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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】リサイクル基材製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20230214BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C08J11/08
B29B17/02 ZAB
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019080644
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020175620
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早坂 結科
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀樹
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-205160(JP,A)
【文献】特開2017-114930(JP,A)
【文献】特開2018-187808(JP,A)
【文献】特開2005-254586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
B09B 1/00- 5/00
B32B 1/00- 43/00
C09D 9/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記積層体は、プラスチック基材1とプラスチック基材2との間に、脱離層(A)および接着剤層(C)を有してなり、
前記脱離層(A)は、酸化アルミニウムおよび/もしくはシリカからなる蒸着層、または、アルミニウムおよびバインダー樹脂を含有する層であり、
前記接着剤層(C)は、エーテル系ウレタン接着剤および/またはエステル系ウレタン接着剤により形成される層であり、前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法。
【請求項2】
更に、プラスチック基材1とプラスチック基材2との間に、印刷層(B)を含む、請求項1に記載のリサイクル基材製造方法。
【請求項3】
脱離層(A)は、プラスチック基材1および/またはプラスチック基材2に接触して配置されてなる、請求項1または2に記載のリサイクル基材製造方法。
【請求項4】
印刷層(B)は、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂およびセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー樹脂を含有する、請求項2または3に記載のリサイクル基材製造方法。
【請求項5】
脱離層(A)は、印刷層(B)または接着剤層(C)に接触して配置されてなる、請求項1~4いずれかに記載のリサイクル基材製造方法。
【請求項6】
酸化アルミニウムおよび/またはシリカからなる蒸着層の膜厚は、1~400nmである、請求項1~5いずれかに記載のリサイクル基材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリサイクル基材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類などの海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮される。そうすれば当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。
なお、マイクロプラスチック表面には下記の様なラミネートされたパッケージの場合にはインキや接着剤、更にはコーティング層などに起因する有害物質等も付着しており、より環境保全の点から懸念されている。このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みが始まっている。
【0003】
上記プラスチック製品としてはプラスチック基材を使用した食品包装パッケージなどが主として挙げられる。当該パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル基材(PET)、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(OPP)など、種々のプラスチック基材が使用されている。これらはグラビアインキ、フレキソインキその他の印刷インキにより絵柄層が施され、更に接着剤等を介して熱溶融樹脂基材と貼り合わされ(ラミネート)積層体としたのちに、当該積層体をカットして熱融着されてパッケージとなる。パッケージ形態としては絵柄層がパッケージ最外層となる形態(表刷りという)および絵柄層が基材同士の中間層として存在する形態(ラミネートまたは裏刷りという)がある。
なお、表刷りとは、絵柄層上に基材などがラミネートされず、絵柄層がむき出しの状態である形態をいい、例えば、ラベルなどへの使用形態も表刷りに該当する。
【0004】
上記マイクロプラスチックを削減する試みとしては、印刷物を含む積層体において不純物を除去してプラスチック基材をリサイクルする方法が検討されている。例えば、基材のリサイクル過程において不純物となる、パッケージ表面にある絵柄層(表刷りインキ層)をアルカリ水溶液で除去する試みが行われてきた。例えば引用文献1ではプラスチック基材上にアクリル系樹脂やスチレンマレイン酸系樹脂からなる下塗り層を設け、下塗り層上に配置された表刷り印刷層を、アルカリ水により除去する技術が開示されている。また、特許文献2では酸性基を有するポリウレタン樹脂やアクリル樹脂をバインダー樹脂とするインキを表刷り印刷し、同じくアルカリ水により当該印刷層を除去する技術が開示されている。しかしながら、これらはパッケージ外側の表刷りインキを除去するのみの技術であって、ラミネート積層体中のインキ層を除去し、基材同士を剥離させて当該基材をリサイクルできるまでには至っていない。
【0005】
プラスチックリサイクルのために表刷りインキ層の除去に加え、ラミネート積層体における絵柄層を除去する技術は、プラスチックリサイクルを進めるうえで、環境保全のために産業上利用できる重要な技術となる。しかしリサイクル基材を得るためには絵柄層や接着剤層を効率よく除去しなければならす、更に、ラミネートされた積層体においてもリサイクル基材を得る手法が望まれるが、この両方を成しえた技術は未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-131484号公報
【文献】特開平11-209677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、印刷物またはラミネートされた積層体などから効率的かつ簡便に、積層体を構成したプラスチック基材をリサイクル基材として得る、リサイクル基材製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は本願課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載のリサイクル基材製造方法を用いることで解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記積層体は、プラスチック基材1と、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する脱離層(A)と、印刷層(B)と、をこの順に有してなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記積層体は、プラスチック基材1とプラスチック基材2との間に、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する脱離層(A)並びに、印刷層(B)および/または接着剤層(C)を有してなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、脱離層(A)は、プラスチック基材1および/またはプラスチック基材2に接触して配置されてなる、上記リサイクル基材製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、脱離層(A)は、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の蒸着層を有してなる、上記リサイクル基材製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、脱離層(A)は、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種並びに、バインダー樹脂を有してなる、上記リサイクル基材製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、印刷層(B)は、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂およびセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー樹脂を含有する、上記リサイクル基材製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、印刷物またはラミネートされた積層体などから効率的かつ簡便に、積層体を構成したプラスチック基材をリサイクル基材として得る、リサイクル基材製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態または要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0017】
以下の説明において、「脱離層(A)」は、塩基性水溶液による溶解などで基材より脱離する層をいい、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカから選ばれる少なくとも一種を含有する。なお、実施形態として「脱離層(A)」は、基材(基材1、基材2)と接触する形で配置される使用形態であることが好ましい。プラスチック基材のリサイクルを容易とするためである。
【0018】
本発明における実施形態1は、
積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記積層体は、プラスチック基材1と、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する脱離層(A)と、印刷層(B)と、をこの順に有してなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法である。
【0019】
実施形態1において、「印刷層(B)」とは、「脱離層(A)」上に印刷され、着色剤を含有する印刷インキを用いて絵柄などが形成された層をいい、「脱離層(A)」と「印刷層(B)」は区別される。「脱離層(A)」と「印刷層(B)」は接触した形で配置されることが好ましい。
【0020】
本発明における実施形態2は、
積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記積層体は、プラスチック基材1(基材1)とプラスチック基材2(基材2)の間に、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する脱離層(A)並びに、印刷層(B)および/または接着剤層(C)を有してなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法である。
【0021】
実施形態2において「脱離層(A)」は任意に配置されてよく、基材1と基材2の間であればよい。上記したように、基材と接触する形で配置されることが好ましく、また、「印刷層(B)」または「接着剤層(C)」と接する形で配置される場合も好ましい。「印刷層(B)」とは、上記実施形態1の場合と同義であり、「接着剤層(C)」とは基材(基材1および基材2)を貼り合せる(接着する)ために用いる、接着剤から形成される層であり、ラミネート工程により形成される。
【0022】
本発明において、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する脱離層(A)は、後述した塩基性水溶液により脱離する。脱離は、溶解によるものと、基材から溶解せず剥離するものとの両方の形態を含む。また、脱離層(A)の脱離とともに印刷層(B)、接着剤層(C)、脱離層(A)と接しない基材等が脱離する場合を含む。
【0023】
本発明は「リサイクル基材製造方法」なので、基材から脱離する層は脱離層(A)のうち一部ということではない。基材から脱離層(A)の脱離により、脱離層(A)、印刷層(B)接着剤層(C)その他の層を同時にできる限り多く除く形態が好適である。具体的には、脱離層(A)100%のうち、面積および/または膜厚において少なくとも80%以上の脱離層(A)が脱離するということである。好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上を除去する形態で使用することが好ましい。
なお本発明同様、ソルダーレジストやカラーレジストなどの場合においてもアルカリ水溶液により層の一部を溶解させる工程を有するが、活性エネルギー線での硬化層を、アルカリ水溶液処理後も「一定量残すことを目的」とするため、本発明における脱離層(A)を用いたリサイクル基材製造方法とは技術的思想が異なる。従って、本発明においては、当該脱離層(A)はソルダーレジストやカラーレジストその他の感光性樹脂組成物からなる層である場合を除く。
【0024】
(塩基性水溶液)
塩基性水溶液は塩基性化合物を含有する水溶液であり、塩基性化合物を当該水溶液全体のうち0.5~10質量%含有し、かつ積層体浸漬時の温度は30~120℃である。塩基性化合物は当該水溶液全体のうち0.5~5質量%で含有することが好ましく、1~5質量%で含有することがなお好ましい。また、塩基性水溶液の上記温度は40~110℃であることが好ましく、50~100℃であることがなお好ましい。
上記塩基性化合物としては、特に制限は無いが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)等が好適に挙げられる。好ましくはNaOHおよび/またはKOHである。
【0025】
脱離のメカニズムとして推測されるのは、脱離層(A)を含む積層体で、例えば基材1/脱離層(A)/印刷層(B)などの形態では、断面以外に、アルカリ水溶液は印刷層(B)から浸透して脱離層(A)へ接触するため、断面の形態に制限なく脱離ができる。また、脱離層(A)を含む積層体において、例えば基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/接着剤層(C)/基材2のような形態にあっては、基材同士の隙間あるいは断面からアルカリ水溶液が浸透して基材1が脱離層(A)と脱離できる。一方、ただし、いずれの形態においても、裁断等をして、断面に脱離層(A)を有する形態であることが好ましい。
【0026】
(脱離層(A))
脱離層(A)はアルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する。なお、アルミニウムは酸化アルミニウムである場合を含まない。基材リサイクル工程において、これら金属は上記塩基性水溶液へ溶解性を示し、脱離層(A)の脱離機能に作用する。
当該金属化合物を含有する形態としては、脱離層(A)はアルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の蒸着層を有する層、
またはアルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種およびバインダー樹脂を含有する層であることが好ましい。
【0027】
(アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる蒸着層)
脱離層(A)は、蒸着層であることが好ましい。蒸着層は、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種から構成され、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は特に限定されない。蒸着層は非結晶性(アモルファス)の層からなることが好ましい。また、可視光透過性の観点から酸化アルミニウムおよび/またはシリカであることが好ましい。遮光性を示す形態とするためにはアルミニウムであることが好ましい。脱離層(A)は蒸着層を2層以上有してもよい。蒸着層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。なお、蒸着層を有する脱離層(A)を有する場合、塩基性水溶液を用いて脱離を行う前は、酸素および/または水蒸気バリア層としても機能する。
【0028】
酸化アルミニウム、シリカからなる蒸着層は、それぞれAl、SiOを含む形態が好ましい。例えば、酸化アルミニウムをAlOn、シリカをSiOn、等のような形態で表した場合、nの値としては、酸化アルミニウムは0.5~1.5の範囲、シリカは1~2の範囲であればよく、Al、SiO以外の酸化アルミニウムやシリカの形態を除外するものではない。一方で、アルミニウムから形成される蒸着層は遮光性の点から実質的にアルミニウムのみから形成された蒸着膜であることが好ましい。
アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる蒸着膜の膜厚としては、1~400nmの範囲であればよく、5~300nmの範囲であることが好ましく、10~200nmの範囲であることがなお好ましい。
【0029】
アルミニウムの蒸着層の場合には、膜厚5~300nmであることが好ましく、10~100nmであることがなお好ましく、10~60nmであることが更に好ましい。また、酸化アルミニウムおよび/またはシリカの蒸着層の場合には、膜厚5~300nmであることが好ましく、10~100nmであることがなお好ましく、10~60nmであることが更に好ましい。蒸着膜の膜厚は、例えば、日立ハイテクサイエンス社製の蛍光X線分析装置(機種名、EA6000VXやEA8000)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法により測定することができる。
【0030】
(蒸着層の形成)
上記蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等を好適に挙げることができる。
【0031】
上記蒸着層は更に易接着層を有していてもよい。易接着層としては例えば、ポリウレタン樹脂層、アクリル樹脂層、ポリエステル樹脂およびポリビニルアルコールから選ばれる樹脂からなる易接着層であることが好ましい。水性である前記樹脂から構成される易接着層であることがなお好ましい。易接着層は印刷その他の公知の方法により形成できる。
【0032】
(アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種およびバインダー樹脂を含有する層)
脱離層(A)はアルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属粒子およびバインダー樹脂を含有する層である場合も好ましい。膜厚としては1~10μmであることが好ましく、1~6μmであることが好ましい。
また、バインダー樹脂と金属粒子との質量比(バインダー樹脂/金属粒子)は、90/10~20/80であることが好ましい。
【0033】
アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属粒子は、中でも酸化アルミニウム(Al)を含む場合が好ましく、α粒子結晶および/またはγ粒子結晶であることが好ましい。酸化アルミニウムの平均粒子径としては、0.1~4μmであることが好ましい。当該平均粒子径とは、動的光散乱測定による累積頻度50%(D50)の値をいう。
アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種およびバインダー樹脂を含有する層に含まれるアルミニウムは、当該層全体の80質量%以上であることが好ましい。また、当該層に含まれる酸化アルミニウムは、当該層全体の10質量%以上であることが好ましい。また、当該層に含まれるシリカは、当該層全体の10質量%以上であることが好ましい。
後述する印刷層が、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカを含むことを排除しないが、印刷層に含まれるアルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカの量は、脱離層よりも少ない。
【0034】
(バインダー樹脂)
上記バインダー樹脂は、上記易接着層の場合と同様の種類である樹脂が好適に挙げられ、水性樹脂であってもよいし、有機溶剤に可溶な樹脂であってもよい。例えば、ポリウレタン樹脂層、アクリル樹脂層、ポリエステル樹脂およびポリビニルアルコールから選ばれる樹脂であることが好ましい。これらは、複数種組み合わせて使用してもよい。
【0035】
アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属粒子およびバインダー樹脂を含有する脱離層(A)は、基材上に当該金属粒子、バインダー樹脂および有機溶剤からなる組成物を用いて、グラビア印刷法、フレキソ印刷法その他の印刷方法により形成することができる。
【0036】
前記組成物は、その総質量中に、金属粒子およびバインダー樹脂を合計で5~60質量%で含有することが好ましい。8~50質量%で含有することがなお好ましい。
上記有機溶剤としてはイソプロピルアルコール(IPA)、エタノールおよびノルマルプロパノールその他のアルコール系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピルその他のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンその他のケトン系有機溶剤、並びに、トルエン、キシレンその他の芳香族有機溶剤などが好適に挙げられる。二種以上の混合溶剤として使用することが好ましい。
【0037】
(脱離層(A)を形成するための組成物の製造)
脱離層(A)を形成するための組成物は、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属粒子並びにバインダー樹脂を有機溶剤液中に溶解および/または分散することにより製造することができる。例えば、酸化アルミニウム粒子およびポリウレタン樹脂有機溶剤中に分散させておき、金属粒子分散体に、ポリウレタン樹脂、必要に応じて有機溶剤、その他樹脂や添加剤などを配合することによりかかる組成物を製造することができる。また、組成物の粘度等は分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、金属粒子分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。サンドミルその他のビーズミルを用いて製造することが好ましい。
【0038】
(添加剤)
脱離層(A)を形成するための組成物は、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、例えば顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分などを使用することができる。
【0039】
(印刷層(B))
上記印刷層(B)は、それのみでは脱離層(A)のような脱離機能を有さない印刷層であってもよく、印刷インキから形成されるものをいい、スクリーンインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキ、オフセットインキその他の印刷インキが好適に挙げられ、例えば、特開2005-298618号公報、特開2006-299136号公報、特開2009-249388号公報、特開2013-127038号公報、特開2017-19991号公報、特開2006-131844号公報、特開2013-40248号公報、特開2007-231148号公報、特開2006-257302号公報らに記載されている印刷インキを好適に使用することができる。ただしこれらに限定されない。中でも、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキの使用が好ましく、グラビアインキおよび/またはフレキソインキの使用がなお好ましい。
【0040】
上記印刷層(B)の含有するバインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂などの塩化ビニル系樹脂、塩素化ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを好適に挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
上記の中でもポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂およびセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー樹脂を含有することが好ましい。塩基性水溶液に不溶なので脱離した印刷層(B)の回収が容易となるためである。
更には、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂とセルロース樹脂、またはアクリル樹脂とセルロース樹脂等の組み合わせからなる二種樹脂を、バインダー樹脂総質量中に50質量%以上有するバインダー樹脂であることが好ましく、質量比率は前者:後者が95:5~30:70であることがなお好ましい。
【0042】
(着色剤)
印刷層(B)は着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては顔料であることが好ましく、例えば、有機顔料では、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が好適に挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等好適に挙げられる。なお、カラーインデックスに記載のC.I.ピグメントを適宜使用することができる。
【0043】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロムなどの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が好ましい。酸化チタンは、白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0044】
(印刷層(B)を構成するための印刷インキの製造)
印刷インキは、バインダー樹脂、体質顔料ないし着色顔料等を液状媒体中に溶解および/または分散することにより製造することができる。例えば、顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等のバインダー樹脂、シリカ粒子および必要に応じて有機溶剤を分散させておき、顔料分散体に、ポリウレタン樹脂、必要に応じて有機溶剤、その他樹脂や添加剤などを配合することにより有機溶剤系印刷インキを製造することができる。また、有機溶剤系印刷インキの粘度や色味は分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。サンドミルその他のビーズミルを用いて製造することが好ましい。
【0045】
<グラビア印刷>
(グラビア版)
上記グラビア印刷においては、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
(印刷機)
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版およびドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキおよび絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0046】
<フレキソ印刷>
(フレキソ版)
上記フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーン線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
(印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
【0047】
(接着剤層(C))
接着剤層(C)とは、基材を貼り合せる機能を有する層であればよく、例えば、アンカー層、溶融ポリオレフィン樹脂から形成される樹脂層、ウレタン接着剤層、アクリル接着剤層などが好適に挙げられる。いずれの使用形態であっても好ましい。アンカー層としてはイミン系アンカー層、ブタジエンアンカー層、イソシア系アンカー層の使用が好ましく、溶融ポリオレフィン樹脂から形成される樹脂層としては、溶融ポリエチレン、溶融ポリプロピレンが好ましく、更に他のモノマーとの共重合樹脂であってもよい。ウレタン接着剤層は、エーテル系ウレタン接着剤、エステル系ウレタン接着剤などにより形成される層であることが好ましい。ポリウレタン系接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、具体的には東洋モートン株式会社製TM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14B等が挙げられる。
【0048】
接着剤を用いて積層体を得るには、ラミネート加工工程を必要とする。ラミネート加工の代表例として、エクストルジョンラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等が挙げられる。ラミネート加工は、印刷物もしくは基材のいずれかの面に接着剤層を塗工・乾燥等により形成させ、更に別の基材と圧着して積層を得ることができる。
【0049】
(プラスチック基材1)
本発明の有機溶剤系印刷インキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸その他のポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のプラスチック基材が好適に挙げられる。これらは二軸延伸されたプラスチック基材であることが好ましい。
【0050】
(プラスチック基材2)
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、プラスチック基材1またはプラスチック基材2のいずれかが熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、熱可塑性基材としては無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
【0051】
(実施形態1における積層体の製造)
本発明のリサイクル基材製造方法に用いる積層体は、以下の方法により製造をすることができる。たとえば、実施形態でプラスチック基材1、脱離層(A)および印刷層(B)を順に有する積層体の場合は、まず、プラスチック基材1上に脱離層(A)として、真空蒸着法等により40nmの蒸着薄膜(酸化アルミニウム、アルミニウムおよび/またはシリカ)を形成させる。次に脱離層(A)上に印刷インキ等をグラビア印刷や、フレキソ印刷などの印刷方式で印刷することで印刷層(B)を形成させ、積層体(基材1/脱離層(A)/印刷層(B))を得ることができる。
【0052】
上記実施形態における積層体の例としては、限定されないが、以下の実施形態等が好適に挙げられる。(脱離層(A’)は、脱離層(A)と同じもの、もしくは異なるものが使用でき、印刷層(B’)は、印刷層(B)と同じもの、もしくは異なるものが使用できる。)
・基材1/脱離層(A)/印刷層(B)
・基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/印刷層(B’)
・印刷層(B’)/基材1/脱離層(A)/印刷層(B)
・印刷層(B’)/脱離層(A’)/基材1/脱離層(A)/印刷層(B)
【0053】
(実施形態2における積層体の製造方法)
本発明において、実施形態2のリサイクル基材製造方法に用いる積層体は、以下の方法により製造をすることができる。たとえば、基材1、印刷層(B)、接着剤層(C)、脱離層(A)およびプラスチック基材2を順に有する積層体の場合は、プラスチック基材1上に印刷インキをグラビア印刷や、フレキソ印刷などの印刷方式で印刷することで印刷層(B)を形成させ、当該印刷層(B)上に接着剤として、例えばエーテル系ウレタン接着性をドライラミネーターで塗布して接着剤層(C)を形成し、アルミニウムその他の蒸着層(脱離層(A)に対応する)を有したプラスチック基材2を貼りあわせることで積層体(基材1/印刷層(B)/接着剤層(C)/脱離層(A)/基材2)を得ることができる。
【0054】
上記実施形態における積層体の例としては、限定されないが、以下の実施形態等が好適に挙げられる。
(基材3は、基材2と同じもの、もしくは異なるものが使用でき、脱離層(A’)は、脱離層(A)と同じもの、もしくは異なるものが使用でき、印刷層(B’)は、印刷層(B)と同じもの、もしくは異なるものが使用でき、接着剤層(C’)は接着剤層(C)と同じもの、もしくは異なるものが使用できる。)
・基材1/接着剤層(C)/脱離層(A)/基材2
・基材1/印刷層(B)/接着剤層(C)/脱離層(A)/基材2
・基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/接着剤層(C)/基材2
・基材1/印刷層(B)/接着剤層(C)/脱離層(A)/接着剤層(C)/基材2
・基材1/脱離層(A)/接着剤層(C)/基材2/接着剤層(C’)/基材3
・基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/接着剤層(C)/基材2/接着剤層(C)/基材3
基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/接着剤層(C)/脱離層(A’)/基材2
・印刷層(B’)/基材1/印刷層(B)/接着剤層(C)/脱離層(A)/基材2
【0055】
(脱離工程)
上記積層体から脱離層(A)等を脱離(除去)して基材1または基材2のリサイクル基材を得るためには、上記した塩基性水溶液中に浸漬して行う。脱離工程において、基材1/脱離層(A)/印刷層(B)の順からなる積層体にあってはその印刷層(B)の表面からアルカリ水溶液浸透して、また、更に基材2をラミネートされた基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/接着剤層(C)/基材2などの積層体にあっては端部分からアルカリ水溶液浸透して脱離層(A)と接触すれば、脱離層(A)が溶解するため脱離・剥離ができる。より好ましくは裁断されて積層体の断面に脱離層(A)を有している場合であり、より短時間で印刷層(B)、接着剤層(C)または基材等を脱離することができる。
【0056】
(脱離条件)
浸漬時間としては1分~12時間、更に好ましくは1分~6時間である。その後水洗・乾燥してリサイクル基材を得ることができる。基材1、基材2などの基材から脱離層(A)とそれに伴う印刷層(B)・接着剤層などの除去率は、脱離層(A)の脱離能が面方向に一様であるならば(部分硬化などしていない)、基材の脱離層(A)の総面積のうち好ましくは80面積%以上、より好ましくは90面積%以上、更に好ましくは95面積%以上である。なお、浸漬時には撹拌をしながら脱離を行う事が好ましい。例えば、撹拌装置回転羽根で撹拌する場合、80~250rpmであることが好ましく、80~200rpmであることがなお好ましい。
【0057】
塩基性水溶液の使用量は、印刷物または積層体の質量に対して100~100万倍量であることが好ましい。また、効率向上のために循環式の洗い流し、印刷物または積層体の粉砕、撹拌を行ってもよい。
【0058】
積層体上記のように塩基性水溶液中で脱離を行い、基材1または基材2を水洗・乾燥することで、リサイクルされたプラスチック基材を得ることができる。また、そのリサイクル基材は押出機によりペレット状に再生して利用することができる。
【実施例
【0059】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。
(蒸着層の膜厚)
以下の実施例において、アルミニウム、酸化アルミニウムおよびシリカの膜厚は、日立ハイテクサイエンス社製の蛍光X線分析装置(機種名:EA6000VX)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法により測定した。
【0060】
(使用した基材について)
・基材a:酸化アルミニウムがアモルファス状に蒸着された蒸着層(30nm)を有するポリエチレンテレフタレート(PET)基材 膜厚15μm
・基材b:酸化アルミニウムとシリカがアモルファス状に共蒸着された蒸着層(30nm)を有するPET基材 膜厚15μm
・基材c:アルミニウムがアモルファス状に蒸着された蒸着層(50nm)を有する無延伸ポリプロピレン基材 膜厚50μm
(以上の基材a~基材cは基材1/脱離層(A)または脱離層(A)/基材2に相当し、脱離層(A)は蒸着層に相当する。)
・基材d:ポリオレフィン基材(フタムラ化学社製 2軸延伸ポリプロピレン基材 膜厚20μm)
・基材e:ポリオレフィン基材(無延伸ポリプロピレン基材 膜厚30μm)
【0061】
(製造例1)(脱離層を形成するための組成物S1)
ポリウレタン樹脂溶液(荒川化学社製 KL-593 ポリエステルポリエーテル併用系ポリウレタン樹脂 固形分30質量% 酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶液)30部、酸化アルミニウム粒子(平均粒子径1.5μm α型結晶 Al)20部、および酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤20部を撹拌混合してビーズミルとしてサンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、更に酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤を30部撹拌混合して組成物S1を得た。
【0062】
(製造例2)(インキR1作成)
ポリウレタン樹脂溶液(荒川化学社製 KL-593 ポリエステルポリエーテル併用系ポリウレタン樹脂 固形分30質量% 酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶液)30部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液(日信化学社製 ソルバインTAO 固形分30質量%酢酸エチル溶液)10部、藍顔料(トーヨーカラー社製 銅フタロシアニン リオノールブルーFG7330)10部、および酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤20部を撹拌混合してビーズミルとしてサンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、更に酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤を30部撹拌混合して印刷インキR1を得た。
【0063】
(製造例3)(インキR2作成)
ポリウレタン樹脂溶液(荒川化学社製 KL-593 ポリエステル/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂 固形分30質量% 酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶液)20部、ポリエステル樹脂溶液(日立化成社製 エスペル9940Z-37 固形分30質量%溶液)10部、ロジン樹脂溶液(荒川化学社製 ロジンエステル A-100 固形分30%溶液)10部、藍顔料(トーヨーカラー社製 銅フタロシアニン リオノールブルーFG7330)10部、および酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤20部を撹拌混合してビーズミルとしてサンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、更に酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤を30部撹拌混合して印刷インキR3を得た。
【0064】
(製造例4)(インキR3作成)
ポリアミド樹脂溶液(ダイマー酸由来構造を有するポリアミド樹脂 固形分30質量%溶液)20部、ニトロセルロース樹脂溶液(窒素含有量11.5質量% 重量平均分子量50000のニトロセルロース 固形分30%溶液)20部、藍顔料(トーヨーカラー社製 銅フタロシアニン リオノールブルーFG7330)10部、および酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤20部を撹拌混合してビーズミルとしてサンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、更に酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤を30部撹拌混合して印刷インキR2を得た。
【0065】
(比較製造例1)(組成物SS1)
ポリウレタン樹脂溶液(荒川化学社製 KL-593 ポリエステルポリエーテル併用系ポリウレタン樹脂 固形分30質量% 酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶液)30部、硫酸バリウム粉体20部、および酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤20部を撹拌混合してビーズミルとしてサンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、更に酢酸ノルマルプロピルとイソプロパノールの混合溶剤を30部撹拌混合して組成物S1を得た。
【0066】
(実施例1)(積層体L1の製造)
インキR1を酢酸エチル/IPAの混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)25℃にて15秒になるように希釈した。その後、上記基材aの蒸着層上にインキR1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機にて印刷し、50℃にて乾燥し、基材1/脱離層(A)/印刷層(B)である積層体L1を得た。
【0067】
(実施例2~4)(積層体L2~L4の製造)
表1に記載の材料および積層構成を用いた以外は実施例1と同様の方法により積層体L2~L4を得た。なお、組成物S1は実施例1におけるインキR1と同様の方法で印刷を行った。
【0068】
(実施例5)(積層体L5の製造)
インキR1を酢酸エチル/IPAの混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)25℃にて15秒になるように希釈した。その後、上記基材aの蒸着層上にインキR1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機にて印刷し、50℃にて乾燥した。更に、ドライラミネート機を用いて、前記印刷層上にウレタン接着剤(ポリエステル系ウレタン接着剤「東洋モートン社製 TM250HV/CAT-RT86L-60」)を2g/mで塗布・乾燥して、更に基材eと貼り合せた。これにより基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/接着剤層(C)/基材2に相当する積層体を得た。
【0069】
(実施例6~12)(積層体L6~L12の製造)
表1に記載の材料および積層構成を用いた以外は実施例5と同様の方法により積層体L6~L11を得た。
【0070】
(実施例13)(積層体L12の製造)
インキR1を酢酸エチル/IPAの混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)25℃にて15秒になるように希釈した。その後、上記基材aの蒸着層上にインキR1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機にて印刷し、50℃にて乾燥した。更に、ドライラミネート機を用いて、前記印刷層上にウレタン接着剤(ポリエステル系ウレタン接着剤「東洋モートン社製 TM250HV/CAT-RT86L-60」)を2g/mで塗布・乾燥して、更にアルミ箔(アルミニウム箔 膜厚7μm)と貼り合せた。更にアルミ箔上に前記ウレタン接着剤を2g/mで塗布・乾燥して基材eと貼り合せた。これにより基材1/脱離層(A)/印刷層(B)/接着剤層(C)/脱離層(A’)/接着剤層(B’)/基材2に相当する積層体L13を得た。
【0071】
(実施例14および15)(積層体L14、L15の製造)
表2に記載の材料および積層構成を用いた以外は実施例12と同様の方法により積層体L13およびL15を得た。
【0072】
(比較例1~10)(積層体LL1~LL10の製造)
表3に記載した材料および積層構成を用いた以外は実施例1または実施例5と同様の方法で積層体LL1~LL10を得た。
【0073】
(特性評価)
上記において得られた積層体L1~L15(実施例)および積層体LL1~LL10(比較例)用いて以下に記載の評価を行った。
【0074】
(実施例および比較例で得た積層体の脱離および再生基材の製造)
上記で得られた積層体L1を、1.5cm×1.5cmに切出し、2質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液50gに浸し、70℃にて150rpmで撹拌して脱離層(A)およびその他の層を脱離させて再生基材であるポリエステル基材(基材1)を得た。
更に、積層体L2~L15(実施例)および積層体LL1~LL10(比較例)についても積層体L1と同様に脱離および再生基材の製造を行ったが、脱離条件は表1、表2および表3に記載の塩基性水溶液の濃度および温度にて行った。
【0075】
(脱離性評価)
上記にける積層体L1~L15(実施例)および積層体LL1~LL10(比較例)を用いた基材の再生工程において、脱離性につき以下の基準にて評価した。
(評価基準)
A(優):撹拌30分以内に印刷層、接着剤層等が100%基材から剥離し、フィルム表面に印刷層等は残っていなかった。
B(良):撹拌30分を超え2時間以内に印刷層、接着剤層等が100%基材から剥離。
C(可):撹拌2時間を超え4時間以内に印刷層、接着剤層等が80%以上100%以下基材から剥離。
D(不可):撹拌4時間を超えて印刷層、接着剤層等が80%未満基材から剥離(20%以上は剥離しない)。
上記においてA、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0076】
(再生基材の汚れ)
上記にける積層体L1~L15(実施例)および積層体LL1~LL10(比較例)を用いた基材の再生工程において、再生基材の汚れにつき以下の基準にて評価した。
(評価基準)
A(優):得られた再生基材の総面積のうち、印刷層、接着剤層等に基因する汚れが5面積%未満無い。
B(良):得られた再生基材の総面積のうち、印刷層、接着剤層等に基因する汚れは5面積%以上10面積%未満である。
C(可):得られた再生基材の総面積のうち、印刷層、接着剤層等に基因する汚れは10面積%以上20面積%未満である。
D(不可):得られた再生基材の総面積のうち、印刷層、接着剤層等に基因する汚れは20面積%以上である。
上記においてA、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0077】
(再生基材の性状)
上記にける積層体L1~L15(実施例)および積層体LL1~LL10(比較例)を用いた基材の再生工程において、再生基材の性状につき以下の基準にて評価した。
(評価基準)
A(優良):再生基材に変色、変形、変質がみられない。
B(可):再生基材にやや変形または変形がみられるが、変質はみられない。
C(不可):再生基材に変形、変色または変質のいずれかが明確にみられる。
D(劣):再生基材に変形または変色が明確にみられ、特に変質が顕著である。
上記においてAおよびBは実用上問題がない範囲である。
【0078】
上記の評価結果より、本発明のリサイクル基材の製造方法を用いれば、簡便に良質なリサイクル基材を得られ、かつ、再生基材の変質等も無く、再生基材を用いてプラスチックリサイクル技術を提供できることが示された。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】