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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230214BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230214BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20230214BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L101/00
C08L91/06
B60C1/00 B
B60C1/00 A
B60C1/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018180179
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050732
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】吉安 勇人
(72)【発明者】
【氏名】安東 徹昭
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013955(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108454(WO,A1)
【文献】特開2013-159666(JP,A)
【文献】特開2018-115234(JP,A)
【文献】特開2016-074847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率(A)と、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率(B)との比率(A/B)が1.7~6であり、炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率が40質量%を超え、48質量%未満、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率が16.5質量%以上、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率が1質量%以下であるワックスを含むゴム組成物。
【請求項2】
重量平均分子量が1500~5000である粘着樹脂を含む請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分100質量部に対して、前記粘着樹脂の含有量が2~10質量部である請求項記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対して、前記ワックスの含有量が0.5~5質量部である請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドやサイドウォールなどのゴム組成物には、オゾン劣化や酸化劣化、熱分解劣化を防止するために、ワックスなどが配合されている。配合されたワックスは、ゴム表面へ染みだし、ゴム表面に膜を張ることで、物理的にオゾン、酸素、有害気体の刺激からゴムを守ることができる。
【0003】
低温地域や温帯地域では、ワックスがブルームしにくく、耐オゾン性能を確保することが難しい。このため、従来公知のワックスを変色の抑制が可能な量で配合すると、耐オゾン性能が不足する場合がある。一方、高温地域では、ゴムの分子運動が活発であるため、ワックスがブルームしやすく耐オゾン性能を確保し易いが、タイヤ表面が白変色し易い。このように、低温地域~高温地域という広い環境温度域で、優れた耐オゾン性能を得ながら、白変色を抑制することは困難である。
【0004】
これに対して、特許文献1では、広い環境温度域で優れた耐オゾン性能が得られるとともに、変色を良好に抑制できるようにするため、ブロードな炭素数分布を有するワックスを配合することが提案されているが、白変色の抑制が十分ではなく、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-159666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、広い環境温度域での耐オゾン性能、耐変色性能等をバランス良く改善できるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率(A)と、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率(B)との比率(A/B)が1.7~6であり、炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率が40質量%を超え、48質量%未満、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率が15質量%以上、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率が1質量%以下であるワックスを含むゴム組成物に関する。
【0008】
重量平均分子量が1500~5000である粘着樹脂を含むことが好ましい。
【0009】
ゴム成分100質量部に対して、前記粘着樹脂の含有量が2~10質量部であることが好ましい。
【0010】
ゴム成分100質量部に対して、前記ワックスの含有量が0.5~5質量部であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率(A)と、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率(B)との比率(A/B)が1.7~6であり、炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率が40質量%を超え、48質量%未満、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率が15質量%以上、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率が1質量%以下であるワックスを含むゴム組成物であるので、該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤにおいて、広い環境温度域での耐オゾン性能、耐変色性能等をバランス良く改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴム組成物は、炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率(A)と、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率(B)との比率(A/B)が1.7~6であり、炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率が40質量%を超え、48質量%未満、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率が15質量%以上、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率が1質量%以下であるワックスを含む。
【0014】
上記ゴム組成物によって、広い環境温度域での耐オゾン性能、耐変色性能等をバランス良く改善できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
【0015】
本発明者らの検討の結果、比較的高炭素数である炭素数33~40の各ノルマルアルカン(高分子量側ノルマルアルカン)は、タイヤの表面部分に析出した際に白変色する度合いが強い傾向があることが分かった。また、低温地域~高温地域のいずれの地域でも、比較的低炭素数である炭素数23~32の各ノルマルアルカン(低分子量側ノルマルアルカン)の析出率が高いことが分かり、高分子量側ノルマルアルカンの合計含有率をやや減らしても耐オゾン性能に問題は生じないことが分かった。以上から、高分子量側ノルマルアルカンの合計含有率に対して、低分子量側ノルマルアルカンの合計含有率を大きくしつつ特定範囲とし、更に、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率、低分子量側ノルマルアルカンに含まれる炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率を特定量とすることにより、広い環境温度域での良好な耐オゾン性能を確保しつつ、耐変色性能等を向上できる。
【0016】
また、上記ゴム組成物は、重量平均分子量(Mw)が1500~5000である粘着樹脂を含むことが好ましい。上記ワックスと上記粘着樹脂とを併用することにより、広い温度環境域での耐オゾン性能、耐変色性能及び工程通過性能(生産性)の性能バランスを顕著に改善できる。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
特定Mwである粘着樹脂を配合することで、混練工程でのロールに対する密着性(ロール密着性)を向上させ、工程通過性能を改善できるが、多量に配合すると、ワックスよりも先にゴム表面に析出した粘着樹脂がワックスの析出を阻害する等、耐オゾン性能の点で問題があった。
この課題を解決する手法として、ワックスの炭素数分布を調整して、粘着樹脂よりも先にワックスをゴム表面に析出させることが考えられ、本発明者らは鋭意検討した結果、炭素数分布を調整した様々なワックスの中でも特に上記ワックスを粘着樹脂と併用することにより、広い温度環境域での耐オゾン性能、耐変色性能及び工程通過性能の性能バランスを顕著に改善できることを見出した。
【0017】
上記ゴム組成物は、炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率(A)と、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率(B)との比率(A/B)が1.7~6であり、炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率が40質量%を超え、48質量%未満、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率が15質量%以上、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率が1質量%以下であるワックスを含む。
【0018】
ワックス100質量%中、炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率(A)と、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率(B)との比率(A/B)は、1.7以上であり、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.5以上である。1.7以上であると、耐オゾン性能、耐変色性能が良好に得られる。また、上記比率(A/B)は、6以下であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。6以下であると、高温地域での耐オゾン性能、耐変色性能が良好に得られる。
【0019】
ワックス100質量%中、炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率は、40質量%を超えており、好ましくは42質量%以上である。40質量%以上であると、耐オゾン性能、耐変色性能がより良好に得られる。また、上記合計含有率は、48質量%未満であり、好ましくは46質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。48質量%未満であると、高温地域での耐オゾン性能、耐変色性能がより良好に得られる。
【0020】
ワックス100質量%中、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率の下限は、0質量%であってもよいが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。また、上記合計含有率は、1質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0021】
ワックス100質量%中、炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率は、好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、特に好ましくは57質量%以上である。45質量%以上であると、耐オゾン性能、耐変色性能がより良好に得られる。また、上記合計含有率は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。80質量%以下であると、高温地域での耐オゾン性能、耐変色性能がより良好に得られる。
【0022】
ワックス100質量%中、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは18質量%以上である。5質量%以上であると、高温地域での耐オゾン性能がより良好に得られる。また、上記合計含有率は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは24質量%以下である。40質量%以下であると、耐オゾン性能、耐変色性能が良好に得られる。
【0023】
ワックス100質量%中、炭素数41以上の各ノルマルアルカンの合計含有率は、0質量%であってもよいが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。また、上記合計含有率は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0024】
ワックス100質量%中、炭素数25~29の各ノルマルアルカンの合計含有率は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。また、上記合計含有率は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0025】
ワックス100質量%中、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率は、15質量%以上である。また、上記合計含有率は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0026】
ワックス100質量%中、炭素数33~37の各ノルマルアルカンの合計含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは14質量%以上である。また、上記合計含有率は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは17質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0027】
本発明において、各炭素数のノルマルアルカンやイソアルカンの含有率は、実施例の測定方法により測定して得られた値である。
【0028】
以上のような炭素数分布を有するワックスは、例えば、公知のワックスを適宜混合することなどによって調整できる。
【0029】
ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという点から、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0030】
上記ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。0.5質量部以上であると、上記ワックスを配合することによる効果がより良好に得られる。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。5質量部以下であると、耐変色性能がより良好に得られる。
【0031】
上記ゴム組成物は、重量平均分子量(Mw)が1500~5000である粘着樹脂を含むことが好ましい。上記ワックスと、上記粘着樹脂を併用することにより、広い温度環境域での耐オゾン性能、耐変色性能及び工程通過性能の性能バランスを相乗的に改善することができる。
【0032】
粘着樹脂のMwは、好ましくは1500以上、より好ましくは1700以上である。1500以上であると、本発明の効果がより良好に得られる。また、上記Mwは、好ましくは5000以下、より好ましくは4500以下、更に好ましくは4000以下である。5000以下であると、未加硫ゴムの粘度が上昇せず、工程通過性能が向上する。
なお、本明細書において、粘着樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0033】
粘着樹脂の軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上である。また、上記軟化点は、140℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
本明細書において、粘着樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0034】
粘着樹脂とは、一般には分子量が数百から数千の熱可塑性樹脂で、天然ゴムや合成ゴムに配合することによって粘着性を付与する樹脂をいう。具体的には、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、芳香族ビニル重合体、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られる点から、石油樹脂が好ましい。
【0035】
石油樹脂とは、石油化学工業で用いられるナフサ分解の副生油の一部(C5留分やC9留分など)の重合により生成した樹脂を指し、C5の鎖状オレフィン混合物をカチオン重合したC5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン留分を熱重合したジシクロペンタジエン系石油樹脂、C9芳香族オレフィン類混合物をカチオン重合したC9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、C9留分に含有されるアルファメチルスチレンを抜き取り、純アルファメチルスチレンで製造したピュアモノマーレジンと呼ばれる石油樹脂、およびこれらを水素添加した樹脂などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られる点から、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂が好ましく、C5系石油樹脂、C5C9系石油樹脂がより好ましい。
【0036】
粘着樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。2質量部以上であると、本発明の効果がより良好に得られる。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。10質量部以下であると、未加硫ゴムの粘度が上昇せず、また、ロールへの過密着が発生せず、工程通過性能が向上する。
【0037】
ゴム成分としては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという点からは、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましく、イソプレン系ゴム、BRがより好ましい。
【0038】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、上記含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましく60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0040】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、BRのシス含量は95質量%以上が好ましい。
【0041】
BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBRであればよく、例えば、BRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に上記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
【0043】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0044】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。また、上記含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0045】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、上述の変性BRと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0047】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0048】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は20m/g以上が好ましく、30m/g以上がより好ましい。20m/g以上であると、補強性能がより良好に得られる。該NSAは、200m/g以下が好ましく、100m/g以下がより好ましく、60m/g以下が更に好ましい。200m/g以下であると、分散させるのがより容易となり、操縦安定性能、耐オゾン性能がより良好に得られる。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217-2:2001によって求められる。
【0050】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0051】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。5質量部以上であると、補強性能がより良好に得られる。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。100質量部以下であると、操縦安定性能、耐オゾン性能がより良好に得られる。
【0052】
上記ゴム組成物は、オイルを含むことが好ましい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという点から、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイルがより好ましい。
【0053】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0054】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、オイルの含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。自らもタイヤ表面にブルームするオイルの含有量を上記範囲内とすることにより、ワックスのブルームをより好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0055】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミンがより好ましい。
【0056】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0057】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0058】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0059】
上記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる。
【0060】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0061】
上記ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0062】
上記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0064】
上記ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0065】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0066】
加硫促進剤としては、例えば、大内新興化学工業(株)、三新化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0067】
上記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0068】
上記ゴム組成物は、無機フィラーとして、シリカを含んでもよい。
【0069】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0070】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0071】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。該NSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは210m/g以下である。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0072】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。また、シリカの含有量は、好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
【0073】
上記ゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を含んでもよい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。
【0075】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、シリカ以外の無機フィラー、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤)等を例示できる。
【0076】
シリカ以外の無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、等が挙げられる。シリカ以外の無機フィラーを含む場合でも、全無機フィラーの合計含有量は、シリカの合計含有量と同一であることが好適である。
【0077】
有機架橋剤としては、特に限定されず、マレイミド化合物類、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物類、有機過酸化物類、アミン有機サルファイド類等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を用いてもよく、硫黄と併用してもよい。
有機架橋剤は、例えば、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以下で配合される。
【0078】
上記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0079】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0080】
上記ゴム組成物は、タイヤ用ゴム組成物として好適に使用できる。上記ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用できるが、なかでも、トレッド、サイドウォール、クリンチ、ウイング等のタイヤ外層用ゴム組成物に好適に使用でき、特にサイドウォールにより好適に使用できる。
【0081】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド、サイドウォール、クリンチ、ウイング等のタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。
【0082】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、2輪車用タイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等に好適に使用可能である。
【実施例
【0083】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0084】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:98質量%)
NR:RSS#3
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(NSA:42m/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX-140(アロマ系プロセスオイル)
粘着樹脂1:東ソー(株)製のペトロタック100V(C5C9系石油樹脂、Mw:3800、軟化点:96℃)
粘着樹脂2:JXTGエネルギー(株)製のT-REZ RA100(C5系石油樹脂、Mw:1900、軟化点:98.7℃)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
ワックス1:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
ワックス2:公知のワックスを適宜混合して得られ、表1に示す炭素数分布を有する試作品2
ワックス3:公知のワックスを適宜混合して得られ、表1に示す炭素数分布を有する試作品3
ワックス4:公知のワックスを適宜混合して得られ、表1に示す炭素数分布を有する試作品4
ワックス5:公知のワックスを適宜混合して得られ、表1に示す炭素数分布を有する試作品5
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0085】
ワックス1~5の炭素数分布は、以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0086】
測定装置としてキャピラリーGC、カラムとしてアルミニウムコーティングされたキャピラリーカラムを用い、キャリアガスヘリウム、流量4ml/分、カラム温度180~390℃、昇温速度15℃/分の条件にて測定した。
【0087】
【表1】
【0088】
(実施例1~11及び比較例1~5)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を設定温度150℃の条件下で5分間混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して100℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を用いて、サイドウォールの形状に合わせて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃で20分間加硫して試験用タイヤ(205/65R15)を得た。得られた未加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを以下の試験により評価した。
【0089】
<耐変色性能>
屋内:白変色評価
神戸にて、試験用タイヤを屋内の倉庫に6カ月間(春~秋)放置し、色差度計を用いて、Lを測定し、比較例3の100-Lを100として、耐変色性能を指数表示した(耐変色性能指数)。指数が大きいほど、白変色の度合いが小さく、耐変色性能(耐白変色化)に優れることを示す。
【0090】
<耐オゾン性能>
高温地域は中近東アラブ首長国連邦で約1年間(夏を含む)、低温地域はロシア共和国のシベリア地域で約1年間(冬を含む)ロードテストを行ない、発生したクラックの状態を観察し、比較例3を100として、耐オゾン性能をそれぞれ指数表示した(耐オゾン性能指数)。指数が大きいほど、クラックの数が少なく、クラックの大きさが小さく、耐オゾン性能に優れることを示す。
【0091】
<工程通過性能(ロール密着性)>
得られた未加硫ゴム組成物をロール練りし、その際のロールとの密着性を官能評価した。評価は10点満点で行い、5点が標準であり、評点が小さいほど密着不足、大きいほど密着過多であることを意味する。
【0092】
【表2】
【0093】
表2より、炭素数23~32の各ノルマルアルカンの合計含有率(A)と、炭素数33~40の各ノルマルアルカンの合計含有率(B)との比率(A/B)が1.7~6であり、炭素数25~30の各ノルマルアルカンの合計含有率が40質量%を超え、48質量%未満、炭素数30~32の各ノルマルアルカンの合計含有率が15質量%以上、炭素数46~60の各ノルマルアルカンの合計含有率が1質量%以下であるワックスを含む実施例は、広い環境温度域での耐オゾン性能、耐変色性能等をバランス良く改善できることが分かった。
【0094】
特に、実施例1、11、比較例1及び5の対比により、上記ワックスと、重量平均分子量が1500~5000である粘着樹脂とを併用することにより、広い環境温度域での耐オゾン性能、耐変色性能及び工程通過性能の性能バランスを顕著に改善できることが分かった。