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特許7225823電力の取引管理方法、プログラム、及び電力の取引管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】電力の取引管理方法、プログラム、及び電力の取引管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230214BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019008547
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020119143
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】木下 尚也
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164900(JP,A)
【文献】特開2010-244107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0103468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電事業者が有する発電事業者用アカウントと需要家が有する需要家用アカウントとをデータベース上の分散型台帳に記憶して管理する取引管理サーバと、証書発行サーバと、を互いにネットワークを介して接続されているシステムを用いて、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する前記発電事業者が、前記需要家に対して電力を売った際に、前記需要家が前記発電手段を利用していることを証する環境価値証書を前記需要家の端末に提供する電力の取引管理方法であって、
前記取引管理サーバは、
前記発電事業者の発電事業者電力メータから受信した逆潮流電力量データに基づいて、前記逆潮流電力量データに相当する量の環境価値トークンを前記発電事業者用アカウントに付与する付与ステップと、
前記発電事業者と前記需要家との間で取引が成立した場合に、前記データベース上の前記発電事業者用アカウントから前記需要家用アカウントに前記環境価値トークンを移動する移動ステップと、を備え、
前記証書発行サーバは、
前記需要家の端末から前記環境価値証書の申請指示を受け付けた場合に、前記発電事業者用アカウントから前記需要家用アカウントに移動された前記環境価値トークンに基づいて、前記環境価値証書を発行し、前記環境価値証書を前記需要家の端末に送信する発行ステップと、を備えたことを特徴とする電力の取引管理方法。
【請求項2】
前記発行ステップは、前記需要家用アカウントに移動された前記環境価値トークンに含まれる発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて前記環境価値証書を発行することを特徴とする請求項1に記載の電力の取引管理方法。
【請求項3】
前記証書発行サーバは、
前記需要家の端末から前記環境価値証書の申請指示を受け付けた場合に、前回発行した時点での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲とは別に、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断する判断ステップを備え、
前記発行ステップは、前記判断ステップによる判断の結果として、前記追加して利用した利用日時範囲がある場合には、前記追加して利用した利用日時範囲での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて前記環境価値証書を発行することを特徴とする請求項2に記載の電力の取引管理方法。
【請求項4】
前記証書発行サーバは、
前記環境価値証書の発行日時を履歴情報として記憶する記憶ステップを備えたことを特徴とする請求項3に記載の電力の取引管理方法。
【請求項5】
前記発行ステップは、前記判断ステップによる判断の結果として、前記追加して利用した利用日時範囲がない場合には、新たに環境価値証書を発行しないことを特徴とする請求項3に記載の電力の取引管理方法。
【請求項6】
前記発行ステップにより前記環境価値証書を発行した場合には、前記データベース上の前記需要家用アカウントから手数料に相当する取引値の環境価値トークンを減算することにより、前記データベース上の親アカウントに前記取引値の環境価値トークンを返却する返却ステップを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいづれか一項に記載の電力の取引管理方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいづれか一項に記載の電力の取引管理方法における各ステップをプロセッサに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
発電事業者が有する発電事業者用アカウントと需要家が有する需要家用アカウントとをデータベース上の分散型台帳に記憶して管理する取引管理サーバと、証書発行サーバと、を互いにネットワークを介して接続されているシステムを用いて、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する前記発電事業者が、前記需要家に対して電力を売った際に、前記需要家が前記発電手段を利用していることを証する環境価値証書を前記需要家の端末に提供する電力の取引管理システムであって、
前記取引管理サーバは、
前記発電事業者の発電事業者電力メータから受信した逆潮流電力量データに基づいて、前記逆潮流電力量データに相当する量の環境価値トークンを前記発電事業者用アカウントに付与する付与手段と、
前記発電事業者と前記需要家との間で取引が成立した場合に、前記データベース上の前記需要家用アカウントに前記環境価値トークンを移動する移動手段と、を備え、
前記証書発行サーバは、
前記需要家の端末から前記環境価値証書の申請指示を受け付けた場合に、前記発電事業者用アカウントから前記需要家用アカウントに移動された前記環境価値トークンに基づいて、前記環境価値証書を発行し、前記環境価値証書を前記需要家の端末に送信する発行手段と、を備えたことを特徴とする電力の取引管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを証する環境価値証書を需要家に提供するのに好適な電力の取引管理方法、プログラム、及び電力の取引管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、世界的に自然エネルギや、石油や石炭などの化石燃料を燃やすことなく電力を供給する、いわゆるCOフリーの電力に対する需要が高まっている。
従来の化石燃料を使った火力発電の代替となるこれらのエネルギは、COの排出を削減できることについても価値があるため、電力が持つ「環境価値(または環境付加価値)」と呼ばれている。
政府機関や各自治体では、二酸化炭素の排出量を削減していくために、この環境価値を電力取引と切り離した上で、発電事業者と需要家の間で環境価値の取引や売買ができるような制度が運用されている。
【0003】
日本においては、環境価値の証明について、以下の制度が知られている。
(1)グリーン電力証書は、第三者機関である一般財団法人日本エネルギー経済研究所の「グリーンエネルギー認証センター」が認証基準の策定や設備認定などを行うために採用され、環境価値の取引の方法としても知られている。証書の発行事業者には多数の団体が登録されており、その中には新電力として登録する企業もある。購入した証書に相当する量が、間接的にグリーン電力を使用したこととしてみなされる仕組みである。
(2)J-クレジットは、経済産業省、環境省、農林水産省によって運用され、再エネ電源で創ったクリーンなエネルギだけでなく、省エネ機器への新調で減らすことができたエネルギや、森林管理や植林などで二酸化炭素を吸収した量といった、より広域なエコ・アクションについてクレジットを発行するものである。このクレジットは、グリーン電力証書と同じく、二酸化炭素排出量の削減義務の履行が必要な企業などに売却することが可能である。このJ-クレジット制度は、既存の国内クレジット制度およびオフセット・クレジット制度(J-VER制度)を統合、引き継ぐ形で生まれたという経緯がある。
(3)非化石証書は、非化石電源により発電された電気について、非化石価値を分離し、証書にしたものであり、非化石電源には、再生可能エネルギ、原子力が含まれる。非化石証書には、FIT制度における買取期間が2019年11月に終了を迎えことから、FIT電源に関する新たなビジネスニーズが高まっている。
【0004】
ところで、上述した環境価値の証明の一例として、価値情報を発行する技術が特許文献1に開示されている。
特許文献1には、仮想通貨としても機能する価値情報を用いたシステムを提供することを目的として、価値情報の取引所のサーバコンピュータは、暗号作成手段を備えており、この暗号作成手段によって、買い取った電力供給保証情報を価値の裏付けとして暗号化された価値情報(仮想通貨)を発行する。企業が商取引の通貨として、取引所が発行する価値情報に仮想通貨を使用したい場合は、価値情報を購入するため、クライアントコンピュータから取引所のサーバコンピュータに通信手段を介してアクセスするという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-031630公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した制度(1)~(3)のいずれの場合も、発電事業者と需要家の間には第三者が介在する。また、それぞれの制度には以下のとおり問題点がある。
(1)グリーン電力証書、J-クレジットでは、非FIT電源が対象であり、取引量が少ない。また、需要家にとって、その証書がどのような手段と状況で得られたものか分かりづらいといった問題があった。
(2)非化石証書では、発電種別が特定できないといった問題があった。また、この制度では小売電気事業者向けであり、需要家が直接に取引するものではない。
また、特許文献1にあっては、仮想通貨としても機能する価値情報を発行する取引所のように第三者が介在している。
そこで、需要家に届く環境価値に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することが切望されている。
本発明の一実施形態は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するたに、請求項1記載の発明は、発電事業者が有する発電事業者用アカウントと需要家が有する需要家用アカウントとをデータベース上の分散型台帳に記憶して管理する取引管理サーバと、証書発行サーバと、を互いにネットワークを介して接続されているシステムを用いて、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する前記発電事業者が、前記需要家に対して電力を売った際に、前記需要家が前記発電手段を利用していることを証する環境価値証書を前記需要家の端末に提供する電力の取引管理方法であって、前記取引管理サーバは、前記発電事業者の発電事業者電力メータから受信した逆潮流電力量データに基づいて、前記逆潮流電力量データに相当する量の環境価値トークンを前記発電事業者用アカウントに付与する付与ステップと、前記発電事業者と前記需要家との間で取引が成立した場合に、前記データベース上の前記発電事業者用アカウントから前記需要家用アカウントに前記環境価値トークンを移動する移動ステップと、を備え、前記証書発行サーバは、前記需要家の端末から前記環境価値証書の申請指示を受け付けた場合に、前記発電事業者用アカウントから前記需要家用アカウントに移動された前記環境価値トークンに基づいて、前記環境価値証書を発行し、前記環境価値証書を前記需要家の端末に送信する発行ステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る取引管理システムの概略的な構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る取引管理システムに用いる取引管理サーバの概略的な構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る取引管理システムの概略的な機能を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る取引管理システムにより管理される分散型台帳におけるブロックチェーンを示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る取引管理システムを用いた取引の流れを示すシーケンス図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る取引管理サーバを用いた取引の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
本発明は、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証するために、以下の構成を有する。
すなわち、本発明の電力の取引管理方法は、発電事業者用アカウントと需要家用アカウントとを管理する分散型台帳ブロックチェーンネットワークを用いて、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者が、需要家に対して電力を売った際に、需要家が発電手段を利用していることを証する環境価値証書を需要家に提供する電力の取引管理方法であって、発電事業者の逆潮流電力量データに基づいて、逆潮流電力量データに相当する量の環境価値トークンを発電事業者用アカウントに付与する付与ステップと、発電事業者と需要家との間で取引が成立した場合に、発電事業者用アカウントから需要家用アカウントに環境価値トークンを移動する移動ステップと、需要家から環境価値証書の発行要求を受け付けた場合に、需要家用アカウントに移動された環境価値トークンに基づいて、環境価値証書を発行する発行ステップと、を備えたことを特徴とする。
以上の構成を備えることにより、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することができる。
上記記載の本発明の特徴について、以下の図面を用いて詳細に解説する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
上記の本発明の特徴に関して、以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
<取引管理システム>
図1は、本発明の第1実施形態に係る取引管理システムの概略的な構成を示すブロック図である。
取引管理システム1は、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2、取引管理サーバ10、発電事業者パソコン12、発電事業者電力メータ14、需要家パソコン18を備え、互いにネットワークN1を介して接続されている。
分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、ウォレット上のアドレスであるアカウントとして、プラットフォーム提供事業者が有する親アカウント36、発電事業者Hが有する発電事業者用アカウント38、需要家Jが有する需要家用アカウント40を記憶しており、取引に際してそれぞれ環境価値トークンに引き渡しを行っている。
【0012】
入出金サーバ4は、需要家パソコン18から需要家用アカウント40と金額X円を受信する。入出金サーバ4は、需要家パソコン18から受信した需要家用アカウント40に対して金額X円を入金し、データベースDB30上の需要家用アカウント40に対応した金額X円を記憶する。入出金サーバ4は、取引管理サーバ10から受信した約定受付指示に応じて、約定受付を行う。
入出金サーバ4は、需要家Jの口座からX円を引き出し、発電事業者Hの口座にX円を入金する。この際、入出金サーバ4は、例えば、手数料として1注文当たり105円を需要家Jの口座、及び発電事業者Hの口座から定額徴収する。
入出金サーバ4は、発電事業者パソコン12から受信した発電事業者IDをキーとして、変換テーブルを参照して発電事業者アカウントを取得する。入出金サーバ4は、発電事業者Hの銀行の口座番号に金額X円を出金し、データベースDB30上の発電事業者用アカウントに対応した預金額から金額X円を減算する。入出金サーバ4は、出金処理を行った旨のメッセージを含む電子メールを発電事業者パソコン12に送信する。
【0013】
証書発行サーバ8は、需要家パソコン18から受信した需要家用アカウント40と環境価値証書の申請指示を受け付ける。証書発行サーバ8は、環境価値証書の申請指示に応じて、需要家用アカウント40に対する最新の環境価値トークンの内容を含む環境価値証書を生成して、需要家パソコンに送信する。
証書発行サーバ8は、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に付与される環境価値トークンを参照して、環境価値証書を生成する。証書発行サーバ8は、例えば後述するブロック#005に記載された入力側(In)の発電事業者用アカウント38、出力側(Out)の需要家用アカウント40をキーとして、変換テーブルを参照してそれぞれ発電事業者名、需要家名に変換し、ある発電事業者名の発電事業者Hから、ある需要家名の需要家Jがあるトークン値(value)を購入したことを表す環境価値証書を生成する。
【0014】
取引管理サーバ10は、発電事業者用アカウントと需要家用アカウントとを管理するとともに、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者が、需要家に対して電力を売った際に、需要家が当該発電手段を利用していることを証する環境価値証書を需要家に提供する。
なお、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2を、電力会社が運営するローカルネットワーク内容に設けることで、非公開の分散型台帳とするように構成してもよい。
発電事業者パソコン12は、発電事業者Hが操作可能なパーソナルコンピュータである。
発電事業者電力メータ14は、発電事業者Hが例えば太陽光パネルを用いて発電した電力を配電線16に逆潮流により供給している電力を計量するメータである。
需要家パソコン18は、需要家Jが操作可能なパーソナルコンピュータである。
【0015】
<取引管理サーバ>
図2は、本発明の第1実施形態に係る取引管理システムに用いる取引管理サーバの概略的な構成を示すブロック図である。
取引管理サーバ10は、操作部22、通信部24、表示制御部26、表示部28、データベースDB30、主制御部32、を備えている。
操作部22は、キーボードやマウスなどを備えている。
通信部24は、発電事業者パソコン12との間でネットワークN1を介してデータを通信するとともに、需要家パソコン18との間でネットワークN1を介してデータを通信する。
【0016】
表示制御部26は、主制御部32から入力される画像をVRAM上に描画して表示部28に表示させる。
表示部28は、表示制御部26がVRAM上に描画した画像を表示する。
データベースDB30は、プラットフォーム提供事業者が有する親アカウント36、発電事業者Hが有する発電事業者用アカウント38、需要家Jが有する需要家用アカウント40を記憶する。
【0017】
主制御部32は、内部にCPU(central processing unit)32a、ROM(read only memory)32b、RAM(random access memory)32cを備えている。CPU32aは、ROM32bからオペレーティングシステムOSを読み出してRAM32c上に展開してOSを起動し、OS管理下において、ROM32bからプログラム(処理モジュール)を読み出し、各種処理を実行する。
なお、取引管理システム1に備えた入出金サーバ4、証書発行サーバ8も取引管理サーバ10と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0018】
<機能ブロック図>
図3は、本発明の第1実施形態に係る取引管理システムの概略的な機能を示す機能ブロック図である。
<環境価値トークンの流れ>
図3に示す分散型台帳における環境価値トークンの流れについて説明する。
分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、ウォレット上のアドレスであるアカウントとして、プラットフォーム提供事業者が有する親アカウント36、発電事業者Hが有する発電事業者用アカウント38、需要家Jが有する需要家用アカウント40を記憶しており、取引に際してそれぞれ環境価値トークンに引き渡しを行っている。
(1)付与ステップS2では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2において、親アカウント36が発電事業者電力メータ14から受信した逆潮流電力量データDに基づいて、逆潮流電力量データDに相当する量の環境価値トークン37を発電事業者用アカウント38に付与する。
【0019】
(2)移動ステップS4では、発電事業者Hと需要家Jとの間で需要家Jが必要とする必要電力量に係る売買が成立した場合に、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に環境価値トークン39を移動する。
(3)返却ステップS6では、需要家Jからの要求に応じて、親アカウント36が環境価値証書を発行する際に、需要家用アカウント40から必要電力量に相当する量の環境価値トークンを親アカウント36に返却する。
【0020】
図3に示す各処理部の構成及び動作について説明する。
図1に示すシステムに設けられた各サーバにおいて、取引管理サーバ10は付与部10a、移動部10bを備え、証書発行サーバ8は発行部8c、判断部8dを備え、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は返却部2aを備えている。
主制御部32が制御する電力の取引管理方法により、発電事業者用アカウント38と需要家用アカウント40とを管理する分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2を用いて、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者Hが、需要家Jに対して電力を売った際に、需要家Jが発電手段を利用していることを証する環境価値証書を需要家Jに提供する。
付与部10aは、発電事業者Hの逆潮流電力量データに基づいて、逆潮流電力量データに相当する量の環境価値トークンを発電事業者用アカウント38に付与する(S18)。
移動部10bは、発電事業者Hと需要家Jとの間で取引が成立した場合に、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に環境価値トークンを移動する(S38)。
発行部8cは、需要家Jから環境価値証書の発行要求を受け付けた場合に、需要家用アカウント40に移動された環境価値トークンに基づいて、環境価値証書を発行する(S54)。
【0021】
詳しくは、発行部8cは、需要家用アカウント40に移動された環境価値トークンに含まれる発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行する。
判断部8dは、需要家Jから環境価値証書の発行要求を受け付けた場合に、前回発行した時点での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲とは別に、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断する。この際、判断部8dは、前回発行した時点での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲とは別に、記憶部8eから取得した履歴情報である環境価値証書の発行日時に、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断する。
発行部8cは、判断部8dによる判断の結果として、追加して利用した利用日時範囲がある場合には、追加して利用した利用日時範囲での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行する。
記憶部8eは、環境価値証書の発行日時を履歴情報として記憶する。
発行部8cは、判断部8dによる判断の結果として、追加して利用した利用日時範囲がない場合には、新たに環境価値証書を発行しない。
【0022】
返却部2aは、発行部8cにより環境価値証書を発行した場合には、需要家用アカウント40から手数料に相当する取引値のトークンを減算することにより、親アカウントに取引値の環境価値トークンを返却する。
【0023】
<環境価値トークンの構成>
図4は、本発明の第1実施形態に係る取引管理システムにより管理される分散型台帳におけるブロックチェーンを示す図である。
ブロックチェーンは、逐次発生する取引情報などをブロック単位で接続することにより成立する。
すなわち、ブロックチェーン技術では、取引記録や契約など、内容を保証したいデータ(の集合)をブロックという単位で扱う。このブロックを所定の方法で一繋ぎすなわちチェーン状に接続したものがブロックチェーンである。ブロックチェーンの生成にあたってはハッシュ関数が用いられており、ハッシュ関数は任意長の任意データに対して固定長のハッシュ値を求めるための関数である。
ハッシュ関数には一方向性という特徴があり、任意データからハッシュ値を求めることは容易であるが、逆に、ハッシュ値から元のデータを復元することは現実的には不可能であるとされる。
【0024】
図4に示す各ブロックには、ブロック番号、トランザクションを記載したヘッダ(Header)、1つ前のブロックのハッシュ値を記載したプレハッシュ(Prev Hash)、入力側を表すイン(In)、出力側を表すアウト(Out)、値を表すバリュー(value)を記載したトランザクション(Transaction)が記載されている。なお、ハッシュ値は、ブロックチェーン技法において、トランザクションIDとも呼ばれている。
なお、バリュー(value)は、電力メータの最小単位が少数点以下2位にあるため、0.01刻みに変化することを可能とする。
【0025】
ブロックチェーンに対して新たなブロックを接続するためには、チェーンにおける直前のブロックのハッシュ値と、接続すべき新たなブロックのトランザクションデータを1まとめにしたマークルルートと呼ばれるデータ、Nonce値と呼ばれる数値(例えば32bit固定長数値)を接続したデータに対してハッシュ値(例えば、SHA-256ハッシュ)を計算した時にその上位数ビット(例えば10Bit)が0となるような、Nonce値を求める。
ブロックチェーンに対して新たなブロックを接続するためには、チェーンにおける直前のブロックのハッシュ値と、接続すべき新たなブロックのトランザクションデータを1まとめにしたマークルルートと呼ばれるデータ、Nonce値と呼ばれる数値(例えば32bit固定長数値)を接続したデータに対してハッシュ値(例えば、SHA-256ハッシュ)を計算した時にその上位数ビット(例えば10Bit)が0となるような、Nonce値を求める。
【0026】
このようなブロックチェーンは、各ブロックが直前のブロックのハッシュ値を持っているため、先端の(起点となる最古の)ブロックから順に辿ることで、全てのブロックの正当性を確認することが出来る。
なお途中のブロックを改ざんしようとすると、そのブロック以降全てのブロックのNonce値を再計算する必要があるが、上記した総当たりを全てのブロックについて行うしかないため、計算量的に不可能である。
このような特徴を有することで、ブロックチェーンの信頼性は担保されている。
【0027】
(1)図4に示すブロック#002(Block#002)は、上述した付与ステップにより、親アカウント38から発電事業者用アカウント38に付与される環境価値トークンである。ブロック#002には、ブロック番号、トランザクションを記載したヘッダ(Header)、1つ前のブロックのハッシュ値を記載したプレハッシュ(Prev Hash)、入力側(In)を親アカウント38、出力側(Out)を発電事業者、値(value)として例えば1トークン(Token)を記載したトランザクション(Tr#002-01)が記載されている。
【0028】
(2)図4に示すブロック#005(Block#005)は、上述した移動ステップにより、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に付与される環境価値トークンである。ブロック#005には、ブロック番号、トランザクションを記載したヘッダ(Header)、1つ前のブロックのハッシュ値を記載したプレハッシュ(Prev Hash)、入力側(In)を発電事業者用アカウント38、出力側(Out)を需要家用アカウント40、値(value)として例えば1トークン(Token)を記載したトランザクション(Tr#005-01)が記載されている。
(3)図4に示すブロック#010(Block#010)は、上述した付与ステップにより、需要家用アカウント40から親アカウント38に付与される環境価値トークンである。ブロック#010には、ブロック番号、トランザクションを記載したヘッダ(Header)、1つ前のブロックのハッシュ値を記載したプレハッシュ(Prev Hash)、入力側(In)を需要家用アカウント40、出力側(Out)を親アカウント38、値(value)として例えば1トークン(Token)を記載したトランザクション(Tr#010-01)が記載されている。
【0029】
分散型台帳へ入力側、出力側、値などを記録することで、分散型台帳のメリットの1つとして、トレーサビリティに優れている。取引の透明性を確保することで、需要家Jは自身が確かに環境価値の高い発電事業者Hから環境価値を購入していることを明らかにできる。
これにより、需要家Jに届く環境価値にどの発電事業者Hと取引したかを明かに示すことができる。
【0030】
<シーケンス図>
図5は、本発明の第1実施形態に係る取引管理システムを用いた取引の流れを示すシーケンス図である。なお、図5に示す各部はスマートコントラクトの処理として実装されてもよい。
ステップS10では、需要家パソコン18は、電力会社が管理する取引管理サーバ10のプラットフォームに開設されている口座のアカウントである需要家用アカウント40を指定して日本円(JPY)の金額X円を入金する。
ステップS12では、取引管理サーバ10の入出金サーバ4は、需要家パソコン18から需要家用アカウント40と金額X円を受信する。
ステップS14では、入出金サーバ4は、需要家パソコン18から受信した需要家用アカウント40に対して金額X円を入金し、データベースDB30上の需要家用アカウント40に対応した金額X円を記憶する。
【0031】
<付与処理>
ステップS16では、発電事業者電力メータ14は、発電事業者Hから配電線16に逆潮流で供給した電力を計量して、電力値KWAに当該電力メータのメータIDを付加して発電実績データとし、取引管理サーバ10へ送信する。
ステップS18では、取引管理サーバ10の取引管理サーバ10は、発電事業者電力メータ14から電力値KWAと当該電力メータのメータIDを受信する。さらに、取引管理サーバ10は、受信した電力値KWAに応じた環境価値トークンの値を前のブロックのハッシュ値を用いて算出し、受信したメータIDに応じた発電事業者用アカウントを求めることで、環境価値トークンの付与を行う。
ステップS20では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、環境価値トークンの値を発電事業者用アカウントに関連付けしてデータベースDB30上の分散型台帳に記録する。
【0032】
<移動処理>
ステップS22では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、親アカウントから発電事業者用アカウントへ環境価値トークンの値を移動する。
ステップS24では、発電事業者パソコン12は、販売可能な電力についての時間帯、電力値KWA、発電事業者Hに固有の発電事業者IDを含む売り注文データを取引管理サーバ10へ送信する。
<買い注文>
ステップS26では、取引管理サーバ10の取引管理サーバ10は、発電事業者パソコン12から受信した売り注文データを受付て、RAM32cのワークエリア、及びデータベースDB30に記憶する。
一方、ステップS28では、需要家パソコン18は、購入可能な電力についての時間帯、電力値KWA、需要家Jに固有の需要家IDを含む買い注文データを取引管理サーバ10へ送信する。
この際、取引管理サーバ10は、トランザクションID(ハッシュ値)を需要家パソコン18に渡す。
ステップS30では、取引管理サーバ10の取引管理サーバ10は、需要家パソコン18から受信した買い注文データを受付て、RAM32cのワークエリア、及びデータベースDB30に記憶する。
【0033】
<約定処理>
ステップS32では、取引管理サーバ10は、約定処理として、発電事業者Hの売り注文データと需要家Jの買い注文データを突き合わせて、需要家Jの買い注文データが満足される場合に約定する。
取引管理サーバ10は、約定処理として、板寄せ方式、又はザラバ方式により約定する。
板寄せ方式では、以下3つの条件を満たす値段で売買が成立する。
(条件1)成行の売り注文と買い注文すべてについて約定する。
(条件2)約定値段より高い買い注文と、約定値段より低い売り注文がすべて約定する。
(条件3)約定値段において、売り注文または買い注文のいずれか一方すべてについて約定する。
ザラバ方式では、既に発注されている売り注文(または買い注文)の値段と、あらたに発注された買い注文(または売り注文)の値段が合致したときに売買が成立する。
取引管理サーバ10は、板寄せ方式、又はザラバ方式により約定、又は非成立であった結果をRAM32cのワークエリア、及びデータベースDB30に記憶する。
【0034】
ステップS34では、取引管理サーバ10は、ステップS32における約定処理の結果、約定が成立したか否かを判断する。約定が成立していない場合は、ステップS36に進み、該当する注文を取り消す。
一方、約定が成立した場合は、ステップS38に進み、取引管理サーバ10は、環境価値トークンを移動する旨のトークン移動指示を発生して、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2に出力する。同時に、取引管理サーバ10は、約定受付指示を発生して、入出金サーバ4に出力する。
【0035】
ステップS40では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、発電事業者用アカウントから需要家用アカウント40に環境価値トークンを移動することを表すトークン移動指示をデータベースDB30上の分散型台帳に記録する。
ステップS42では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、上述した移動ステップS4に示すように、発電事業者Hと需要家Jとの間で需要家Jが必要とする必要電力量に係る売買が成立した場合に、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に環境価値トークンを移動する。
ここで、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、図4に示すブロック#005(Block#005)のように、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に環境価値トークンが移動する。ブロック#005には、ブロック番号、トランザクションを記載したヘッダ(Header)、1つ前のブロックのハッシュ値を記載したプレハッシュ(Prev Hash)、入力側(In)を発電事業者用アカウント38、出力側(Out)を需要家用アカウント40、値(value)として例えば1トークン(Token)を記載したトランザクション(Tr#005-01)が記載されている。
【0036】
一方、ステップS44では、入出金サーバ4は、取引管理サーバ10から受信した約定受付指示に応じて、約定受付を行う。
ステップS46では、入出金サーバ4は、需要家Jの口座からX円を引き出し、発電事業者Hの口座にX円を入金する。この際、入出金サーバ4は、手数料として1注文当たり105円を需要家Jの口座、及び発電事業者Hの口座から定額徴収する。なお、定額徴収に代わって、取引額X円の例えば3%の手数料をそれぞれの口座から徴収してもよい。ステップS46での処理結果は、データベースDB30に記憶する。
【0037】
<環境価値証書の申請>
ステップS50では、需要家パソコン18は、取引管理サーバ10のWebアドレス(URL)を指定してホームページにアクセスし、ホームページ上に配置された「環境価値証書の申請」タブをクリックすると、需要家用アカウント40を入力するための入力エリアが表示される。この入力エリアに需要家Jに固有の需要家用アカウント40を入力し、「送信」ボタンをクリックすると、需要家用アカウント40と環境価値証書の申請指示が取引管理サーバ10に送信される。
ステップS52では、取引管理サーバ10の証書発行サーバ8は、需要家パソコン18から受信した需要家用アカウント40と環境価値証書の申請指示を受け付ける。
【0038】
ステップS54では、証書発行サーバ8は、環境価値証書の申請指示に応じて、需要家用アカウント40に対する最新の環境価値トークンの内容を含む環境価値証書を生成して、需要家パソコンに送信する。
ここで、証書発行サーバ8は、図4に示すブロック#005(Block#005)、すなわち、上述した移動ステップにより、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に付与される環境価値トークンを参照して、環境価値証書を生成する。証書発行サーバ8は、ブロック#005に記載された入力側(In)の発電事業者用アカウント38、出力側(Out)の需要家用アカウント40をキーとして、変換テーブルを参照してそれぞれ発電事業者名、需要家名に変換し、ある発電事業者名の発電事業者Hから、ある需要家名の需要家Jがあるトークン値(value)を購入したことを表す環境価値証書を生成する。
ステップS56では、需要家パソコン18は、証書発行サーバ8から受信した環境価値証書をモニタに表示するとともに、プリンタに印刷したり、ハードディスクに記憶したりしてもよい。
【0039】
一方、ステップS58では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、証書発行サーバ8が環境価値証書を生成したことを受けて、分散型台帳に記録する。すなわち、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、需要家用アカウント40から親アカウントに環境価値トークンを移動することを表すトークン移動指示をデータベースDB30上の分散型台帳に記録する。
ステップS60では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、図4に示すブロック#010(Block#010)のように、需要家用アカウント40から親アカウント38に環境価値トークンが移動する。ブロック#010には、ブロック番号、トランザクションを記載したヘッダ(Header)、1つ前のブロックのハッシュ値を記載したプレハッシュ(Prev Hash)、入力側(In)を需要家用アカウント40、出力側(Out)を親アカウント38、値(value)として例えば1トークン(Token)を記載したトランザクション(Tr#010-01)が記載されている。
【0040】
<出金申請>
ステップS70では、発電事業者パソコン12は、発電事業者Hに固有の発電事業者ID、出金金額X円、出金先の例えば銀行の口座番号を含む出金申請データを取引管理サーバ10に送信する。
ステップS72では、取引管理サーバ10の入出金サーバ4は、発電事業者パソコン12から出金申請データを受信する。
ステップS74では、入出金サーバ4は、発電事業者パソコン12から受信した発電事業者IDをキーとして、変換テーブルを参照して発電事業者アカウントを取得する。入出金サーバ4は、発電事業者Hの銀行の口座番号に金額X円を出金し、データベースDB30上の発電事業者用アカウントに対応した預金額から金額X円を減算する。入出金サーバ4は、出金処理を行った旨のメッセージを含む電子メールを発電事業者パソコン12に送信する。
ステップS76では、発電事業者パソコン12は、取引管理サーバ10から受信した電子メールを確認した上で、発電事業者Hの銀行口座にアクセスして銀行口座の預金金額を表示する。
【0041】
第1実施形態によれば、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することができる。
また、環境価値トークンに含まれる発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行することで、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することができる。
さらに、親アカウントは環境価値証書を発行した際の手数料に相当する取引値を需要家用アカウントから得ることができる。
【0042】
<第2実施形態>
<シーケンス図>
図6は、本発明の第2実施形態に係る取引管理サーバを用いた取引の流れを示すシーケンス図である。
本発明の第2実施形態に係る取引管理サーバ10は、第1実施形態において説明した図1図5に示す技術的事項に適用することとする。また、本実施形態では、図5に示すステップS10~S42までの処理を実行した後の処理が図6に示すシーケンス図に示してあることとする。
【0043】
<環境価値証書の申請>
ステップS100では、需要家パソコン18は、取引管理サーバ10のWebアドレス(URL)を指定してホームページにアクセスし、ホームページ上に配置された「環境価値証書の申請」タブをクリックすると、需要家用アカウント40を入力するための入力エリアが表示される。この入力エリアに需要家Jに固有の需要家用アカウント40を入力し、「送信」ボタンをクリックすると、需要家用アカウント40と環境価値証書の申請指示が取引管理サーバ10に送信される。
ステップS102では、取引管理サーバ10の証書発行サーバ8は、需要家パソコン18から受信した需要家用アカウント40と環境価値証書の申請指示を受け付ける。
【0044】
ステップS104では、証書発行サーバ8は、需要家パソコン18から受信した需要家用アカウント40を含む確認指示を分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2へ出力することにより、当該需要家用アカウント40への追加内容を確認する。
ステップS106では、分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2は、確認指示に含まれる需要家用アカウント40への追加内容を確認し、確認結果を証書発行サーバ8へ出力する。
ステップS108では、証書発行サーバ8は、前回発行時から追加があるか否かを判断する。ここで、判断部8dは、需要家Jから環境価値証書の発行要求を受け付けた場合に、前回発行した時点での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲とは別に、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断する。この際に、判断部8dは、記憶部8eから取得した履歴情報である環境価値証書の発行日時に、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断する。
証書発行サーバ8は、前回発行時から追加がある場合には、ステップS110に進み、一方、前回発行時から追加がない場合には、環境価値証書の申請指示に対する取消指示を需要家パソコン18に送信する。
ステップS112では、需要家パソコン18は、発行部8cは、判断部8dによる判断の結果として、追加して利用した利用日時範囲がない場合には、新たに環境価値証書を発行しない。すなわち、ステップS100において需要家パソコン18が行った環境価値証書の申請指示を取り消す。
【0045】
ステップS110では、証書発行サーバ8は、環境価値証書の申請指示に応じて、需要家用アカウント40に対する最新の環境価値トークンの内容を含む環境価値証書を生成して、需要家パソコンに送信する。
ここで、証書発行サーバ8は、図4に示すブロック#005(Block#005)、すなわち、上述した移動ステップにより、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に付与される環境価値トークンを参照して、環境価値証書を生成する。証書発行サーバ8は、ブロック#005に記載された入力側(In)の発電事業者用アカウント38、出力側(Out)の需要家用アカウント40をキーとして、変換テーブルを参照してそれぞれ発電事業者名、需要家名に変換し、ある発電事業者名の発電事業者Hから、ある需要家名の需要家Jがあるトークン値(value)を購入したことを表す環境価値証書を生成する。
ステップS114では、需要家パソコン18は、証書発行サーバ8から受信した環境価値証書をモニタに表示するとともに、プリンタに印刷したり、ハードディスクに記憶したりしてもよい。
【0046】
第2実施形態によれば、追加して利用した利用日時範囲がある場合には、追加して利用した利用日時範囲での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行することができる。
また、環境価値証書の発行日時を履歴情報として記憶することで、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断することができる。
さらに、追加して利用した利用日時範囲がない場合には、新たに環境価値証書を発行しないことで、発行される環境価値証書が重複することを回避することができる。
【0047】
<本実施形態の態様例の作用、効果のまとめ>
<第1態様>
本態様の電力の取引管理方法は、発電事業者用アカウント38と需要家用アカウント40とを管理する分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2を用いて、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者Hが、需要家Jに対して電力を売った際に、需要家Jが発電手段を利用していることを証する環境価値証書を需要家Jに提供する電力の取引管理方法であって、発電事業者Hの逆潮流電力量データに基づいて、逆潮流電力量データに相当する量の環境価値トークンを発電事業者用アカウント38に付与する付与ステップ(S18)と、発電事業者Hと需要家Jとの間で取引が成立した場合に、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に環境価値トークンを移動する移動ステップ(S38)と、需要家Jから環境価値証書の発行要求を受け付けた場合に、需要家用アカウント40に移動された環境価値トークンに基づいて、環境価値証書を発行する発行ステップ(S54)と、を備えたことを特徴とする。
本態様によれば、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することができる。
【0048】
<第2態様>
本態様の発行ステップ(S54)は、需要家用アカウント40に移動された環境価値トークンに含まれる発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行することを特徴とする。
本態様によれば、環境価値トークンに含まれる発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行することで、需要家に届く環境価値証書に再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者と取引したことを明かに証することができる。
【0049】
<第3態様>
本態様の電力の取引管理方法は、需要家Jから環境価値証書の発行要求を受け付けた場合に、前回発行した時点での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲とは別に、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断する判断ステップ(S108)を備え、発行ステップ(S110)は、判断ステップ(S108)による判断の結果として、追加して利用した利用日時範囲がある場合には、追加して利用した利用日時範囲での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行することを特徴とする。
本態様によれば、追加して利用した利用日時範囲がある場合には、追加して利用した利用日時範囲での発電事業者名、需要家名、取引値、及び利用日時範囲を用いて環境価値証書を発行することができる。
【0050】
<第4態様>
本態様の電力の取引管理方法は、環境価値証書の発行日時を履歴情報として記憶する記憶ステップ(S58)を備えたことを特徴とする。
本態様によれば、環境価値証書の発行日時を履歴情報として記憶することで、追加して利用した利用日時範囲があるか否かを判断することができる。
【0051】
<第5態様>
本態様の発行ステップは、判断ステップ(S108)による判断の結果として、追加して利用した利用日時範囲がない場合には、新たに環境価値証書を発行しないことを特徴とする。
本態様によれば、追加して利用した利用日時範囲がない場合には、新たに環境価値証書を発行しないことで、発行される環境価値証書が重複することを回避することができる。
【0052】
<第6態様>
本態様の電力の取引管理方法は、発行ステップ(S54)により環境価値証書を発行した場合には、需要家用アカウント40から手数料に相当する取引値のトークンを減算することにより、親アカウントに取引値の環境価値トークンを返却する返却ステップ(S60)を備えたことを特徴とする。
本態様によれば、親アカウントは環境価値証書を発行した際の手数料に相当する取引値を需要家用アカウントから得ることができる。
【0053】
<第7態様>
本態様のプログラムは、第1態様乃至第6態様のいづれか一つに記載の各ステップをプロセッサに実行させることを特徴とする。
本態様によれば、各ステップをプロセッサに実行させることができる。
【0054】
<第8態様>
本態様の電力の取引管理システム1は、発電事業者用アカウント38と需要家用アカウント40とを管理する分散型台帳ブロックチェーンネットワーク2を用いて、再生可能エネルギを利用した発電手段により発電する発電事業者Hが、需要家Jに対して電力を売った際に、需要家Jが発電手段を利用していることを証する環境価値証書を需要家Jに提供する電力の取引管理サーバ10であって、
発電事業者Hの逆潮流電力量データに基づいて、逆潮流電力量データに相当する量の環境価値トークンを発電事業者用アカウント38に付与する付与部10aと、発電事業者Hと需要家Jとの間で取引が成立した場合に、発電事業者用アカウント38から需要家用アカウント40に環境価値トークンを移動する移動部10bと、需要家Jから環境価値証書の発行要求を受け付けた場合に、需要家用アカウント40に移動された環境価値トークンに基づいて、環境価値証書を発行する発行部8cと、を備えたことを特徴とする。
第8態様の作用、及び効果は、第1態様と同様であるので、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0055】
1…取引管理システム、2…分散型台帳ブロックチェーンネットワーク、2a…返却部、4…入出金サーバ、8…証書発行サーバ、8c…発行部、8d…判断部、8e…記憶部、10…取引管理サーバ、10a…付与部、10b…移動部、12…発電事業者パソコン、14…発電事業者電力メータ、16…配電線、18…需要家パソコン、22…操作部、24…通信部、26…表示制御部、28…表示部、30…データベースDB、32…主制御部、32a…CPU、32b…ROM、32c…RAM、36…親アカウント、37…環境価値トークン、38…親アカウント、38…発電事業者用アカウント、39…環境価値トークン、40…需要家用アカウント
図1
図2
図3
図4
図5
図6