(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】織機の緯糸検出装置
(51)【国際特許分類】
D03D 51/34 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
D03D51/34 101
(21)【出願番号】P 2019109980
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】八木 大輔
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251941(JP,A)
【文献】特開昭57-005947(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022582(WO,A1)
【文献】特開平4-241149(JP,A)
【文献】特開平06-212535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 51/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯入れされる緯糸の到達を検出する、織機の緯糸検出装置において、
緯入れ方向に沿って緯入れされる緯糸と対向するように配置されるレンズと、
前記レンズを通して前記緯糸に光を照射する発光素子と、
前記発光素子から照射された光
が前記緯糸に当たって反射する反射光を前記レンズを通して受光する
とともに、前記緯入れ方向で前記発光素子と並設された受光素子と、
を備え、
前記レンズは、前記レンズの厚み方向において一方に位置し前記緯糸と対向するレンズ面と、前記レンズの厚み方向において他方に位置し前記発光素子及び前記受光素子と対向するレンズ面とを有し、
前記レンズは、前記緯糸と対向する側のレンズ面が凸面であり、かつ、前記緯入れ方向における前記レンズ面の曲率が
水平方向と直交する方向における前記レンズ面の曲率よりも大きい、シリンドリカルレンズによって構成されている
ことを特徴とする織機の緯糸検出装置。
【請求項2】
前記レンズの前記レンズ面は、前記緯入れ方向にのみ曲率をもつ
請求項1に記載の織機の緯糸検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の緯糸検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、杼を使用せずに緯入れをする織機には、緯糸の到達を検出する緯糸検出装置が設けられている。緯糸検出装置は、緯糸が正常に緯入れされたどうかを確認するために用いられる。緯糸検出装置には、発光素子と受光素子とレンズとを備える光学式の緯糸検出装置がある。光学式の緯糸検出装置では、発光素子で発光した光をレンズを通して筬の通路内に照射し、その光を受光素子で受光する。その際、筬の通路内を飛走する緯糸の終端部が緯糸検出装置の検出位置(光の照射位置)を通過すると、受光素子の受光量が変化し、この受光量の変化に応じて受光素子が出力する出力信号のレベルが変化する。このため、受光素子の出力信号の変化に基づいて、緯糸の到達を検出することができる。
【0003】
一般に、緯糸検出装置のレンズには球面レンズが用いられている。この球面レンズは、2つのレンズ面を有し、一方のレンズ面が一定の曲率をもつ球面に形成され、他方のレンズ面が曲率をもたない平面に形成されている。この種の球面レンズは、平凸球面レンズとも呼ばれる。この平凸球面レンズを有する緯糸検出装置においては、発光素子が発光する光が水平方向および垂直方向の両方で均一に絞られる。また、平凸球面レンズの曲率が大きいほど光が強く絞られ、その分だけ緯糸検出装置の検出範囲が狭くなる。
【0004】
これに対し、筬の通路は凹状に形成され、この凹状の通路が水平方向に延在する。また、緯糸は筬の通路に沿って水平方向(筬の長手方向)に飛走する。その場合、飛走中の緯糸の位置は筬の通路内で変動する。また、水平方向における緯糸検出装置の両側近傍には経糸や捨て耳が存在する。反射型の緯糸検出装置では、経糸や捨て糸からの反射光が受光素子に入射すると、緯糸の誤検出が発生しやすくなる。このため、緯糸検出装置の検出範囲は、水平方向では経糸や捨て耳が検出範囲に入らないように狭く設定する方が好ましく、それと直交する垂直方向(筬の短手方向)では筬の通路全体が検出範囲に入るように広く設定する方が好ましい。
【0005】
しかしながら、平凸球面レンズを用いた緯糸検出装置では、たとえば、垂直方向の断面で見たときに筬の通路全体が検出範囲に入るようにレンズの曲率を小さく設定すると、経糸や捨て糸が検出範囲に入り込んで緯糸の誤検出が発生しやすくなる。また、緯糸の誤検出を抑制するためにレンズの曲率を大きく設定すると、筬の通路の一部が検出範囲から外れて緯糸を確実に検出できなくなるおそれがある。
【0006】
一方で、レンズを有する光学式の緯糸検出装置として特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の緯糸検出装置ではシリンドリカルレンズを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の緯糸検出装置においては、シリンドリカルレンズの凸面が、緯入れ方向と直交する方向に曲率をもっている。このため、発光素子で発光した光をシリンドリカルレンズを通して筬の通路に照射した場合、発光素子の光は、垂直方向では絞られて筬の通路全体を検出範囲に収めることが難しくなり、水平方向では絞られずに経糸や捨て糸が検出範囲に入り込んで緯糸の誤検出が発生しやすくなる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、緯糸の誤検出を抑制することができると共に、筬の通路を飛走する緯糸を確実に検出することができる織機の緯糸検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、緯入れされる緯糸の到達を検出する、織機の緯糸検出装置において、緯入れ方向に沿って緯入れされる緯糸と対向するように配置されるレンズと、レンズを通して緯糸に光を照射する発光素子と、発光素子から照射された光が緯糸に当たって反射する反射光をレンズを通して受光するとともに、緯入れ方向で発光素子と並設された受光素子と、を備え、レンズは、レンズの厚み方向において一方に位置し緯糸と対向するレンズ面と、レンズの厚み方向において他方に位置し発光素子及び受光素子と対向するレンズ面とを有し、レンズは、緯糸と対向する側のレンズ面が凸面であり、かつ、緯入れ方向におけるレンズ面の曲率が水平方向と直交する方向におけるレンズ面の曲率よりも大きい、シリンドリカルレンズによって構成されている。
【0011】
また、本発明に係る織機の緯糸検出装置において、レンズのレンズ面は、緯入れ方向にのみ曲率をもつものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、緯糸の誤検出を抑制することができると共に、筬の通路を飛走する緯糸を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る緯糸検出装置を含む織機の要部を示す横断面概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る緯糸検出装置を含む織機の要部を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る緯糸検出装置を含む織機の要部を示す横断面概略図である。また、
図2は、本発明の実施形態に係る緯糸検出装置を含む織機の要部を示す断面概略図である。本発明が適用される織機は、杼を使用せずに緯入れをする織機、すなわち無杼織機である。無杼織機には、レピア織機、グリッパー織機、エアジェット織機、ウォータジェット織機があるが、本実施形態ではエアジェット織機を例に挙げて説明する。
【0015】
図1および
図2において、緯糸検出装置11は、筬12と共に、スレイ13に取り付けられている。筬12およびスレイ13は、いずれも、緯入れ方向Yに長い長尺状の部材である。緯入れ方向Yは、図示しない緯糸を緯入れするときに緯糸が移動する方向である。エアジェット織機では、図示しないメインノズルやサブノズルから噴射される空気の流れによって緯糸が緯入れ方向Yに飛走する。
【0016】
図2に示すように、筬12には緯入れ用の通路15が形成されている。通路15は、緯入れ方向Yから見て凹状に形成されている。エアジェット織機では筬12の通路15に沿って緯糸が緯入れ方向Yに移動(飛走)する。
【0017】
緯糸検出装置11は、緯入れされる緯糸の到達を検出するもので、緯入れ方向Yの終端側に配置される。緯入れ方向Yの終端側とは、メインノズルが配置される緯入れ方向Yの始端側とは反対側をいう。筬12の長手方向において、緯糸検出装置11の一方側(
図1の左側)には経糸17が近接して配置され、緯糸検出装置11の他方側(
図1の右側)には捨て耳18が近接して配置されている。
【0018】
緯糸検出装置11は、緯糸検出用の光を発光する発光素子21と、緯入れ方向Yで発光素子21と並設された受光素子22と、発光素子21および受光素子22の前部に設けられたレンズ23とを備えている。発光素子21および受光素子22は、緯糸検出装置11の本体20内に配置されている。本実施形態においては、一例として、発光素子21がLED(Light Emitting Diode)によって構成され、受光素子22はPD(Photo Diode)によって構成されている。発光素子21の発光面はレンズ23に対向して配置され、受光素子22の受光面もレンズ23に対向して配置されている。
【0019】
レンズ23は、筬12の通路15に案内されて緯入れ方向Yに緯入れされる緯糸(図示せず)と対向するように緯糸検出装置11の本体20に取り付けられている。レンズ23は、シリンドリカルレンズによって構成されている。より具体的に説明すると、レンズ23は、レンズ厚み方向の一方に位置するレンズ面25と、他方に位置するレンズ面26とを有する。レンズ面25は、所定の曲率をもつ凸面となっており、レンズ面26は、いずれの方向にも曲率をもたない平面となっている。このような構成のレンズ23は、一方のレンズ面25が凸面、他方のレンズ面26が平面になっていることから、平凸のシリンドリカルレンズとも呼ばれる。レンズ面25の曲率は方向によって異なる。具体的には、緯入れ方向Yにおけるレンズ面25の曲率は、筬12の短手方向Zにおけるレンズ25の曲率よりも大きく設定されている。筬12の短手方向Zは、緯入れ方向Yと直交する方向に相当する。本実施形態において、レンズ面25は、緯入れ方向Yにのみ曲率をもつ凸面(円筒状の面)となっている。すなわち、レンズ23は、緯入れ方向Yにのみ曲率をもつシリンドリカルレンズによって構成されている。レンズ23の厚み方向において、レンズ面25は、筬12の通路15と対向する側に配置され、レンズ面26は、発光素子21および受光素子22と対向する側に配置されている。
【0020】
上記構成からなるエアジェット織機においては、緯糸検出装置11の発光素子21から放射された光がレンズ23によって集光されて筬12の通路15に照射される。この状態で筬12の通路15の光照射位置を緯糸の先端が通過すると、緯糸に光が当たって反射する。この反射光はレンズ23を通して受光素子22に受光される。これにより、受光素子22の受光量は、通路15の光照射位置を緯糸の先端が通過する前と通過した後で変化する。すなわち、受光素子22の受光量は、通路15の光照射位置を緯糸の先端が通過する瞬間に大きく変化する。したがって、緯糸検出装置11においては、受光素子22の受光量の変化に基づいて、緯糸の到達を検出することができる。
【0021】
また、本実施形態においては、レンズ23の構成として、緯入れ方向Yにおけるレンズ面25の曲率が、筬12の短手方向Zにおけるレンズ面25の曲率よりも大きく設定されている。このため、緯糸検出装置11の発光素子21からレンズ23を通して筬12の通路15に光を照射した場合に、この光の束は、緯入れ方向Yでは強く絞られ、筬12の短手方向Zではあまり絞られない。これにより、
図1および
図2に示すように、緯糸検出装置11の検出範囲28は、筬12の短手方向Zでは広く確保され、緯入れ方向Yでは狭く絞られる。
【0022】
また、本実施形態においては、緯糸検出装置11のレンズ23が緯入れ方向Yにのみ曲率をもつシリンドリカルレンズによって構成されている。このため、緯糸検出装置11の発光素子21からレンズ23を通して筬12の通路15に光を照射した場合に、この光の束は、緯入れ方向Yと直交する筬12の短手方向Zでは絞られず、筬12の長手方向に沿う緯入れ方向Yでのみ絞られる。これにより、緯糸検出装置11の検出範囲28は、筬12の短手方向Zではより広く確保され、緯入れ方向Yではより狭く絞られる。
【0023】
したがって、筬12の通路15全体を緯糸検出装置11の検出範囲28に収めたうえで、経糸17や捨て耳18を検出範囲28から外すことができる。その結果、経糸17や捨て耳18からの反射光に起因した緯糸の誤検出を抑制することができる。また、筬12の通路15を飛走する緯糸を確実に検出することができる。また、筬12の長手方向(緯入れ方向Yと平行な方向)において、発光素子21から放射される光の広がりをレンズ23によって抑制することにより、発光素子21が発した光を受光素子22に効率良く受光させることができる。これにより、受光素子22の受光量を増やして受光素子22の出力信号強度を向上させることができる。
【0024】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0025】
たとえば、上記実施形態においては、
図1に示すように、緯入れ方向Yにおけるレンズ面25の曲率が左右対称になっているが、本発明はこれに限らず、レンズ面25の曲率が左右非対称になっていてもよい。
【0026】
また、上記実施形態においては、発光素子21と受光素子22とが緯入れ方向Yに並んだ構成としたが、本発明はこれに限らず、発光素子21と受光素子22とが緯入れ方向Yと直交する方向、すなわち縦方向に配列された構成であってもよい。
【0027】
また、上記実施形態においては、反射型の緯糸検出装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、透過型の緯糸検出装置にも適用可能である。
【0028】
また、本発明に係る織機の緯糸検出装置は、織幅の終端部に配置される緯糸検出装置(フィーラ)のほか、織幅内に配置される緯糸検出装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
11 緯糸検出装置、12 筬、21 発光素子、22 受光素子、23 レンズ、25 レンズ面(凸面)、Y 緯入れ方向、Z 筬の短手方向。