(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】波長可変光源、光モジュール及び波長可変光源の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0683 20060101AFI20230214BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20230214BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01S5/0683
H01S5/0239
G02F1/01 F
(21)【出願番号】P 2017151026
(22)【出願日】2017-08-03
【審査請求日】2020-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-023471(JP,A)
【文献】特開2005-085815(JP,A)
【文献】特開2013-089961(JP,A)
【文献】特開2008-085103(JP,A)
【文献】特開2011-138855(JP,A)
【文献】国際公開第01/003349(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064542(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1140493(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
光源と、
制御信号に応じて前記光源から出力された光から特定の波長の光を出力光として選択する波長選択素子と、
前記基板上に配置され、前記出力光をフィルタリングした光を出力する波長フィルタと、
前記波長フィルタから出力された光を受光する受光素子と、
目標波長に対応する第1透過率、前記目標波長を含む所定の制御範囲の短波長端に対応する第2透過率、及び前記制御範囲の長波長端に対応する第3透過率それぞれの大きさを互いに比較した結果に応じて前記波長フィルタの第1~第6の制御状態のうちの1の制御状態を決定し
、
前記決定した制御状態によって定まる判定条件のもとで、前記受光素子が受光した光の光量に対応する出力透過率の大きさと前記第1透過率の大きさとを比較して第1の比較結果を得て、前記決定した制御状態に応じて前記出力透過率の大きさと前記第2透過率の大きさ又は前記第3透過率の大きさとを比較して第2の比較結果を得て、前記第1の比較結果、または前記第1の比較結果と前記第2の比較結果に基づいて、波長を制御する制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記波長選択素子に出力する制御部と、
を有する、波長可変光源。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1透過率、前記第2透過率及び前記第3透過率それぞれの大きさを互いに比較した結果に応じて前記波長フィルタの複数の制御状態のうちの1の制御状態を決定する制御状態決定部と、
前記制御状態決定部によって決定された制御状態によって定まる判定条件のもとで、前記出力透過率の大きさと前記第1透過率の大きさとを比較して第1の比較結果を得て、前記決定された制御状態に応じて前記出力透過率の大きさと前記第2透過率の大きさ又は前記第3透過率の大きさとを比較して第2の比較結果を得て、前記第1の比較結果、または前記第1の比較結果と前記第2の比較結果に基づいて、前記出力光の波長を短くするか又は前記出力光の波長を長くするかを決定する制御方向決定部と、
を有する、請求項1に記載の波長可変光源。
【請求項3】
前記制御方向決定部は、前記制御状態が前記第1透過率が前記第2透過率と前記第3透過率との間の値ではないことを示すときに、前記波長選択素子によって選択される波長を変化させたときの前記出力透過率の変化に基づいて、前記出力光の波長を短くするか又は前記出力光の波長を長くするかを決定する、請求項2に記載の波長可変光源。
【請求項4】
基板と、
光源と、
制御信号に応じて前記光源から出力された光から特定の波長の光を出力光として選択する波長選択素子と、
前記基板上に配置され、前記出力光をフィルタリングした光を出力する波長フィルタと、
前記波長フィルタから出力された光を受光する受光素子と、
前記波長選択素子を制御する制御部と、を有する波長可変光源を制御する制御方法であって、
前記波長可変光源の出力光の目標波長を取得し、
前記受光素子が受光した光量を使用して出力光の出力透過率を推定し、
目標波長に対応する第1透過率、前記目標波長を含む所定の制御範囲の短波長端に対応する第2透過率、及び前記制御範囲の長波長端に対応する第3透過率それぞれの大きさを互いに比較した結果に応じて前記波長フィルタの第1~第6の制御状態のうちの1の制御状態を決定し、
前記決定した制御状態によって定まる判定条件のもとで、前記受光素子が受光した光の光量に対応する出力透過率の大きさと前記第1透過率の大きさとを比較して第1の比較結果を得て、前記決定した制御状態に応じて前記出力透過率の大きさと前記第2透過率の大きさ又は前記第3透過率の大きさとを比較して第2の比較結果を得て、前記第1の比較結果、または前記第1の比較結果と前記第2の比較結果に基づいて、波長を制御する制御信号を生成し、
生成した前記制御信号を前記波長選択素子に出力する、
処理を前記制御部が実行する制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の波長可変光源と、
前記波長可変光源から出力される出力光を変調した変調光を出力する光変調器と、
を有する、光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変光源、光モジュール及び波長可変光源の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子に熱を印加することで光学素子の特性を熱制御することが知られている。例えば、リング共振器を加熱してリング共振器の共振波長を制御することができる。また、波長フィルタを加熱して波長フィルタの自由スペクトル領域(Free Spectral Range、FSR)を熱制御することができる。
【0003】
また、基板上に配置されたレーザダイオード等の発光素子から出力される光を光導波路、並びにヒータによる加熱で特性を制御するリング共振器及び波長フィルタ等の光学素子を介して受光素子で受光する技術が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2008/0193145号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0094527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リング共振器及び波長フィルタを単一の基板に配置する場合、リング共振器及び波長フィルタの双方の特性を加熱により熱制御すると、印加した熱が互い干渉するため、所望の特性を得られないおそれがある。
【0006】
一実施形態では、基板に配置された波長フィルタの光透過特性を制御することなく、出力光の波長を制御可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、波長可変光源は、光源と、制御信号に応じて光源から出力された光から特定の波長の光を出力光として選択する波長選択素子とを有する。波長可変光源は、基板上に配置され、出力光をフィルタリングした光を出力する波長フィルタと、波長フィルタから出力された光を受光する受光素子と、制御部とを更に有する。制御部は、受光素子が受光した光の光量に対応する出力透過率、目標波長に対応する第1透過率、目標波長を含む所定の制御範囲の短波長端に対応する第2透過率、及び制御範囲の長波長端に対応する第3透過率に基づいて、制御信号を生成する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態では、基板に配置された波長フィルタの光透過特性を制御することなく、出力光の波長を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は関連する第1の波長可変光源を示す図であり、(b)は(a)に示す波長フィルタの光透過特性を示す図である。
【
図2】(a)は
図1に示す波長可変フィルタの光透過特性の制御を説明するための第1の図であり、(b)は
図1に示す波長可変フィルタの光透過特性の制御を説明するための第2の図である。
【
図3】(a)は関連する第2の波長可変光源を示す図であり、(b)は(a)に示す波長フィルタの光透過特性を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る波長可変光源のブロック図である。
【
図6】
図5に示す波長フィルタの光透過特性の一例を示す図である。
【
図7】
図4に示す波長制御部の機能ブロック図である。
【
図8】
図4に示す波長制御部による波長制御処理のフローチャートである。
【
図9】第1状態~第6状態のそれぞれの一例を示す図である。
【
図10】
図8に示すS106に示す処理のより詳細なフローチャートである。
【
図11】
図8に示すS108に示す処理のより詳細なフローチャート(その1)である。
【
図12】
図8に示すS108に示す処理のより詳細なフローチャート(その2)である。
【
図13】(a)は第2実施形態に係る波長可変光源のブロック図であり、(b)は(a)に示す波長制御部の機能ブロック図である。
【
図14】
図13(b)に示す波長制御部による波長制御処理のフローチャートである。
【
図15】
図14に示すS406に示す処理のより詳細なフローチャートである。
【
図16】(a)は波長フィルタの制御状態が第1状態である制御範囲の一例を示す図であり、(b)は波長フィルタの制御状態が第2状態である制御範囲の一例を示す図である。
【
図17】
図14に示すS408に示す処理のより詳細なフローチャートである。
【
図18】実施形態に係る波長可変光源を有する光モジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、実施形態に係る波長可変光源、光モジュール及び波長可変光源の制御方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されない。
【0011】
(実施形態に係る波長可変光源に関連する波長可変光源)
実施形態に係る波長可変光源、光モジュール、及び波長可変光源の制御方法について説明する前に、実施形態に係る波長可変光源に関連する波長可変光源について説明する。
【0012】
図1(a)は関連する第1の波長可変光源を示す図であり、
図1(b)は
図1(a)に示す波長フィルタの光透過特性を示す図である。
【0013】
波長可変光源900は、光源902及び波長可変フィルタ903を有するTLS(tunable lasersource Source)チップ901と、第1タップ904と、第2タップ905と、出力モニタ素子906と、波長モニタ907と、制御部910とを有する。
【0014】
TLSチップ901は、シリコン基板等の半導体基板であり、光源902及び波長可変フィルタ903が搭載される。光源902は、例えば半導体レーザであり、GaAs/AlGaAs等の半導体材料から形成され、例えば、自然光を発光する半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier、SOA)であってもよい。波長可変フィルタ903は、リング共振器とも称され、印加される温度によって共振周波数を制御する共振器を光源902と共に形成する。すなわち、光源902及び波長可変フィルタ903によって形成される共振器は、波長可変フィルタ903に印加する温度を調整することで共振周波数が制御される。波長可変フィルタ903は、例えば、近接して配置されるペルチェ素子等のヒータに通電する電流を調整することで、温度が調整される。波長可変フィルタ903は、制御部910から入力される波長制御信号に応じて光源902から出力された光から特定の波長の光を出力光として選択する波長選択素子として機能する。波長可変フィルタ903の構成はよく知られているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0015】
第1タップ904は、TLSチップ901から入力された光を分波する分波器であり、出力光として出力する光の光量が第2タップ905に出力する光の光量よりも多くなるように形成される。一例では、第1タップ904は、出力光として出力する光の光量が第2タップ905に出力する光の光量の10倍になるように形成される。
【0016】
第2タップ905は、第1タップ904から入力された光を分波する分波器であり、出力モニタ素子906に出力される光の光量と波長モニタ907に出力する光の光量とが略等しくなるように形成される。
【0017】
出力モニタ素子906は、例えば、フォトダイオードあり、第3タップ13を介して入力される光を受光し、受光した光の光量に応じた電流を制御部910に出力する。
【0018】
波長モニタ907は、波長フィルタ908と、モニタ素子909とを有する。モニタ素子909は、例えば、フォトダイオードあり、波長フィルタ20を介して入力される光の光量に応じた電流を制御部910に出力する。
【0019】
波長フィルタ908は、例えば、所定の規格等の波長グリッドの整数倍のFSRを有するエタロンフィルタであり、制御部910から印加されるフィルタ制御信号によって印加される温度に応じて光透過特性がシフトされる。波長フィルタ908は、例えば、近接して配置されるペルチェ素子等のヒータに通電する電流を調整することで、温度が調整される。モニタ素子909は、例えば、フォトダイオードあり、波長フィルタ908を介して入力される光の光量に応じた電流を制御部910に出力する。
【0020】
制御部910は、出力モニタ素子906及びモニタ素子909から入力される電流に基づいて演算される波長フィルタ908の光透過特性に基づいて、波長可変フィルタ903の光透過特性を制御する。
【0021】
制御部910は、波長可変フィルタ903の光透過特性を制御する前に、目標波長において、TLSチップ901から出力される出力光の波長の変化に応じた光透過率の変化量が大きくなるように、波長フィルタ908の光透過特性を調整する。例えば、
図1(b)において矢印Aで示される155.76nmが目標波長であるときに、制御部910は、155.76nmであるときの波長の変化に応じた光透過率の変化量が大きくなるように、波長フィルタ908の光透過特性を調整する。
【0022】
制御部910は、目標波長において、出力光の波長の変化に応じた光透過率の変化量が大きくなるように調整された波長フィルタ908を使用して、波長可変フィルタ903のフ光透過特性を制御する。
【0023】
図2(a)は、波長フィルタ908が第1状態に調整されたときの制御部910による波長可変フィルタ903の光透過特性の制御を説明するための図である。
図2(b)は、波長フィルタ908が第2状態に調整されたときの制御部910による波長可変フィルタ903の光透過特性の制御を説明するための図である。
図2(a)及び2(b)において、横軸はTLSチップ901の出力光の波長を示し、縦軸は出力モニタ素子906から入力されるに対するモニタ素子909から入力される電流の比率で示される波長フィルタ908の光透過率を示す。また、
図2(a)及び2(b)において、目標波長Tを中心値とする制御範囲は、双方向矢印「CaptureRange」で示される。
【0024】
図2(a)に示す第1状態において、1553.735nmである目標波長Tを中心とした制御範囲において、波長フィルタ908の光透過率は、TLSチップ901の出力光の波長の増加に従って、単調増加する。
図2(a)に示す第1状態では、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも大きいときは、TLSチップ901の出力光の波長が目標波長Tより長いことを示す。一方、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも小さいときは、TLSチップ901の出力光の波長が目標波長Tより短いことを示す。
【0025】
図2(a)に示す第1状態において、制御部910は、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも大きいときは、出力光の波長を短くすることを示す制御信号を波長可変フィルタ903に出力する。一方、制御部910は、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも小さいときは、出力光の波長を長くすることを示す制御信号を波長可変フィルタ903に出力する。
【0026】
図2(b)に示す第2状態において、1553.33nmである目標波長Tを中心とした制御範囲において、波長フィルタ908の光透過率は、TLSチップ901の出力光の波長の増加に従って、単調減少する。
図2(b)に示す第2状態では、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも大きいときは、TLSチップ901の出力光の波長が目標波長Tより短いことを示す。一方、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも小さいときは、TLSチップ901の出力光の波長が目標波長Tより長いことを示す。
【0027】
図2(b)に示す第2状態において、制御部910は、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも大きいときは、出力光の波長を長くすることを示す制御信号を波長可変フィルタ903に出力する。一方、制御部910は、波長フィルタ908の光透過率が目標波長Tに対応する光透過率よりも小さいときは、出力光の波長を短くすることを示す制御信号を波長可変フィルタ903に出力する。
【0028】
波長可変光源900では、制御部910は、第1状態及び第2状態の2つの状態に波長フィルタ908の光透過特性を場合分けして波長可変フィルタ903を制御することで、TLSチップ901から出力される出力光の波長を簡便に制御することができる。
【0029】
しかしながら、波長可変光源900では、TLSチップ901と波長モニタ907とが別個の素子として形成されるため、波長可変光源900を含むモジュールのサイズが大きくなると共に、素子間の光軸調整等の実装コストが増加するおそれがある。
【0030】
図3(a)は関連する第2の波長可変光源を示す図であり、
図3(b)は
図3(a)に示す波長フィルタの光透過特性を示す図である。
【0031】
波長可変光源920は、光源922と、波長可変フィルタ923と、第1タップ924と、第2タップ925と、出力モニタ素子926と、波長モニタ927とを有する。光源922、波長可変フィルタ923、第1タップ924、第2タップ925、出力モニタ素子926及び波長モニタ927は、TLSチップ921上に配置される。また、光源922、波長可変フィルタ923、第1タップ924、第2タップ925、出力モニタ素子926及び波長モニタ927は、TLSチップ921上に形成される光導波路を介して接続される。
【0032】
光源922~出力モニタ素子926の構成及び機能は、TLSチップ921上に配置されること以外は、光源902~出力モニタ素子906の構成及び機能と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0033】
波長モニタ927は、波長フィルタ928と、モニタ素子929とを有する。モニタ素子929の構成及び機能は、TLSチップ921上に配置されること以外は、モニタ素子909の構成及び機能と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0034】
波長フィルタ908は、光導波路で形成される光フィルタであり、一例では、遅延干渉計型の光フィルタである。
【0035】
波長可変光源920は、光源922と~波長モニタ927等の光学素子を単一のTLSチップ921上に配置することができるので、波長可変光源900を含むモジュールのサイズを小さくできると共に実装コストを低減することができる。
【0036】
しかしながら、波長可変光源920では、波長可変フィルタ923及び波長モニタ927の双方は、TLSチップ921上に配置される。このため、波長可変フィルタ923及び波長モニタ927の双方の特性を加熱により熱制御すると、印加した熱が互い干渉するため、所望の特性を得られないおそれがあり、波長モニタ927は、熱制御されない。波長可変光源920では、波長モニタ927は、熱制御されないので、波長モニタ927の光透過特性をシフトさせることはできない。
【0037】
また、波長モニタ927は、入力される光の波長に屈折率が依存する光導波路で形成されるため、波長モニタ927のFSRは入力される光の波長に応じて変化するので、波長モニタ907のようにFSRを一定に維持することは容易ではない。すなわち、波長モニタ927は、FSRが入力される光の波長に応じて変化するので、FSRを波長グリッドの整数倍に設定することは容易ではない。
【0038】
この結果、波長可変光源920では、矢印Aで示される目標波長Tにおける波長モニタ927の光透過率と、矢印B及びCのそれぞれで示される目標波長Tを中心値とする制御範囲の両端の波長における波長モニタ927の光透過率とは一致しないことになる。
【0039】
(実施形態に係る波長可変光源の概要)
実施形態に係る波長可変光源は、波長フィルタがフィルタリングした光の光透過率、並びに目標波長、及び制御範囲の両端の波長のそれぞれに対応する波長フィルタの光透過率のそれぞれの大きさを比較した比較結果に基づいて、出力光の波長を制御する。実施形態に係る波長可変光源は、出力光の波長の目標波長及び制御範囲の両端の波長における光透過率の大きさに応じて場合分けして出力光の波長を制御することで、波長フィルタの光透過特性を制御することなく出力光の波長を制御する。
【0040】
(第1実施形態に係る波長可変光源の構成及び機能)
図4は第1実施形態に係る波長可変光源のブロック図であり、
図5は
図4に示す光学部の内部ブロック図である。
【0041】
波長可変光源1は、光学部101と、制御部5とを有する。光学部101は、光源10と、第1タップ11と、第2タップ12と、第3タップ13と、リングフィルタ14と、出力モニタ素子15と、波長モニタ16とを有する。波長モニタ16は、波長フィルタ20と、第1モニタ素子21と、第2モニタ素子22とを有する。
【0042】
第1タップ11は、リングフィルタ14に出力する光の光量が第2タップに出力する光の光量よりも多くなるように形成される。一例では、第1タップ11は、リングフィルタ14に出力する光の光量が第2タップ12に出力する光の光量の10倍になるように形成される。
【0043】
第2タップ12は、出力光として出力される光の光量が第3タップ13に出力する光の光量よりも多くなるように形成される。一例では、第2タップ12は、出力光として出力される光の光量が第3タップ13に出力する光の光量の10倍になるように形成される。
【0044】
第3タップ13は、波長モニタ16に出力する光の光量が出力モニタ素子15に出力する光の光量よりも多くなるように形成される。一例では、第2タップ12は、出力光として出力する光の光量が波長モニタ16に出力する光の光量の2倍になるように形成され、第1モニタ素子21、第2モニタ素子22及び出力モニタ素子15に出力される光の光量が略等しくなる。
【0045】
リングフィルタ14は、リング共振器とも称され、印加される温度によって共振周波数を制御する共振器を光源10と共に形成する。すなわち、光源10及びリングフィルタ14によって形成される共振器は、リングフィルタ14に印加する温度を調整することで共振周波数が制御される。リングフィルタ14は、例えば、近接して配置されるペルチェ素子等のヒータに通電する電流を調整することで、温度が調整される。リングフィルタ14は、不図示の制御部から入力される波長制御信号に応じて光源10から出力された光から特定の波長の光を出力光として選択する波長選択素子として機能する。リングフィルタ14の構成はよく知られているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0046】
出力モニタ素子15は、例えば、フォトダイオードあり、第3タップ13を介して入力される光を受光し、受光した光の光量に応じた電流を不図示の制御部に出力する。
【0047】
波長モニタ16は、波長フィルタ20と、第1モニタ素子21と、第2モニタ素子22とを有する。第1モニタ素子21及び第2モニタ素子22は、例えば、フォトダイオードあり、波長フィルタ20を介して入力される光の光量に応じた電流を不図示の制御部に出力する。
【0048】
波長フィルタ20は、分波器30と、第1導波路31と、第2導波路32と、90°ハイブリッド33とを有する。波長フィルタ20は、出力光が通過する2つのフィルタリング経路のそれぞれに対応する2つの出力ポートを有するフィルタである。
【0049】
分波器30は、例えば、3dBカプラであり、第2タップ12で分波された出力光を分波する分波器である。分波器30は、第1導波路31出力する光の光量と、第2導波路32出力する光の光量とが等しくなるように形成される。
【0050】
第1導波路31は、分波器30と90°ハイブリッド33との間に配置され、分波器30によって分波された一方の光が通過する。第2導波路32は、第1導波路31よりも長く、分波器30と90°ハイブリッド33との間に配置され、分波器30によって分波された他方の光が通過する。
【0051】
90°ハイブリッド33は、2×2MMIとも称される2入力2出力の多モード干渉(Multi Mode Interference、MMI)導波路を用いた光分岐器である。90°ハイブリッド33は、第1出力ポートO1及び第2出力ポートO2のそれぞれから出力される第1光P1及び第2光P2の光の光量の最大値が一致し且つ位相が90°シフトするように形成される。90°ハイブリッド33は、第1入力ポートI1に第1導波路31を介して入力される光と、第2入力ポートI2に第2導波路32を介して入力される光とを合波して、第1出力ポートO1及び第2出力ポートO2のそれぞれから出力する。2×2MMIの構成は良く知られているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0052】
波長フィルタ20は、遅延干渉計型のフィルタとして機能して、第1出力ポートO1及び第2出力ポートO2のそれぞれから出力される光の透過率は、波長に応じて変化する。
【0053】
図6は、波長フィルタ20の光透過特性の一例を示す図である。
図2において、横軸は波長フィルタ20に入力される光の波長を示し、縦軸は第1出力ポートO1及び第2出力ポートO2のそれぞれから出力される出力光の光透過率を示す。波形61は第1出力ポートO1から出力される第1光P1の光透過率を示し、波形62は第2出力ポートO2から出力される第2光P2の光透過率を示す。第1出力ポートO1及び第2出力ポートO2のそれぞれから出力される光の光透過率は、第1出力ポートO1及び第2出力ポートO2のそれぞれから出力される光の光量の第1出力ポートO1及び第2出力ポートO2から出力される光の合計の光量に対する比率である。
【0054】
図6において矢印Aで示される波長1548.914nmの近傍では、第1光P1に対応する波形61の傾きが最大になる一方、第2光P2に対応する波形62の傾きが最小になる。すなわち、波長1548.914nmの近傍では、第1光P1は、波長の変化に応じた光透過率の変化量が最大になる。
【0055】
図6において矢印Bで示される波長1549.311nmの近傍では、第1光P1に対応する波形61の傾きが最小になる一方、第2光P2に対応する波形62の傾きが最大になる。すなわち、波長1549.311nmの近傍では、第2光P2は、波長の変化に応じた光透過率の変化量が最大になる。
【0056】
波長の変化に応じた光透過率の変化量に基づいてリングフィルタ14に印加する温度を調整して出力光の波長を制御するとき、波長の変化に応じた光透過率の変化量が大きいほど、出力光の波長を精度良く制御することができる。
図6において矢印Aで示される波長1548.914nmの近傍では、制御部5は、波長の変化に応じた光透過率の変化量が最大になる第1光P1を受光する第1モニタ素子21から入力される電流に応じてリングフィルタ14に印加する温度を調整する。一方、矢印Bで示される波長1549.311nmの近傍では、不図示の制御部は、波長の変化に応じた光透過率の変化量が最大になる第2光P2を受光する第2モニタ素子22から入力される電流に応じてリングフィルタ14に印加する温度を調整する。波長の変化に応じた光透過率の変化量が最大になる光が入力されるモニタ素子から入力される電流を使用してリングフィルタ14に印加する温度を調整することで、出力光の波長を精度良く制御することができる。
【0057】
制御部5は、例えば、基板上に形成されたCMOSトランジスタで形成された論理回路及びフラッシュメモリ等で形成された記憶回路によって形成される。制御部5は、論理回路により形成される波長制御部501及び出力制御部502と、揮発性メモリ及び不揮発性メモリで形成される記憶部503とを有する。
【0058】
【0059】
波長制御部501は、情報取得部511と、使用特性決定部512と、制御状態決定部513と、波長推定部514と、制御方向決定部515と、波長制御信号出力部516とを有する。
【0060】
図8は、波長制御部501による波長制御処理のフローチャートである。
図8に示す波長制御処理は、波長制御部501を形成する論理回路によって実行される。
【0061】
まず、情報取得部511は、波長可変光源1の出力光の目標の波長を示す目標波長を取得する(S101)。目標波長は、記憶部503に記憶され、情報取得部511は、記憶部503に記憶された目標波長を取得する。
【0062】
情報取得部511は、出力光の光量に応じて出力モニタ素子15から供給される電流を示す出力検出信号を光学部101から取得する(S102)。次いで、情報取得部511は、第1光P1の光量に応じて第1モニタ素子21から供給される電流を示す第1波長検出信号を光学部101から取得する(S103)。次いで、情報取得部511は、第2光P2の光量に応じて第2モニタ素子22から供給される電流を示す第2波長検出信号を光学部101から取得する(S104)。
【0063】
次いで、使用特性決定部512は、第1波長検出信号及び第2波長検出信号の何れに対応する電流を波長制御処理に使用するかを決定する(S105)。使用特性決定部512は、記憶部503に記憶されるフィルタ特性テーブル532を参照して、S101の処理で取得された目標波長に応じて、第1波長検出信号及び第2波長検出信号の何れに対応する電流を波長制御処理に使用するかを決定する。フィルタ特性テーブル532は、例えば、
図6に示すように所定の温度における波長と波長モニタ16の光透過率との関係を記憶する。また、フィルタ特性テーブル532は、リングフィルタ14に印加する温度に応じた複数のテーブルを含んでもよい。例えば、目標波長が
図6において矢印Aで示される波長1548.914nmであるとき、使用特性決定部512は、第1モニタ素子21から入力される第1波長検出信号を波長制御処理に使用すると決定する。また、目標波長が
図6において矢印Bで示される波長1549.311nmであるとき、使用特性決定部512は、第2モニタ素子22から入力される第2波長検出信号に対応する電流を波長制御処理に使用すると決定する。
【0064】
使用特性決定部512によって第1波長検出信号に対応する電流を波長制御処理に使用すると決定される(S105-Y)と、処理はS106に進む。制御状態決定部513は、目標波長に対応する第1透過率、目標波長を含む所定の制御範囲の短波長端に対応する第2透過率、及び制御範囲の長波長端に対応する第3透過率に基づいて、波長フィルタ20の制御状態を決定する(S106)。具体的には、制御状態決定部513は、波長フィルタ20の制御状態が第1状態~第6状態の何れかであるかを決定する。
【0065】
図9は、第1状態~第6状態のそれぞれの一例を示す図である。
図9において、制御範囲は、双方向矢印「CaptureRange」で示される。
【0066】
第1状態S1では、目標波長Tは1553.32nmであり、目標波長Tに対応する第1透過率は0.17である。また、制御範囲の短波長端Sの波長は1552.92nmであり、制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率は0.11である。また、制御範囲の長波長端の波長Lは1553.72nmであり、制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率は0.20である。第1状態S1では、第2透過率が一番大きく、第3透過率が一番小さく、第1透過率が第2透過率と第3透過率との間の値になる。
【0067】
第2状態S2では、目標波長Tは1560.60nmであり、目標波長Tに対応する第1透過率は0.19である。また、制御範囲の短波長端Sの波長は1560.20nmであり、制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率は0.06である。また、制御範囲の長波長端の波長Lは1561.00nmであり、制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率は0.17である。第2状態S2では、第1透過率が一番大きく、第2透過率が一番小さく、第3透過率が第1透過率と第2透過率との間の値になる。
【0068】
第3状態S3では、目標波長Tは1561.42nmであり、目標波長Tに対応する第1透過率は0.09である。また、制御範囲の短波長端Sの波長は1561.02nmであり、制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率は0.17である。また、制御範囲の長波長端の波長Lは1561.82nmであり、制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率は0.28である。第3状態S3では、第3透過率が一番大きく、第1透過率が一番小さく、第2透過率が第1透過率と第3透過率との間の値になる。第3状態S3は、第2状態S2を上下及び左右に反転した状態である。
【0069】
第4状態S4では、目標波長Tは1561.82nmであり、目標波長Tに対応する第1透過率は0.28である。また、制御範囲の短波長端Sの波長は1561.42nmであり、制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率は0.09である。また、制御範囲の長波長端の波長Lは1562.22nmであり、制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率は0.02である。第3状態S3では、第1透過率が一番大きく、第3透過率が一番小さく、第2透過率が第1透過率と第3透過率との間の値になる。第4状態S4は、第3状態S3を上下に反転した状態である。
【0070】
第5状態S5では、目標波長Tは1560.20nmであり、目標波長Tに対応する第1透過率は0.07である。また、制御範囲の短波長端Sの波長は1559.80nmであり、制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率は0.29である。また、制御範囲の長波長端の波長Lは1560.60nmであり、制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率は0.19である。第2状態S2では、第2透過率が一番大きく、第1透過率が一番小さく、第3透過率が第1透過率と第2透過率との間の値になる。第5状態S5は、第2状態S2を上下に反転した状態である。
【0071】
第6状態S6では、目標波長Tは1561.00nmであり、目標波長Tに対応する第1透過率は0.17である。また、制御範囲の短波長端Sの波長は1560.60nmであり、制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率は0.19である。また、制御範囲の長波長端の波長Lは1561.40nmであり、制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率は0.09である。第6状態S6では、第3透過率が一番大きく、第2透過率が一番小さく、第1透過率が第2透過率と第3透過率との間の値になる。第6状態S6は、第1状態S1を上下に反転した状態である。
【0072】
図10は、S106に示す処理のより詳細なフローチャートである。
【0073】
まず、制御状態決定部513は、フィルタ特性テーブル532を参照して、目標波長Tに対応する第1透過率を取得する(S201)。次いで、制御状態決定部513は、フィルタ特性テーブル532を参照して、目標波長Tを含む所定の制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率を取得する(S202)。次いで、制御状態決定部513は、フィルタ特性テーブル532を参照して、目標波長Tを含む所定の制御範囲Sの長波長端に対応する第3透過率を取得する(S203)。制御範囲は、例えば、目標波長を中心とし、短波長側、及び長波長側に同一の幅を有する。
【0074】
次いで、制御状態決定部513は、第2透過率が第3透過率より小さいか否かを判定する(S204)。制御状態決定部513は、第2透過率が第3透過率より小さいと判定する(S204-Y)と、第1透過率が第3透過率より大きいか否かを判定する(S205)。制御状態決定部513は、第1透過率が第3透過率より大きいと判定する(S205-Y)と、第1透過率が第3透過率より小さいか否かを判定する(S206)。制御状態決定部513は、第1透過率が第3透過率より小さいと判定する(S206-Y)と、波長フィルタ20の制御状態を第1状態S1に決定する(S207)。一方、制御状態決定部513は、第1透過率が第3透過率より大きいと判定する(S206-N)と、波長フィルタ20の制御状態を第2状態S2に決定する(S208)。制御状態決定部513は、第1透過率が第3透過率より大きいと判定する(S205-N)と、波長フィルタ20の制御状態を第3状態S3に決定する(S209)。
【0075】
制御状態決定部513は、第2透過率が第3透過率より大きいと判定する(S204-N)と、第1透過率が第2透過率より大きいか否かを判定する(S210)。制御状態決定部513は、第1透過率が第2透過率より大きいと判定する(S210-Y)と、波長フィルタ20の制御状態を第4状態S4に決定する(S211)。制御状態決定部513は、第1透過率が第2透過率より小さいと判定する(S210-N)と、第1透過率が第3透過率より小さいか否かを判定する(S212)。制御状態決定部513は、第1透過率が第3透過率より小さいと判定する(S212-N)と、波長フィルタ20の制御状態を第5状態S5に決定する(S213)。制御状態決定部513は、第1透過率が第3透過率より大きいと判定する(S212-N)と、波長フィルタ20の制御状態を第6状態S6に決定する(S214)。
【0076】
波長推定部514は、波長フィルタ20の制御状態を決定する(S106)と、第1波長検出信号に対応する電流を使用して光学部101から出力される出力光の波長を推定する(S107)。波長推定部514は、S102の処理で取得された出力検出信号に対応する電流に対するS103の処理で取得された第1波長検出信号に対応する電流の比率に基づいて、光学部101から出力される出力光の波長を推定する。例えば、波長推定部514は、S101の処理で取得した電流に対するS102の処理で取得した電流の比率と、記憶部503に記憶される電流比と波長との関係を示すテーブルとの比較に基づいて、出力光の波長を推定する。
【0077】
次いで、制御方向決定部515は、フィルタ特性テーブル532を参照して、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御するか、又は波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御するかを決定する(S108)。
【0078】
図11はS108に示す処理のより詳細なフローチャート(その1)であり、
図12はS108に示す処理のより詳細なフローチャート(その2)である。
【0079】
まず、制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第1状態S1であるか否かを判定する(S301)。制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第1状態S1であると判定する(S301-Y)と、S107の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいか否かを判定する(S302)。制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S302-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S302-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。
【0080】
図9に示すように、第1状態S1では、目標波長Tに対応する第1透過率が第2透過率と第3透過率との間の値になるので、推定された出力光の波長に対応する出力透過率と目標波長Tに対応する第1透過率との比較により制御方向を決定することができる。すなわち、制御方向決定部515は、出力透過率とが第1透過率よりも小さいときに波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御し、出力透過率とが第1透過率よりも大きいときに波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御する。
【0081】
制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第1状態S1でないと判定する(S301-N)と、波長フィルタ20の制御状態が第2状態S2であるか否かを判定する(S305)。制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第2状態S2であると判定する(S305-Y)と、S107の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいか否かを判定する(S306)。制御方向決定部515は、推定された出力光の波長に対応する光透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S306-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S306-Y)と、出力透過率が制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率より大きいか否かを判定する(S307)。制御方向決定部515は、光透過率が第3透過率より小さいと判定する(S307-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S303)。
【0082】
一方、制御方向決定部515は、透過率が第3透過率より大きいと判定する(S307-Y)と、出力光の波長を若干長くするようにリングフィルタを制御する(S308)。次いで、制御方向決定部515は、S308の処理に応じて出力透過率が増加したか否かを判定する(S309)。制御方向決定部515は、308の処理に応じて出力透過率が増加したと判定する(S309-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。一方、制御方向決定部515は、308の処理に応じて出力透過率が減少したと判定する(S309-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。
【0083】
図9に示すように、第2状態S2では、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率よりも小さく且つ制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率よりも大きいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも小さい場合と出力透過率が大きい場合とがある。第2状態S2では、出力透過率が第1透過率よりも小さく且つ第3透過率よりも大きいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は増加する。一方、第2状態S2では、出力透過率が第1透過率よりも小さく且つ第3透過率よりも大きいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は減少する。
【0084】
第2状態S2では、制御方向決定部515は、出力透過率が第1透過率よりも小さく且つ第3透過率よりも大きいときに、出力光の波長を若干長くしたときの出力透過率の変化に基づいて、出力光の波長が目標波長Tよりも長いか否かを判定する。制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が増加したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する。一方、制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が減少したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する。
【0085】
制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第2状態S2でないと判定する(S305-N)と、波長フィルタ20の制御状態が第3状態S3であるか否かを判定する(S310)。制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第3状態S3であると判定する(S310-Y)と、S107の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいか否かを判定する(S311)。制御方向決定部515は、推定された出力光の波長に対応する光透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S311-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S311-Y)と、出力透過率が制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率より小さいか否かを判定する(S312)。制御方向決定部515は、光透過率が第2透過率より大きいと判定する(S312-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。
【0086】
一方、制御方向決定部515は、光透過率が第2透過率より小さいと判定する(S312-Y)と、出力光の波長を若干長くするようにリングフィルタを制御する(S313)。次いで、制御方向決定部515は、S313の処理に応じて出力透過率が増加したか否かを判定する(S314)。制御方向決定部515は、313の処理に応じて出力透過率が増加したと判定する(S314-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。一方、制御方向決定部515は、308の処理に応じて出力透過率が減少したと判定する(S314-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。
【0087】
図9に示すように、第3状態S3では、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率よりも大きく且つ制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率よりも小さいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも小さい場合と出力透過率が大きい場合とがある。第3状態S3では、出力透過率が第1透過率よりも大きく且つ第2透過率よりも小さいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は減少する。一方、第2状態S2では、出力透過率が第1透過率よりも大きく且つ第2透過率よりも小さいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は増加する。
【0088】
第3状態S3では、制御方向決定部515は、出力透過率が第1透過率よりも大きく且つ第2透過率よりも小さいときに、出力光の波長を若干長くしたときの出力透過率の変化に基づいて、出力光の波長が目標波長Tよりも長いか否かを判定する。制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が増加したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する。一方、制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が減少したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する。
【0089】
制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第3状態S3でないと判定する(S310-N)と、波長フィルタ20の制御状態が第4状態S4であるか否かを判定する(S315)。制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第4状態S4であると判定する(S315-Y)と、S107の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいか否かを判定する(S316)。制御方向決定部515は、推定された出力光の波長に対応する光透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S316-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S316-Y)と、出力透過率が制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率より大きいか否かを判定する(S317)。制御方向決定部515は、光透過率が第2透過率より小さいと判定する(S317-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。
【0090】
一方、制御方向決定部515は、光透過率が第2透過率より大きいと判定する(S317-Y)と、出力光の波長を若干長くするようにリングフィルタを制御する(S318)。次いで、制御方向決定部515は、S318の処理に応じて出力透過率が増加したか否かを判定する(S319)。制御方向決定部515は、313の処理に応じて出力透過率が増加したと判定する(S319-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。一方、制御方向決定部515は、308の処理に応じて出力透過率が減少したと判定する(S319-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。
【0091】
図9に示すように、第4状態S4では、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率よりも小さく且つ制御範囲の短波長端Sに対応する第2透過率よりも大きいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも小さい場合と出力透過率が大きい場合とがある。第4状態S4では、出力透過率が第1透過率よりも小さく且つ第2透過率よりも大きいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は増加する。一方、第2状態S2では、出力透過率が第1透過率よりも大きく且つ第2透過率よりも小さいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は減少する。
【0092】
第4状態S4では、制御方向決定部515は、出力透過率が第1透過率よりも小さく且つ第2透過率よりも大きいときに、出力光の波長を若干長くしたときの出力透過率の変化に基づいて、出力光の波長が目標波長Tよりも長いか否かを判定する。制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が減少したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する。一方、制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が増加したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する。
【0093】
制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第4状態S4でないと判定する(S315-N)と、波長フィルタ20の制御状態が第5状態S5であるか否かを判定する(S320)。制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第5状態S5であると判定する(S320-Y)と、S107の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいか否かを判定する(S321)。制御方向決定部515は、推定された出力光の波長に対応する光透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S321-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S321-Y)と、出力透過率が制御範囲の超波長端Lに対応する第3透過率より小さいか否かを判定する(S322)。制御方向決定部515は、光透過率が第3透過率より大きいと判定する(S322-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。
【0094】
一方、制御方向決定部515は、光透過率が第3透過率より小さいと判定する(S322-Y)と、出力光の波長を若干長くするようにリングフィルタを制御する(S323)。次いで、制御方向決定部515は、S323の処理に応じて出力透過率が増加したか否かを判定する(S324)。制御方向決定部515は、313の処理に応じて出力透過率が増加したと判定する(S324-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。一方、制御方向決定部515は、308の処理に応じて出力透過率が減少したと判定する(S324-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。
【0095】
図9に示すように、第5状態S5は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率よりも大きく且つ制御範囲の長波長端Lに対応する第3透過率よりも小さいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも小さい場合と出力透過率が大きい場合とがある。第5状態S5では、出力透過率が第1透過率よりも大きく且つ第3透過率よりも小さいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は減少する。一方、第2状態S2では、出力透過率が第1透過率よりも大きく且つ第3透過率よりも小さいときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長い場合、出力光の波長の増加に従って出力透過率は増加する。
【0096】
第5状態S5では、制御方向決定部515は、出力透過率が第1透過率よりも大きく且つ第3透過率よりも小さいときに、出力光の波長を若干長くしたときの出力透過率の変化に基づいて、出力光の波長が目標波長Tよりも長いか否かを判定する。制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が増加したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも長いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する。一方、制御方向決定部515は、出力光の波長を若干長くしたことに応じて出力透過率が減少したときに、出力光の波長が目標波長Tよりも短いと判定して、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する。
【0097】
制御方向決定部515は、波長フィルタ20の制御状態が第5状態S5でないと判定する(S301-N)と、S107の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいか否かを判定する(S325)。制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S325-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S304)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S325-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S303)。
【0098】
図9に示すように、第6状態S6では、目標波長Tに対応する第1透過率が第2透過率と第3透過率との間の値になるので、推定された出力光の波長に対応する出力透過率と目標波長Tに対応する第1透過率との比較により制御方向を決定することができる。すなわち、制御方向決定部515は、出力透過率とが第1透過率よりも小さいときに波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御し、出力透過率とが第1透過率よりも大きいときに波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御する。
【0099】
波長制御信号出力部516は、S108の処理により波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御すると決定される(S109-Y)と、出力光の波長を短くすることを示す波長制御信号を光学部101に出力する(S110)。光学部101の不図示のヒータは、波長制御信号が入力されることに応じて、出力光の波長を短くするようにリングフィルタ14の温度を調整する。
【0100】
波長制御信号出力部516は、S108の処理により波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御すると決定される(S109-Y)と、出力光の波長を短くすることを示す波長制御信号を光学部101に出力する(S111)。光学部101の不図示のヒータは、波長制御信号が入力されることに応じて、出力光の波長を長くするようにリングフィルタ14の温度を調整する。
【0101】
使用特性決定部512は、第2波長検出信号に対応する電流を波長制御処理に使用すると決定する(S105-N)と、処理はS112に進む。S112~S117の処理は、第2波長検出信号に対応する電流を波長制御処理に使用すること以外はS106~S111の処理の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0102】
波長制御部501は、出力光の波長が目標波長よりも短いと判定する(S110-N)と、出力光の波長を長くすることを示す波長制御信号を光学部101に出力する(S112)。光学部101の不図示のヒータは、波長制御信号が入力されることに応じて、出力光の波長を長くするようにリングフィルタ14の温度を調整する。
【0103】
出力制御部502は、出力光の光量に応じて出力モニタ素子15から供給される電流を示す出力検出信号を光学部101から取得し、取得した出力検出信号に対応する電流に基づいて、出力光の光量を制御する。例えば、出力制御部502は、出力検出信号に対応する電流と、記憶部503に記憶される電流と光量との関係を示すテーブルに基づいて出力光の光量を決定し、出力検出信号に対応する光量と記憶部503に記憶される目標光量とを比較する。
【0104】
出力制御部502は、出力検出信号に対応する光量が目標光量より大きいときに、出力光の光量を小さくすることを示す第1出力制御信号及び第2出力制御信号を光学部101に出力する。また、出力制御部502は、出力検出信号に対応する光量が目標光量より小さいときに、出力光の光量を大きくすることを示す第1出力制御信号及び第2出力制御信号を光学部101に出力する。
【0105】
第1出力制御信号は、例えば、光学部101の光源10に供給される電流であり、第2出力制御信号は、例えば、光学部101の不図示の増幅器に供給される電流である。出力制御部502は、第1出力制御信号及び第2出力制御信号を交互に出力して出力光の光量を制御してもよく、第1出力制御信号及び第2出力制御信号のそれぞれに対応する電流を所定の割合で変化させることで出力光の光量を制御してもよい。
【0106】
(第1実施形態に係る波長可変光源の作用効果)
第1実施形態に係る波長可変光源は、出力透過率及び第1透過率~第3透過率の大きさに基づいて生成した制御信号によって出力光の波長を制御するので、基板に配置された波長フィルタの光透過特性を制御することなく、出力光の波長を制御できる。
【0107】
具体的には、第1実施形態に係る波長可変光源は、第1透過率~第3透過率の大きさに基づいて決定された波長フィルタの制御状態と、出力透過率及び第1透過率~第3透過率の大きさに基づいて制御信号を生成する。第1実施形態に係る波長可変光源は、目標波長に対応する第1透過率、並びに所定の制御範囲の両端に対応する第2透過率及び第3透過率から波長フィルタの制御状態を決定するので、波長モニタのFSRが変化しても所望の制御を実現できる。
【0108】
第1実施形態に係る波長可変光源は、第1透過率が第2透過率と第3透過率との間の値ではないときに、出力光の波長を変化させたときの出力透過率の変化に基づいて出力光の波長を制御することで波長モニタのFSRの影響を受けない制御を実現している。
【0109】
(第2実施形態に係る波長可変光源の構成及び機能)
図13(a)は第2実施形態に係る波長可変光源のブロック図であり、
図13(b)は
図13(a)に示す波長制御部の機能ブロック図である。
【0110】
波長可変光源2は、制御部6を制御部5の代わりに有することが波長可変光源1と相違する。制御部6は、波長制御部601を波長制御部501の代わりに有することが制御部5と相違する。波長制御部601以外の波長制御部601の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された波長制御部601の構成要素の構成及び機能と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0111】
波長制御部601は、制御範囲決定部613及び制御方向決定部615を制御状態決定部513及び制御方向決定部515の代わりに有することが波長制御部501と相違する。
【0112】
図14は、波長制御部601による波長制御処理のフローチャートである。
図14に示す波長制御処理は、波長制御部601を形成する論理回路によって実行される。
【0113】
S401~S405の処理は、S101~S105の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。制御範囲決定部613は、波長可変光源2の出力光の波長を制御する制御範囲を第1透過率、第2透過率及び第3透過率が同一値になるように決定する(S406)。
【0114】
図15は、S406に示す処理のより詳細なフローチャートである。
【0115】
まず、制御範囲決定部613は、フィルタ特性テーブル532を参照して、目標波長Tに対応する第1透過率を取得する(S501)。次いで、制御範囲決定部613は、フィルタ特性テーブル532を参照して、第1透過率と同一の値を有する短波長側に隣接する透過率に対応する波長を短波長端Sに決定する(S502)。次いで、制御範囲決定部613は、フィルタ特性テーブル532を参照して、第1透過率と同一の値を有する長波長側に隣接する光透過率に対応する波長を長波長端Lに決定する(S503)。そして、制御範囲決定部613は、S501~S503の処理で範囲が決定された制御範囲において、波長フィルタ20の制御状態が第1状態又は第1状態と異なる第2状態の何れかであるかを決定する(S504)。
【0116】
図16(a)は波長フィルタ20の制御状態が第1状態である制御範囲の一例を示す図であり、
図16(b)は波長フィルタ20の制御状態が第2状態である制御範囲の一例を示す図である。
図16(a)及び16(b)において、制御範囲は、双方向矢印「CaptureRange」で示される。
【0117】
図16(a)に示す第1状態では、目標波長Tの近傍において、波長フィルタ20の透過率は、波長可変光源2の出力光の波長の増加に従って、単調増加する。第1状態では、制御範囲において、出力光の波長が目標波長Tよりも大きいときに、出力透過率は、目標波長Tに対応する第1透過率よりも大きくなる。また、第1状態では、制御範囲において、出力光の波長が目標波長Tよりも小さいときに、出力透過率は、目標波長Tに対応する第1透過率よりも小さくなる。
【0118】
一方、
図16(b)に示す第2状態では、目標波長Tの近傍において、波長フィルタ20の光透過率は、波長可変光源2の出力光の波長の増加に従って、単調減少する。第2状態では、制御範囲において、出力光の波長が目標波長Tよりも大きいときに、出力透過率は、目標波長Tに対応する第1透過率よりも小さくなる。また、第2状態では、制御範囲において、出力光の波長が目標波長Tよりも小さいときに、出力透過率は、目標波長Tに対応する第1透過率よりも大きくなる。
【0119】
制御範囲決定部613は、フィルタ特性テーブル532を参照して、目標波長Tの近傍において出力光の波長の増加に従って波長フィルタ20の光透過率が単調増加するか否かに基づいて、制御範囲が第1状態又は第2状態の何れかであるかを決定する。
【0120】
制御範囲決定部613によって波長可変光源2の出力光の波長を制御する制御範囲が決定される(S406)と、波長推定部514は、第1波長検出信号に対応する電流を使用して光学部101から出力される出力光の波長を推定する(S407)。
【0121】
次いで、制御方向決定部615は、出力透過率と第1透過率との大きさに基づいて、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御するか、又は波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御するかを決定する(S408)。
【0122】
図17は、S408に示す処理のより詳細なフローチャートである。
【0123】
まず、制御方向決定部615は、波長フィルタ20の制御状態が第1状態であるか又は第2状態であるかを判定する(S601)。
【0124】
制御方向決定部615は、波長フィルタ20の制御状態が第1状態であると判定する(S601-Y)と、S407の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいか否かを判定する(S602)。制御方向決定部615は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S602-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S603)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S602-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S604)。
【0125】
制御方向決定部615は、波長フィルタ20の制御状態が第2状態であると判定する(S601-N)と、S407の処理で推定された出力光の波長に対応する出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいか否かを判定する(S605)。制御方向決定部615は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より大きいと判定する(S602-Y)と、波長可変光源1の出力光の波長を長くする方向に制御することを決定する(S604)。一方、制御方向決定部515は、出力透過率が目標波長Tに対応する第1透過率より小さいと判定する(S602-N)と、波長可変光源1の出力光の波長を短くする方向に制御することを決定する(S603)。
【0126】
使用特性決定部512は、第2波長検出信号に対応する電流を波長制御処理に使用すると決定する(S405-N)と、処理はS412に進む。S412~S417の処理は、第2波長検出信号に対応する電流を波長制御処理に使用すること以外はS406~S411の処理の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0127】
(第2実施形態に係る波長可変光源の作用効果)
第2実施形態に係る波長可変光源は、出力光の波長の制御範囲を第1透過率~第3透過率が同一値になるように決定することで、基板に配置された波長フィルタの光透過特性を制御することなく、出力光の波長を制御できる。
【0128】
(実施形態に係る波長可変光源の適用例)
図18は、実施形態に係る波長可変光源を有する光モジュールを示す図である。
【0129】
光モジュール7は、デジタル信号処理装置(digital signal processor、DSP)70と、送信器71と、受信器72とを有する。送信器71は、波長可変光源1と、変調ドライバ73と、光変調器74とを有する。
【0130】
DSP71は、電気入力信号が入力され、電気入力信号に対応するデータに所定の処理を実行して、所定の処理を実行したデータを示す電気信号を変調ドライバ73に出力する。また、DSP71は、送信器71から電気信号が入力され、入力された電気信号に対応するデータに所定の処理を実行して、所定の処理を実行したデータを示す電気出力信号を出力する。
【0131】
変調ドライバ73は、DSP71から入力された電気信号を光変調器74に出力する。光変調器74は、変調ドライバ73を介して入力された電気信号に基づいて、波長可変光源1から出力された出力光を変調した変調光を光出力信号として出力する。光変調器74は、例えば、出力光を偏波多重4値位相変調(dual polarization-quadrature phase shift keying、DP-QPSK)して変調光を生成する。
【符号の説明】
【0132】
1、2 波長可変光源
101 光学部
5、6 制御部
501 波長制御部
511 情報取得部
512 使用特性決定部
513 制御状態決定部
514 波長推定部
515 制御方向決定部
516 波長制御信号出力部