IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】設備診断装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230214BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230214BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20230214BHJP
   G01R 31/34 20200101ALI20230214BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G01H17/00 Z
G01R31/12 A
G01R31/34 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019075271
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020107302
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018244111
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】武田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 憲明
(72)【発明者】
【氏名】小林 高弘
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275831(JP,A)
【文献】国際公開第2006/073013(WO,A1)
【文献】特開平11-103266(JP,A)
【文献】特開2018-151345(JP,A)
【文献】特公昭45-040384(JP,B1)
【文献】特開2018-124108(JP,A)
【文献】特開平02-128173(JP,A)
【文献】特開昭54-122912(JP,A)
【文献】特開平06-258379(JP,A)
【文献】特開2002-131348(JP,A)
【文献】特開2008-196876(JP,A)
【文献】特開平11-174099(JP,A)
【文献】特開昭61-237065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G01H 17/00
G01R 31/12
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の異常時に発せられる高周波信号を受信する高周波信号受信装置と、
前記高周波信号をスーパーヘテロダイン方式により低周波信号に変換する高周波信号圧縮装置と、
前記低周波信号の信号強度に基づいて設備の異常を検出する高周波信号検出装置と、
を備え、
前記高周波信号圧縮装置は、
前記高周波信号の受信周波数を決定する周波数を出力する発振部を備え、
前記発振部の周波数を変化させることにより前記高周波信号の受信周波数を偏移させ、出力帯域を変更することなく前記低周波信号に変換し、
前記発振部は、
一定周波数の信号を出力する発振器と、
三角波の信号を出力する三角波生成器と、
前記三角波を受けて、前記発振器の周波数を変動させて出力するバリアブルディレイラインと、
を備え、前記バリアブルディレイラインの出力信号に応じて前記高周波信号の受信周波数を決定することを特徴とする設備診断装置。
【請求項2】
設備の異常時に発せられる高周波信号を受信する高周波信号受信装置と、
前記高周波信号をダイレクトコンバージョン方式により低周波信号に変換する高周波信号圧縮装置と、
前記低周波信号の信号強度に基づいて設備の異常を検出する高周波信号検出装置と、
を備え、
前記高周波信号圧縮装置は、
前記高周波信号の受信周波数を決定する周波数を出力する発振部を備え、
前記発振部の周波数を変化させることにより前記高周波信号の受信周波数を偏移させ、出力帯域を変更することなく前記低周波信号に変換し、
前記発振部は、
一定周波数の信号を出力する発振器と、
三角波の信号を出力する三角波生成器と、
前記三角波を受けて、前記発振器の周波数を変動させて出力するバリアブルディレイラインと、
を備え、前記バリアブルディレイラインの出力信号に応じて前記高周波信号の受信周波数を決定することを特徴とする設備診断装置。
【請求項3】
前記高周波信号圧縮装置において前記高周波信号を低周波信号に変換し、検出周波数決定装置において前記低周波信号の信号強度が上位から指定個数分の高強度信号周波数を検出指令周波数として出力し、
その後、前記高周波信号圧縮装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号を低周波信号に変換し、前記高周波信号検出装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号に基づいて設備の異常を検出することを特徴とする請求項1または2記載の設備異常検出装置。
【請求項4】
前記検出周波数決定装置は、前記検出指令周波数の更新時、
前記高強度信号周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号を第1解析周波数間隔で解析して信号強度を確認し、信号強度が上位から指定個数分の周波数を中心とした解析周波数範囲を前記第1解析周波数間隔よりも短い第2解析周波数間隔で解析し、各解析周波数範囲から最も信号強度の高い周波数を1つずつ検出指令周波数として出力し、
その後、前記高周波信号圧縮装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号を低周波信号に変換し、前記高周波信号検出装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号に基づいて設備の異常を検出することを特徴とする請求項3記載の設備異常検出装置。
【請求項5】
前記高周波信号圧縮装置において前記高周波信号を低周波信号に変換し、検出周波数決定装置において前記低周波信号の信号強度が上位から指定個数分の高強度信号周波数を中心として拡大周波数範囲を付け加えた高強度拡大周波数を出力し、
その後、前記高周波信号圧縮装置において前記高強度拡大周波数の前記高周波信号を低周波信号に変換し、前記高周波信号検出装置において前記高強度拡大周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号に基づいて設備の異常を検出することを特徴とする請求項1または2記載の設備異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機等の電気設備の異常時に発せられる広帯域の高周波信号をスーパーヘテロダイン方式やダイレクトコンバージョン方式を用いて観測し、電気設備の故障診断を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、変圧器のタンク内にアンテナを設置して部分放電で発生した電磁波を電圧信号として検出する方法が開示されている。また、特許文献2には、回転機のフレーム内に平板型高周波アンテナを設置して部分放電に起因する放射電磁波を検出する方法が開示されている。
【0003】
現在一般的に使用されている無線通信の受信機の一例として、非特許文献1の図1にスーパーヘテロダイン受信機とダイレクトコンバージョン受信機が示されている。
【0004】
(受信周波数と、帯域幅について)
非特許文献1における受信周波数とこの時の帯域幅について検討する。非特許文献1の図1に示されたスーパーヘテロダイン受信機、及びダイレクトコンバージョン受信機においては、周波数シンセサイザーによる発振周波数が受信周波数になる。
【0005】
また、この時の帯域幅は、スーパーヘテロダイン受信機では受信フィルタ(BPF)の帯域幅になり、ダイレクトコンバージョン受信機においては受信フィルタ(LPF)の遮断周波数が、受信時の帯域幅になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5376932号
【文献】特許第3895450号
【非特許文献】
【0007】
【文献】島田理化技法 No. 25 (2016)無線通信用受信機技術
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
部分放電で発生する信号は一般に40MHz以上と高周波であるためディジタル信号として記録する場合は高周波対応の高価なアナログボードを使用する必要がある。つまり、測定対象帯域内の信号を取り込む高速なサンプリングレートに対応したADコンバータが要求される。
【0009】
任意の帯域幅内の信号を取り込む場合、シャノンの定理(標本化定理)により最低でも帯域幅の2倍の周波数のサンプリングクロックが必要になる。また、サンプリングクロックの高速化に伴い、データ保存部のメモリの容量は大容量化が求められ、設備診断装置のコストアップにつながる。
【0010】
以上示したようなことから、設備診断装置において、回転機等の電気設備の異常時に発せられる高周波信号を、より低速かつ安価な構成で受信することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、設備の異常時に発せられる高周波信号を受信する高周波信号受信装置と、前記高周波信号をスーパーヘテロダイン方式により低周波信号に変換する高周波信号圧縮装置と、前記低周波信号の信号強度に基づいて設備の異常を検出する高周波信号検出装置と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、他の態様として、設備の異常時に発せられる高周波信号を受信する高周波信号受信装置と、前記高周波信号をダイレクトコンバージョン方式により低周波信号に変換する高周波信号圧縮装置と、前記低周波信号の信号強度に基づいて設備の異常を検出する高周波信号検出装置と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、その一態様として、前記高周波信号圧縮装置は、前記高周波信号の受信周波数を決定する周波数を出力する発振部を備え、前記発振部の周波数を変化させることにより前記高周波信号の受信周波数を偏移させ、出力帯域を変更することなく前記低周波信号に変換することを特徴とする。
【0014】
また、その一態様として、前記発振部は、任意の周波数の信号を発生させることが可能な周波数シンセサイザーを備え、前記周波数シンセサイザーは、所定の信号を重畳することにより、設定された周波数を中心として周波数偏移を生じさせ、前記周波数シンセサイザーの出力信号に応じて前記高周波信号の受信信号を決定することを特徴とする。
【0015】
また、他の態様として、前記発振部は、一定周波数の信号を出力する発振器と、三角波の信号を出力する三角波生成器と、前記三角波を受けて、前記発振器の周波数を変動させて出力するバリアブルディレイラインと、を備え、前記バリアブルディレイラインの出力信号に応じて前記高周波信号の受信周波数を決定することを特徴とする。
【0016】
また、他の態様として、前記高周波信号圧縮装置は、前記高周波信号の受信周波数を決定する周波数を出力する発振部を備え、前記発振部から複数の周波数の信号を出力することにより、複数の前記高周波信号を一度に取り込み、出力帯域を変更することなく前記低周波信号に変換することを特徴とする。
【0017】
また、他の態様として、前記高周波信号圧縮装置において前記高周波信号を低周波信号に変換し、検出周波数決定装置において前記低周波信号の信号強度が上位から指定個数分の高強度信号周波数を検出指令周波数として出力し、その後、前記高周波信号圧縮装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号を低周波信号に変換し、前記高周波信号検出装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号に基づいて設備の異常を検出することを特徴とする。
【0018】
また、その一態様として、前記検出周波数決定装置は、前記検出指令周波数の更新時、前記高強度信号周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号を第1解析周波数間隔で解析して信号強度を確認し、信号強度が上位から指定個数分の周波数を中心とした解析周波数範囲を前記第1解析周波数間隔よりも短い第2解析周波数間隔で解析し、各解析周波数範囲から最も信号強度の高い周波数を1つずつ検出指令周波数として出力し、その後、前記高周波信号圧縮装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号を低周波信号に変換し、前記高周波信号検出装置において前記検出指令周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号に基づいて設備の異常を検出することを特徴とする。
【0019】
また、他の態様として、前記高周波信号圧縮装置において前記高周波信号を低周波信号に変換し、検出周波数決定装置において、前記低周波信号の信号強度が上位から指定個数分の高強度信号周波数を中心として拡大周波数範囲を付け加えた高強度拡大周波数を出力し、その後、前記高周波信号圧縮装置において前記高強度拡大周波数の前記高周波信号を低周波信号に変換し、前記高周波信号検出装置において前記高強度拡大周波数の前記高周波信号から変換した低周波信号に基づいて設備の異常を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設備診断装置において、回転機等の電気設備の異常時に発せられる高周波信号を、より低速かつ安価な構成で受信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1~5における設備診断装置の概略図。
図2】実施形態1~5における設備診断装置を回転機の部分放電の検出に使用した例を示す図。
図3】部分放電検出結果の模式図。
図4】実施形態1における高周波信号圧縮装置の周波数変換の概要図。
図5】実施形態1における高周波信号圧縮装置の構成図(スーパーヘテロダイン方式)。
図6】高周波信号圧縮装置の入出力信号の実測波形図。
図7】高周波信号検出装置の構成図。
図8】実施形態2における高周波信号圧縮装置の構成図(ダイレクトコンバージョン方式)。
図9】実施形態3における高周波信号圧縮装置の構成図。
図10】実施形態3における高周波信号圧縮装置の周波数変換の概要図。
図11】周波数偏移可能な周波数シンセサイザーの構成例を示す図。
図12】実施形態3における仕様例を示す図(スーパーヘテロダイン方式)。
図13】実施形態3における仕様例を示す図(ダイレクトコンバージョン方式)。
図14】実施形態3における高周波信号圧縮装置の他例を示す構成図。
図15】ダイレクトコンバージョン方式での一般的な受信特性を示す図。
図16】実施形態3における受信特性を示す図。
図17】実施形態4における高周波信号圧縮装置の一例を示す構成図。
図18】実施形態4における発振部の動作概要図。
図19】実施形態4におけるバリアブルディレイラインの構成例を示す図。
図20】実施形態4における仕様例を示す図。
図21】実施形態5における高周波信号圧縮装置の構成図。
図22】実施形態5におけるチャネル発振器およびオフセット周波数発振器の動作概要図。
図23】実施形態5におけるイコライザーの動作概要図。
図24】実施形態5における仕様例を示す図。
図25】従来の設備診断装置の一例を示す概要図。
図26】実施形態2における設備診断装置の概要図。
図27】実施形態3における設備診断装置の概要図。
図28】実施形態4における設備診断装置の概要図。
図29】実施形態5における設備診断装置の概略図。
図30】実施形態6における設備診断装置の概略図。
図31】実施形態6における検出周波数決定装置の構成図。
図32】実施形態6におけるFFT解析器と周波数選定部の動作概略図。
図33】実施形態7における検出周波数決定装置の構成図。
図34】実施形態7における検出周波数先決定装置の構成図。
図35】実施形態7における検出周波数更新装置の構成図。
図36】実施形態7における周波数記憶装置の構成図。
図37】実施形態7におけるFFT解析器と周波数選定部の動作概要図。
図38】実施形態7における周波数選定部の動作概要図。
図39】実施形態8における検出周波数決定装置の構成図。
図40】実施形態8におけるFFT解析器と周波数拡大部の動作概要図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明における設備診断装置の実施形態1~8を図1図40に基づいて詳述する。
【0023】
[実施形態1]
(1)実施形態1の概要
回転機や変圧器等の電気設備に関して、絶縁物の劣化が原因となり部分放電現象が生じる場合や、電気設備の絶縁物に塵埃などの汚損物質が付着することが原因となりトラッキング現象が生じる場合がある。
【0024】
また、蒸気を配管で送る工場や発電所等の設備においても、蒸気配管上のスチームトラップやバルブの異常時に超音波振動が発せられる場合がある。これらの現象をいち早く把握し、設備保全に活用する要望がある。前述の現象は可聴域を超えた比較的高周波な信号として観測される。
【0025】
当該信号を受信するには当該信号よりも更に高速にサンプリングする事が可能な信号受信装置が必要となるが、これらは一般に高価である。しかし、設備保全の観点から考えると、当該信号の厳密な測定は必ずしも必要ではなく、指定した大まかな周波数帯域における強い信号強度を持つ信号成分の有無を判断できれば目的を達せられることが多い。本実施形態1の目的は、安価にかつ簡易的に当該高周波信号の有無を判断する設備診断装置を提供することである。
【0026】
本実施形態1における設備診断装置1の構成を図1に示す。設備診断装置1は、高周波信号受信装置00と、高周波信号圧縮装置10と、A/D変換装置20と、高周波信号検出装置30と、入力装置40と、表示装置50と、データ記憶装置60と、を備える。
【0027】
高周波信号圧縮装置10は、高周波信号受信装置00からの出力信号をより低周波な信号に変換して出力する。A/D変換装置20は、高周波信号圧縮装置10の出力信号をA/D変換する。高周波信号検出装置30は、A/D変換装置20の出力を解析し、高周波信号受信装置00の出力信号に入力装置40に設定された閾値以上の信号強度の高周波信号が含まれるかどうか判断する。表示装置50は、高周波信号検出結果を表示する。データ記憶装置60は、高周波信号検出結果を記憶する。
【0028】
高周波信号受信装置00は電流センサやアンテナ、超音波センサ等の高周波信号を受信するセンサを使用する。高周波信号検出装置30・入力装置40・表示装置50・データ記憶装置60は個別に構成することも可能であるが、パソコンやタブレット等の情報端末機器を用いることにより1台の機器で構成することも可能である。
【0029】
例えば、回転機の部分放電現象を観測する場合、設備診断装置1は図2に示すように被測定回転機2に取り付けて構成する。図2(a)に示すように高周波信号受信装置00を電流センサとして被測定回転機2の接地線3に取り付けることで、部分放電現象が原因で生じる高周波信号を観測できる。同様に、図2(b)に示すように高周波信号受信装置00をアンテナとして被測定回転機2の筐体4の周囲に配置することで、部分放電現象が原因で生じる高周波信号を観測できる。
【0030】
図2の構成において、部分放電を検出した際の模式図を図3に示す。部分放電に起因する信号は一般に40MHz以上と非常に高周波である。当該信号を観測するにはシャノンの定理(標本化定理)から当該信号よりも十分高速なサンプリングを行えるA/D変換装置が必要となる。しかし、高速なA/D変換装置は一般に高価である。また、その計測結果を保存するデータ記憶装置は大きな容量が求められる場合があり、結果的に部分放電を検出する設備診断装置のコストアップにつながる。
【0031】
本実施形態1では、高周波信号圧縮装置10を用いて、例えば部分放電現象のような設備異常時に観測される高周波信号をより低周波な信号に変換する。そして、高周波信号検出装置30を用いて当該低周波信号の信号強度に基づいて観測対象の信号が発生しているか否かを判断する。これにより、高周波なA/D変換装置や大容量のデータ記憶装置を必要とすることなく、設備診断装置を構成できる。
【0032】
(2)実施形態1における高周波信号圧縮装置10
高周波信号圧縮装置10は、高周波信号受信装置00から入力された信号をより低周波な信号に変換する。その概要を図4に示す。高周波信号圧縮装置10は、高周波信号圧縮装置10中に構成される周波数シンセサイザーの周波数fcを中心とした入力帯域a(fc-fh~fc-fl)および入力帯域b(fc+fl~fc+fh)の帯域を入力帯域とする。そして、高周波信号圧縮装置10は、入力帯域中に入力される信号を出力帯域c(fl~fh)の信号に変換して出力する。
【0033】
図4に示すように、例えば、高周波信号圧縮装置10に周波数f1の入力信号1が入力されると、高周波信号圧縮装置10は周波数|f1-fc|の出力信号1を出力する。同様に、高周波信号圧縮装置10に周波数f2の入力信号2が入力されると、高周波信号圧縮装置10は周波数|f2-fc|の出力信号2を出力する。
【0034】
高周波信号圧縮装置10は、例えば、図5に示すように、スーパーヘテロダイン方式で構成できる。スーパーヘテロダイン方式は、利得を大きく持つことができ、入力信号を高感度に受信できることを特徴とする。
【0035】
図5に示すように、ローノイズアンプLNAは受信信号RFSIGを増幅する。高周波バンドパスフィルタRFBPFは目的の信号のみを通過させる。第1混合器MIX1は、高周波バンドパスフィルタRFBPFの出力と周波数シンセサイザー5の出力とを混合する。中間周波バンドパスフィルタIFBPFはスーパーヘテロダイン方式において、中間周波数に変換した信号を選択的に取り出す。
【0036】
スーパーヘテロダイン方式などでは、一度中間周波数に変換した信号から変調波を取り出す。この時、中間周波数と同じ周波数をローカルオシオレータLOで生成する。第2混合器MIX2は、中間周波バンドパスフィルタIFBPFの出力とローカルオシオレータLOの出力を混合する。ローパスフィルタLPFは低周波のみをベースバンド復調信号BBSIGとして出力する。
【0037】
例えば、回転機等の電気設備の部分放電現象は、40MHz程度の周波数帯域に観測され、当該周波数帯域の信号を計測するには一般に40MHzよりも十分高速な計測器を必要とする。当該周波数帯域を計測する機器は、40MHzよりも十分高速にサンプリングできるA/D変換装置20が必要であり、これは一般に高価である。
【0038】
そこで、例えば、図4中の入力帯域aを39.060MHz~39.099MHz、入力帯域bを40.001MHz~40.040MHzになるように高周波信号圧縮装置10を構成する。そうすると、高周波信号圧縮装置10は高周波信号受信装置00から入力される信号のうち39.060MHz~39.099MHzおよび40.001MHz~40.040MHzの信号を、1kHz~40kHz帯域の信号に変換して出力する。
【0039】
これは図4中の出力帯域cが1kHz~40kHzとなることを意味する。サンプリング周波数100kHz程度のA/D変換装置20を用意しておけば、高周波信号受信装置00からの入力信号のうち40MHz±40kHz帯域に信号強度の大きい信号があるかを判断することが可能となる。
【0040】
以上より、高速なA/D変換装置を必要とすること無く、低 速なA/D変換装置で設備診断装置を構成す ることができる。結果的に設備診断装置1のコスト削減に貢献でき る。ただし、本実施形態1では高周波信号圧縮装置10の入力帯域および出力帯域を特定の周波数に限定するものではなく、計測目的に応じて帯域周波数を変更できる構成とする。
【0041】
表1の条件において高周波信号圧縮装置10を動作させた場合における実測した入出力信号を図6に示す。図6は高周波信号圧縮装置10が125.035MHzの入力信号を35kHzの出力信号に変換していることを示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(表1における「高周波信号圧縮装置10の出力ゲイン」について)
例えば、周波数125.035MHzの信号から125MHzの成分を取り除き、35kHzの成分へ変換する場合、その信号成分の強度は非常に小さいものになり、変換後の信号成分を目的に応じて増幅することは信号処理手法として一般的である。図6では入力信号と出力信号を比較するため、出力信号成分の増幅を行っている。
【0044】
(3)A/D変換装置20
A/D変換装置20は、高周波信号圧縮装置10の出力信号をA/D変換する。「(2)実施形態1における高周波信号圧縮装置10」にて述べた通り、高周波信号圧縮装置10を用いることにより、A/D変換装置20のサンプリング周波数が低周波であっても、高周波信号受信装置00の出力信号に含まれる、より高周波な信号成分を取り込むことが可能となる。
【0045】
(4)高周波信号検出装置30
まず、高周波信号検出装置30の処理の概要を説明する。
(ア)A/D変換装置20からA/D変換結果信号を受け取り、サンプル/ホールドする。
(イ)ホールドしたディジタル信号をFFT(Fast Fourier Transform)解析して、各周波数成分の信号強度を算出する。
(ウ)上記の信号強度と入力装置40から出力された信号強度閾値とを比較し、信号強度閾値以上の信号が含まれる場合はカウンタでカウントする。
(エ)リフレッシュトリガ信号T001が入力される毎に上記(ア)~(ウ)の処理を繰り返す。
(オ)リフレッシュトリガ信号T002が入力されるまでに、上記(ウ)のカウント回数がカウンタ閾値に達した場合、設備の異常を検出したと見なし、異常検出信号をLowからHighに遷移させる。
【0046】
次に、図7に基づいて高周波信号検出装置30の処理を詳細に説明する。高周波信号検出装置30は、周波数解析部300と信号強度比較部310とタイマー部320とを備える。
【0047】
周波数解析部300は、サンプル/ホールド器301およびFFT解析器302を有する。サンプル/ホールド器301は、タイマー部320からリフレッシュトリガ信号T001が入力された際にA/D変換装置20から入力されるA/D変換結果D20の取り込みを開始する。そして、入力装置40から入力されたサンプル時間長L40の時間分のA/D変換結果D20をディジタル信号群D30として保持する。
【0048】
サンプル/ホールド器301は、タイマー部320から再度リフレッシュトリガ信号T001が入力されるまでディジタル信号群D30を保持する。サンプル/ホールド器301は、再度リフレッシュトリガ信号T001が入力された際、再度A/D変換結果D20の取り込みを開始し、ディジタル信号群D30を更新する。サンプル/ホールド器301は、リフレッシュトリガ信号T001が入力される度に上記動作を繰り返す。
【0049】
FFT解析器302はサンプル/ホールド器301から入力されるディジタル信号群D30をFFT解析し、周波数群F30の領域の各周波数成分に対して各信号強度を出力する。図7では当該信号強度を信号強度群I30として示している。ここでの周波数群F30の各周波数とは、図4中の出力帯域c(周波数(fl~fh))内から一定の分解能で選定された周波数成分である。当該周波数分解能の最小値は、高周波信号検出装置30のハードウェア性能に依存して決定される。
【0050】
信号強度比較部310は信号強度比較器311およびカウンタ312を有する。信号強度比較器311は周波数解析部300から入力された周波数群F30の信号強度群I30と、入力装置40から入力された信号強度閾値TH40を比較する。
【0051】
信号強度群I30の全ての信号強度が信号強度閾値TH40よりも小さい場合、信号強度比較器311は信号強度判定結果信号R30をLowの状態から遷移させない。信号強度群I30の信号のうち、一つでも信号強度閾値TH40以上の信号強度を持つ信号が存在した場合、信号強度比較器311は信号強度判定結果信号R30をLowからHighへ遷移させる。
【0052】
この場合、信号強度比較器311はタイマー部320からリフレッシュトリガ信号T001が入力されるまで信号強度判定結果信号R30をHighの状態に保ち、リフレッシュトリガ信号T001が入力された際に信号強度判定結果信号R30をHighからLowへ遷移させる。
【0053】
カウンタ312は信号強度比較器311から入力される信号強度判定結果信号R30がLowからHighへ遷移する回数をカウントする。当該カウント回数がカウンタ閾値TH41未満の場合、カウンタ312は異常検出信号R31をLowの状態から遷移させない。当該カウント回数がカウンタ閾値TH41以上になるとカウンタ312は異常検出信号R31をLowからHighへ遷移させる。
【0054】
この場合、カウンタ312は、タイマー部320からリフレッシュトリガ信号T002が入力されるまで異常検出信号R31をHighに保つ。カウンタ312は、タイマー部320からリフレッシュトリガ信号T002が入力されると当該カウント回数を0に戻し、かつ、異常検出信号R31がHighならばLowへ遷移させる。
【0055】
以上の動作により、高周波信号検出装置30はディジタル信号群D30・周波数群F30・信号強度群I30・信号強度判定結果信号R30・異常検出信号R31を表示装置50およびデータ記憶装置60へ出力する。
【0056】
(5)表示装置50
表示装置50は、高周波信号検出装置30からディジタル信号群D30・周波数群F30・信号強度群I30・信号強度判定結果信号R30・異常検出信号R31を受け取り表示する。表示内容の更新タイミングは、その目的によって選択すべきである。
【0057】
例えば、A/D変換結果D20や信号強度群I30の時系列変化を重要視するならば、上記要素を受け取る度に表示内容を更新する動作が望ましい。また、信号強度が高い場合のみの表示したい場合は、信号強度判定結果信号R30または異常検出信号R31をトリガ信号として、ディジタル信号群D30・周波数群F30・信号強度群I30の表示内容を更新する動作が望ましい。本実施形態1においては表示装置の更新タイミングに関しては限定しない。
【0058】
(6)データ記憶装置60
データ記憶装置60は、高周波信号検出装置30からディジタル信号群D30・周波数群F30・信号強度群I30・信号強度判定結果信号R30・異常検出信号R31を受け取り記録する。記録のタイミングに関しては、「表示装置50」と同様にその目的によって選択すべきであり、本実施形態1においては記録のタイミングに関しては限定しない。
【0059】
以上示したように、本実施形態1によれば、設備の異常時に発せられる高周波信号を、スーパーヘテロダイン技術を用いてより低周波な信号に変換することで、当該高周波信号の有無を判断する設備診断装置を安価に構成することができる。一般に、高周波な信号を受信・記録する装置は高額であるが、スーパーヘテロダイン技術を用いてより低周波な信号に変換することで、当該装置を比較的低速かつ安価な装置に置き換えることができる。
【0060】

[実施形態2]
実施形態1ではスーパーヘテロダイン方式で高周波信号圧縮装置10を構成した設備診断装置1について説明した。スーパーヘテロダイン方式は、入力信号を高感度に受信できることを特徴とする。一方、当該方式はその構成の複雑さからICチップ化が難しく、回路として構成する際に他方式に比べて部品点数が多くなる場合がある。その結果、装置として高コスト化を招く。
【0061】
そこで、本実施形態2では、ダイレクトコンバージョン方式で高周波信号圧縮装置10を構成した設備診断装置1について説明する。ダイレクトコンバージョン方式の高周波信号圧縮装置10は、例えば図8のように構成できる。図8に示すように、ローノイズアンプLNAは受信信号RFSIGを増幅する。高周波バンドパスフィルタRFBPFは目的の信号のみを通過させる。混合器MIXは、高周波バンドパスフィルタRFBPFの出力と周波数シンセサイザー5の出力とを混合する。ローパスフィルタLPFは低周波のみをベースバンド復調信号BBSIGとして出力する。
【0062】
本実施形態2は実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、実施形態1と比べて、ダイレクトコンバージョン方式は、ICチップ化しやすく、部品点数が少ない。その結果、装置として高コスト化を抑制することが可能となる。
【0063】
[実施形態3]
(1)実施形態3の概要
実施形態1および実施形態2の高周波信号圧縮装置10は、設備診断装置の動作前に入力周波数範囲を設定する方式であった。上記方式においてより広範囲の周波数帯域を入力周波数範囲とするには、図4の入力帯域aおよび入力帯域bをより広帯域に設定する必要がある。
【0064】
しかし、本手法は高周波信号圧縮装置10の出力信号の周波数範囲がより広帯域に拡大することを示し、A/D変換装置20をより高周波領域に対応させる必要がある。また、そのA/D変換結果を記録するデータ記憶装置60をより大容量にする必要がある。よって、上記の方法はハードウェアの規模が大きくなるため、設備診断装置1のコストを考慮にいれると本手法において入力周波数範囲を拡大することは好ましくない。
【0065】
そこで、本実施形態3では高周波信号圧縮装置10で実施形態1,2と異なる動作を行い、設備診断装置1の入力周波数をより広範囲に拡大する。本手法は、A/D変換装置20やデータ記憶装置60を実施形態1,実施形態2より高性能なものに変更することなく、より広帯域の周波数信号を取得することが可能である。
【0066】
(2)実施形態3の高周波信号圧縮装置10
図9に本実施形態3における高周波信号圧縮装置10の構成を、図10にその動作概要を示す。本実施形態3の高周波信号圧縮装置10は、入力装置40から指定された周波数変化幅Δfの範囲内において、周波数シンセサイザー5の信号の周波数を段階的に変化させる。
【0067】
これは、例えば下記のような一連の変換を行う。図10における周波数シンセサイザー周波数fc1を中心とした周波数範囲を低周波信号へ変換し、その後周波数シンセサイザー周波数fc2を中心とした周波数範囲を低周波信号へ変換する。
【0068】
上記動作を周波数シンセサイザー周波数fc1からfcn(n=2以上の整数)まで繰り返し行うことにより、図10の出力帯域に示す周波数変換結果を得る。
【0069】
図9(a)に、スーパーヘテロダイン方式の受信機に適用した例を示す。図9(b)に、ダイレクトコンバージョン方式の受信機に適用した例を示す。図9において、図5図8と同様の箇所は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
本実施形態3では、周波数シンセサイザー5,三角波生成器6で発振部を構成する。前記発振部は、高周波信号の受信周波数を決定する。図9(a),(b)に示すように、三角波生成器6から周波数シンセサイザー5に三角波が出力される。発振部の出力周波数を変化させることにより、高周波信号の受信周波数を偏移させ、低周波信号の出力帯域を変更することなく低周波信号に変換する。
【0071】
図11に周波数を偏移させることが可能な周波数シンセサイザー5の構成例を示す。図11は任意の周波数の信号を発生させることが可能なシンセサイザーの一般的な例となる。図11において、1/Nカウンタ8aは、基準クロック用水晶発振器XTALから出力された基準クロックを分周し、位相比較器9に出力する。同様に、1/Mカウンタ8bは、電圧制御発振器VCOの出力を分周し、位相比較器9に出力する。
【0072】
位相比較器9では、入力された2つの信号の位相差に比例した値を出力する。ローパスフィルタLPFは低周波成分のみ抽出する。この値が電圧制御発振器VCOの制御電圧になる。
【0073】
周波数シンセサイザー5においては位相比較器9に入力される信号の周波数、位相差が一致する様に制御され、結果的に1/Mカウンタ8b,1/Nカウンタ8aの1/M、1/Nの比率に対応した式 XTAL÷N=VCO÷Mなる発振周波数の電圧制御発振器VCO出力が得られる。図11の構成では、通常の周波数シンセサイザー5におけるローパスフィルタLPFの出力に、加算器ADDにおいて三角波の信号を加算する機構となっている。ここに重畳された三角波により、電圧制御発振器VCOの周波数が、設定された発振周波数を中心として、上下に周波数偏移が生じる。
【0074】
これは、一般的にはFM変調と言われる動作であり、この三角波の周期、波高値により、周波数偏差の範囲、変調周期が変化する。周波数シンセサイザー5の周波数を直線的に変化させる場合、加える信号は三角波を用いるが、必ずしも三角波である必要は無い。周波数偏移の有る部分を重点的に行いたい等の必要に応じて、この波形を変える事で任意の遷移条件に合わせる事が可能である。
【0075】
ここで、図11において三角波を加えるのは、前提条件として電圧制御発振器VCOの発振周波数が制御電圧に対して線形に変化する場合、対域内の低い方から高い方までもれなく過不足なく掃引する為には、三角波が最適な制御電圧な為である。
【0076】
本実施形態3は、図9(a),(b)に示すように、一般的な受信方式の受信機において、周波数シンセサイザー5の発振周波数に対して三角波等により周波数偏移を加えることを特徴とした方式である。
【0077】
次に、図12に基づいて、スーパーヘテロダイン方式を適用した場合の仕様例を説明する。ここでは、10KHz単位で受信周波数を設定可能とする。
【0078】
例として、145MHz~155MHz帯の信号を受信する場合を考える。また、周波数シンセサイザーの発振周波数50MHz,中間周波数バンドパスフィルタIFBPSの通過帯域95MHz~105MHz,ローカルオシオレータLOの周波数100MHz,ローパスフィルタLPFの帯域幅1MHzとする。
【0079】
三角波生成器6がなく周波数シンセサイザー5の周波数が偏移しない場合、中間周波数バンドパスフィルタIFBPSを通過する信号95MHz~105MHzに対して、ローカルオシオレータLOの周波数100MHzとの差の信号から、ローパスフィルタLPFで通過可能な信号は、中間周波数バンドパスフィルタIFBPS通過信号中99MHz~101MHzのみとなる。
【0080】
これは、入力信号に換算すると、149MHz~151MHzの範囲の信号が、ベースバンド復調信号BBSIGに出力されたことを意味する。
【0081】
次に、三角波の信号を入力し周波数シンセサイザー5の周波数が偏移する場合、周波数シンセサイザー5の出力が50MHzから、46MHz~54MHzに周波数範囲が広がる。この結果、中間周波数バンドパスフィルタIFBPSの通過信号の範囲が拡大し、結果的に145MHz~155MHzの範囲の信号が、帯域幅1MHzのローパスフィルタLPFを通過し、出力される事になる。
【0082】
この結果、受信帯域幅10MHzの信号が、結果的に1MHzの帯域幅に圧縮されたことになる。
【0083】
ここで、周波数シンセサイザー5は、基準クロック用水晶発振器XTALの周波数10MHz,1/Nカウンタ8aのN=1000,1/Mカウンタ8bのM=4000~6000であり、電圧制御発振器VCOの出力を40MHz~60MHzとすると、1/Nカウンタ8a,1/Mカウンタ8bの出力は共に10KHzとなる。ローパスフィルタLPFの帯域幅は10KHz以下とする。三角波生成器6の出力は1KHz±0.4Vとする。電圧制御発振器VCOは+1Vで60MHz,0Vで50MHz,-1Vで40MHzとすると、三角波生成器6の出力が±0.4Vであるため、46MHz~54MHzの周波数を出力する。
【0084】
次に、図13に基づいて、ダイレクトコンバージョン方式を適用した場合の仕様例を説明する。図12と同様の箇所はその説明を省略する。
【0085】
三角波を電圧制御発振器VCOの制御端子に加算する事で、例えば、電圧制御発振器VCOの発振周波数が140MHzの場合、三角波による変調の結果、電圧制御発振器VCOの発振周波数の範囲は136MHz~144MHzになり、この時の受信信号RFSIGのベースバンド復調信号BBSIG出力可能範囲は、135MHz~145MHzになる。また、この時のベースバンド復調信号BBSIGの出力は、全て帯域幅1MHz以内に収まっている。
【0086】
更に、図14には、通信装置などで非常に多く用いられるダブルスーパーヘテロダイン方式に適用した例を示す。図14において、初段の周波数シンセサイザー5により受信周波数が設定され、第1混合器MIX1により高周波バンドパスフィルタRFBPFの出力と混合され、固定周波数の第一中間周波数に変換される。
【0087】
この第一中間周波数の信号は、第一中間周波数用のバンドパスフィルタ1stIFBPFによりフィルタリングされ、他の妨害波から分離される。ダブルスーパーヘテロダイン方式では、この信号は更に、第2混合器MIX2において固定発振器7の出力と混合され、第二中間周波数に変換される。そして、第二中間周波数は第二中間周波数用のバンドパスフィルタ2ndIFBPFによりフィルタリングされる。最後に、第二中間周波数用のバンドパスフィルタ2ndIFBPFの出力は第三混合器MIX3において第二中間周波数と同じ周波数のローカルオシオレータLO(局部発振器)の出力と混合され、ベースバンド復調信号BBSIGが得られる。
【0088】
(作用・動作の説明)
図15に、非特許文献1の図1(b)ダイレクトコンバージョン方式での一般的な受信特性を示す。図15の周波数シンセサイザーによる矢印は受信周波数を示す。
【0089】
一般的なダイレクトコンバージョン方式の場合、受信周波数(周波数シンセサイザー)を中心として、上下に帯域幅分の受信帯域が発生する。ダイレクトコンバージョン方式の場合、受信周波数の上下に、非特許文献1の図1(b)ダイレクトコンバージョン方式で示された受信フィルタ(BPF)で示された帯域幅が、図15の台形で示された領域になり、このエリアが受信帯域になる。ダイレクトコンバージョン方式では、周波数シンセサイザーで生成された周波数の上下に受信帯域が存在する。
【0090】
次に図15において、目的信号F1,F2,F3を考える。図15の場合、目的信号F1,F2は受信帯域内であり受信される。しかしながら、目的信号F3は受信帯域外であり、このままでは受信されない。
【0091】
次に、高周波信号圧縮装置10を図9(b)の構成とした場合の受信特性を図16に示す。高周波信号圧縮装置10を図9(b)の構成とした場合、周波数シンセサイザー5は図16の周波数シンセサイザーLから周波数シンセサイザーHまで遷移したとすると、入力信号に対するバンド幅も見かけ上、周波数変化幅Δf分広がる事になる。この結果、目的信号F3も受信される事になる。また、この時、出力される信号の帯域幅は、元々のバンド幅(W)のままであり、広がる事は無い。
【0092】
以上示したように、本実施形態3によれば、周波数シンセサイザー5の信号の周波数を段階的に変化させることにより、出力帯域を広帯域に変更することなく、実施形態1や実施形態2よりも広帯域の信号を受信することが可能となる。その結果、A/D変換装置20やデータ記憶装置60を高コストな構成にすることなく、より広帯域の信号を受信するができる。
【0093】
[実施形態4]
(1)実施形態4の概要
実施形態3では、高周波信号圧縮装置10の周波数シンセサイザー5に外部から信号を入力することで周波数を段階的に変化させ、実施形態1や実施形態2よりも広帯域の信号を受信する手法について説明した。しかし、外部からの信号を以て周波数を変更できる周波数シンセサイザー5は一般にあまり精度が高くない。従って実施形態3では厳密には設定した中心周波数と異なる周波数を中心として動作している場合がある。
【0094】
そこで、本実施形態4では、実施形態3における周波数シンセサイザー5を発振器およびバリアブルディレイラインを用いた構成に変更することにより、中心周波数をより高精度に設定する手法について説明する。
【0095】
(2)実施形態4の高周波信号圧縮装置10
図17に本実施形態4における高周波信号圧縮装置10の構成を示す。本実施形態4における発振部11は、三角波生成器6と、一定周波数の信号を出力する発振器12と、外部から信号を受けて入力信号の周波数を変動させて出力するバリアブルディレイライン13と、を備える。
【0096】
発振器12は例えば水晶発振器で構成できる。本手法によれば、発振器12は固定の周波数で良いため高安定な水晶発振器等を用いることができ、高精度な発振が可能となる。
【0097】
図17において、発振器12の出力はバリアブルディレイライン13を通り混合器MIXに入力される。バリアブルディレイライン13の出力信号に応じて高周波信号の受信周波数が決定される。バリアブルディレイライン13には、三角波生成器6により三角波が入力される。このバリアブルディレイライン13は、外部からの制御信号により遅延量が変化するものとする。更にバリアブルディレイライン13は三角波により遅延量が変化するものとする。
【0098】
図18に、発振器12、三角波生成器6、バリアブルディレイライン(局部発信器出力)13の出力を示す。このバリアブルディレイライン13の構成例を図19に示す。
【0099】
図19に示すように、CONTROLL端子は可変容量ダイオードに接続され、この端子の印可電圧により可変容量ダイオードの静電容量が変化する。これにより、バリアブルディレイライン13のINPUTからOUTPUTまでの遅延時間が変化する。
【0100】
図18に示すように、発振器12の出力は、バリアブルディレイライン13通過時、遅延量の変化の為、ドップラー効果のような作用を受ける。その結果、図18の局部発振器出力の波形に示すように、発振出力の周波数変化が生じる。この変化は、一種のFM変調に相当し、遅延量が増加している状況では周波数が低下し、遅延量が減少している状況では周波数が増加する。また、この周波数の変動幅は、時間当たりの遅延量の変化で決定される。
【0101】
次に、図20に基づいて、三角波生成器6から出力される三角波の設定方法を説明する。ここで、発振器12の中心周波数を150MHzとし、周波数を±4MHz変動させる場合を例に説明する。
【0102】
発振器12の中心周波数150MHz,±4MHzの変動であるため、変動幅は4/150となる。バリアブルディレイライン13で必要な遅延時間は、4/150秒となる。三角波生成器6の1周期あたりの遅延変化量は2μSとなる。1秒当たりの変化の頻度は、4/150÷2μS≒1.333E4(13.33KHz)となる。
【0103】
以上から、三角波の周波数は13.33・・・KHzになる。この時、発振部11からは、中心周波数を150MHzに設定した場合、見かけ上、146MHz~154MHzの範囲で発振する発振器と同等になる。この結果、低速ADコンバータには、145MHz~155MHzの範囲の信号が、帯域幅1MHzで入力される事になる。
【0104】
以上示したように、本実施形態4の方式を用いた場合でも、発振部11の周波数を可変にすることが可能であり、実施形態3と同様の作用効果を奏する。この方式のメリットとしては、元になる発振器12は固定の周波数で良いため、高安定な水晶発振器などを用いることができる。この事から、受信信号のチャンネルを指定する場合、チャンネル周波数の精度を高くすることが可能になる。その結果、本実施形態4は、A/D変換装置20やデータ記憶装置60を実施形態1および実施形態2より高性能なものに変更することなく、実施形態1および実施形態2より広帯域の周波数信号を、実施形態3よりも高精度に取得することが可能である。
【0105】
なお、本実施形態4は、例として、ダイレクトコンバージョン方式で説明したが、スーパーへテロダイン方式でも適用可能である。
【0106】
[実施形態5]
(1)実施形態5の概要
実施形態3および実施形態4では、広帯域の信号を受信する際に高周波信号圧縮装置10の入力周波数範囲を段階的に変更する手法について述べた。しかし、上記手法では測定対象とする信号が連続的に出力される信号で無く単発的な信号の場合、入力周波数範囲の変更を行っている間に測定対象の信号を取りこぼす場合がある。
【0107】
また、制御回路で周波数シンセサイザーの周波数を切り替えた場合、周波数が安定するまである程度時間を空ける必要がある。
【0108】
また、受信周波数を切り替えて、端から端まで掃引する為のソフトウェア、或いは、ハードウェアによる一連のシーケンスを実行する手段が必要になる。
【0109】
そこで、本実施形態5では入力周波数範囲を段階的に変更するのではなく、複数の周波数帯域を一度に取り込み、低周波信号に変換して出力する手法を説明する。本実施形態5は、A/D変換装置20やデータ記憶装置60を実施形態1~実施形態2より高性能なものに変更することなく、より広帯域な信号を同時に取得すること可能である。
【0110】
(2)実施形態5の高周波信号圧縮装置10
図21に本実施形態5の高周波信号圧縮装置10の構成、図22にその動作概要を示す。図9図17と同様の箇所はその説明を省略する。本実施形態5の発振部14はチャンネル発振器15のチャンネル周波数Fcを中心にオフセット周波数発振器16のオフセット周波数Foの整数倍の周波数を足し合わせた周波数を出力する(図22の最下段参照)。
【0111】
図21に示すように、OSCMIXにおいて、チャンネル発振器15から出力されたチャンネル周波数Fcとオフセット周波数発振器16から出力されたオフセット周波数Foとが混合される。チャンネル発振器15は、目的のチャンネル周波数Fcを選択する目的のものである。また、オフセット周波数Foは、チャンネル周波数Fcを中心とした、受信帯域の間隔を決定する。
【0112】
チャンネルBPF17は目的とする周波数帯域を取り出す為のフィルタである。その後のイコライザー18は、各周波数成分のレベルを均一化する為の物である。この発振出力は、混合器MIXに入力され、受信信号RFSIGと混合される。
【0113】
(動作説明)
ここで、オフセット周波数発振器16とOSCMIXの間には加算器19があり、生成された発振出力をまたOSCMIXに入力する。この方式では、合成された発振出力がまたOSCMIXに混合される。これにより、合成された発振出力がまたオフセット周波数Foにより、元の周波数±オフセット周波数なる発振出力が生成される。
【0114】
図22にその関係を示す。図22において、チャンネル発振器15のチャンネル周波数Fcにオフセット周波数Foの整数倍が加減算され、チャンネル発振器15のチャンネル周波数Fcを中心として、上下にオフセット周波数Foの整数倍だけ広がった発振出力が得られる。具体的には、図21のOSCMIXには、図22のチャンネル発振器15のチャンネル周波数Fcを中心に、上下に複数のN倍×Foの間隔を持った複数の発振成分を含んだ発振出力が入力される。
【0115】
図23はイコライザー18の動作を示したものである。このイコライザー18の目的は、生成された発振出力の各周波数成分のレベル差が均一になるように生成する為である。これは、図21において、混合器MIX入力の発振出力の各周波数成分にレベル差があると、各周波数成分で変換レベルに差が生じる可能性がある。そこで、イコライザー18により発振出力の各周波数成分のレベル差が均一になるように補正している。
【0116】
また、図21のチャンネルBPF17は、図22の様な発振出力から、観測対称として必要な帯域成分を抽出するための物である。
【0117】
次に、図24に基づいて、本実施形態5の仕様例を説明する。ここでは、帯域幅90MHz~100MHzの場合で説明する。
【0118】
この場合、発振部14で95MHzを中心に、90MHz~100MHzの範囲の発振周波数を生成する。この方式では、チャンネル発振器15のチャンネル周波数Fcを中心として、オフセット周波数発振器16のオフセット周波数Foで周波数変換された発振出力が、元の周波数に重畳される形となる。この場合の設定では、チャンネル周波数Fcの95MHzを中心として、オフセット周波数Foの1MHz間隔で、チャンネルBPF17の範囲(91MHz~99Mz)内で発振する。
【0119】
この結果、受信信号RFSIGに対しては、90MHz~100MHzの範囲内で低速ADコンバータに入力される。
【0120】
以上の動作により、高周波信号受信装置00から高周波信号圧縮装置10へ入力された信号のうち、観測対象とする周波数帯域の信号を同時に取得し、低周波信号に変更することが可能となる。
【0121】
さらに、この発振部14は、図22に示した様にチャンネル発振器15のチャンネル周波数Fcを中心に、上下にN倍×Foの間隔を持った複数の発振成分を含んだ発振出力が生成される。これは、PLLを用いなくても高安定で受信可能な受信機を固定周波数の発振器を組み合わせる事で容易に構成できることになり、実現する上で利点となる。
【0122】
また、この方式では、必要なチャンネル成分を順番で無く同時に生成できる。この事は、この方式を用いれば、必要な帯域内の信号を同時に取り込むことが可能となる。これは、この方式を用いる事で、必要な複数のチャンネルの信号を同時に取り込めることになる。
【0123】
なお、本実施形態5では、例としてダイレクトコンバージョン方式で説明したが、スーパーヘテロダイン方式でも適用可能である。
【0124】
以下、従来方式と本実施形態3~5の効果の相違点を説明する。 図25は従来方式において高周波帯の広い範囲の信号を検出して、表示装置50に表示する設備診断装置の例を示す。
【0125】
図25は、ダイレクトコンバージョン方式を用いた例を示す。図25では、ローパスフィルタLPFの帯域を広く取り、広帯域を取り込めるようにしていると仮定する。
【0126】
この場合、信号を処理するA/D変換装置20も高速サンプリングクロックにより高速化する必要が生じる。更にA/D変換装置20の高速化に伴い、取り込むデータ量も増大し、CPUの処理能力を上回るAD変換データが入力することが予想され、図25に示す様な一時的なデータ格納用メモリ80が必要になる。
【0127】
さらに、CPUがデータを連続で処理しきれない場合は、データ格納用メモリ80にたまったデータを定期的に取り出し表示する処理になる。これは、処理しきれないデータは、表示されず捨てられることを意味する。この場合、単発的な信号に対しては取りこぼす可能性が有る。また、高速なA/D変換装置、高速処理が可能なメモリなどの高価なハードウェアが必要になり、コストアップが避けられない。
【0128】
図26は実施形態2の方式において、高周波帯の広い範囲の信号を検出して、表示装置50に表示する設備診断装置の構成例を示す。図26では、ハードウェアのコストを抑える為、低速なA/D変換装置20を使用し、途中にデータ格納用メモリ80を置かず、CPUがダイレクトに取り込める程度の速度で動作させるものとする。
【0129】
この時、広い範囲の信号を取り込むために、コンピュータから周波数シンセサイザー5に周波数切り替え信号を送り、周波数を切り替える事で広い範囲の信号を取り込むものである。
【0130】
この方式では、周波数切り替えをソフト的に処理する為、必要とする帯域を掃引するには時間がかかる事になり、図25と同様に単発的信号は取り込めない可能性が有る。また、今度は、周波数切り替えの為のプログラムを新たに用意する必要が有る。
【0131】
図27は、実施形態3の方式を設備診断装置に応用した例である。受信機の構成は、図25図26と同様にダイレクトコンバージョン方式とした。図27において、A/D変換装置20は低速な物で良く、ハードウェアの構成自体は図26とほとんど同じであり、コスト的には安く構成できる。
【0132】
図26との違いは、図27では周波数シンセサイザー5に三角波による周波数偏移が加えられる事に有る。図27においては、狭帯域の受信帯域に、広帯域な信号の成分が集約される事になり、低速なA/D変換装置20でも広帯域の信号成分を検出する事が可能になる。
【0133】
また、従来方式である図25および実施形態2の方式である図26と比較しても、図25に対しては低速なA/D変換装置20が有れば実現可能であり、ハードウェアの低コスト化が期待できる。また、図26の様に、コンピュータで周波数をソフト的に連続して切り替える必要もなく、余分なソフトウェア処理は必要としない。
【0134】
次に、図28に基づいて実施形態4による設備診断装置1の構成例を説明する。図28は発振器12による周波数を、バリアブルディレイライン13と三角波により、一種のFM変調をかける事で広げることができる。この効果により、この周波数範囲内の受信信号RFSIGを受信し、後は後段の低速なA/D変換装置20で取り込み、コンピュータによりディスプレー(表示装置50)に表示する方式である。
【0135】
この方式では、発振器12の周波数を直接変化させることが無いので、周波数シンセサイザー5を用いる方式と比較して、周波数の安定が期待できる。
【0136】
同じく、図29は、実施形態5を示した物である。図29では、チャンネル発振器15、オフセット周波数発振器16からイコライザー18までの発振部14が、図26における一般的なスーパーヘテロダイン方式における周波数シンセサイザー5に適用するものである。
【0137】
この方式では、発振部14中に同時に異なる周波数の局部発振周波数が存在する。この事は、この方式では、複数の信号を同時に処理出来る事を意味している。この特長により、この方式では、他の周波数範囲を端から端まで掃引する方式と比べ、極めて短い時間しか存在しないようなバースト的な信号に対しても、帯域内ならば受信可能になる。以上の様に、この方式では、リアルタイムな受信が可能になる。
【0138】
[実施形態6]
(1)実施形態6の概要
実施形態3、4では、電気設備の異常時に発せられる高周波信号に対し、スーパーヘテロダイン方式またはダイレクトコンバージョン方式を用いた高周波信号圧縮装置10の入力帯域を順々に周波数掃引することで、当該高周波信号を低周波領域に変換して検出した(以下では、高周波信号圧縮装置10の入力帯域を順々に周波数掃引することを「周波数掃引」と記載して説明する。)。
【0139】
実施形態3,4は設定した掃引周波数領域によって信号を広帯域に収集することが可能であるが、掃引周波数範囲によって掃引周期が長くなる場合がある。掃引周期が長くなることにより突発的な信号レベルの変化を取り逃す可能性がある。
【0140】
設備の異常は突発的に発生するものもあるが、多くの場合、事前に異常の兆しがあり、周波数掃引をして確認すると、設備の異常と判断されない段階から異常に起因した周波数成分の信号強度が高い場合がある。設備保全の観点から考えると、当該周波数成分の信号レベルをより高速に追従監視することが望ましい。
【0141】
本実施形態6では、一度周波数掃引を行って広帯域に信号を確認し、その後は高強度信号の周波数成分のみを追従監視する設備診断装置を説明する。本実施形態6によれば、安価かつ簡易的に当該高強度信号の周波数成分の変化をより高速に追従することが可能となる。
【0142】
本実施形態6における設備診断装置1の構成を図30に示す。本実施形態6では実施形態1~5の設備診断装置1に検出周波数決定装置70を追加した構成とする。以下、実施形態3,4との相違点を説明する。
【0143】
高周波信号検出装置30・入力装置40・表示装置50・データ記憶装置60・検出周波数決定装置70は個別に構成することも可能であるが、パソコンやタブレット等の情報端末機器を用いることにより1台の機器で構成することも可能である。
【0144】
以下、検出周波数決定装置70の処理の概要を説明する。A/D変換装置20からA/D変換結果D20を受け取り、サンプル/ホールドする。ホールドしたディジタル信号をFFT解析して、各周波数成分の信号強度を算出する。FFTの結果に対し、信号強度が高い順に周波数をリストアップする。リストアップした周波数のうち、上位から入力装置40で指定された個数の周波数を記憶する。
【0145】
当該周波数を高周波信号圧縮装置10に入力する。高周波信号圧縮装置10では検出周波数決定装置70で指定された周波数のみを順に圧縮して出力する。リフレッシュトリガ信号が入力される毎に上記を繰り返し、高周波信号圧縮装置10に指定する周波数を更新する。
【0146】
検出周波数決定装置70の構成を図31に示す。検出周波数決定装置70は周波数解析部700と、周波数選定部710と、周波数記憶部720と、タイマー部730と、を備える。
【0147】
周波数解析部700は、サンプル/ホールド器701およびFFT解析器702を有する。サンプル/ホールド器701は、タイマー部730からリフレッシュトリガ信号T70が入力された際にA/D変換装置20から入力されるA/D変換結果D20の取り込みを開始し、一定時間分のA/D変換結果D20をディジタル信号群D70として保持する。
【0148】
サンプル/ホールド器701は、タイマー部730から再度リフレッシュトリガ信号T70が入力されるまでディジタル信号群D70を保持し、再度リフレッシュトリガ信号T70が入力された際は再度A/D変換結果D20の取り込み開始し、ディジタル信号群D70を更新する。サンプル/ホールド器701は、リフレッシュトリガ信号T70が入力される度に上記動作を繰り返す。
【0149】
FFT解析器702はサンプル/ホールド器701から入力されるディジタル信号群D70をFFT解析し、周波数群F70の各周波数成分に対して各信号強度を出力する。図31では当該信号強度を信号強度群I70として示している。
【0150】
周波数選定部710は周波数解析部700から周波数群F70および信号強度群I70を受け取り、信号強度降順に周波数の一覧を作成する。当該周波数一覧のうち、最上位から検出周波数個数(指定個数)N70分を高強度信号周波数F71として周波数記憶部720へ出力する。
【0151】
FFT解析器702および周波数選定部710における処理の概要を図32に示す。図32の上段はディジタル信号群D70の信号強度分布を示している。図32の例では、周波数a,b,c,d,e,fで信号強度が大きくなっている。図32の下段は信号強度順の周波数一覧を示す。図32に示すように、信号強度の大きい順に周波数を並べると、周波数c,a,d,e,b,fとなる。
【0152】
図32の例では、検出周波数個数(指定個数)N70=3としているため、信号強度の大きい順に、3つの周波数c,a,dを高強度信号周波数F71として周波数記憶部720に出力する。
【0153】
周波数記憶部720は周波数選定部710から入力された高強度信号周波数F71を保持し、検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力する。高周波信号圧縮装置10では、高強度信号周波数F71の各周波数成分に対して順次圧縮動作を行う。
【0154】
周波数記憶部720は、タイマー部730から再度リフレッシュトリガ信号T70が入力されるまで検出指令周波数F72を保持する。再度リフレッシュトリガ信号T70が入力された際、周波数記憶部720は検出指令周波数F72の内容を、入力装置40から指定された検出周波数範囲SF70に変更する。
【0155】
高周波信号圧縮装置10では検出周波数範囲SF70の周波数範囲を順次周波数圧縮動作を行う。一定時間上記状態を継続し、高強度信号周波数F71が更新されると周波数記憶部720はこれを再度保持し、検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力する。タイマー部730から再度リフレッシュトリガ信号T70が入力される度、上記動作を繰り返す。
【0156】
タイマー部730は入力装置40から指定された検出周波数更新周期C70の周期でリフレッシュトリガ信号T70を出力する。検出周波数決定装置70は当該検出周波数更新周期C70毎に検出周波数範囲SF70の各周波数成分の信号強度を再確認し、高周波信号圧縮装置10に指令する検出指令周波数を更新する。
【0157】
実施形態3や実施形態4は広い周波数範囲に対して各周波数成分の信号強度を順次確認する手法であるが、本実施形態6は前述の動作により、広い周波数範囲から高強度信号の周波数成分のみをピックアップし、その後は当該周波数成分のみ信号強度を確認することを特徴とする。これは設備保全上有益な周波数成分の信号強度を、実施形態3や実施形態4より高速に確認することができることを意味する。
【0158】
また、本実施形態6において高周波信号検出装置30の処理は限定しない。例えば、実施形態1のように一定時間中に信号強度閾値以上の信号を検出した回数を以て異常検出を行う手法でも良い。または、ある時点の各周波数成分の信号強度を基準とし、当該信号強度の変位幅に基づいて異常検出を行う手法でも良い。
【0159】
以上示したように、本実施形態6によれば、実施形態1~5と同様の作用効果を奏する。また、安価かつ簡易的に、受信した信号のうち高強度信号の周波数成分のみを高頻度に集中的・継続的に監視することが可能となる。
【0160】
[実施形態7]
(1)実施形態7の概要
実施形態6では、一度周波数掃引を行って広帯域に信号を確認し、その後は高強度信号の周波数成分のみを追従監視することで、高強度信号の周波数成分のみを高速に監視する手法について説明した。
【0161】
ただ、実用的な観点から、設備診断装置1のコストはより低いことが望ましい。設備診断装置のコストダウンの方法として、なかでもA/D変換装置20や高周波信号検出装置30、データ記憶装置60を、更に低速および低容量のものに取り替えるが有効である。
【0162】
しかし、実施形態6の手法において上記を実現すると、設備診断装置1は周波数分解能が低い周波数掃引を行う必要があり、結果として設備異常時に発せられる信号を捉えられない可能性がある。
【0163】
そこで、本実施形態7では、一度実施形態6と同様に広帯域の信号を確認して高強度信号の周波数成分のみを追従監視し、その後の検出指令周波数の更新時、前述の高強度信号周波数を中心とした大まかな周波数間隔(第1解析周波数間隔)で確認を行う。その結果、信号強度が高く検出された周波数を中心とした周波数範囲をより細かい周波数間隔(第2解析周波数間隔)で掃引して当該周波数範囲において高強度信号の周波数を見つけ出し、当該周波数成分のみを追従監視する手法について説明する。
【0164】
(2)実施形態7の検出周波数決定装置70
まず、本実施形態7における検出周波数決定装置70の処理の概要を説明する。一度、実施形態6と同様に広帯域に信号を確認して高強度信号の周波数成分のみを追従監視する。
【0165】
検出指令周波数F72を更新する際、上記高強度信号周波数F71を中心とした大まかな周波数間隔(第1解析周波数間隔)でFFT解析し、各周波数成分の信号強度を算出する。上記で得られた信号強度のうち最高の信号強度と信号強度閾値を比較する。上記比較の結果、最高信号強度が信号強度閾値以上であれば、信号強度降順に周波数をリストアップする。
【0166】
上記でリストアップした周波数のうち、リスト上位から入力装置40で指定された個数の周波数を選出し、当該周波数を中心とした近傍の周波数範囲のみ、再度細かな周波数間隔(第1解析周波数間隔よりも短い第2解析周波数間隔)でFFT解析を行う。上記FFT解析の結果のうち、上記周波数範囲から1つずつ最も信号強度の高い周波数を選定する。
【0167】
検出指令周波数F72の更新はタイマー部730からリフレッシュトリガ信号T70が出力される度に行う。前記比較の結果、最高信号強度が信号強度閾値未満であれば最初に戻る。
【0168】
上記動作で得られた周波数を高周波信号圧縮装置10に入力する。高周波信号圧縮装置10では検出周波数決定装置70で指定された周波数のみを順に圧縮して出力する。
【0169】
本実施形態7における検出周波数決定装置70の構成を図33に示す。本実施形態7の検出周波数決定装置70は検出周波数先決定装置70aと検出周波数更新装置70bと周波数記憶装置70cと信号経路選択装置70dと、を有する。
【0170】
検出周波数先決定装置70aの構成を図34に、検出周波数更新装置70bの構成を図35に、周波数記憶装置70cの構成を図36に示す。
【0171】
本実施形態7の検出周波数決定装置70は、まず検出周波数先決定装置70aの周波数解析部700と周波数選定部710にて、実施形態6と同様に高強度信号周波数F71を決定する。高強度信号周波数F71は、周波数記憶装置70cを経由して検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力される。高周波信号圧縮装置10では周波数記憶装置70cから指令された各周波数に対して順次圧縮動作を行い、検出指令周波数F72が更新されるまで上記動作を継続する。
【0172】
検出指令周波数F72の更新時、検出周波数更新装置70bのタイマー部730からリフレッシュトリガ信号T70が出力される。検出周波数更新装置70bの周波数解析部740において、サンプル/ホールド器741は実施形態6のサンプル/ホールド器701と同様の動作を行い、A/D変換結果D20をディジタル信号群D70aに変換する。FFT解析器742は、ディジタル信号群D70aに対し、検出周波数先決定装置70aから入力された高強度信号周波数F71の周波数を中心として第1解析周波数間隔SF71の周波数間隔でFFT解析を行い、周波数群F70aおよび信号強度群I70aを得る。
【0173】
検出周波数更新装置70bの周波数選定部750は、周波数解析部740から周波数群F70aおよび信号強度群I70aを受け取り、信号強度群I70aから最高強度信号を見つけ出す。当該最高強度信号の信号強度を後述する信号強度閾値決定部780から指定された信号強度閾値THI70と比較する。
【0174】
前述の最高信号強度が信号強度閾値THI70未満であれば、周波数選定部750は検出周波数先決定装置70aと周波数記憶装置70cにリフレッシュトリガ信号T71を出力する。周波数記憶装置70cはリフレッシュトリガ信号T71が入力された際、検出指令周波数F72の内容を入力装置40から指定された検出周波数範囲SF70に変更する。
【0175】
また、検出周波数先決定装置70aはリフレッシュトリガ信号T71が入力された際、再度A/D変換結果D20の取り込みを開始する。その後は実施形態6と同様に、周波数解析部700および周波数選定部710にて高強度信号周波数F71を決定し、周波数記憶装置70cを経由して検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力する。
【0176】
ただし、検出周波数先決定装置70aのFFT解析器702の解析周波数間隔は第1解析周波数間隔SF71よりも十分小さい周波数とする。高周波信号圧縮装置10では検出周波数範囲SF70の周波数範囲を順次周波数圧縮動作を行う。一定時間上記状態を継続し、高強度信号周波数F71が更新されると周波数記憶装置70cはこれを再度保持し、検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力する。上記動作により、検出指令周波数F72が更新されるまで高強度信号周波数F71の信号強度を追従監視する。
【0177】
前述の最高強度信号が信号強度閾値THI70以上であれば、周波数選定部750は信号強度群I70aの各信号に対し信号強度降順に周波数の一覧を作成する。当該周波数一覧のうち、最上位から検出周波数個数(指定個数)N70の周波数を選定する。当該周波数を中心とし、上下に第1解析周波数間隔SF71を付け加えた周波数範囲を解析周波数範囲AF70として周波数解析部760に出力する。
【0178】
FFT解析器742および周波数選定部750の上記動作概要を図37に示す。図37の上段はディジタル信号群D70aの信号強度分布を示している。図37の例では、第1解析周波数間隔SF71で検出を行う。図37に示すように、周波数a,b,c,d,eで信号強度が大きくなっている。検出周波数個数(指定個数)N70=3としているため、図37の下段に示すように、信号強度の上位3つの周波数a,d,eが選定される。そして、当該周波数a,d,eを中心とし、上下に第1解析周波数間隔SF71を付け加えた周波数範囲を解析周波数範囲AF70として周波数解析部760に出力する。
【0179】
検出周波数更新装置70bの周波数解析部760ではディジタル信号群D70aに対し、解析周波数範囲AF70の周波数範囲において、入力装置40から指定された第2解析周波数間隔SF72の周波数間隔でFFT解析を行い、周波数群F70bおよび信号強度群I70bを得る。ただし、第2解析周波数間隔SF72は第1解析周波数間隔SF71よりも十分小さい周波数とする。
【0180】
検出周波数更新装置70bの周波数選定部770は周波数解析部760から周波数群F70bおよび信号強度群I70bを受け取り、解析周波数範囲AF70の各範囲から最も信号強度の高い周波数成分を1つずつ選定する。当該周波数を高強度信号周波数F71aとして周波数記憶装置70cのへ出力する。
【0181】
周波数選定部770の処理の概要を図38に示す。図38の上段は周波数解析部740のFFT解析器742の解析結果を示している。FFT解析器742では、第1解析周波数間隔SF71で解析を行っており、周波数選定部750では、高強度信号として周波数a,d,eが選択され、周波数a,d,eを中心として上下に第1解析周波数間隔SF71を付け加えた解析周波数範囲AF70をFFT解析器761および周波数選定部770に出力する。
【0182】
図38の下段は周波数解析部760のFFT解析器761の解析結果を示している。FFT解析器761では、周波数a周辺の解析周波数範囲AF701および周波数d周辺の解析周波数範囲AF702および周波数e周辺の解析周波数範囲AF703の範囲(AF70=AF701+AF702+AF703)の解析を行う。FFT解析器761では、第2解析周波数間隔SF72で解析を行う。ただし、SF72<<SF71とする。
【0183】
図38下段の黒丸は、周波数選定部750(第1解析周波数間隔SF71)で検出した高強度信号の周波数a,d,eを示し、白丸は解析周波数範囲AF70の各周波数範囲(第2解析周波数間隔SF72)で検出した最高強度信号の周波数a’,d’,e’を示す。この周波数a’,d’,e’を高強度信号周波数F71aとして周波数記憶装置70cに出力する。
【0184】
検出周波数更新装置70bの信号強度閾値決定部780では検出周波数先決定装置70aから入力された最高信号強度I71と入力装置40から入力された信号強度率RI70を用いて、以下の(1)式のように計算し、信号強度閾値THI70を得る。信号強度閾値THI70は周波数選定部750へ出力される。
【0185】
【数1】
【0186】
周波数記憶装置70cは、検出周波数先決定装置70aから入力された高強度信号周波数F71、または検出周波数更新装置70bから入力された高強度信号周波数F71aを保持し、検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力する。
【0187】
高周波信号圧縮装置10では、高強度信号周波数F71または高強度信号周波数F71aの各周波数成分に対して順次圧縮動作を行う。周波数記憶装置70cは、リフレッシュトリガ信号T70またはリフレッシュトリガ信号T71が入力されるまで検出指令周波数F72を保持する。
【0188】
リフレッシュトリガ信号T70が入力された際、周波数記憶装置70cは検出指令周波数F72の内容を高強度信号周波数F71に更新する。また、リフレッシュトリガ信号T71が入力された際、実施形態6と同様に周波数記憶装置70cは検出指令周波数F72の内容を、入力装置40から指定された検出周波数範囲SF70に変更して一定時間この状態を継続し、高強度信号周波数F71が更新されると周波数記憶装置70cはこれを再度保持し、検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力する。リフレッシュトリガ信号T70またはリフレッシュトリガ信号T71が入力される度、上記動作を繰り返す。
【0189】
信号経路選択装置70dは、A/D変換装置20から入力されるA/D変換結果D20を、検出周波数先決定装置70aまたは検出周波数更新装置70bに出力する。リフレッシュトリガ信号T70が入力された際は、前記出力先を検出周波数更新装置70bとし、リフレッシュトリガ信号T71が入力された際は、前記出力先を検出周波数先決定装置70aとする。
【0190】
実施形態6および本実施形態7において、例えば、検出周波数範囲SF70を10~200MHz、第1解析周波数間隔SF71を100kHz、第2解析周波数間隔SF72を10Hzに設定した際の動作を比較する。
【0191】
検出指令周波数F72の更新時、実施形態6の手法において、10~200MHzを10Hz間隔でFFT解析を行うと非常に長い時間を要し、かつそのデータ量も膨大になる。本実施形態7の手法では、一度100kHz間隔で周波数掃引を行い、その結果信号強度が高い周波数を中心とした周波数範囲を10Hz間隔で掃引することで、実施形態6よりも高速に、かつ少ないデータ量で高強度信号の周波数を検出することが可能である。
【0192】
また前述の動作により、高強度信号の周波数が多少変化しても当該信号強度を追従監視することが可能である。また、検出指令周波数F72の更新時の信号強度分布が、最初に確認した信号強度分布と大きく異なる場合は、実施形態6の手法で再度細かく信号強度分布を確認して掃引周波数範囲を更新する。本実施形態7によれば、設備異常時に発せられる信号に対して、実施形態6と同等の周波数分解能の信号検出を、実施形態6よりも高速かつ低コストに実現する。
【0193】
[実施形態8]
(1)実施形態8の概要
実施形態6では、一度周波数掃引を行って広帯域に信号強度を確認し、その後は高強度信号の周波数成分のみを追従監視することで、高強度信号の周波数成分のみをより高速に監視する手法について述べた。しかし、例えば、電気設備は、動作条件・環境条件の変化によって、異常時に発せられる信号の周波数が変化することがある。この場合、実施形態6の手法では擬似的に設備異常時に発せられる信号の信号強度が減少したものと誤認識する可能性がある。
【0194】
そこで、本実施形態8では、一度周波数掃引を行って広帯域に信号強度を確認し、その後は高強度信号の周波数成分を中心とした狭い周波数範囲を追従監視することで、高強度信号の周波数成分およびその近傍の周波数を、実施形態3および実施形態4より高速に監視する設備診断装置を説明する。本実施形態8は、実施形態6における検出周波数決定装置70に一部機能を追加することで実現する。
【0195】
(2)実施形態8の検出周波数決定装置70
検出周波数決定装置70は下記のように処理を行う。
【0196】
A/D変換装置20からA/D変換結果D20を受け取り、サンプル/ホールドする。ホールドしたディジタル信号をFFT解析して、各周波数成分の信号強度を算出する。
【0197】
上記FFTの結果に対し、信号強度が高い順に周波数をリストアップする。上記でリストアップした周波数のうち、上位から入力装置40で指定された個数の周波数を記憶する。
【0198】
当該周波数を中心として入力装置40で指定された周波数範囲を検出周波数範囲とする。上記検出周波数範囲を高周波信号圧縮装置10に入力する。高周波信号圧縮装置10では当該周波数範囲のみを順に圧縮して出力する。
【0199】
リフレッシュトリガ信号が入力される毎に上記を繰り返し、高周波信号圧縮装置10に指定する周波数を更新する。
【0200】
本実施形態8における検出周波数決定装置70の構成を図39に示す。本実施形態8の検出周波数決定装置70は実施形態6の図31に対し、周波数拡大部790を追加した構成とする。
【0201】
本実施形態8の検出周波数決定装置70は、まずA/D変換装置20からA/D変換結果D20を受け取り、周波数解析部700および周波数選定部710において実施形態6と同様の処理を行う。これにより得た高強度信号周波数F71を周波数拡大部790に入力する。
【0202】
周波数拡大部790では、高強度信号周波数F71の各周波数を中心とし、入力装置40から指定された拡大周波数範囲EF70を付け加えた周波数範囲を高強度信号拡大周波数F71bとして周波数記憶部720へ出力する。
【0203】
周波数拡大部790の概要を図40に示す。図40の上段は、ディジタル信号群D70の信号強度分布を示している。図40の例では、周波数a,b,cで信号強度が大きくなっている。図40の例では、検出周波数個数(指定個数)N70=3としているため、周波数a,b,cが高強度信号周波数F71として周波数拡大部790に出力される。
【0204】
周波数拡大部790では、周波数a,b,cを中心として上下に拡大周波数範囲EF70を付け加えた高強度信号拡大周波数F71bを周波数記憶部720に出力する。
【0205】
周波数記憶部720は高強度信号拡大周波数F71bを保持し、検出指令周波数F72として高周波信号圧縮装置10へ出力する。高周波信号圧縮装置10では、実施形態6と同様に高強度信号拡大周波数F71bの各周波数範囲に対して順次圧縮動作を行う。その他、リフレッシュトリガ信号による検出周波数の更新動作に関しても実施形態6と同様である。
【0206】
実施形態6では、検出指令周波数F72が高強度信号の周波数に限定される。従って、再度周波数の更新を行うまでの間に、高強度信号の周波数が変化した場合、当該信号の信号強度が低下したと検出する可能性がある。本実施形態8の手法であれば、適切な拡大周波数範囲を設定することにより、高強度信号の周波数が変化しても高強度信号を追従監視することが可能である。
【0207】
本実施形態8においても、実施形態6と同様に高周波信号検出装置30の処理は限定しない。例えば、実施形態1のように一定時間中に信号強度閾値以上の信号を検出した回数を以て異常検出を行う手法でも良い。または、ある時点の各周波数成分の信号強度を基準とし、当該信号強度の変位幅に基づいて異常検出を行う手法でも良い。
【0208】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0209】
00…高周波信号受信装置
10…高周波信号圧縮装置
20…A/D変換装置
30…高周波信号検出装置
40…入力装置
50…表示装置
60…データ記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40