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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】固定構造
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20230214BHJP
   F16B 19/02 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G01D5/12 Q
F16B19/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019101434
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020193944
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】榊原 耕平
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼澤 直哉
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-124062(JP,A)
【文献】特開2005-9879(JP,A)
【文献】特開2010-8218(JP,A)
【文献】特開2009-36751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
G01B 7/00-7/34
F16B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1孔を有するハウジングと、
第2孔を有し、回転力の入力に応じて前記ハウジングに対して回動する入力部材と、
前記ハウジングに対する前記入力部材の回動方向の位置を所定の基準位置に戻すように付勢されるトーションバネと、
前記入力部材を前記トーションバネの付勢力に抗して前記基準位置から平面視で前記第1孔と前記第2孔の少なくとも一部が重なった所定の回動位置まで回動させた状態で前記第1孔と前記第2孔とに亘って挿入され、前記第1孔に圧入固定された部分を有する第1挿入部と前記第2孔に挿入された部分を有する第2挿入部とを有する固定部材と、
を備え、
前記固定部材により、前記入力部材を前記所定の回動位置で固定する固定構造。
【請求項2】
前記第1孔は、前記入力部材の回動方向に垂直な第1面と、当該第1面と互いに平行な第2面とを有し、
前記第2面は、前記入力部材から当該入力部材が前記トーションバネの付勢力に応じて前記基準位置へ戻ろうとする力が作用する面であり、
前記第2面に、前記固定部材を前記第1面に向かって押圧する第1押圧部が設けられている請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記第1挿入部における前記第1面に対向する面と、前記第2挿入部における前記入力部材から前記戻ろうとする力が作用する面とが面一で構成されている請求項2に記載の固定構造。
【請求項4】
前記第1孔における前記第1面及び前記第2面に交差する面を第3面とし、
前記固定部材は、前記第1挿入部を前記第3面に押し付ける方向に力を作用させ、且つ、前記ハウジングに係止される爪部を有するスナップフィットを更に有する請求項2又は3に記載の固定構造。
【請求項5】
前記第1孔における前記第1面及び前記第2面に交差する面を第3面とし、
前記第1孔における前記第3面に対向する側の面に前記第1挿入部を前記第3面側に押圧する第2押圧部が設けられている請求項2から4のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項6】
前記固定部材が前記第1孔及び前記第2孔に挿入された状態で、前記入力部材に前記回転力が入力された場合に、前記第2挿入部が破断するように、前記第1挿入部と前記第2挿入部との間に、前記第2挿入部の破断を補助する破断補助部が設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定側ユニットに対して回動可能な回動側ユニットを、固定側ユニットを基準に設定された所定の回動位置に固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された回転力を検出する回転センサが利用されてきた。このような回転センサには、ハウジングと、回転力が入力される入力部材と、入力部材と共にハウジングに対して一体的に回動可能な回動部材と、ハウジングと回動部材との間に設けられ、入力部材及び回動部材を所定の基準位置に戻すトーションバネと、を備えているものがある。一方、このような回転センサは、取付け部に取り付ける際に、入力部材及び回動部材をハウジングにおいて設定された、上記基準位置とは異なる所定の回動位置に固定した状態で取り付けられることがある。このような取り付けに利用される技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、取付部に対して相対的に移動する可動部材を、取付部に取り付ける際に、取付基準位置を設定する基準位置設定装置が記載されている。この基準位置設定装置は、センサ本体のレバーを予め設定された位置に固定するために、固定部材に長穴が形成されており、微調整を行いながら固定することができるように構成されている。この固定は、ネジによる締結で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-350178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、センサ本体との固定は、固定部材をネジによる締結で行うので、2つの部品(ネジ及び固定部材)が必要となる。このため、コスト低減の改善の余地がある。また、固定部材の側面からレバーと係合する突起が突出して設けられており、固定する際には、この突起をレバーの下側からくぐらせながら当該レバーに係合させ、ネジで締結する必要がある。このため、組み付けに係る作業性が悪く、改善の余地がある。また、このような作業は、自動化することも容易ではないことから作業者が行う必要があり、製造コストの低減の余地がある。
【0006】
そこで、低コストで、且つ、容易に組み付けを行うことが可能な固定構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固定構造の特徴構成は、第1孔を有するハウジングと、第2孔を有し、回転力の入力に応じて前記ハウジングに対して回動する入力部材と、前記ハウジングに対する前記入力部材の回動方向の位置を所定の基準位置に戻すように付勢されるトーションバネと、前記入力部材を前記トーションバネの付勢力に抗して前記基準位置から平面視で前記第1孔と前記第2孔の少なくとも一部が重なった所定の回動位置まで回動させた状態で前記第1孔と前記第2孔とに亘って挿入され、前記第1孔に圧入固定された部分を有する第1挿入部と前記第2孔に挿入された部分を有する第2挿入部とを有する固定部材と、を備え、前記固定部材により、前記入力部材を前記所定の回動位置で固定する点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、固定部材の第1挿入部をハウジングに圧入固定し、固定部材の第2挿入部を入力部材の第2孔に挿入するので、1つの固定部材で入力部材を所定の回動位置に固定できる。また、入力部材をハウジングに対して固定部材の圧入のみで固定できるため、作業を簡素化でき、容易に組み付けを行うことが可能となる。更には、組み付けを自動化し易く、低コスト化できる。
【0009】
また、前記第1孔は、前記入力部材の回動方向に垂直な第1面と、当該第1面と互いに平行な第2面とを有し、前記第2面は、前記入力部材から当該入力部材が前記トーションバネの付勢力に応じて前記基準位置へ戻ろうとする力が作用する面であり、前記第2面に、前記固定部材を前記第1面に向かって押圧する第1押圧部が設けられていると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、固定部材の第1挿入部のうち第1面に押し付けられた面を基準にして第2挿入部の位置を決めることができるので、ハウジングに固定部材を圧入した状態で、第2挿入部の位置が正確に決まる。これにより、ハウジングに対して所定の回動位置で固定された入力部材の回動方向の位置決めを正確に行うことが可能となる。更には、固定部材が圧入固定されているので、ハウジングから固定部材を抜け難くできる。
【0011】
また、前記第1挿入部における前記第1面に対向する面と、前記第2挿入部における前記入力部材から前記戻ろうとする力が作用する面とが面一で構成されていると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、第2挿入部における入力部材の戻ろうとする力が作用する面が固定部材の第1挿入部のうち第1面に押し付けられた面と同一面となるので、ハウジングに対して所定の回動位置で固定された入力部材の回動方向の位置決めを更に正確に行うことが可能となる。
【0013】
また、前記第1孔における前記第1面及び前記第2面に交差する面を第3面とし、前記固定部材は、前記第1挿入部を前記第3面に押し付ける方向に力を作用させ、且つ、前記ハウジングに係止される爪部を有するスナップフィットを更に有すると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、スナップフィットによりハウジングに保持されるので、固定部材のハウジングからの抜け防止を更に確実に実現できる。
【0015】
また、前記第1孔における前記第1面及び前記第2面に交差する面を第3面とし、前記第1孔における前記第3面に対向する側の面に前記第1挿入部を前記第3面側に押圧する第2押圧部が設けられていると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、第1押圧部と交差する第2押圧部により固定部材を第1面と第3面とにより構成される角部に押し付けることができるので、ハウジングに固定部材を圧入した状態で、第2挿入部の位置を更に正確に決めることができる。
【0017】
また、前記固定部材が前記第1孔及び前記第2孔に挿入された状態で、前記入力部材に前記回転力が入力された場合に、前記第2挿入部が破断するように、前記第1挿入部と前記第2挿入部との間に、前記第2挿入部の破断を補助する破断補助部が設けられていると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、実使用を開始する際に、固定部材をハウジングから取り外す必要がなく、入力部材に回転力を入力するだけで、入力部材を回動可能な状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】固定構造を備えた回転角検出センサの斜視図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】固定構造を備えた回転角検出センサの分解斜視図である。
図4】固定部材の斜視図である。
図5】固定部材の正面図である。
図6】固定部材の側面図である。
図7】第1孔の拡大図である。
図8図1のVIII-VIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る固定構造は、バネの付勢力に応じて回動する回動側ユニットを固定側ユニットに対して所定の回動位置に位置決めされた状態で固定する機能を有する。以下、本実施形態の固定構造について説明する。なお、以下では固定構造を備えた回転角検出センサ1を例に挙げて説明する。ここで、回転角検出センサ1は、例えば車両のアクセルペダルやブレーキペダル等の被操作部材90の操作量の検出に用いられる。
【0021】
図1には回転角検出センサ1の斜視図が示され、図2には図1のII-II線における断面図が示され、図3には回転角検出センサ1の分解斜視図が示される。図1図3に示されるように、回転角検出センサ1は、固定側ユニット2と回動側ユニット3とトーションバネ4とを備えている。固定側ユニット2は、回転角検出センサ1の検出対象である回転角の検出基準となる部位(例えば回転しない装置の筐体であって、車両であれば車体等)に固定される。回動側ユニット3は、回転角検出センサ1の検出対象である回転角を生じさせる力の入力に応じて固定側ユニット2に対して回動する。固定側ユニット2は、ハウジング10、ホルダ20、カバー部材30を有する。回動側ユニット3は、永久磁石40、回動部材50、入力部材60を有する。
【0022】
ハウジング10には、磁気検出素子5が内装される。ハウジング10は、本体部11と端子部12とを有する。本体部11と端子部12とは、樹脂を用いて一体的に形成される。本体部11の内部には、素子収容室18が形成される。端子部12には複数のリード端子6が露出した状態で配置される。磁気検出素子5は、磁気の大きさを検出可能な素子であり、例えばホール素子を用いて構成することが可能である。ホール素子の検出信号は微弱であるため、磁気検出素子5は、当該検出信号を増幅する増幅回路とホール素子とを一体化したホールICとすると好適である。磁気検出素子5は基板7に実装され、上述した素子収容室18に収容される。基板7には上述したリード端子6が接続され、このリード端子6を介して、回転角検出センサ1の検出結果を外部に出力することが可能となる。回転角検出センサ1は、端子部12を介して上述した筐体(車両であれば車体)に支持される。
【0023】
ハウジング10の本体部11には、本体部11の外周壁から側方に向かって突出する突出部13が設けられ、突出部13には当該突出部13を貫通する第1孔14が設けられる。本実施形態では、本体部11の外周壁を構成する筒状体の軸心(後述する回動中心X)に対して径方向外側に突出するように突出部13が設けられる。また、第1孔14は、回動中心Xに平行な内壁を有するように開口部分の形状が四角形であって、当該四角形を構成する4つの内壁のうちの一つが、前記筒状体の周方向に直交する面を有するように構成される。したがって、第1孔14は回動中心Xに沿って、突出部13を貫通するように構成される。
【0024】
永久磁石40は、磁気検出素子5に対向して配置される。永久磁石40は、当該永久磁石40の磁極に起因する磁束が磁気検出素子5を通るように、磁気検出素子5に対して所定の隙間を隔てた状態で対向配置される。永久磁石40の材料は特に限定されず、例えばネオジム磁石、サマコバ磁石、アルニコ磁石、及びフェライト磁石等を用いることができる。また、永久磁石40の製法も特に限定されず、ボンド磁石(プラスチック磁石)や焼結磁石等を用いることができる。永久磁石40は、磁気検出素子5の検出感度との関係を考慮して適切なものを選定することが可能である。
【0025】
本実施形態では、永久磁石40は、円柱状のものが用いられ、軸方向一方の面に少なくとも一対の磁極(N極及びS極)が現れるように着磁される。これにより、磁気検出素子5に対向する面の磁極が後述する入力部材60に対して入力される回転力に応じて変化させることができ、回転角検出センサ1が回転角を検出することが可能となる。
【0026】
回動部材50は、永久磁石40を保持すると共に、ハウジング10に対して回動可能に支持される。回動部材50は、磁石保持部51と筒状部52とを有する。磁石保持部51と筒状部52とは、樹脂成形により形成され、その際、永久磁石40が内包された状態で一体成型される。これにより、磁石保持部51が永久磁石40を保持することが可能となる。磁石保持部51は円板状に形成され、永久磁石40は、円板状の磁石保持部51の軸方向一方の面において円柱状の永久磁石40の軸方向一方の面が露出した状態で保持される。筒状部52は、磁石保持部51と同軸心上に円筒状で形成される。回動部材50は、ハウジング10が他の装置の筐体に固定された場合であっても、回動できるように設けられる。
【0027】
入力部材60は、回動部材50に支持され、回転力が入力される。回転力とは、回転角検出センサ1の検出対象である回転角を生じさせる力である。したがって、入力部材60は、回転力の入力に応じて、回動部材50と一体となってハウジング10に対して回動する。本実施形態では、上述したように永久磁石40と回動部材50とは一体成型されるが、この一体成型時に入力部材60も一体成型すると好適である。これにより、入力部材60に入力された回転力に応じて、入力部材60、回動部材50、及び永久磁石40(回動側ユニット3)が一体となって回動することが可能となる。入力部材60には被操作部材90が連結固定される。これにより、入力部材60に被操作部材90の操作量に応じた回転力を入力することが可能となる。
【0028】
入力部材60は、アーム部61と、レバー部62と、環状部63とを有する。アーム部61は、回動部材50から径方向外側に向けて延出するように形成される。「回動部材50から径方向外側に向けて」とは、回動部材50の外周面から外側を向く方向である。より具体的は、回動部材50を回動中心Xに沿って見た場合に、当該回動中心Xに対して直交する方向(径方向)にあたる。本実施形態では、アーム部61は、当該回動中心Xから径方向に沿って所定の長さで延出して形成される。レバー部62は、アーム部61から回動部材50の軸方向に沿って延出するように形成される。本実施形態では、レバー部62は、アーム部61の外側端(径方向外側端)において、アーム部61の延出方向に対して直交する方向に屈曲して形成される。このレバー部62に、上述した被操作部材90が設けられ、回転力が入力される。環状部63は環状に形成される。
【0029】
本実施形態では、環状部63は円環状に形成される。入力部材60は、この環状部63を介して回動部材50の内部に少なくとも環状部63の一部が内包された状態で一体化される。これにより回動部材50は入力部材60に入力された回転力に応じて回動することが可能となる。
【0030】
アーム部61は、当該アーム部61から環状部63の径方向に突出する径方向突出部64が設けられ、径方向突出部64には当該径方向突出部64を貫通する第2孔65が設けられる。本実施形態では、第2孔65は、第1孔14と同様に開口部分の形状が四角形であって、当該四角形を構成する4つの内壁のうちの一つが、前記筒状体の周方向に直交する面を有するように構成される。したがって、第2孔65は、回動中心Xに沿って、径方向突出部64を貫通するように構成される。
【0031】
ホルダ20は、回動部材50を収容すると共に、ハウジング10に支持される。ホルダ20は、本体部22と、本体部22から相反する方向に延出する一対のフランジ部23とを有する。本体部22の内部(径方向内側)には、バネ収容室53が形成される。ホルダ20は樹脂成形され、ハウジング10に位置決め固定される。このような構成により、入力部材60、回動部材50、永久磁石40は一体となって、ハウジング10に対して回動可能となる。
【0032】
カバー部材30はハウジング10に支持され、磁気検出素子5を収容する。カバー部材30は、蓋部31と、フランジ部33とを有する。フランジ部33は、蓋部31から径方向外側に延出して設けられる。カバー部材30は、フランジ部33がハウジング10の開口形状と位置決めされて固定される(例えば接着固定される)。これにより、蓋部31がハウジング10に蓋をして密封する状態となり、磁気検出素子5が液体や粉塵に晒されることを防止できる。このようなカバー部材30は、蓋部31とフランジ部33とが樹脂成形により構成される。
【0033】
トーションバネ4は、ハウジング10と回動部材50とで形成されるバネ収容室53に収容され、ハウジング10に対する入力部材60の回動方向の位置を所定の基準位置に戻すように付勢される。より具体的には、バネ収容室53は、本体部22の内部に形成され、磁石保持部51で蓋をされた状態の空間にあたる。
【0034】
トーションバネ4は、筒状に形成される。特に本実施形態では、回動部材50の磁石保持部51の外周面に沿う形状で形成される。トーションバネ4は、回動部材50が入力部材60に入力された回転力に応じて回動する際、回動部材50がトーションバネ4の付勢力に抗して回動するように巻き回される。本実施形態では、回動部材50が入力部材60に入力された回転力に応じて回動する際、トーションバネ4を巻き締めるように(巻き回し回数が増加するように)巻き回される。したがって、上述した「所定の基準位置」とは、トーションバネ4に少し回転力が作用した状態でハウジング10に当接してそれ以上回転力が低下する方向には回転しない位置(入力部材60の突出部67がハウジング10の受部17に当接する状態における位置であって、図3にあっては符号「SP」が付された位置である)にあたり、回動部材50は上記回転力の入力に応じてトーションバネ4の付勢力に抗しながら回動する。
【0035】
本回転角検出センサ1にあっては、図2に示されるように、ハウジング10は、底面から永久磁石40側に突出する凸状体16を有して構成される。凸状体16は円柱状に構成され、凸状体16の外周面15が回動部材50における筒状部52の内周面21に対して摺動するように構成される。したがって、凸状体16の外周面15は軸部材に相当し、筒状部52の内周面21は軸受部材に相当する。凸状体16の外周面15の外径、及び筒状部52の内周面21の内径は、夫々、互いに摺動可能に構成されるが、その他の部位(例えば回動部材50と、ハウジング10及びホルダ20との間)には隙間が形成される。
【0036】
本実施形態では、トーションバネ4の第1端部71は、ホルダ20に設けられる第1係止部34に係止される。第1係止部34は、ホルダ20の底面から突出する突起として形成することが可能である。このような第1係止部34に、トーションバネ4の第1端部71を係止すると良い。
【0037】
一方、トーションバネ4の第2端部72は、回動部材50に設けられる第2係止部35に係止される。第2係止部35は、ホルダ20の底面に向かって突出する突起として形成される。トーションバネ4の第2端部72は、このような第2係止部35に係止される。
【0038】
図4には固定部材80の斜視図が示される。図5に固定部材80の正面図が示される。図6には固定部材80の側面図が示される。固定部材80は、第1挿入部81と第2挿入部82とを有する。第1挿入部81はハウジング10の第1孔14に圧入固定可能に構成される。第1挿入部81は、全てが第1孔14に圧入されるのではなく、少なくとも一部が第1孔14に圧入可能な構成で良い。したがって、第1挿入部81は、第1孔14に圧入固定される部分を有して構成される。
【0039】
第2挿入部82は第2孔65に挿入可能に構成される。第2挿入部82も、全てが第2孔65に挿入されるのではなく、少なくとも一部が第2孔65に挿入可能な構成で良い。したがって、第2挿入部82は、第2孔65に挿入される部分を有して構成される。
【0040】
ここで、上述したように、第1孔14はハウジング10に設けられ、第2孔65は入力部材60に設けられる。また、入力部材60は、トーションバネ4の付勢力により回動方向の位置が所定の基準位置に戻されようとする力が作用する。本実施形態では、入力部材60をトーションバネ4の付勢力に抗して上述した基準位置から所定の回動位置まで回動させた場合に、平面視で第1孔14と第2孔65の少なくとも一部が重なるように構成されている。固定部材80は、このような入力部材60をトーションバネ4の付勢力に抗して上述した基準位置から所定の回動位置まで回動させた状態で第1孔14と第2孔65とに亘って挿入される。したがって、固定部材80は、入力部材60を所定の回動位置で固定するように構成される。このような構造が、本固定構造にあたる。
【0041】
図7には、第1孔14の上面図が示される。第1孔14は、入力部材60の回動方向に垂直な第1面41と、当該第1面41と互いに平行な第2面42とを有する。図7では、理解を容易にするために、入力部材60の回動方向が白抜き矢印で示され、矢印の方向に沿ってトーションバネ4の付勢力により入力部材60が所定の基準位置に戻ろうとする力が生じる。第1面41及び第2面42は、このような力に直交するように設けられる。本実施形態では、第1面41はトーションバネ4の付勢力により入力部材60が所定の基準位置に戻ろうとする際の上流側の面であり、第2面42はトーションバネ4の付勢力により入力部材60が所定の基準位置に戻ろうとする際の下流側の面にあたる。したがって、第2面42は、入力部材60から当該入力部材60がトーションバネ4の付勢力に応じて基準位置へ戻ろうとする力が作用する面にあたる。また、互いに平行とは、第1面41と第2面42との間隔が一様であることをいう。
【0042】
また、本実施形態においては、第2面42に固定部材80を第1面41に向かって押圧する第1押圧部43が設けられている。第1押圧部43は、第2面42から第1面41に突出する突状体で構成される。本実施形態では、第1押圧部43は、第2面42において2つ設けられる。夫々の第1押圧部43は、第2面42からの突出高さが一様に設定される。この第1押圧部43が固定部材80の第1挿入部81を第1面41に向かって押圧し、第1孔14に対し第1挿入部81が圧入固定されることになる。このとき、第1挿入部81の面83は第1面41の全体と当接する。また、第2挿入部82の面84は第2孔65の所定の面(トーションバネ4の付勢力により入力部材60が所定の基準位置に戻ろうとする際の上流側の面)の全体と当接する。
【0043】
図4図6に示されるように、固定部材80は、第1挿入部81における第1面41に対向する面83と、第2挿入部82における入力部材60から所定の基準位置まで戻ろうとする力が作用する面84とが面一で構成されている。第1挿入部81における第1面41に対向する面83とは、第1挿入部81が有する面のうち、第1挿入部81を第1孔14に圧入固定した場合に、第1孔14における第1面41に対向する面である。第2挿入部82における入力部材60から所定の基準位置まで戻ろうとする力が作用する面84とは、第2挿入部82が有する面のうち、第2挿入部82を第2孔65に挿入した場合に、トーションバネ4の付勢力に応じて入力部材60により押圧される面である。面一で構成されているとは、第1挿入部81及び第2挿入部82の夫々を、第1孔14及び第2孔65への挿入方向に沿って見て、当該挿入方向に直交し、且つ、トーションバネ4の付勢力が生じる方向に対する高さが同じであることをいう。すなわち、挿入軸心からの高さが互いに同じであることを意味する。したがって、固定部材80は、面83と面84とが第1孔14及び第2孔65への挿入軸心からの高さが同じ高さで構成される。
【0044】
図8には、図1のVIII-VIII線における断面図が示される。図8に示されるように、固定部材80は、第1挿入部81がハウジング10の第1孔14に圧入固定され、第2挿入部82が入力部材60の第2孔65に挿入される。図8にあっては、入力部材60には、トーションバネ4の付勢力により、回動中心Xに直交する方向(紙面左側)への力が作用する。一方、固定部材80はハウジング10に対して第1面41で位置決めされている。また、固定部材80は上述したように面83と面84とが面一で構成されている。したがって、図8に示されるように、固定部材80により、ハウジング10に対して入力部材60を面83及び面84を基準に位置決めすることが可能となる。
【0045】
図7に示されるように、第1孔14における第1面41及び第2面42に交差する面を第3面44とする。本実施形態では、第3面44は、第1孔14が有する面のうち、第1面41及び第2面42に交差する面であって、回動中心Xからみて径方向外側の面である。
【0046】
係る構成において、図4図6に示されるように、固定部材80は、第1挿入部81を第3面44に押し付ける方向に力を作用させ、且つ、ハウジング10に係止される爪部85を有するスナップフィット86を有する。ここで、固定部材80は、スナップフィット86と第1挿入部81との間隔A(図5参照)が、ハウジング10における突出部13の径方向外側部分19(図7参照)の径方向に沿う長さBよりも小さく形成される。これにより、第1挿入部81を第1孔14に挿入した状態では、スナップフィット86が径方向外側部分19により第1挿入部81に対して広げられ、固定部材80には、第1挿入部81を第3面44に対して押し付ける方向の力が作用する。また、スナップフィット86には、ハウジング10に係止する爪部85が設けられ、このような状態の第1挿入部81が第1孔14から抜けないようにすることが可能となる。
【0047】
更に、本実施形態では、図7に示されるように、第1孔14における第3面44に対向する側の面45に第1挿入部81を第3面44側に押圧する第2押圧部46が設けられる。第1孔14における第3面44に対向する側の面45とは、第1孔14が有する面のうち、回動中心Xから見て径方向内側の面である。第2押圧部46は、このような面45から回動中心Xから見て径方向外側に突出するように設けられる。本実施形態では、径方向外側に突出する高さが一様に構成される。これにより、第1押圧部43により第1面41側に押圧された状態の第1挿入部81を、第2押圧部46により第3面44側に押圧することが可能となる。したがって、第1挿入部81を、第1面41及び第3面44により構成される角部47を基準に位置決めすることが可能となる。
【0048】
ここで、上述した状態とすることで、ハウジング10に対する入力部材60の相対位置を予め設定された位置に維持することができる。この状態で回転角検出センサ1は、予め設定された位置に設置される。しかしながら、この状態では、固定部材80によりハウジング10に対して入力部材60が固定されている。
【0049】
そこで、図4図6に示されるように、固定部材80が第1孔14及び第2孔65に挿入された状態で、入力部材60に回転力が入力された場合に、第2挿入部82が破断するように、第1挿入部81と第2挿入部82との間に、第2挿入部82の破断を補助する破断補助部87が設けられている。固定部材80が第1孔14及び第2孔65に挿入された状態で、入力部材60に回転力が入力された場合とは、図8のように固定部材80が第1孔14及び第2孔65に挿入された状態において、入力部材60に対して、最初にトーションバネ4の付勢力に抗する回転力が入力された場合である。係る場合、第2挿入部82は、入力部材60の回動により、第1挿入部81から折れる。このように第2挿入部82が第1挿入部81から破断し易いように、破断補助部87が設けられている。
【0050】
本実施形態では、破断補助部87は、第1挿入部81と第2挿入部82との間の溝部88が相当する。これにより、第2挿入部82に入力部材60の回動に応じた力が作用し、溝部88で破断することが可能となる。また、第2挿入部82が破断した状態の固定部材80は第1挿入部81が第1孔14に挿入され、スナップフィット86の爪部85でハウジング10に係止されているので、回転角検出センサ1の機能を損なうこともない。
【0051】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、固定構造について回転角検出センサ1を例に挙げて説明したが、固定構造は回転角検出センサ1以外に適用することも可能である。
【0052】
上記実施形態では、第1孔14は、入力部材60の回動方向に垂直な第1面41と、当該第1面41と互いに平行な第2面42とを有するとして説明したが、第1孔14は、入力部材60の回動方向に垂直な第2面42と、当該第2面42と互いに平行な第1面41とを有するように構成しても良い。また、第1面41と第2面42とは、互いに平行でなくても良い。また、入力部材60の回動方向に垂直でなくても良い。
【0053】
上記実施形態では、第1挿入部81における第1面41に対向する面83と、第2挿入部82における入力部材60から所定の基準位置に戻ろうとする力が作用する面84とが面一で構成されているとして説明したが、面83と面84とは面一で構成されていなくても良い。
【0054】
上記実施形態では、固定部材80は、第1挿入部81を第3面44に押し付ける方向に力を作用させ、且つ、ハウジング10に係止される爪部85を有するスナップフィット86を更に有するとして説明したが、固定部材80は、第1挿入部81を第3面44に押し付ける方向に力を作用させないように構成することも可能であるし、ハウジング10に係止される爪部85を有するスナップフィット86を有しないように構成することも可能である。
【0055】
上記実施形態では、第1孔14における第1面41及び第2面42に交差する面を第3面44とし、第1孔14における第3面44に対向する側の面45に第1挿入部81を第3面44側に押圧する第2押圧部46が設けられているとして説明したが、面45に第2押圧部46を設けなくても良い。
【0056】
上記実施形態では、固定部材80の第1挿入部81と第2挿入部82との間に破断補助部87が設けられているとして説明した。上記実施形態における破断補助部87は一例であって、他の形態で破断補助部87を構成することも可能である。或いは、固定部材80には、破断補助部87を設けずに、例えば第2挿入部82が第2孔65から引退するように構成しても良い。
【0057】
本発明は、ハウジングに対して回動可能な回動部材を、ハウジングに設定された所定の位置に固定する固定構造に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
4:トーションバネ
10:ハウジング
14:第1孔
41:第1面
42:第2面
43:第1押圧部
44:第3面
45:面
46:第2押圧部
60:入力部材
65:第2孔
80:固定部材
81:第1挿入部
82:第2挿入部
83:面
84:面
85:爪部
86:スナップフィット
87:破断補助部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8