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特許7225589タイヤ成形ドラム装置、及びタイヤ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】タイヤ成形ドラム装置、及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/24 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
B29D30/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018138649
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020015198
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 真琴
(72)【発明者】
【氏名】福井 早紀
(72)【発明者】
【氏名】楠 英大
(72)【発明者】
【氏名】西尾 清隆
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-175874(JP,A)
【文献】米国特許第06013147(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02913182(EP,A1)
【文献】特開2015-039821(JP,A)
【文献】特開昭59-202837(JP,A)
【文献】国際公開第92/007710(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/012928(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ部材が貼り付けられる円筒状のドラムを含むタイヤ成形ドラム装置であって、
前記ドラムは、周方向に配置され、かつ半径方向外表面が互いに協働して前記ドラムの外周面を構成する複数のセグメントを具え、
各前記セグメントは、軸心方向に2分割されかつ軸心方向に相対的に近離移動可能に支持される第1のセグメント片と第2のセグメント片とから構成され、
前記第1、第2のセグメント片の軸心方向の各内端部は、凹部と凸部とが周方向に交互に配される凹凸部を具え、
前記第1のセグメント片の前記凹凸部と、前記第2のセグメント片の前記凹凸部とは、互いに噛み合い可能であり、
前記第1、第2のセグメント片の各前記凸部は、前記凸部の軸心方向の内端面と、周方向両側の側壁面とのコーナ部が、曲率半径Rの円弧面により面取りされており、
前記第1、第2のセグメント片の各前記凸部は、前記凸部の周方向両側の側壁面と前記半径方向外表面とが交わる稜線が、軸心方向に沿ってのびており
前記第1、第2のセグメント片は、それぞれ、各セグメント片の周方向の幅中心を通る半径方向の移動方向に沿って半径方向内外に移動し、
前記第1、第2のセグメント片において、
各前記凸部における周方向両側の側壁面のうちで、前記幅中心側である周方向内側の側壁面は、この側壁面における前記稜線から軸心に向かってのびる半径方向の基準面よりも周方向外側を通り、かつ
各前記凸部における周方向両側の側壁面のうちで、周方向外側の側壁面は、この側壁面における前記稜線から軸心に向かってのびる半径方向の基準面上を通る、
タイヤ成形ドラム装置。
【請求項2】
前記周方向内側の側壁面は、この側壁面における前記稜線から、前記移動方向に沿ってのびる移動方向面上を通る請求項1記載のタイヤ成形ドラム装置。
【請求項3】
前記第1、第2のセグメント片は、それぞれ、前記半径方向外表面に、軸心方向にのびる条溝を少なくとも1以上具える請求項1又は2に記載のタイヤ成形ドラム装置。
【請求項4】
前記第1のセグメント片の前記条溝と、前記第2のセグメント片の前記条溝とは、一直線上に配される請求項3記載のタイヤ成形ドラム装置。
【請求項5】
前記第1、第2のセグメント片は、各前記凹部に、軸心方向内外にスライド可能かつ前記凹部のスペースを埋めるスライド板を具える請求項1~4の何れかに記載のタイヤ成形ドラム装置。
【請求項6】
タイヤ部材が貼り付けられる円筒状のドラムを含むタイヤ成形ドラム装置であって、
前記ドラムは、周方向に配置され、かつ半径方向外表面が互いに協働して前記ドラムの外周面を構成する複数のセグメントを具え、
各前記セグメントは、軸心方向に2分割されかつ軸心方向に相対的に近離移動可能に支持される第1のセグメント片と第2のセグメント片とから構成され、
前記第1、第2のセグメント片の軸心方向の各内端部は、凹部と凸部とが周方向に交互に配される凹凸部を具え、
前記第1のセグメント片の前記凹凸部と、前記第2のセグメント片の前記凹凸部とは、互いに噛み合い可能であり、
前記第1、第2のセグメント片は、それぞれ、前記半径方向外表面に、軸心方向にのびる条溝を少なくとも1以上具えるタイヤ成形ドラム装置。
【請求項7】
タイヤ部材が貼り付けられる円筒状のドラムを含むタイヤ成形ドラム装置であって、
前記ドラムは、周方向に配置され、かつ半径方向外表面が互いに協働して前記ドラムの外周面を構成する複数のセグメントを具え、
各前記セグメントは、軸心方向に2分割されかつ軸心方向に相対的に近離移動可能に支持される第1のセグメント片と第2のセグメント片とから構成され、
前記第1、第2のセグメント片の軸心方向の各内端部は、凹部と凸部とが周方向に交互に配される凹凸部を具え、
前記第1のセグメント片の前記凹凸部と、前記第2のセグメント片の前記凹凸部とは、互いに噛み合い可能であり、
前記第1、第2のセグメント片は、各前記凹部に、軸心方向内外にスライド可能かつ前記凹部のスペースを埋めるスライド板を具えるタイヤ成形ドラム装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のタイヤ成形ドラム装置を用いて生タイヤを形成する工程を含むタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムの外周面に段差を設けることなく、ドラムの軸心方向巾を調整しうるタイヤ成形ドラム装置、及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤの1次成形体を形成するための円筒状のドラムでは、タイヤの種類やサイズに応じてドラムの軸心方向巾(ドラム巾と呼ぶ場合がある。)を調整する必要がある。そのため、下記の特許文献1、2には、ドラム巾を調整可能としたドラムが提案されている。この提案のドラムは、ドラムの外周面を形成する複数かつ周方向に配されるセグメントを具える。各セグメントは、中央セグメント片と、その両側のサイドセグメント片とに分割されている。
【0003】
特許文献1においては、中央セグメント片の軸心方向外端部とサイドセグメント片の軸心方向内端部とを上下に重ならせて配置し、その重なり巾を変化させることでドラム巾を調整している。
【0004】
特許文献2においては、中央セグメント片の軸心方向外端部とサイドセグメント片の軸心方向内端部とを向かい合わせて配置し、外端部と内端部との離間距離を変化させることでドラム巾を調整している。
【0005】
しかし何れの場合にも、ドラムの外周面に、端部同士の重なりによる段差(特許文献1)、或いは端部間の軸心方向の離間による段差(特許文献2)が発生する。そのため、ドラム外周面に沿ってタイヤ部材(例えばカーカスプライなど)を巻き付けるとき、段差が原因して、カーカスコードパス(ビードコア間のカーカスコード長さ)がバラ付いたり、タイヤ部材にシワ寄りが生じる傾向がある。これはタイヤ品質の低下原因となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-202837号公報
【文献】特開2015-39821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドラムの外周面に段差を設けることなく、ドラム巾を調整しうるタイヤ成形ドラム装置、及びタイヤ製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1の発明は、タイヤ部材が貼り付けられる円筒状のドラムを含むタイヤ成形ドラム装置であって、
前記ドラムは、周方向に配置され、かつ半径方向外表面が互いに協働して前記ドラムの外周面を構成する複数のセグメントを具え、
各前記セグメントは、軸心方向に2分割されかつ軸心方向に相対的に近離移動可能に支持される第1のセグメント片と第2のセグメント片とから構成されるとともに、
前記第1、第2のセグメント片の軸心方向の各内端部は、凹部と凸部とが周方向に交互に配される凹凸部を具え、
しかも前記第1のセグメント片の前記凹凸部と、前記第2のセグメント片の前記凹凸部とは、互いに噛み合い可能とした。
【0009】
本発明に係るタイヤ成形ドラム装置では、前記第1、第2のセグメント片の各前記凸部は、この凸部の周方向両側の側壁面と前記半径方向外表面とが交わる稜線が、軸心方向に沿ってのびるのが好ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤ成形ドラム装置では、前記第1、第2のセグメント片の各前記凸部は、この凸部の軸心方向の内端面と、周方向両側の側壁面とのコーナ部が、曲率半径Rの円弧面により面取りされるのが好ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤ成形ドラム装置では、前記第1、第2のセグメント片は、それぞれ、各セグメント片の周方向の幅中心を通る半径方向の移動方向に沿って半径方向内外に移動するとともに、
前記第1、第2のセグメント片において、
各前記凸部における周方向両側の側壁面のうちで、前記幅中心側である周方向内側の側壁面は、この側壁面における前記稜線から軸心に向かってのびる半径方向の基準面よりも周方向外側を通り、かつ
各前記凸部における周方向両側の側壁面のうちで、周方向外側の側壁面は、この側壁面における前記稜線から軸心に向かってのびる半径方向の基準面上を通るのが好ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤ成形ドラム装置では、前記周方向内側の側壁面は、この側壁面における前記稜線から、前記移動方向に沿ってのびる移動方向面上を通るのが好ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤ成形ドラム装置では、前記第1、第2のセグメント片は、それぞれ、前記半径方向外表面に、軸心方向にのびる条溝を少なくとも1以上具えるのが好ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤ成形ドラム装置では、前記第1のセグメント片の前記条溝と、前記第2のセグメント片の前記条溝とは、一直線上に配されるのが好ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤ成形ドラム装置では、前記第1、第2のセグメント片は、各前記凹部に、軸心方向内外にスライド可能かつ前記凹部のスペースを埋めるスライド板を具えるのが好ましい。
【0016】
本願第2の発明は、タイヤ製造方法であって、第1の発明のタイヤ成形ドラム装置を用いて生タイヤを形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明は叙上の如く、第1、第2のセグメント片の軸心方向の内端部に形成される凹凸部が、互いに噛み合い可能である。
【0018】
従って、第1、第2のセグメント片が軸心方向に近離移動して、ドラム巾が調整された場合にも、前記凹凸部同士の噛み合い状態においては、第1のセグメント片の外表面と第2のセグメント片の外表面が、段差を有することなく接続する。
【0019】
そのため、ドラム外周面上でタイヤ部材を貼り付けるとき、カーカスコードパスのバラ付き、及びタイヤ部材のシワ寄りの発生を抑えることができ、タイヤ品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のタイヤ成形ドラム装置におけるドラムの一実施形態を示す正面図である。
図2】タイヤ成形ドラム装置の軸心と直角方向の断面図である。
図3】タイヤ成形ドラム装置の軸心方向の断面図である。
図4】第1、第2のセグメント片の噛み合う前の状態を示す平面図である。
図5】(A)、(B)は、縮巾状態及び拡巾状態のドラムを示す平面図である。
図6】凸部の内端部分の他の例を拡大して示す平面図である。
図7】(A)、(B)は、第1のセグメント片における凹凸部、及び第2のセグメント片における凹凸部の軸心と直角方向の断面図である。
図8】(A)、(B)は、第1、第2のセグメント片の他の実施例を、第2のセグメント片を代表して示す断面図、及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ成形ドラム装置1は、中心軸2によって回転可能に支持される円筒状のドラム3を具える。このドラム3の外周面3S上で、タイヤ部材Aを順次貼り付けることにより、本例では、シェーピング前の円筒状の1次成形体(図示省略)が形成される。
【0022】
タイヤ部材Aとしては、例えばインナライナゴム、カーカスプライ、チェーファゴム、ビードコア、ビードエーペックスゴム、サイドウォールゴムなどが挙げられる。
【0023】
図2に示すように、ドラム3は、中心軸2の周りで周方向に配置される複数(例えば6個)のセグメント5と、各セグメント5を半径方向内外に移動させる半径方向移動手段6とを具える。各セグメント5は、半径方向外側に移動することで、ドラム3は拡径状態Y1となり、各セグメント5の半径方向外表面5Sが互いに協働して円筒状の外周面3Sを構成する。又各セグメント5は、半径方向内側に移動することで、ドラム3は縮径状態Y2となり、外周面3Sで形成された1次成形体がドラム3から取り外される。
【0024】
セグメント5は、周方向に交互に配される大小2種類のセグメント5A、5Bから構成される。セグメント5Aの周方向端面Faは、半径方向内側に向かって周方向巾が減じる向きに傾斜する。これに対し、セグメント5Bの周方向端面Fbは、半径方向内側に向かって周方向巾が増加する向きに傾斜する。なお拡径状態Y1から縮径状態Y2へのセグメント5Bの半径方向移動距離は、セグメント5Aの半径方向移動距離よりも大である。
【0025】
図1、3に示すように、各セグメント5は、軸心方向に2分割された第1、第2のセグメント片9L、9Rから構成される。第1、第2のセグメント片9L、9Rは、軸心方向移動手段10により、軸心方向に相対的に近離移動可能に支持される。本明細書では第1、第2のセグメント片9L、9Rが近づく向きを軸心方向内方、離れる向きを軸心方向外方としている。本例では、第1、第2のセグメント片9L、9Rが、それぞれ中央位置Coを中心として軸心方向内外に移動する場合が示される。しかし、要求により、第1、第2のセグメント片9L、9Rの一方を固定し、他方のみを軸心方向内外に移動可能に構成することもできる。
【0026】
図2、3に示すように、半径方向移動手段6は、本例では、中心軸2に台座部11を介して放射状に取り付くシリンダ12と、このシリンダ12のロッド先端に、半径方向に平行移動可能な移動台13とを具える。シリンダ12に代えてリンク機構を採用することもできる。本例の移動台13は、半径方向内外に配されかつ軸心方向にのびる板状部13i、13oを具える。
【0027】
軸心方向移動手段10は、中心軸2と平行に前記移動台13に支持されるネジ軸15、及び第1、第2のセグメント片9L、9Rとネジ軸15とをそれぞれ連結する連結片16L、16Rとを具える。
【0028】
ネジ軸15は、その両端部が前記移動台13に回転可能に枢支される。ネジ軸15の軸心方向一方側と他方側とには、異なる向きのねじ部15L(例えば左ネジ)、15R(例えば右ネジ)が形成される。又ネジ軸15の中央部は、ギヤー連結手段20により、例えば移動台13に固定のモータMと接続される。
【0029】
連結片16Lは、第1のセグメント片9Lの半径方向内面に固定されるブロック部17L、ねじ部15Lに螺合するナット部18L、及びブロック部17Lとナット部18Lとを継ぐ継ぎ部19Lを具える。又連結片16Rは、第2のセグメント片9Rの半径方向内面に固定されるブロック部17R、ねじ部15Rに螺合するナット部18R、及びブロック部17Rとナット部18Rとを継ぐ継ぎ部19Rを具える。
【0030】
移動台13の前記外の板状部13oには、前記継ぎ部19L、19Rをそれぞれ軸心方向に移動可能に案内するガイド孔21L、21Rが配され。
【0031】
従って、第1、第2のセグメント片9L、9Rは、前記モータMの回転制御により、中央位置Coを中心として互いに近離可能に移動しうる。
【0032】
図4に示すように、第1のセグメント片9Lの軸心方向の内端部は、凹部22Lと凸部23Lとが周方向に交互に配される櫛の歯状の凹凸部24Lを具える。又第2のセグメント片9Rの軸心方向の内端部も同様に、凹部22Rと凸部23Rとが周方向に交互に配される櫛の歯状の凹凸部24Rを具える。
【0033】
凹凸部24L、24Rにおいて、それぞれ軸心方向内側に突出する部分が凸部23L、23Rであり、凸部23L、23L間の部分が凹部22L、凸部23R、23R間の部分が凹部22Rとして定義される。
【0034】
凹凸部24Lと凹凸部24Rとは、互いに噛み合い可能に形成される。即ち、凹部22Lと凸部23Rとが軸心方向に互いに向かい合い、かつ凹部22L内に凸部23Rが軸心方向に挿入可能に形成される。同様に、凹部22Rと凸部23Lとが軸心方向に互いに向かい合い、かつ凹部22R内に凸部23Lが軸心方向に挿入可能に形成される。又凸部23L、23Rにおいて、この凸部23L、23Rの周方向両側の側壁面Sと、半径方向外表面5Sとが交わる稜線Jは、それぞれ軸心方向に沿ってのびる。
【0035】
本例では、凹凸部24Lと凹凸部24Rとが、それぞれ、凹凸が周方向に一定周期で繰り返される矩形波状をなす場合が示される。半径方向外表面5Sにおける凹部22L、22Rの周方向巾Waは、半径方向外表面5Sにおける凸部23L、23Rの周方向巾Wbよりも大でありその差(Wa-Wb)は、1~3mmの範囲が好ましい。
【0036】
従って、図5(A)に示すように、凹凸部24Lと凹凸部24Rとが深く噛み合い、ドラム巾W2が最小となる縮巾状態Q1から、凹凸部24Lと凹凸部24Rとが浅く噛み合い、ドラム巾W2が最大となる拡巾状態Q2まで、ドラム巾W2を自在に調整することができる。
【0037】
そして拡巾状態Q2においても、噛み合い状態が維持されることにより、凸部23Lの内端部分と凸部23Rの内端部分が周方向に隣り合い、周方向に実質的に連続する環状部分25が形成される。
【0038】
この環状部分25により、第1のセグメント片9Lの外表面5Sと、第2のセグメント片9Rの外表面5Sとを、実質的に段差を有することなく接続させることができる。その結果、ドラム3の外周面3S上でタイヤ部材Aを貼り付けるとき、カーカスコードパスがバラ付いたり、タイヤ部材Aにシワ寄りが生じるのを抑制することができる。
【0039】
図5(A)に示すように、縮巾状態Q1において、凸部23Lと凹部22Rとの間のタイヤ軸方向の隙間G、及び凸部23Rと凹部22Lとの間のタイヤ軸方向の隙間Gは、3~7mmの範囲が好ましい。又図5(B)に示すように、拡巾状態Q2において、環状部分25の軸心方向巾W25は、10mm以上であるのが好ましい。
【0040】
図6に示すように、凹凸部24L、24Rにおいて、各凸部23L、23Rは、それぞれ、凸部23L、23Rの軸心方向の内端面Esと、周方向両側の側壁面Sとのコーナ部27が、曲率半径Rの円弧面28により面取りされるのが好ましい。これにより、凹凸部24L、24R同士を噛み合わせる際にコーナ部27、27同士が衝突するのを防止でき、噛み合わせ作業を円滑化しうる。そのために、曲率半径Rは3~9mmの範囲であるのが好ましい。
【0041】
図7に、第1のセグメント片9Lにおける凹凸部24Lの軸心と直角方向の断面図、及び第2のセグメント片9Rにおける凹凸部24Rの軸心と直角方向の断面図が示される。なお第1、第2のセグメント片9L、9Rは、それぞれ、前記半径方向移動手段6(図2に示す)により、各セグメント片9L、9Rの周方向の幅中心cwを通る半径方向の移動方向Kに沿って半径方向内外に移動する。
【0042】
第1のセグメント片9Lにおいて、凸部23Lにおける周方向両側の側壁面Sのうちで、前記幅中心cw側である周方向内側の側壁面Siは、この側壁面Siにおける前記稜線Jから軸心に向かってのびる半径方向の基準面Xsよりも周方向外側を通る。これに対し、周方向外側の側壁面Soは、この側壁面Soにおける前記稜線Jから軸心に向かってのびる半径方向の基準面Xs上を通る。
【0043】
同様に、第2のセグメント片9Rにおいて、凸部23Rにおける周方向両側の側壁面Sのうちで、前記幅中心cw側である周方向内側の側壁面Siは、この側壁面Siにおける前記稜線Jから軸心に向かってのびる半径方向の基準面Xsよりも周方向外側を通る。これに対し、周方向外側の側壁面Soは、この側壁面Soにおける前記稜線Jから軸心に向かってのびる半径方向の基準面Xs上を通る。
【0044】
図7では、セグメント5Bにおける第1、第2のセグメント片9L、9Rを代表して示しているが、セグメント5Aにおける第1、第2のセグメント片9L、9Rも上記と同様、周方向内側の側壁面Siは基準面Xsよりも周方向外側を通り、又周方向外側の側壁面Siは基準面Xs上を通る。
【0045】
ここで、セグメント5を拡径縮径する際、第1のセグメント片9Lの半径方向内外への移動のタイミングと、第2のセグメント片9Rの半径方向内外への移動のタイミングとにズレが生じた場合、凸部23Lと凹部22R、及び/又は凸部23Rと凹部22Lが干渉してロックする傾向を招く。これに対して、周方向内側の側壁面Siを、基準面Xsよりも周方向外側にすることで、前記ロックを抑制することができる。特には、周方向内側の側壁面Siは、稜線Jから移動方向Kに沿ってのびる移動方向面Ks上を通ることが、ロックを回避する上でより好ましい。
【0046】
図4に示すように、本例では、第1、第2のセグメント片9L、9Rの外表面5Sに、軸心方向にのびる条溝26が少なくとも1以上配される。この条溝26は、排気溝であって、外周面3Sにタイヤ部材Aを直接貼り付けるとき、外周面3Sとタイヤ部材Aとの間の空気溜まりをドラム外に排出しうる。
【0047】
セグメント5の数にもよるが、セグメント5Aには、2~3本の条溝26を形成するのが好ましく、セグメント5Bには、1~2本の条溝26を形成するのが好ましい。条溝26は、深さ0.5~1.5mm、巾3~5mmの範囲が好ましい。又条溝26の一端は、凹凸部24L、24Rの内端までのびる。
【0048】
第1のセグメント片9Lの条溝26と、第2のセグメント片9Rの条溝26とは、一直線上に配されるのが、排気のために好ましい。
【0049】
図8(A)、(B)に、第1、第2のセグメント片9L、9Rの他の実施例を示す。同図には、第2のセグメント片9Rが代表して示される。セグメント片9Rは、各凹部22Rに、この凹部22RのスペースHを埋めるスライド板30が、軸心方向内外にスライド可能に配される。本例のスライド板30は、セグメント片9Rに設ける収容室31内に、スライド可能に保持される。スライド板30は、収容室31に配されるバネ手段34により、軸心方向内側に向かって付勢される。符号32は、スライド板30から半径方向内側に突出するストッパであり、セグメント片9Rに設けるガイド孔33を貫通する。これにより、スライド板30の軸心方向内端と凸部23Rの軸心方向内端とが略整一する基準位置Pにて抜け留めされる。
【0050】
第1のセグメント片9Lの各凹部22Lにも、凹部22LのスペースHを埋めるスライド板30が、同構造を有して配される。
【0051】
このようなスライド板30は、凹凸部24Lと凹凸部24Rとが噛み合うとき、それぞれ凸部23L及び凸部23Rに押されて軸心方向外側に後退しうる。これにより、スライド板30は、噛み合い状態に影響されることなく、凹部22RのスペースH及び凹部22RのスペースHを埋めることができる。この場合、タイヤ部材Aの貼り付け精度をさらに高めうる。又、ドラム3とタイヤ部材Aとの間の空気溜まりの発生をさらに抑制しうる。
【0052】
次に、タイヤ製造方法は、前記タイヤ成形ドラム装置1を用いて生タイヤを形成する工程を含む。
【0053】
タイヤ成形ドラム装置1は、生タイヤにおいて、トレッドリングが接合される前の円筒状の1stカバーを形成するために使用することも、又1stカバーを形成する際に、別途形成された円筒状カーカスにサイドウォールゴムを貼り付けるために使用することもできる。
【0054】
タイヤ成形ドラム装置1を用いて1stカバーを形成する場合、一例としては、
(ア)形成するタイヤサイズに合わせて、ドラム3の巾が調整され、その後、このドラム3上で、インナライナー、カーカスプライを順次巻き付けて、円筒状の巻回体を形成する。
(イ)その後、この巻回体のタイヤ軸方向外端部上にビードコアをセットするとともに、巻回体のうちでビードコアよりもタイヤ軸方向外側にはみ出した部分を、ビードコアの周りで折り返し、これによりビードコアを含む円筒状カーカスを形成する。
(ウ)その後、円筒状カーカス上に、サイドウォールゴムが貼り付けられて、1stカバーが形成される。
【0055】
又タイヤ成形ドラム装置1を用いて、別途形成された円筒状カーカスにサイドウォールゴムを貼り付ける場合、一例としては、
(A)円筒状カーカス形成用のフォーマを用い、このフォーマ上で、上記(ア)、(イ)と同様、円筒状の巻回体、及び円筒状カーカスを順次形成する。
(B)しかる後、フォーマから円筒状カーカスを取り出したのち、この円筒状カーカスを、ドラム3に装着する。この装着は、ドラム3の拡縮径、及びドラム巾の調整によって行いうる。
(C)その後、円筒状カーカス上にサイドウォールゴムが貼り付けられて、1stカバーが形成される。
【0056】
なおタイヤ成形ドラム装置1を用いて生タイヤを形成した場合、製品タイヤのタイヤ内腔面に、互いに噛み合った凹凸部24L、24Rの痕が残る。そのため、他のタイヤと区別することは可能である。
【0057】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0058】
1 タイヤ成形ドラム装置
3 ドラム
3S 外周面
5、5A、5B セグメント
5S 外表面
9L 第1のセグメント片
9R 第2のセグメント片
22L、22R 凹部
23L、23R 凸部
24L、24R 凹凸部
26 条溝
27 コーナ部
28 円弧面
30 スライド板
A タイヤ部材
cw 幅中心
Es 内端面
H スペース
J 稜線J
K 移動方向
Ks 移動方向面
S、Si、So 側壁面
Xs 基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8