(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】空気圧工具
(51)【国際特許分類】
B25C 1/04 20060101AFI20230214BHJP
B25C 7/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B25C1/04
B25C7/00 Z
(21)【出願番号】P 2019086670
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏司
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115593(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0151900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/04
B25C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気の空気圧によって駆動する駆動機構と、
前記駆動機構を駆動するための圧縮空気が供給されるチャンバと、
前記チャンバに供給された圧縮空気を用いて前記駆動機構を駆動するヘッドバルブと、
前記ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、
前記トリガバルブの作動に伴って作動する前記ヘッドバルブの作動を無効にする制御バルブと、
トリガの操作に基づいて作動し、前記制御バルブを所定のタイミングで作動させることで前記ヘッドバルブの作動を無効にさせるタイマーバルブと、を備え、
前記タイマーバルブは、当該タイマーバルブを作動させるための空気を溜める収容部を有し、
前記チャンバと前記収容部とは、互いに遮断された空間で構成される、
空気圧工具。
【請求項2】
前記収容部は、外気から遮断されている、
請求項1に記載の空気圧工具。
【請求項3】
前記タイマーバルブは、
前記収容部の内部を移動して前記制御バルブに作用する弁体と、
前記弁体の移動によって発生する空気の流れを規制する絞り部と、
を有する、
請求項1又は2に記載の空気圧工具。
【請求項4】
前記駆動機構が設けられる本体と、
前記本体の側部に取り付けられ、前記駆動機構のピストンの移動方向とは交差する方向に延びるグリップ部と、を備え、
前記タイマーバルブは、前記グリップ部の内部に配置される、
請求項1から3の何れか一項に記載の空気圧工具。
【請求項5】
前記駆動機構が設けられる本体と、
前記本体の側部に取り付けられ、前記駆動機構のピストンの移動方向とは交差する方向に延びるグリップ部と、を備え、
前記弁体は前記グリップ部の延在方向に沿って移動可能に配置された、
請求項3に記載の空気圧工具。
【請求項6】
圧縮空気の空気圧によって駆動する駆動機構と、
前記駆動機構を駆動するための圧縮空気が供給される第1チャンバと、
前記第1チャンバに供給された前記圧縮空気を用いて前記駆動機構を駆動するヘッドバルブと、
前記ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、
前記トリガバルブの作動に伴って作動する前記ヘッドバルブの作動を無効にする制御バルブと、
トリガの操作に基づいて作動し、前記制御バルブを所定のタイミングで作動させることで前記ヘッドバルブの作動を無効にさせるタイマーバルブと、を備え、
前記タイマーバルブは、前記制御バルブを作動させるための圧縮空気の流れを規制する絞り部を有し、前記駆動機構による打ち込み動作に連動した所定のタイミングで前記絞り部に前記圧縮空気を流す、
空気圧工具。
【請求項7】
前記絞り部は、被絞り部との間の隙間の面積を変位させることで前記圧縮空気の流れを規制し、
前記打ち込み動作に連動して前記圧縮空気が供給される際に前記隙間の面積を拡張させる、
請求項6に記載の空気圧工具。
【請求項8】
前記打ち込み動作の後に前記駆動機構のピストンを初期位置に戻すための圧縮空気を収容する第2チャンバを有し、
前記絞り部は、前記第2チャンバから供給される前記圧縮空気により前記被絞り部に対して移動することで前記隙間の面積を拡張させる、
請求項7に記載の空気圧工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気圧工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリンダを有する本体と、シリンダの内部にスライド可能に設けられたピストンと、ピストンに連結されたドライバとを備え、圧縮空気によりピストンを駆動することで被打込部材に釘を打ち込む釘打機が広く利用されている。
【0003】
圧縮空気を利用した釘打機は、ピストンの作動を制御するヘッドバルブと、ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、トリガバルブを作動させるトリガ機構と、本体の先端側に設けられたノーズ部から突出するコンタクトアームとを備えている。釘打機は、例えば、トリガレバーを引き操作された状態でコンタクトアームが被打込部材に押し付けられた場合に、ドライバにより被打込部材に釘を打ち出す打ち込み動作(以下、コンタクト打ちという)が可能となっている。
【0004】
コンタクト打ちでは、釘の打ち込み後、トリガを引いたままでコンタクトアームを被打込材へ押し付ける毎に連続的に釘の打込みが行えるので、素早い作業に向いている。これに対し、不用意な動作を規制するため、トリガが引かれた後、コンタクトアームが被打込材に押し付けられずに所定時間経過後すると、ヘッドバルブを非作動とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1等に開示される従来の釘打機では、以下のような問題があった。タイミングバルブは、メインチャンバ等からの圧縮空気を利用している。そのため、釘打機に供給された圧縮空気に含まれる油、ドレン、微小なゴミ等が、流路(絞り部)等に付着することで圧縮空気の流量が変動してしまう場合があった。その結果、タイマー機構の計時が変動してしまい、タイマー機構の作動が安定しないという問題があった。
【0007】
そこで、本開示は、上記課題を解決するために、釘打機に供給された圧縮空気に含まれる油、ドレン、微小なゴミ等の影響を排除し、タイマー機構の作動の安定化を図ることが可能な空気圧工具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る空気圧工具は、圧縮空気の空気圧によって駆動する駆動機構と、前記駆動機構を駆動するための圧縮空気が供給されるチャンバと、前記チャンバに供給された圧縮空気を用いて前記駆動機構を駆動するヘッドバルブと、前記ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、前記トリガバルブの作動に伴って作動する前記ヘッドバルブの作動を無効にする制御バルブと、トリガの操作に基づいて作動し、前記制御バルブを所定のタイミングで作動させることで前記ヘッドバルブの作動を無効にさせるタイマーバルブと、を備え、前記タイマーバルブは、当該タイマーバルブを作動させるための空気を溜める収容部を有し、前記チャンバと前記収容部とは、互いに遮断された空間で構成される。
【0009】
また、本開示の一態様に係る空気圧工具は、圧縮空気の空気圧によって駆動する駆動機構と、前記駆動機構を駆動するための圧縮空気が供給される第1チャンバと、前記第1チャンバに供給された前記圧縮空気を用いて前記駆動機構を駆動するヘッドバルブと、前記ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、前記トリガバルブの作動に伴って作動する前記ヘッドバルブの作動を無効にする制御バルブと、トリガの操作に基づいて作動し、前記制御バルブを所定のタイミングで作動させることで前記ヘッドバルブの作動を無効にさせるタイマーバルブと、を備え、前記タイマーバルブは、前記制御バルブを作動させるための圧縮空気の流れを規制する絞り部を有し、前記駆動機構による打ち込み動作に連動した所定のタイミングで前記絞り部に前記圧縮空気を流す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動機構の駆動に用いる圧縮空気を利用することなく、タイマーバルブをチャンバとは遮断された収容部の空気を用いて作動させるので、タイマーバルブの内部へのゴミや油等の侵入を防止できる。
【0011】
また、本発明によれば、打ち込み動作に連動して絞り部に圧縮空気を流すので、絞り部に付着したゴミや油等の不純物を圧縮空気により除去することができる。これにより、タイマーバルブの制御バルブを作動させるまでの時間の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態に係る釘打機の側面断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る制御バルブ、トリガバルブ及びスイッチバルブの側面断面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るタイマーバルブの側面断面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図8】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図9】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図10】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である
【
図11】第2の実施の形態に係る釘打機の側面断面図である。
【
図12】第2の実施の形態に係るタイマーバルブの側面断面図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る制御バルブの側面断面図である。
【
図14】第2の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図15】第2の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図16】第2の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図17】第2の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図18】第2の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【
図19】第2の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<第1の実施の形態>
[釘打機100の構成例]
図1は、第1の実施の形態に係る釘打機100の側面断面図である。
図2は、第1の実施の形態に係るトリガバルブ50、スイッチバルブ70及び制御バルブ40の側面断面図である。
図3は、第1の実施の形態に係るタイマーバルブ80の側面断面図である。
【0015】
釘打機100は、空気圧工具の一例であり、
図1に示すように、ノーズ部2を有する本体1、作業者が把持するグリップ部4及び被打込部材に打ち込む釘が装填されるマガジン部6を備えている。本体1及びグリップ部4の筐体は、例えばハウジング1aによって一体的に形成されている。また、釘打機100は、ヘッドバルブ30と、トリガ機構10と、トリガバルブ50と、スイッチバルブ70と、タイマーバルブ80と、制御バルブ40とを備えている。
【0016】
なお、本実施の形態において、釘打機100のノーズ部2側を釘打機100の下側とし、その反対側を釘打機100の上側とする。また、釘打機100の本体1側を釘打機100の前側とし、釘打機100のグリップ部4側を釘打機100の後側とする。
【0017】
本体1の内部は中空であり、本体1の内部には圧縮空気の空気圧によって駆動する打撃機構(駆動機構)20が配置されている。打撃機構20は、ドライバ22と、ピストン24と、シリンダ26とを有している。ドライバ22は、シリンダ26の内部を上下方向(軸方向)に往復移動し、マガジン部6から送り出された釘の頭部に打撃を与えることで釘を被打込部材に打ち込む。ピストン24は、ドライバ22の上端部に連結され、シリンダ26の上方側に設けられたピストン上室24aに流入する圧縮空気に応じてシリンダ26内を往復移動する。シリンダ26は、円筒体であって、本体1を構成するハウジング1aの内部に配置され、ドライバ22及びピストン24を上下方向に往復可能に収容する。ピストン24とヘッドバルブ30との間には、ピストン24の上方側への移動を規制する環状の係止部25が設けられている。
【0018】
本体1の下端部には、ノーズ部2が設けられている。ノーズ部2は、本体1の下端部から下方側に所定の長さだけ突出している。ノーズ部2には、ドライバ22により送り出された釘を外部に打ち出す射出口3が形成されている。射出口3は、ドライバ22及びシリンダ26と同軸上に配置される。
【0019】
本体1の上部側の内壁とシリンダ26の上部側の外周部との間、及びグリップ部4の内部には、圧縮空気が供給及び充填されるメインチャンバ5が設けられている。本体1の下部側の内壁とシリンダ26の下部側の外周部との間には、ピストン24を上死点にリターンさせるためのブローバックチャンバ28が設けられている。ブローバックチャンバ28には、スイッチバルブ70に連通する第1接続路29の一端部が連通している。
【0020】
シリンダ26の軸方向の略中間位置であってシリンダ26の円周方向には、複数の小孔27が所定間隔を空けて形成されている。複数の小孔27は、シリンダ26に設けられた逆止弁27aを介してブローバックチャンバ28に連通している。なお、ピストン24が小孔27より下方側の下死点に位置する場合に、シリンダ26の圧縮空気がブローバックチャンバ28の内部に小孔27を介して流入する。また、ピストン24が上死点に位置する場合に、ブローバックチャンバ28の内部の圧縮空気は大気に放出されて、ブローバックチャンバ28内は大気圧となる。
【0021】
ヘッドバルブ30は、シリンダ26への圧縮空気の供給及び遮断を行い、メインチャンバ5から供給される圧縮空気を用いて打撃機構20を駆動する。ヘッドバルブ30は、基部32と、可動部34とを有している。基部32は本体1内の上端側に配置され、可動部34は基部32の下方側に配置されている。可動部34は、基部32と可動部34との間に介在された付勢バネ36によって、基部32とは所定の隙間を空けた状態でシリンダ26側に付勢されている。可動部34の下面は付勢状態(ヘッドバルブ30がオフ状態)において係止部25の上面に当接しており、メインチャンバ5とピストン上室24aとの間が遮断された構造となっている。
【0022】
基部32と可動部34との間の隙間は、メインチャンバ5の内部の圧縮空気が供給されるヘッドバルブチャンバ38として機能する。ヘッドバルブチャンバ38には第2接続路39の一端部が連通し、第2接続路39の他端側は制御バルブ40に連通している。可動部34は、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気の状態に応じて、本体1を構成するハウジング1aの内壁に沿ってスライドし、ピストン上室24aとメインチャンバ5との間を開閉操作する。ピストン上室24aは、ハウジング1aに形成された開口部1bを介して外部に連通している。
【0023】
グリップ部4は、本体1の後方側の側部に本体1の延在方向(シリンダ26の軸方向)に対して略直交する方向に取り付けられている。グリップ部4の後端部には、エアプラグ8が設けられている。エアプラグ8には、図示しないエアホースの一端部が接続され、エアホースの他端部が図示しないコンプレッサに接続される。エアコンプレッサは、打撃機構20を駆動するための圧縮空気を生成し、エアホース及びエアプラグ8を経由して生成した圧縮空気をメインチャンバ5の内部に供給する。
【0024】
トリガ機構10は、トリガレバー11と、コンタクトレバー12と、コンタクトアーム14と、押圧部材15とを有している。トリガレバー11は、スイッチバルブ70をオン(作動)させるレバーであり、本体1の後方側の側面であってグリップ部4の下方側に軸部を支点として回動可能に取り付けられている。コンタクトレバー12は、トリガレバー11の内部に配置され、トリガレバー11に連動して前端側を支点に回動する。コンタクトレバー12の前端部は、後端側に設けられた例えば捻りバネによって下部側に付勢され、押圧部材15の上端面に当接する。なお、コンタクトレバー12においてバネによる付勢は無くてもよい。
【0025】
コンタクトアーム14は、ノーズ部2の下端部から下方側に突出した状態でノーズ部2の外周部に取り付けられている。コンタクトアーム14は、図示しないバネによって下方側に付勢され、被打込部材への押し付け動作に伴ってノーズ部2に対して相対的に上下方向に往復移動する。押圧部材15は、コンタクトアーム14に連結され、コンタクトアーム14の上方側への移動に伴って、コンタクトレバー12の前端側を押し上げる。トリガレバー11を引いた状態であれば、これによってトリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられ、トリガバルブ50が作動(オン)する。
【0026】
マガジン部6は、連結された一連の連結釘を装填可能に構成され、グリップ部4の下方側に設けられている。マガジン部6の前端側はノーズ部2に連結され、マガジン部6の後端側は取付アーム部7を介してグリップ部4に連結されている。マガジン部6に装填された連結釘は、ノーズ部2に対してスライド可能に設けられた送り爪によってノーズ部2の射出口3に案内され、下降するドライバ22によって衝撃が加えられることで被打込部材に打ち込まれる。
【0027】
トリガバルブ50は、
図1及び
図2に示すように、コンタクトアーム14の被打込部材への押し付け状態に基づいてヘッドバルブ30を作動させる。トリガバルブ50は、グリップ部4の前端側であって、スイッチバルブ70に隣接して配置されている。トリガバルブ50は、ハウジング52と、パイロットバルブ54と、キャップ56と、トリガバルブステム58とを有している。
【0028】
ハウジング52は、上下方向の略中間部に通路53を有している。通路53は、制御バルブ40(ヘッドバルブ30)とトリガバルブ50とを接続する第3接続路49の一端部に連通している。また、通路53は、トリガバルブ50のオン時に排気路59に連通可能となっている。
【0029】
パイロットバルブ54は、ハウジング52の内側に隙間S1を空けて配置されている。パイロットバルブ54の下部側の周縁部には、Oリング54a,54bが上下方向に所定間隔を空けて取り付けられている。Oリング54aは、トリガバルブ50の非作動時に、通路53と排気路59との間の通路を遮断し、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気が通路53から外部に漏れ出すことを防止する。また、Oリング54aはハウジング52の内壁に押し当てられており、パイロットバルブ54の上方側への移動が規制される。Oリング54bは、後述する空室55と排気路59との間を遮断する。
【0030】
キャップ56は、上方側のパイロットバルブ54との間に空室55を空けてハウジング52の内側に取り付けられている。空室55は、トリガバルブ50の非作動時にパイロットバルブ54とトリガバルブステム58との隙間S2及びパイロットバルブ54の通路54cを介してメインチャンバ5に連通し、圧縮空気が充填されるチャンバとして機能する。
【0031】
トリガバルブステム58は、パイロットバルブ54及びキャップ56の内側に配置され、キャップ56を起点として上下方向に移動可能に設けられている。トリガバルブステム58の上端側は、圧縮バネ57によってコンタクトレバー12側(下方側)に付勢されている。圧縮バネ57は、パイロットバルブ54とトリガバルブステム58との間に介在され、トリガバルブステム58の押圧に応じて伸縮する。トリガバルブステム58の下端部はキャップ56の下面から所定の長さだけ突出しており、コンタクトレバー12に当接可能である(
図1参照)。トリガバルブステム58の上下方向の略中間位置の周縁部には、Oリング58a,58bが上下方向に所定間隔を空けて取り付けられている。Oリング58a,58bは、トリガバルブ50の非作動時に、空室55の圧縮空気がトリガバルブステム58とキャップ56との隙間S3から外部に漏れ出すことを防止する。
【0032】
ハウジング52とキャップ56との間には、排気路59が設けられている。排気路59は、トリガバルブ50の作動時にトリガバルブステム58の押し上げにより空室55が閉じた場合に通路53に連通し、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気を大気中に排気する。
【0033】
スイッチバルブ70は、
図1及び
図2に示すように、トリガバルブ50の後方側に隣接して配置され、トリガレバー11の操作に基づいてタイマーバルブ80を作動させる。スイッチバルブ70は、シリンダ72と、スイッチバルブステム74とを有している。
【0034】
シリンダ72は、上下方向に延びる中空を有する円筒体であって、スイッチバルブステム74を上下方向にスライド可能に収容する。シリンダ72の上部側には、第1通路72aが形成されている。第1通路72aは、メインチャンバ5に連通し、第1通路72aを介してシリンダ72の内部にメインチャンバ5の内部の圧縮空気を流入させる。
【0035】
シリンダ72の上下方向の略中間位置には第4接続路79の一端部が連通し、第4接続路79の他端部がタイマーバルブ80に連通している。第4接続路79は、スイッチバルブ70とタイマーバルブ80とを接続し、第4接続路79を介してタイマーバルブ80に対して圧縮空気の供給又は排気が可能となっている。シリンダ72の第4接続路79よりも下方側には第1接続路29の一端部が連通し、第1接続路29の他端部がブローバックチャンバ28に連通している。第1接続路29は、スイッチバルブ70とブローバックチャンバ28との間を接続し、第1接続路29を介してスイッチバルブ70に圧縮空気の供給又はスイッチバルブ70からの圧縮空気の排気が可能となっている。
【0036】
スイッチバルブステム74は、シリンダ72の内部に収容され、圧縮バネ76によってトリガレバー11側(下側)に向かって付勢されている。圧縮バネ76は、スイッチバルブステム74の上端面とシリンダ72内の天面との間に介在され、トリガレバー11の引き操作に応じて伸縮する。スイッチバルブステム74の下端部はシリンダ72の下面から下方側に突出しており、トリガレバー11(
図1参照)の引き操作時にその下端部がコンタクトレバー12に当接する。
【0037】
スイッチバルブステム74の上下方向の略中間位置の周縁部には、シリンダ72の内壁との間の密着を図るOリング74aが装着されている。スイッチバルブステム74は、トリガレバー11の非引き操作時に、Oリング74aにより第4接続路79と第1接続路29との間の経路を閉じると共に第1通路72aと第4接続路79とを連通する。一方、スイッチバルブステム74は、トリガレバー11の引き操作時に、コンタクトレバー12によって圧縮バネ76の弾性力に抗して押し上げられ、Oリング74aにより第1通路72aと第4接続路79との間の経路を閉じると共に、第4接続路79と第1接続路29とを連通する。
【0038】
タイマーバルブ80は、
図1及び
図3に示すように、トリガレバー11が引き操作された状態でかつ予め設定された規定時間が経過した後に、コンタクトアーム14が被打込部材に押し付けられた場合に制御バルブ40を作動させることで打ち込み動作を無効にする。つまり、タイマーバルブ80は、トリガレバー11の操作に基づいて作動し、制御バルブ40を所定のタイミングで作動させることでヘッドバルブ30の作動を無効にさせる。
【0039】
タイマーバルブ80は、シリンダ90と、第1タイマーピストン84と、第1ピストン軸部85と、第2タイマーピストン94と、第2ピストン軸部95とを有している。
【0040】
シリンダ90は、前後方向に延びる中空を有する円筒体であって、第1タイマーピストン84及び第2タイマーピストン94を前後方向にスライド可能に収容する。シリンダ90の内部は、仕切部90aを介して収容部の一例である第1室81と第2室91とに仕切られる。第1室81は、密閉された閉空間(閉回路)で構成され、他の空間である第2室91及びメインチャンバ5等とは互いに遮断されている。また、第1室81は、外気からも遮断されている。第1室81の内部には、タイマーバルブ80を作動させる際に用いる大気(空気)が予め充填されている。これにより、第1室81の内部に他の空間からゴミや油等の不純物が流入することを防止できるようになっている。
【0041】
第1タイマーピストン84は、シリンダ90の内径と略同一の径を有する円筒体からなり、グリップ部4の延在方向であってかつシリンダ90の内壁に沿って移動可能に配置される。第1タイマーピストン84は、圧縮バネ89によって制御バルブ40側(前方側)に付勢されている。圧縮バネ89は、第1タイマーピストン84の基端側に形成された凹部と第1室81の内部の後壁との間に介在され、第1タイマーピストン84の前進又は後退に応じて伸縮する。
【0042】
第1タイマーピストン84の周縁部には、その円周方向に沿って凹部84aが形成されている。凹部84aには、シリンダ90の内壁との間を密閉するOリング86が装着されている。これにより、第1室81は、Oリング86よりも後方側の第1空間81aと、Oリング86よりも前方側の第2空間81bとにさらに仕切られる。第1空間81aと第2空間81bとは、Oリング86により互いに遮蔽される。
【0043】
シリンダ90の内部の下部側には、前後方向に延びる第1通路82a及び第2通路82bが上下に並んで設けられている。第1通路82aの前端部は第2空間81bに連通し、第1通路82aの後端部は第1空間81aに連通している。第2通路82bの前端部は第2空間81bに連通し、第2通路82bの後端部は第1空間81aに連通している。
【0044】
第1通路82aの経路途中には、逆止弁87が設けられている。逆止弁87は、例えば、第1通路82aを開閉するボール87aと、ボール87aを後方側に付勢するバネ87bとを有している。第1タイマーピストン84が第1室81の内部を後退する場合には、第1空間81aから第1通路82aに流入する大気によりボール87aがバネ87bの弾性力に抗して前方側に移動することで第1通路82aが開き、第1室81の第1空間81aの大気が第2空間81bに流入する。第1タイマーピストン84が第1室81の内部を前進する場合には、第2空間81bから第1通路82aに流入する大気及びバネ87bがボール87aに作用し、ボール87aにより第1通路82aが閉じられるため、第1通路82aを通ってシリンダ90の第2空間81bの大気が第1空間81aに流入(逆流)することはない。
【0045】
第2通路82bの経路途中には、絞り部88が設けられている。絞り部88は、第2通路82bの一部の経路の断面積を小さく(幅を狭く)することで構成される。絞り部88は、第2空間81bから第2通路82bに流入する大気の単位時間当たりの流量を一定に制限することで、第1タイマーピストン84の移動速度が規制される。これにより、第2ピストン軸部95が制御バルブ40の制御バルブステム44を押圧するまでの移動速度を制御することができる。また、第1タイマーピストン84が第1室81の内部の初期位置(下死点)から制御バルブ40を作動させる作動位置(上死点)まで移動する際の規定時間は、タイマーバルブ80の絞り部88を通過する空気の流量及び圧縮バネ89のバネ係数等によって決定される。本実施の形態において規定時間は、例えば3秒~10秒であるが、これらに限定されることはない。また、本実施の形態では、制御バルブ40が作動位置からヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間の通路を遮断する位置まで移動する時間は、規定時間よりも大幅に短い時間に設定される。そのため、規定時間が経過すると、その直後にヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間の通路が制御バルブ40により遮断される。
【0046】
第1ピストン軸部85は棒状の円柱体であって、第1ピストン軸部85の後端部が第1タイマーピストン84の前端部に取り付けられている。第1ピストン軸部85は仕切部90aに形成された貫通孔90bに挿通され、その前端側が第1室81の内部から第2室91の内部に延出する。第1ピストン軸部85の前端部は第2タイマーピストン94の後端部に取り付けられており、第1タイマーピストン84の押圧力を第2タイマーピストン94に伝達可能となっている。仕切部90aにはOリング90cが取り付けられ、第1室81の密閉状態を確保している。
【0047】
第2タイマーピストン94は、シリンダ90の内径と略同一の径を有する円筒体であって、第1ピストン軸部85による押圧に応じて第2室91の内部を前進又は後退する。第2タイマーピストン94の周縁部には、その円周方向に沿って凹部94aが形成されている。凹部94aには、シリンダ90の内壁との間を密閉するためのOリング96が装着されている。これにより、第2室91は、Oリング96よりも後方側の第1空間91aと、Oリング96よりも前方側の第2空間91bとにさらに仕切られる。
【0048】
第1空間91aには、ハウジング1aの外部に連通する通路90eが形成されている。第2空間91bにはスイッチバルブ70に連通する第4接続路79の一端部が接続されており、第4接続路79を介してタイマーバルブ80への圧縮空気の供給又はタイマーバルブ80から圧縮空気の排気が可能となっている。
【0049】
第2ピストン軸部95は棒状の円柱体であって、第2ピストン軸部95の後端部が第2タイマーピストン94の前端部に取り付けられている。第2ピストン軸部95は、第2タイマーピストン94と制御バルブ40との間に形成された貫通孔90dの内部を前後方向に移動可能である。第2ピストン軸部95の前端部は、制御バルブ40のシリンダ42の内部に出没可能に設けられ、制御バルブ40を構成する制御バルブステム44の後端面を押圧することで制御バルブ40を作動させる。
【0050】
本実施の形態において、タイマーバルブ80は、
図1及び
図3に示すように、第1タイマーピストン84及び第2タイマーピストン94の移動方向がシリンダ26の軸方向(ドライバ22の移動方向)とは異なる向き、本実施の形態では直交する方向となるように、グリップ部4の内部に配置されている。また、タイマーバルブ80は、第1タイマーピストン84及び第2タイマーピストン94の移動方向がグリップ部4の延在方向に沿った方向、すなわちグリップ部4の延在方向と平行となるように、グリップ部4の内部に配置されている。
【0051】
制御バルブ40は、
図1及び
図2に示すように、トリガバルブ50の作動に伴って作動するヘッドバルブ30の作動を無効にする。具体的には、制御バルブ40は、タイマーバルブ80の制御によってヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間の通路を連通状態から遮断状態に切り替えることでヘッドバルブ30の作動を無効にする。制御バルブ40は、タイマーバルブ80の前方側に隣接する位置であって、ヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間に配置されている。制御バルブ40は、シリンダ42と、制御バルブステム44とを有している。なお、シリンダ42の一部は、ハウジング1aの一部を共有した構造となっている。
【0052】
シリンダ42は、前後方向に延びる中空を有する円筒体であって、制御バルブステム44を前後方向にスライド可能に収容する。シリンダ42の上面側には、ヘッドバルブチャンバ38に連通する第2接続路39の一端部が連通している。シリンダ42の下面側には、トリガバルブ50に連通する第3接続路49の一端部が連通すると共に、メインチャンバ5に連通する通路42cが形成されている。
【0053】
制御バルブステム44は、前後方向に延びる円柱体であって、シリンダ42の内部に配置されている。制御バルブステム44は、圧縮バネ46によってタイマーバルブ80(後方側)に付勢されている。圧縮バネ46は、シリンダ42の内部の前壁と制御バルブステム44の前端面との間に介在され、タイマーバルブ80による押圧に応じて伸縮する。制御バルブステム44の前後方向の略中間位置の周縁部には、シリンダ42の内壁との密着を図るためのOリング44a,44bが前後方向に所定間隔を空けて装着されている。
【0054】
制御バルブステム44は、タイマーバルブ80の非押圧時、つまりタイムアウト前に、シリンダ42の内部の後端側に位置し、Oリング44bによって第2接続路39と通路42cとの間の経路を閉じる一方で第2接続路39と第3接続路49との間の経路を開く。これにより、ヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50とが接続される。これに対し、制御バルブステム44は、タイマーバルブ80の押圧時、つまりタイムアウト後に、シリンダ42の内部の前端側に移動し、第2接続路39と通路42cとの間の経路を開く一方でOリング44aによって第2接続路39と第3接続路49との間の経路を閉じる。これにより、ヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間が遮断される。
【0055】
[釘打機100の動作例]
次に、第1の実施の形態に係る釘打機100の打ち込み動作の一例について説明する。
図4~
図10は、第1の実施の形態に係る釘打機100における打ち込み動作を示す図である。
【0056】
図1に示した釘打機100のエアプラグ8にエアホースが接続されると、メインチャンバ5の内部に圧縮空気が供給される。メインチャンバ5の内部に供給された圧縮空気は、
図4に示すように、スイッチバルブ70の第1通路72a、スイッチバルブ70の内部及び第4接続路79を経由してタイマーバルブ80の第2室91の第2空間91bに供給される。
【0057】
これに伴い、第2タイマーピストン94の前面が圧縮空気により後方側に押され、第1タイマーピストン84及び第1ピストン軸部85が圧縮バネ89の弾性力に抗して後退する。このとき、第1空間81aの大気が圧縮され、圧縮された大気が第1通路82aに流入する。逆止弁87のボール87aは、流入した大気によりバネ87bの弾性力に抗して前方側に移動することで、第1通路82aを開く。これにより、第1空間81aの空気は、第1通路82aを経由して第2空間81bに流入する。なお、第2通路82bでは絞り部88の流動抵抗が高いため、圧縮空気は第2通路82bをほとんど通過しない。
【0058】
図5に示すように、タイマーバルブ80の第2室91への圧縮空気の供給が続くと、圧縮バネ89の圧縮により第1タイマーピストン84がシリンダ90の内部の初期位置、具体的には第1タイマーピストン84の基端部が第1室81の後部に到達する。これにより、タイマーバルブ80がスタンバイ状態となる。
【0059】
図6に示すように、作業者によりトリガレバー11が引き操作されると、コンタクトレバー12によりスイッチバルブ70のスイッチバルブステム74が押し上げられ、スイッチバルブ70が作動する。スイッチバルブ70の作動によりOリング74a(
図2参照)も上方側に移動し、スイッチバルブ70の第1通路72aと第4接続路79とが遮断される一方で、第4接続路79と第1接続路29とが連通する。これに伴い、タイマーバルブ80の第2室91の第2空間91bの圧縮空気が、第4接続路79、スイッチバルブ70の内部及び第1接続路29を経由して、大気圧のブローバックチャンバ28に排気される。
【0060】
また、シリンダ90の第2空間91bの圧縮空気が排気されると、第1タイマーピストン84は圧縮バネ89の付勢力により第1室81の内部を前進する。これに伴い、第1室81の第2空間81bの大気が、第2通路82b及び絞り部88を通過して第1空間81aに流入する。第1空間81aに供給された大気の流量は、絞り部88により一定に制限される。圧縮バネ89は、第1空間81aに流入する大気の流量に応じて伸長する。これにより、第1タイマーピストン84は、第1室81の内部の初期位置からゆっくり前進してき、タイマーバルブ80の計時(タイマー)がスタートする。なお、第1通路82aはボール87aによって閉じられるため、大気が第1通路82aを介して第1空間81aに流入(逆流)することはない。
【0061】
図7に示すように、トリガレバー11が引かれた状態でかつタイマーバルブ80の規定時間が経過する前に、コンタクトアーム14が被打込部材に押し当てられると、押圧部材15が押し上げられる。これに伴い、コンタクトレバー12の前端側が押し上げられ、トリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられることでトリガバルブ50が作動する。トリガバルブ50が作動すると、
図2に示したように、Oリング58a,58bも上方側に移動し、空室55の圧縮空気がキャップ56とトリガバルブステム58との隙間S3から外部に排気される。パイロットバルブ54は、メインチャンバ5の内部の圧縮空気により圧縮バネ57の弾性力に抗して押し下げられ、パイロットバルブ54の下面がキャップ56の上面に当接する。これにより、通路53と排気路59とが連通し、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気が第2接続路39、制御バルブ40の内部、第3接続路49、トリガバルブ50の内部及び排気路59を経由して大気中(外部)に排気される。
【0062】
ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気が排気されると、ヘッドバルブ30の可動部34がメインチャンバ5の内部の圧縮空気により押し上げられ、可動部34と係止部25との間が開くことで、ピストン上室24aにメインチャンバ5の圧縮空気が流入し、ピストン24がシリンダ26の内部を急速に降下していく。
【0063】
図8に示すように、ピストン24がさらに降下すると、ピストン24に連結されたドライバ22により釘が被打込部材に打ち込まれる。また、ピストン24がシリンダ26の内部の下部側まで降下すると、シリンダ26の内部の圧縮空気が小孔27を介してブローバックチャンバ28の内部に流入する。流入した圧縮空気は、第1接続路29、スイッチバルブ70の内部及び第4接続路79を経由してタイマーバルブ80の第2室91に流入する。これにより、タイマーバルブ80が再び第1室81の内部の初期位置に後退し、タイマーバルブ80がリセットされる。タイマーバルブ80の後退に伴い、第1空間81aの大気は、
図4で説明したように、第2通路82b及び逆止弁87を経由して第2空間81bに流入する。
【0064】
これに対し、
図9に示すように、
図6に示した作業者によりトリガレバー11が引き操作された時点から予め設定された規定時間以内に、コンタクトアーム14が被打込部材に押し付けられない場合、つまり打ち込み動作が実行されない場合、タイマーバルブ80がタイムアウトする。具体的には、タイマーバルブ80の第2ピストン軸部95が、規定時間の経過時に制御バルブ40を押圧する作動位置まで移動する。
【0065】
制御バルブ40の制御バルブステム44は、第2ピストン軸部95により前方側に押され、シリンダ42の前端側に移動する。制御バルブステム44が前進すると、Oリング44a,44bも前進し、第2接続路39と第3接続路49とを連通する経路が遮断される一方で、隙間S4が形成される。これにより、ヘッドバルブチャンバ38は、トリガバルブ50に対する連通状態から、第2接続路39、隙間S4及び制御バルブ40の通路42aを経由してメインチャンバ5に連通する連通状態に切り替わる。
【0066】
図10に示すように、
図6に示した作業者によりトリガレバー11が引き操作された状態でタイマーバルブ80がタイムアウトした後に、コンタクトアーム14が被打込部材に押し付けられると、これに連動して押圧部材15が押し上げられる。これに伴い、コンタクトレバー12の前端側が押し上げられ、コンタクトレバー12の押し上げによりトリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられ、トリガバルブ50が作動する。トリガバルブ50が作動すると、
図2に示したように、Oリング58a,58bが上方側に移動し、空室55の圧縮空気がキャップ56とトリガバルブステム58との隙間S3から外部に排気される。パイロットバルブ54は、メインチャンバ5の内部の圧縮空気により圧縮バネ57の弾性力に抗して押し下げられ、パイロットバルブ54の下面がキャップ56の上面に当接する。これにより、通路53と排気路59とが連通する。
【0067】
しかしながら、タイマーバルブ80がタイムアウトした状態では、
図9に示した制御バルブ40により第2接続路39と第3接続路49との間の経路が遮断される一方で、第2接続路39とメインチャンバ5とが連通した状態である。そのため、ヘッドバルブチャンバ38の圧縮空気が、トリガバルブ50に設けられた排気路59を介して外部に排気されることはなく、ヘッドバルブチャンバ38の内部に残ったままの状態となる。これにより、タイマーバルブ80がタイムアウトした場合には、作業者がトリガレバー11を引き操作した状態でコンタクトアーム14を被打込部材に押し付けたときでも、ヘッドバルブ30は作動しない。従って、タイマーバルブ80のタイムアウト後は打ち込み動作が実行されることはない。
【0068】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、タイマーバルブ80を作動させる大気を溜めるためのシリンダ90の第1室81を他の空間と遮断した閉空間で構成し、タイマーバルブ80を作動させる際に用いる大気を外部から供給しないので、タイマーバルブ80の第1室81の内部に油やゴミ等が進入することを防止できる。これにより、タイマーバルブ80の規定時間を正確かつ高精度に計時できると共に、タイマーバルブ80における油やゴミ等の付着物の付着による異常動作を防止できる。
【0069】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係るタイマーバルブ280では、第1の実施の形態のタイマーバルブ80とは異なる構成を採用している。同様に、第2の実施の形態に係る制御バルブ240及びスイッチバルブ70についても、第1の実施の形態の制御バルブ40及びスイッチバルブ70とは異なる構成を採用している。なお、その他の釘打機200の構成、機能及び動作は、第1の実施の形態の釘打機100の構成等を共通するため、詳細な説明については省略する。
【0070】
[釘打機200の構成例]
図11は、第2の実施の形態に係る釘打機200の側面断面図である。
図12は、第2の実施の形態に係るタイマーバルブ280の側面断面図である。
図13は、第2の実施の形態に係る制御バルブ240の側面断面図である。
【0071】
釘打機200は、空気圧工具の一例であり、シリンダ26の内部をスライド可能なピストン24と、ピストン24に取り付けられて被打込部材に釘を打ち込むドライバ22とを有する打撃機構20と、打撃機構20を駆動するための圧縮空気が供給されるメインチャンバ5と、メインチャンバ5に供給された圧縮空気を用いて打撃機構20を駆動するヘッドバルブ30と、ヘッドバルブ30を作動させるトリガバルブ50とを備えている。また、釘打機200は、トリガバルブ50の作動に伴って作動するヘッドバルブ30の作動を無効にする制御バルブ240と、制御バルブ240を作動させることでヘッドバルブ30の作動を無効にさせるタイマーバルブ280と、トリガレバー11の操作に基づいてタイマーバルブ280を作動させるスイッチバルブ70とを備えている。
【0072】
スイッチバルブ70は、
図11に示すように、トリガバルブ50の後方側に隣接して配置され、トリガレバー11の操作に基づいてタイマーバルブ280を作動させる。スイッチバルブ70は、シリンダ72と、スイッチバルブステム74とを有している。
【0073】
シリンダ72は、上下方向に延びる中空を有する円筒体であって、スイッチバルブステム74を上下方向にスライド可能に収容する。シリンダ72の上部側には、メインチャンバ5に連通する第1通路72aが形成されている。シリンダ72の略中間位置には第4接続路79の一端部が連通し、第4接続路79の他端部がタイマーバルブ280に連通している。シリンダ72の第4接続路79の下方側には、大気圧であるハウジング1a外部に連通する第2通路72bが形成されている。
【0074】
スイッチバルブステム74は、トリガレバー11の非引き操作時に、第4接続路79と第2通路72bとを連通すると共に、Oリング74aにより第1通路72aと第4接続路79との間の経路を閉じる。一方、スイッチバルブステム74は、トリガレバー11の引き操作時に、コンタクトレバー12によって圧縮バネ76の弾性力に抗して押し上げられることで、第1通路72aと第4接続路79とを連通すると共に、Oリング74bにより第4接続路79と第2通路72bとの間の経路を閉じる。
【0075】
釘打機200は、
図11及び
図12に示すように、トリガレバー11が引き操作されかつ規定時間が経過した状態でコンタクトアーム14が被打ち込み部材に押し付けられる場合に、制御バルブ240を作動させることで打ち込み動作を無効にするタイマーバルブ280を備えている。
【0076】
タイマーバルブ280は、ハウジング1aの外部に設けられ、後述する接続路249を介して制御バルブ240に接続され、第4接続路79を介してスイッチバルブ70に接続され、第1接続路29を介してブローバックチャンバ28に接続されている。
【0077】
タイマーバルブ280は、
図12に示すように、バルブ用ハウジング281と、タイマーバルブステム282と、ピストン285と、シール部材286とを有している。バルブ用ハウジング281には、タイマーバルブステム282を収容する第1収容部281aと、ピストン285を収容する第2収容部281bと、シール部材286を収容する第3収容部281cと、制御バルブ240を作動させるまでの規定時間を計時するための圧縮空気を溜める空間部281dとが設けられている。
【0078】
第1収容部281aの下端側には、第4接続路79の一端部が連通しており、第4接続路79を介してメインチャンバ5の圧縮空気を第1収容部281aの内部に供給できるようになっている。第1収容部281aの上端側には第1通路281uの一端部が連通し、第1通路281uの他端部が空間部281dに連通している。
【0079】
第2収容部281bの上端側には、第3通路281wの一端部が連通し、第3通路281wの他端部が第1接続路29の一端部に連通しており、第3通路281wを介してブローバックチャンバ28の圧縮空気を第2収容部281bの内部に供給できるようになっている。
【0080】
第3収容部281cの下端側には、第2通路281vの一端部が連通し、第2通路281vの他端部が第4接続路79の一端部に連通しており、第2通路281vを介してメインチャンバ5の圧縮空気を第3収容部281cの内部に供給できるようになっている。
【0081】
第2収容部281bと第3収容部281cとの間には、バルブ用ハウジング281の外部に連通する第5通路281yが設けられている。第1通路281uと第2収容部281bとの間には、これらの間を連通する第6通路281zが設けられている。第3通路281wと第1収容部281aとの間には、第3通路281wの途中から分岐する第4通路281xが設けられている。
【0082】
タイマーバルブステム282は、上下方向に延びる略円柱体であって、第1収容部281aの内壁に沿って上下方向にスライド可能に配置されている。タイマーバルブステム282は、圧縮バネ284によって下方側に付勢されている。圧縮バネ284は、バルブ用ハウジング281に設けられた支持部281sと、タイマーバルブステム282の上部側との間に介在され、メインチャンバ5から供給される圧縮空気に応じて伸長する。
【0083】
タイマーバルブステム282は、制御バルブ240を作動させる際に用いる圧縮空気の流量を制御する絞り部282aを有している。絞り部282aは、円柱状のタイマーバルブステム282の上端部に連続して形成され、その外径が上方側に向かって徐々に小さくなる先細りの円柱体で構成される。絞り部282aは、トリガレバー11の引き操作に応じて流入する圧縮空気によって第1収容部281aの内部を上昇し、第1通路281uの下端側に設けられた被絞り部281u1に嵌合(係合)することで第1通路281uを閉じる。すなわち、絞り部282aと被絞り部281u1との間の隙間を閉じる。被絞り部281u1は、上端側から下端側に向かって通路径が大きくなるように構成され、絞り部282aが嵌め込み可能な形状となっている。このとき、絞り部282aの周面が被絞り部281u1の壁面に密接した状態となるが、本実施の形態では絞り部282aと被絞り部281u1と間にメインチャンバ5から供給される圧縮空気が通過可能な微小の隙間が形成されるように構成される。これにより、絞り部282aと被絞り部281u1との間の隙間における面積を調整することで、空間部281dの内部に流入させる圧縮空気の流量を一定に規制できる。
【0084】
バルブ用ハウジング281の空間部281dは、所定量の圧縮空気を溜めることが可能な容積を有する空間で構成され、後壁に第1通路281uの一端部が連通すると共に前壁に接続路249の一端部が連通している。空間部281dの容積は、タイマーバルブ280による制御バルブ240を作動させる規定時間(タイムアウト)に基づいて設計される。従って、本実施の形態においてタイマーバルブ280による規定時間は、空間部281dの容積と、絞り部282aと被絞り部281u1との間に形成される微小の隙間の面積と基づいて決定される。なお、空間部281dの容積には、接続路249及び第1通路281u等の容積を考慮することもできる。
【0085】
ピストン285は、第2収容部281bの内径と略同一の径を有する円柱体285aと、円柱体285aの径よりも小さくかつ第2収容部281bから下方側に突出する押圧部285bとを有する。ピストン285の円柱体285aは、打撃機構20による打ち込み動作時に、ブローバックチャンバ28から供給される圧縮空気に応じて第2収容部281bの内部を降下する。押圧部285bは、円柱体285aの降下に伴って下方側に配置されるシール部材286を押圧する。
【0086】
シール部材286は、ゴム等の樹脂材料からなり、第2収容部281bの下方側に設けられた第3収容部281cの内部に配置されている。シール部材286は、取付部材287に一体的に取り付けられ、圧縮バネ288によって上方側に付勢されている。圧縮バネ288は、取付部材287と第3収容部281cの内部の底面との間に介在され、ピストン285の押圧に応じて伸縮する。
【0087】
シール部材286は、ピストン285による押圧時に、空間部281dに連通する第6通路281zと外部に連通する第5通路281yとを連通させることで空間部281dの内部の圧縮空気を外部に排気させる。一方、シール部材286は、ピストン285の非押圧時に、メインチャンバ5に連通する第2通路281vと空間部281dに連通する第6通路281zとを連通させることでメインチャンバ5の圧縮空気を空間部281dの内部に流入させる。
【0088】
釘打機200は、
図11及び
図13に示すように、タイマーバルブ280の規定時間の経過後におけるトリガバルブ50の作動を無効にする制御バルブ240を備えている。制御バルブ240は、シリンダ241と、制御バルブピストン242と、制御バルブステム245とを有している。
【0089】
シリンダ241は、上方側が開口されると共に下方側に底面を有する円筒体であって、その上端部がOリング248を介して支持部1cに取り付けられている。シリンダ241の後壁下部には、タイマーバルブ280に連通する接続路249の一端部が連通している。
【0090】
制御バルブピストン242は、シリンダ241の内部に配置され、シリンダ241の内壁に沿って上下方向にスライドする。制御バルブピストン242の下部側に設けられた取付部242aには、シリンダ241の内壁との密着を図るOリング243が装着されている。制御バルブピストン242は、圧縮バネ244によって下方側に付勢されている。圧縮バネ244は、取付部242aとハウジング1aを構成する支持部1dとの間に介在され、タイマーバルブ280から供給される圧縮空気に応じて伸縮する。制御バルブピストン242は、制御バルブピストン242の下面とシリンダ241の内部の底面との間に接続路249を介して圧縮空気が供給されると、シリンダ241の内部の底面から上昇する。一方、制御バルブピストン242は、制御バルブピストン242の下面とシリンダ241の内部の底面との間の圧縮空気が接続路249を介して排気されると、シリンダ241の内部の上昇位置から降下して底面に当接する。
【0091】
制御バルブステム245は、制御バルブピストン242の上方側のハウジング1aに形成された収容部1eに配置されている。制御バルブステム245は、圧縮バネ247によって下方側に付勢され、制御バルブステム245の下面が制御バルブピストン242の上面に当接している。圧縮バネ247は、収容部1eの内部の天面と制御バルブステム245の上面との間に介在され、制御バルブピストン242の上昇又は降下に応じて伸縮する。
【0092】
制御バルブステム245の上下方向の略中間位置には、その円周方向に沿って2個のOリング246a,246bが装着されている。Oリング246aは、第2接続路39及び第3接続路49間の経路を開閉することで、第2接続路39と第3接続路49とを連通又は遮断する。Oリング246bは、第2接続路39及び通路241a間の経路を開閉することで第2接続路39と通路241aとを連通又は遮断する。
【0093】
[釘打機200の動作例]
次に、第2の実施の形態に係る釘打機200の打ち込み動作の一例について説明する。
図14~
図19は、第2の実施の形態に係る釘打機200における打ち込み動作を示す図である。
【0094】
図11に示した釘打機200のエアプラグ8にエアホースが接続されると、メインチャンバ5の内部に圧縮空気が供給される。
図14に示すように、スイッチバルブ70が作動するまでの初期状態では、第1通路72aと第4接続路79とがOリング74aにより遮断されているので、この段階ではメインチャンバ5の圧縮空気がタイマーバルブ280に供給されない。一方、タイマーバルブ280の空間部281dは、第4接続路79及びスイッチバルブ70の第2通路72bを介して大気圧の外部に連通している。
【0095】
図15に示すように、作業者によりトリガレバー11が引き操作されると、コンタクトレバー12によりスイッチバルブ70のスイッチバルブステム74が押し上げられ、スイッチバルブ70が作動する。スイッチバルブ70が作動すると、Oリング74aも上方側に移動し、スイッチバルブ70の第1通路72aと第4接続路79とが連通する。これに伴い、メインチャンバ5の圧縮空気が、第1通路72a、スイッチバルブ70の内部及び第4接続路79を経由してタイマーバルブ280の第1収容部281a及び第2通路281vのそれぞれに供給される。
【0096】
タイマーバルブステム282は、第1収容部281aの内部に流入した圧縮空気によって上方側に押圧されると、第1収容部281aを一気に上昇していき上死点に到達する。これにより、絞り部282aが第1通路281uの被絞り部281u1に嵌合する。このとき、絞り部282aの周面と被絞り部281u1の壁面との間に流体の通過が可能な微小の隙間が形成される。
【0097】
また、第2通路281vに流入した圧縮空気は、第3収容部281c、第6通路281z、絞り部282aと被絞り部281u1との隙間、及び第1通路281uを通過し、空間部281dの内部に流入する。空間部281dの内部には圧縮空気が徐々に蓄積され、空間部281dの内部の圧力が上昇していく。これにより、制御バルブ240を作動させるまでの規定時間の計時がスタートする。
【0098】
図16に示すように、トリガレバー11が引き操作された状態で、かつタイマーバルブ280のタイムアウト前に、コンタクトアーム14が被打込部材に押し当てられると、押圧部材15が押し上げられる。これに伴って、コンタクトレバー12の前端側が押し上げられ、コンタクトレバー12の押し上げによりトリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられ、トリガバルブ50が作動する。
【0099】
トリガバルブ50が作動すると、
図2に示したように、Oリング58a,58bも上方側に移動し、空室55の圧縮空気がキャップ56とトリガバルブステム58との隙間S3から外部に排気される。パイロットバルブ54は、メインチャンバ5の圧縮空気により圧縮バネ57の弾性力に抗して押し下げられ、パイロットバルブ54の下面がキャップ56の上面に当接する。これにより、通路53と排気路59とが連通し、ヘッドバルブチャンバ38の圧縮空気が第2接続路39、制御バルブ240、第3接続路49、トリガバルブ50及び排気路59を経由して大気中(外部)に排気される。
【0100】
ヘッドバルブチャンバ38の圧縮空気が排気されると、
図16に示すように、ヘッドバルブ30の可動部34がメインチャンバ5の圧縮空気により押し上げられ、可動部34と係止部25との間が開くことで、ピストン上室24aにメインチャンバ5の内部の圧縮空気が流入し、ピストン24がシリンダ26の内部を急速に降下していく。
【0101】
図17に示すように、ピストン24がさらに降下すると、ピストン24に連結されたドライバ22(
図11参照)により釘が被打込部材に打ち込まれる。また、ピストン24がシリンダ26の内部の下部側まで降下すると、シリンダ26の内部の圧縮空気が小孔27を介してブローバックチャンバ28の内部に流入する。流入した圧縮空気は、第1接続路29、及びタイマーバルブ280の第3通路281wを経由して、第2収容部281bの内部に流入する。
【0102】
ピストン285は、流入した圧縮空気により下方側に付勢され、第2収容部281bの内部を下降することでシール部材286を下方側に押す。シール部材286は、圧縮バネ288の弾性力に抗して押し下げられる。これにより、大気に連通する第5通路281yと、制御バルブ240とが、第6通路281z、第1通路281u、空間部281d及び接続路249を介して連通する。
【0103】
また、第3通路281wに流入した圧縮空気は、第4通路281xを経由して第1収容部281aの内部にも流入する。タイマーバルブステム282は、流入した空気、及び圧縮バネ284の付勢力により第1収容部281aの初期位置(下死点)まで下降する。本実施の形態では、タイマーバルブステム282の下端側における圧縮空気の受圧面積に対し、タイマーバルブステム282の第4通路281xが設けられた位置の部位における圧縮空気の受圧面積が大きく設定される。そのため、タイマーバルブステム282は、第4通路281xを経由してブローバックチャンバ28から流入する圧縮空気を受けて降下する。これにより、タイマーバルブステム282の上端側に設けられた絞り部282aと被絞り部281u1との間の隙間が拡張する。
【0104】
この状態において、空間部281dの内部の圧縮空気及び制御バルブ240の下部側の圧縮空気は、第5通路281yを介して外部に逆流して排気される。このとき、本実施の形態では、制御バルブ240及び空間部281dから流れる圧縮空気が、絞り部282aと被絞り部281u1との間の隙間を絞り部282aの周面や被絞り部281u1の壁面に当たりながら勢いよく通過する。これにより、絞り部282aの周面等に付着しているゴミや油等の不純物が除去される。
【0105】
図18に示すように、
図15に示したタイマーバルブ280の作動から規定時間以内に、コンタクトアーム14が被打込部材に押し付けられない場合、つまり打ち込み動作が実行されない場合、タイマーバルブ280のタイムアウトにより制御バルブ240が作動する。
【0106】
具体的には、タイマーバルブ280の空間部281dの内部の圧縮空気が規定の圧力値に達すると、その圧縮空気の一部が制御バルブピストン242の下面とシリンダ241の内部の底面との間に流入する。これに伴い、制御バルブピストン242がシリンダ241の内部の底面から上昇することで、制御バルブステム245も押し上げられる。制御バルブステム245の押し上げによりOリング246a,246bも上方側に移動し、第2接続路39と通路241aとが連通する一方で、第2接続路39と第3接続路49とが遮断される。これにより、ヘッドバルブチャンバ38は、トリガバルブ50に対する連通状態からメインチャンバ5に連通する連通状態に切り替わる。
【0107】
図19に示すように、作業者によりトリガレバー11が引き操作された状態でタイマーバルブ280がタイムアウトした後に、コンタクトアーム14が被打込部材に押し付けられた場合、これに連動して押圧部材15が押し上げられる。押圧部材15の押し上げによりコンタクトレバー12の前端側が押し上げられると、トリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられ、トリガバルブ50が作動する。トリガバルブ50の作動により、
図2等にも示したように、Oリング58a,58bが上方側に移動し、空室55の圧縮空気がキャップ56とトリガバルブステム58との隙間S3から外部に排気される。パイロットバルブ54は、メインチャンバ5の圧縮空気により圧縮バネ57の弾性力に抗して押し下げられ、パイロットバルブ54の下面がキャップ56の上面に当接する。これにより、通路53と排気路59とが連通する。
【0108】
しかしながら、タイマーバルブ280がタイムアウトした状態では、制御バルブ240により第2接続路39と第3接続路49とが遮断される一方で、第2接続路39とメインチャンバ5とが連通した状態となる。そのため、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気が、トリガバルブ50に設けられた排気路59を介して外部に排気されることはなく、ヘッドバルブチャンバ38の内部に残ったままの状態となる。これにより、タイマーバルブ280がタイムアウトした場合には、作業者がトリガレバー11を引き操作した状態でコンタクトアーム14を被打込部材に押し付けたときでも、ヘッドバルブ30は作動しない。従って、タイマーバルブ280のタイムアウト後は打ち込み動作が実行されることはない。
【0109】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、釘打機200の打撃機構20による1回の打ち込み動作毎に、絞り部282aと被絞り部281u1との間の隙間に制御バルブ240を作動させる際に用いる圧縮空気を空間部281dから逆流させるため、絞り部282a等に付着したゴミや油等の不純物を確実に除去できる。これにより、タイマーバルブ280の規定時間を正確かつ高精度に計時できると共に、タイマーバルブ280における油やゴミ等の付着物の付着による異常動作を防止できる。
【0110】
また、第2の実施の形態では、打撃機構20による打ち込み動作に連動してブローバックチャンバ28からの圧縮空気をタイマーバルブステム282に供給してタイマーバルブステム282を第1収容部281aの下方側に移動させることで絞り部282aを被絞り部281u1から離間させるので、絞り部282aと被絞り部281u1との間の隙間の面積を拡張できる。これにより、空間部281dの圧縮空気を絞り部282aに流す際に、絞り部282aの周面や被絞り部281u1の壁面に当たる圧縮空気の面積を大きくできるので、絞り部282a等に付着した不純物を排除し易くすることができる。
【0111】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。具体的には、上記実施の形態では、空気圧工具の一例として、釘打機100,200について説明したが、これに限定されることはない。例えば、空気圧工具として、ネジ締め工具やネジ打ち工具等についても本発明を適用することができる。
【0112】
また、上記第1及び第2の実施の形態では、制御バルブ40,240をヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間に配置した例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、制御バルブ40,240をトリガバルブ50の内部に配置することもできる。また、上記第1及び第2の実施の形態では、ヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間の通路を制御バルブ40,240により遮断する構造としたが、これに限定されることはない。例えば、制御バルブ40,240によりヘッドバルブ30の作動を機械的に無効にする構造を採用することもできる。また、上記第1の実施の形態では、タイマーバルブ80による規定時間の経過時にタイマーバルブ80により制御バルブ40を押圧して作動させ、所定時間の経過時にヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間の通路を完全に遮断する構成としたが、これに限定されることはない。例えば、タイマーバルブ80により最初の段階から制御バルブ40を押圧した状態で作動させ、所定時間の経過時にヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間の通路を完全に遮断する構成を採用することもできる。さらに、上記第1及び第2の実施の形態では、制御バルブ40,240を押圧して作動させる構成としたが、これに限定されることはなく、制御バルブ40,240を引くことで作動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 本体
4 グリップ部
5 メインチャンバ(第1チャンバ)
11 トリガレバー(トリガ)
20 打撃機構(駆動機構)
22 ドライバ
24 ピストン
26 シリンダ
28 ブローバックチャンバ(第2チャンバ)
30 ヘッドバルブ
40 制御バルブ
50 トリガバルブ
80 タイマーバルブ
81 第1室(収容部)
84 第1タイマーピストン(弁体)
85 第1ピストン軸部(弁体)
88 絞り部
89 圧縮バネ
100,200 釘打機(空気圧工具)
282 タイマーバルブステム
281u1 被絞り部
282a 絞り部