(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】アンテナ設計支援装置、アンテナ設計支援プログラム、及びアンテナ設計支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/36 20200101AFI20230214BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20230214BHJP
【FI】
G06F30/36
G06F30/10
(21)【出願番号】P 2019032740
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 学
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142731(JP,A)
【文献】特開2017-142720(JP,A)
【文献】特開2005-158019(JP,A)
【文献】特開2010-139363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/36
G06F 30/10
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
性能評価の対象になる第1アンテナ装置について設定される仕様値に基づいて前記第1アンテナ装置の構造を決定する複数の第1パラメータを算出する第1パラメータ算出部と、
前記複数の第1パラメータに基づいて通信周波数を取得する周波数取得部と、
前記第1アンテナ装置の所定の性能評価基準を満たす前記通信周波数のずれの許容範囲を算出する許容範囲算出部と、
基準モデルとしての第2アンテナ装置の構造を決定するとともに互いに相関を有する2つの第2パラメータの前記許容範囲内における前記通信周波数の変化に対応する変化量を求める変化量取得部と、
前記複数の第1パラメータのうち前記2つの第2パラメータに対応する互いに相関を有する2つの第1パラメータと、前記変化量とに基づいて前記互いに相関を有する2つの第1パラメータの関係式を取得する関係式取得部と
を含む、アンテナ設計支援装置。
【請求項2】
前記関係式に前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方を代入して他方を算出する第2パラメータ算出部をさらに含む、請求項1記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項3】
前記関係式に代入される前記2つの第1パラメータのうちの一方と、前記関係式から算出される前記2つの第1パラメータのうちの他方とを用いて前記第1アンテナ装置が前記所定の性能評価基準を満たすかどうかの試算を行う試算部と、
前記試算部によって前記所定の性能評価基準を満たさないと判定されると、前記試算に用いられた前記2つの第1パラメータによって決まる前記許容範囲の下限又は上限の通信周波数と、前記許容範囲算出部によって算出される前記許容範囲の下限又は上限の通信周波数との比で、前記関係式に代入される前記2つの第1パラメータのうちの一方と、前記関係式から算出される前記2つの第1パラメータのうちの他方とを補正するパラメータ補正部と
をさらに含む、請求項1又は2記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項4】
前記変化量取得部は、前記変化量として、前記通信周波数を前記許容範囲の上限に移動させたときの前記2つの第2パラメータのうちの一方の第1変化量と他方の第2変化量とを求め、
前記関係式取得部は、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方に前記第1変化量を乗じて得る第1値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方とで特定される第1座標点と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方に前記第2変化量を乗じて得る第2値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方とで特定される第2座標点とを満たす式を前記関係式のうちの第1関係式として取得する、請求項1乃至3のいずれか一項記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項5】
前記第1関係式は線形1次式である、請求項4記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項6】
前記変化量取得部は、前記変化量として、前記通信周波数を前記許容範囲の下限に移動させたときの前記2つの第2パラメータのうちの一方の第3変化量と他方の第4変化量とを求め、
前記関係式取得部は、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方に前記第3変化量を乗じて得る第3値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方とで特定される第3座標点と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方に前記第4変化量を乗じて得る第4値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方とで特定される第4座標点とを満たす式を前記関係式のうちの第2関係式として取得する、請求項1乃至5のいずれか一項記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項7】
前記第2関係式は線形1次式である、請求項6記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項8】
性能評価の対象になる第1アンテナ装置について設定される仕様値に基づいて前記第1アンテナ装置の構造を決定する複数の第1パラメータを算出することと、
前記複数の第1パラメータに基づいて通信周波数を取得することと、
前記第1アンテナ装置の所定の性能評価基準を満たす前記通信周波数のずれの許容範囲を算出することと、
基準モデルとしての第2アンテナ装置の構造を決定するとともに互いに相関を有する2つの第2パラメータの前記許容範囲内における前記通信周波数の変化に対応する変化量を求めることと、
前記複数の第1パラメータのうち前記2つの第2パラメータに対応する互いに相関を有する2つの第1パラメータと、前記変化量とに基づいて前記互いに相関を有する2つの第1パラメータの関係式を取得することと
を含む処理をコンピュータに実行させる、アンテナ設計支援プログラム。
【請求項9】
性能評価の対象になる第1アンテナ装置について設定される仕様値に基づいて前記第1アンテナ装置の構造を決定する複数の第1パラメータを算出することと、
前記複数の第1パラメータに基づいて通信周波数を取得することと、
前記第1アンテナ装置の所定の性能評価基準を満たす前記通信周波数のずれの許容範囲を算出することと、
基準モデルとしての第2アンテナ装置の構造を決定するとともに互いに相関を有する2つの第2パラメータの前記許容範囲内における前記通信周波数の変化に対応する変化量を求めることと、
前記複数の第1パラメータのうち前記2つの第2パラメータに対応する互いに相関を有する2つの第1パラメータと、前記変化量とに基づいて前記互いに相関を有する2つの第1パラメータの関係式を取得することと
を含む
処理をコンピュータが実行する、アンテナ設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ設計支援装置、アンテナ設計支援プログラム、及びアンテナ設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象アンテナの構造を規定する構造パラメータと、前記構造パラメータの値が所定値であるときの対象特性値とを取得し、前記構造パラメータ及び前記対象特性値、並びに前記対象アンテナと同じ形状特徴を持ち且つタイプが相違する基準アンテナについての前記構造パラメータの値と特性との関係に基づいて、前記対象アンテナについての前記構造パラメータの値と特性との関係を推定するアンテナ設計用コンピュータプログラムがある。
【0003】
アンテナ設計用コンピュータプログラムは、推定した前記対象アンテナについての前記構造パラメータの値と特性との関係に基づいて、前記対象アンテナの特性が、要求される仕様を満たすように、前記構造パラメータの値を決定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアンテナ設計用コンピュータプログラムは、構造パラメータ(アンテナの構造を規定するパラメータ(以下、パラメータ))の値を決定することができるが、互いに相関を有するパラメータについて考慮していない。
【0006】
互いに相関を有するパラメータについて考慮すれば計算量を減らすことができ、すべてのパラメータをより速く計算することができる。
【0007】
そこで、アンテナの構造に関するパラメータをより速く計算できるアンテナ設計支援装置、アンテナ設計支援プログラム、及びアンテナ設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態のアンテナ設計支援装置は、性能評価の対象になる第1アンテナ装置について設定される仕様値に基づいて前記第1アンテナ装置の構造を決定する複数の第1パラメータを算出するパラメータ算出部と、前記複数の第1パラメータに基づいて通信周波数を取得する周波数取得部と、前記第1アンテナ装置の所定の性能評価基準を満たす前記通信周波数のずれの許容範囲を算出する許容範囲算出部と、基準モデルとしての第2アンテナ装置の構造を決定するとともに互いに相関を有する2つの第2パラメータの前記許容範囲内における前記通信周波数の変化に対応する変化量を求める変化量取得部と、前記複数の第1パラメータのうち前記2つの第2パラメータに対応する互いに相関を有する2つの第1パラメータと、前記変化量とに基づいて前記互いに相関を有する2つの第1パラメータの関係式を取得する関係式取得部とを含む。
【発明の効果】
【0009】
アンテナの構造に関するパラメータをより速く計算できるアンテナ設計支援装置、アンテナ設計支援プログラム、及びアンテナ設計支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態のアンテナ設計支援装置100のハードウェア構成図である。
【
図2】アンテナ設計支援装置100によってパラメータが算出されるアンテナ装置10のモデルを示す図である。
【
図3】アンテナ設計支援装置100の制御装置110の機能的な構成を示す図である。
【
図5】許容範囲算出部114によって算出される共振周波数f0の許容範囲を示す図である。
【
図6】アンテナ設計支援装置100が利用するアンテナ装置10Rのモデルを示す図である。
【
図7】メモリ118に格納されるデータの一例を示す図である。
【
図8】高さHrと長さLrの関係を表す特性を示す図である。
【
図9】共振周波数fSH、fSLについての高さHrと長さLrの変換値を求める処理を示す図である。
【
図10】共振周波数fSH、fSLについての高さHrと長さLrの変換値を求める処理を示す図である。
【
図11】長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す特性を示す図である。
【
図12】共振周波数fSH、fSLについての長さGNDxrと長さGNDyrの変換値を求める処理を示す図である。
【
図13】共振周波数fSH、fSLについての長さGNDxrと長さGNDyrの変換値を求める処理を示す図である。
【
図14】被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す特性を示す図である。
【
図15】共振周波数fSH、fSLについての被誘電率εrrと厚さtrの変換値を求める処理を示す図である。
【
図16】共振周波数fSH、fSLについての被誘電率εrrと厚さtrの変換値を求める処理を示す図である。
【
図17】制御装置110が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図18】実施の形態の変形例のアンテナ設計支援装置100Mの制御装置110Mの機能的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のアンテナ設計支援装置、アンテナ設計支援プログラム、及びアンテナ設計支援方法を適用した実施の形態について説明する。
【0012】
<実施の形態>
図1は、実施の形態のアンテナ設計支援装置100のハードウェア構成図である。アンテナ設計支援装置100は、実施の形態のアンテナ設計支援プログラムを実行し、ユーザ(利用者)の要望に応じたアンテナ装置の構造を決定するパラメータを決定する。この際に、相関を有するパラメータ同士の関係を表す関係式を作成し、1つのパラメータを関係式に代入することによって、当該1つのパラメータと相関を有するもう1つのパラメータを算出する。アンテナ設計支援装置100がアンテナ設計支援プログラムを実行することによって実現される方法は、実施の形態のアンテナ設計支援方法である。
【0013】
アンテナ設計支援装置100は、CPU(Central Processing Unit)51、メモリ52、ディスプレイ53、キーボード54、I/F(Interface)55、バス56を有する。
【0014】
CPU11は、メモリ52に記録されたアンテナ設計支援プログラムを読出し、実行することにより、アンテナ設計処理を実現する演算装置である。
【0015】
メモリ52は、アンテナ設計支援プログラムおよびCPU11によりプログラムを実行した結果、発生したデータなどを記憶する記憶装置である。メモリ52は、フラッシュメモリ等の不揮発メモリであってもよいし、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリであってもよい。メモリ52は、CPU11が実行するプログラムを一時的に記憶してもよい。記憶装置として、メモリ52の他に、HDD(Hard Disk Drive)などの他の記憶装置を用いてもよい。ディスプレイ53、キーボード54、I/F55、CPU11、メモリ52は、バス56により互いに電気的に接続されている。
【0016】
ディスプレイ53は、解析対象モデルを作成するための三次元CADの操作画面などを表示するための表示装置であり、タッチパネルが一体化されている。
【0017】
キーボード54は、利用者がアンテナ設計支援装置100に対し外部から操作するための入力装置である。I/F55は、アンテナ設計支援装置100と外部装置とを接続するための外部接続装置である。
【0018】
図2は、アンテナ設計支援装置100によってパラメータが算出されるアンテナ装置10のモデルを示す図である。アンテナ装置10は、第1アンテナ装置の一例である。アンテナ装置10は、基板20、グランド層(グランドプレーン)30、及びアンテナエレメント40を含む。アンテナ装置10のモデルは、電磁界シミュレーションに用いられる。
【0019】
以下では、XYZ座標系を用いて説明する。また、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、平面視とはXY面視をいう。
【0020】
基板20は、平面視で矩形状の誘電体製の基板であり、上面にグランド層30が設けられている。基板の被誘電率をεr、厚さをt(mm)、誘電正接をtanδとする。
【0021】
グランド層30は、基板20の上面に配設される金属層であり、平面視でのX方向及びY方向の寸法をGNDx(mm)、GNDy(mm)とする。
【0022】
アンテナエレメント40は、基板20の上面のうち、-X方向側かつ+Y方向側の端部に設けられている。アンテナエレメント40は、X方向にLu(mm)、Y方向にHu(mm)の矩形状の配置領域内に配置される。Lu、Huは、ユーザによって設定される配置領域の寸法である。
【0023】
アンテナエレメント40は、配置領域内でグランド層30の端辺31の近傍の給電点41から開放端42まで折り曲げられながら延在している。一例として、アンテナエレメント40は、
図2に示すように給電点41から開放端42まで矩形的な渦状に直角に5回折り曲げられている。
【0024】
配置領域のサイズ(Lu×Hu)はユーザによって設定される固定値であり、アンテナエレメント40を配置できる平面的な領域の大きさは限られているため、アンテナエレメント40の長さ(給電点41から開放端42までの長さ)を長くする場合には、折り曲げる回数が多くなる。
【0025】
アンテナエレメント40の寸法を、給電点41から開放端42までの間の直線状の区間毎に、高さHm(mm)、長さLm(mm)、長さBL1(mm)、長さBL2(mm)、長さBL3(mm)、長さBL4(mm)とする。高さHm(mm)は、ユーザによって設定されるHuよりも小さくなる場合があり、長さLm(mm)は、ユーザによって設定されるLuよりも小さくなる場合がある。
【0026】
ここで、高さHm(mm)及び長さLm(mm)は、Hu(mm)×Lu(mm)の配置領域内でアンテナエレメント40を最大化するために、最大値が算出される。アンテナエレメント40が大きい方が放射特性が良好になるため、スペースが限られた配置領域内でアンテナエレメント40を最大化するためである。
【0027】
また、アンテナエレメント40の長さが短くなれば、長さBL1(mm)、長さBL2(mm)、長さBL3(mm)、長さBL4(mm)が短くなり、長さBL4(mm)、長さBL3(mm)、長さBL3(mm)、長さBL1(mm)の区間が存在しない場合もある。
【0028】
図3は、アンテナ設計支援装置100の制御装置110の機能的な構成を示す図である。制御装置110は、
図1に示すCPU11及びメモリ52によって実現される。
【0029】
制御装置110は、主制御部111、パラメータ算出部112、周波数取得部113、許容範囲算出部114、変化量取得部115、関係式取得部116、パラメータ算出部117、及びメモリ118を有する。主制御部111、パラメータ算出部112、周波数取得部113、許容範囲算出部114、変化量取得部115、関係式取得部116、パラメータ算出部117は、制御装置110の機能を表したものであり、メモリ118は、制御装置110のメモリを機能的に表したものである。
【0030】
主制御部111は、制御装置110の処理を統括する処理部であり、主制御部111、パラメータ算出部112、周波数取得部113、許容範囲算出部114、変化量取得部115、関係式取得部116、パラメータ算出部117が実行する処理以外の処理を行う。例えば、主制御部111は、パラメータ算出部112、周波数取得部113、許容範囲算出部114、変化量取得部115、関係式取得部116、パラメータ算出部117が決定した内容をディスプレイ53に表示する表示処理を行う表示処理部としての機能を有する。
【0031】
パラメータ算出部112は、ユーザによって入力される仕様値及び評価値に基づいて、設計対象であるアンテナ装置10の構造を決定するパラメータ(構造パラメータ)を算出する。パラメータ算出部112は、第1パラメータ算出部の一例である。また、アンテナ装置10の構造を決定するパラメータは、第1パラメータの一例である。
【0032】
このようなパラメータの算出は、例えば、特開2017-142720号公報に記載されたアンテナ設計用コンピュータプログラムによって実現することができる。なお、パラメータの算出は、特開2017-142720号公報に記載されたアンテナ設計用コンピュータプログラム以外の算出プログラムによって行ってもよい。
【0033】
仕様値は、例えば、設計対象であるアンテナ装置10のアンテナエレメント40の寸法、アンテナ装置10の通信周波数の最小値、アンテナ装置10の通信周波数の最大値、グランド層30のサイズ(GNDx、GNDy)、グランド層30が配置される誘電体(ここでは基板20)の被誘電率、誘電体の厚さ、誘電体の誘電正接等である。
【0034】
ここで、アンテナ装置10の通信周波数とは、アンテナ装置10の共振周波数と等しい周波数、又は、アンテナ装置10の共振周波数の前後でアンテナ装置10が所定の良好な通信状態で通信可能な周波数帯に含まれる周波数である。
【0035】
ここでは一例として、仕様値にはアンテナ装置10の共振周波数(中心周波数)の最小値、アンテナ装置10の共振周波数(中心周波数)の最大値が含まれる形態について説明する。
【0036】
また、評価値は、所定の周波数帯域における、比帯域(帯域幅/周波数)、Sパラメータ、利得、放射効率等の評価項目の上限値又は下限値であり、ユーザによって決定される所定の周波数帯域における評価基準(性能評価基準)を表す値である。
【0037】
パラメータ算出部112は、例えば、所定の周波数帯域でS11パラメータを所定値以下にするパラメータを算出する。パラメータ算出部112が算出するパラメータとしては、例えば、アンテナ装置10のアンテナエレメント40の寸法、給電点41とグランド層30とのギャップ(給電ギャップ)、グランド層30の平面視でのx方向及びy方向のサイズ、グランド層30が配置される誘電体(ここでは基板20)の被誘電率、誘電体の厚さ、誘電体の誘電正接等である。なお、これらのパラメータは、S11パラメータ以外の評価項目についても同様である。
【0038】
周波数取得部113は、パラメータ算出部112によって算出された複数のパラメータによって特定されるアンテナ装置10の周波数特性を電磁界シミュレーションで求め、求めた周波数特性からアンテナ装置10の通信周波数を取得する。ここでは一例として、周波数取得部113がアンテナ装置10の共振周波数(中心周波数)を取得する形態について説明する。
【0039】
許容範囲算出部114は、アンテナ装置10の所定の評価値(性能評価基準)を満たす通信周波数のずれの許容範囲を算出する。ここでは一例として、許容範囲算出部114がアンテナ装置10の共振周波数(中心周波数)のずれの許容範囲を算出する形態について説明する。許容範囲算出部114が許容範囲を算出するための処理については後述する。
【0040】
変化量取得部115は、基準モデルとしてのアンテナ装置10Rの構造を決定するとともに互いに相関を有する2つのパラメータの許容範囲内における共振周波数の変化に対応する変化量を求める。具体的な処理については後述する。アンテナ装置10Rの構造を決定するとともに互いに相関を有する2つのパラメータは、第2パラメータの一例である。
【0041】
関係式取得部116は、パラメータ算出部112によって算出された複数のパラメータのうち互いに相関を有する2つのパラメータと、変化量取得部115によって取得される変化量とに基づいて、2つのパラメータの関係式を取得する。ここでは一例として、関係式取得部116が、許容範囲算出部114によって算出された許容範囲内において、変化量取得部115によって取得される共振周波数の変動に対応する2つのパラメータの変化量に基づいて、2つのパラメータの関係式を取得する形態について説明する。
【0042】
パラメータ算出部112によって算出される複数のパラメータのうち、アンテナエレメント40の配置領域の高さHmと長さLmは、アンテナエレメント40の全長を規定するパラメータであり、高さHmと長さLmの合計値は、アンテナエレメント40の共振周波数によって決定する。このため、高さHmと長さLmは互いに相関を有する2つのパラメータである。
【0043】
また、アンテナ装置10は、モノポール型のアンテナエレメント40を含むため、グランド層30も放射に寄与する。このため、アンテナエレメント40の配置領域のサイズ(高さHm×長さLm)と同様に、グランド層30のX軸方向の長さGNDxとY軸方向の長さGNDyとにも互いに相関がある。すなわち、グランド層30のX軸方向の長さGNDxとY軸方向の長さGNDyとは、互いに相関を有する2つのパラメータである。
【0044】
また、基板20の被誘電率εrと基板20の厚さtとは、厚さtが厚くなるほど被誘電率εrが大きくなる関係を有するため、互いに相関を有する2つのパラメータである。
【0045】
関係式取得部116は、高さHmと長さLm、長さGNDxと長さGNDy、被誘電率εrと基板20の厚さtの3組の互いに相関を有する2つのパラメータについて、関係式を取得する。
【0046】
パラメータ算出部117は、関係式取得部116によって取得された関係式に、ユーザによって指定された1つのパラメータを代入し、関係式に代入されたパラメータと相関を有するもう1つのパラメータを算出する。パラメータ算出部117は、第2パラメータ算出部の一例である。
【0047】
メモリ118は、アンテナ設計支援プログラム、パラメータ算出部112を実現するアンテナ設計用コンピュータプログラム、これらのプログラムの実行に必要なデータ、及び、これらのプログラムを実行する過程で取り扱うデータ等を格納する。
【0048】
図4は、ディスプレイ53の表示例を示す図である。
図4には、ディスプレイ53に、一例として、仕様値入力欄61、評価値選択欄62、評価値表示欄63、算出パラメータ表示欄64、アンテナ形状表示欄65、メッセージ表示欄66、パラメータ解析開始ボタン67、及び解析実行ウィンドウ68を示す。これらの表示欄等には、GUI(Graphic User Interface)によるボタン等が表示される。
【0049】
仕様値入力欄61は、配置領域のサイズ(Hu、Lu)、共振周波数の最小値fmin、最大値fmax、グランド層30のサイズGNDx、GNDy等の仕様値をユーザが入力する欄である。仕様値入力欄61に入力された仕様値は、主制御部111によって一時的にメモリ118に格納される。
【0050】
評価値選択欄62は、複数の評価項目のうちのいずれかを選択する欄である。一例として、S11パラメータの-6dB、放射効率の-3dB、放射効率の-7dBの3つの評価値の中から選択できるラジオボタンを示す。また、ユーザによって選択される評価値は、ユーザによって入力される共振周波数の最小値fminと共振周波数の最大値fmaxとの間の周波数帯域で評価されることになる。評価値選択欄62において選択された評価値は、主制御部111によって一時的にメモリ118に格納される。
【0051】
評価値表示欄63は、評価値選択欄62で選択された評価値を表示する欄である。一例として、S11パラメータの周波数特性において-6dBを評価基準とする特性を示す。周波数取得部113は、評価値を用いた周波数特性を求め、求めた周波数特性から共振周波数を取得する。
【0052】
算出パラメータ表示欄64は、評価値選択欄62で選択された評価値を用いて、仕様値入力欄61に入力された仕様値に基づいてパラメータ算出部112が算出したパラメータを表示する欄である。主制御部111は、アンテナ装置10の構造を決定する各種パラメータの算出値を算出パラメータ表示欄64に表示する。
【0053】
アンテナ形状表示欄65は、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータによって表されるアンテナ装置10の概略的な構造を表示する欄である。主制御部111は、アンテナ装置10の概略的な構造をアンテナ形状表示欄65に表示する。
【0054】
メッセージ表示欄66は、アンテナ設計支援装置100からのメッセージ、及び、メッセージに対するユーザのコメント等を表示する欄である。メッセージは、一例として、パラメータ算出部112によって算出されるパラメータ、周波数取得部113によって取得される共振周波数、許容範囲算出部114によって算出される許容範囲、変化量取得部115による変化量、関係式取得部116によって取得される関係式、及び、パラメータ算出部117によって算出されるパラメータ等に関するものである。
【0055】
主制御部111は、周波数取得部113、許容範囲算出部114、及びパラメータ算出部117によって生成されるメッセージと、ユーザによってディスプレイ53のタッチパネル又はキーボード54に入力されるメッセージをメッセージ表示欄66に表示する。
【0056】
パラメータ解析開始ボタン67は、許容範囲算出部114による許容範囲の算出、変化量取得部115による変化量の取得、関係式取得部116による関係式の取得、及び、パラメータ算出部117によるパラメータの算出を含む解析処理を開始するためのボタンである。
【0057】
主制御部111は、パラメータ算出部112によるパラメータの算出が完了すると、パラメータ解析開始ボタン67をアクティブに切り替える。パラメータ解析開始ボタン67は、アクティブな状態に切り替えられると操作可能な状態になる。
【0058】
解析実行ウィンドウ68は、パラメータ解析開始ボタン67が押されると、主制御部111によってポップアップウィンドウとして表示される。解析実行ウィンドウ68には、パラメータを選択するためのチェックボックス68Aと、選択したパラメータについての解析の実行を開始させるための解析実行ボタン68Bとが含まれる。
【0059】
図5は、許容範囲算出部114によって算出される共振周波数f0の許容範囲を示す図である。横軸は周波数であり、縦軸は一例としてS11パラメータである。ここで縦軸にS11パラメータを示すのは、ユーザによって入力された評価値がS11パラメータである場合について説明するためである。
【0060】
また、ここでは評価値は一例として、共振周波数の最小値fminが2.35GHz、共振周波数の最大値fmaxが2.57GHz、S11パラメータが-6dBであることとする。
【0061】
実線で示す特性は、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータによって決定される構造のアンテナ装置10のS11パラメータの周波数特性である。この周波数特性は、周波数取得部113が、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータ(アンテナエレメント40の寸法、給電ギャップ、グランド層30のx方向及びy方向のサイズ(GNDx、GNDy)、被誘電率、誘電体の厚さ、誘電正接等)を用いて、電磁界シミュレーションを行うことで求めることができる。
【0062】
周波数取得部113は、求めた周波数特性から共振周波数f0を求める。共振周波数f0は、S11パラメータが最小値を取る周波数である。一例として、共振周波数f0は2.45GHzであることとする。共振周波数f0が2.45GHzの周波数特性のS11パラメータの値が評価値の-6dBになる低周波側の周波数fTLは2.22GHzであり、高周波側の周波数fTHは2.65GHzである。これらの周波数は、電磁界シミュレーションによって求まる。
【0063】
許容範囲算出部114は、周波数取得部113によって求められた実線で示す周波数特性を横軸方向にずらすことによって、ユーザによって入力された評価値を満たす周波数の範囲を算出する。
【0064】
S11パラメータは反射係数であるため、評価値の2.35GHz~2.57GHzの周波数帯域においてS11パラメータが-6dB以下になる範囲が評価値をクリアした動作領域になる。すなわち、実線で示す周波数特性を横軸方向にずらしたときに、S11パラメータが2.35GHz~2.57GHzの周波数帯域において-6dB以下になる範囲が共振周波数のずれの許容範囲になる。
【0065】
実線で示す周波数特性を高周波数側(横軸の右方向側)にずらして行くと、破線で示す周波数特性のように、共振周波数の最小値fminである2.35GHzにおいてS11パラメータが-6dBになる周波数特性が得られる。この破線で示す特性が、評価値を満たす上限の共振周波数fSHを与える。共振周波数fSHは、一例として2.58GHzである。共振周波数fSHは、電磁界シミュレーションによって求まる。
【0066】
また、実線で示す周波数特性を低周波数側(横軸の左方向側)にずらして行くと、一点鎖線で示す周波数特性のように、共振周波数の最大値fmaxである2.57GHzにおいてS11パラメータが-6dBになる周波数特性が得られる。この破線で示す特性が、評価値を満たす下限の共振周波数fSLを与える。共振周波数fSLは、一例として2.37GHzである。共振周波数fSLは、電磁界シミュレーションによって求まる。
【0067】
ここで、共振周波数fSH、fSLは、それぞれ次式(1)、(2)で表すことができる。
fSH=f0+(fmin-fTL) (1)
fSL=f0+(fTH-fmax) (2)
【0068】
図6は、アンテナ設計支援装置100が利用するアンテナ装置10Rのモデルを示す図である。アンテナ装置10Rは、第2アンテナ装置の一例である。アンテナ装置10Rは、基準モデルとして利用されるものであり、基板20R、グランド層(グランドプレーン)30R、及びアンテナエレメント40Rを含む。XYZ座標系は、
図2と同様である。
【0069】
基板20Rは、平面視で矩形状の誘電体製の基板であり、上面にグランド層30Rが設けられている。基板の被誘電率をεrr、厚さをtr(mm)、誘電正接をtanδrとする。
【0070】
グランド層30Rは、基板20Rの上面に配設される金属層であり、平面視でのX方向及びY方向の寸法をGNDxr(mm)、GNDyr(mm)とする。
【0071】
アンテナエレメント40Rは、基板20Rの上面のうち、-X方向側かつ+Y方向側の端部に設けられている。アンテナエレメント40Rは、逆F型のモノポール型のアンテナエレメントであり、X方向にLr(mm)、Y方向にHr(mm)の矩形状の配置領域内に配置される。Lr、Hrは、ユーザによって設定される配置領域の寸法である。
【0072】
アンテナエレメント40Rは、配置領域内でグランド層30Rの端辺31の近傍の給電点41Rから開放端42Rまで折り曲げられながら延在している。一例として、アンテナエレメント40Rは、
図6に示すように給電点41Rから開放端42Rまで直角に3回折り曲げられている。また、アンテナエレメント40Rは、逆F型であるため、短絡線路の先端43Rはグランド層30Rの端辺31Rに接続されている。
【0073】
アンテナ設計支援装置100は、アンテナ装置10Rのパラメータ(アンテナエレメント40Rの配置領域のサイズ(高さHr×長さLr)、給電点41Rとグランド層30Rとのギャップ(給電ギャップ)、グランド層30Rの平面視でのx方向及びy方向のサイズ(GNDxr、GNDyr)、基板20Rの被誘電率εrr、基板20Rの厚さtr、基板20Rの誘電正接tanδr等)を表すデータをメモリ118に格納している。
【0074】
アンテナ装置10について説明したことと同様に、これらのパラメータのうち、高さHrと長さLr、長さGNDxrと長さGNDyr、被誘電率εrrと厚さtrは、それぞれ、互いに相関を有する2つのパラメータである。
【0075】
アンテナ設計支援装置100は、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における、高さHrと長さLrの関係を表す特性を表すデータ、長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す特性を表すデータ、被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す特性を表すデータをメモリ118に格納しており、ディスプレイ53に表示可能である。
【0076】
図7は、メモリ118に格納されるデータの一例を示す図である。
図7には、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における、高さHrと長さLrの関係を表す特性を表すデータ、長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す特性を表すデータ、被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す特性を表すデータを示す。
【0077】
一例として、共振周波数は2.3GHzから0.1GHz刻みで2.7GHzまでの5種類である。高さHrと長さLrの関係を表す特性は、各共振周波数において、高さHrをパラメータとする関数で長さLrを表す。同様に、各共振周波数において、長さGNDxrをパラメータとする関数で長さGNDyrを表し、被誘電率εrrをパラメータとする関数で厚さtrを表す。
【0078】
図8は、高さHrと長さLrの関係を表す特性を示す図である。
図8では、横軸はアンテナ装置10Rの高さHrであり、縦軸はアンテナ装置10Rの長さLrである。ここで、長さGNDxr、長さGNDyr、被誘電率εrr、厚さtrは一定とする。
【0079】
図8には、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における高さHrと長さLrの関係を表す特性と、変化量取得部115によって求められる共振周波数f0、fSH、fSLにおける高さHrと長さLrの関係を表す。
【0080】
変化量取得部115は、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における高さHrと長さLrの関係を表す特性として、共振周波数が2.3GHz、2.4GHz、2.5GHz、2.6GHz、2.7GHzの実線で示す特性をメモリ118から読み出してプロットする。
【0081】
そして、変化量取得部115は、周波数取得部113によって取得された共振周波数f0(2.45GHz)と、許容範囲算出部114によって式(1)、(2)に基づいて算出された共振周波数fSH(2.58GHz)及びfSL(2.37GHz)との3つの共振周波数についての高さHrと長さLrの関係を表す特性を補間処理によって求める。
【0082】
補間処理は、アンテナ装置10Rの5つの共振周波数(2.3GHz、2.4GHz、2.5GHz、2.6GHz、2.7GHz)の周波数特性に基づいて、3つの共振周波数f0(2.45GHz)、fSH(2.58GHz)、fSL(2.37GHz)の特性を比例算で求める処理である。
【0083】
このような補間処理で求めた3つの共振周波数f0(2.45GHz)、fSH(2.58GHz)、fSL(2.37GHz)の特性は、
図8に破線で示す通りである。
【0084】
図9は、共振周波数fSH、fSLについての高さHrと長さLrの変換値(変化量)を求める処理を示す図である。
図9では、横軸はアンテナ装置10Rの高さHrであり、縦軸はアンテナ装置10Rの長さLrである。
【0085】
変化量取得部115は、共振周波数f0上の任意の点P0aを選択する。一例として点P0aの座標(Hr,Lr)は(5.4,10)であることとする。点P0aのHrを固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P1aの座標(Hr,Lr)は(5.4,13)である。また、点P0aのLrを固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P2aの座標(Hr,Lr)は(6.4,10)である。
【0086】
変化量取得部115は、点P0aから点P1aへの長さLrの変換値(変化量)として、13/10を取得する。また、点P0aから点P2aへの長さHrの変換値(変化量)として、6.4/5.4を取得する。
【0087】
次に、点P0aに対する点P1a、P2aの関係をアンテナエレメント40の高さHmと長さLmについて求める。
【0088】
図10は、共振周波数fSH、fSLについての高さHrと長さLrの変換値を求める処理を示す図である。
図10では、横軸はアンテナエレメント40の高さHmであり、縦軸はアンテナエレメント40の長さLrである。ここでは、パラメータ算出部112によって算出されたアンテナエレメント40の高さHmと長さLmは、それぞれ、4mm、11mmであることとする。
【0089】
ここでは、2.45GHzにおけるアンテナエレメント40の高さHmと長さLmを表す点P10aの座標(Hm,Lm)=(4,11)を用いて、
図9における点P0aに対する点P1aと点P2aに相当する、点P10aに対する点P11aと点P12aの座標を求める。点P11aは第1座標点の一例であり、点P12aは第2座標点の一例である。
【0090】
点P10aに対する点P11aは、
図9における点P0aに対する点P1aに相当する共振周波数fSL上の点であるため、点P11aの横軸の値は4である。また、点P11aの縦軸の値は、11×(13/10)=14.3である。すなわち、点P11aの座標(Hm,Lm)は(4,14.3)である。
【0091】
また、点P10aに対する点P12aは、
図9における点P0aに対する点P2aに相当する共振周波数fSL上の点であるため、点P12aの縦軸の値は11である。また、点P12aの横軸の値は、4×(6.4/5.4)=4.7である。すなわち、点P12aの座標(Hm,Lm)は(4.7,11)である。なお、ここでは値を小数点第2位で四捨五入している。
【0092】
関係式取得部116は、点P11aと点P12aとを通る直線を共振周波数fSLにおけるアンテナ装置10のアンテナエレメント40の高さHmと長さLmとの関係式として求める。関係式は次式(3)の一般式で表される。
Lm=αHm+β (3)
【0093】
ここで、点P11aと点P12aの座標を用いると、α=-4.46、β=32.1と求まるため、共振周波数fSLにおけるアンテナ装置10のアンテナエレメント40の高さHmと長さLmとの関係式は次式(4)として求められる。式(4)は第1関係式の一例である。
Lm=-4.46Hm+32.1 (4)
【0094】
同様に、関係式取得部116は、
図9における点P3aと点P4aに相当する点P13aと点P14aの座標を用いて、点P13aと点P14aとを通る直線を共振周波数fSHにおけるアンテナ装置10のアンテナエレメント40の高さHmと長さLmとの関係式を次式(5)として求める。なお、点P13aは第3座標点の一例であり、点P14aは第4座標点の一例であり、式(5)は第2関係式の一例である。
Lm=-4.95Hm+26.4 (5)
【0095】
このため、ユーザが設定した許容値を満たす許容範囲内におけるアンテナエレメント40の高さHmと長さLmの上限と下限は、それぞれ式(4)と式(5)で表されることになる。
【0096】
したがって、ユーザによって入力される共振周波数の最小値fminと共振周波数の最大値fmaxにおいて、S11パラメータが-6dB以下になる高さHmと長さLmの組み合わせを求める際には、式(4)、(5)に高さHm及び長さLmのいずれか一方を代入すれば、いずれか他方の値を求めることができる。
【0097】
次に、グランド層30の長さGNDxとGNDyについての関係式について説明する。
【0098】
図11は、長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す特性を示す図である。
図11では、横軸はアンテナ装置10Rの長さGNDxrであり、縦軸はアンテナ装置10Rの長さGNDyrである。ここで、高さHr、長さLr、被誘電率εrr、厚さtrは一定とする。
【0099】
図11には、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す特性と、変化量取得部115によって求められる共振周波数f0、fSH、fSLにおける長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す。
【0100】
変化量取得部115は、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す特性として、共振周波数が2.3GHz、2.4GHz、2.5GHz、2.6GHz、2.7GHzの実線で示す特性をメモリ118から読み出してプロットする。
【0101】
そして、変化量取得部115は、周波数取得部113によって取得された共振周波数f0(2.45GHz)、許容範囲算出部114によって式(1)、(2)に基づいて算出された共振周波数fSH(2.58GHz)、fSL(2.37GHz)の3つの共振周波数についての長さGNDxrと長さGNDyrの関係を表す特性を補間処理によって求める。補間処理は、高さHr、長さLmの場合と同様に比例算で求める処理である。
【0102】
このような補間処理で求めた3つの共振周波数f0(2.45GHz)、fSH(2.58GHz)、fSL(2.37GHz)の特性は、
図11に破線で示す通りである。
【0103】
図12は、共振周波数fSH、fSLについての長さGNDxrと長さGNDyrの変換値(変化量)を求める処理を示す図である。
図12では、横軸はアンテナ装置10Rの長さGNDxrであり、縦軸はアンテナ装置10Rの長さGNDyrである。
【0104】
変化量取得部115は、共振周波数f0上の任意の点P0bを選択する。一例として点P0bの座標(GNDxr,GNDyr)は(32,30)であることとする。点P0bのGNDxrを固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P1bの座標(GNDxr,GNDyr)は(32,37)である。また、点P0bのGNDyrを固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P2bの座標(GNDxr,GNDyr)は(37,30)である。
【0105】
変化量取得部115は、点P0bから点P1bへの長さGNDyrの変換値(変化量)として、37/30を取得する。また、点P0bから点P2bへの長さGNDxrの変換値(変化量)として、37/32を取得する。
【0106】
次に、点P0bに対する点P1b、P2bの関係をアンテナ装置10の長さGNDxとGNDyについて求める。
【0107】
図13は、共振周波数fSH、fSLについての長さGNDxrと長さGNDyrの変換値を求める処理を示す図である。
図13では、横軸はアンテナ装置10の長さGNDxであり、縦軸はアンテナ装置10の長さGNDyである。ここでは、パラメータ算出部112によって算出されたアンテナ装置10の長さGNDxとGNDyは、それぞれ、70mm、70mmであることとする。
【0108】
ここでは、2.45GHzにおけるアンテナ装置10の長さGNDxとGNDyを表す点P10bの座標(Hm,Lm)=(70,70)を用いて、
図12における点P0bに対する点P1bと点P2bに相当する、点P10bに対する点P11bと点P12bの座標を求める。
【0109】
点P10bに対する点P11bは、
図12における点P0bに対する点P1bに相当する共振周波数fSL上の点であるため、点P11bの横軸の値は70である。また、点P11bの縦軸の値は、70×(37/30)=83.3である。すなわち、点P11bの座標(Hm,Lm)は(70,86.3)である。
【0110】
また、点P10bに対する点P12bは、
図12における点P0bに対する点P2bに相当する共振周波数fSL上の点であるため、点P12bの縦軸の値は70である。また、点P12bの横軸の値は、70×(37/32)=80.9である。すなわち、点P11bの座標(Hm,Lm)は(80.9,70)である。なお、ここでは値を小数点第2位で四捨五入している。
【0111】
関係式取得部116は、高さHmと長さLmについての関係式(4)と同様に、点P11bと点P12bとを通る直線を共振周波数fSLにおけるアンテナ装置10の長さGNDxとGNDyとの関係式として求めることができる。
【0112】
また、関係式取得部116は、高さHmと長さLmについての関係式(5)と同様に、点P13bと点P14bとを通る直線を共振周波数fSHにおけるアンテナ装置10の長さGNDxとGNDyとの関係式として求めることができる。
【0113】
次に、基板20の被誘電率εrと厚さtについての関係式について説明する。
【0114】
図14は、被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す特性を示す図である。
図14では、横軸はアンテナ装置10Rの基板20Rの被誘電率εrrであり、縦軸はアンテナ装置10Rの基板20Rの厚さtrである。ここで、高さHr、長さLr、長さGNDxr、長さGNDyrは一定とする。
【0115】
図14には、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す特性と、変化量取得部115によって求められる共振周波数f0、fSH、fSLにおける被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す。
【0116】
変化量取得部115は、アンテナ装置10Rの複数の共振周波数における被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す特性として、共振周波数が2.3GHz、2.4GHz、2.5GHz、2.6GHz、2.7GHzの実線で示す特性をメモリ118から読み出してプロットする。
【0117】
そして、変化量取得部115は、周波数取得部113によって取得された共振周波数f0(2.45GHz)、許容範囲算出部114によって式(1)、(2)に基づいて算出された共振周波数fSH(2.58GHz)、fSL(2.37GHz)の3つの共振周波数についての被誘電率εrrと厚さtrの関係を表す特性を補間処理によって求める。補間処理は、高さHr、長さLmの場合と同様に比例算で求める処理である。
【0118】
このような補間処理で求めた3つの共振周波数f0(2.45GHz)、fSH(2.58GHz)、fSL(2.37GHz)の特性は、
図14に破線で示す通りである。
【0119】
図15は、共振周波数fSH、fSLについての被誘電率εrrと厚さtrの変換値(変化量)を求める処理を示す図である。
図15では、横軸はアンテナ装置10Rの被誘電率εrrであり、縦軸はアンテナ装置10Rの厚さtrである。
【0120】
変化量取得部115は、共振周波数f0上の任意の点P0cを選択する。一例として点P0cの座標(εrr,tr)は(3.7,0.15)であることとする。点P0cのεrrを固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P1cの座標(εrr,tr)は(3.7,0.22)である。また、点P0cのtrを固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P2cの座標(εrr,tr)は(4.2,0.15)である。
【0121】
変化量取得部115は、点P0cから点P1cへの厚さtrの変換値(変化量)として、0.22/0.15を取得する。また、点P0cから点P2cへの被誘電率εrrの変換値(変化量)として、4.2/3.7を取得する。
【0122】
次に、点P0cに対する点P1c、P2cの関係をアンテナ装置10の被誘電率εrと厚さtrについて求める。
【0123】
図16は、共振周波数fSH、fSLについての被誘電率εrrと厚さtrの変換値を求める処理を示す図である。
図16では、横軸はアンテナ装置10の被誘電率εrであり、縦軸はアンテナ装置10の厚さtrである。ここでは、パラメータ算出部112によって算出されたアンテナ装置10の被誘電率εrは3、厚さtrは0.1mmであることとする。
【0124】
ここでは、2.45GHzにおけるアンテナ装置10の被誘電率εrと厚さtrを表す点P10cの座標(εr,tr)=(3,0.1)を用いて、
図15における点P0cに対する点P1cと点P2cに相当する、点P10cに対する点P11cと点P12cの座標を求める。
【0125】
点P10cに対する点P11cは、
図15における点P0cに対する点P1cに相当する共振周波数fSL上の点であるため、点P11cの横軸の値は3である。また、点P11cの縦軸の値は、0.1×(0.22/0.15)=0.15である。すなわち、点P11cの座標(εr,tr)は(3,0.15)である。
【0126】
また、点P10cに対する点P12cは、
図15における点P0cに対する点P2cに相当する共振周波数fSL上の点であるため、点P12cの縦軸の値は0.1である。また、点P12cの横軸の値は、3×(4.2/3.7)=3.4である。すなわち、点P11cの座標(εr,tr)は(3.4,0.1)である。なお、ここでは値を小数点第2位で四捨五入している。
【0127】
関係式取得部116は、高さHmと長さLmについての関係式(4)と同様に、点P11cと点P12cとを通る直線を共振周波数fSLにおけるアンテナ装置10の被誘電率εrと厚さtrとの関係式として求めることができる。
【0128】
また、関係式取得部116は、高さHmと長さLmについての関係式(5)と同様に、点P13cと点P14cとを通る直線を共振周波数fSHにおけるアンテナ装置10の被誘電率εrと厚さtrとの関係式として求めることができる。
【0129】
図17は、制御装置110が実行する処理を示すフローチャートである。
図17に示す処理は、制御装置110がアンテナ設計支援プログラムを実行することによって行われる処理であり、制御装置110がアンテナ設計支援プログラムを実行することによって実現される方法は、実施の形態のアンテナ設計支援方法である。
【0130】
以下では、高さHrと長さLrについての点P0a、点P1a、点P2a(
図9参照)、長さGNDxrと長さGNDyrについての点P0b、点P1b、点P2b(
図12参照)、被誘電率εrrと厚さtrについての点P0c、点P1c、点P2c(
図15参照)を区別しない場合に、それぞれ、点P0、点P1、点P2と称す。
【0131】
また、高さHrと長さLrについての点P3a、点P4a(
図9参照)、長さGNDxrと長さGNDyrについての点P3b、点P4b(
図12参照)、被誘電率εrrと厚さtrについての点P3c、点P4c(
図15参照)を区別しない場合に、それぞれ、点P3、点P4と称す。
【0132】
また、高さHmと長さLmについての点P10a、点P11a、点P12a(
図10参照)、長さGNDxと長さGNDyについての点P10b、点P11b、点P12b(
図13参照)、被誘電率εrと厚さtについての点P10c、点P11c、点P12c(
図16参照)を区別しない場合に、それぞれ、点P10、点P11、点P12と称す。
【0133】
また、高さHmと長さLmについての点P13a、点P14a(
図10参照)、長さGNDxと長さGNDyについての点P13b、点P14b(
図13参照)、被誘電率εrと厚さtについての点P13c、点P14c(
図15参照)を区別しない場合に、それぞれ、点P13、点P14と称す。
【0134】
処理がスタートすると、パラメータ算出部112は、ユーザによって入力される仕様値及び評価値に基づいて、設計対象であるアンテナ装置10の構造を決定するパラメータを算出する(ステップS1)。
【0135】
周波数取得部113は、パラメータ算出部112によって算出された複数のパラメータによって特定されるアンテナ装置10の周波数特性を取得する(ステップS2)。
【0136】
周波数取得部113は、求めた周波数特性からアンテナ装置10の共振周波数f0を取得する(ステップS3)。
【0137】
許容範囲算出部114は、アンテナ装置10の所定の評価値を満たす共振周波数f0のずれの許容範囲を算出する。(ステップS4)。所定の評価値は、ユーザによって選択された評価基準についての所定値である。
【0138】
変化量取得部115は、許容範囲算出部114によって算出された許容範囲を用いて、評価値を満たす上限の共振周波数fSHと、評価値を満たす下限の共振周波数fSLとを求める(ステップS5)。
【0139】
変化量取得部115は、ユーザによって指定された2つのパラメータについての複数の共振周波数における特性をメモリ118から読み出してプロットし、さらに補間処理を行うことにより、共振周波数f0、fSH、fSLにおける2つのパラメータの関係を表す特性を求める(ステップS6)。これにより、高さHrと長さLrについては
図8に示す特性が求められる。
【0140】
変化量取得部115は、ユーザによって指定された2つのパラメータについて、基準モデルとしてのアンテナ装置10Rにおける2つのパラメータの関係を表す特性をメモリ118から読み出し、共振周波数f0上の任意の点の横軸の値を固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点の座標と、共振周波数f0上の任意の点の縦軸の値を固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点の座標とを求める(ステップS7)。
【0141】
より具体的には、変化量取得部115は、共振周波数f0上の任意の点P0を選択し、点P0の横軸の値を固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P1の座標と、点P0の縦軸の値を固定して共振周波数fSLの特性上に移動させた点P2の座標とを求める。
【0142】
変化量取得部115は、アンテナ装置10Rにおける2つのパラメータについて、周波数取得部113によって取得された共振周波数f0と、評価値を満たす下限の共振周波数fSLとの2軸方向(2つのパラメータを軸とする2軸の方向)の比率(変化量)を求める(ステップS8)。
【0143】
比率の求め方は次の通りである。変化量取得部115は、点P0と点P1の縦軸の座標値の比率(変化量)を求めるとともに、点P0と点P2の横軸の座標値の比率(変化量)を求める。縦軸の座標値の比率(変化量)は、点P1の縦軸の座標値を点P0の縦軸の座標値で除算した値である。横軸の座標値の比率(変化量)は、点P2の横軸の座標値を点P0の横軸の座標値で除算した値である。
【0144】
変化量取得部115は、ユーザによって指定された2つのパラメータについて、基準モデルとしてのアンテナ装置10Rにおける2つのパラメータの関係を表す特性をメモリ118から読み出し、共振周波数f0上の任意の点の横軸の値を固定して共振周波数fSHの特性上に移動させた点の座標と、共振周波数f0上の任意の点の縦軸の値を固定して共振周波数fSHの特性上に移動させた点の座標とを求める(ステップS9)。
【0145】
より具体的には、変化量取得部115は、共振周波数f0上の任意の点P0を選択し、点P0の横軸の値を固定して共振周波数fSHの特性上に移動させた点P3の座標と、点P0の縦軸の値を固定して共振周波数fSHの特性上に移動させた点P4の座標とを求める。
【0146】
変化量取得部115は、アンテナ装置10Rにおける2つのパラメータについて、周波数取得部113によって取得された共振周波数f0と、評価値を満たす上限の共振周波数fSHとの2軸方向(2つのパラメータを軸とする2軸の方向)の比率(変化量)を求める(ステップS10)。
【0147】
比率の求め方は次の通りである。変化量取得部115は、点P0と点P3の縦軸の座標値の比率(変化量)を求めるとともに、点P0と点P4の横軸の座標値の比率(変化量)を求める。縦軸の座標値の比率(変化量)は、点P3の縦軸の座標値を点P0の縦軸の座標値で除算した値である。横軸の座標値の比率(変化量)は、点P4の横軸の座標値を点P0の横軸の座標値で除算した値である。
【0148】
関係式取得部116は、ユーザによって指定された2つのパラメータについてパラメータ算出部112によって算出された値によって表される点P10の座標と、ステップS8、S10で求められた比率(変化量)とを用いて、点P11、点P12、点P13、点P14の座標を求める(ステップS11)。
【0149】
具体的には、関係式取得部116は、基準モデルとしてのアンテナ装置10Rにおける2つのパラメータの関係を表す特性から得た点P0と点P1の他方のパラメータの値の比率を、パラメータ算出部112によって算出された複数のパラメータのうち互いに相関を有する2つのパラメータ(点P10の座標)のうちの他方に乗算することによって点P11を求める。
【0150】
また、関係式取得部116は、基準モデルとしてのアンテナ装置10Rにおける2つのパラメータの関係を表す特性から得た点P0と点P2の一方のパラメータの値の比率を、パラメータ算出部112によって算出された複数のパラメータのうち互いに相関を有する2つのパラメータ(点P10の座標)のうちの一方に乗算することによって点P12を求める。
【0151】
また、関係式取得部116は、基準モデルとしてのアンテナ装置10Rにおける2つのパラメータの関係を表す特性から得た点P0と点P3の他方のパラメータの値の比率を、パラメータ算出部112によって算出された複数のパラメータのうち互いに相関を有する2つのパラメータ(点P10の座標)のうちの他方に乗算することによって点P13を求める。
【0152】
また、関係式取得部116は、基準モデルとしてのアンテナ装置10Rにおける2つのパラメータの関係を表す特性から得た点P0と点P4の一方のパラメータの値の比率を、パラメータ算出部112によって算出された複数のパラメータのうち互いに相関を有する2つのパラメータ(点P10の座標)のうちの一方に乗算することによって点P14を求める。
【0153】
ステップS11の処理により、高さHrと長さLrについては
図9に示す点P11、点P12、点P13、点P14が求められる。
【0154】
関係式取得部116は、ステップS11で求めた点P11と点P12から第1関係式を求めるとともに、ステップS11で求めた点P13と点P14から第2関係式を求める(ステップS12)。ユーザによって指定された2つのパラメータが高さHmと長さLmである場合には、第1関係式は式(4)であり、第2関係式は式(5)である。
【0155】
パラメータ算出部117は、関係式取得部116によって取得された関係式(4)及び/又は(5)に、ユーザによって指定された1つのパラメータを代入し、関係式に代入されたパラメータと相関を有するもう1つのパラメータを算出する(ステップS13)。
【0156】
これにより、共振周波数の最小値fminと最大値fmaxにおいて、ユーザによって指定された1つのパラメータと相関を有するパラメータについて、S11パラメータ等の評価項目を満たす値を算出することができる。
【0157】
すなわち、互いに相関を有する2つのパラメータについては、評価値を満たす値を別々に求めることなく、一方の値を式(4)又は(5)に代入することにより、他方の値を容易に求めることができる。このため、計算量を半分に減らすことができ、アンテナの構造に関するパラメータをより速く計算できる。
【0158】
したがって、実施の形態によれば、アンテナの構造に関するパラメータをより速く計算できるアンテナ設計支援装置、アンテナ設計支援プログラム、及びアンテナ設計支援方法を提供することができる。
【0159】
なお、次のような補正機能を追加してもよい。
図18は、実施の形態の変形例のアンテナ設計支援装置100Mの制御装置110Mの機能的な構成を示す図である。制御装置110Mは、主制御部111M、パラメータ算出部112、周波数取得部113、許容範囲算出部114、変化量取得部115、関係式取得部116、パラメータ算出部117、パラメータ補正部119、及びメモリ118Mを有する。
【0160】
アンテナ設計支援装置100Mは、
図3に示すアンテナ設計支援装置100の制御装置110を制御装置110Mに入れ替えた構成を有し、制御装置110Mは、
図3に示す制御装置110の主制御部111及びメモリ118を主制御部111M及びメモリ118Mに入れ替え、さらにパラメータ補正部119を追加した構成を有する。以下、相違点について説明する。
【0161】
主制御部111Mは、
図3に示す主制御部111に次のような試算部としての機能を追加したものである。試算部は、関係式取得部116によって取得される関係式に互いに相関のある2つのパラメータのうちの一方を代入して他方を算出する。そして、試算部は、関係式に代入した一方のパラメータと、関係式によって算出された他方のパラメータとを用いてアンテナ装置10の電磁界シミュレーションを行う。さらに、試算部は、電磁界シミュレーションで所定の性能評価基準を満たすかどうかの試算を行う。
【0162】
すなわち、主制御部111Mに追加された試算部は、関係式取得部116によって取得される関係式が所定の性能評価基準を満たすパラメータを算出できるかどうかを試算する処理部である。
【0163】
例えば、試算部は、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータのうち、高さHmを式(4)に代入して長さLmを求める。試算部は、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータのうちの長さLmのみを式(4)から算出された長さLmに置き換えてアンテナ装置10のモデルの電磁界シミュレーションを行い、所定の性能評価基準を満たすかどうかの試算を行う。所定の性能評価基準を満たさない場合は、関係式取得部116によって取得される関係式が所定の性能評価基準を満たすパラメータを算出できない場合である。
【0164】
より具体的には、関係式取得部116によって取得される関係式が所定の性能評価基準を満たすパラメータを算出できない場合とは、例えば、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータのうちの長さLmのみを式(4)から算出された長さLmに置き換えたパラメータを用いたアンテナ装置10のシミュレーションモデルに基づいて求められる許容範囲の下限fSL2が共振周波数の最小値fminよりも低い場合である。
【0165】
また、試算部は、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータのうち、高さHmを式(5)に代入して長さLmを求める。試算部は、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータのうちの長さLmのみを式(5)から算出された長さLmに置き換えてアンテナ装置10のモデルの電磁界シミュレーションを行い、所定の性能評価基準を満たすかどうかの試算を行う。
【0166】
より具体的には、関係式取得部116によって取得される関係式が所定の性能評価基準を満たすパラメータを算出できない場合とは、例えば、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータのうちの長さLmのみを式(5)から算出された長さLmに置き換えたパラメータを用いたアンテナ装置10のシミュレーションモデルに基づいて求められる許容範囲の上限fSH2が共振周波数の最大値fmaxよりも高い場合である。
【0167】
メモリ118Mは、
図3に示すメモリ118が格納するデータに加えて、主制御部111Mに試算部としての機能が追加されたことに伴い、主制御部111Mが試算部として機能するのに必要なプログラム及びデータをさらに格納する点が異なる。
【0168】
パラメータ補正部119は、パラメータ算出部117によって算出される複数のパラメータのうち試算部としての主制御部111Mによって所定の性能評価基準を満たさないと判定されたパラメータについて補正処理を行う。
【0169】
パラメータ補正部119は、所定の性能評価基準を満たさないパラメータによって決まる許容範囲の下限の共振周波数fSL2又は上限の共振周波数fSH2と、所定の性能評価基準を満たすパラメータによって決まる許容範囲の下限の共振周波数fSL又は上限の共振周波数fSHとの比(fSL/fSL2又はfSH/fSH2)で所定の性能評価基準を満たさないパラメータを補正する。
【0170】
所定の性能評価基準を満たすパラメータによって決まる許容範囲の下限の共振周波数fSL又は上限の共振周波数fSHとしては、パラメータ算出部112によって算出されたパラメータを用いて算出した値を用いればよい。
【0171】
図19は、補正前の点P1~P4を示す図である。
図20は、補正後の点P1~P4を示す図である。
図19に示す点P1~P4が求まり、点P1~P4をアンテナ装置10の座標系に換算した点P11~P14(
図10、
図13、
図16参照)に基づいて2つの関係式が求まり、さらに許容範囲の上限fSHと下限fSLが求まっていることとする。
【0172】
この場合に、所定の性能評価基準を満たさないパラメータによって決まる許容範囲の下限fSL2が共振周波数の最小値fminよりも低い場合には、所定の性能評価基準を満たさないパラメータによって決まる許容範囲の下限の共振周波数fSL2と、所定の性能評価基準を満たすパラメータによって決まる許容範囲の下限の共振周波数fSLとの比(fSL/fSL2)で所定の性能評価基準を満たさないパラメータを補正する。
【0173】
図19に示す点P1、P2の長さLmnに比(fSL/fSL2)を乗算して補正すれば、
図20に示す点P1、P2が得られる。この結果、関係式取得部116は、係数(式(3)のα、βに対応する係数)を補正した式(4)を取得することができる。
【0174】
また、所定の性能評価基準を満たさないパラメータによって決まる許容範囲の上限fSH2が共振周波数の最大値fmaxよりも高い場合には、所定の性能評価基準を満たさないパラメータによって決まる許容範囲の上限の共振周波数fSH2と、所定の性能評価基準を満たすパラメータによって決まる許容範囲の上限の共振周波数fSHとの比(fSH/fSH2)で所定の性能評価基準を満たさないパラメータを補正する。
【0175】
図19に示す点P3、P4の長さLmに比(fSH/fSH2)を乗算して補正すれば、
図20に示す点P3、P4が得られる。この結果、関係式取得部116は、係数(式(3)のα、βに対応する係数)を補正した式(5)を取得することができる。
【0176】
このように、所定の性能評価基準を満たさないと判定されたパラメータがある場合には、共振周波数fSH2、fSL2と共振周波数fSH、fSLとの比(fSH/fSH2又はfSL/fSL2)を乗算することによって、点P1~P4の座標を補正でき、補正した点P1~P4の座標に基づいて、高精度な関係式(4)、(5)を求めることができる。
【0177】
以上、本発明の例示的な実施の形態のアンテナ設計支援装置、アンテナ設計支援プログラム、及びアンテナ設計支援方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0178】
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
性能評価の対象になる第1アンテナ装置について設定される仕様値に基づいて前記第1アンテナ装置の構造を決定する複数の第1パラメータを算出する第1パラメータ算出部と、
前記複数の第1パラメータに基づいて通信周波数を取得する周波数取得部と、
前記第1アンテナ装置の所定の性能評価基準を満たす前記通信周波数のずれの許容範囲を算出する許容範囲算出部と、
基準モデルとしての第2アンテナ装置の構造を決定するとともに互いに相関を有する2つの第2パラメータの前記許容範囲内における前記通信周波数の変化に対応する変化量を求める変化量取得部と、
前記複数の第1パラメータのうち前記2つの第2パラメータに対応する互いに相関を有する2つの第1パラメータと、前記変化量とに基づいて前記互いに相関を有する2つの第1パラメータの関係式を取得する関係式取得部と
を含む、アンテナ設計支援装置。
(付記2)
前記関係式に前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方を代入して他方を算出する第2パラメータ算出部をさらに含む、付記1記載のアンテナ設計支援装置。
(付記3)
前記関係式に代入される前記2つの第1パラメータのうちの一方と、前記関係式から算出される前記2つの第1パラメータのうちの他方とを用いて前記第1アンテナ装置が前記所定の性能評価基準を満たすかどうかの試算を行う試算部と、
前記試算部によって前記所定の性能評価基準を満たさないと判定されると、前記試算に用いられた前記2つの第1パラメータによって決まる前記許容範囲の下限又は上限の通信周波数と、前記許容範囲算出部によって算出される前記許容範囲の下限又は上限の通信周波数との比で、前記関係式に代入される前記2つの第1パラメータのうちの一方と、前記関係式から算出される前記2つの第1パラメータのうちの他方とを補正するパラメータ補正部と
をさらに含む、付記1又は2記載のアンテナ設計支援装置。
(付記4)
前記変化量取得部は、前記変化量として、前記通信周波数を前記許容範囲の上限に移動させたときの前記2つの第2パラメータのうちの一方の第1変化量と他方の第2変化量とを求め、
前記関係式取得部は、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方に前記第1変化量を乗じて得る第1値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方とで特定される第1座標点と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方に前記第2変化量を乗じて得る第2値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方とで特定される第2座標点とを満たす式を前記関係式のうちの第1関係式として取得する、付記1乃至3のいずれか一項記載のアンテナ設計支援装置。
(付記5)
前記第1関係式は線形1次式である、付記4記載のアンテナ設計支援装置。
(付記6)
前記変化量取得部は、前記変化量として、前記通信周波数を前記許容範囲の下限に移動させたときの前記2つの第2パラメータのうちの一方の第3変化量と他方の第4変化量とを求め、
前記関係式取得部は、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方に前記第3変化量を乗じて得る第3値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方とで特定される第3座標点と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの他方に前記第4変化量を乗じて得る第4値と、前記互いに相関を有する2つの第1パラメータのうちの一方とで特定される第4座標点とを満たす式を前記関係式のうちの第2関係式として取得する、付記1乃至5のいずれか一項記載のアンテナ設計支援装置。
(付記7)
前記第2関係式は線形1次式である、付記6記載のアンテナ設計支援装置。
(付記8)
性能評価の対象になる第1アンテナ装置について設定される仕様値に基づいて前記第1アンテナ装置の構造を決定する複数の第1パラメータを算出することと、
前記複数の第1パラメータに基づいて通信周波数を取得することと、
前記第1アンテナ装置の所定の性能評価基準を満たす前記通信周波数のずれの許容範囲を算出することと、
基準モデルとしての第2アンテナ装置の構造を決定するとともに互いに相関を有する2つの第2パラメータの前記許容範囲内における前記通信周波数の変化に対応する変化量を求めることと、
前記複数の第1パラメータのうち前記2つの第2パラメータに対応する互いに相関を有する2つの第1パラメータと、前記変化量とに基づいて前記互いに相関を有する2つの第1パラメータの関係式を取得することと
を含む処理をコンピュータに実行させる、アンテナ設計支援プログラム。
(付記9)
性能評価の対象になる第1アンテナ装置について設定される仕様値に基づいて前記第1アンテナ装置の構造を決定する複数の第1パラメータを算出することと、
前記複数の第1パラメータに基づいて通信周波数を取得することと、
前記第1アンテナ装置の所定の性能評価基準を満たす前記通信周波数のずれの許容範囲を算出することと、
基準モデルとしての第2アンテナ装置の構造を決定するとともに互いに相関を有する2つの第2パラメータの前記許容範囲内における前記通信周波数の変化に対応する変化量を求めることと、
前記複数の第1パラメータのうち前記2つの第2パラメータに対応する互いに相関を有する2つの第1パラメータと、前記変化量とに基づいて前記互いに相関を有する2つの第1パラメータの関係式を取得することと
を含む、アンテナ設計支援方法。
【符号の説明】
【0179】
10、10R アンテナ装置
100、100M アンテナ設計支援装置
110、110M 制御装置
111 主制御部
112 パラメータ算出部
113 周波数取得部
114 許容範囲算出部
115 変化量取得部
116 関係式取得部
117 パラメータ算出部
118、118M メモリ
119 パラメータ補正部