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特許7226140情報処理装置、磁界シミュレータ方法および磁界シミュレータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、磁界シミュレータ方法および磁界シミュレータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20230214BHJP
【FI】
G06F30/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019120849
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006955
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 香壱
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-083764(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114492(WO,A1)
【文献】特開2016-051376(JP,A)
【文献】特開2008-122210(JP,A)
【文献】米国特許第7502723(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/20 - 30/28
G01R 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体のヒステリシスに関するメジャーループのデータと、前記磁性体の初期磁化曲線のデータと、前記ヒステリシスに関するマイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを入力する入力部と、
前記入力部によって入力された前記メジャーループのデータと、前記初期磁化曲線と、前記マイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを用いて、複数の前記マイナーループのデータを生成する生成部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記生成部は、
生成しようとする前記マイナーループの最大の磁束密度に対応する初期磁化曲線上の点を前記マイナーループの正の領域の頂点とし、前記メジャーループのデータを用いて前記マイナーループのベース曲線を生成し、前記関係を用いて、生成した前記マイナーループのベース曲線で囲まれる閉領域の面積が前記マイナーループの最大の磁束密度で対応付けられる面積となるように前記マイナーループのデータを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、
磁束密度が正の領域で、生成しようとする前記マイナーループの所定の最大の磁束密度の指定を受けて、前記初期磁化曲線の前記磁束密度に対応する第1の点と、前記メジャーループの前記磁束密度に対応する第2の点とを求め、前記メジャーループにおける前記第2の点と前記磁束密度が零を示す点とを繋ぐ曲線を前記第2の点から前記第1の点の方向へ平行移動して前記マイナーループの第1のベース曲線を生成する第1の生成部と、
さらに、前記第1のベース曲線の前記磁束密度が零となる点の磁界の値を反転させた第3の点と、前記メジャーループにおける当該第3の点の磁界の値に対応する第4の点とを求め、前記メジャーループにおける前記第4の点と前記第1の点の磁界の値に対応する点とを繋ぐ曲線を前記第4の点から前記第3の点の方向へ平行移動し、平行移動した結果の端点を前記第1の点と一致させるように調整して前記マイナーループの第2のベース曲線を生成する第2の生成部と、
前記第1のベース曲線および前記第2のベース曲線を、原点を中心に点対称に180°回転させて、前記磁束密度が負の領域の第3のベース曲線を生成する第3の生成部と、
前記関係を用いて、前記第1のベース曲線、前記第2のベース曲線および前記第3のベース曲線から得られる閉領域の面積が前記所定の最大の磁束密度に対応する面積になるようにそれぞれの曲線を調整する調整部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記メジャーループの最大の磁束密度を、生成しようとする前記マイナーループの数に1を加えた値で割ることで、生成しようとする前記マイナーループの前記磁束密度の刻み幅を算出し、前記刻み幅を整数倍して得られる前記マイナーループの所定の最大の磁束密度を算出する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
磁性体のヒステリシスに関するメジャーループのデータと、前記磁性体の初期磁化曲線のデータと、前記ヒステリシスに関するマイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを入力し、
入力した前記メジャーループのデータと、前記初期磁化曲線と、前記マイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを用いて、前記マイナーループのデータを生成する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする磁界シミュレータ方法。
【請求項6】
磁性体のヒステリシスに関するメジャーループのデータと、前記磁性体の初期磁化曲線のデータと、前記ヒステリシスに関するマイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを入力し、
入力した前記メジャーループのデータと、前記初期磁化曲線と、前記マイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを用いて、前記マイナーループのデータを生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする磁界シミュレータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、磁界シミュレータ方法および磁界シミュレータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
有限要素法を用いた磁場解析の技術が存在する。ここでいう有限要素法とは、解析対象となる磁性体をコンピュータ上でメッシュに分割し、メッシュの点や辺に配置される未知数に対して磁場の物理を支配する方程式を作成し、解析対象全体の連立方程式を解いて解を求める計算手法である。
【0003】
有限要素法を用いて磁気的な損失を計算するためには、種々のメッシュに磁気的なヒステリシス(磁気ヒステリシス)を考慮した計算が必要である。磁気ヒステリシスを考慮するための計算手法には、数学的モデルに分類されるプレイモデルと呼ばれる手法がある。プレイモデルは、ヒステロンと呼ばれる入力に対して出力が遅れる複数のオペレータを用いて実測のBH曲線を表現するモデルである。BH曲線は、一本の線にならず、ある面積を囲む閉曲線となる。プレイモデルは、かかるBH曲線を用いて、有限要素法を用いた磁気的な損失を計算する。すなわち、実測のBH曲線を表現するプレイモデルには、外側のメジャーループと、メジャーループの内側の複数のマイナーループの情報を入力する必要がある。なお、実測のBH曲線は、磁気ヒステリシス曲線ともいう。
【0004】
図16は、BH曲線(磁気ヒステリシス曲線)の参考例を示す図である。図16に示すように、プレイモデルにより表現される実測のBH曲線が表わされている。実測のBH曲線には、外側の1つのメジャーループと、内側の3つのマイナーループとのグラフが表わされている。
【0005】
なお、一般に、磁性体のメジャーループのデータは、磁性体のメーカーから提供されることが多いが、マイナーループのデータがメーカーから提供されるケースは極めて少ないことが知られている。プレイモデルで磁気特性を計算するためには、メジャーループと複数のマイナーループが必要であるため、マイナーループのデータは、実験で測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/154672号
【文献】国際公開第2010/038799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プレイモデルにより磁性特性を計算するためには、メジャーループと複数のマイナーループが必要であるが、マイナーループのデータを取得するには工数がかかるという問題がある。
【0008】
一般に、メジャーループのデータは、メーカーから提供されることが多いが、マイナーループのデータがメーカーから提供されるケースは極めて少ないことが知られている。すなわち、マイナーループのデータをメーカーから取得できないことが多い。そこで、マイナーループのデータを実験で測定することが必要であるが、実験で測定するには、測定装置が必要である。また、実験で測定するには、人手による作業工数および測定による工数がかかる。
【0009】
本発明は、1つの側面では、磁性特性を計算するために必要なマイナーループを、コンピュータを用いて計算することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の案では、情報処理装置は、磁性体のヒステリシスに関するメジャーループのデータと、前記磁性体の初期磁化曲線のデータと、前記ヒステリシスに関するマイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを入力する入力部と、前記入力部によって入力された前記メジャーループのデータと、前記初期磁化曲線と、前記マイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられる前記マイナーループの面積の関係とを用いて、複数の前記マイナーループのデータを生成する生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
1実施態様によれば、磁性特性を計算するために必要なマイナーループの取得に要する工数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例に係る情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、実測のBH曲線の一例を示す図である。
図3図3は、Bm-W曲線の一例を示す図である。
図4図4は、メジャーループと初期磁化曲線の一例を示す図である。
図5図5は、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を説明する図(1)である。
図6図6は、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を説明する図(2)である。
図7図7は、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を説明する図(3)である。
図8図8は、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を説明する図(4)である。
図9図9は、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を説明する図(5)である。
図10図10は、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を説明する図(6)である。
図11図11は、実施例に係るマイナーループ生成処理のフローチャートの一例を示す図である。
図12図12は、N番目のマイナーループデータの生成処理の一例を示す図である。
図13図13は、実測したマイナーループ(内側ループ)を含むBH曲線を示す図である。
図14図14は、実施例に係るマイナーループ生成処理により計算されたマイナーループを含むBH曲線を示す図である。
図15図15は、磁界シミュレータプログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
図16図16は、BH曲線(磁気ヒステリシス曲線)の参考例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する情報処理装置、磁界シミュレータ方法および磁界シミュレータプログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例
【0014】
図1は、実施例に係る情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。図1に示す情報処理装置1は、磁性体のヒステリシスに関するメジャーループのデータと、初期磁化曲線と、磁束密度の振幅(Bm)に対するヒステリシス損失(W)の関係とを用いて、マイナーループのデータを生成する。ここでいう「初期磁化曲線」とは、外部磁界が無い状態から外部磁界を単調増加させていく過程の磁化挙動をBHカーブとして表現した曲線である。初期磁化曲線には外部磁界を減少させる過程が無いのでヒステリシスは存在しない。
【0015】
図1に示すように、情報処理装置1は、制御部10と、記憶部20とを有する。
【0016】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路に対応する。そして、制御部10は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部10は、刻み幅算出部11、マイナーループベース曲線生成部12、マイナーループベース曲線調整部13およびBH曲線出力部14を有する。
【0017】
記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。記憶部20は、メジャーループデータ21、初期磁化曲線データ22およびBm-W曲線データ23を有する。
【0018】
メジャーループデータ21は、磁性体のヒステリシスに関するメジャーループのデータである。メジャーループデータ21は、例えば、磁性体の材料メーカーから提供される。
【0019】
初期磁化曲線データ22は、外部磁界が無い状態から外部磁界を単調増加させていく過程の磁化挙動をBHカーブとして表現した曲線のデータである。言い換えれば、初期磁化曲線データ22は、複数のマイナーループそれぞれの磁束密度(B)が最大となる値(Bm)と当該値を示す時の磁界(H)を直線で結んだBHカーブの実測データのことをいう。初期磁化曲線データ22は、例えば、磁性体の材料メーカーから提供される。
【0020】
なお、マイナーループのデータは、磁性体の材料メーカーから提供されることが極めて少ない。マイナーループのデータは、測定装置を用いて測定できるが、測定するには、人手による作業工数および測定による工数がかかる。マイナーループのデータを情報処理装置1による数値的な処理で取得できれば、作業や測定のための工数を削減することが可能になる。
【0021】
ここで、メジャーループ、初期磁化曲線および複数のマイナーループを実測した場合のBH曲線の一例を、図2に示す。図2は、実測のBH曲線の一例を示す図である。BH曲線とは、磁性体の磁束密度Bと磁界の強さHとの関係を示す曲線である。図2に示すように、最も外側で示されるヒステリシスループは、メジャーループである。中央に位置する直線で結んだBHカーブが、初期磁化曲線である。そして、メジャーループの内側に示されるヒステリシスループは、複数のマイナーループである。
【0022】
図1に戻って、Bm-W曲線データ23は、磁束密度の振幅(Bm)に対するヒステリシス損失(W)の曲線データである。磁束密度の振幅Bmは、マイナーループの最大の磁束密度である。ヒステリシス損失Wは、磁束密度の振幅Bmの値で特徴付けられるマイナーループの面積(=∫BdH)の値である。ヒステリシスの特性を持つ磁性体では、外部磁界Hに対して磁束密度Bの位相が遅れ、この位相の遅れに起因して発熱が発生する。かかる発熱による損失を「ヒステリシス損失」という。
【0023】
ここで、Bm-W曲線の一例を、図3に示す。図3は、Bm-W曲線の一例を示す図である。図3に示すように、磁束密度の振幅Bmとヒステリシス損失Wとの関係を示すBm-W曲線が示されている。かかるヒステリシス損失Wは、磁束密度の振幅Bmの値に対応付けられるマイナーループの面積の値に対応する。Bm-W曲線では、ヒステリシス損失Wが、磁束密度の振幅Bmのn乗(nは2~3)に比例するという特徴がある。そこで、Bm-W曲線が存在しない場合には、nの値を入力して、入力したnの値を用いて生成される曲線がBm-W曲線として代替されれば良い。
【0024】
図4は、メジャーループと初期磁化曲線の一例を示す図である。図4に示すグラフは、図2で示した実測のマイナーループを取り除いたBH曲線である。すなわち、かかるグラフは、メジャーループおよび初期磁化曲線からなるBH曲線の実測データである。実施例では、情報処理装置1が、図4で示したメジャーループおよび初期磁化曲線と、図3で示したBm-W曲線とを用いて、任意の数のマイナーループを生成する。
【0025】
図1に戻って、刻み幅算出部11は、メジャーループデータ21の最大の磁束密度を用いて、マイナーループの生成に用いられる磁束密度の刻み幅を算出する。例えば、刻み幅算出部11は、複数のマイナーループを生成する場合に、それぞれのマイナーループを生成する際に用いられる最大の磁束密度の値を定めるための磁束密度の刻み幅を、メジャーループデータ21の最大の磁束密度を用いて算出する。一例として、刻み幅算出部11は、メジャーループデータ21の最大の磁束密度の値を、生成を所望するマイナーループの数に1を加えた値で割ることで、磁束密度の刻み幅を算出する。
【0026】
マイナーループベース曲線生成部12は、マイナーループのベースとなる曲線を生成する。
【0027】
例えば、マイナーループベース曲線生成部12は、磁束密度が正の領域の右側に位置するマイナー曲線(右マイナー曲線分)を生成する。一例として、マイナーループベース曲線生成部12は、刻み幅算出部11によって算出された磁束密度の刻み幅を整数倍して得られるマイナーループの最大の磁束密度を算出する。マイナーループベース曲線生成部12は、初期磁化曲線データ22の算出した最大の磁束密度に対応する第1の点と、メジャーループデータ21の当該磁束密度に対応する第2の点とを求める。そして、マイナーループベース曲線生成部12は、メジャーループデータ21における第2の点と磁束密度が零を示す点とを繋ぐ曲線を、第2の点から第1の点の方向へ平行移動してマイナーループの第1のベース曲線(右マイナー曲線分)を生成する。
【0028】
そして、マイナーループベース曲線生成部12は、磁束密度が正の領域の左側に位置するマイナー曲線(左マイナー曲線分)を生成する。一例として、マイナーループベース曲線生成部12は、第1のベース曲線の磁束密度が零となる点の磁界の値を反転させた第3の点と、メジャーループデータ21における当該第3の点に対応する第4の点とを求める。そして、マイナーループベース曲線生成部12は、メジャーループデータにおける第4の点と第1の点の磁界の値に対応する点とを繋ぐ曲線を、第4の点から第3の点の方向へ平行移動する。さらに、マイナーループベース曲線生成部12は、平行移動した結果の上側の端点を第1の点と一致させるように調整してマイナーループの第2のベース曲線(左マイナー曲線分)を生成する。
【0029】
そして、マイナーループベース曲線生成部12は、第1のベース曲線および第2のベース曲線を、原点を中心に点対称に180°回転させて、磁束密度が負の領域の第3のベース曲線を生成する。
【0030】
マイナーループベース曲線調整部13は、マイナーループベース曲線から得られる閉領域の面積を、マイナーループの最大の磁束密度に対応する面積となるように、マイナーループベース曲線を調整する。例えば、マイナーループベース曲線調整部13は、Bm-W曲線データ23を用いて、現に生成しようとしているマイナーループの最大の磁束密度に対応付けられたヒステリシス損失Wを取得する。すなわち、マイナーループベース曲線調整部13は、Bm-W曲線データ23から、最大の磁束密度に対応付けられたマイナーループの面積を取得する。マイナーループベース曲線調整部13は、マイナーループベース曲線から得られる閉領域の面積を求める。そして、マイナーループベース曲線調整部13は、求めた面積がBm-W曲線データ23から取得された面積になるように、マイナーループベース曲線をH(磁界)軸方向に拡大または縮小することでマイナーループを生成する。
【0031】
BH曲線出力部14は、生成した複数のマイナーループデータと、メジャーループデータ21と、初期磁化曲線データ22とを含むBH曲線を出力する。
【0032】
[マイナーループ生成処理の概略]
ここで、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を、図5図10を参照して説明する。図5図10は、実施例に係るマイナーループ生成処理の概略を説明する図である。ここでは、1つのマイナーループを生成する場合について説明する。なお、マイナーループを生成する個数に基づく磁束密度の刻み幅は刻み幅算出部11によって算出されたとする。
【0033】
図5に示すように、マイナーループベース曲線生成部12は、右マイナー曲線の線分を示す右マイナー曲線分を生成する。例えば、マイナーループベース曲線生成部12は、磁束密度の刻み幅を整数倍して得られるマイナーループの最大の磁束密度Bを算出する。
【0034】
マイナーループベース曲線生成部12は、初期磁化曲線データ22の算出した最大の磁束密度Bに対応する第1の点(1)(H,B)と、メジャーループデータ21における当該磁束密度Bに対応する第2の点(2)(H,B)とを求める。マイナーループベース曲線生成部12は、メジャーループデータ21における第2の点(2)(H,B)と磁束密度Bが零を示す点(3)とを繋ぐ曲線を、第2の点(2)(H,B)が第1の点(1)(H,B)と重なるまで平行移動する。この結果、マイナーループベース曲線生成部12は、曲線分第1の点(1)点(4)をマイナーループの右マイナー曲線分(第1のベース曲線分)とする。
【0035】
図6に示すように、マイナーループベース曲線生成部12は、左マイナー曲線の線分を示す左マイナー曲線分を生成する。例えば、マイナーループベース曲線生成部12は、右マイナー曲線の磁束密度が零となる点(4)(H,0)の磁界の値を反転させた第3の点(4)´(-H,0)を求める。マイナーループベース曲線生成部12は、メジャーループデータ21における第3の点(4)´(-H,0)に対応する第4の点(5)(-H,B)を求める。そして、マイナーループベース曲線生成部12は、メジャーループデータ21における第4の点(5)(-H,B)と点(6)(H,B)とを繋ぐ曲線を第4の点(5)(-H,B)が第3の点(4)´(-H,0)に重なる位置まで平行移動する。点(6)(H,B)の移動先を点(6)´とし、点(6)´の磁束密度をB´とする。さらに、マイナーループベース曲線生成部12は、平行移動した結果を示す曲線分点(4)´点(6)´の高さにB0/B0´を乗じて得られる曲線分点(4)´点(1)を求める。これは、平行移動した結果の上側の端点(6)´を第1の点(1)と一致させるように調整するためである。この結果、マイナーループベース曲線生成部12は、求めた曲線分点(4)´点(1)をマイナーループの左マイナー曲線分(第2のベース曲線分)とする。
【0036】
図7に示すように、マイナーループベース曲線生成部12は、左マイナー曲線分と右マイナー曲線分を原点に対して180°回転させることで、磁束密度が負の領域の第3のベース曲線分を生成する。すなわち、マイナーループベース曲線生成部12は、左マイナー曲線分と右マイナー曲線分と第3のベース曲線分とでマイナーループのベース曲線を生成する。生成されるマイナーループのベース曲線は、閉じた曲線となる。
【0037】
ここで、マイナーループのベース曲線の面積Wは、実測されたBm-W曲線上にのるとは限らない。そこで、マイナーループベース曲線調整部13は、マイナーループのベース曲線の面積WがBm-W曲線上にのるように、点(4)に繋がる曲線および点(4)´に繋がる曲線をH(磁界)軸方向に拡大または縮小させてマイナーループを生成する。マイナーループの生成の説明は、図8および図9を用いて後述する。
【0038】
図8には、Bm-W曲線が示されている。一例として、マイナーループベース曲線調整部13は、Bm-W曲線を用いて、マイナーループのベース曲線の最大の磁束密度Bに対応するヒステリシス損失Wを取得する。すなわち、ヒステリシス損失Wは、磁束密度の振幅Bの値に対応付けられるマイナーループの面積の値に対応するので、マイナーループベース曲線調整部13は、Bm-W曲線を用いて、マイナーループのベース曲線の面積Wを取得する。
【0039】
図9に示すように、マイナーループベース曲線調整部13は、マイナーループベース曲線から得られる閉領域の面積がWであるとする。すると、マイナーループベース曲線調整部13は、WがWになるように、点(4)および点(4)´に繋がる曲線をH軸方向に点(7)および点(7)´に繋がる曲線に拡大縮小して調整する。すなわち、[点(7)と点(7)´との距離]は[点(4)と点(4)´との距離]にW/Wを乗じて得た値となる。
【0040】
この結果、図10に示すように、最大の磁束密度Bに対応するマイナーループが生成される。
【0041】
[マイナーループ生成処理のフローチャート]
ここで、情報処理装置1が実行するマイナーループ生成処理のフローチャートの一例を、図11を参照して説明する。図11は、実施例に係るマイナーループ生成処理のフローチャートの一例を示す図である。図11では、x軸を磁界H、y軸を磁束密度Bとした2次元の座標を用いて説明する。
【0042】
図11に示すように、情報処理装置1は、各種データを入力する(ステップS11)。各種データには、メジャーループデータ21、初期磁化曲線データ22、Bm-W曲線データ23およびマイナーループを生成する個数(N_minor_loop)が含まれる。
【0043】
情報処理装置1は、マイナーループの生成に用いられる磁束密度の刻み幅ΔBを計算する(ステップS12)。例えば、情報処理装置1は、メジャーループデータ21の最大の磁束密度の値Bmaxを、マイナーループを生成する個数を示すN_minor_loopに1を加えた値で割ることで、磁束密度の刻み幅ΔBを算出する。
【0044】
情報処理装置1は、何個目のマイナーループを生成しているかを示すインデックスNを「1」に初期化するとともに、最初に生成するマイナーループの磁束密度の刻み幅ΔBを最大の磁束密度Bとして設定する(ステップS13)。
【0045】
情報処理装置1は、N番目のマイナーループデータの生成処理を実行する(ステップS14)。なお、N番目のマイナーループデータの生成処理のフローチャートは、後述する。
【0046】
情報処理装置1は、インデックスNがマイナーループを生成する個数を示すN_minor_loop以上であるか否かを判定する(ステップS15)。インデックスNがN_minor_loopより小さいと判定した場合には(ステップS15;No)、情報処理装置1は、次に生成するマイナーループに関し、インデックスNを1加算するとともに、最大の磁束密度BをΔBだけ加算する(ステップS16)。すなわち、情報処理装置1は、最大の磁束密度の刻み幅ΔBを整数倍して次のマイナーループの最大の磁束密度Bを求める。そして、情報処理装置1は、次のマイナーループを生成すべく、ステップS14に移行する。
【0047】
一方、インデックスNがN_minor_loop以上であると判定した場合には(ステップS15;Yes)、情報処理装置1は、N_minor_loopの個数分のマイナーループデータを出力する(ステップS17)。例えば、情報処理装置1は、N番目のマイナーループデータの生成処理で保存されるN_minor_loopの個数分のマイナーループデータを出力する。そして、マイナーループ生成処理は終了する。
【0048】
図12は、N番目のマイナーループデータの生成処理の一例を示す図である。なお、図12に示すS21~S23は、図5に対応する。図12に示すS24~S25は、図6に対応する。図12に示すS27は、図8に対応する。図12に示すS28~S31は、図9に対応する。
【0049】
図12に示すように、情報処理装置1は、初期磁化曲線データ22が示す初期磁化曲線と最大の磁束密度Bとの交点(1)(H,B)を算出する(ステップS21)。情報処理装置1は、磁束密度BがBである直線と、メジャーループデータ21が示すメジャーループの第1象限の上昇曲線との交点(2)(H,B)を算出する(ステップS22)。
【0050】
情報処理装置1は、メジャーループデータ21が示すメジャーループの第1象限の磁束密度Bが零を示す初期位置(3)から点(2)(H,B)までの折れ線データをH軸方向にdh(=H-H)だけ平行移動する(ステップS23)。この結果、右マイナー曲線分が生成される。ここで、右マイナー曲線分のH軸との交点(磁束密度が零となる点)を(4)(H,0)とする。
【0051】
情報処理装置1は、(4)(H,0)のB軸に対象な点を(4)´(-H,0)とする。そして、情報処理装置1は、磁界Hが(4)´である直線と第2象限のメジャーループとの交点(5)(-H,B)を求める。さらに、情報処理装置1は、磁界HがHである直線と第1象限のメジャーループの下降曲線との交点(6)(H,B)を求める(ステップS24)。
【0052】
情報処理装置1は、メジャーループの点(5)(-H,B)から点(6)(H,B)までの折れ線データをB軸方向に-Bだけ平行移動し、点(6)の移動先を(6)´(H,B´)とする。情報処理装置1は、点(6)´を点(1)(H,B)に合わせるために、曲線(4)´(6)´の高さにB/B´を乗じ、曲線分(4)´(1)を求める(ステップS25)。この結果、左マイナー曲線分が生成される。
【0053】
情報処理装置1は、右マイナー曲線分、左マイナー曲線分およびH軸で囲まれる面積S´を計算する(ステップS26)。例えば、情報処理装置1は、補助図で示すように、右マイナー曲線分の複数個の一連の折れ線データの各線分に対して台形の公式を適用して、右マイナー曲線分とH軸とで囲まれる領域の面積(S+S+S)を計算する。また、情報処理装置1は、左マイナー曲線分の複数個の一連の折れ線データの各線分に対して台形の公式を適用して、左マイナー曲線分とH軸とで囲まれる領域の面積(S+S+S+S+S)を計算する。そして、情報処理装置1は、右マイナー曲線分、左マイナー曲線分およびH軸で囲まれる面積S´を以下の式(1)のように計算する。
´=(S+S+S+S+S)-(S+S+S)・・・式(1)
【0054】
情報処理装置1は、右マイナー曲線分および左マイナー曲線分から得られるマイナーループのベース曲線で囲まれる面積Sを計算する(ステップS26A)。例えば、情報処理装置1は、面積Sを以下の式(2)のように計算する。
=2S´・・・式(2)
【0055】
続いて、情報処理装置1は、Bm-W曲線データ23が示すBm-W曲線を用いて、Bmが磁束密度Bを示すヒステリシス損失Wを算出する(ステップS27)。なお、ヒステリシス損失Wは、磁束密度の振幅Bの値に対応付けられるマイナーループの面積の値に対応する。
【0056】
情報処理装置1は、右マイナー曲線分に対して、W/S倍となるように調整する(ステップS28)。例えば、情報処理装置1は、右マイナー曲線分のデータに対して、磁束密度Bが零を示す磁界の値(H)がW/S倍となるように、右マイナー曲線分の磁界の値H_dを以下の式(3)および式(4)を用いて調整する。
H_d=(H_d-H)×Coef_R+H・・・式(3)
Coef_R={H-H(W/S)}/(H-H)・・・式(4)
そして、情報処理装置1は、調整したデータをN番目の配列にコピーする。一例として、N番目のマイナーループの右マイナー曲線分について、点数がN_minor_Rであるとする。また、磁界のデータの領域がH_minor_Rであり、磁束密度のデータの領域がB_minor_Rであるとする。すると、情報処理装置1は、磁界のデータをH_minor_R[N][1~N_minor_R]の配列にコピーする。情報処理装置1は、磁束密度のデータをB_minor_R[N][1~N_minor_R]の配列にコピーする。
【0057】
情報処理装置1は、左マイナー曲線分に対して、W/S倍となるように調整する(ステップS29)。例えば、情報処理装置1は、左マイナー曲線分のデータに対して、磁束密度Bが零を示す磁界の値(-H)がW/S倍となるように、右マイナー曲線分の磁界の値H_dを以下の式(5)および式(6)を用いて調整する。
H_d=(H_d-H)×Coef_L+H・・・式(5)
Coef_L={H+H(W/S)}/(H+H)・・・式(6)
そして、情報処理装置1は、調整したデータをN番目の配列にコピーする。一例として、N番目のマイナーループの左マイナー曲線分について、点数がN_minor_Lであるとする。また、磁界のデータの領域がH_minor_Lであり、磁束密度のデータの領域がB_minor_Lであるとする。すると、情報処理装置1は、磁界のデータをH_minor_L[N][1~N_minor_L]の配列にコピーする。情報処理装置1は、磁束密度のデータをB_minor_L[N][1~N_minor_R]の配列にコピーする。
【0058】
情報処理装置1は、調整した右マイナー曲線分から左下マイナー曲線分を生成する(ステップS30)。例えば、情報処理装置1は、右マイナー曲線分のデータに-1を乗じることにより、左下マイナー曲線分のデータを生成する。すなわち、情報処理装置1は、右マイナー曲線分のデータに-1を乗じた値(-H_minor_R[N],-B_minor_R[N])を左下マイナー曲線分のデータとして生成する。そして、情報処理装置1は、生成したデータを左下マイナー曲線分のN番目の配列にコピーする。
【0059】
情報処理装置1は、調整した左マイナー曲線分から右下マイナー曲線分を生成する(ステップS31)。例えば、情報処理装置1は、左マイナー曲線分のデータに-1を乗じることにより、右下マイナー曲線分のデータを生成する。すなわち、情報処理装置1は、左マイナー曲線分のデータに-1を乗じた値(-H_minor_L[N],-B_minor_L[N])を右下マイナー曲線分のデータとして生成する。そして、情報処理装置1は、生成したデータを右下マイナー曲線分のN番目の配列にコピーする。そして、情報処理装置1は、N番目のマイナーループデータの生成処理を終了する。
【0060】
[マイナーループを含むBH曲線]
ここで、実測したマイナーループと実測したメジャーループとを含むBH曲線を、図13に示す。図13は、実測したマイナーループ(内側ループ)を含むBH曲線を示す図である。図13に示すように、BH曲線の最も外側で示されるループが実測のメジャーループである。BH曲線の内側で示されるループが実測のマイナーループである。
【0061】
これに対して、実施例に係るマイナーループ生成処理により計算されたマイナーループと実測したメジャーループとを含むBH曲線を、図14に示す。図14は、実施例に係るマイナーループ生成処理により計算されたマイナーループを含むBH曲線を示す図である。図14に示すように、BH曲線の最も外側で示されるループが実測のメジャーループである。BH曲線の内側で示されるループが実施例に係るマイナーループ生成処理により計算されたマイナーループである。
【0062】
図13図14とを比較してわかるように、実施例に係るマイナーループ生成処理により計算されたマイナーループは、実測したマイナーループとほぼ同じである。すなわち、実施例に係るマイナーループ生成処理は、実測したマイナーループを精度良く再現できる。
【0063】
[実施例の効果]
上記実施例によれば、情報処理装置1は、磁性体のヒステリシスに関するメジャーループデータ21と、磁性体の初期磁化曲線データ22と、ヒステリシスに関するマイナーループの最大の磁束密度および当該磁束密度で対応付けられるマイナーループの面積の関係を示すBm-W曲線データ23とを入力する。情報処理装置1は、入力されたメジャーループデータ21と、初期磁化曲線データ22と、Bm-W曲線データ23とを用いて、複数のマイナーループのデータを生成する。かかる構成によれば、情報処理装置1は、メジャーループデータ21と、初期磁化曲線データ22と、Bm-W曲線データ23とを用いることで、マイナーループの取得に要する工数を削減できる。
【0064】
また、情報処理装置1は、生成しようとするマイナーループの最大の磁束密度に対応する初期磁化曲線上の点をマイナーループの正の領域の頂点とし、メジャーループデータ21を用いてマイナーループのベース曲線を生成する。情報処理装置1は、Bm-W曲線データ23を用いて、生成したマイナーループのベース曲線で囲まれる閉領域の面積がマイナーループの最大の磁束密度で対応付けられる面積となるようにマイナーループのデータを生成する。かかる構成によれば、情報処理装置1は、メジャーループデータ21と、初期磁化曲線データ22と、Bm-W曲線データ23とを用いることで、複数のマイナーループを生成することができる。この結果、情報処理装置1は、複数のマイナーループの取得に要する工数を削減できる。
【0065】
また、情報処理装置1は、磁束密度が正の領域で、生成しようとするマイナーループの所定の最大の磁束密度の指定を受けて、初期磁化曲線の磁束密度に対応する第1の点と、メジャーループの前記磁束密度に対応する第2の点とを求める。情報処理装置1は、メジャーループにおける第2の点と磁束密度が零を示す点とを繋ぐ曲線を第2の点から第1の点の方向へ平行移動してマイナーループの第1のベース曲線を生成する。情報処理装置1は、さらに、第1のベース曲線の磁束密度が零となる点の磁界の値を反転させた第3の点と、メジャーループにおける当該第3の点の磁界の値に対応する第4の点とを求める。情報処理装置1は、メジャーループにおける第4の点と第1の点の磁界の値に対応する点とを繋ぐ曲線を第4の点から第3の点の方向へ平行移動し、平行移動した結果の端点を第1の点と一致させるように調整して前記マイナーループの第2のベース曲線を生成する。情報処理装置1は、第1のベース曲線および第2のベース曲線を、原点を中心に点対称に180°回転させて、磁束密度が負の領域の第3のベース曲線を生成する。そして、情報処理装置1は、Bm-W曲線データ23を用いて、第1のベース曲線、第2のベース曲線および第3のベース曲線から得られる閉領域の面積が所定の最大の磁束密度に対応する面積になるようにそれぞれの曲線を調整する。かかる構成によれば、情報処理装置1は、コンピュータを用いて複数のマイナーループを生成することができる。この結果、情報処理装置1は、複数のマイナーループの取得に要する工数を削減できる。
【0066】
また、情報処理装置1は、メジャーループの最大の磁束密度を、生成しようとするマイナーループの数に1を加えた値で割ることで、生成しようとするマイナーループの磁束密度の刻み幅を算出する。情報処理装置1は、刻み幅を整数倍して得られるマイナーループの所定の最大の磁束密度を算出する。かかる構成によれば、情報処理装置1は、マイナーループの所定の最大の磁束密度を、予め定められた算出方法で算出された刻み幅を用いて算出することで、高速に複数のマイナーループを生成できる。
【0067】
[その他]
なお、図示した情報処理装置1の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、情報処理装置1の分散・統合の具体的態様は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、刻み幅算出部11とマイナーループベース曲線生成部12とを1つの部として統合しても良い。マイナーループベース曲線生成部12を、右マイナー曲線分を生成する第1の生成部と、左マイナー曲線分を生成する第2の生成部と、右下マイナー曲線分および左下マイナー曲線分を生成する第3の生成部とに分散しても良い。また、記憶部20を情報処理装置1の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。
【0068】
また、上記実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図1に示した情報処理装置1と同様の機能を実現するマイナーループ生成処理を含む磁界シミュレータプログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図15は、磁界シミュレータプログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【0069】
図15に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU203と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置215と、表示装置209を制御する表示制御部207とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラムなどを読取るドライブ装置213と、ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータの授受を行う通信制御部217とを有する。また、コンピュータ200は、各種情報を一時記憶するメモリ201と、HDD205を有する。そして、メモリ201、CPU203、HDD205、表示制御部207、ドライブ装置213、入力装置215、通信制御部217は、バス219で接続されている。
【0070】
ドライブ装置213は、例えばリムーバブルディスク211用の装置である。HDD205は、磁界シミュレータプログラム205aおよび磁界シミュレータ処理関連情報205bを記憶する。
【0071】
CPU203は、磁界シミュレータプログラム205aを読み出して、メモリ201に展開し、プロセスとして実行する。かかるプロセスは、情報処理装置1の各機能部に対応する。磁界シミュレータ処理関連情報205bは、メジャーループデータ21、初期磁化曲線データ22およびBm-W曲線データ23に対応する。そして、例えばリムーバブルディスク211が、磁界シミュレータプログラム205aなどの各情報を記憶する。
【0072】
なお、磁界シミュレータプログラム205aについては、必ずしも最初からHDD205に記憶させておかなくても良い。例えば、コンピュータ200に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に当該プログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ200がこれらから磁界シミュレータプログラム205aを読み出して実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 情報処理装置
10 制御部
11 刻み幅算出部
12 マイナーループベース曲線生成部
13 マイナーループベース曲線調整部
14 BH曲線出力部
20 記憶部
21 メジャーループデータ
22 初期磁化曲線データ
23 Bm-W曲線データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16