(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】表面形状評価方法、プログラム、記録媒体、ならびに表面形状評価装置
(51)【国際特許分類】
G01B 21/30 20060101AFI20230214BHJP
B21D 22/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G01B21/30
B21D22/00
(21)【出願番号】P 2019095965
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】白神 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-284569(JP,A)
【文献】特開平06-034362(JP,A)
【文献】特開平06-347254(JP,A)
【文献】特開2000-121346(JP,A)
【文献】特開平08-035829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/30
B21D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価方法であって、
前記工具が前記板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、前記初期接触線を跨ぐように、前記成形品の表面形状を取得する工程と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の一次微係数を算出する工程と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の二次微係数を算出する工程と、
前記一次微係数の絶対値の最大値を算出する工程と、
前記二次微係数の最大値と最小値との差を算出する工程と、
前記一次微係数の絶対値の最大値、および前記二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、前記成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する工程と、
を含む
ことを特徴とする表面形状評価方法。
【請求項2】
板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価方法であって、
前記工具が前記板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、前記初期接触線を跨ぐように、前記成形品の表面形状を取得する工程と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の一次微係数を算出する工程と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の二次微係数を算出する工程と、
前記一次微係数の絶対値の最大値を算出する工程と、
前記二次微係数の最大値と最小値との差を算出する工程と、
前記一次微係数の絶対値の最大値と前記二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、前記成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する工程
と、
を
含む
ことを特徴とする
表面形状評価方法。
【請求項3】
前記定量化値に基づいて、前記成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項
2に記載の表面形状評価方法。
【請求項4】
前記表面形状にローパスフィルタ処理およびハイパスフィルタ処理を行い、修正表面形状を算出する工程をさらに含み、
前記表面形状の一次微係数を算出する工程で前記修正表面形状の一次微係数を算出し、
前記表面形状の二次微係数を算出する工程で前記修正表面形状の二次微係数を算出する
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の表面形状評価方法。
【請求項5】
板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状評価のためのプログラムであって、
前記工具が前記板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、前記初期接触線を跨ぐように、前記成形品の表面形状を取得する処理と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の一次微係数を算出する処理と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の二次微係数を算出する処理と、
前記一次微係数の絶対値の最大値を算出する処理と、
前記二次微係数の最大値と最小値との差を算出する処理と、
前記一次微係数の絶対値の最大値、および前記二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、前記成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状評価のためのプログラムであって、
前記工具が前記板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、前記初期接触線を跨ぐように、前記成形品の表面形状を取得する処理と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の一次微係数を算出する処理と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の二次微係数を算出する処理と、
前記一次微係数の絶対値の最大値を算出する処理と、
前記二次微係数の最大値と最小値との差を算出する処理と、
前記一次微係数の絶対値の最大値と前記二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、前記成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する処理
と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項7】
前記定量化値に基づいて、前記成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する処理をさらに含む
ことを特徴とする請求項
6に記載のプログラム。
【請求項8】
請求項
5から
7のいずれか一項に記載のプログラムを格納したコンピュータで読取り可能な記録媒体。
【請求項9】
板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価装置であって、
前記工具が前記板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、前記初期接触線を跨ぐように、前記成形品の表面形状を取得する表面形状取得部と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の一次微係数を算出する一次微係数算出部と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の二次微係数を算出する二次微係数算出部と、
前記一次微係数の絶対値の最大値を算出する一次微係数計算部と、
前記二次微係数の最大値と最小値との差を算出する二次微係数計算部と、
前記一次微係数の絶対値の最大値、および前記二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、前記成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する判定部と、
を含む
ことを特徴とする表面形状評価装置。
【請求項10】
板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価装置であって、
前記工具が前記板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、前記初期接触線を跨ぐように、前記成形品の表面形状を取得する表面形状取得部と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の一次微係数を算出する一次微係数算出部と、
前記初期接触線と交差する方向における、前記表面形状の二次微係数を算出する二次微係数算出部と、
前記一次微係数の絶対値の最大値を算出する一次微係数計算部と、
前記二次微係数の最大値と最小値との差を算出する二次微係数計算部と、
前記一次微係数の絶対値の最大値と前記二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、前記成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する定量化値算出部
と、
を
含む
ことを特徴とする
表面形状評価装置。
【請求項11】
前記定量化値に基づいて、前記成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する判定部をさらに含む
ことを特徴とする請求項
10に記載の表面形状評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状評価方法、プログラム、記録媒体、ならびに表面形状評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル部品(ドア、フード、ルーフ、フェンダー、バックドア、サイドパネル)や骨格部品(ピラー、サイドシル、クロス)など多くの自動車用部材は、鋼板などの金属板をプレス成形することにより製造されている。このような部材を含むプレス成形品は、その表面にショックライン、線ずれ、しわ、面歪みなどと呼ばれる欠陥が生じる場合があり、プレス成形品の外観品質を損ねる。
【0003】
たとえば、ショックラインは、プレス成形において被加工材が絞り加工された場合に、プレス成形金型などの工具と被加工材とが最初に接触する箇所を起点として、工具に対する被加工材の相対移動による摺動部と未摺動部の境界に生じる線状の欠陥である。
このようなショックラインは製品の意匠性を損なうものであるが、ショックラインを製品面内に移動させない対策は歩留りを著しく低下させるため、ある程度の見栄えのショックラインであれば製品面内への移動が許容される。ショックラインが許容できるか否かは、従来、熟練した検査者の官能検査によって判定されていた。
【0004】
しかしながら、検査者の目視による官能検査のみで面品質の評価を行うと、検査環境や検査者の熟練度、あるいは検査者の体調などによって検査結果にばらつきが生じる場合があった。
【0005】
一方、このようなプレス成形品の面品質を定量的に評価するための種々の手法が検討されてきた。
たとえば、特許文献1の技術では、プレス成形品の面形状評価方法において、設定された領域の面積と基準部の面積との差に基づいて面形状を評価する。
【0006】
特許文献2の技術では、プレス成形品のショックラインの深さと幅を測定して、その合否を判定する。また、特許文献3では、プレス成形品の表面に生じる形状痕をシミュレーションすることで、プレス成形品の表面形状を定量化する技術を開示している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、プレス成形品の基準部と評価部との差を用いているため、スプリングバックなどによって生じた寸法精度不良と上述のような面品質の不良とを判別することが難しい。特許文献2の技術では、ショックラインに略垂直な面の断面視において凹部を含むような溝状のショックラインに対応しているが、段差状のショックラインを検出することは極めて難しい。特許文献3の技術は、シミュレーション上での計算が可能であるが、実製品への適用は実用上困難である。
【0008】
また、上述のような種々の分析手法が検討されているものの、これらの分析手法では、規定された各パラメータを抽出する際の領域設定や近似に、検査者の判断を必要とするため評価結果が一義的ではない。そのため、官能検査の検査結果と分析手法による評価結果とが必ずしも一致するようなものではない。したがって、官能検査の検査結果と分析手法による評価結果との傾向を一致させ、かつ評価を定量化するまでには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平10-170253号公報
【文献】特開2008-284569号公報
【文献】特開2007-245162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況に鑑みてなされた、本発明の目的は、成形品の表面における線状の欠陥を定量化して評価することができる表面形状評価方法、プログラム、記録媒体、ならびに表面形状評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一態様に係る表面形状評価方法は、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価方法であって、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する工程と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する工程と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する工程と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する工程と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する工程と、一次微係数の絶対値の最大値、および二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する工程と、を含むことを特徴とする。
(2)本発明の一態様に係る表面形状評価方法は、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価方法であって、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する工程と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する工程と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する工程と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する工程と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する工程と、一次微係数の絶対値の最大値と二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する工程と、を含むことを特徴とする。
(3)上記(2)に記載の表面形状評価方法では、定量化値に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する工程をさらに含んでもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の表面形状評価方法では、表面形状にローパスフィルタ処理およびハイパスフィルタ処理を行い、修正表面形状を算出する工程をさらに含み、表面形状の一次微係数を算出する工程で修正表面形状の一次微係数を算出し、表面形状の二次微係数を算出する工程で修正表面形状の二次微係数を算出してもよい。
【0012】
(5)本発明の一態様に係るプログラムは、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状評価のためのプログラムであって、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する処理と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する処理と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する処理と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する処理と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する処理と、一次微係数の絶対値の最大値、および二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
(6)本発明の一態様に係るプログラムは、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状評価のためのプログラムであって、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する処理と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する処理と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する処理と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する処理と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する処理と、一次微係数の絶対値の最大値と二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
(7)上記(6)に記載のプログラムでは、定量化値に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する処理をさらに含んでもよい。
(8)本発明の他の態様に係る記録媒体は、上記(5)から(7)のいずれか一項に記載のプログラムを格納したコンピュータで読取り可能な記録媒体である。
【0013】
(9)本発明の一態様に係る表面形状評価装置は、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価装置であって、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する表面形状取得部と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する一次微係数算出部と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する二次微係数算出部と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する一次微係数計算部と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する二次微係数計算部と、一次微係数の絶対値の最大値、および二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する判定部と、を含むことを特徴とする。
(10)本発明の一態様に係る表面形状評価装置は、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価装置であって、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する表面形状取得部と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する一次微係数算出部と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する二次微係数算出部と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する一次微係数計算部と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する二次微係数計算部と、一次微係数の絶対値の最大値と二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する定量化値算出部と、を含むことを特徴とする。
(11)上記(10)に記載の表面形状評価装置では、定量化値に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する判定部をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形品の表面における線状の欠陥を定量化して評価することができる表面形状評価方法、プログラム、記録媒体、ならびに表面形状評価装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】プレス成形時の板素材の変形の様子を説明するための模式的な断面図である。
【
図2】プレス成形時の板素材の変形の様子を説明するための模式的な断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る表面形状評価方法を説明するためのフロー図である。
【
図6】成形品の表面形状の一次微係数の一例を示す図である。
【
図7】成形品の表面形状の二次微係数の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る表面形状評価方法の他の例を説明するためのフロー図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る表面形状評価装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般的に、プレス成形品の表面に生じる線状の欠陥であるショックラインは、未摺動部と摺動部との境界における急激な板厚の変化、ならびに曲げ-曲げ戻し変形癖の残留が要因であると考えられる。
【0017】
ここで、ショックラインが、板素材の表面に形成される過程について説明する。
図1および
図2は、プレス成形時の板素材の変形の様子を模式的に示す断面図である。
図1および
図2に示すプレス成形では、板素材30が、金型であるダイ10およびポンチ20によってプレスされることによって、板素材30が所望の形状に加工される。
【0018】
図1に示すように、プレスが開始されると、板素材30は、ダイ10およびポンチ20
によって挟まれ、ダイ10の形状に沿ってダイ10とポンチ20との隙間内に流入する。この流入に伴い、板素材30は、まず初期接触部Aにおいてダイ10の肩部Rと接触し、板素材30はダイ10の肩部Rから力を受ける。
【0019】
ここで、ダイ10およびホルダー40によって挟持されている板素材30の左端部分は、ダイ10およびホルダー40から一定の力を受け、プレス方向の移動が拘束されている。
また、本実施形態の説明では、初期接触部Aを結ぶ線を初期接触線と称する。たとえば、
図1~
図3に示す例では、初期接触線は、各図の紙面に対して略垂直方向に形成される。
【0020】
図2に示すように、ポンチ20が下死点に近づくと、板素材30の成形が進み、初期接触部Aの部位が図面中右の方向に引き込まれる。すなわち、板素材30は、初期接触部Aからダイ10およびホルダー40によって挟持されている板素材30の左端部分の一部にかけては、ダイ10の肩部Rと接触し、摺動しながら成形が行われる。
【0021】
図3は、板素材30をプレス成形した後のプレス成形品50を模式的に示す断面図である。
図1~
図3に示す例では、ポンチ20が下死点に到達してプレス成形が完了した状態では、初期接触部Aは、ダイ10の肩部Rから金型の中腹まで移動する。従って、
図3に示すように、プレス成形品50では、ポンチ20が下死点に到達したときのダイ10の肩部Rとの接触部Bから初期接触部Aまでが摺動部Sとなる。また、
図3において、初期接触部Aから点Cまでの部分が未摺動部NSとなる。
【0022】
摺動部Sでは、ダイ10の肩部Rと接触し、曲げ-曲げ戻し変形を受けながら、流入方向に引き伸ばされる力を受けることで、板素材30の板厚が減少している。そのため、プレス成形品50における摺動部Sの板厚は未摺動部NSの板厚よりも小さくなる。このような板厚差に起因する段差として、摺動部Sと未摺動部NSとの境界に、ショックラインが現れる。
【0023】
ショックラインは初期接触部A上に現れる。
図3の例では、ショックラインは、初期接触部Aを含み、かつ
図3の紙面に対して略垂直方向に形成される。
【0024】
また、摺動部Sでは、ダイ10の肩部Rとの接触し、曲げ-曲げ戻し変形を受けるが、その変形によって生じた曲げモーメントは未摺動部NSにも伝わる。そのため、摺動部Sと未摺動部NSの境界近傍に曲げ変形癖が生じ、残留する。このような変形癖に起因する溝として、摺動部Sと未摺動部NSとの境界にショックラインが現れる。
【0025】
たとえば、ショックラインの再現試験では、短冊状の鋼板の長手方向に張力を負荷した状態で、鋼板の中央部に所定の先端半径rを有するV字形状の工具の先端部を押し当てて鋼板を曲げたのち、曲げた鋼板をV字形状を保ったまま移動させる。このとき、鋼板は工具先端で摺動されながら平らに曲げ戻される。
このような試験によって、鋼板における工具との摺動と曲げ-曲げ戻し変形によって生じるショックラインとを再現することができる。このような試験では、鋼板に与える張力が大きいほど、あるいは鋼板に押し当てる工具の先端半径rが小さいほど、ショックラインが際立って現れる。
【0026】
このようにして生じる、プレス成形品の表面におけるショックラインが許容できるか否かは、上述のような官能検査によって判断されてきた。
【0027】
本発明者らは、ショックラインを判定するための官能検査における検査者の目視では、(1)上述した段差や溝などのショックラインの要因そのものの大きさ、ならびに(2)これらの要因の変化の大きさ、に基づいて判断がなされることに着目した。
これに関し、本発明者らは、たとえばショックラインを摺動部と未摺動部との境界における段差と見た場合、ショックラインに略垂直な断面では、凸形状と凹形状の稜線が存在し、この稜線が鋭利であるか、段差の傾斜が大きい場合にショックラインが目立つことを見出した。
【0028】
そして、本発明者らは、この稜線が鋭利であるか否かが、プレス成形品の表面形状の二次微係数の最大値と最小値との差に関連することを見出した。また、段差の傾斜の大きさが、プレス成形品の表面形状の一次微係数の絶対値の最大値に関連することを見出した。
以下の各実施形態で説明される本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0029】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されないことは自明である。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
また、以下の実施形態の各構成要素は、互いに組み合わせることができる。
【0030】
[第1実施形態]
本実施形態に係る表面形状評価方法は、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価方法である。
本実施形態に係る表面形状評価方法では、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する工程と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する工程と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する工程と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する工程と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する工程と、を含む。
【0031】
上記の構成からなる表面形状評価方法によれば、成形品の表面における線状の欠陥を定量化して評価することができる。
【0032】
以下、
図4のフロー図に沿って、本実施形態に係る表面形状評価方法を説明する。
【0033】
本実施形態に係る表面形状評価方法では、まず、成形品(プレス成形品)の表面形状を取得する(S100)。
【0034】
S100の工程では、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、成形品の表面形状を取得する。工具が板素材に最初に接触する初期接触線とは、プレス成形においては、
図1~
図3に示すようなダイ10の肩部Rが板素材30に接触する初期接触部Aを含む線である。
図1~
図3の例では、初期接触線は、各図の紙面に対して略垂直な方向に延びる線である。初期接触線は、曲線、直線あるいは直線と曲線との組み合わせからなってもよい。
【0035】
初期接触線と交差する方向とは、初期接触線上の任意の測定点において、測定点における初期接触線の接線と平行な方向を除く方向である。初期接触線と交差する方向は、測定点における初期接触線の接線に対して45°~135°の範囲にある方向であってもよい。
【0036】
S100の工程では、初期接触線と交差する方向(測定方向)で、かつ初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する。
成形品の表面形状を取得する手段は、非接触式の3次元形状測定器(例えば、GOM社製ATOS)や2次元形状測定器(例えば、株式会社キーエンス製レーザー変位計)、接触式の輪郭形状測定機(例えば、株式会社ミツトヨ製コントレーサ)を好ましく用いることができる。表面形状を取得する際の分解能は、特に限定されないが、ショックラインを明確に検出するために、好ましくは0.1μm~10μmであり、より好ましくは0.1μm~1μmである。
【0037】
初期接触線と交差する方向で、かつ初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得すると、ショックライン上に、たとえば
図5に示すような段差が現れる。
【0038】
図5は、初期接触線と交差する方向(測定方向)かつ初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得した場合の、成形品の表面形状の板厚方向の変化を示している。
図5のグラフの横軸は測定方向における位置であり、縦軸は板厚方向における変位を示す。
【0039】
図5の例では、a点とb点との間に段差が存在する。a点よりも左側が未摺動部に対応する。b点よりも右側が摺動部に対応する。このような段差部がショックラインとして現れる。
【0040】
次いで、表面形状の一次微係数を算出する(S102)。S102の工程では、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する。
【0041】
図5の表面形状の一次微係数を算出すると、
図6に示すようなグラフが得られる。
図6のグラフの横軸は測定方向における位置であり、縦軸は一次微係数の値を示す。
図6のa点およびb点は、測定方向(グラフの横軸)における
図5のa点およびb点と同じ位置を示す。
【0042】
さらに、表面形状の二次微係数を算出する(S104)。S104の工程では、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する。
【0043】
図5の表面形状の二次微係数を算出すると、
図7に示すようなグラフが得られる。
図7のグラフの横軸は測定方向における位置であり、縦軸は二次微係数の値を示す。
図7のa点およびb点は、測定方向(グラフの横軸)における
図5のa点およびb点と同じ位置を示す。
【0044】
次いで、表面形状の一次微係数の絶対値の最大値を算出する(S106)。
図6に示すように、ショックラインが現れるa点とb点との間では、一次微係数の絶対値が最大値となる点が現れる。これは、表面形状の一次微係数の大きさが、表面形状の傾斜の大きさに対応するためであり、
図5の段差のような表面形状の傾斜が最も大きくなる点で一次微係数の絶対値が最大となる。
【0045】
表面形状の一次微係数の絶対値の最大値を計算する際には、未摺動部および摺動部の平均値を0として、一次微係数の絶対値が最大となる点における値を一次微係数の絶対値の最大値として算出する。
【0046】
表面形状の一次微係数の絶対値の最大値は、段差の傾斜が最も大きな箇所を示す。また、ショックライン上に溝が形成されている場合には、表面形状の一次微係数の絶対値の最大値は、溝の側壁の傾斜が最も大きな箇所を示す。すなわち、成形品の表面形状の一次微係数の絶対値の最大値から、ショックラインにおける段差や溝の側壁の傾斜の大きさが読み取れる。
【0047】
これらの傾斜が大きいほどショックラインが目立つため、一次微係数の絶対値の最大値の大小と官能試験におけるショックラインの可否とが同じ傾向となる。そのため、一次微係数の絶対値の最大値に基づいて、ショックラインの評価を定量化することができる。
【0048】
次いで、表面形状の二次微係数の最大値を算出する(S108)。
二次微係数の最大値は、
図7に示すようにa点とb点の間に現れる。
図5~
図7の例では、段差に対応する箇所に最大値を示すピークが現れている。
【0049】
次いで、表面形状の二次微係数の最小値を算出する(S110)。
二次微係数の最小値は、
図7に示すようにa点とb点の間に現れる。
図5~
図7の例では、段差に対応する箇所に最小値を示すボトムが現れている。
【0050】
次いで、表面形状の二次微係数の最大値と最小値との差を算出する(S112)。
図7の例では、最大値を示すピークの二次微係数と最小値を示すボトムの二次微係数の差を算出する。
【0051】
二次微係数の最大値と最小値との差は、ショックラインにおける段差、あるいは溝の稜線の鋭さを示す。これらの鋭さが大きいほど、ショックラインが目立つため、二次微係数の最大値と最小値との差の大小と官能試験におけるショックラインの可否とが同じ傾向となる。そのため、二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、ショックラインの評価を定量化することができる。
【0052】
なお、
図4のフロー図に示す工程は一例にすぎず、表面形状を取得するS100以降のS102~S112の順序は問わない。
【0053】
本実施形態に係る表面形状評価方法では、判定工程(S114)をさらに含んでもよい。
S114の工程では、一次微係数の絶対値の最大値、および二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する。
【0054】
成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かの判定は、一次微係数の絶対値の最大値および二次微係数の最大値と最小値との差が、それぞれ予め定められた許容値の範囲にあるか否かによって決めてもよい。
【0055】
あるいは、予め定められた一次微係数の絶対値の最大値の許容値と予め定められた二次微係数の最大値と最小値との差の許容値との組み合わせが格納されたデータテーブルが準備され、このデータテーブルに基づいて、欠陥が許容されるか否かの判定が行われてもよい。
【0056】
上記の判定工程では、算出された数値やデータテーブルに基づいて、人間が欠陥が許容されるか否かの判断をしてもよい。あるいは、コンピュータによって、算出された数値やデータテーブルに基づく演算処理が実行され、判定結果が表示装置や出力装置に出力されるようにしてもよい。
【0057】
本実施形態に係る表面形状評価方法は、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価方法である。
板素材とは、鋼板、アルミニウム合金板、マグネシウム合金板などの金属板、さらにはこれらの複合材であってもよい。あるいは、板素材とは、FRPやFRTP等のガラス繊維強化樹脂材料、さらにはこれらの複合材であってもよい。工具とは、プレス成形においては、プレス金型である。プレス金型には、ダイ、パンチおよびホルダーが含まれる。
【0058】
本実施形態に係る表面形状評価方法では、一次微係数の絶対値の最大値と二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する工程をさらに含んでもよい。
【0059】
図8に、定量化値を算出する工程を含む表面形状評価方法のフロー図を示す。
図8の定量化値の算出(S214)は、たとえば、表面形状の二次微係数の最大値と最小値との差を算出する工程(S212)の後に行われる。
図8のS200~S212は、それぞれが
図4のS100~S112と同様の工程であるため、その説明を省略する。
【0060】
定量化式としては、たとえば以下の式1が挙げられる。
Z=αAn×βBm+γ ...式1
【0061】
式1において、Zは定量化値、αおよびβは重みづけパラメータ、Aは一次微係数の絶対値の最大値、およびBは二次微係数の最大値と最小値との差、nおよびmは寄与度を表すパラメータ、γは補正パラメータである。各パラメータは、予め実施された官能評価と対応するよう決定してもよい。
【0062】
このような定量化式を利用することで、より容易に、成形品の表面における線状の欠陥を定量化することができる。
【0063】
本実施形態に係る表面形状評価方法では、定量化値に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する工程(S216)をさらに含んでもよい。
【0064】
S216の工程における成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かの判定は、定量化値が、予め定められた許容値の範囲にあるか否かによって決めてもよい。
【0065】
上記の判定工程では、算出された定量化値に基づいて、人間が欠陥が許容されるか否かの判断をしてもよい。あるいは、コンピュータによって、算出された定量化値に基づく演算処理が実行され、判定結果が表示装置や出力装置に出力されるようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態に係る表面形状評価方法では、表面形状にローパスフィルタ処理およびハイパスフィルタ処理を行い、修正表面形状を算出する工程をさらに含んでもよい。
【0067】
修正表面形状を算出する工程は、上述したS100又はS200の後に行われる。修正表面形状を算出する工程を経た場合、この工程で算出された修正表面形状に対して一次微係数又は二次微係数が算出される。
【0068】
修正表面形状を算出する工程におけるローパスフィルタ処理およびハイパスフィルタ処理は、JIS B 0632:2001、またはISO11562:1996に記載されている位相補償フィルタを採用することがより好ましい。
【0069】
修正表面形状を算出する工程を経ることで、ショックラインの評価に寄与しない、成形品の表面上の微細な凹凸(具体的には、素材表面粗さ)やなだらかな表面の変化(具体的には、部品形状)がキャンセルされ、より正確にショックラインの評価を行うことができる。
【0070】
本実施形態に係る表面形状評価方法は、同表面形状評価方法を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
【0071】
[第2実施形態]
次に本発明の、表面形状評価のためのプログラムについて説明する。
【0072】
本実施形態に係るプログラムは、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状評価のためのプログラムである。
本実施形態に係るプログラムは、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する処理と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する処理と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する処理と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する処理と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0073】
上記の構成からなるプログラムによれば、成形品の表面における線状の欠陥を定量化して評価することができる。
【0074】
本実施形態に係るプログラムでは、一次微係数の絶対値の最大値、および二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する処理をさらに含んでもよい。
【0075】
本実施形態に係るプログラムでは、一次微係数の絶対値の最大値と二次微係数の最大値と最小値との差を掛け合わせる定量化式により、成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する処理をさらに含んでもよい。また、本実施形態に係るプログラムでは、定量化値に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する処理をさらに含んでもよい。
【0076】
本実施形態に係るプログラムは、第1実施形態に係る表面形状評価方法の各工程をコンピュータなどの装置に実行させるためのプログラムであってもよい。
【0077】
本実施形態に係るプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に格納されてもよい。記録媒体は、ハードディスク、メモリ装置、一般的な記録メディアなどの非一過性の記録媒体であってもよい。
【0078】
本実施形態に係るプログラムは、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給されてもよい。
【0079】
[第3実施形態]
次に、本発明の表面形状評価装置について説明する。
【0080】
本実施形態に係る表面形状評価装置は、板素材を工具で成形することによって得られる成形品の表面形状を評価するための評価装置である。
本実施形態に係る表面形状評価装置は、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する表面形状取得部と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する一次微係数算出部と、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する二次微係数算出部と、一次微係数の絶対値の最大値を算出する一次微係数計算部と、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する二次微係数計算部とを含む。
【0081】
上記の構成からなる表面形状評価装置によれば、成形品の表面における線状の欠陥を定量化して評価することができる。
【0082】
本実施形態に係る表面形状評価装置の構成の一例を
図9に示す。
図9に示す表面形状評価装置300の表面形状取得部310では、工具が板素材に最初に接触する初期接触線と交差する方向に、初期接触線を跨ぐように、成形品の表面形状を取得する。表面形状取得部310は、非接触式の3次元形状測定器や2次元形状測定器、接触式の輪郭形状測定機などである。
【0083】
一次微係数算出部311では、表面形状取得部310で得られた情報に基づき、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数を算出する。
【0084】
二次微係数算出部312では、一次微係数算出部311で得られた表面形状の一次微係数に基づき、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出する。あるいは、二次微係数算出部312では、表面形状取得部310で得られた情報に基づき、初期接触線と交差する方向における、表面形状の二次微係数を算出してもよい。
【0085】
一次微係数計算部313では、一次微係数算出部311で得られた表面形状の一次微係数に基づき、一次微係数の絶対値の最大値を算出する。
二次微係数計算部314では、二次微係数算出部312で得られた表面形状の二次微係数に基づき、二次微係数の最大値と最小値とを計算し、二次微係数の最大値と最小値との差を算出する。
【0086】
一次微係数計算部313で算出された一次微係数の絶対値の最大値、ならびに二次微係数計算部314で算出された二次微係数の最大値と最小値との差は、後述する出力部319に出力されてもよい。
【0087】
本実施形態に係る表面形状評価装置300は、
図9に示すような判定部315をさらに含んでもよい。
判定部315では、一次微係数計算部313で得られた一次微係数の絶対値の最大値、および二次微係数計算部314で得られた二次微係数の最大値と最小値との差に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定する。
【0088】
また、本実施形態に係る表面形状評価装置300は、
図9に示すような定量化値算出部316をさらに含んでもよい。
定量化値算出部316では、一次微係数計算部313で得られた一次微係数の絶対値の最大値と、二次微係数計算部314で得られた二次微係数の最大値と最小値との差とを掛け合わせる定量化式に基づく計算を行うことにより、成形品に生じる欠陥の定量化値を算出する。
【0089】
本実施形態に係る表面形状評価装置300では、定量化値算出部316を含む場合、定量化値算出部316で算出された定量化値に基づいて、成形品の表面に生じる欠陥が許容されるか否かを判定部315で判定してもよい。
【0090】
さらに、本実施形態に係る表面形状評価装置300では、フィルタ処理部317をさらに含んでもよい。
フィルタ処理部317において、表面形状取得部310で得られた表面形状の情報に対してローパスフィルタ処理およびハイパスフィルタ処理を行い、修正表面形状を算出してもよい。そして、一次微係数算出部311又は二次微係数算出部312において、修正表面形状に基づき、初期接触線と交差する方向における、表面形状の一次微係数又は二次微係数を算出してもよい。
【0091】
演算処理部318は、一次微係数算出部311、二次微係数算出部312、一次微係数計算部313、二次微係数計算部314を含んでもよい。演算処理部318は、判定部315、定量化値算出部316、フィルタ処理部317をさらに含んでもよい。
演算処理部318は、第2実施形態に係るプログラムを処理するための演算処理装置であってもよい。
【0092】
出力部319は、たとえば出力結果を表示可能なディスプレイなどの表示装置、紙などの媒体に出力結果を印刷可能な印刷機であってもよい。
出力部319では、一次微係数の絶対値の最大値および二次微係数の最大値と最小値との差が、それぞれ予め定められた許容値の範囲にあるか否かの情報が出力されてもよい。また、出力部319では、予め定められた一次微係数の絶対値の最大値の許容値と予め定められた二次微係数の最大値と最小値との差の許容値との組み合わせが格納されたデータテーブルが出力されてもよい。
【0093】
あるいは、出力部319では、定量化値算出部316で算出された定量化値、又はこの定量化値に基づく判定結果が出力されてもよい。あるいは、出力部319では、判定部315が出力する判定結果が出力されてもよい。
【0094】
本実施形態に係る表面形状評価装置300では、さらに記憶部320を含んでもよい。
記憶部320は、表面形状取得部310で得られた表面形状の情報、一次微係数算出部311で得られた表面形状の一次微係数、二次微係数算出部312で得られた表面形状の二次微係数、一次微係数計算部313で算出された一次微係数の絶対値の最大値、二次微係数計算部314で算出された二次微係数の最大値と最小値との差、定量化値算出部316で算出された定量化値、定量化値の算出に用いられる定量化式の情報、判定部315が出力する判定結果、ローパスフィルタ処理およびハイパスフィルタ処理を実行するためのプログラムなどを格納できるように構成されてもよい。また、記憶部320は、第2実施形態のプログラムを格納できるように構成されてもよい。
【0095】
本実施形態に係る表面形状評価装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により実現することが可能である。
【0096】
また本実施形態に係る表面形状評価装置は、第1実施形態に係る表面形状評価方法を実施するための装置であってもよい。また本実施形態に係る表面形状評価装置は、第2実施形態に係るプログラムによって動作する装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係る表面形状評価方法、プログラム、記録媒体、ならびに表面形状評価装置は、成形品の表面における線状の欠陥を定量化して評価することができるため、産業上極めて有用である。