(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】センサブラケット
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
G01D5/12 Q
(21)【出願番号】P 2019096022
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒▲柳▼ 和真
(72)【発明者】
【氏名】服部 航
(72)【発明者】
【氏名】小枝 裕典
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173121(JP,A)
【文献】特開2018-204958(JP,A)
【文献】特開2001-153964(JP,A)
【文献】特開平11-63054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ電極をなすループ状の電線がセンサ本体から延びる静電容量センサを車両に取り付けるためのセンサブラケットであって、
前記電線が一定間隔で平行に延びるように折り返した状態で前記センサ本体が配置されるブラケット本体と、
前記ブラケット本体に片持ち状に支持されて先端側に前記電線を引っ掛け可能な引っ掛け部が設けられ、該引っ掛け部に引っ掛けられた前記電線に張力を付与する板バネ部と、
を備えるセンサブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサブラケットであって、
前記ブラケット本体は、直線状に形成され、前記電線が平行に延びる部分を収容して保持するように前記一定間隔を空けて平行に延在する一対の直線状の保持溝が設けられており、
前記板バネ部は、前記電線の折り返し部分が前記引っ掛け部に引っ掛けられるように前記ブラケット本体から外方に突出して設けられると共に、前記引っ掛け部が前記保持溝の深さ方向において溝底よりも下方となる位置に設けられている
センサブラケット。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサブラケットであって、
前記ブラケット本体は、湾曲状に形成され、前記電線が平行に延びる部分のうち湾曲部分の内側で該電線の曲げの支点となる一対の支点部が前記一定間隔を空けて設けられており、
前記板バネ部は、前記電線の折り返し部分が前記引っ掛け部に引っ掛けられるように前記ブラケット本体から外方に突出して設けられている
センサブラケット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサブラケットであって、
前記板バネ部は、先端側が前記ブラケット本体に近付くようにたわむ方向の押圧力を受ける受圧部が、前記引っ掛け部との間に前記電線を受入可能な間隔を空けて先端側に設けられている
センサブラケット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセンサブラケットであって、
前記ブラケット本体と前記板バネ部とは、樹脂の一体成形品である
センサブラケット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセンサブラケットであって、
前記板バネ部は、前記引っ掛け部に引っ掛けられた前記電線が接触する接触部分を除いた部分にパーティングラインが形成された射出成形品である
センサブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2つのセンサ電極と、各センサ電極を構成する電線が挿通される複数の管体と、管体を並列に保持する複数のホルダ部材とを備え、車両への操作入力の有無を検知する静電容量センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、各管体がホルダ部材によって互いの相対移動が規制されることにより、各管体内を延在する電線の間隔(軸間距離)を一定に保っている。これにより、電線の間隔が変化することによる静電容量の変化を抑えて、静電容量センサの狙いの感度を維持することができるから、車両への操作入力を適切に検知できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した静電容量センサでは、複数の管体と複数のホルダ部材とをそれぞれ別部材として準備し、各管体に電線を挿通してから各管体を複数のホルダ部材で並列に保持するように組み立てる必要がある。このため、部品数が増加して複雑な構成となることがある。一方で、電線を保持する保持溝が形成されると共に上述したホルダ部材を一体化した構成のセンサブラケットとすることが考えられる。そのような構成では、管体に電線を挿通する手間を省いて部品数を抑えることができるものの、電線が保持溝内でたわんだり保持溝から外れたりすると、電線の間隔が変化して誤検知することがある。
【0005】
本発明は、簡易な構成で静電容量センサの電線を適切に保持することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のセンサブラケットは、
センサ電極をなすループ状の電線がセンサ本体から延びる静電容量センサを車両に取り付けるためのセンサブラケットであって、
前記電線が一定間隔で平行に延びるように折り返した状態で前記センサ本体が配置されるブラケット本体と、
前記ブラケット本体に片持ち状に支持されて先端側に前記電線を引っ掛け可能な引っ掛け部が設けられ、該引っ掛け部に引っ掛けられた前記電線に張力を付与する板バネ部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明のセンサブラケットは、ブラケット本体に片持ち状に支持されて先端側に電線を引っ掛け可能な引っ掛け部が設けられ、引っ掛け部に引っ掛けられた電線に張力を付与する板バネ部を備える。これにより、ブラケット本体に板バネ部を設けた簡易な構成により、ループ状の電線がたわむのを防止して一定間隔で平行に延びる状態を適切に保持することができる。これにより、静電容量センサの静電容量を一定として狙いの感度を維持することができるから、誤検知を防止することができる。
【0009】
本発明のセンサブラケットにおいて、前記ブラケット本体は、直線状に形成され、前記電線が平行に延びる部分を収容して保持するように前記一定間隔を空けて平行に延在する一対の直線状の保持溝が設けられており、前記板バネ部は、前記電線の折り返し部分が前記引っ掛け部に引っ掛けられるように前記ブラケット本体から外方に突出して設けられると共に、前記引っ掛け部が前記保持溝の深さ方向において溝底よりも下方となる位置に設けられているものとしてもよい。こうすれば、電線を溝底に押し付けるように張力を付与することができるから、電線が保持溝から外れるのを適切に防止することができる。
【0010】
本発明のセンサブラケットにおいて、前記ブラケット本体は、湾曲状に形成され、前記電線が平行に延びる部分のうち湾曲部分の内側で該電線の曲げの支点となる一対の支点部が前記一定間隔を空けて設けられており、前記板バネ部は、前記電線の折り返し部分が前記引っ掛け部に引っ掛けられるように前記ブラケット本体から外方に突出して設けられているものとしてもよい。こうすれば、ブラケット本体が湾曲状に形成されていても、電線を湾曲状に合わせて曲げつつ適切な張力を付与することができる。また、湾曲部分では電線を支点部に掛ければよいから、センサブラケットへの電線の配置を容易に行うことができる。
【0011】
本発明のセンサブラケットにおいて、前記板バネ部は、先端側が前記ブラケット本体に近付くようにたわむ方向の押圧力を受ける受圧部が、前記引っ掛け部との間に前記電線を受入可能な間隔を空けて先端側に設けられているものとしてもよい。こうすれば、受圧部に押圧力を作用させて板バネ部をたわませた状態とすることで、電線を引っ掛け部に容易に引っ掛けることが可能となる。
【0012】
本発明のセンサブラケットにおいて、前記ブラケット本体と前記板バネ部とは、樹脂の一体成形品であるものとしてもよい。こうすれば、ブラケット本体に板バネ部を固定する手間や固定用の部材を省略することができる。また、ブラケット本体に対する板バネ部の位置ずれなどが生じることがないから、電線に張力を適切に付与し続けることができる。
【0013】
本発明のセンサブラケットにおいて、前記板バネ部は、前記引っ掛け部に引っ掛けられた前記電線が接触する接触部分を除いた部分にパーティングラインが形成された射出成形品であるものとしてもよい。こうすれば、パーティングラインとの接触により電線が損傷したり断線したりするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】車両1の外観とドア開閉装置5の構成を示す説明図である。
【
図3】センサユニット10の主要構成の分解斜視図である。
【
図4】電線22が引っ掛けられた板バネ部40の側面図である。
【
図5】電線22が引っ掛けられた板バネ部40の斜視図である。
【
図6】電線22が引っ掛けられた板バネ部40の平面図である。
【
図8】電線22を引っ掛け部45に引っ掛ける際の様子を示す説明図である。
【
図9】変形例の車両1Bの外観とドア開閉装置5Bの構成を示す説明図である。
【
図10】変形例のセンサユニット100の外観斜視図である。
【
図11】センサユニット100の湾曲部分100aの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は車両1の外観とドア開閉装置5の構成を示す説明図であり、
図2はセンサユニット10の外観斜視図であり、
図3はセンサユニット10の主要構成の分解斜視図である。また、
図4は電線22が引っ掛けられた板バネ部40の側面図であり、
図5は電線22が引っ掛けられた板バネ部40の斜視図であり、
図6は電線22が引っ掛けられた板バネ部40の平面図であり、
図7は
図6の点線部分の拡大図である。なお、
図3では、
図2に示したセンサユニット10のうち主要構成を図示し、一部の構成の図示を省略した。
【0017】
車両1は、
図1に示すように、車両前後方向に沿って図示しないスライドレールが設けられた開口部2aを有する車体2と、スライドレールにスライド可能に支持されたスライドドア3と、スライドドア3を開閉するためのドア開閉装置5とを備える。ドア開閉装置5は、ドアロック装置6と、スライドドア装置7と、センサユニット10と、ドアECU8とを備える。ドアロック装置6は、アクチュエータの駆動によりスライドドア3のロックとロックの解除を行う。スライドドア装置7は、アクチュエータの駆動によりスライドドア3をスライドレールに沿ってスライドさせる。ドアECU8は、センサユニット10からの信号やいわゆるスマートキーなどの無線式のリモートコントロールキー(リモコンキー)8aからの信号が入力されると共にドアロック装置6やスライドドア装置7に制御信号を出力する。ドアECU8は、例えばリモコンキー8aが所定範囲内にあることを検知している状態でセンサユニット10からの検出信号に基づいて、閉状態のスライドドア3を開いたり開状態のスライドドア3を閉じたりするようにドアロック装置6やスライドドア装置7を制御する。
【0018】
センサユニット10は、スライドドア3内に設けられスライドドア3の側方と下方とを検出範囲とする静電容量センサであり、スライドドア3の開閉を指示するためのユーザのすねや足先の動きを検出する。このセンサユニット10は、
図2,
図3に示すように、センサ部12と、樹脂製のセンサブラケット14とにより構成されている。なお、センサユニット10が車体2内に取り付けられるものとしてもよい。
【0019】
センサ部12は、
図2,
図3に示すように、第1センサ電極21Aおよび第2センサ電極21Bと、センサ本体26とを備える。第1センサ電極21Aおよび第2センサ電極21Bは、独立したセンサ電極であり、第1センサ電極21Aが第1電線22Aを有し、第2センサ電極21Bが第2電線22Bを有する。第1電線22Aおよび第2電線22Bは、いずれも両端がコネクタ部25に接続されたループ状の電線である。センサ本体26は、コネクタ部25が接続される入力コネクタ部27と、ドアECU8に繋がる図示しない配線が接続される出力コネクタ部28とを備え、図示しない検出回路を内蔵する。センサ本体26の検出回路は、第1センサ電極21Aおよび第2センサ電極21Bのそれぞれの静電容量を検出し、第1センサ電極21Aにおける検出値と第2センサ電極21Bにおける検出値とを別々の検出信号としてドアECU8に出力するように構成されている。以下では、特に区別する場合を除いて、第1センサ電極21Aおよび第2センサ電極21Bをセンサ電極21とし、第1電線22Aおよび第2電線22Bを電線22とする。
【0020】
センサブラケット14は、車両前後方向に沿って延びる直線状(長尺状)のブラケット本体30と、ブラケット本体30の一端に片持ち状に支持された2つの板バネ部40とを備える。本実施形態では、板バネ部40とブラケット本体30とが、金型を用いた射出成形などにより一体成形品として製造されている。ブラケット本体30は、他端側にセンサ本体26が嵌め込み可能に設けられた本体保持部32と、長手方向(車両前後方向)に沿って延在する長尺平板状の第1電線保持部34Aおよび第2電線保持部34Bと、第1電線保持部34Aおよび第2電線保持部34Bとを連結する長尺平板状の連結部36とを備える。本体保持部32は、入力コネクタ部27がブラケット本体30の一端側を向き、出力コネクタ部28が他端側を向くように配置されたセンサ本体26を保持する。連結部36は、第1電線保持部34Aおよび第2電線保持部34Bが所定間隔を空けると共にスライドドア3(車体2)の形状に沿った所定角度をなすように両者を連結する。
【0021】
第1電線保持部34Aは、長尺平板状の板面の両縁に長手方向に沿って一定間隔Dで平行に延在し第1電線22Aを保持するための一対の凹状の保持溝35が形成されている。第1電線保持部34Aは、ブラケット本体30の一端から第1電線22Aが露出して折り返すように保持溝35内に第1電線22Aを収容して保持する。第2電線保持部34Bは、第1電線保持部34Aと同様に一定間隔Dで平行に延在する一対の凹状の保持溝35が形成されており、ブラケット本体30の一端から第2電線22Bが露出して折り返すように保持溝35内に第2電線22Bを収容して保持する。このため、ループ状の電線22(第1電線22A,第2電線22B)は、一定間隔Dで平行に延びると共にブラケット本体30の一端で保持溝35から露出して折り返すように保持される。
【0022】
また、第1電線保持部34Aおよび第2電線保持部34Bには、保持溝35を覆う電線押さえ部材39が一定の間隔で複数箇所(例えば4箇所)に取り付けられている。この電線押さえ部材39は、保持溝35に電線22が収容されてから取り付けられることで、電線22が保持溝35から外れないように電線22を押さえるものとなる。このように、第1電線保持部34Aおよび第2電線保持部34Bは、保持溝35や電線押さえ部材39が同様に設けられると共に、一端に同様な板バネ部40が設けられた同様の構成であるため、特に区別する場合を除いて、電線保持部34とする。なお、本体保持部32と電線保持部34との間では、第1電線22Aと第2電線22Bは保持クリップ37により保持されている。
【0023】
板バネ部40は、ブラケット本体30の電線保持部34の一端から長手方向に沿って外方に突出するように設けられている。板バネ部40は、ブラケット本体30の電線保持部34の面に対して略直交するように突出した基端部41と、基端部41と対向するように延在する先端部42と、基端部41から先端部42まで円弧状に湾曲した中間部43とを有し、側面視で略U字状に形成されて弾性変形可能となっている。板バネ部40の先端部42には、基端部41と対向する内面とは反対側となる外面に、保持溝35から露出したループ状の電線22の折り返し部分を引っ掛け可能な引っ掛け部45と、先端部42が基端部41(ブラケット本体30側)に近付くように板バネ部40がたわむ方向の押圧力(押圧操作力)を受けることが可能な受圧部47とが設けられている。
【0024】
引っ掛け部45は、先端部42の外面から鉤状に突出するように設けられており、ブラケット本体30の保持溝35の深さ方向(
図4の上下方向)において保持溝35とは反対側に凹となる凹状部を先端部42と共に形成する。引っ掛け部45は、保持溝35の深さ方向で保持溝35の溝底面35tよりも下方となる位置に設けられている。具体的には、引っ掛け部45の凹状部の底面45tが、保持溝35の深さ方向で溝底面35tよりもΔH下方となるように設けられている。ΔHは、引っ掛け部45に電線22が引っ掛けられた際に、電線22の平行に延びる部分を保持溝35の溝底面35tに押し付けつつ電線22に過剰な張力が作用して断線などが生じることがないように、例えば数mm程度に設定されている。このため、板バネ部40は、電線22が保持溝35から外れたり保持溝35内でたわんだりしないように電線22に張力を付与することができる。なお、先端部42は、電線22と接触する接触部分であるコーナー部42aがR形状を有している(
図7参照)。また、先端部42は、金型の境界に生じるパーティングラインPL(
図4,
図7の点線参照)がコーナー部42aに現れず、電線22に接触しない部分に形成されている。このため、引っ掛け部45に引っ掛けられる電線22が、パーティングラインPLに生じるバリなどに接触して、損傷したり断線したりするのを防止することができる。
【0025】
受圧部47は、先端部42の外面に対して略直交するように立設し、先端が引っ掛け部45側(
図4の上側)を向くように傾斜(屈曲)した形状に形成されている。受圧部47は、引っ掛け部45との間に電線22を受入(挿入)可能な間隔Du(
図4参照)を空けて形成されている。受圧部47は、傾斜した部分の下面47dが板バネ部40をたわませる押圧力を受ける際の受圧面として機能する。
【0026】
こうして構成されたセンサユニット10では、センサブラケット14へのセンサ部12の組み付けが次のように行われる。
図8は、電線22を引っ掛け部45に引っ掛ける際の様子を示す説明図である。まず、作業者は、ブラケット本体30の本体保持部32にセンサ本体26を配置し、電線22を保持させた保持クリップ37をブラケット本体30に取り付けると共に保持溝35に電線22を収容する。次に、作業者は、
図8(a)に示すように、板バネ部40の受圧部47の下面47dを押圧して(矢印参照)、板バネ部40の先端部42が基端部41に近付くようにたわませた状態とする。この状態は、引っ掛け部45がブラケット本体30に近付くことになるため、受圧部47と引っ掛け部45との間に電線22を挿入しやすいものとなる。そして、作業者は、
図8(b)に示すように、ループ状の電線22の折り返し部分を受圧部47と引っ掛け部45との間に挿入してから、受圧部47への押圧を解放する。これにより、電線22が引っ掛け部45に引っ掛けられて板バネ部40の付勢により電線22に張力が付与された状態となるから(
図4参照)、電線22が張力によって保持溝35内に適切に保持される。続いて、電線押さえ部材39を電線保持部34に取り付けることで、センサブラケット14へのセンサ部12の組み付けが完了する。電線押さえ部材39を電線保持部34に取り付けることで、電線22が脱落するのを確実に防止することができる。ここで、このような電線22をセンサ電極21とするセンサ部12は、電線22の一定間隔Dを変更することで静電容量を可変として、所望の検出感度とすることが可能である。ただし、電線22が保持溝35から外れたりたわんだりして電線22の間隔が部分的に広くなったり狭くなったりして変化すると、センサ電極21の検出値が安定せず誤検知することがある。本実施形態では、板バネ部40の付勢により電線22に張力を付与して、電線22の一定間隔Dを適切に保持することができるから、検出値を安定させて誤検知を防止することができる。なお、作業者により組み付け作業が行われるものに限られず、作業装置が受圧部47に押圧力を付与したり電線22を引っ掛け部45に引っ掛けたりすることにより、組み付け作業を行うものとしてもよい。
【0027】
以上説明したセンサユニット10のセンサブラケット14は、ブラケット本体30に片持ち状に支持され、先端部42側に設けられた引っ掛け部45に引っ掛けられた電線22に張力を付与する板バネ部40を備える。このため、ブラケット本体30に板バネ部40を設けた簡易な構成により、電線22がたわむことなく一定間隔で平行に延びる状態を適切に保持することができる。したがって、センサユニット10は、所望の検出感度(静電容量)を維持することができるから、誤検知を防止することができる。
【0028】
また、引っ掛け部45(底面45t)が、保持溝35の深さ方向において溝底面35tよりも下方となる位置に設けられているから、電線22が保持溝35から外れるのを防止して適切な張力を付与することができる。
【0029】
また、板バネ部40は、引っ掛け部45との間に電線22を受入可能な間隔を空けて受圧部47が設けられているから、受圧部47に押圧力を作用させることにより板バネ部40をたわませながら電線22を引っ掛け部45に容易に引っ掛けることが可能となる。
【0030】
また、ブラケット本体30と板バネ部40とは、樹脂の一体成形品であるから、ブラケット本体30に板バネ部40を固定する手間や固定用の部材を省略することができる。また、ブラケット本体30に対する板バネ部40の位置ずれなどが生じることがないから、電線22に張力を適切に付与し続けることができる。
【0031】
また、板バネ部40は、引っ掛け部45に引っ掛けられる電線22と接触する接触部分を除いた部分にパーティングラインPLが形成されているから、パーティングラインPLのバリなどとの接触により電線22の損傷や断線を防止することができる。
【0032】
実施形態では、板バネ部40は、電線22と接触する接触部分を除いた部分にパーティングラインPLが形成されるものとしたが、これに限られず、接触部分にパーティングラインPLが形成されるものとしてもよい。ただし、パーティングラインPLのバリなどを十分に除去する必要があるから、実施形態のようにするものが好ましい。
【0033】
実施形態では、ブラケット本体30と板バネ部40とが樹脂の一体成形品であるものとしたが、これに限られず、ブラケット本体30と板バネ部40とを別部品として形成してもよく、板バネ部40をブラケット本体30にネジなどの締結部材により固定するものなどとしてもよい。また、別部品の板バネ部40は、樹脂製ではなく金属製としてもよい。
【0034】
実施形態では、板バネ部40に受圧部47が設けられるものとしたが、これに限られず、受圧部47が設けられないものとしてもよい。このようにする場合、先端部42のうち引っ掛け部45への電線22の引っ掛けに干渉しない箇所を押さえてたわませながら、引っ掛け部45に電線22を引っ掛けるものなどとすればよい。
【0035】
実施形態では、引っ掛け部45が保持溝35の溝底面35tよりも下方となる位置に設けられるものとしたが、これに限られず、溝底面35tと同等の高さとなる位置に設けられるものなどとしてもよい。
【0036】
実施形態では、電線保持部34に保持溝35が設けられるものとしたが、これに限られず、保持溝35が設けられないものとしてもよい。このようにする場合、保持溝35に代えて複数の保持クリップ37を設けて電線22を保持するものなどとしてもよい。また、板バネ部40は、保持クリップ37同士の間で電線22に張力を付与すればよく、ブラケット本体30から外方に突出する構成に限られず、ブラケット本体30内に収まる構成であってもよい。
【0037】
実施形態では、第1センサ電極21Aと第2センサ電極21Bとの2つのセンサ電極21を備えるものを例示したが、これに限られず、3つ以上のセンサ電極21を備えるものとしてもよいし、1つのセンサ電極21のみを備えるものとしてもよい。また、各センサ電極21の電線22の間隔は、同じ間隔(所定間隔D)とするものに限られず、異なる間隔としてもよい。
【0038】
実施形態では、センサユニット10がスライドドア3の開閉指示を検知するものとしたが、これに限られず、バックドアの開閉指示を検知するものなどとしてもよく、リアバンパ内やバックドア内にセンサユニットを設けるものなどとしてもよい。
図9は変形例の車両1Bの外観とドア開閉装置5Bの構成を示す説明図であり、
図10は変形例のセンサユニット100の外観斜視図である。また、
図11はセンサユニット100の湾曲部分100aの拡大図であり、
図12は
図11のA-A断面図である。なお、
図9(a)に車両1Bの後部の側面図を示し、
図9(b)に車両1Bの後面図とドア開閉装置5Bの構成を示す。この変形例では、実施形態と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
変形例の車両1Bは、
図9に示すように、車体2にヒンジを介して開閉自在に支持される跳ね上げ式のバックドア4と、アクチュエータの駆動によりバックドア4のロックとロックの解除を行うドアロック装置6Bと、アクチュエータの回転運動を直線運動に変換して伸縮することでバックドア4を開閉させるバックドア装置7Bとを備える。この車両1Bでは、静電容量センサとして、リアバンパ9の下部の中央にセンサユニット10が設けられ、下部の左右両端にセンサユニット100が設けられている。なお、中央に設けられるセンサユニット10は、実施形態と同様の構成であるため、説明は省略する。車両1BのドアECU8は、例えばリモコンキー8aが所定範囲内にあることを検知している状態でセンサユニット10,100からの検出信号に基づいて、閉状態のバックドア4を開いたり開状態のバックドア4を閉じたりするようにドアロック装置6Bやバックドア装置7Bを制御する。
【0040】
センサユニット100は、センサユニット10と同様に、センサ部12と、センサ部12を保持する樹脂製のセンサブラケット114とにより構成されている。変形例のセンサブラケット114は、取付箇所であるリアバンパ9の左右の端部の形状に沿うように湾曲状に形成されたブラケット本体130と、ブラケット本体130の一端に設けられた2つの板バネ部40とを備える。ブラケット本体130は、本体保持部132と、湾曲状の第1電線保持部134Aおよび第2電線保持部134Bと、第1電線保持部134Aおよび第2電線保持部134Bとが所定間隔を空けると共に所定角度をなすように両者を連結する湾曲状の連結部136とを備える。なお、本体保持部132は、湾曲状の第2電線保持部134Bの他端側の内周に沿って設けられている。
【0041】
センサユニット100の第1電線保持部134Aには、コネクタ部25から延びて折り返した電線22を保持する2つの保持クリップ137と、湾曲部分100aに設けられ電線22が湾曲状に沿って曲がる支点となる2つの支点部138と、一端側から外方に突出するように設けられた板バネ部40とが設けられている。各支点部138は、
図12に示すように、それぞれ電線22の湾曲状における内側(
図12の下側)となる位置に設けられており、保持クリップ137の間隔と同じ間隔(一定間隔)で設けられている。また、支点部138は、第1電線保持部134Aの面に対して略垂直に立ち上がるように形成された立壁部138aと、立壁部138aの上端から湾曲部分の外側に向かって折り曲げられるように形成された庇部138bとを有する形状となっている。また、板バネ部40は、実施形態と同様に構成されて電線22の折り返し部分が引っ掛けられ、電線22に張力を付与可能となっている。第2電線保持部134Bには、第1電線保持部134Aと同様に、2つの保持クリップ137と、2つの支点部138と、板バネ部40とが設けられ、板バネ部40に電線22の折り返し部分が引っ掛けられる。なお、4つの支点部138の形状が若干異なるのは、成型時の型抜き性を考慮したり、車両1Bに取り付けた際の他部品との干渉を防止するためである。また、第1電線保持部134Aおよび第2電線保持部134Bには、実施形態と異なり保持溝35は形成されていない。
【0042】
こうして構成された変形例のセンサユニット100では、センサブラケット114へのセンサ部12の組み付けが次のように行われる。まず、作業者は、ブラケット本体130の本体保持部132にセンサ本体26を配置し、保持クリップ137に電線22を保持させる。次に、作業者は、実施形態と同様に、板バネ部40の受圧部47を押圧してたわませた状態とし、支点部138に電線22を掛けながら電線22の折り返し部分を受圧部47と引っ掛け部45との間に挿入してから、受圧部47への押圧を解放する。これにより、電線22が引っ掛け部45に引っ掛けられて、板バネ部40の付勢により電線22に張力が付与される。このため、電線22が湾曲状に一定間隔で平行に延びる状態を適切に保持することができる。続いて、電線押さえ部材39を電線保持部134に取り付けることで、センサブラケット114へのセンサ部12の組み付けが完了する。
【0043】
これにより、ブラケット本体130が湾曲状であっても電線22が一定間隔を適切に維持することができるから、検出精度を安定させることができる。また、湾曲状の保持溝に電線22を収容するものとした場合、板バネ部40の張力が付与される際に電線22を押さえていないと保持溝から外れることがある。この変形例では保持溝に電線22を収容することなく、支点部138に電線22を掛ければよいから、センサブラケット114へのセンサ部12の組み付けを容易に行うことができる。
【0044】
また、静電容量センサは、センサ電極と、上述したいずれかのセンサブラケットと、を備えることを要旨とする。この静電容量センサは、上述のセンサブラケットを備えるから、ループ状の電線がたわむことなく一定間隔で平行に延びる状態を適切に保持することができる。これにより、静電容量センサの狙いの感度を維持して、誤検知を防止することができる。
【0045】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、電線22(第1電線22A、第2電線22B)が「電線」に相当し、センサ電極21(第1センサ電極21A,第2センサ電極21B)が「センサ電極」に相当し、センサユニット10が「静電容量センサ」に相当し、センサブラケット14が「センサブラケット」に相当し、ブラケット本体30が「ブラケット本体」に相当し、引っ掛け部45が「引っ掛け部」に相当し、板バネ部40が「板バネ部」に相当する。保持溝35が「保持溝」に相当する。受圧部47が「受圧部」に相当する。支点部138が「支点部」に相当する。
【0046】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、静電容量センサのセンサブラケットの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,1B 車両、2 車体、2a 開口部、3 スライドドア、4 バックドア、5,5B ドア開閉装置、6 ドアロック装置、7 スライドドア装置、7B バックドア装置、8 ドアECU、8a リモートコントロールキー(リモコンキー)、9 リアバンパ、10,100 センサユニット、12 センサ部、14,114 センサブラケット、21 センサ電極、21A 第1センサ電極、21B 第2センサ電極、22 電線、22A 第1電線、22B 第2電線、25 コネクタ部、26 センサ本体、27 入力コネクタ部、28 出力コネクタ部、30 ブラケット本体、32,132 本体保持部、34,134 電線保持部、34A,134A 第1電線保持部、34B,134B 第2電線保持部、35 保持溝、35t 溝底面、36 連結部、37,137 保持クリップ、39 電線押さえ部材、40 板バネ部、41 基端部、42 先端部、42a コーナー部、43 中間部、45 引っ掛け部、45t 底面、47 受圧部、47d 下面、100a 湾曲部分、138 支点部、138a 立壁部、138b 庇部、PL パーティングライン。