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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】電源回路及びモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20230214BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20230214BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H02P29/00
B62D5/04
B60R16/033 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018207657
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020072627
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小塚 謙一
(72)【発明者】
【氏名】織田 雅人
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187316(JP,A)
【文献】特開平11-139224(JP,A)
【文献】特開平11-139327(JP,A)
【文献】特開2005-257436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
B62D 5/04
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と接続されている電源回路であって、
検出した状態量に基づいた出力値を出力するセンサに対して基準電圧を基準とした動作電圧を印加する電圧印加部と、
前記センサの種類に応じた、前記センサを動作させるために必要とされる電圧となるように、前記電圧印加部の基準電圧を切り替える切替部とを備え
前記センサの一つは、検出した状態量に基づいた電圧を前記制御装置に出力する第1のセンサであり、
前記電源回路は、第1基準電圧を生成する第1基準電圧生成回路を備え、
前記切替部は、前記電圧印加部が前記第1のセンサに対して動作電圧を印加する場合、前記電圧印加部の基準電圧として、前記第1基準電圧生成回路が生成するバッテリの電圧から生成する前記制御装置の電源電圧と同電位の前記第1基準電圧を選択できるように構成されており、
前記センサの一つは、検出した状態量をデジタル値で出力する第2のセンサであり、
前記電源回路は、第2基準電圧を生成する第2基準電圧生成回路を備え、
前記切替部は、前記電圧印加部が前記第2のセンサに対して動作電圧を印加する場合、前記電圧印加部の基準電圧として、前記第2基準電圧生成回路が前記バッテリの電圧から生成する参照電圧である前記第2基準電圧を選択できるように構成されている、電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電源回路と前記電源回路と接続されている制御装置とを備えるモータ制御装置であって、
車両の始動スイッチがオンされた場合にバッテリから前記制御装置に給電が行われ、
前記制御装置は、前記センサの種類に応じた識別情報を記憶しているとともに、モータの駆動を制御しており、
前記制御装置は、前記始動スイッチがオンされたときに、前記電源回路に接続されている前記センサの種類に応じた前記識別情報を前記切替部に出力し、
前記切替部は、前記識別情報に基づいて、前記電圧印加部の基準電圧を切り替えるモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源回路と前記電源回路と接続されている制御装置とを備えるモータ制御装置であって、
車両の始動スイッチがオンされた場合にバッテリから前記制御装置に給電が行われ、
前記制御装置は、前記センサの種類に応じた識別情報を記憶しているとともに、モータの駆動を制御しており、
前記電源回路は、前記センサの種類を識別するための識別状態を前記切替部に出力する端子部を備え、
前記切替部は、前記識別状態に基づいて前記電圧印加部の基準電圧を切り替えるモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路及びモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、操舵トルクを検出するトルクセンサが開示されている。このようなトルクセンサは、バッテリから供給された電力によって動作することになる。詳しくは、バッテリから供給された電力を基準電圧発生回路によって基準電圧まで降圧し、この基準電圧からトルクセンサを駆動する動作電圧をセンサ電源回路によって生成している。そして、センサ電源回路によってこの動作電圧がトルクセンサに印加されることにより、トルクセンサは動作することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-208504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクセンサには、動作するために必要とされる動作電圧がそれぞれ異なる様々な種類のものがある。そのため、センサ電源回路は、トルクセンサの種類に応じて複数の種類を用意する必要があることから、電源回路の管理が煩雑になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電源回路は、検出した状態量に基づいた出力値を出力するセンサに対して基準電圧を基準とした動作電圧を印加する電圧印加部と、前記センサの種類に応じた、前記センサを動作させるために必要とされる電圧となるように、前記電圧印加部の基準電圧を切り替える切替部とを備えている。
【0006】
上記構成によれば、切替部によってセンサの種類に応じて電圧印加部の基準電圧を切り替えていることから、電圧印加部によってセンサの種類に応じた適切な動作電圧を印加することができる。センサの種類に対応するように動作電圧を印加することができるため、用意しておく電源回路の種類を減らすことができて、電源回路の管理の煩雑さを抑えることができる。
【0007】
上記の電源回路において、制御装置と接続されている電源回路であって、前記センサの一つは、検出した状態量に基づいた電圧を前記制御装置に出力する第1のセンサであり、前記電源回路は、第1基準電圧を生成する第1基準電圧生成回路を備え、前記切替部は、前記電圧印加部が前記第1のセンサに対して動作電圧を印加する場合、前記電圧印加部の基準電圧として、前記第1基準電圧生成回路が生成するバッテリの電圧から生成する前記制御装置の電源電圧と同電位の前記第1基準電圧を選択できるように構成されていることが好ましい。
【0008】
上記の電源回路において、制御装置と接続されている電源回路であって、前記センサの一つは、検出した状態量をデジタル値で出力する第2のセンサであり、前記電源回路は、第2基準電圧を生成する第2基準電圧生成回路を備え、前記切替部は、前記電圧印加部が前記第2のセンサに対して動作電圧を印加する場合、前記電圧印加部の基準電圧として、前記第2基準電圧生成回路がバッテリの電圧から生成する前記第2基準電圧を選択できるように構成されていることが好ましい。
【0009】
電源回路の電力の供給対象としてのセンサは、種類によって、動作するために必要とされる動作電圧が異なることがある。そこで、切替部は、センサの種類によって、電圧印加部の基準電圧として適切な基準電圧を選択できるように構成している。これにより、電圧印加部は、第1基準電圧や第2基準電圧に応じた動作電圧を、すなわちセンサの種類に応じた動作電圧をセンサに印加することができる。例えば、電圧印加部が第1のセンサに対して動作電圧を印加する場合には、切替部は第1基準電圧を基準電圧として選択することができる。また、例えば、電圧印加部が第2のセンサに対して動作電圧を印加する場合には、切替部は第2基準電圧を基準電圧として選択することができる。
【0010】
上記の電源回路と前記電源回路と接続されている制御装置とを備えるモータ制御装置であって、車両の始動スイッチがオンされた場合にバッテリから前記制御装置に給電が行われ、前記制御装置は、前記センサの種類に応じた識別情報を記憶しているとともに、モータの駆動を制御しており、前記制御装置は、前記始動スイッチがオンされたときに、前記電源回路に接続されている前記センサの種類に応じた前記識別情報を前記切替部に出力し、前記切替部は、前記識別情報に基づいて、前記電圧印加部の基準電圧を切り替える。
【0011】
上記構成によれば、制御装置は、車両の始動スイッチがオンされたときに、電源回路に接続されているセンサの種類に応じた識別情報を切替部に出力している。これにより、切替部は、識別情報に基づいて電圧印加部の基準電圧をセンサの種類に応じた基準電圧に切り替えることができるため、センサへの動作電圧をセンサの種類に応じて可変させることができる。センサの種類に対応するように動作電圧を印加することができるため、用意しておく電源回路の種類を減らすことができて、電源回路の管理の煩雑さを抑えることができる。
【0012】
上記の電源回路と前記電源回路と接続されている制御装置とを備えるモータ制御装置であって、車両の始動スイッチがオンされた場合にバッテリから前記制御装置に給電が行われ、前記制御装置は、前記センサの種類に応じた識別情報を記憶しているとともに、モータの駆動を制御しており、前記電源回路は、前記センサの種類を識別するための識別状態を前記切替部に出力する端子部を備え、前記切替部は、前記識別状態に基づいて前記電圧印加部の基準電圧を切り替える。
【0013】
上記構成によれば、切替部は、センサの種類に応じた識別状態に基づいて、電圧印加部の基準電圧を切り替えることができる。識別状態を出力するための端子部を電源回路に設けていることから、制御装置に識別状態を出力するための構成を設けなくてもよい分、制御装置を簡素に構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電源回路及びモータ制御装置によれば、電源回路の管理の煩雑さを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のモータ制御装置の概略構成を示すブロック図。
図2】参照電圧生成部及び電源電圧生成部の概略構成を示すブロック図。
図3】第2実施形態の電源回路の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
モータ制御装置の第1実施形態について図1を用いて説明する。図1は、モータ制御装置1を模式的に図示したものである。図1では、説明を簡単にするために抵抗等の図示を省略している。
【0017】
図1に示すように、モータ制御装置1は、マイコン10と、電源回路20とを備えている。マイコン10は、制御装置の一例である。マイコン10及び電源回路20は、バッテリ30から供給されるバッテリ電圧Vによって動作している。モータ制御装置1のマイコン10は、モータ40に接続されているとともに、各種のセンサの出力に基づいてモータ40の動作を制御している。各種のセンサとしては、例えばトルクセンサ50が採用されている。
【0018】
バッテリ30と電源回路20との間には、バッテリ30から供給される電力の通電及び遮断を切り替える始動スイッチとしてのイグニッションスイッチ31が設けられている。運転者が車両に設けられたスイッチを操作することにより、イグニッションスイッチ31のオンオフが切り替えられる。イグニッションスイッチ31がオンされている場合、バッテリ30と電源回路20との間でイグニッションスイッチ31を通じて電力が通電される。イグニッションスイッチ31がオフされている場合、バッテリ30と電源回路20との間でイグニッションスイッチ31を通じて電力が遮断される。
【0019】
バッテリ30と電源回路20との間でイグニッションスイッチ31を通じて電力が通電される場合、マイコン10には電力が供給される。すなわち、イグニッションスイッチ31がオンされている場合、マイコン10には電力が供給され、マイコン10は動作する。一方、バッテリ30と電源回路20との間でイグニッションスイッチ31を通じて電力が遮断される場合、マイコン10には電力が供給されない。すなわち、イグニッションスイッチ31がオフされている場合、マイコン10には電力が供給されず、マイコン10は動作を停止する。
【0020】
マイコン10は、イグニッションスイッチ31がオンされている場合、モータ40に供給される電力を制御する。マイコン10は、例えばマイクロプロセッシングユニット等からなる。マイコン10には、電源回路20が接続されている。電源回路20は、電子回路やフリップフロップ等を組み合わせた論理回路をパッケージ化して構成したものである。電源回路20は、いわゆるASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)である。マイコン10は、その記憶部11に記憶されているプログラムを読み出して、当該プログラムに応じた演算を実行する。
【0021】
電源回路20には、トルクセンサ50が接続されている。トルクセンサ50は、例えばステアリング装置のステアリングシャフトに付与される操舵トルクThを検出するセンサである。バッテリ30と電源回路20との間でイグニッションスイッチ31を通じて電力が通電される場合、トルクセンサ50には電力が供給される。すなわち、イグニッションスイッチ31がオンされている場合、トルクセンサ50には電力が供給され、トルクセンサ50は動作する。一方、バッテリ30と電源回路20との間でイグニッションスイッチ31を通じて電力が遮断される場合、トルクセンサ50には電力が供給されない。すなわち、イグニッションスイッチ31がオフされている場合、トルクセンサ50には電力が供給されず、トルクセンサ50は動作を停止する。また、トルクセンサ50は、マイコン10に接続されている。トルクセンサ50は、検出された操舵トルクThに基づいた出力信号をマイコン10に出力する。ところで、トルクセンサ50には、トルクセンサ50が動作するために必要とされる動作電圧Vtがそれぞれ異なる様々な種類のものがある。例えば、トルクセンサ50には、検出された操舵トルクThを電圧(すなわち、アナログ値)で出力するものや、検出された操舵トルクThをデジタル値で出力するものがある。そこで、本実施形態では、トルクセンサ50の種類に応じて異なる動作電圧Vtをトルクセンサ50に印加できるようにモータ制御装置1を構成している。
【0022】
マイコン10の記憶部11は、本実施形態のモータ制御装置1に接続されるトルクセンサ50の種類に応じた情報である識別情報Iを記憶している。本実施形態の識別情報Iは、トルクセンサ50の特に出力信号の出力態様である、アナログ信号であるかデジタル信号であるかを示す情報である。マイコン10は、イグニッションスイッチ31がオンされたタイミングで、識別情報Iを電源回路20に出力する。マイコン10は、マイコン10のコネクタに接続されたトルクセンサ50のコネクタの通信規格から、トルクセンサ50の出力信号の出力態様を把握する。マイコン10は、トルクセンサ50の出力信号の出力態様がアナログ値で出力するものである場合、アナログ値を出力するトルクセンサ50に対応した動作電圧Vtを生成するための識別情報Iとして例えば「0」を出力する。また、マイコン10は、トルクセンサ50の出力信号の出力態様がデジタル値で出力するものである場合、デジタル値を出力するトルクセンサ50に対応した動作電圧Vtを生成するための識別情報Iとして例えば「1」を出力する。特許請求の範囲で記載した第1のセンサの一例は、アナログ値を出力するトルクセンサ50であり、特許請求の範囲で記載した第2のセンサの一例は、デジタル値を出力するトルクセンサ50である。
【0023】
電源回路20は、電圧印加部60及び切替部70を有している一方、参照電圧生成部80及び電源電圧生成部90に接続されている。
参照電圧生成部80は、バッテリ30のバッテリ電圧Vから定電圧である参照電圧Vrefを生成する。特許請求の範囲で記載した第2基準電圧生成部の一例は、参照電圧生成部80であり、特許請求の範囲で記載した第2基準電圧の一例は、参照電圧Vrefである。
【0024】
電源電圧生成部90は、参照電圧生成部80により生成された参照電圧Vrefから定電圧である電源電圧Vccを生成する。マイコン10は、電源電圧生成部90により生成された電源電圧Vccに基づいて動作する。特許請求の範囲で記載した第1基準電圧生成部の一例は、電源電圧生成部90であり、特許請求の範囲で記載した第1基準電圧の一例は、電源電圧Vccである。
【0025】
切替部70は、二つ以上の入力を一つの信号として出力するマルチプレクサである。具体的には、切替部70は、参照電圧生成部80により生成された参照電圧Vref及び電源電圧生成部90により生成された電源電圧Vccを取得する。また、切替部70は、マイコン10から出力された識別情報Iを取得する。切替部70は、取得した識別情報Iに基づいて、参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccのいずれか一方を基準電圧として出力する。具体的には、切替部70は、識別情報Iが「0」である場合には電源電圧Vccを出力し、識別情報Iが「1」である場合には参照電圧Vrefを出力する。これにより、切替部70は、トルクセンサ50の種類に応じて選択された参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccのいずれか一方を出力している。
【0026】
電圧印加部60は、イグニッションスイッチ31を通じてバッテリ30から供給されるバッテリ電圧Vを用いて、トルクセンサ50に動作電圧Vtを印加する。電圧印加部60は、切替部70によって選択された参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccのいずれか一方に基づいてバッテリ30から供給されるバッテリ電圧Vを降圧することで、トルクセンサ50の動作電圧Vtを生成している。電圧印加部60は、オペアンプ61及びトランジスタ62を有している。
【0027】
トランジスタ62は、イグニッションスイッチ31とトルクセンサ50との間の給電線Lに設けられている。トランジスタ62には、MOS-FET(電界効果トランジスタ:metal-oxide-semiconductor field-effect-transistor)が採用されている。トランジスタ62のドレインはバッテリ30の正極側であるイグニッションスイッチ31側に接続され、トランジスタ62のソースがトルクセンサ50側に接続されている。また、トランジスタ62のゲートは、オペアンプ61の出力端子に接続されている。オペアンプ61の反転入力端子は、切替部70の出力端子に接続されている。オペアンプ61の非反転入力端子は、給電線Lにおけるトランジスタ62とトルクセンサ50との間の部分に設けられたノードN1に接続されている。このようにオペアンプ61を構成していることにより、オペアンプ61の負帰還が行われている。オペアンプ61は、非反転入力端子に入力された電圧と反転入力端子に入力された帰還電圧Vrとの偏差に基づいた電圧であるゲート電圧Vgを出力端子から出力する。ゲート電圧Vgは、オペアンプ61の設定に応じて、非反転入力端子に入力された電圧と反転入力端子に入力された帰還電圧Vrとの偏差よりも大きくなることも小さくなることも等しくなることもある。トランジスタ62のゲートに印加されるゲート電圧Vgに応じて、トランジスタ62のオンオフが切り替えられることにより、バッテリ30のバッテリ電圧Vからトルクセンサ50の動作電圧Vtを生成している。具体的には、トランジスタ62は、電源電圧Vccと帰還電圧Vrとの偏差に基づいたゲート電圧Vgがゲートに印加されている場合、バッテリ30のバッテリ電圧Vを降圧することでアナログ値を出力するトルクセンサ50の動作電圧Vtを生成する。また、トランジスタ62は、参照電圧Vrefと帰還電圧Vrとの偏差に基づいたゲート電圧Vgがゲートに印加されている場合、バッテリ30のバッテリ電圧Vを降圧することでデジタル値を出力するトルクセンサ50の動作電圧Vtを生成する。これにより、電圧印加部60は、切替部70により印加される電圧印加部60の基準電圧である電源電圧Vccあるいは参照電圧Vrefに基づいて、トルクセンサ50の種類に応じた動作電圧Vtをトルクセンサ50に印加することができる。
【0028】
参照電圧生成部80及び電源電圧生成部90について図2を用いて説明する。図2は、参照電圧生成部80及び電源電圧生成部90を模式的に図示したものである。図2では、説明を簡単にするために抵抗等の図示を省略している。
【0029】
図2に示すように、電源電圧生成部90は、参照電圧生成部80により生成された参照電圧Vrefを用いて電源電圧Vccを生成している。参照電圧生成部80は、プリレギュレータを用いることや抵抗分割などを用いることによって、バッテリ電圧Vから定電圧である参照電圧Vrefを生成している。電源電圧生成部90は、オペアンプ91を有している。オペアンプ91の反転入力端子は、参照電圧生成部80の出力端子に接続されている。オペアンプ91の出力端子からの出力がオペアンプ91の非反転入力端子の入力となるように、オペアンプ91の出力端子はオペアンプ91の非反転入力端子に接続されている。このようにオペアンプ91を構成していることにより、オペアンプ91の負帰還が行われている。そして、オペアンプ91は、参照電圧Vrefとオペアンプ91の非反転入力端子から入力される電圧との偏差に基づいた電圧を出力端子から出力する。オペアンプ91の出力端子から出力される電圧が安定することにより、定電圧である電源電圧Vccとなる。これにより、電源電圧生成部90は、参照電圧Vrefを用いて電源電圧Vccを生成している。
【0030】
第1実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)切替部70によってトルクセンサ50の種類に応じて電圧印加部60に印加する基準電圧を切り替えることができる。すなわち、切替部70が参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccを選択して出力することにより、電圧印加部60のオペアンプ61の非反転入力端子に印加する電圧が切り替えられ、電圧印加部60のトランジスタ62に印加されるゲート電圧Vgが切り替えられる。これにより、トランジスタ62は、トルクセンサ50の種類に応じたゲート電圧Vgに基づいて、バッテリ30のバッテリ電圧Vをトルクセンサ50の種類に応じた適切な動作電圧Vtに降圧することができる。このため、電圧印加部60によってトルクセンサ50の種類に応じた適切な動作電圧Vtをトルクセンサ50に印加することができる。トルクセンサ50の種類に対応するように動作電圧Vtを印加することができるため、用意しておく電源回路20の種類を減らすことができて、電源回路20の管理の煩雑さを抑えることができる。
【0031】
(2)本実施形態の電源回路20を複数の種類のトルクセンサ50に対して用いることができることから、電源回路20の汎用性を高めることができる。これにより、トルクセンサ50の種類に応じて個別に用意しておく必要のあった電源回路20の種類を減らすことができるようになる。
【0032】
(3)比較例として、電源回路20の汎用性を高める場合には、例えば電源回路20の回路構成をそのまま冗長化することが考えられる。この場合、電源回路20には、オペアンプ61の反転入力端子に参照電圧生成部80により生成された参照電圧Vrefが直接入力される第1の電圧印加部と、オペアンプ61の反転入力端子に電源電圧生成部90により生成された電源電圧Vccが直接入力される第2の電圧印加部とが冗長的に設けられる。電源回路20には、さらにこれらの2つの電圧印加部のいずれを用いるかを選択する選択構成が設けられることになる。この結果、電源回路20は大型化することになる。このため、トレードオフの関係にある電源回路20を複数の種類のトルクセンサ50に対して用いることができるようにすることと電源回路20の小型化との調和を図る必要があった。この点、本実施形態では、切替部70によって電圧印加部60の基準電圧を切り替えることでトルクセンサ50の動作電圧Vtを可変にしている。電圧印加部60については従来から電源回路20が有していた構成であって、電源回路20に新たな構成として加わったのは切替部70だけである。このため、電源回路20を複数の種類のトルクセンサ50に対して用いることができるように構成しつつ、上記比較例の場合と比べて電源回路20を小型化することができる。
【0033】
(4)トルクセンサ50には、動作するために必要とされる動作電圧Vtが異なることがある。例えば、トルクセンサ50には、操舵トルクThをアナログ値で出力するものやデジタル値で出力するものがあり、これらの動作電圧Vtは異なることがある。そこで、切替部70は、トルクセンサ50の出力態様によって、電圧印加部60の基準電圧として適切な基準電圧を選択できるように構成されている。これにより、電圧印加部60は、参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccに応じた動作電圧Vtを、すなわちトルクセンサ50の出力態様に応じた動作電圧Vtをトルクセンサ50に印加することができる。例えば、切替部70は、アナログ値で出力するトルクセンサ50に対して動作電圧Vtを印加する場合には、電源電圧Vccを電圧印加部60の基準電圧として選択することができる。また、例えば、切替部70は、デジタル値で出力するトルクセンサ50に対して動作電圧Vtを印加する場合には、参照電圧Vrefを電圧印加部60の基準電圧として選択することができる。
【0034】
(5)モータ制御装置1は、イグニッションスイッチ31がオンされたタイミングで、電源回路20に接続されているトルクセンサ50の種類に応じた識別情報Iを切替部70に出力している。これにより、切替部70は、識別情報Iに基づいて電圧印加部60の基準電圧をトルクセンサ50の種類に応じた基準電圧に切り替えることができるため、トルクセンサ50の動作電圧Vtをトルクセンサ50の種類に応じて可変させることができる。トルクセンサ50の種類に対応するように動作電圧Vtを印加することができるため、用意しておく電源回路20の種類を減らすことができて、電源回路20の管理の煩雑さを抑えることができる。また、トルクセンサ50を電源回路20に接続して得られる識別情報Iを用いて、トルクセンサ50の種類を判別できるため、トルクセンサ50に適切な動作電圧Vtを印加することができる。
【0035】
(6)アナログ値で出力するトルクセンサ50に対して動作電圧Vtを印加する場合には、切替部70から電圧印加部60に出力する基準電圧として電源電圧Vccを選択した後に次のような作用効果を得ることができる。切替部70が電圧印加部60に電源電圧Vcc以外を出力した場合には、電源電圧Vccと電圧印加部60の基準電圧とが同じように変化せずに個別にばらつくことがある。操舵トルクThをアナログ値で出力するトルクセンサ50の場合、マイコン10は、自身の動作電圧である電源電圧Vccを基準にして、トルクセンサ50からのアナログ値(電圧)を読み取る。このため、電源電圧Vccとトルクセンサ50の動作電圧Vtとが個別にばらついた場合には、マイコン10のトルクセンサ50からのアナログ値の読み取りの基準がばらついてしまうため、トルクセンサ50からのアナログ値の読み取り誤差が大きくなる。この点、本実施形態では、電圧印加部60の基準電圧をマイコン10の動作電圧である電源電圧Vccと同電位としていることから、トルクセンサ50によって検出された電圧とトルクセンサ50からの読み取りの基準となる電源電圧Vccとの間の相対誤差を小さくすることができる。このように、アナログ値を出力するトルクセンサ50の場合、マイコン10は、電圧印加部60の基準電圧として電源電圧Vccを選択することから、電源電圧Vcc以外の電圧を基準電圧として選択する場合と比べて、トルクセンサ50から出力される電圧をより適切に読み取ることができる。
【0036】
<第2実施形態>
モータ制御装置の第2実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態との違いを中心に説明する。
【0037】
図3は、モータ制御装置1の電源回路20を示している。電源回路20は、端子部21を有している。端子部21は、操作者が電源回路20に設けられたスイッチの操作に基づいて、予め定めた識別状態Sに切り替えられる。操作者はトルクセンサ50の種類に応じてスイッチの識別状態Sを切り替える。端子部21は、アナログ値を出力するトルクセンサ50に対応した動作電圧Vtを生成する場合には識別状態Sとして例えばアナログの切替位置にし、デジタル値を出力するトルクセンサ50に対応した動作電圧Vtを生成する場合には識別状態Sとして例えばデジタルの切替位置に切り替えられる。
【0038】
切替部70は、識別状態Sに基づいて、参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccのいずれか一方を基準電圧として出力する。具体的には、切替部70は、識別状態Sがアナログの切替位置である場合には電源電圧Vccを出力し、識別状態Sがデジタルの切替位置である場合には参照電圧Vrefを出力する。これにより、切替部70は、トルクセンサ50の種類に応じて選択された参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccのいずれか一方を出力する。
【0039】
第2実施形態の作用及び効果を説明する。
(7)切替部70は、トルクセンサ50の種類に応じた識別状態Sに基づいて、電圧印加部60の基準電圧を切り替えることができる。識別状態Sを出力するための端子部21を電源回路20に設けていることから、マイコン10に識別状態Sを出力するための構成を設けなくてもよい分、マイコン10を簡素に構成することができる。
【0040】
なお、各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・各実施形態では、電源電圧生成部90は、参照電圧生成部80により生成された参照電圧Vrefを用いて電源電圧Vccを生成したが、これに限らない。例えば、電源電圧生成部90は、プリレギュレータを用いることや抵抗分割などを用いることによって、バッテリ電圧Vから定電圧である電源電圧Vccを生成するようにしてもよい。また、この場合、参照電圧生成部80は、電源電圧生成部90により生成された電源電圧Vccを用いて参照電圧Vrefを生成するようにしてもよい。
【0041】
・電圧印加部60は、オペアンプ61及びトランジスタ62によって構成していたが、これに限らない。例えば、電圧印加部60は、抵抗分割などにより構成していてもよい。
・各実施形態では、識別情報I及び識別状態Sは、「0」や「1」を示す情報であったが、これに限らない。例えば、識別情報I及び識別状態Sは、トルクセンサ50の規格を示す文字列であってもよい。この場合、切替部70は、識別情報I及び識別状態Sの文字列を読み取って基準電圧を切り替える。
【0042】
・第1実施形態では、マイコン10は、イグニッションスイッチ31がオンされたタイミングで、識別情報Iを切替部70に出力したが、これに限らない。例えば、マイコン10は、イグニッションスイッチ31がオンされている期間に間欠的に識別情報Iを切替部70に出力するようにしてもよい。
【0043】
・電源回路20は、参照電圧生成部80及び電源電圧生成部90を備えていてもよい。
・各実施形態では、切替部70は、識別情報I及び識別状態Sに基づいて、参照電圧Vrefあるいは電源電圧Vccの2つの電圧のうちいずれか一方を選択して基準電圧として出力したが、これに限らない。例えば、切替部70は、3つ以上の電圧を取得するとともに、識別情報I及び識別状態Sに基づいて、取得した3つ以上の電圧のうちいずれか1つを選択して基準電圧として出力するようにしてもよい。
【0044】
・各実施形態では、切替部70は、トルクセンサ50の出力信号の出力態様の種類に応じた識別情報I及び識別状態Sに基づいて、電圧印加部60の基準電圧を切り替えたが、これに限らない。
【0045】
トルクセンサ50には、検出された操舵トルクThに基づいた出力信号の出力態様が同じであっても、動作するために必要とされる動作電圧Vtが異なることがある。例えば、仕様の異なるトルクセンサ50や操舵トルクThを測定する測定対象が異なるトルクセンサ50では、たとえ出力態様が同じであっても動作するために必要とされる動作電圧Vtが異なることがある。このような場合でも、トルクセンサ50の仕様や測定対象の違いに応じた複数の基準電圧を切替部70に入力しておき、切替部70は、識別情報I及び識別状態Sに基づいて、電圧印加部60の基準電圧を切り替えるようにしてもよい。
【0046】
トルクセンサ50には、磁歪式や圧電式などの操舵トルクThを検出する方式の異なるものがある。このようなトルクセンサ50では、動作するために必要とされる動作電圧Vtが異なることがある。このような場合でも、操舵トルクThを検出する方式に応じた複数の基準電圧を切替部70に入力しておき、切替部70は、識別情報I及び識別状態Sに基づいて、電圧印加部60の基準電圧を切り替えるようにしてもよい。
【0047】
・各実施形態では、電源回路20の電圧印加部60によって動作電圧Vtをトルクセンサ50に印加したが、これに限らない。例えば、電源回路20は、動作電圧Vtを回転角センサに印加してもよいし、動作電圧Vtを車速センサに印加してもよい。この場合、モータ制御装置1は、回転角センサに基づいて、モータを制御すればよい。
【0048】
・各実施形態では、本実施形態のモータ制御装置が搭載される車両は、車両駆動源にエンジンを採用するいわゆる内燃機関を有する車両であってもよいし、車両駆動源にモータを採用するいわゆる電動車両であってもよい。なお、電動車両の場合、始動スイッチは、車両駆動源としてのモータを始動するスイッチである。
【符号の説明】
【0049】
1…モータ制御装置、10…マイコン、11…記憶部、20…電源回路、21…端子部、30…バッテリ、31…イグニッションスイッチ、40…モータ、50…トルクセンサ、60…電圧印加部、61…オペアンプ、62…トランジスタ、70…切替部、80…参照電圧生成部、90…電源電圧生成部、91…オペアンプ、I…識別情報、L…給電線、N1,N2,N3,N4…ノード、S…識別状態、Th…操舵トルク、V…バッテリ電圧、Vcc…電源電圧、Vg…ゲート電圧、Vr…帰還電圧、Vref…参照電圧、Vt…動作電圧。
図1
図2
図3