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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/36 20060101AFI20230214BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20230214BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20230214BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20230214BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20230214BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01B7/36 Z
H02G1/06
H01B7/00 306
H01B7/08
H01B7/18 G
G06K19/06 037
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019102409
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020198164
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】住田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】原田 日登実
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆祐
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】石田 英敏
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-201227(JP,A)
【文献】特開昭62-082607(JP,A)
【文献】特開平07-176216(JP,A)
【文献】実開平06-023123(JP,U)
【文献】国際公開第2016/159040(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/36
H02G 1/06
H01B 7/00
H01B 7/08
H01B 7/18
G06K 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末部を有する偏平配線部材と、
前記複数の端末部のうち、少なくとも2つの前記端末部に対応して設けられた複数の識別部と、
を備え、
前記複数の識別部は、相互に異なる識別情報を提供するように構成され、
前記偏平配線部材は、少なくとも一部が折畳まれた折畳み形態と、前記折畳み形態の折畳みを展開した展開形態との間で形態変更可能であり、
前記展開形態は、車両に搭載され、前記複数の端末部が車両の各種機器に接続可能な形態であり、前記折畳み形態は、当該展開形態から折畳んだ状態であり、
前記折畳み形態における前記複数の識別部の分布領域が、前記展開形態における前記複数の識別部の分布領域よりも小さくなるように、前記複数の識別部が前記偏平配線部材に設けられている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記展開形態は、前記折畳み形態よりも大きく広がった形態である、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記複数の識別部は、カメラによって相互に異なる画像として撮像可能なマークである、配線部材。
【請求項4】
請求項3に記載の配線部材であって、
前記折畳み形態において、前記複数のマークが同じ姿勢である、配線部材。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の配線部材であって、
前記折畳み形態において、前記複数のマークが同じ面側から観察可能な位置に設けられる、配線部材。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記折畳み形態において、前記偏平配線部材は、自身の幅方向に対して傾斜する線に沿って折られた部分を含む、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記折畳み形態は、ベース部分上に他の部分が折重ねられた形態であり、
前記ベース部分にベース識別部が設けられている、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の識別部は、順番情報を含む、配線部材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の識別部は、前記複数の端末部の縁形状によって提供される識別情報を含む、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、並行する複数の導体線を絶縁材で被覆したフラットケーブルを開示している。このフラットケーブルでは、コネクタ端子の固定の向きを識別する識別マークがケーブル端部の絶縁材に形成されている。
【0003】
特許文献2は、ロボットによってコネクタ接続作業を行う技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-256846号公報
【文献】特開平5-204459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の端末を有するハーネスは、コネクタを介して各種機器に接続される。各端末を、対応する機器に正確に接続するため、各端末を正確に識別できるようにすることが望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、偏平配線部材の端末部の認識を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の配線部材は、複数の端末部を有する偏平配線部材と、前記複数の端末部のうち、少なくとも2つの前記端末部に対応して設けられた複数の識別部と、を備え、前記複数の識別部は、相互に異なる識別情報を提供するように構成され、前記偏平配線部材は、少なくとも一部が折畳まれた折畳み形態と、前記折畳み形態の折畳みを展開した展開形態との間で形態変更可能であり、前記折畳み形態における前記複数の識別部の分布領域が、前記展開形態における前記複数の識別部の分布領域よりも小さくなるように、前記複数の識別部が前記偏平配線部材に設けられている、配線部材である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、偏平配線部材の端末部の認識が容易に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は配線部材を示す平面図である。
図2図1は配線部材を示す平面図である。
図3図3は第1変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図4図4は第2変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図5図5は第3変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図6図6は第4変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図7図7は第5変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図8図8は第5変形例に係る識別部を示すブロック図である。
図9図9は第6変形例に係る配線部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0012】
(1)複数の端末部を有する偏平配線部材と、前記複数の端末部のうち、少なくとも2つの前記端末部に対応して設けられた複数の識別部と、を備え、前記複数の識別部は、相互に異なる識別情報を提供するように構成され、前記偏平配線部材は、少なくとも一部が折畳まれた折畳み形態と、前記折畳み形態の折畳みを展開した展開形態との間で形態変更可能であり、前記折畳み形態における前記複数の識別部の分布領域が、前記展開形態における前記複数の識別部の分布領域よりも小さくなるように、前記複数の識別部が前記偏平配線部材に設けられている、配線部材である。比較的狭い分布領域内で複数の識別部を利用した識別がなされ得るため、偏平配線部材の端末部の認識が容易に行われる。
【0013】
(2)前記展開形態は、前記折畳み形態よりも大きく広がった形態であってもよい。これにより、比較的小さく折畳まれた形態において、偏平配線部材の端末部の認識が容易に行われる。
【0014】
(3)前記複数の識別部は、カメラによって相互に異なる画像として撮像可能なマークであってもよい。カメラにて撮像された画像に対して画像認識処理等を行うことによって、端末部の識別がなされる。
【0015】
(4)前記折畳み形態において、前記複数のマークが同じ姿勢であってもよい。これにより、配線部材の折畳み形態において、より容易に端末部の識別がなされ得る。なお、複数のマークが同時に撮影されてもよい。
【0016】
(5)前記折畳み形態において、前記複数のマークが同じ面側から観察可能な位置に設けられていてもよい。これにより、配線部材の折畳み形態において、複数のマークが容易に観察され得る。なお、複数のマークが同時に撮影されてもよい。
【0017】
(6)前記折畳み形態において、前記偏平配線部材は、自身の幅方向に対して傾斜する線に沿って折られた部分を含んでもよい。これにより、偏平配線部材が折畳まれた形態で、重なり部分を少なくすることができ、マークが露出し易い。
【0018】
(7)前記折畳み形態は、ベース部分上に他の部分が折重ねられた形態であり、前記ベース部分にベース識別部が設けられていてもよい。これにより、ベース部分が容易に認識され得る。また、ベース部分が基準とされた状態で、他の部分の展開作業等が容易に行われ得る。
【0019】
(8)前記複数の識別部は、順番情報を含んでもよい。これにより、当該順番情報に従って、端末部の展開、接続作業等が円滑に実施される。
【0020】
(9)前記複数の識別部は、前記複数の端末部の縁形状によって提供される識別情報を含んでもよい。これにより、端末部の縁形状によって、相互に異なる識別情報が提供される。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。図1及び図2は配線部材10を示す平面図である。図1は展開形態における配線部材10を示している。図2は折畳み形態における配線部材10を示している。展開形態における配線部材10は、例えば、配線部材10が車両等に搭載された形態である。この状態では、配線部材10は、車両に固定される。また、端末部28A、28B、28C、28D、28Eは、端部のコネクタ23を介して、車両の各種機器に接続される。折畳み形態における配線部材10は、例えば、配線部材10を保管、運搬するための形態である。例えば、配線部材10は、折畳み形態で運搬されて、組付対象となる車両の近くに配設される。そして、配線部材10は、折畳み形態のまま車両の組付対象上に配置され、組付対象上で展開される。
【0023】
配線部材10は、偏平配線部材20と、複数の識別部30とを備える。
【0024】
偏平配線部材20は、複数の線状伝送部材が複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eを有する形態でまとめられた、平たいハーネスである。ここでは、偏平配線部材20は、複数の電線22と、シート24とを備える。
【0025】
電線22は、線状伝送部材の一例である。電線22は、芯線と、被覆とを含む。芯線は、金属等の導電部材によって形成された線状導体である。被覆は、芯線の周囲を覆う絶縁部分である。線状伝送部材は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材は、電線の他、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0026】
シート24は、複数の電線22を偏平な形態に保つシート状の部材である。シート24は、樹脂等によって形成される。シート24は、金属を含んでいてもよい。シート24は、不織シートを含んでもよい。シート24の一方主面に複数の電線22が分岐しつつ並列状態で固定される。シート24に対する電線22の固定は、溶着、接着、粘着等によってなされる。溶着は、超音波溶着であってもよいし、加熱溶着であってもよい。複数の電線22がシート24の一方主面に固定されることによって、複数の電線22が平たい状態に保たれる。
【0027】
偏平配線部材20は、接続先となる各電気部品の位置に応じて分岐していてもよい。ここでは、複数の電線22が複数箇所(ここでは3箇所)で分岐している例が示されている。この場合、シート24は、電線22の分岐経路に沿って分岐するように形成されているとよい。偏平配線部材20のうち最も多くの電線22が設けられた部分は幹線部と称されてもよい。また、上記電線22が幹線部から分岐した部分は枝線部と称されてもよい。シート24に対して電線22側からカバーが取付けられてもよい。
【0028】
複数の電線22の端部にはコネクタ23が取付けられている。ここでは、幹線部の両端部、及び、枝線部の端部において、電線22がシート24の端部から延出している。シート24の端部から延出した電線22の端部に端子が取付けられ、当該端子がコネクタ23のキャビティ内に挿入されている。コネクタがシートの端部に固定されていてもよい。この場合、電線22はシート24の端部から延出していてなくてもよい。
【0029】
本実施形態では、幹線部の両端及び複数の枝線部の端部に、端末部28A、28B、28C、28D、28Eが設けられる。端末部28A、28B、28C、28D、28Eは、シート24の端部と、当該端部に沿って配設された電線22の端部と、当該電線22の端部が接続されたコネクタ23を含むと把握されてもよい。
【0030】
偏平配線部材20は、上記例に限られない。複数の電線は、平たい枠部材等によって偏平状態に保たれていてもよい。複数の電線が偏平な形態となるように並列された形態で直接接合されていてもよい。また、偏平配線部材20は、FPC(Flexible printed circuit)、FFC(Flexible Flat Cable)等のように、複数の線状導体が絶縁部材によって相互に絶縁された状態で偏平状態に保たれたものであってもよい。すなわち、偏平配線部材は、複数の線状導体が、相互に絶縁された状態で偏平な形態に保持され、全体として幅よりも厚みが小さく形成された配線部材であればよい。また、偏平配線部材が枝線部を有していることは必須ではない。
【0031】
折畳み形態では、偏平配線部材20の少なくとも一部が折畳まれている。展開形態では、当該折畳み形態において折畳まれた部分が展開された形態となっている。展開形態における偏平配線部材20は、折畳み形態における偏平配線部材20よりも大きく広がっている。逆に言えば、折畳み形態における偏平配線部材20は、展開形態における偏平配線部材20よりも小さな領域となる。
【0032】
ここでは、偏平配線部材20の幹線部が複数箇所(ここでは2箇所)で折曲げられる。2つの曲げ箇所L1、L2は、幹線部の長手方向において離れた位置に存在する。1つの曲げ箇所L1は、幹線部の一端寄りに位置し、より具体的には、端末部28Cよりも幹線部の長手方向中央寄りに位置する。他の1つの曲げ箇所L2は、幹線部の他端寄りに位置し、より具体的には、端末部28Eよりも幹線部の長手方向中央寄りに位置する。このため、折畳み形態では、偏平配線部材20のうち幹線部の両端側部分が中央側に折畳まれる。これにより、折畳み形態における偏平配線部材20が比較的小さくなる。ここでは、偏平配線部材20のうち幹線部の両端側部分同士が重ね合されないように折畳まれている。なお、曲げ箇所は、例えば偏平配線部材20において剛性が低い箇所として把握されうる。例えば、曲げ箇所は、偏平配線部材20において厚みが小さい箇所であってもよい。また、偏平配線部材20に折り目がつけられている箇所として把握されても良い。
【0033】
複数の識別部30は、複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eのうちの複数に対応して設けられている。ここでは、複数の識別部30は、複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eの全てに対応して設けられている。複数の識別部は、複数の端末部のうちの一部である少なくとも2つに対応して設けられていてもよい。
【0034】
複数の識別部30は、相互に異なる識別情報を提供するように構成されている。識別情報は、人の感覚によって識別可能な情報として提供されてもよいし、装置によって識別可能な情報として提供されてもよい。装置によって識別可能な情報は、例えば、カメラによって相互に異なる画像として撮像される情報であってもよい。この場合、撮像画像は、パターンマッチング処理等の画像認識処理によって識別され得る。また、装置によって識別可能な情報は、例えば、無線通信を介して提供される情報であってもよい。
【0035】
本実施形態では、複数の識別部30が、2次元コードである場合が示されている。2次元コードは、ドット等によって2次元方向に情報を持たせた識別表示である。かかる識別部30としては、例えば、QRコード(登録商標)が用いられ得る。複数の識別部30は、1次元バーコード等であってもよい。複数の識別部30は、それぞれ異なる識別情報を含む。識別情報は、各端末部28A、28B、28C、28D、28Eを区別する数字、アルファベット等含む。端末部28A、28B、28C、28D、28Eを、機器に接続する順番が決っている場合には、識別情報は、順番情報を含むとよい。識別部30には、端末部28A、28B、28C、28Dの種類情報(車種、オプションの有無に拘らず常に機器に接続されるものか、車種、オプションの有無等に応じて機器に接続されたりされなかったりするものか等)が含まれてもよい。識別部30には、配線部材10の種類(品番情報)等が含まれていてもよい。
【0036】
配線部材10を取扱う際には、人又はロボット等が、コード読取り装置を用いて、上記識別部30を読取ることで、端末部28A、28B、28C、28D、28Eが区別されて認識される。
【0037】
ここでは、識別部30は、例えば、基材の一方面に2次元コードが印刷され、他方面に粘着面が形成されたラベルによって構成される。識別部30は、端末部28A、28B、28C、28D、28Eのうちシート24のいずれか一方の面又はコネクタ23に貼付けられる。識別部30は、シート24に対して電線22の上側から貼付けられてもよい。シート24にカバーが取付けられる場合、識別部30はカバーに貼付けられてもよい。識別部30は、レーザ印刷等によって、コネクタ23、シート24等に直接印刷されてもよい。識別部30は、シート24、コネクタ23の幅方向中央に設けられてもよいし、幅方向一側寄りの位置に設けられてもよい。識別部30の他の例については、後の変形例でも説明される。
【0038】
折畳み形態における複数の識別部30の分布領域E2が、展開形態における複数の識別部30の分布領域E1よりも小さくなるように、複数の識別部30が偏平配線部材20に設けられている。偏平配線部材20が曲げ箇所L1、L2が折曲げられると、端末部28A、28B、28Cと、端末部28D、28Eとは互いに近づく。このため、展開形態における端末部28A、28B、28C、28D、28Eが広がる領域は、折畳み形態における端末部28A、28B、28C、28D、28Eが広がる領域よりも大きい。なお、ここでは、展開形態と折畳み形態との間で、端末部28A、28B、28Cの配置関係は変らない。同様に、端末部28D、28Eの配置関係も変らない。
【0039】
また、ここでは、識別部30は、端末部28A、28B、28C、28D、28Eのうちシート24の端部又はコネクタ23に貼付けられる。図1及び図2では、端末部28A、28Eでは、識別部30はコネクタ23に設けられる。端末部28B、28C、28Dでは、識別部30はシート24の端部に設けられる。このため、展開形態における識別部30の分布領域E1は、折畳み形態における識別部30の分布領域E2よりも広い。なお、分布領域E1、E2は、例えば、複数の識別部30を包摂する最小方形領域であると把握されてもよい。
【0040】
また、折畳み形態において、複数の識別部30が同じ姿勢とされていてもよい。図2に示す例では、折畳み形態において、複数の識別部30が同じ姿勢とされている。このため、複数の識別部30を同時に撮像した場合において、複数の識別部30が揃った向きで観察される。折畳み形態において複数の識別部30が同じ姿勢となるように、展開形態における識別部30の姿勢が決定されている。
【0041】
また、折畳み形態において、複数の識別部30が同じ面側から観察可能な位置に設けられていてもよい。図2に示す例では、折畳み形態において、複数の識別部30が折られた側の面側から観察可能な位置に設けられている。ここで、折畳み形態において識別部30が観察される側の面(図2において表面)が観察面であるとする。ここでは、偏平配線部材20の両端部が曲げ箇所L1、L2において1箇所ずつ折られる。このため、端末部28A、28B、28C、28D、28Eに対して、上記観察面側とは反対側の面に識別部が設けられている。
【0042】
本実施形態によると、複数の識別部30が複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eのうちの複数に対応して設けられる。また、偏平配線部材20が折畳まれた形態で、複数の識別部30の分布領域E2が狭くなる。このため、偏平配線部材20が折畳まれた状態で比較的小さい観察領域E2が観察されれば、複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eの認識がなされる。例えば、比較的狭い分布領域E2がカメラで撮像されれば、その撮像画像を利用して複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eの認識がなされ得る。このため、偏平配線部材20の複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eの認識が容易に行われる。
【0043】
偏平配線部材20の複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eの認識が行われれば、例えば、ロボットによる複数の端末部28A、28B、28C、28D、28Eの展開、接続作業等が容易に行われ得る。
【0044】
また、複数の識別部30が、2次元コード等のように、カメラによって相互に異なる画像として撮像可能なマークであれば、撮像画像に対して画像認識処理等がなされることによって、端末部28A、28B、28C、28D、28Eの識別がなされ得る。
【0045】
また、折畳み形態において、複数の識別部30が同じ姿勢となる。このため、折畳み形態において、複数の識別部30を同時に撮影等して、各識別部30を画像処理等によって識別する処理が容易となる。
【0046】
また、折畳み形態において、複数の識別部30が同じ面側から観察される。このため、折畳み形態において、複数の識別部30が同時に容易に観察され得る。
【0047】
また、複数の識別部30が、順番情報を含むと、当該順番情報に従った作業が容易に行われる。例えば、端末部28A、28B、28C、28D、28Eを、折畳み形態から展開する順、機器に接続する作業等が円滑に実施される。
【0048】
[変形例]
上記実施形態を前提とする各種変形例が説明される。
【0049】
図3に示す第1変形例に係る配線部材110では、図2に示される折畳み形態に加えて、さらに端末部28Cが、曲げ箇所L1、L2に対して交差(ここでは直交)する方向の曲げ箇所L3に沿って折曲げられている。このため、端末部28Cに対応する識別部30が、端末部28B等に対応する識別部30に近づく。これにより、複数の識別部30の分布領域がさらに小さくなり、複数の識別部30の識別がより容易に行われる。
【0050】
この場合においても、複数の識別部30が同じ姿勢となることが好ましい。本第1変形例のように、上下方向に折曲げられる端末部28Cが存在する場合には、展開形態において識別部30が上下逆に付され、折曲げられた状態で、識別部が上下方向において他の識別部と同じ姿勢となってもよい。
【0051】
また、第1変形例においても、複数の識別部30が同じ面側から観察されることが好ましい。偏平配線部材20のうち折られず残る部分を基準とすると、端末部28Cは2つの曲げ箇所L1、L3で折曲げられる。この場合、端末部28Cに対応する識別部30については、偏平配線部材20に対して観察面と同じ側で、当該端末部28Cに設けられるとよい。つまり、偏平配線部材のうち折られずに残る部分を基準として、奇数回折られる部分に対しては、偏平配線部材20に対して観察面と反対側に識別部が設けられるとよい。また、偏平配線部材のうち折られずに残る部分を基準として、偶数回折られる部分に対しては、偏平配線部材20に対して観察面と同じ側に識別部が設けられるとよい。
【0052】
図4に示す第2変形例に係る配線部材210では、曲げ箇所L2は、偏平配線部材20の幅方向に対して傾斜する線となっている。このため、偏平配線部材20の幹線部は、自身の幅方向に対して傾斜する曲げ箇所L2に沿って折られている。この場合、幹線部のうち斜めに折られた部分から先の部分は、他の部分に対して斜め姿勢となる。このため、当該斜めに折られた部分が他の部分と重なる領域が少なくなる。よって、幹線部の端部が、他の部分に対してなるべく重なり合わないようによりコンパクトな形態に折られる。これにより、複数の識別部30をなるべく露出させた状態で、偏平配線部材20がより小さく折畳まれる。
【0053】
識別部30は、折られた姿勢に応じて、折畳み形態で、他の識別部30と姿勢が揃うように、偏平配線部材20に設けられることが好ましい。
【0054】
第2変形例において、偏平配線部材20のうち他の部分が折重ねられる中間部分がベース部分20Bであるとする。図5に示す第3変形例に係る配線部材310のように、ベース部分20B上にベース識別部30Bが設けられていてもよい。ベース識別部30Bは、端末部ではなく、ベース部分20Bであることを示すマークである。
【0055】
上記ベース部分20Bが存在する場合、折畳み形態の配線部材10がそのまま車両における組付対象箇所に移載され、組付対象箇所上で展開されてもよい。この場合、ベース部分20Bが組付対象箇所における所定位置に載置されるとよい。この作業を考慮すると、ベース部分20Bがベース識別部30Bによって認識されると、当該ベース部分20Bが組付対象箇所における所定位置上に位置するように、折畳み形態の配線部材10が組付対象箇所に容易に移載され得る。また、ベース部分20Bが基準とされた状態で、他の部分の展開作業等が容易に行われ得る。
【0056】
図6に示す第4変形例に係る配線部材410では、識別部30に対応する識別部430は、人が異なるものとして認識可能な情報、ここでは、異なる数字が付されたラベルである。数字は、端末部28A、28B、28C、28D、28Eの作業順を表すものであってもよい。
【0057】
本変形例によると、人が作業する場合に、端末部28A、28B、28C、28D、28Eが識別部430によって容易に識別され得る。
【0058】
この識別部30は、カメラによって撮像されてもよい。この場合、画像処理装置等のコンピュータが、撮像画像に対してパターンマッチング処理等を行って、端末部28A、28B、28C、28D、28Eの認識を行ってもよい。
【0059】
複数の識別部430は、色が付された粘着テープであってもよい。例えば、それぞれの識別部430において、粘着テープの色、大きさ及び貼付け数の少なくとも1つが異なれば、端末部28A、28B、28C、28D、28Eを識別するための識別部430として使用され得る。粘着テープの色及び大きさが異なっていれば、人によっても、画像処理装置によっても、識別部430によって端末部28A、28B、28C、28D、28Eを識別することが可能である。
【0060】
図7に示す第5変形例に係る配線部材510では、識別部30に対応する識別部530は、識別情報を記憶し、当該識別情報を無線送信可能な無線通信装置である。無線通信装置として、無線タグ等と呼ばれるものが用いられてもよい。無線通信装置は、電子チップとして構成されていてもよい。かかる識別部530は、例えば、図8に示すように、記憶部534と、送受信回路532と、制御部533とを備える。記憶部534は、端末部に関する識別情報を記憶している。送受信回路532は、アンテナ531を通じて無線信号を送受信する。制御部533は、予め記憶されたプログラムに従って記憶部534、送受信回路532を制御するプロセッサを含む。そして、制御部533は、外部からの指令に従って、記憶部534に記憶された識別情報を、送受信回路532及びアンテナ531を通じて外部に送信する。これにより、外部の読取装置において、識別部530似記憶された識別情報を読取ることができる。
【0061】
例えば、作業者又はロボットは、読取り装置を各端末部28A、28B、28C、28D、28E近くに移動させることで、それぞれの識別部530の識別情報を読込んで、各端末部28A、28B、28C、28D、28Eを識別することができる。本変形例では、識別部530は外部から観察可能に露出している必要は無い。
【0062】
図9に示す第6変形例に係る配線部材610では、識別部30に対応する識別部630は、端末部28A、28B、28C、28D、28Eの縁形状によって提供される一種のマークである。すなわち、端末部28A、28B、28C、28D、28Eのシート24の形状が相互に異なる形状に形成されている。シート24の縁は、曲線によって構成されていてもよいし、直線によって形成されていてもよい。例えば、曲線の曲率半径、大きさ等が変更されることで、相互に異なる形状の識別部630が形成される。
【0063】
この場合、端末部28A、28B、28C、28D、28Eの縁形状によって構成される識別部630によって、端末部28A、28B、28C、28D、28Eが識別される。人は、端末部28A、28B、28C、28D、28Eの縁形状を観察することによって、端末部28A、28B、28C、28D、28Eを識別することができる。また、画像処理装置が、上記縁形状を撮像して、画像処理等を行うことによっても、端末部28A、28B、28C、28D、28Eが識別され得る。
【0064】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせられ得る。例えば、識別部において、コンピュータ等によって識別可能な2次元コードと、数字とが両方印刷されていてもよい。また、識別部において、カメラによって撮像可能なマークと無線通信装置とが併用されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 配線部材
20 偏平配線部材
20B ベース部分
22 電線
23 コネクタ
24 シート
28A、28B、28C、28D、28E 端末部
30B ベース識別部
110、210、310、410、510、610 配線部材
430、530、630 識別部
531 アンテナ
532 送受信回路
533 制御部
534 記憶部
E1 分布領域
E2 分布領域
L1、L2、L3 曲げ箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9