング137aと、を有する。内ホイールギア133及び外ホイールギア137は、内スリーブ113及び外スリーブ112と噛み合い、シャフト120からモータの回転力が伝達される(図5(B)参照)。
【0046】
プロペラ結合部142は、内ホイール結合部132と対向する側の面に、プロペラギア143と、シンクロナイザーリング143aと、を有する。プロペラギア143は、内スリーブ113と噛み合い、シャフト120からモータの回転力が伝達される(図5(C)参照)。
【0047】
空陸両用ロボットは、このようなシンクロメッシュ式の接続機構を有することにより、走行と飛行を切り替える際の騒音の発生を低減できる。
【0048】
また、接続機構は、シャフトの回転軸と、ホイール及びプロペラの回転軸が同軸でなく、平行であってもよい。ここで、図6は、接続機構の第2変形例を説明する、図3に対応する概念図である。図6(A)は飛行及び走行のいずれも行わない状態、図6(B)は走行時の状態、図6(C)は飛行時の状態を示す。
【0049】
空陸両用ロボット1のタイヤ部30が内ホイール31、外ホイール35及びプロペラ41を有するのに対し、第2変形例の空陸両用ロボットのタイヤ部は、ホイール231及びプロペラ241を有し、ホイール231及びプロペラ241がシャフト220と非同軸のタイヤ部シャフト230aにより連結されている。
【0050】
シャフト220は、タイヤ部側から順に、飛行ギア212と、走行ギア213と、を有する。飛行ギア212及び走行ギア213は、外歯を有する。
【0051】
ホイール231のホイール結合部232は、プロペラ結合部242と対向する側に、外歯を有するホイールギア233を有する。ホイール結合部232は、タイヤ部シャフト230aに対してベアリング等により所定位置で回転可能に支持されている。ホイールギア233は、走行ギア213と噛み合い、シャフト220からモータの回転力が伝達される(図6(B)参照)。このとき、タイヤ部シャフト230a及びプロペラ結合部242は回転しない。
【0052】
プロペラ241のプロペラ結合部242は、ホイール結合部232と対向する側に、外歯を有するプロペラギア243を有する。プロペラ結合部242は、タイヤ部シャフト230aに対してベアリング等により所定位置で回転可能に支持されている。プロペラギア243は、飛行ギア212と噛み合い、シャフト220からモータの回転力が伝達される(図6(C)参照)。このとき、タイヤ部シャフト230a及びホイール結合部232は回転しない。
【0053】
このように、空陸両用ロボットは、プロペラ241が一対のホイール間又はタイヤの内周側に配置されていなくてもよく、設計の自由度がある。
【0054】
また、空陸両用ロボット1においては、プロペラ41の推力から本体10の傾斜面11を利用して揚力を発生させたが、本体10を利用することなく揚力を発生させてもよい。例えば、図7は空陸両用ロボット1第1変形例を示す、図1に対応する外観斜視図である。この場合、揚力はプロペラの推力の鉛直下向き成分である。
【0055】
さらに、空陸両用ロボット1は、角度制御機構によりタイヤ部30の角度θが可変であってもよい。角度制御機構は、例えばシャフト20やその接続先に設けられ、タイヤ部30の角度θ(シャフト20、タイヤ部回転軸30aの角度)を制御する。角度制御機構は、飛行時における空陸両用ロボット1の姿勢制御や進行方向の制御、揚力の制御等を行うために、ユーザからの指示や予め記憶されたプログラム等に基づいてコントロールユニット16により制御される。角度制御機構は、各タイヤ部30を個別に制御可能であることが好ましい。
【0056】
空陸両用ロボット1は、走行及び飛行時にはそれぞれタイヤ部30の角度θを制御可能にしたため、空陸両用ロボット1は、走行及び飛行の両方に最適な移動を実現できる。例えば、走行時には、角度θを90度に制御することで、安定した走行を実現できる。一方、飛行時(ホバリング時)には、角度θを0度に制御することで、推力を損失なく揚力として利用できる。
【0057】
また、空陸両用ロボット1においては、シャフト20が本体10から伸びる例を説明したが、シャフト20が本体10下方に配置されたアームから伸びていてもよい。図8は、空陸両用ロボット1の第2変形例を示す、図1に対応する外観斜視図である。
【0058】
空陸両用ロボット301は、本体310の下方前方に設けられた前アーム318と、本体310の下方後方に配置された後アーム319と、を有する。各シャフト320は、前アーム318又は後アーム319にそれぞれ回転可能に支持される。
【0059】
このような空陸両用ロボット301は、前アーム318、後アーム319を介して各シャフト320、タイヤ部330が取り付けられることにより、シャフト320の本体310に対する角度の自由度が高くなり、角度θを小さくできる。その結果、空陸両用ロボット301は、推力のうち本体310に衝突する成分を低減でき、所望の揚力を得やすくなり飛行性を向上し得る。
【0060】
また、空陸両用ロボット301が上述した角度制御機構を有する場合には、飛行時においては前アーム318、後アーム319より上方にタイヤ部330を位置させることで、前アーム318、後アーム319が地面に対する着陸脚(スキッド)として機能し得る。
【0061】
また、タイヤ部30はタイヤ38を有していなくてもよい。この場合、接地面39は、ホイール31、35に設けられる。
【0062】
タイヤ部30の回転駆動源は、モータに代えてエンジンであってもよい。
【0063】
構造の簡素化及びコスト低減の観点から、空陸両用ロボット1の機能が実現可能であれば切替機構50で回転駆動源の接続先が制御されるタイヤ部30は4つに限らず2つでもよい。
【0064】
内ホイールギア33及び外ホイールギア37と、内走行ギア14及び外走行ギア12との凹凸(雄雌)関係、及びプロペラギア43と飛行ギア13との凹凸関係は、逆であってもよい。
【0065】
空陸両用ロボット1は、飛行制御のため翼を有していてもよい。
【0066】
本発明に係る移動体を、一例として空陸両用ロボット1に適用して説明したが、人により操縦される空陸両用車にも適用できる。この場合、移動体が飛行して現場に急行でき、その後、陸路を走行できるため、ドクターヘリと救急車の機能を果たすことができる。また、本発明に係る移動体は、水陸両用ロボット及び水陸両用車にも適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1、301 空陸両用ロボット
10、310 本体
11 傾斜面
12 外走行ギア
13 飛行ギア
14 内走行ギア
15 ストッパー
16 コントロールユニット
20、120、220、320 シャフト
30、330 タイヤ部
30a タイヤ部回転軸
30b ホイール回転軸
30c プロペラ回転軸
31 内ホイール
32、132 内ホイール結合部
33、133 内ホイールギア
35 外ホイール
36、136 外ホイール結合部
37、137 外ホイールギア
38 タイヤ
39 接地面
41、241 プロペラ
42、142、242 プロペラ結合部
43、143、243 プロペラギア
45 翼
50 切替機構
60 モータ
112 外スリーブ
113 内スリーブ
212 飛行ギア
213 走行ギア
230a タイヤ部シャフト
231 ホイール
232 ホイール結合部
233 ホイールギア
図1
図2
図3
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図8