(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】電源回路及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/145 20060101AFI20230214BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H02M3/145 C
H02M3/155 W
H02M3/155 P
(21)【出願番号】P 2019111366
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】若山 大樹
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123008(WO,A1)
【文献】特開平8-228473(JP,A)
【文献】特開2004-229369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/145
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のPWM信号を出力するコントローラと、
複数のコンバータと、
エラー出力回路とを備え、
前記複数のコンバータは、それぞれ、前記複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有し、
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、前記複数のコンバータのうち両出力波形のデューティ比が一致しないコンバータがある場合、エラーを出力する、電源回路。
【請求項2】
前記エラー出力回路は、前記コントローラと前記スイッチング回路との間の信号配線と、前記スイッチング回路と前記インダクタとの間の電流配線とをモニタすることによって、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較する、請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とが入力されるカウンタを有し、前記エラーを前記カウンタから出力する、請求項1又は2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記エラーが出力された場合、複数の前記スイッチング回路の動作を停止させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項5】
前記エラーが出力された場合、複数の前記スイッチング回路の電源電圧を遮断する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項6】
PWM信号を出力するコントローラと、
前記PWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、
前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタと、
前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、両出力波形のデューティ比が一致しない場合、エラーを出力するエラー出力回路とを備える、電源回路。
【請求項7】
負荷と、
複数のPWM信号を出力するコントローラと、
前記負荷に電力を供給する複数のコンバータと、
エラー出力回路とを備え、
前記複数のコンバータは、それぞれ、前記複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有し、
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、前記複数のコンバータのうち両出力波形のデューティ比が一致しないコンバータがある場合、エラーを出力する、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源電圧値及び所定電圧値を用いて理論式によりデューティ比を演算する演算手段と、演算手段が演算したデューティ比によりスイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御するデューティ出力部とを備える電源制御装置が知られている。この電源制御装置は、スイッチング素子によりPWM制御された電源電圧のデューティ比を算出する算出部と、算出部が算出したデューティ比を演算手段が演算したデューティ比と比較し、その比較結果をデューティ比補正手段に与える比較手段とを備える。デューティ出力部は、デューティ比補正手段がその比較結果に基づき求めた補正値を用いて、演算手段が演算したデューティ比を補正し、補正したデューティ比により、スイッチング素子をPWM制御する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PWM制御で動作する電源回路として、PWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、そのスイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを備える電源回路がある。しかしながら、従来の技術では、スイッチング回路とインダクタとの間の接続不良(例えば、インダクタの半田の浮きなど)が生じても、当該接続不良を検出することが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、PWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路とそのスイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとの間の接続不良を検出可能な電源回路及び電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
複数のPWM信号を出力するコントローラと、
複数のコンバータと、
エラー出力回路とを備え、
前記複数のコンバータは、それぞれ、前記複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有し、
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、前記複数のコンバータのうち両出力波形のデューティ比が一致しないコンバータがある場合、エラーを出力する、電源回路を提供する。
【0007】
また、本開示は、
PWM信号を出力するコントローラと、
前記PWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、
前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタと、
前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、両出力波形のデューティ比が一致しない場合、エラーを出力するエラー出力回路とを備える、電源回路を提供する。
【0008】
また、本開示は、
負荷と、
複数のPWM信号を出力するコントローラと、
前記負荷に電力を供給する複数のコンバータと、
エラー出力回路とを備え、
前記複数のコンバータは、それぞれ、前記複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有し、
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、前記複数のコンバータのうち両出力波形のデューティ比が一致しないコンバータがある場合、エラーを出力する、電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、PWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路とそのスイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとの間の接続不良を検出可能な電源回路及び電子装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一比較形態における電源回路の構成例を示す図である。
【
図2】電源回路の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図3】一実施形態における電源回路を備える電子装置の構成例を示す図である。
【
図5】PWM信号の出力波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】通常時の動作波形を示すタイミングチャートである。
【
図7】異常時の動作波形を示すタイミングチャートである。
【
図8】一実施形態における電源回路を備える電子装置の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、本開示に係る一実施形態における電源回路と比較するため、一比較形態における電源回路について説明する。
【0012】
図1は、一比較形態における電源回路の構成例を示す図である。
図1に示す電源回路100は、複数のPWM信号を出力するコントローラ170と、負荷160に出力電圧Voutの電力を供給する複数のコンバータ151~154とを備える。複数のコンバータ151~154は、それぞれ、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、そのスイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有する。
【0013】
コンバータ151は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM1に従ってスイッチングするスイッチング回路111と、そのスイッチング回路111の出力波形が入力されるインダクタ121とを有する。コンバータ152は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM2に従ってスイッチングするスイッチング回路112と、そのスイッチング回路112の出力波形が入力されるインダクタ122とを有する。コンバータ153は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM3に従ってスイッチングするスイッチング回路113と、そのスイッチング回路113の出力波形が入力されるインダクタ123とを有する。コンバータ154は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM4に従ってスイッチングするスイッチング回路114と、そのスイッチング回路114の出力波形が入力されるインダクタ124とを有する。
【0014】
インダクタ121~124の各出力端が互いに接続される電源ラインに、出力電圧Voutが発生する。出力電圧Voutは、コンデンサ161により平滑化される。
【0015】
電源回路100は、並列に接続された複数のコンバータ151~154を備え、複数のコンバータ151~154の各出力位相を互いにずらすことによって、出力電圧Voutのリップルを抑制可能なマルチフェースコンバータである。
【0016】
図2は、電源回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図2に示すように、コントローラ170は、コンバータ151~154の各出力位相が互いにずれるように、スイッチング周期(=1/Fsw)でスイッチング回路111~114を順番に動作させる。出力電圧Voutのリップル周期は、4フェーズの場合、1/(Fsw×4)となる。
【0017】
ここで、
図1において、例えばスイッチング回路111とインダクタ121との間の接続不良(例えば、インダクタ121の半田の浮きなど)が生じると、スイッチング回路111の出力波形はインダクタ121に入力されなくなる。しかしながら、4つのPWM信号は、コントローラ170から出力され続けるため、残りの3つのスイッチング回路112~114のスイッチング動作によって出力電圧Voutを生成する異常な動作が継続してしまう。
【0018】
そこで、
図3に示すように、本開示に係る一実施形態における電源回路101は、スイッチング回路11~14とインダクタ21~24との間の各箇所の接続不良を検出可能なエラー出力回路80を備える。エラー出力回路80は、コンバータ51~54のそれぞれにおいて、PWM信号の出力波形とスイッチング回路の出力波形とを比較し、複数のコンバータ51~54のうち両出力波形のデューティ比が一致しないコンバータがある場合、エラー信号ERを出力する。
【0019】
このようなエラー出力回路80を備えることで、スイッチング回路11~14とインダクタ21~24との間の各箇所のいずれかに接続不良が発生しても、当該接続不良の発生を検出できる。例えばスイッチング回路11とインダクタ21との間の接続不良(例えば、インダクタ21の半田の浮きなど)が生じると、4つのPWM信号はコントローラ70から出力され続けるが、スイッチング回路11の出力波形はインダクタ21に入力されなくなる。その結果、PWM信号の出力波形PWM1とスイッチング回路11の出力波形SW1とのデューティ比は、不一致となる。エラー出力回路80は、PWM信号の出力波形PWM1とスイッチング回路11の出力波形SW1とのデューティ比の不一致を検出すると、スイッチング回路11とインダクタ21との間の接続不良を検出したことを表すエラー信号ERを出力する。つまり、スイッチング回路11とインダクタ21との間の接続不良の発生を検出できる。
【0020】
なお、上掲の特許文献1では、算出部により得られるデューティ比の算出値と演算手段により得られるデューティ比の演算値とを比較するので、算出値と演算値を得るために、高価な演算装置が必要になると考えられる。これに対し、本開示に係る実施形態では、出力波形同士を比較するため、カウンタ等の簡易な回路構成で検出できる。
【0021】
次に、本開示に係る一実施形態における電子装置について、より詳細に説明する。
【0022】
図3に示す電子装置201は、負荷60と、電源回路101とを備える。電子装置201の具体例として、スーパーコンピュータ、サーバ、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置などが挙げられるが、電子装置201は、これらの装置に限られない。
【0023】
負荷60は、電源回路101により生成される直流の出力電圧Voutを電源電圧として動作する。負荷60は、単一の素子でもよいし、複数の素子を含む回路ブロックでもよい。
図3は、負荷60がCPU(Central Processing Unit)の場合を例示する。
【0024】
電源回路101は、出力電圧Voutの直流電力を生成し、負荷60に供給する。電源回路101は、電子装置201に内蔵されてもよいし外付けされてもよい。電源回路101は、並列に接続された複数のコンバータ51~54を備え、上述の
図2のように、複数のコンバータ51~54の各出力位相を互いにずらすことによって、出力電圧Voutのリップルを抑制可能なマルチフェースコンバータである。
【0025】
電源回路101は、複数のPWM信号を出力するコントローラ70と、負荷60に出力電圧Voutの直流電力を供給する複数のコンバータ51~54と、エラー信号ERを出力するエラー出力回路80と、電源電圧VBを遮断する遮断回路90とを備える。
【0026】
コントローラ70は、例えば、出力電圧Voutの設定とスイッチング回路11~14の保護動作の設定とを、PWM信号により指令するデジタルコントローラである。コントローラ70は、ドループの設定、フェーズ数の設定及びスイッチング周波数Fswの設定をPWM信号により指令してもよい。複数のコンバータ51~54の各々のスイッチング回路11~14は、出力電流、出力電圧、温度、異常有無等の各フェーズの動作情報を、PWM信号により、コントローラ70にフィードバックする。
【0027】
複数のコンバータ51~54は、それぞれ、電源電圧VBを出力電圧Voutに降圧するDC-DCコンバータである(DC:Direct Current)。複数のコンバータ51~54は、それぞれ、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、そのスイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有する。コンバータ51~54は、スイッチングレギュレータとも称する。
【0028】
コンバータ51は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM1に従ってスイッチングするスイッチング回路11と、そのスイッチング回路11の出力波形が入力されるインダクタ21とを有する。コンバータ52は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM2に従ってスイッチングするスイッチング回路12と、そのスイッチング回路12の出力波形が入力されるインダクタ22とを有する。コンバータ53は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM3に従ってスイッチングするスイッチング回路13と、そのスイッチング回路13の出力波形が入力されるインダクタ23とを有する。コンバータ54は、複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形PWM4に従ってスイッチングするスイッチング回路14と、そのスイッチング回路14の出力波形が入力されるインダクタ24とを有する。
【0029】
インダクタ21~24の各出力端が互いに接続される電源ラインに、出力電圧Voutが発生する。出力電圧Voutは、コンデンサ61により平滑化される。インダクタ21~24は、例えば、基板に実装される素子であり、その構造の具体例として、カップルドインダクタが挙げられる。インダクタ21~24の各両端は、半田によって基板に取り付けられる。
【0030】
エラー出力回路80は、コントローラ70とスイッチング回路11~14との間の信号配線31~34と、スイッチング回路11~14とインダクタ21~24との間の電流配線41~44とをモニタする。信号配線31~34には、それぞれには、コントローラ70から出力されるPWM信号の出力波形PWM1,PWM2,PWM3,PWM4が通る。電流配線41~44には、それぞれには、スイッチング回路11~14から出力される出力波形SW1,SW2,SW3,SW4が通る。
【0031】
エラー出力回路80は、出力波形PWM1が通る信号配線31と出力波形SW1が通る電流配線41とをモニタすることによって、出力波形PWM1と出力波形SW1とを比較し、両出力波形のデューティ比が不一致と判定した場合、エラー信号ERを出力する。エラー出力回路80は、出力波形PWM2が通る信号配線32と出力波形SW2が通る電流配線42とをモニタすることによって、出力波形PWM2と出力波形SW2とを比較し、両出力波形のデューティ比が不一致と判定した場合、エラー信号ERを出力する。エラー出力回路80は、出力波形PWM3が通る信号配線33と出力波形SW3が通る電流配線43とをモニタすることによって、出力波形PWM3と出力波形SW3とを比較し、両出力波形のデューティ比が不一致と判定した場合、エラー信号ERを出力する。エラー出力回路80は、出力波形PWM4が通る信号配線34と出力波形SW4が通る電流配線44とをモニタすることによって、出力波形PWM4と出力波形SW4とを比較し、両出力波形のデューティ比が不一致と判定した場合、エラー信号ERを出力する。
【0032】
このようなエラー出力回路80を備えることで、スイッチング回路11~14とインダクタ21~24との間の各箇所のいずれかに接続不良が発生しても、当該接続不良の発生を検出できる。エラー出力回路80により検出可能な接続不良の例として、電流配線41~44の断線、インダクタ21~24自体の断線、電流配線41~44に接続されるランドとインダクタ21~24の一方の端部との接続不良(半田の浮き)などがある。
【0033】
電源回路101は、エラー信号ERがエラー出力回路80から出力された場合、複数のスイッチング回路11~14の動作を停止させることが好ましい。これにより、デューティ比の不一致が検出されていない残りのスイッチング回路のスイッチング動作によって出力電圧Voutを生成する異常な動作が継続することを防止できる。
【0034】
例えば、電源回路101は、エラー信号ERがエラー出力回路80から出力された場合、複数のスイッチング回路11~14の電源電圧VBを遮断する遮断回路90を備える。遮断回路90のイネーブル端子ENにエラー信号ERが入力されると、遮断回路90は、電源電圧VBがスイッチング回路11~14の全てに供給されることを遮断する。これにより、スイッチング回路11~14の動作が停止するので、デューティ比の不一致が検出されていない残りのスイッチング回路のスイッチング動作によって出力電圧Voutを生成する異常な動作が継続することを防止できる。遮断回路90は、例えば、電子ヒューズである。
【0035】
なお、エラー信号ERは、コントローラ70に入力されてもよい。コントローラ70は、例えば、エラー信号ERを入力された場合、複数のスイッチング回路11~14の動作を停止させるため、4つ全てのPWM信号の出力を停止してもよい。
【0036】
スイッチング回路11~14は、それぞれ、例えば
図4に示す構成を有する。
図4は、スイッチング回路の構成例を示す図である。
図4には、PWM信号の出力波形PWMに従ってスイッチングするスイッチング回路10と、そのスイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタ20とが示されている。
【0037】
スイッチング回路10は、ハイサイドのトランジスタ15とローサイドのトランジスタ16とが直列に接続される構成と、トランジスタ15,16をスイッチングさせるプリドライバ17とを有する。トランジスタ15,16は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。トランジスタ15は、高電源電位部Vinに接続されるドレインと、トランジスタ16のドレインに接続されるソースと、プリドライバ17に接続されるゲートとを有する。トランジスタ16は、低電源電位部GNDに接続されるソースと、トランジスタ15のソースに接続されるドレインと、プリドライバ17に接続されるゲートとを有する。トランジスタ15のソースとトランジスタ16のドレインとが接続される接続点には、インダクタ20の一端が接続される。インダクタ20の他端には、コンデンサ61の一端と負荷60の電源入力部が接続される。コンデンサ61の他端は、低電源電位部GNDに接続される。高電源電位部Vinと低電源電位部GNDとの間に電源電圧VBが印加される。
【0038】
プリドライバ17は、コントローラ70から出力されるPWM信号の出力波形PWMに従って、トランジスタ15をスイッチングさせるスイッチング信号HSONと、トランジスタ15をスイッチングさせるスイッチング信号LSONとを生成する。トランジスタ15は、スイッチング信号HSONによって印加されるゲート電圧HSGに従ってスイッチングし、トランジスタ16は、スイッチング信号LSONによって印加されるゲート電圧LSGに従ってスイッチングする。
【0039】
トランジスタ15のソースとトランジスタ16のドレインとが接続される接続点から、スイッチング回路10の出力波形SWが出力される。正常時(通常時)、出力波形SWの周期及びデューティ比は、PWM信号の出力波形PWMの周期及びデューティ比と同じである。
【0040】
なお、コントローラ70は、スイッチング信号HSON及びスイッチング信号LSONをPWM信号としてスイッチング回路11~14の各々に対して出力してもよい。つまり、スイッチング信号HSON及びスイッチング信号LSONは、コントローラ70により生成されてもよい。この場合、エラー出力回路80は、コントローラ70から出力されるスイッチング信号HSON及びスイッチング信号LSONの少なくとも一方の出力波形と、スイッチング回路10の出力波形SWとを比較し、両出力波形のデューティ比の不一致を検出してもよい。
【0041】
図5は、PWM信号の出力波形の一例を示すタイミングチャートである。出力波形PWMは、周期的に電圧がハイレベルとローレベルの状態になる。一周期に対するハイレベルの時間の比率をデューティ比という。
図5は、デューティ比が10%の場合を示す。
【0042】
図6は、通常時の動作波形を示すタイミングチャートである。コントローラ70は、PWM信号による指令値を送信し、スイッチング回路11~14は、それぞれ、PWM信号の出力波形PWMに従って、出力波形SWのデューティ比が出力波形PWMと同じデューティ比になるように、スイッチング動作する。デューティ比Aは、(出力電圧Vout/電源電圧VB)×100[%]で表される。
【0043】
スイッチング回路11~14の各々のプリドライバ17(
図4参照)は、出力波形PWMが入力されると、デッドタイムDT_ON,DT_OFFが生じるようにスイッチング信号HSON,LSONを生成する。プリドライバ17は、ハイサイドのトランジスタ15とローサイドのトランジスタ16を交互にオン/オフさせる。
【0044】
ハイサイドのトランジスタ15は、スイッチング信号HSONの立ち上がりに対して遅延時間tdT後にゲート電圧HSGが立ち上がることによってターンオンする。その後、トランジスタ15は、スイッチング信号HSONの立ち下がりに対して遅延時間tdT後にゲート電圧HSGが立ち下がることによってターンオフする。一方、ローサイドのトランジスタ16は、スイッチング信号LSONの立ち下がりに対して遅延時間tdT後にゲート電圧LSGが立ち下がることによってターンオフする。その後、トランジスタ16は、スイッチング信号LSONの立ち上がりに対して遅延時間tdT後にゲート電圧LSGが立ち上がることによってターンオンする。
【0045】
スイッチング回路11~14の各々がこのようにスイッチング動作することによって、デューティ比Aの出力波形SWがスイッチング回路11~14の各々から出力される。
【0046】
図7は、異常時の動作波形を示すタイミングチャートである。スイッチング回路11~14とインダクタ21~24との間の各箇所のいずれかに接続不良が生じると、接続不良箇所における出力波形SWのデューティ比が零になる。これにより、エラー出力回路80は、出力波形PWMと出力波形SWとのデューティ比の不一致を検出するので、エラー信号ERを出力する。エラー信号ERが遮断回路90のイネーブル端子ENに入力されると、スイッチング回路11~14に対する電源電圧VBの印加が遮断回路90により遮断される。
【0047】
図8は、一実施形態における電源回路を備える電子装置の具体例を示す図である。
図8において、電子装置201A及び電源回路101Aは、それぞれ、上述の電子装置201及び電源回路101のより具体的な例である。コントローラ70は、PMBUS(Power Management Bus)及びSVID(Serial Voltage Identification)に接続されるデジタルコントローラである。
【0048】
電源回路101Aは、上述の構成の他に、PSU(Power Supply Unit)91及びマイコン92とを有する。
【0049】
PSU91は、例えば、外部から入力される交流又は直流の入力電圧を直流の電源電圧VBに変換する装置である。マイコン92は、通常時、遮断回路90のイネーブル端子ENに対して、ハイレベル(H)のアクティブ信号を出力する汎用端子GPIOを有する。マイコン92の汎用端子GPIOから遮断回路90のイネーブル端子ENにアクティブ信号が入力されることで、PSU91により生成される電源電圧VBがスイッチング回路11~14に供給されることが許可される。マイコン92は、電源回路101Aの外部回路でもよい。
【0050】
エラー出力回路80は、カウンタ81~84を有する。カウンタ81には、出力波形PWM1及び出力波形SW1が入力される。カウンタ82には、出力波形PWM2及び出力波形SW2が入力される。カウンタ83には、出力波形PWM3及び出力波形SW3が入力される。カウンタ84には、出力波形PWM4及び出力波形SW4が入力される。カウンタ81~84の各出力信号の論理和が、エラー信号ERとして出力される。
【0051】
例えば、スイッチング回路11とインダクタ21との間の接続不良が発生すると、出力波形PWM1と出力波形SW1との間でデューティ比の不一致がカウンタ81により検出されるので、カウンタ81から出力される信号がハイレベルHからローレベルLになる。これにより、エラー出力回路80から出力されるローレベルのエラー信号ERがイネーブル端子ENに入力される。その結果、マイコン92の汎用端子GPIOからアクティブ信号が出力されているか否かにかかわらず、スイッチング回路11~14に対する電源電圧VBの供給を遮断回路90によって遮断できる。
【0052】
図9は、異常検出時の動作例を示す図である。カウンタ81~84として、例えば、2進4ビット同期式カウンタが使用される。カウンタ81には、PWM信号の出力波形PWM1がクロック信号CLKとしてインバータ81aを介して入力されるとともに、スイッチング回路11の出力波形SW1が入力信号Aとして入力される。カウンタ81は、出力波形PWM1と出力波形SW1との間でデューティ比が異なると、ローレベルの出力信号Q
Aをエラー信号ERとして出力する。
【0053】
他のカウンタ82~84も、カウンタ81と同じ入出力構成を有する。カウンタ82には、PWM信号の出力波形PWM2がクロック信号CLKとしてインバータ82aを介して入力されるとともに、スイッチング回路12の出力波形SW2が入力信号Aとして入力される。カウンタ83には、PWM信号の出力波形PWM3がクロック信号CLKとしてインバータ83aを介して入力されるとともに、スイッチング回路13の出力波形SW3が入力信号Aとして入力される。カウンタ84には、PWM信号の出力波形PWM4がクロック信号CLKとしてインバータ84aを介して入力されるとともに、スイッチング回路14の出力波形SW4が入力信号Aとして入力される。
【0054】
以上、電源回路及び電子装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0055】
例えば、コンバータの個数は、4以外の数でもよい。例えば、
図3の構成において、並列接続されたコンバータの個数は、2以上の数でもよい。また、コンバータの個数は、1でもよい。
【0056】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
複数のPWM信号を出力するコントローラと、
複数のコンバータと、
エラー出力回路とを備え、
前記複数のコンバータは、それぞれ、前記複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有し、
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、前記複数のコンバータのうち両出力波形のデューティ比が一致しないコンバータがある場合、エラーを出力する、電源回路。
(付記2)
前記エラー出力回路は、前記コントローラと前記スイッチング回路との間の信号配線と、前記スイッチング回路と前記インダクタとの間の電流配線とをモニタすることによって、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較する、付記1に記載の電源回路。
(付記3)
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とが入力されるカウンタを有し、前記エラーを前記カウンタから出力する、付記1又は2に記載の電源回路。
(付記4)
前記エラーが出力された場合、複数の前記スイッチング回路の動作を停止させる、付記1から3のいずれか一項に記載の電源回路。
(付記5)
前記エラーが出力された場合、複数の前記スイッチング回路の電源電圧を遮断する、付記1から4のいずれか一項に記載の電源回路。
(付記6)
前記エラーの入力によって、前記電源電圧を遮断する電子ヒューズを備える、付記5に記載の電源回路。
(付記7)
PWM信号を出力するコントローラと、
前記PWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、
前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタと、
前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、両出力波形のデューティ比が一致しない場合、エラーを出力するエラー出力回路とを備える、電源回路。
(付記8)
負荷と、
複数のPWM信号を出力するコントローラと、
複数のコンバータと、
エラー出力回路とを備え、
前記複数のコンバータは、それぞれ、前記複数のPWM信号のうち対応するPWM信号の出力波形に従ってスイッチングするスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力波形が入力されるインダクタとを有し、
前記エラー出力回路は、前記PWM信号の出力波形と前記スイッチング回路の出力波形とを比較し、前記複数のコンバータのうち両出力波形のデューティ比が一致しないコンバータがある場合、エラーを出力する、電子装置。
【符号の説明】
【0057】
10~14 スイッチング回路
15,16 トランジスタ
20~24 インダクタ
31~34 信号配線
41~44 電流配線
51~54 コンバータ
60 負荷
70 コントローラ
80 エラー出力回路
81~84 カウンタ
90 遮断回路
91 PSU
92 マイコン
100,101,101A 電源回路
201,201A 電子装置