(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール材およびプラスチックフィルム液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20230214BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20230214BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20230214BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230214BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
G02F1/1334
C08G18/67 010
C08G18/10
C09K3/10 E
(21)【出願番号】P 2019017920
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】二戸 吉徳
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 聖
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直志
(72)【発明者】
【氏名】藤村 俊伸
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109997(JP,A)
【文献】国際公開第2004/108790(WO,A1)
【文献】特開2005-202308(JP,A)
【文献】特開2016-024240(JP,A)
【文献】特開2016-024243(JP,A)
【文献】特開2009-015129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
G02F 1/1334
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属または金属塩でレーキ化した染料で表面を被覆したカーボンブラックと、
(B)下記の式1で表されるウレタン(メタ)アクリレートと、
【化1】
(式中のaは1~15の整数であり、R
1は炭素数2~14の炭化水素基であり、R
2は炭素数2~14の炭化水素基、下記の式2で表される(ポリ)エーテル基、または下記の式3で表されるポリエステル基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数2~14の炭化水素基である)
【化2】
(式中のbは1~20の整数であり、R
5は炭素数2~14の直鎖または分岐状のアルキレン基である)
【化3】
(式中のcは1~20の整数であり、R
6は炭素数2~14の炭化水素基であり、R
7は炭素数1~14の炭化水素基である)
(C)下記の式4で表されるヒドロキシ基含有メタクリレート
を含む液晶表示素子用シール材であって、
【化4】
(式中のR
8は少なくとも1つのヒドロキシ基を有する炭素数2~3のアルキル基である)
(A)の含有量が1~20質量%、(B)の含有量が40~90質量%、(C)の含有量が1~20質量%である液晶表示素子用シール材。
【請求項2】
前記の液晶表示素子用シール材が、プラスチックフィルムを基材とする液晶表示素子の封止に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示素子用シール材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶表示素子用シール材の硬化物からなる封止端部を有するプラスチックフィルム液晶表示素子。
【請求項4】
前記のプラスチックフィルム液晶表示素子において、液晶材料として高分子分散型液晶またはポリマーネットワーク液晶を用いることを特徴とする、請求項3に記載のプラスチックフィルム液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に好適なシール材と、そのシール材を用いたプラスチックフィルム液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパーソナルコンピュータをはじめとする各種電子機器の画像表示に、液晶表示素子が広く使用されている。液晶表示素子は、通常、表面に電極が設けられた一対の基材と、それらの間に挟持された枠状のシール材硬化物と、該シール材硬化物で囲まれた領域内に封入された液晶層とを有する。
【0003】
従来の液晶表示素子では、基材にガラス板を用いたものが大勢を占めていたが、近年になって薄い、軽い、割れない、曲げられる(フレキシブル)等の特徴を有するプラスチックフィルム基材を採用した液晶表示素子が開発されてきている。これらのプラスチックフィルム液晶表示素子(例えば、特許文献1~3)では具体的には、高分子分散型液晶やポリマーネットワーク液晶が2枚のプラスチックフィルムで挟持された構造が採用されている。これらのプラスチックフィルム液晶表示素子では、空気中の水分の微小量の混入によって簡単に液晶の配向が簡単に乱れてしまうことから、実使用の際はパネル端部をシール材等の硬化性組成物で保護されている。このため、これら硬化性組成物には、プラスチックフィルム基材に密着して曲がりに追従するように、高い密着性と柔軟性が求められるだけでなく、同時に高い水分バリア性が求められている。これら硬化性組成物は塗工後、熱や光により硬化させるが、生産性向上を目的に、紫外線等の活性エネルギー線の照射で簡便に硬化することが望まれている。また、液晶層に直に接触するため、液晶汚染を引き起こさないこと(非液晶汚染性)も重要となっている。さらに、カーナビ等太陽光に晒されることを想定した液晶表示素子においては、太陽光に晒されることにより封止材が劣化し、空気中の水分が液晶層に浸入することによる表示不良が問題となるため、封止材には高い耐光性が求められている。
【0004】
上記要求に応えるべく、例えば特許文献4、5のように紫外線吸収剤を用いた組成物が開示されている。しかしながら、紫外線吸収剤の効果は一般的に300~400nmの限定された波長領域であるため、十分な耐光性を付与することは困難である。また、特許文献6には有機色素誘導体で被覆したカーボンブラックを用いた組成物が開示されている。カーボンブラックを添加することで耐光性は向上するが、光硬化性および水分バリア性が低下するため問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/103039号
【文献】特開2013-164567号公報
【文献】特開2018-066935号公報
【文献】特開2005-068234号公報
【文献】特開2009-167416号公報
【文献】特開2006-126387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、高い耐光性を備え、かつ水分バリア性、柔軟性、光硬化性、非液晶汚染性、密着性に優れる液晶表示素子用シール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、意外にも特定の染料で表面を被覆したカーボンブラック、特定のヒドロキシ基含有メタクリレート、及び特定構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを特定量組合せた液晶表示素子用シール材により、カーボンブラックを用いることにより生じる光硬化性及び水分バリア性の低下を解消し、上記の課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の〔1〕~〔4〕である。
【0008】
〔1〕(A)金属または金属塩でレーキ化した染料で表面を被覆したカーボンブラックと、
(B)下記の式1で表されるウレタン(メタ)アクリレートと、
【化1】
(式中のaは1~15の整数であり、R
1は炭素数2~14の炭化水素基であり、R
2は炭素数2~14の炭化水素基、下記の式2で表される(ポリ)エーテル基、または下記の式3で表されるポリエステル基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数2~14の炭化水素基である)
【化2】
(式中のbは1~20の整数であり、R
5は炭素数2~14の直鎖または分岐状のアルキレン基である)
【化3】
(式中のcは1~20の整数であり、R
6は炭素数2~14の炭化水素基であり、R
7は炭素数1~14の炭化水素基である)
(C)下記の式4で表されるヒドロキシ基含有メタクリレート
を含む液晶表示素子用シール材であって、
【化4】
(式中のR
8は少なくとも1つのヒドロキシ基を有する炭素数2~3のアルキル基である)
(A)の含有量が1~20質量%、(B)の含有量が40~90質量%、(C)の含有量が1~20質量%である液晶表示素子用シール材。
【0009】
〔2〕前記の液晶表示素子用シール材が、フィルムを基材とする液晶表示素子の封止に用いられることを特徴とする、前記の〔1〕に記載の液晶表示素子用シール材。
〔3〕前記の〔1〕または〔2〕に記載の液晶表示素子用シール材の硬化物からなる封止端部を有するプラスチックフィルム液晶表示素子。
〔4〕前記のプラスチックフィルム液晶表示素子において、液晶材料として高分子分散型液晶またはポリマーネットワーク液晶を用いることを特徴とする、前記の〔3〕に記載のプラスチックフィルム液晶表示素子。
【0010】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの双方を含む総称を意味し、「(メタ)アクリロキシ基」とは、アクリロキシ基とメタクリロキシ基の双方を含む総称を意味する。また、本発明において数値範囲を示す「○○~××」とは、別途記載が無い限り、その下限値(「○○」)や上限値(「××」)を含む概念である。すなわち、正確には「○○以上××以下」を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶表示素子用シール材は高い耐光性を備え、かつ良好な水分バリア性、柔軟性、光硬化性、非液晶汚染性、密着性を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明の液晶表示素子用シール材は、下記の(A)~(C)の各成分を含有する。
【0013】
<被覆カーボンブラック(A)>
本発明の液晶表示素子用シール材は、金属または金属塩でレーキ化した染料で表面を被覆したカーボンブラック(以下、被覆カーボンブラック(A)ともいう)を含有する。ここで、レーキ化とは、溶媒(通常は水)に可溶の染料に、金属又は金属塩を加えて不溶化することをいう。被覆に用いるカーボンブラックに特に制限は無く、ファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、サーマル法等、既知の製法により製造されたカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは染料の被覆を促進するために酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理剤としては、硝酸、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム等を用いることができる。分散性の面から平均粒子径は1~100nmのものが好ましい。
カーボンブラックを被覆する染料は、特に限定されず、既知の直接染料、酸性染料等を用いることができる。中でも水分バリア性を観点から、芳香環を有する染料が好ましく、芳香環及びスルホン酸若しくはスルホン酸のアルカリ金属塩を有する染料がより好ましく、芳香環及びスルホン酸ナトリウム塩を有する染料が更に好ましい。これら染料は単独でも組み合わせて使用しても良い。染料の含有量は染料で表面を被覆したカーボンブラック中に1~10質量%が好ましい。1質量%以上であると、液晶表示素子用シール材の光硬化性及び水分バリア性がより向上し、10質量%以下であると余分な染料が凝集を引き起こすことを抑制できる。
レーキ化する金属、金属塩は、例えば、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、またはこれらの硫酸塩、塩酸塩を用いることができる。
【0014】
被覆カーボンブラック(A)は、国際公開第2013-129555号等に記載の公知の技術により製造することができる。具体的には、まず、カーボンブラックと水を混合し、1~2時間、60~90℃で加熱攪拌する。冷却後、水洗し、得られたカーボンブラックに再度水を加えてスラリーとし、酸化処理剤を加えて、1~8時間、30~80℃で加熱攪拌する。この酸化処理は複数回、酸化処理剤の種類を変えて行っても良い。冷却後、水洗し、酸化処理したカーボンブラックに再度水を加えてスラリーとし、カーボンブラック100質量部に対して、上記の染料1~10質量部を加え、1~6時間、40~90℃で加熱攪拌する。さらに、染料に対して、0.5~1.2molの金属または金属塩を添加し、1~7時間、40~90℃で加熱攪拌する。冷却後、水洗およびろ過、乾燥することで、金属または金属塩でレーキ化した染料で表面を被覆したカーボンブラックを得ることができる。
【0015】
被覆カーボンブラック(A)は遮光性の高いカーボンブラックを含有するため、耐光性を向上させることができる。さらに、被覆した染料が芳香環、スルホン酸基、又はスルホン酸アルカリ金属塩を有している場合には、該染料が、ウレタン(メタ)アクリレート(B)のNHおよびヒドロキシ基含有メタクリレート(C)のヒドロキシ基と相互作用し、ウレタン(メタ)アクリレート(B)とヒドロキシ基含有メタクリレート(C)で構成される架橋構造の中に、被覆カーボンブラック(A)が隙間無く配置されることにより水分バリア性を著しく向上させることができる。
【0016】
本発明の液晶表示素子用シール材における被覆カーボンブラック(A)の含有量は1~20質量%であり、好ましくは5~15質量%である。組成物中の被覆カーボンブラック(A)の含有量が1質量%を下回ると、十分な耐光性が得られず、20質量%を上回ると、光硬化性が低下する。
【0017】
<ウレタン(メタ)アクリレート(B)>
本発明に用いるウレタン(メタ)アクリレート(B)は下記の式1で表される構造を有しており、下記の式5で表されるジイソシアネート化合物と、下記の式6で表されるジオール化合物と、下記の式7で表されるヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応物である。
【0018】
【化5】
式中のaは1~15の整数であり、R
1は炭素数2~14の炭化水素基であり、R
2は炭素数2~14の炭化水素基、下記の式2で表される(ポリ)エーテル基、または下記の式3で表されるポリエステル基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数2~14の炭化水素基である。
aは好ましくは3~15の整数であり、より好ましくは5~15の整数である。R
1は好ましくは炭素数3~12の炭化水素基、より好ましくは炭素数4~10の炭化水素基である。
R
2における炭素数2~14の炭化水素基は、好ましくは炭素数3~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数3~6の炭化水素基である。
R
4は好ましくは炭素数2~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~6の炭化水素基である。
【0019】
【化6】
式中のbは1~20の整数であり、R
5は炭素数2~14の直鎖または分岐状のアルキレン基である。
R
5は好ましくは2~10の直鎖または分岐状のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~6の直鎖又は分岐状のアルキレン基である。
【0020】
【化7】
式中のcは1~20の整数であり、R
6は炭素数2~14の炭化水素基であり、R
7は炭素数1~14の炭化水素基である。
R
6は好ましくは炭素数2~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~6の炭化水素基である。R
7は好ましくは炭素数2~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~6の炭化水素基である。
【0021】
【化8】
R
1は炭素数2~14の炭化水素基である。R
1は好ましくは炭素数3~12の炭化水素基、より好ましくは炭素数4~10の炭化水素基である。
【0022】
【化9】
R
2は炭素数2~14の炭化水素基、または上記式2で表される(ポリ)エーテル基、または上記式3で表されるポリエステル基である。炭素数2~14の炭化水素基は、好ましくは炭素数3~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数3~6の炭化水素基である。
【0023】
【化10】
R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数2~14の炭化水素基である。R
4は好ましくは炭素数2~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~6の炭化水素基である。
【0024】
式5で表されるジイソシアネート化合物としては、公知の芳香族、脂肪族または脂環式のジイソシアネートを用いることが出来る。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルへキサンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルへキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の炭素数2~14の炭化水素基を有するジイソシアネートを単独または2種以上を併用して使用できる。中でもヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルへキサンジイソシアネートが好ましい。
【0025】
式6で表されるジオール化合物としては、炭素数2~14の炭化水素基を有するジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールを用いることが出来、それぞれ単独または2種以上を併用して使用できる。
【0026】
炭素数2~14の炭化水素基を有するジオールとしては、公知の化合物を用いることが出来る。例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール等を使用できる。中でも1,5-ペンタンジオールが好ましい。
【0027】
ポリエーテルジオールとしては、公知の化合物を用いることが出来る。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を使用できる。中でもポリプロピレングリコールが好ましい。
【0028】
ポリエステルジオールとしては、ジカルボン酸とジオールを縮合反応させた化合物を用いることが出来る。ジカルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ピメリン酸等を使用することが出来る。中でもアジピン酸、ピメリン酸が好ましい。ジオール化合物としては、上記した炭素数2~14の炭化水素基を有するジオールが好ましい。
【0029】
式7で表されるヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、公知の化合物を用いることが出来る。例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を使用できる。中でも2-ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノアクリレートが好ましい。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、1,000~15,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000以上の場合、二重結合当量が大きくなることから反応性が高くなり過ぎず、貯蔵安定性が良好になる。重量平均分子量が15,000以下の場合、粘度が低く取り扱いが容易で好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、3,000~13,000であることがより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を使用して求められる。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)は含有する二重結合により光硬化性を付与すると同時に硬化膜の架橋密度を高め、水分バリア性を向上させることができる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレート(B)の構造中のNHは、被覆カーボンブラック(A)由来の染料が芳香環、スルホン酸基、又はスルホン酸アルカリ金属塩を有している場合には、これらと相互作用し、ヒドロキシ基含有メタクリレート(C)と構成される架橋構造の中に隙間無く被覆カーボンブラック(A)を配置できるため、水分バリア性を著しく高めることができる。また、上記相互作用により光硬化性も向上する。
【0032】
本発明の液晶表示素子用シール材におけるウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量は40~90質量%であり、好ましくは60~85質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量が40質量%を下回ると十分な水分バリア性が得られず、90質量%を上回ると密着性が低下する。
【0033】
<ヒドロキシ基含有メタクリレート(C)>
本発明に用いるヒドロキシ基含有メタクリレート(C)は下記の式4で表される化合物である。
【化11】
(式中のR
8は少なくとも1つのヒドロキシ基を有する炭素数2~3のアルキル基。)
【0034】
本発明に用いるヒドロキシ基含有メタクリレート(C)は含有する二重結合により光硬化性を付与すると同時に、単官能であることから架橋密度をコントロールし、柔軟性を維持させることができる。特に二重結合上にメチル基を有するため、自身の単独重合を抑制し、柔軟性を発現する。さらに、ヒドロキシ基含有メタクリレート(C)含有のヒドロキシ基は被覆カーボンブラック(A)由来の染料が芳香環、スルホン酸基又はスルホン酸アルカリ金属塩を有している場合には、これらと相互作用し、ウレタン(メタ)アクリレート(B)と構成される架橋構造の中に隙間無く被覆カーボンブラック(A)を配置できるため、水分バリア性を著しく高めることができる。また、上記相互作用により光硬化性も向上する。式4で表される化合物としては、例えば、メタクリル酸1-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピルなどのメタクリル酸ヒドロキシプロピルなどが挙げられ、中でも、水分バリア性、柔軟性の面からメタクリル酸ヒドロキシエチルが好ましい。
【0035】
本発明の液晶表示素子用シール材におけるヒドロキシ基含有メタクリレート(C)の含有量は1~20質量%であり、好ましくは3~10質量%である。組成物中のヒドロキシ基含有メタクリレート(C)の含有量が1質量%を下回ると、柔軟性が低下し、20質量%を上回ると、液晶への溶出が顕著になり、液晶を汚染する。
【0036】
<その他成分>
本発明の液晶表示素子用シール材は任意に、光開始剤、多官能(メタ)アクリレート、連鎖移動剤、界面活性剤、粘度調整剤を添加することができる。
<光開始剤>
本発明の液晶表示素子用シール材の硬化に用いる光開始剤としては、特に制限は無く、公知の光開始剤を使用することができる。光開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。
本発明の液晶表示素子用シール材における光開始剤の含有量は、好ましくは0.1~20質量%であり、より好ましくは0.5~12質量%である。
【0037】
<多官能(メタ)アクリレート>
本発明の液晶表示素子用シール材には、多官能(メタ)アクリレートを光硬化の補助剤として添加することができる。多官能(メタ)アクリレートは1分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2個以上有するものであれば良く、既知の多官能(メタ)アクリレートを用いることができる。中でも、液晶表示素子用シール材に含有される各成分との相溶性を良好にする観点から下記の式8で表される化合物が好ましい。
【化12】
【0038】
(式中のdは2~3の整数であり、R9は炭素数2~200の炭化水素基、炭素数2~300のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基のみからなる基、またはイソシアヌレート環若しくはイソシアヌレート環と炭化水素基のみからなる基であり、R10は水素原子またはメチル基である。)
式8で表される化合物としては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート骨格を有するトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられる。
本発明の液晶表示素子用シール材における多官能(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは0.1~20質量%であり、より好ましくは0.5~12質量%である。
【0039】
<連鎖移動剤>
本発明の液晶表示素子用シール材には、連鎖移動剤を光硬化の補助剤として添加することができる。連鎖移動剤は特に制限は無く、既知の連鎖移動剤を用いることができる。中でも、液晶表示素子用シール材に含有される各成分との相溶性を良好にする観点から、下記の式9で表される化合物が好ましい。
【化13】
【0040】
(式中のnは1~5の整数であり、mは2~10の整数であり、Xは炭素数2~30の炭化水素基、炭素数2~40のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基のみからなる基、イソシアヌレート環、または、イソシアヌレート環と炭化水素基のみからなる基のいずれかである。)
式9で表される化合物としては、下記の式10、11で表される化合物が挙げられる。
【化14】
【化15】
【0041】
本発明の液晶表示素子用シール材における連鎖移動剤の含有量は、好ましくは0.1~20質量であり、より好ましくは0.5~15質量%である。
【0042】
<界面活性剤>
本発明の液晶表示素子用シール材には、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤として、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤等を特に制限無く使用することができるが、水分バリア性の観点からフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばDIC(株)製の「メガファックF-410」、同「F-430」、同「F-444」、同「F-472SF」、同「F-477」、同「F-552」、同「F-553」、同「F-554」、同「F-555」、同「F-556」、同「F-558」、同「F-559」、同「F-561」、同「R-94」、同「RS-72-K」、同「RS-75」等を使用できる。これら界面活性剤は、単独でも2種以上を併用しても良い。
【0043】
本発明の液晶表示素子用シール材における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~8質量%である。
【0044】
<粘度調整剤>
本発明の液晶表示素子用シール材には、粘度調整剤は封止材の塗工条件に最適な粘度に合わせる目的でシリカ粉末等の無機フィラーを添加することができる。シリカ粉末の市販品としては、日本アエロジル(株)製の「AEROSIL RX-200」、同「RX-300」、同「RX-50」、同「R-972」、同「R-976」、同「RY-200」、同「R-104」、同「R-805」等を使用できる。これら粘度調整剤は、単独でも2種以上を併用しても良い。
【0045】
本発明の液晶表示素子用シール材における粘度調整剤の含有量は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~8質量%である。
【0046】
<プラスチックフィルム液晶表示素子>
上記の通り、本発明の液晶表示素子用シール材は(A)~(C)の成分を特定量含有するため、高い耐光性を備え、かつ良好な水分バリア性、柔軟性、光硬化性、非液晶汚染性、密着性を発現することができる。このため、プラスチックフィルムを基材とする液晶表示素子(以下、プラスチックフィルム液晶表示素子ともいう)の封止に好適に用いることができる。プラスチックフィルム液晶表示素子は、液晶材料が2枚のプラスチックフィルムに挟持された構造であることが好ましい。もちろんのこと、液晶材料が高分子分散型液晶またはポリマーネットワーク液晶である場合にも液晶表示素子の封止に好適に用いることができる。なお、本発明の液晶表示素子用シール材は、ガラスを基材とする液晶表示素子にも用いることができる。
【0047】
<液晶表示素子用シール材の液晶表示素子の封止および液晶表示素子の作製-1>
本発明の液晶表示素子用シール材は次のように液晶表示素子の封止に用いて、液晶表示素子用シール材の硬化物からなる封止端部を有するプラスチックフィルム液晶表示素子を作製することができる。ITO導電膜およびポリイミド系配向膜などにより形成された電極を備えるPETやポリカーボネート等のプラスチックフィルム上に本発明の液晶表示素子用シール材をディスペンサーやスクリーン印刷機等で枠状に塗布する。この際、密着性の向上等の目的で枠内にも本発明の液晶表示素子用シール材を塗布しても良い。次に枠内に液晶の微小滴を液晶滴下装置で滴下塗布し、もう一対の同じ構成のプラスチックフィルムを真空貼り合わせ装置で貼り合わせ、シール材を10~50mW/cm2の紫外線を10~30秒照射した後、オーブンにて60~100℃で0.5~2時間加熱して硬化させることで本発明の液晶表示素子用シール材で封止した液晶表示素子を得ることができる。すなわち、本発明のプラスチックフィルム液晶表示素子は、本発明の液晶表示素子用シール材の硬化物からなる封止端部を有する。
【0048】
<液晶表示素子の作製-2>
液晶表示素子は次のようにも作製することができる。ITO導電膜およびポリイミド系配向膜などにより形成された電極を備えるPETやポリカーボネート等のプラスチックフィルム上に高分子分散型液晶組成物を塗布し、もう一対の同じ構成のプラスチックフィルムを空気が入らないように貼りあわせる。次に10~50mW/cm2の紫外線を5~15分間照射し、本発明のシール材をプラスチックフィルムの端部にディスペンサー等の塗布装置またはへら等を用いて手動で覆い、オーブンにて80~120℃で20~60分加熱して硬化させることで液晶表示素子を得ることができる。なお、シール材は紫外線だけで硬化させても、オーブン加熱だけで硬化させても良い。
【0049】
(高分子分散型液晶の調整)
高分子分散型液晶は特開2013-148744号公報等の公知の技術により製造することができる。具体的一例を示すと、ポリエーテルウレタンエマルジョン「NeorezR-967」(楠本化成(株)製、商品名)100質量部に対して、ネマチック液晶「JM1000XX」(チッソ(株)製、商品名)50~65質量部を添加し、エマルジョンホモジナイザーにて5~20分間攪拌することで液晶エマルジョンを得えることができる。この液晶エマルジョンを攪拌しながら、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル50%水溶液を1~10部添加することで高分子分散型液晶組成物を得ることができる。
【0050】
<液晶表示素子の作製-3>
液晶表示素子は次のようにも作製することができる。ITO導電膜およびポリイミド系配向膜などにより形成された電極を備えるPETやポリカーボネート等のプラスチックフィルム上にポリマーネットワーク液晶組成物を塗布し、もう一対の同じ構成のプラスチックフィルムを空気が入らないように貼りあわせる。次に10~50mW/cm2の紫外線を5~15分間照射し、本発明のシール材をプラスチックフィルムの端部にディスペンサー等の塗布装置またはへら等を用いて手動で覆い、10~50mW/cm2の紫外線を10~30秒照射した後、オーブンにて60~100℃で0.5~2時間加熱して硬化させることで液晶表示素子を得ることができる。なお、シール材は紫外線だけで硬化させても、オーブン加熱だけで硬化させても良い。
(ポリマーネットワーク液晶の調整)
ポリマーネットワーク液晶は特開2013-148744号公報等の公知の技術により製造することができる。具体的一例を示すと、ハロゲン化ビフェニル系液晶混合物「TL213」(メルク(株)製、商品名)50~80質量部、3,5,5-トリメチルヘキシルアクリレート10~20質量部、ヘキサンジオールジアクリレート1~10質量部、光開始剤2,2-ジメトキシ-2-ジフェニルアセトフェノン1~10質量部を均一混合して得ることができる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
本実施例および比較例で用いた各成分は、次のとおりである。
【0052】
<被覆カーボンブラック(A)の調製>
〔被覆カーボンブラック(A-1)の調製〕
表1に示すカーボンブラック(a-1):「カーボンブラック#25」(三菱ケミカル(株)製)500.0gに水を加え、5Lのスラリーを調製し、90℃で2時間撹拌した。冷却後、水洗し、再度水を加えて5Lのスラリーを調製した。これに、70%の硝酸20.0gを加えて、45℃で7時間撹拌した。冷却後、水洗し、再度水を加えて5Lのスラリーを調製した。これに、純度38.5%の染料(ダイレクトブラック80)17.0gを添加して45℃で2時間撹拌した。その後、硫酸アルミニウム5.0gを添加して45℃で2時間撹拌した。冷却後、水洗、ろ過し、乾燥させて金属塩でレーキ化した染料で表面を被覆したカーボンブラック(A-1)を得た。
【0053】
〔被覆カーボンブラック(A-2)~(A-5)の調製〕
表1のカーボンブラック、染料、金属または金属塩を用いた以外は上記方法と同様にして(A-2)~(A-5)を得た。
【表1】
【0054】
表1中に略記したカーボンブラックの詳細は次の通りである。
(a-1):三菱ケミカル製「カーボンブラック#25」、平均粒子径47nm
(a-2):三菱ケミカル製「カーボンブラック#45」、平均粒子径24nm
(a-3):東海カーボン製「TOKABLACK5500」、平均粒子径25nm
(a-4):東海カーボン製「TOKABLACK8300」、平均粒子径16nm
表1中に略記した染料の詳細は次の通りである。
【0055】
(ダイレクトブラック80):下記の式で表される構造を有する。
【化16】
【0056】
(ダイレクトブラック22):下記の式で表される構造を有する。
【化17】
【0057】
(ダイレクトブラック38):下記の式で表される構造を有する。
【化18】
【0058】
<ウレタン(メタ)アクリレート(B)の合成>
〔ジオール化合物(b-1)の合成〕
攪拌機、精留塔、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、アジピン酸150.2質量部、3-メチル-1,5-ペンタンジオール161.3質量部を仕込み、窒素雰囲気下で140℃まで加熱、攪拌した。これに、テトラブチルチタネート0.01質量部を加え、220℃まで昇温、脱水反応を行った。その後、引き続き220℃でホールドし、脱水反応を行った。脱水反応開始から18時間後、内容物を冷却し、ジオール化合物(b-1)を得た(重量平均分子量:1,600)。
【0059】
〔ジオール化合物(b-2)の合成〕
攪拌機、精留塔、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ピメリン酸158.5質量部、3-メチル-1,5-ペンタンジオール202.1質量部を仕込み、窒素雰囲気下で140℃まで加熱、攪拌した。これに、テトラブチルチタネート0.01質量部を仕込み、220℃まで昇温、脱水反応を行った。その後、引き続き220℃でホールドし、脱水反応を行った。脱水反応開始から18時間後、内容物を冷却し、ジオール化合物(b-2)を得た(重量平均分子量:1,750)。
【0060】
〔ウレタン(メタ)アクリレート(B―1)の合成〕
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ジオール化合物(b-1)160.3質量部を仕込み、攪拌を開始した。次いで、ジブチルチンラウレート0.1質量部と、ジイソシアネートとして1,6-ジイソシアネート-2,2,4-トリメチルヘキサン77.4質量部とを加え、発熱に注意しながら内温を80℃に上昇させた後、温度を保ちながら3時間攪拌した。さらに、重合禁止剤としてメトキノンを0.1質量部と、アクリレートとしてプロピレングリコールモノアクリレート31.2質量部を加えて、85℃で2時間攪拌して、ウレタン(メタ)アクリレート(B-1)を得た(重量平均分子量:9500)。
【0061】
〔(B-2)~(B-5)の合成〕
表2のジオール化合物、ジイソシアネート、およびアクリレートを用いた以外は上記方法と同様にしてウレタン(メタ)アクリレート(B-2)~(B-5)を得た。
【表2】
【0062】
<実施例1~13、比較例1~11>
各成分を下記表3および表4に示す配合量で混合し、実施例1~13および比較例1~11の液晶表示素子用シール材を調製した。なお、表3および表4において、各成分の含有量を示す数値は重量部である。また、表3および表4中の成分は次の通りである。
【0063】
<被覆カーボンブラック(A)>
(A-1)~(A-5):表1記載のカーボンブラック
<(A′):(A)成分の比較成分>
(a-1):前記の表-1に記載のカーボンブラック
(A′-1):コバルト
(A′-2):酸化チタン(ルチル型)
(A′-3):チタンブラック
【0064】
<(B):ウレタン(メタ)アクリレート>
(B-1)~(B-5):表2記載のウレタン(メタ)アクリレート
【0065】
<ヒドロキシ基含有メタクリレート(C)>
(C-1):メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
(C-2):メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル
(C-3):メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル
<(C′):(C)成分の比較成分>
(C′-1):メタクリル酸メチル
【0066】
<光開始剤>
(D-1):2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
Irg.819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
(D-2):エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)
(D-3):1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]
(D-4):2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1
(D-5):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
【0067】
<多官能(メタ)アクリレート>
(E-1):下記の式で表される構造を有する。
【化19】
上記の式において、(n+m)は平均2.6である。
(E-2):トリメチロールプロパントリメタクリレート
(E-3):下記の式で表される構造を有する。
【化20】
【0068】
<連鎖移動剤>
(F-1):下記の式で表される構造を有する。
【化21】
(F-2):下記の式で表される構造を有する。
【化22】
【0069】
<界面活性剤>
(G-1):DIC(株)製フッ素系レベリング剤「メガファックF-477」(商品名)
(G-2):共栄社化学(株)製アクリル系レベリング剤「ポリフローNo.95」(商品名)
(G-3):共栄社化学(株)製シリコン系レベリング剤「ポリフローKL-402」(商品名)
【0070】
<粘度調整剤>
(H-1):日本アエロジル(株)製疎水性フュームドシリカ「AEROSIL RX-200」(商品名)
(H-2):日本アエロジル(株)製疎水性フュームドシリカ「AEROSIL R-972」(商品名)
【0071】
表3および表4に示す配合比で各成分をそれぞれ混合し、スパチュラで均一になるまで撹拌し、実施例および比較例の液晶表示素子用シール材を得た。実施例および比較例で得られた液晶表示素子用シール材に対して、耐光性、光硬化性、水分バリア性、密着性、非液晶汚染性、および柔軟性の評価を行った。その結果を表3および表4に示す。
【0072】
[耐光性]
表3および表4に示す配合比で各成分を混合した液晶表示素子用シール材をアプリケーターで100μmの厚さでガラス基材上に塗工し、紫外線照射装置(東芝ライテック(株)製「Toscure252」)で100mJ/cm2のエネルギー量(i線換算)で紫外線を照射することで硬化膜サンプルを得た。得られた硬化膜サンプルをスーパーキセノンウェザーメーター(SX75型 スガ試験機(株)製)に500h(180W/m2、ブラックパネル温度63℃)投入した。紫外線照射後の塗膜の態様から、耐光性を評価した。耐光性の評価基準は次の通りである。
◎:塗膜に剥がれが全く観られない
○:塗膜の端部に僅かに剥がれが観られる
×:塗膜に上記を上回る剥がれが観られる
【0073】
[柔軟性]
表3および表4に示す配合比で各成分を混合した液晶表示素子用シール材をアプリケーターで100μmの厚さでPETフィルム上に塗工し、紫外線照射装置(東芝ライテック(株)製「Toscure252」)で100mJ/cm2のエネルギー量(i線換算)で紫外線を照射することで硬化膜サンプルを得た。得られた硬化膜サンプルを、-25℃で1時間静置した後、5分以内に直径8mmの棒に1分間巻きつけ、目視にて観察し、クラックの本数から柔軟性を評価した。柔軟性の評価基準は次の通りである。
◎:クラックが0本
○:クラックが1~2本
×:クラックが3本以上
【0074】
[光硬化性]
表3および表4に示す配合比で各成分を混合した液晶表示素子用シール材をアプリケーターで100μmの厚さでガラス基材上に塗工し、紫外線照射装置(東芝ライテック(株)製「Toscure252」)で100mJ/cm2のエネルギー量(i線換算)で紫外線を照射した。加熱後、スパチュラ1さじのシリカ粒子(日本アエロジル(株)製「RX-200」)を硬化膜にふりかけ、エアーダスターでシリカ粒子の除去性を調べ光硬化性を評価した。光硬化性の評価基準は次の通りである。
◎:シリカ粒子が10秒以内で除去できた
○:シリカ粒子が10秒超20秒以内で除去できた
×:シリカ粒子の除去に21秒超かかった、あるいは除去できなかった
【0075】
[水分バリア性]
表3および表4に示す配合比で各成分を混合した液晶表示素子用シール材をアプリケーターで100μmの厚さでポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトン100H」、商品名)上に塗工し、紫外線照射装置(東芝ライテック(株)製「Toscure252」)で100mJ/cm2のエネルギー量(i線換算)で紫外線を照射することで硬化膜サンプルを得た。得られた硬化膜サンプルの透湿度をJIS Z 0208「防湿包装材料の透過湿度試験方法」に準拠した方法にて透湿度を評価した。温湿度条件は40℃/90%で実施した。水分バリア性の評価基準は次の通りである。
◎:透湿度が30g/m2・24h未満
○:透湿度が30g/m2・24h以上50g/m2・24h以下
×:透湿度が50g/m2・24hを超える
【0076】
[非液晶汚染性]
表3および表4に示す配合比で各成分を混合した液晶表示素子用シール材0.01gを、液晶(MLC-7021-000 メルク(株)製)0.4gの中に入れ、110℃で2時間加熱した。2時間後、遠心分離機でサンプルと液晶を分離し、液晶の電圧保持率を液晶物性評価装置6245型((株)東洋テクニカ製)で測定した。非液晶汚染性の評価基準は次の通りである。
◎:電圧保持率が98%以上
○:電圧保持率が95%以上、98%未満
×:電圧保持率が95%未満
【0077】
[密着性]
表3および表4に示す配合比で各成分を混合した液晶表示素子用シール材をアプリケーターで100μmの厚さで25mm幅のPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーU46-100」、商品名)上に塗工し、その上に別の25mm幅の同じPETフィルムを重ねた後、80℃で60分間、オーブンで加熱または紫外線照射装置(東芝ライテック(株)製「Toscure252」)で100mJ/cm2のエネルギー量(i線換算)で紫外線を照射することで密着性評価サンプルを得た。得られたサンプルをJIS K6854-3に規定されるT型はく離法で引張強度を測定した。密着性の評価基準は次の通りである。
◎:引張強度が15N/25mmを超える
○:引張強度が10N/25mm以上15N/25mm以下
×:引張強度が10N/25mm未満
【0078】
【0079】
【0080】
表3の結果から、実施例1~13では、(A)~(C)成分を本発明に規定された適切量を含有することで、良好な耐光性非を備え、かつ柔軟性、光硬化性、水分バリア性、非液晶汚染性、密着性に優れていた。
一方、比較例1では被覆カーボンブラック(A)を含有しないため、耐光性が悪化した。比較例2ではウレタン(メタ)アクリレート(B)を所定量含有しないため、光硬化性、水分バリア性が悪化した。比較例3ではヒドロキシ基含有メタクリレート(C)を含有しないため、柔軟性、光硬化性、水分バリア性が悪化した。比較例4では被覆カーボンブラック(A)を過度に含有するため、光硬化性が悪化した。比較例5ではウレタン(メタ)アクリレート(B)を過度に含有するため、密着性が悪化した。比較例6ではヒドロキシ基含有メタクリレート(C)成分を過度に含有するため、液晶汚染性が悪化した。比較例7~10では、本発明に用いる被覆カーボンブラック(A)ではないため、光硬化性、水分バリア性が悪化した。比較例11では本発明に用いるヒドロキシ基含有メタクリレート(C)を含まないため、柔軟性、光硬化性が悪化した。