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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】角度演算装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20230214BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20230214BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20230214BHJP
【FI】
G01D5/244 E
B62D6/00
H02P29/028
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018098088
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203749
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小池 進
(72)【発明者】
【氏名】足立 丈英
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-55678(JP,A)
【文献】特開2017-124710(JP,A)
【文献】特開2008-168694(JP,A)
【文献】特開2017-191092(JP,A)
【文献】特開2017-122689(JP,A)
【文献】特開2011-57024(JP,A)
【文献】特開2014-218129(JP,A)
【文献】特開2015-179070(JP,A)
【文献】特開2016-191702(JP,A)
【文献】特開2008-180698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01B 7/00-7/34
B62D 5/00-6/10
B62D 113/00
H02P 29/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出部からの検出信号に基づいてモータの回転角度を演算する第1の演算部と、前記検出部からの前記検出信号に基づいて前記回転角度を演算するために用いる情報であって前記モータの多回転数を示す情報である回転数情報を演算する第2の演算部とを備え、
前記第1の演算部は、車両の始動スイッチがオンされて電力が供給されることにより動作可能とし、当該供給される電力の電源電圧が前記第1の演算部が動作可能な電圧値に達している場合に前記回転角度を演算し、
前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオンオフされることに関係なく電力が供給されることにより動作可能とし、当該動作中に前記回転数情報を演算し、
前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオンされている期間に前記第1の演算部に供給される電力の電源電圧が前記第1の演算部が動作可能な電圧値に瞬間的に達していない瞬断、瞬低が生じている場合であっても動作可能とし、当該動作中に前記回転数情報を演算し、
前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオンされている期間に前記瞬断、瞬低が生じている場合、間欠的に前記回転数情報を演算し、
前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオンされている期間に前記瞬断、瞬低が生じている場合、前記瞬断、瞬低が生じていない場合よりも長い周期で間欠的に前記回転数情報を演算する角度演算装置。
【請求項2】
前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオフされている期間において、間欠的に前記回転数情報を演算するものであり、
前記モータの回転が検出されたときには前記モータの回転が検出されないときよりも短い周期で間欠的に前記回転数情報を演算する請求項1に記載の角度演算装置。
【請求項3】
前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオフされている期間において、前記検出部により検出された今回の検出信号の値と前記検出部により検出された前回の検出信号の値との偏差が閾値以上である場合、前記モータの回転を検出する請求項に記載の角度演算装置。
【請求項4】
前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオフされている期間において、間欠的に前記回転数情報を演算するものであり、
前記始動スイッチがオンされている期間において、前記始動スイッチがオフされている期間よりも短い周期で間欠的に前記回転数情報を演算する請求項1~のいずれか一項に記載の角度演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の角度演算装置は、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という。)を備え、マイコンは、主演算手段及び副演算手段として機能する。角度演算装置は、バッテリから電力が供給されることにより動作する。角度演算装置は、イグニッションスイッチがオンされた場合には、主演算手段によりモータの制御を実行し、イグニッションスイッチがオフされた場合には、主演算手段によるモータの制御を停止している。イグニッションスイッチがオンされた場合、主演算手段は、レゾルバにより検出されるモータ回転角度信号に基づいてモータの回転角度を演算するとともに、演算した回転角度に基づいてモータの制御を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5389101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイコンにおいては、供給される電力の電源電圧が瞬断することや瞬低することがある。この点、特許文献1の角度演算装置では、マイコンにおいて電源電圧が瞬断、瞬低したときの対策については何ら開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する角度演算装置は、検出部からの検出信号に基づいてモータの回転角度を演算する第1の演算部と、前記検出部からの前記検出信号に基づいて前記回転角度を演算するために用いる情報であって前記モータの多回転数を示す情報である回転数情報を演算する第2の演算部とを備え、前記第1の演算部は、車両の始動スイッチがオンされて電力が供給されることにより動作可能とし、当該供給される電力の電源電圧が前記第1の演算部が動作可能な電圧値に達している場合に前記回転角度を演算し、前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオンオフされることに関係なく電力が供給されることにより動作可能とし、前記始動スイッチがオンされている期間に前記第1の演算部に供給される電力の電源電圧が前記第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない場合、前記回転数情報を演算する。
【0006】
第1の演算部において瞬断、瞬低が生じることにより、第1の演算部に供給される電力の電源電圧が低下して第1の演算部が動作できなくなることがある。上記構成によれば、始動スイッチがオンされている期間に第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない場合において、第2の演算部が動作可能であれば動作する。この場合において、第1の演算部はモータの回転角度を演算できないものの、第2の演算部は回転数情報を演算できている。そして、第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達するまで回復した場合には、第1の演算部は、第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない期間に第2の演算部が演算した回転数情報を用いて回転角度を速やかに演算することができる。これにより、角度演算装置は、始動スイッチがオンされている期間に第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達していないとしても、モータの回転角度の喪失を抑制することができる。
【0007】
上記の角度演算装置において、前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオンされている期間に前記第1の演算部に供給される電力の電源電圧が前記第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない場合、間欠的に前記回転数情報を演算することが好ましい。
【0008】
第1の演算部に供給される電力の電源電圧が動作可能な電圧値に達していない場合においては、第2の演算部で回転数情報の演算を間欠的に実行していることから、第2の演算部で回転数情報の演算を常時実行する場合と比べると、角度演算装置の消費電力を低減することが可能となる。
【0009】
上記の角度演算装置において、前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオンされている期間に前記第1の演算部に供給される電力の電源電圧が前記第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない場合、前記第1の演算部に供給される電力の電源電圧が前記第1の演算部が動作可能な電圧値に達している場合よりも長い周期で間欠的に前記回転数情報を演算することが好ましい。
【0010】
第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない場合、第1の演算部に供給される電力の電源電圧の前記第1の演算部が動作可能な電圧値に達している場合よりも、角度演算装置の消費電力を低減することが求められる状況である。そこで、上記構成によれば、第2の演算部は、始動スイッチがオンされている期間に第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない場合には、第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達している場合よりも、第2の演算部が回転数情報を演算する頻度を少なくすることができる。これにより、始動スイッチがオンされている期間において、第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達していない場合、第2の演算部による消費電力を低減することが可能となる。
【0011】
上記の角度演算装置において、前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオフされている期間において、間欠的に前記回転数情報を演算するものであり、前記モータの回転が検出されたときには前記モータの回転が検出されないときよりも短い周期で間欠的に前記回転数情報を演算することが好ましい。
【0012】
始動スイッチがオフされている間は、角度演算装置の消費電力の低減とモータの回転角度の喪失の抑制とを両立させる必要がある。そこで、上記構成によれば、第2の演算部は、モータの回転が検出される状況では、モータの回転が検出されないときよりも短い周期で回転数情報を間欠的に演算することにより、モータの回転角度の演算精度を向上させることができる。これにより、始動スイッチがオフされている期間において、角度演算装置の消費電力の低減と、モータの回転角度の喪失の抑制とを両立させることができる。
【0013】
上記の角度演算装置において、前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオフされている期間において、前記検出部により検出された今回の検出信号の値と前記検出部により検出された前回の検出信号の値との偏差が閾値以上である場合、前記モータの回転を検出することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、第2の演算部は、検出信号の値の変化を判定することで、モータの回転を検出することができる。検出信号の値の偏差が閾値以上であることに基づいてモータの回転を検出することから、実際にはモータが回転していないものの、微小な振動(ノイズ)によってモータが回転したものと判定されることが抑えられる。
【0015】
上記の角度演算装置において、前記第2の演算部は、前記始動スイッチがオフされている期間において、間欠的に前記回転数情報を演算するものであり、前記始動スイッチがオンされている期間において、前記始動スイッチがオフされている期間よりも短い周期で間欠的に前記回転数情報を演算することが好ましい。
【0016】
始動スイッチがオンされている期間は、始動スイッチがオフされている期間よりも、モータの回転が検出されるような、モータの回転数情報が変化する可能性の高い期間である。そこで、上記構成によれば、始動スイッチがオンされている期間には、始動スイッチがオフされている期間よりも、第2の演算部が回転数情報を演算する頻度を多くしている。このことから、始動スイッチがオンされている期間において、モータの回転角度の演算精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の角度演算装置によれば、始動スイッチがオンされている期間に第1の演算部に供給される電力の電源電圧が第1の演算部が動作可能な電圧値に達していないとしても、モータの回転角度の喪失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ステアリング装置の概略構成を示すブロック図。
図2】角度演算装置の電気的構成を示すブロック図。
図3】象限判定部における象限区分の具体例を示すグラフ。
図4】角度演算装置の動作状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)に搭載された角度演算装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、EPSは、運転者によるステアリングホイール10の操作に基づいて転舵輪15,15を転舵させる操舵機構1と、操舵機構1にステアリング操作を補助するための補助力を発生させるモータ20を有するアクチュエータ3と、モータ20の回転角度θを検出するとともにモータ20を制御する角度演算装置30とを備えている。
【0020】
操舵機構1は、ステアリングホイール10が連結されているステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転に応じて軸方向に往復移動する転舵軸としてのラックシャフト12とを有している。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10と連結されたコラムシャフト11aと、コラムシャフト11aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト11bと、インターミディエイトシャフト11bの下端部に連結されたピニオンシャフト11cとを有している。ラックシャフト12とピニオンシャフト11cとは、所定の交差角をもって配置されており、ラックシャフト12に形成されたラック歯とピニオンシャフト11cに形成されたピニオン歯とが噛合されることでラックアンドピニオン機構13が構成されている。また、ラックシャフト12の両端には、タイロッド14,14が連結されており、タイロッド14,14の先端は、転舵輪15,15が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、EPSでは、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転運動は、ラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12の軸方向の往復直線運動に変換される。この軸方向の往復直線運動がタイロッド14,14を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪15,15の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0021】
アクチュエータ3は、モータ20及び減速機構21を備えている。モータ20の回転軸20aは、減速機構21を介してコラムシャフト11aに連結されている。モータ20の回転軸20aは、多回転することができる。減速機構21は、モータ20の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト11aに伝達する。すなわち、ステアリングシャフト11にモータ20のトルクが補助力(アシスト力)として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
【0022】
角度演算装置30は、車両に設けられた各種のセンサの検出結果に基づいて、モータ20を制御する。各種のセンサとしては、例えばトルクセンサ40及び回転角度センサ41が設けられている。トルクセンサ40は、コラムシャフト11aに設けられている。トルクセンサ40は、運転者のステアリング操作に伴いステアリングシャフト11に付与される操舵トルクThを検出する。回転角度センサ41は、モータ20に設けられている。回転角度センサ41は、モータ20の回転軸20aの実際の回転角度θを演算するための検出信号を生成して電圧値として出力する。角度演算装置30は、回転角度センサ41により生成される検出信号に基づいて、モータ20の実際の回転角度θを演算する。回転角度センサ41には、モータ20の回転軸20aの回転に応じて変化する磁気を検出することによって検出信号を生成する磁気センサが採用される。磁気センサとしては、例えばMRセンサ(磁気抵抗効果センサ)が採用されている。回転角度センサ41は、2つの磁気センサ素子からなるブリッジ回路を有しており、これらの磁気センサ素子によりそれぞれ電気信号(電圧)を生成している。一方の磁気センサ素子により生成される電気信号の位相は、他方の磁気センサ素子により生成される電気信号の位相から90度ずれている。そこで、本実施形態では、一方の磁気センサ素子により生成される電気信号を正弦波信号Ssinとみなし、他方の磁気センサ素子により生成される電気信号を余弦波信号Scosとみなす。これらの正弦波信号Ssin及び余弦波信号Scosは、回転角度センサ41の検出信号である。角度演算装置30は、回転角度センサ41により検出された検出信号(正弦波信号Ssin及び余弦波信号Scos)に基づいて、モータ20の回転角度θを演算する。そして、角度演算装置30は、各センサの出力値に基づいて、操舵機構1に付与する目標のトルクを設定し、実際のモータ20のトルクが目標のトルクとなるように、モータ20に供給される電力を制御する。
【0023】
角度演算装置30の構成について説明する。
図2に示すように、角度演算装置30は、マイコン31と、回転監視部32とを備えている。なお、マイコン31は、第1の演算部の一例であり、回転監視部32は、第2の演算部の一例である。また、回転角度センサ41は、検出部の一例である。
【0024】
マイコン31は、イグニッションスイッチ51がオンされている場合、モータ20の回転角度θを演算するとともに、モータ20に供給される電力を制御する。マイコン31は、所定の演算周期でモータ20の回転角度θを演算する。マイコン31の演算周期は、モータ20の回転軸20aが回転したことを迅速に検出できるような短い周期に設定されている。モータ20に供給される電力の電力源はバッテリ50である。マイコン31は、例えばマイクロプロセッシングユニット等からなる。マイコン31には、回転監視部32が接続されている。回転監視部32は、電子回路やフリップフロップ等を組み合わせた論理回路をパッケージ化して構成したものである。回転監視部32は、いわゆるASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)である。マイコン31は、その記憶部に記憶されているプログラムを読み出して、当該プログラムに応じた演算を実行する。回転監視部32は、特定の入力(ここでは、回転角度センサ41の検出信号)に対して定められた演算を実行する。
【0025】
回転監視部32には、バッテリ50から供給される電力の電圧を降圧して定電圧を供給する電源回路100が設けられている。バッテリ50と電源回路100との間の第1給電線F1には、バッテリ50から供給される電力の通電及び遮断を切り替える始動スイッチとしてのイグニッションスイッチ51が設けられている。運転者が車両に設けられたスイッチを操作することにより、イグニッションスイッチ51のオンオフが切り替えられる。イグニッションスイッチ51がオンされている場合、バッテリ50と電源回路100との間でイグニッションスイッチ51を通じて電力が通電される。イグニッションスイッチ51がオフされている場合、バッテリ50と電源回路100との間でイグニッションスイッチ51を通じて電力が遮断される。
【0026】
バッテリ50と電源回路100との間でイグニッションスイッチ51を通じて電力が通電される場合、マイコン31には電力が供給される。すなわち、イグニッションスイッチ51がオンされている場合、マイコン31には第1給電線F1を介して電力が供給され、マイコン31は動作する。一方、バッテリ50と電源回路100との間でイグニッションスイッチ51を通じて電力が遮断される場合、マイコン31には電力が供給されない。すなわち、イグニッションスイッチ51がオフされている場合、マイコン31には電力が供給されず、マイコン31は動作を停止する。
【0027】
電源回路100には、第2給電線F2を介してバッテリ50が接続されている。すなわち、回転監視部32には、イグニッションスイッチ51のオン及びオフに関係なく、バッテリ50から電力が常時供給されている。回転監視部32には、回転角度センサ41が接続されている。また、マイコン31にも、回転角度センサ41が接続されている。
【0028】
バッテリ50と電源回路100との間の各給電経路(第1給電線F1及び第2給電線F2)には第1コンデンサ52及び第2コンデンサ53がそれぞれ設けられている。第1コンデンサ52は、第1給電線F1において、イグニッションスイッチ51よりもバッテリ50側に設けられている。第2コンデンサ53は、第2給電線F2に設けられている。第1コンデンサ52及び第2コンデンサ53は、接地されている。第1コンデンサ52は、第1給電線F1に供給される電力の電圧を平滑にする。第2コンデンサ53は、第2給電線F2に供給される電力の電圧を平滑にする。第1給電線F1及び第2給電線F2の少なくとも一方に供給される電力が途絶えるときには、例えばマイコン31において瞬断、瞬低が生じている。瞬断とは、マイコン31に供給される電力が瞬断的に断たれることである。瞬低とは、マイコン31に供給される電力が瞬間的に所定値(例えばマイコン31が動作可能な電圧値)未満になることである。これらの瞬断及び瞬低が生じたときには、いずれの場合もマイコン31に供給される電力がマイコン31が動作可能な電圧値未満になる。これらの瞬断及び瞬低は、例えばバッテリ50と角度演算装置30とを接続するためのコネクタが振動によって外れかけている場合や、バッテリ50のプラス側の電圧が一時的に低下した場合等に生じる。コネクタが振動によって外れかけている場合には、第1給電線F1側のコネクタが外れかけている場合もあれば、第2給電線F2側のコネクタが外れかけている場合も、両方のコネクタが外れかけている場合もある。これらの瞬断及び瞬低は、例えば数十ミリ秒~数百ミリ秒程度の時間にわたって発生する。
【0029】
回転監視部32は、カウンタ回路101及び通信インターフェース102を備えている。カウンタ回路101には、イグニッションスイッチ51のオン及びオフに関係なく、バッテリ50から電力が供給される。通信インターフェース102には、イグニッションスイッチ51がオンされている場合、バッテリ50から電力が供給される。
【0030】
カウンタ回路101は、回転角度センサ41により生成される検出信号(正弦波信号Ssin及び余弦波信号Scos)を電圧値として取得する。カウンタ回路101は、検出信号に基づいて、モータ20の回転角度θを演算するために用いるカウント値Cを演算する。カウント値Cは、モータ20の多回転数を示す回転数情報である。本実施形態では、カウント値Cは、モータ20の回転軸20aの回転位置がその基準位置(中立位置)に対して何回転しているかを示す情報である。
【0031】
カウンタ回路101は、増幅器103、コンパレータ104と、象限判定部105と、カウンタ106とを備えている。
増幅器103は、回転角度センサ41により生成される電圧値(正弦波信号Ssin及び余弦波信号Scos)を取得する。増幅器103は、回転角度センサ41から取得した電圧値を増幅し、コンパレータ104に出力する。
【0032】
コンパレータ104は、回転角度センサ41により生成される電圧値(増幅器103で増幅された電圧値)が、設定された閾値よりも高い値であればHiレベル、低い値であればLoレベルの信号を生成する。この閾値は、例えば「0」に設定される。すなわち、コンパレータ104は、電圧値(増幅器103で増幅された電圧値)が正である場合にはHiレベル、負である場合にはLoレベルの信号を生成する。
【0033】
象限判定部105は、コンパレータ104により生成されるHiレベルの信号とLoレベルの信号との組み合わせから、モータ20の回転軸20aの回転位置が考えられる4つの象限のうちのどの象限に位置しているかを判定する。モータ20の回転軸20aの基準位置は、例えばステアリングホイール10が中立位置にあるときのモータ20の回転軸20aの回転位置であり、このときの回転角度θは例えば「0」度である。
【0034】
図3に示すように、Hiレベルの信号とLoレベルの信号との組み合わせ、すなわち検出信号の正負の組み合わせから、モータ20の回転軸20aの1回転を、90度ごとに4つの象限に分割している。4つの象限は、具体的にはつぎの通りである。
【0035】
第1象限は、正弦波信号Ssin及び余弦波信号Scosの双方がHiレベルであるときの象限である。モータ20の回転軸20aの回転位置が第1象限内にある場合、モータ20の回転角度θは0~90度の範囲にある。
【0036】
第2象限は、正弦波信号SsinがHiレベルかつ余弦波信号ScosがLoレベルであるときの象限である。モータ20の回転軸20aの回転位置が第2象限内にある場合、モータ20の回転角度θは90~180度の範囲にある。
【0037】
第3象限は、正弦波信号Ssin及び余弦波信号Scosの双方がLoレベルであるときの象限である。モータ20の回転軸20aの回転位置が第3象限内にある場合、モータ20の回転角度θは180~270度の範囲にある。
【0038】
第4象限は、正弦波信号SsinがLoレベルかつ余弦波信号ScosがHiレベルであるときの象限である。モータ20の回転軸20aの回転位置が第4象限内にある場合、モータ20の回転角度θは270~360度の範囲にある。
【0039】
図2に示すように、象限判定部105は、コンパレータ104により生成されるHiレベルの信号とLoレベルの信号とに基づいて、左回転フラグFlあるいは右回転フラグFrを生成する。象限判定部105は、モータ20の回転軸20aの回転位置が存在する象限が隣接する象限に変化するたびに、単位回転量(90度)の回転がなされたものとする。また、モータ20の回転軸20aの回転位置がモータ20の回転の前に存在していた象限とモータ20の回転の後に存在している象限との関係から、モータ20の回転軸20aの回転方向を特定する。象限判定部105は、モータ20の回転軸20aの回転位置が存在する象限が例えば第1象限から第2象限へ変化する等の、象限が反時計回り方向へ変化している場合、左回転フラグFlを生成する。象限判定部105は、モータ20の回転軸20aの回転位置が存在する象限が例えば第1象限から第4象限へ変化する等の、象限が時計回り方向へ変化している場合、右回転フラグFrを生成する。
【0040】
カウンタ106は、象限判定部105により取得される左回転フラグFlあるいは右回転フラグFrに基づいて、カウント値Cを演算する。カウンタ106は、フリップフロップ等を組み合わせた論理回路である。カウント値Cは、モータ20の回転軸20aの回転位置が、その基準位置に対して、単位回転量(90度)だけ回転した回数を示している。カウンタ106は、象限判定部105から左回転フラグFlを取得する度にインクリメント(カウント値Cを1加算)し、象限判定部105から右回転フラグFrを取得する度にデクリメント(カウント値Cを1減算)する。このように、カウンタ106は、回転角度センサ41から検出信号が生成される度にカウント値Cを演算し、そのカウント値Cを記憶している。
【0041】
通信インターフェース102は、イグニッションスイッチ51がオンされている場合、カウンタ106に記憶されているカウント値Cをマイコン31に出力する。一方、通信インターフェース102は、イグニッションスイッチ51がオフされている場合、動作しない。
【0042】
電源回路100は、入力されるオン信号あるいはオフ信号に基づいて、イグニッションスイッチ51のオンオフを把握する。電源回路100は、複数の周期を記憶している。電源回路100は、選択された周期ごとに回転角度センサ41及びカウンタ回路101に間欠的に通電する通電部を備えている。また、電源回路100は、マイコン31に供給される電力の電圧である電源電圧を監視している。バッテリ50から第1給電線F1に供給される電力がマイコン31に供給されることから、マイコン31の電源電圧は第1給電線F1に供給される電力の電圧から把握することができる。電源回路100は、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値以上であるか否かを判定する。マイコン31が動作可能な電圧値は、マイコン31が動作することができる最低の電圧値を基準に設定されている。電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンされているにもかかわらずマイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合には、例えばマイコン31において瞬断、瞬低が生じていることを把握できる。
【0043】
電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値以上である場合、バッテリ50から第2給電線F2を介して常時供給されている電力を用いて、回転角度センサ41及びカウンタ回路101に周期Ton1で間欠的に通電する。これにより、電源回路100は、回転角度センサ41及びカウンタ回路101を周期Ton1で間欠的に動作させる。
【0044】
一方、電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオフされている場合、バッテリ50から第2給電線F2を介して常時供給されている電力を用いて、回転角度センサ41及びカウンタ回路101に周期Ton1よりも長い周期である周期Ton2で間欠的に通電する。
【0045】
電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてから所定時間が経過するまでの間、回転角度センサ41及びカウンタ回路101に周期Ton1よりも長い周期である周期Toff1で間欠的に通電する。これにより、電源回路100は、回転角度センサ41及びカウンタ回路101を周期Toff1で間欠的に動作させ、カウント値Cを周期Toff1で間欠的に演算させる。電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてからの時間を計測する計時部を備えている。電源回路100は、計時部による時間の計測結果に基づいて、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてから所定時間が経過したか否かを判定する。なお、本実施形態では、周期Ton2は周期Toff1と同程度の周期である。
【0046】
電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてから所定時間が経過すると、回転角度センサ41及びカウンタ回路101へ間欠的に通電する際の周期を変更する。電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてから所定時間が経過すると、回転角度センサ41及びカウンタ回路101を周期Toff2で間欠的に通電する。周期Toff2は、周期Toff1よりも長い周期である。
【0047】
電源回路100は、回転角度センサ41により検出された検出信号を取得する。電源回路100は、今回の検出信号の電圧値と前回の(直前の演算周期で検出された)検出信号の電圧値との偏差が閾値以上である場合、モータ20の回転を検出している。この閾値は、ノイズ等の影響による偏差ではなく、モータ20が回転したことに起因する電圧値の偏差と考えられる程度の値に設定されている。電源回路100は、回転角度センサ41により検出された検出信号の電圧値の変化をトリガとして、回転角度センサ41及びカウンタ回路101へ間欠的に通電する際の周期を変更している。電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオフされている期間にモータ20の回転が検出された場合、回転角度センサ41及びカウンタ回路101へ周期Toff3で間欠的に通電する。周期Toff3は、周期Ton1よりも長い周期である。また、周期Toff3は、周期Toff2よりも短い周期である。なお、本実施形態では、周期Toff3は、周期Toff1及び周期Ton2と同程度の周期である。マイコン31の演算周期は、周期Ton1と同じか周期Ton1よりも短い周期に設定されている。また、電源回路100の計時部は、モータ20の回転が検出されてからの時間を計測する。電源回路100は、今回の検出信号の電圧値と前回の検出信号の電圧値との偏差が閾値未満である場合、モータ20の回転を検出しない。電源回路100は、周期Toff3に切り替えた後、所定時間、モータ20の回転が検出されない場合、周期Toff3から周期Toff2に切り替え、回転角度センサ41及びカウンタ回路101へ周期Toff2で間欠的に通電する。
【0048】
マイコン31は、イグニッションスイッチ51がオンされている場合、回転監視部32により取得されるカウント値C及び回転角度センサ41により生成される検出信号に基づいて、モータ20の回転角度θを演算する。詳しくは、マイコン31は、回転角度センサ41により生成される2つの検出信号からアークタンジェントを求めることにより、回転角度θを算出する。また、マイコン31は、回転監視部32により取得されるカウント値Cに基づいて、モータ20の回転軸20aが1周(360度)単位で何周しているかを把握する。マイコン31は、回転角度θに対して、カウント値Cに基づいたモータ20の回転軸20aの多回転数に360度を乗算した値を加算することにより、モータ20の絶対回転角度を演算する。そして、マイコン31は、モータ20とステアリングシャフト11との間に介在される減速機構21の減速比等を考慮すれば、モータ20の絶対回転角度からステアリング絶対回転角度を演算することもできる。角度演算装置30は、このようにして求められたモータ20の絶対回転角度を用いることにより、モータ20に供給する電力を制御する。
【0049】
イグニッションスイッチ51がオンされている場合において、マイコン31において瞬断、瞬低が生じることがある。この場合、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値を下回る状況が生じる。マイコン31において瞬断、瞬低が生じたときにおいては、マイコン31により回転角度θを演算することができないものの、マイコン31が回転角度θの喪失の抑制が求められている。
【0050】
これに対し、本実施形態では、マイコン31において瞬断、瞬低が生じている場合、すなわちマイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合においても、回転監視部32が動作可能であればカウント値Cの演算を実行するようにしている。マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合とは、言い換えるとマイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値に達していない場合である。
【0051】
電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合、回転監視部32が動作可能であれば、回転角度センサ41及びカウンタ回路101に周期Ton2で間欠的に通電する。なお、電源回路100は、バッテリ50の瞬断・瞬低が原因の場合、第2コンデンサ53に蓄積された電荷を用いて回転角度センサ41及びカウンタ回路101に通電する。周期Ton2は、周期Toff1及び周期Toff3と同程度であってもよいし、短い周期であってもよいし、長い周期であってもよい。周期Ton2は、第1の周期の一例である。
【0052】
なお、周期Ton1、周期Ton2、周期Toff1、周期Toff2、及び周期Toff3は、それぞれが適用される状況において、モータ20の回転軸20aが、単位回転量(90度)だけ回転したことを見逃さない程度の大きさに設定されている。周期Toff3を周期Toff2よりも短い周期とするのは、モータ20の回転が検出された場合はモータ20の回転が検出されていない場合よりも、モータ20の回転軸20aが高速で回転しやすいためである。周期Toff2は、モータ20の回転軸20aの低速の回転を見逃さない程度の大きさに設定され、周期Toff3は、モータ20の回転軸20aの高速の回転を見逃さない程度の大きさに設定される。また、周期Ton2を、周期Toff2よりも短い周期とするのは、イグニッションスイッチ51がオンされている期間であるため、運転者によりステアリングホイール10が操作される可能性が高いためである。また、周期Toff1を周期Toff2よりも短い周期とするのは、イグニッションスイッチ51をオンからオフに切り替えた直後であるため、未だ運転者によりステアリングホイール10が操作される可能性が高いためである。
【0053】
角度演算装置30の動作状態を説明する。
図4に示すように、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値以上である場合、マイコン31は動作し(図4中では「ON」と表記する。)、モータ20の回転角度θを演算する。また、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値(動作閾値)以上である場合、回転角度センサ41及びカウンタ回路101には、バッテリ50からの電力が間欠的に供給されることにより、カウンタ回路101はカウント値Cを周期Ton1で間欠的に演算する。マイコン31は、通信インターフェース102を通じてカウント値Cを取得し、このカウント値C及び回転角度センサ41により生成される検出信号を用いてモータ20の回転角度θを演算する。
【0054】
時間T1に示すように、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合、マイコン31は動作を停止する(図4中では「OFF」と表記する。)。この場合、マイコン31は、供給される電力が不足することから動作することができず、モータ20の回転角度θを演算することができない。一方、カウンタ回路101には、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合においても、第2コンデンサ53に蓄積された電荷等を用いて回転角度センサ41及びカウンタ回路101への通電が可能であれば、当該通電が継続される。回転角度センサ41及びカウンタ回路101への通電が可能な場合、回転監視部32(電源回路100)は、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満に低下するタイミングで、周期Ton1から周期Ton2に切り替えて、カウント値Cを周期Ton2で間欠的に演算する。
【0055】
時間T2に示すように、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満からマイコン31が動作可能な電圧値以上に回復した場合、マイコン31は回転角度θの演算を再開する。マイコン31は、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満であった期間に回転監視部32が演算したカウント値Cを取得する。マイコン31は、このカウント値C及び回転角度センサ41により生成される検出信号を用いてモータ20の回転角度θを演算する。この場合、回転監視部32(電源回路100)は、周期Ton2から周期Ton1に切り替えて、カウント値Cを周期Ton1で間欠的に演算する。
【0056】
時間T3に示すように、イグニッションスイッチ51がオフされた場合、マイコン31へのバッテリ50からの電力の供給は停止される。このため、マイコン31は、動作を停止するため、モータ20の回転角度θの演算が停止することになる。一方、カウンタ回路101には、イグニッションスイッチ51がオフされている場合においても通電が継続される。回転監視部32(電源回路100)は、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてから所定時間が経過するまでの間、周期Ton1から周期Toff1に切り替えて、カウント値Cを周期Toff1で間欠的に演算する。なお、回転監視部32(電源回路100)は、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満であった期間にイグニッションスイッチ51がオフされた場合、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてから所定時間が経過するまでの間、周期Ton2から周期Toff1に切り替えて、カウント値Cを周期Toff1で間欠的に演算する。
【0057】
時間T4に示すように、回転監視部32(電源回路100)は、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替えられてから所定時間が経過すると、周期Toff1から周期Toff2に切り替えて、カウント値Cを周期Toff2で間欠的に演算する。
【0058】
時間T5に示すように、イグニッションスイッチ51がオフされている場合においても、モータ20は回転することがある。例えばステアリングホイール10が操作されることによりモータ20は回転する。回転監視部32(電源回路100)は、今回の検出信号の電圧値と前回の検出信号の電圧値との偏差が閾値以上である場合、モータ20の回転を検出している。回転監視部32(電源回路100)は、イグニッションスイッチ51がオフされている場合にモータ20の回転を検出すると、周期Toff2から周期Toff3に切り替えて、カウント値Cを周期Toff3で間欠的に演算する。この場合に、象限判定部105が回転角度センサ41により生成される検出信号に基づいて、モータ20の回転軸20aの回転位置が存在する象限が変化する旨判定すると、カウンタ106に記憶されているカウント値Cはインクリメントあるいはデクリメントされることになる。
【0059】
時間T6に示すように、回転監視部32(電源回路100)は、周期Toff2から周期Toff3に切り替えた後、所定時間、モータ20の回転が検出されない場合、周期Toff3から周期Toff2に切り替えて、カウント値Cを周期Toff2で間欠的に演算する。
【0060】
時間T7に示すように、イグニッションスイッチ51がオンされた場合、通信インターフェース102及びマイコン31へバッテリ50からの電力の供給が開始される。マイコン31は、イグニッションスイッチ51がオフされていた期間に回転監視部32(カウンタ回路102)が演算したカウント値Cを通信インターフェース102を通じて取得する。マイコン31は、このカウント値C及び回転角度センサ41により生成された検出信号を用いてモータ20の回転角度θを演算する。また、回転監視部32(電源回路100)は、周期Toff2(あるいは周期Toff3)から周期Ton1に切り替えて、カウント値Cを周期Ton1で間欠的に演算する。
【0061】
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)マイコン31において瞬断、瞬低が生じることにより、マイコン31に供給される電力の電源電圧が低下してマイコン31が動作できなくなることがある。この場合、マイコン31は、モータ20の回転角度θを演算することができなくなる。本実施形態では、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満の場合においても、すなわちマイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値に達していない場合においても、回転監視部32が動作可能であれば動作する。この場合、マイコン31はモータ20の回転角度θを演算できないものの、回転監視部32のカウンタ回路101はカウント値Cを演算できている。そして、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値以上に回復した場合には、マイコン31は、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満の期間にカウンタ回路101が演算したカウント値Cを用いて回転角度θを速やかに演算することができる。これにより、角度演算装置30は、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満の期間においてもモータ20の回転角度θの喪失を抑制することができる。
【0062】
(2)マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満の期間において、回転監視部32が動作してカウント値Cを演算するときは、マイコン31が回転角度θを演算するときに比べて、角度演算装置30の消費電力を低減することができる。
【0063】
(3)マイコン31に供給される電力の電源電圧が動作可能な電圧値未満である場合において、回転監視部32のカウンタ回路101はカウント値Cの演算を周期Ton2で間欠的に実行している。このことから、カウンタ回路101でカウント値Cを常時実行する場合と比べると、角度演算装置30の消費電力を低減することができるようになる。
【0064】
(4)マイコン31に供給される電力の電源電圧が動作可能な電圧値未満である場合、マイコン31に供給される電力の電源電圧が動作可能な電圧値以上である場合よりも、角度演算装置30の消費電力を低減することが求められる状況である。そこで、本実施形態では、電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンされていて、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合、回転角度センサ41及びカウンタ回路101に周期Ton2で間欠的に通電する。カウンタ回路101は周期Ton1よりも長い周期である周期Ton2で間欠的にカウント値Cを演算することから、カウンタ回路101がカウント値Cを演算する頻度を少なくすることができる。これにより、イグニッションスイッチ51がオンされている期間において、マイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満である場合、回転監視部32(カウンタ回路101)の消費電力を低減することができるようになる。
【0065】
(5)イグニッションスイッチ51がオフされている間は、角度演算装置30の消費電力の低減とモータ20の回転角度θの喪失の抑制とを両立させる必要がある。この点、モータ20の回転軸20aが回転し始めてから、モータ20の回転速度は徐々に高速になるため、モータ20の回転が検出されている場合には、モータ20の回転軸20aの回転位置の象限が変化しやすい。そこで、本実施形態では、回転監視部32のカウンタ回路101は、モータ20の回転が検出される状況では、モータ20の回転が検出されない状況での周期Toff2よりも短い周期である周期Toff3でカウント値Cを間欠的に演算している。これにより、回転監視部32は、イグニッションスイッチ51がオフされている間に、回転監視部32の消費電力を低減するなかで、モータ20の回転軸20aが単位回転量だけ回転したことを見逃すことなくカウント値Cを演算することができ、カウント値Cの演算精度を向上させることができる。このことから、イグニッションスイッチ51がオフされている期間において、角度演算装置30の消費電力の低減と、モータ20の回転角度θの喪失の抑制とを両立させることができる。
【0066】
(6)回転監視部32は、モータ20の回転が検出されない状況では、モータ20の回転が検出される状況での周期Toff3よりも長い周期である周期Toff2でカウント値Cを間欠的に演算することにより、角度演算装置30の消費電力を低減することができる。
【0067】
(7)モータ20が回転している場合には、回転角度センサ41により検出される検出信号の電圧値は変化する。そこで、本実施形態では、回転監視部32の電源回路100は、今回の検出信号の電圧値と前回の検出信号の電圧値との偏差に基づいて、検出信号の電圧値の変化を把握することで、モータ20の回転を検出することができる。電圧値の偏差が閾値以上であることに基づいてモータ20の回転を検出することから、実際にはモータ20が回転していないものの、微小な振動(ノイズ)によってモータ20が回転したと判定されることが抑えられる。
【0068】
(8)イグニッションスイッチ51がオンされている期間は、イグニッションスイッチ51がオフされている期間よりも、カウント値Cが変化する可能性の高い期間である。そこで、本実施形態では、イグニッションスイッチ51がオンされている期間には、イグニッションスイッチ51がオフされている期間よりも、回転監視部32のカウンタ回路101がカウント値Cを演算する頻度を多くしている。このことから、イグニッションスイッチ51がオンされている期間において、モータ20の回転角度θの演算精度を向上させることができる。
【0069】
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオフされている場合もオンされている場合も、回転角度センサ41及びカウンタ回路101へ同じ周期(例えば周期Toff3)で間欠的に通電してもよい。
【0070】
・周期Toff3は、周期Toff1よりも短い周期であってもよいし、長い周期であってもよい。また、周期Toff3は、周期Toff2よりも短い周期であってもよいし、長い周期であってもよい。
【0071】
・周期Toff2は、周期Toff1及び周期Toff2よりも短い周期であってもよいし、長い周期であってもよい。
・電源回路100は、象限判定部105により生成された右回転フラグFrあるいは左回転フラグFlが入力されていることをトリガとして、モータ20の回転を検出するようにしてもよい。
【0072】
・電源回路100は、モータ20の回転が検出されていないときも、モータ20の回転が検出されたときにも、回転角度センサ41及びカウンタ回路101へ同じ周期(例えば周期Toff3)で間欠的に通電してもよい。この場合、電源回路100は、モータ20が回転しているか否かを検出する必要はない。
【0073】
・本実施形態では、回転監視部32は、マイクロプロセッシングユニット等からなるマイコンによって実現してもよい。また、回転監視部32は、その記憶部に記憶されているプログラムを読み出して当該プログラムに応じた演算を実行するものであってもよい。これらの場合であっても、回転角度θの演算負荷よりも演算負荷の小さいカウント値Cを演算することになる分、回転監視部32の構成はマイコン31の構成よりも簡素な構成とすることができる。
【0074】
・回転角度センサ41は、例えばホール素子を用いたセンサであってもよいし、レゾルバを用いたセンサであってもよい。
・回転角度センサ41は、例えばステアリングシャフト11の回転角度を検出するようにしてもよい。ステアリングシャフト11の回転角度は、モータ20とステアリングシャフト11との間に介在される減速機構21の減速比等を考慮すれば、モータ20の回転角度θに換算することができる。
【0075】
・回転監視部32は、イグニッションスイッチ51がオンされている場合には、カウント値Cを演算しないようにしてもよい。この場合、イグニッションスイッチ51がオンからオフへと切り替わると、例えばマイコン31は現在の回転角度θを記憶し、回転監視部32は動作を開始してからカウント値Cを間欠的に演算して記憶する。そして、イグニッションスイッチ51がオフからオンに切り替わると、マイコン31は、イグニッションスイッチ51がオフされていた期間に回転監視部32が演算したカウント値C及び記憶した回転角度θを読み出し、モータ20の回転角度θを演算する。
【0076】
・電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンされている期間にマイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満の場合、モータ20の回転軸20aが単位回転量だけ回転したことを見逃すことのない程度の周期であれば、どのような周期で回転角度センサ41及びカウンタ回路101に間欠的に通電してもよい。これにより、カウンタ回路101は、間欠的にカウント値Cを演算する。
【0077】
・電源回路100は、イグニッションスイッチ51がオンされている期間にマイコン31に供給される電力の電源電圧がマイコン31が動作可能な電圧値未満の場合、回転角度センサ41及びカウンタ回路101に常時通電するようにしてもよい。この場合、カウンタ回路101は、カウント値Cを常時演算する。
【0078】
・マイコン31は、回転監視部32(カウンタ回路101及び通信インターフェース102)を介して、回転角度センサ41の検出信号を取り込んでもよい。この場合、回転角度センサ41は、イグニッションスイッチ51がオンされている間、マイコン31と同様に通電される。
【0079】
・本実施形態のEPSは、モータ20の回転軸20aとラックシャフト12の軸線とが平行なEPSに具体化してもよいし、回転軸20aとラックシャフト12とが同軸に存在するEPSに適用してもよい。また、EPSに限らず、例えばステアバイワイヤ式のステアリング装置に具体化してもよい。
【0080】
・本実施形態のEPSが搭載される車両は、車両駆動源にエンジンを採用するいわゆる内燃機関を有する車両であってもよいし、車両駆動源にモータを採用するいわゆる電動車両であってもよい。なお、電動車両の場合、始動スイッチは、車両駆動源としてのモータを始動するスイッチである。
【符号の説明】
【0081】
1…操舵機構、3…アクチュエータ、10…ステアリングホイール、11…ステアリングシャフト、12…ラックシャフト、15…転舵輪、20…モータ、20a…回転軸、21…減速機構、30…角度演算装置、31…マイコン、32…回転監視部、40…トルクセンサ、41…回転角度センサ、50…バッテリ、51…イグニッションスイッチ、100…電源回路、101…カウンタ回路、102…通信インターフェース、103…増幅器、104…コンパレータ、105…象限判定部、106…カウンタ、θ…回転角度、C…カウント値、F1…第1給電線、F2…第2給電線、Fl…左回転フラグ、Fr…右回転フラグ、Ssin…正弦波信号、Scos…余弦波信号、Th…操舵トルク、T1~T7…時間、Ton1,Ton2,Toff1,Toff2,Toff3…周期。
図1
図2
図3
図4