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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20230214BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R13/64
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019158301
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021039822
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-215830(JP,A)
【文献】特開2009-004174(JP,A)
【文献】特開2007-134237(JP,A)
【文献】特開平06-111882(JP,A)
【文献】国際公開第2013/087272(WO,A1)
【文献】特開2018-063754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な第1ハウジングと第2ハウジングとを有し、
前記第2ハウジングは、第1端子保持部材と第2端子保持部材とを相対変位可能に組み付けて構成され、
前記第1ハウジングには、前記第1端子保持部材の嵌合動作を許容し、かつ前記第2端子保持部材の嵌合動作を規制する規制部が設けられ、
前記第1端子保持部材には、前記第1端子保持部材の嵌合動作が開始した状態において前記規制部による規制を解除する規制解除部が設けられているコネクタ。
【請求項2】
前記規制解除部は、前記第1端子保持部材が正規嵌合したときに前記規制部の規制を解除する位置に配されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1端子保持部材には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが未嵌合の状態で前記第2端子保持部材を収容する収容空間が形成されている請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2端子保持部材が嵌合動作を規制されている状態で前記第1端子保持部材が嵌合したときに、前記第2端子保持部材の嵌合方向後端部は、前記第1端子保持部材の後方へ突出するように配される請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1端子保持部材は、
前記第1ハウジングに係止するロックアームと、
前記第2端子保持部材を挟むように配された一対の弾性係止片と、
一方向に並ぶように配された複数の第1端子収容室とを有し、
前記ロックアームと前記一対の弾性係止片は、前記複数の第1端子収容室の並び方向と交差する方向に一列に並ぶように配され、
前記ロックアームと前記一対の弾性係止片のうち少なくとも1つは、隣り合う2つの前記第1端子収容室の間に配されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第2端子保持部材は、
前記第1端子保持部材に係止する係止突起と、
前記第1端子保持部材に対して正規の向きに取り付けられたときにのみ前記第1端子保持部材の溝部に嵌入する突起部とを有し、
前記突起部が、前記第2端子保持部材の外面から前記係止突起と同じ方向へ突出している請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雌ハウジングに取り付けた雌端子と、雄ハウジングに取り付けた雄端子とを有するコネクタが開示されている。雌側端子の箱部内には、弾性変形可能な接点バネが収容され、雄端子はタブを有している。雌ハウジングと雄ハウジングを嵌合すると、タブが、箱部内に挿入されて接点バネを弾性変形させるので、接点バネの弾性復元力に起因する弾力により、雌端子と雄端子が所定の接触圧を持って接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-232927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雄端子のタブが接点バネを弾性変形させるときには、接点バネの弾性復元力に起因する摩擦抵抗が生じ、この摩擦抵抗は、雌ハウジングと雄ハウジングの嵌合抵抗となる。嵌合抵抗は、雌端子と雄端子の極数が多くなるほど増大する。この対策として、多極のコネクタでは、回動タイプのレバーを用いた倍力機構が採用されている。しかし、回動タイプのレバーを用いると、レバーの分だけコネクタが大型化するという問題を生じる。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
互いに嵌合可能な第1ハウジングと第2ハウジングとを有し、
前記第2ハウジングは、第1端子保持部材と第2端子保持部材を相対変位可能に組み付けて構成され、
前記第1ハウジングには、前記第1端子保持部材の嵌合動作を許容し、かつ前記第2端子保持部材の嵌合動作を規制する規制部が設けられ、
前記第1端子保持部材には、前記第1端子保持部材が嵌合動作を開始した後において前記規制部による規制を解除する規制解除部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コネクタの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合を開始した状態をあらわす側断面図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、第1ハウジングの正面図である。
図4図4は、第2ハウジングの正面図である。
図5図5は、図4のB-B線断面図である。
図6図6は、図4のC-C線断面図である。
図7図7は、第1端子保持部材の斜視図である。
図8図8は、第2端子保持部材の斜視図である。
図9図9は、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合過程において、第1端子保持部材のみが正規嵌合した状態をあわらす側断面図である。
図10図10は、図9のD-D線断面図である。
図11図11は、第1ハウジングと第2ハウジングが正規嵌合した状態をあらわす側断面図である。
図12図12は、図11のE-E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)互いに嵌合可能な第1ハウジングと第2ハウジングとを有し、前記第2ハウジングは、第1端子保持部材と第2端子保持部材とを相対変位可能に組み付けて構成され、前記第1ハウジングには、前記第1端子保持部材の嵌合動作を許容し、かつ前記第2端子保持部材の嵌合動作を規制する規制部が設けられ、前記第1端子保持部材には、前記第1端子保持部材が嵌合動作を開始した後において前記規制部による規制を解除する規制解除部が設けられている。
【0010】
本開示の構成によれば、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合前期は、第2端子保持部材の嵌合動作が規制部により規制され、嵌合抵抗は第1ハウジングと第1端子保持部材との間のみに生じる。第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合後期は、第2端子保持部材に対する嵌合動作の規制が規制解除部によって解除され、第2端子保持部材の嵌合動作が行われ、第1ハウジングと第2端子保持部材との間に嵌合抵抗が生じる。第1端子保持部材と第2端子保持部材の嵌合開始のタイミングを異ならせているので、第1端子保持部材と第2端子保持部材の嵌合が同時に開始する場合に比べると、嵌合抵抗のピーク値が低減される。本開示のコネクタによれば、レバーを用いた倍力機構が不要なので、小型化を図ることができる。
【0011】
(2)前記規制解除部は、前記第1端子保持部材が正規嵌合したときに前記規制部の規制を解除する位置に配されていることが好ましい。この構成によれば、第2端子保持部材の嵌合動作は、第1端子保持部材が正規嵌合したときに開始することができる。本開示によれば、第2端子保持部材が、第1端子保持部材の嵌合状態を検知する機能を発揮する。
【0012】
(3)前記第1端子保持部材には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが未嵌合の状態で前記第2端子保持部材を収容する収容空間が形成されていることが好ましい。この構成によれば、第2端子保持部材に対する異物の干渉を防止できる。
【0013】
(4)(3)において、前記第2端子保持部材が嵌合動作を規制されている状態で前記第1端子保持部材が嵌合したときに、前記第2端子保持部材の嵌合方向後端部は、前記第1端子保持部材の後方へ突出するように配されることが好ましい。この構成によれば、第1端子保持部材の嵌合後は、第2端子保持部材の後端部を押し込むことによって第2端子保持部材の嵌合を行うことができるので、嵌合作業を行い易い。
【0014】
(5)前記第1端子保持部材は、前記第1ハウジングに係止するロックアームと、前記第2端子保持部材を挟むように配された一対の弾性係止片と、一方向に並ぶように配された複数の第1端子収容室とを有し、前記ロックアームと前記一対の弾性係止片は、前記複数の第1端子収容室の並び方向と交差する方向に一列に並ぶように配され、前記ロックアームと前記一対の弾性係止片のうち少なくとも1つは、隣り合う2つの前記第1端子収容室の間に配されていることが好ましい。この構成によれば、第1端子収容室が、ロックアームと弾性係止片との間、又は一対の弾性係止片の間に配されている場合、第2ハウジングはロックアームと弾性係止片の並び方向において大型化する。しかし、本開示の構成であれば、ロックアームと弾性係止片の並び方向において、第2ハウジングの小型化を図ることができる。
【0015】
(6)前記第2端子保持部材は、前記第1端子保持部材に係止する係止突起と、前記第1端子保持部材に対して正規の向きに取り付けられたときにのみ前記第1端子保持部材の溝部に嵌入する突起部とを有し、前記突起部が、前記第2端子保持部材の外面から前記係止突起と同じ方向へ突出していることが好ましい。突起部の突出方向が係止突起と同じ方向なので、突起部が係止突起とは異なる方向へ突出する場合に比べると、第2端子保持部材の小型化を図ることができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタを具体化した実施例1を、図1図12を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
本実施例1のコネクタは、互いに嵌合可能な雄側コネクタMと雌側コネクタFとを有する。本実施例1において、雄側コネクタMの前後方向については、図1,2,9~12における右方を前方と定義し、雌側コネクタFの前後方向については、雄側コネクタMとは逆に、図1,2,9~12における左方を前方と定義する。上下の方向については、図1,3~9,11にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、図3,4,7,8にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0018】
図1~3に示すように、雄側コネクタMは、合成樹脂製の第1ハウジング10と、第1ハウジング10に取り付けた複数の雄端子金具18とを有する。第1ハウジング10は、直方形のハウジング本体部11と、ハウジング本体部11の前面から前方へ角筒状に突出したフード部12とを有する単一部品である。図3に示すように、ハウジング本体部11内には、8つのキャビティ13,14が形成されている。各キャビティ13,14には、電線Wに固着された雄端子金具18が、第1ハウジング10の後方から挿入されている。各雄端子金具18のタブ19は、ハウジング本体部11の前面からフード部12内へ突出している。
【0019】
8つのキャビティ13,14のうち4つの第1キャビティ13は、ハウジングの上端部において左右方向に同じ高さで一列に並ぶように配置されている。4つの第1キャビティ13は、左右2つずつに分かれ、ハウジング本体部11の左右両端部に配置されている。8つのキャビティ13,14のうち4つの第2キャビティ14は、ハウジング本体部11の上下方向中央より低い高さで左右方向に一列に一定間隔で配置されている。左右に隣り合う第2キャビティ14の間隔は、1つの第2キャビティ14の幅寸法よりも小さい。
【0020】
図1,3に示すように、第1ハウジング10には、ロック部15が形成されている。ロック部15は、フード部12を構成する上壁部の前端部から下向き(フード部12の内側)へ突出するように形成されている。ロック部15は、フード部12の左右方向中央部に配されている。換言すると、ロック部15は、左右方向において、左側の一対の第1キャビティ13と右側の一対の第1キャビティ13との間に配されている。したがって、4つの第1キャビティ13とロック部15が同じ高さで左右方向に一列に並ぶように配されている。
【0021】
図2,3に示すように、第1ハウジング10には、左右対称な一対の規制部16が一体に形成されている。一対の規制部16は、ハウジング本体部11の前面(フード部12の奥端面)における左右両端部から斜め前方へ片持ち状に突出している。一対の規制部16は、第2キャビティ14と同じ高さで、4つの第2キャビティ14を左右から挟むように配されている。各規制部16は、左右方向へ弾性変形し得るようになっている。
【0022】
図1,3に示すように、第1ハウジング10には、上下一対の係止解除部17が形成されている。一対の係止解除部17は、ハウジングの前端面から前方へ片持ち状に突出している。係止解除部17の突出方向は、雄側コネクタMと雌側コネクタFの嵌合方向と平行な方向である。一対の係止解除部17は、左右方向においてはハウジング本体部11の中央部に配され、上下方向においては第2キャビティ14の上方と下方とに分かれて配されている。
【0023】
図4~6に示すように、雌側コネクタFは、第2ハウジング20と、第2ハウジング20に取り付けた8つの雌端子金具37とを有している。第2ハウジング20は、合成樹脂製の第1端子保持部材21と、第1端子保持部材21とは別体の部品である合成樹脂製の第2端子保持部材32とを組み付けて構成されている。
【0024】
第1端子保持部材21は、単一部品である。図4,7に示すように、第1端子保持部材21には4つの第1端子収容室22が形成されている。第1端子収容室22は、第1端子保持部材21の上端部において左右方向に同じ高さで一列に並ぶように配置されている。4つの第1端子収容室22は、左右2つずつに分かれ、第1端子保持部材21の左右両端部に配置されている。雄側コネクタMと雌側コネクタFが嵌合した状態では、4つの第1端子収容室22と4つの第1キャビティ13とが、前後方向に個別に対向する位置関係となる。図6に示すように、各第1端子収容室22内には、電線Wに固着された雌端子金具37が、第1端子保持部材21の後方から挿入されている。雌端子金具37は、弾性変形可能な弾性接触片38を有している。
【0025】
図5,7に示すように、第1端子保持部材21には、雄側コネクタMと雌側コネクタFを嵌合状態にロックするためのロックアーム23が形成されている。ロックアーム23は、後方へ片持ち状に延出した形態であり、上下方向(雄側コネクタMと雌側コネクタFの嵌合方向と交差する方向)へ弾性変形することが可能である。ロックアーム23の上面には、ロック部15と係止可能なロック突起24が形成されている。
【0026】
図4に示すように、ロックアーム23は、第1端子収容室22と同じ高さにおいて第1端子保持部材21の左右方向中央部に配されている。換言すると、ロックアーム23は、左右方向において、左側の一対の第1端子収容室22と右側の一対の第1端子収容室22との間に配されている。したがって、4つの第1端子収容室22とロックアーム23は、同じ高さで左右方向に一列に並ぶように配されている。
【0027】
図4~6に示すように、第1端子保持部材21には、第1端子保持部材21を前後方向に貫通した形態の収容空間25が形成されている。収容空間25は、正面視形状が横長の長方形をなす空間であり、4つの第1端子収容室22よりも下方に配されている。雄側コネクタMと雌側コネクタFが嵌合した状態では、収容空間25が4つの第2キャビティ14と対向する位置関係となる。
【0028】
図2,4,7に示すように、第1端子保持部材21には、左右対称な一対の逃がし凹部26が形成されている。一対の逃がし凹部26は、第1端子保持部材21の左右両外側壁部の前端部のうち、上下方向において収容空間25が形成されている領域を切り欠いた形態である。収容空間25の内部空間の前端部は、逃がし凹部26を介して第1端子保持部材21の外側面に開放されている。
【0029】
第1端子保持部材21には、左右対称な一対の規制解除部27が一体に形成されている。一対の規制解除部27は、前後方向に細長く延びた形態であり、収容空間25の左右両端部に配されている。規制解除部27のうち後端側領域は、収容空間25に繋がり、収容空間25の左右両内側面からリブ状に突出している。規制解除部27の前端側領域は、収容空間25の内側面から前方へ片持ち状に突出し、逃がし凹部26に臨むように配されている。
【0030】
図4,5,7に示すように、第1端子保持部材21には、第1端子保持部材21を前後方向(雄側コネクタMと雌側コネクタFの嵌合方向と平行な方向)に貫通した形態の上下対称な一対の型抜き空間28が形成されている。図4に示すように、一対の型抜き空間28は、第1端子保持部材21の左右方向中央部に配されている。換言すると、型抜き空間28は、左右方向においてロックアーム23と同じ位置に配されている。一対の型抜き空間28の左右方向の寸法は、収容空間25の左右方向の寸法よりも小さい。図5に示すように、一対の型抜き空間28は、その前端から後端に至る全長にわたり収容空間25と連通している。
【0031】
図4,5,7に示すように、一対の型抜き空間28内には、上下対称な一対の弾性係止片29が個別に設けられている。弾性係止片29は、型抜き空間28の内面のうち収容空間25とは反対側の内面から、斜め前方へ片持ち状に延出した形態であり、第1端子保持部材21に一体に形成されている。弾性係止片29は、上下方向(雄側コネクタMと雌側コネクタFの嵌合方向と交差する方向)へ弾性変形し得るようになっている。
【0032】
図6,7に示すように、第1端子保持部材21には、左右対称な一対の溝部30が形成されている。溝部30は、前後方向に細長く延びている。溝部30の前端部は、前止まり部31として機能する。溝部30の後端は、第1端子保持部材21の後端面に開口している。溝部30は、収容空間25の上下両内面のうち、上下方向において第1端子収容室22とは反対側の下面に開口している。左右方向において、溝部30は、収容空間25の内側面と下側の型抜き空間28との間に配されている。
【0033】
第2端子保持部材32は、合成樹脂材料からなる単一部品である。図8に示すように、第2端子保持部材32は、前後方向及び左右方向寸法に対して高さ寸法が小さい直方形をなす。図4,8に示すように、第2端子保持部材32には、前後方向に細長い4つの第2端子収容室33が形成されている。4つの第2端子収容室33は、左右方向に一定のピッチで並ぶように配置されている。雄側コネクタMと雌側コネクタFが嵌合した状態では、4つの端子収容室と4つの第2キャビティ14が、前後方向に個別に対向する位置関係となる。各第2端子収容室33には、電線Wに固着された雌端子金具37が、第2端子保持部材32の後方から挿入されている。
【0034】
図4,8に示すように、第2端子保持部材32の左外側面と右外側面には、それぞれ、上下方向に間隔を空けて並ぶように配された2つの規制突起34が形成されている。規制突起34は第2端子保持部材32の前端部に配されている。第1ハウジング10と第2ハウジング20が嵌合前するときには、第1ハウジング10の1つの規制部16が、上下に並ぶ2つの規制突起34と対向し、この2つの規制突起34に突き当たるようになっている。第2端子保持部材32を第1端子保持部材21に組み付けて第1ハウジング10と第2ハウジング20を嵌合する過程では、第1端子保持部材21の1つの規制解除部27が、2つの規制突起34の間に進入して前後方向へ相対変位するするようになっている。
【0035】
図4,8に示すように、第2端子保持部材32の上面と下面には、それぞれ、左右方向に間隔を空けて並ぶように配された2つの係止突起35が形成されている。係止突起35は第2端子保持部材32の前端部に配されている。第2端子保持部材32を第1端子保持部材21に組み付けた状態では、第1端子保持部材21の1つの弾性係止片29が、左右に並ぶ2つの係止突起35に対し後方から当接し得るようになっている。第1ハウジング10と第2ハウジング20が嵌合する過程では、第1ハウジング10の1つの係止解除部17が、左右に並ぶ2つの係止突起35の間に進入して前後方向へ相対変位し得るようになっている。
【0036】
図6,8示すように、第2端子保持部材32には、左右対称な一対の突起部36が形成されている。一対の突起部36は、前後方向(第1ハウジング10と第2ハウジング20の嵌合方向と平行な方向)に細長く延びた形状であり、第2端子保持部材32の下面から突出している。第2端子保持部材32からの一対の突起部36の突出方向は、下側の左右2つの係止突起35の突出方向と同じ方向である。
【0037】
第1端子保持部材21と第2端子保持部材32を組み付ける際には、第2端子保持部材32を、第1端子保持部材21に対し後方から収容空間25内に挿入するとともに、一対の突起部36を一対の溝部30に進入させる。第1端子保持部材21と第2端子保持部材32を組み付けた状態では、図6に示すように、一対の突起部36の前端が溝部30の前端の前止まり部31に当接することより、第1端子保持部材21に対する第2端子保持部材32の前方への相対変位が規制される。
【0038】
また、図5に示すように、上下一対の弾性係止片29が係止突起35に対し後方から係止することにより、第1端子保持部材21に対する第2端子保持部材32の後方への相対変位が規制される。弾性係止片29が弾性変形して係止突起35から解離すると、第2端子保持部材32は、収容空間25の内面に摺接しながら第1端子保持部材21に対し後方(第1ハウジング10と第2ハウジング20の嵌合方向と平行な方向)へ相対移動し得るようになっている。換言すると、弾性係止片29が係止突起35から解離することにより、第1端子保持部材21が第2端子保持部材32に対して相対的に前方へ移動し得る状態となる。
【0039】
以上のようにして第1端子保持部材21に第2端子保持部材32を取り付けると、第2ハウジング20の組付けが完了する。図5,6示すように、両端子保持部材21,32を組み付けた状態では、第2端子保持部材32の前端部は第1端子保持部材21の前端面から突出せず、第2端子保持部材32の後端部は第1端子保持部材21の後端面から突出しない。つまり、第2端子保持部材32の全体が収容空間25内(第1端子保持部材21内)に収容される。第2端子保持部材32の前端面は、第1端子保持部材21の前端面において面一状に露出し、第2端子保持部材32の後端面は、第1端子保持部材21の後端面において面一状に露出する。図2に示すように、第2端子保持部材32の前端部における左右両外側面と規制突起34は、逃がし凹部26において第1端子保持部材21の外側面に露出している。
【0040】
第1ハウジング10と第2ハウジング20を組み付ける際には、第1端子保持部材21を摘んで第2ハウジング20をフード部12内に進入させる。進入の途中では、全ての雄端子金具18のタブ19が雌端子金具37と接触しない状態において、第1ハウジング10の係止解除部17が、左右に並ぶ2つの係止突起35の間に進入し、図1に示すように弾性係止片29を第2端子保持部材32から遠ざける方向へ弾性変形させる。弾性変形した弾性係止片29は、係止突起35から解離する。弾性係止片29が係止突起35から解離すると、第1端子保持部材21が第2端子保持部材32に対して前方へ相対変位可能となる。
【0041】
弾性係止片29が係止突起35から解離した直後に、図2に示すように、第2ハウジング20の規制突起34が第1ハウジング10の規制部16に突き当たるので、第2端子保持部材32は第1ハウジング10に対する嵌合動作を規制される。したがって、嵌合作業の際には、第1端子保持部材21を摘んだままで第1ハウジング10側へ押し込むと、第2端子保持部材32は停止したままで、第1端子保持部材21のみがフード部12内に進入していく。
【0042】
第1端子保持部材21の嵌合が進むのに伴い、第1端子保持部材21に取り付けられている雌端子金具37の弾性接触片38が、雄端子金具18のタブ19に対して弾性的に接触する。これにより、第1端子保持部材21と第1ハウジング10との間には、弾性接触片38とタブ19との間の摩擦に起因する嵌合抵抗が生じる。この第1端子保持部材21の雌端子金具37と雄端子金具18との間の弾性接触に起因する嵌合抵抗は、タブ19と弾性接触片38との接触が開始した時が最大(ピーク)となり、その後の嵌合抵抗は比較的低い値で推移する。
【0043】
第1端子保持部材21がフード部12の奥端面に当接すると、図9に示すように、第1端子保持部材21と第1ハウジング10は正規の嵌合状態となる。正規嵌合状態では、ロックアーム23のロック突起24が第1ハウジング10のロック部15に係止することにより、第1端子保持部材21と第1ハウジング10が離脱規制状態にロックされる。また、第2端子保持部材32は、嵌合動作を規制されたままであるから、第2端子保持部材32の後端部が第1端子保持部材21の後方へ突出した状態となる。
【0044】
第1端子保持部材21が正規嵌合状態になると、図10に示すように、第1端子保持部材21の規制解除部27が第1ハウジング10の規制部16を弾性変形させるので、規制部16が規制突起34から解離する。規制部16が規制突起34から解離すると、規制部16による規制が解除され、第2端子保持部材32の第1ハウジング10への嵌合動作が許容される。したがって、作業者は、第1端子保持部材21から指を離し、第2端子保持部材32の後端部を第1ハウジング10側へ押し込むようにすれば、第2端子保持部材32の嵌合を開始させることができる。規制部16の規制が解除されるタイミングは、第1端子保持部材21の嵌合抵抗のピークが過ぎた後である。
【0045】
第2端子保持部材32の嵌合が開始すると、第2端子保持部材32に取り付けられている雌端子金具37の弾性接触片38が、雄端子金具18のタブ19に対して弾性的に接触する。これにより、第2端子保持部材32と第1ハウジング10との間には、弾性接触片38とタブ19との間の摩擦に起因する嵌合抵抗が生じる。第2端子保持部材32に取り付けられている雌端子金具37の数と、第1端子保持部材21に取り付けられている雌端子金具37の数は、同数なので、第2端子保持部材32の嵌合時に生じる嵌合抵抗の最大値は、第1端子保持部材21の嵌合時に生じる嵌合抵抗の最大値と同じである。
【0046】
この第2端子保持部材32の雌端子金具37と雄端子金具18との間の弾性接触に起因する嵌合抵抗は、タブ19と弾性接触片38との接触が開始した時が最大(ピーク)となる。しかし、この時点では、第1端子保持部材21の雌端子金具37と雄端子金具18との間に生じる嵌合抵抗のピークは過ぎている。図11,12に示すように、第2端子保持部材32がフード部12の奥端面に当接すると、第2端子保持部材32の嵌合が完了し、第1ハウジング10と第2ハウジング20の嵌合が完了する。
【0047】
上記したように、第1端子保持部材21が正規の嵌合状態に至ると第2端子保持部材32の嵌合動作が可能となる。第1端子保持部材21が正規嵌合されていない半嵌合の状態では、規制解除部27が規制部16を弾性変形させていないか、規制部16の弾性変形量が少ないので、規制部16は規制突起34に係止したままである。つまり、第2端子保持部材32は依然として嵌合動作を規制された状態のままであり、第2端子保持部材32の後端部を押しても、第2端子保持部材32の嵌合を開始することはできない。したがって、第2端子保持部材32の嵌合を行うことが可能か否かに基づいて、第1端子保持部材21の嵌合状態を検知することができる。
【0048】
本実施例1のコネクタは、互いに嵌合可能な第1ハウジング10と第2ハウジング20とを有する。第2ハウジング20は、第1端子保持部材21と第2端子保持部材32とを相対変位可能に組み付けて構成される。第1端子保持部材21と第2端子保持部材32の相対変位方向は、第1ハウジング10と第2ハウジング20の嵌合方向と平行な方向である。第1ハウジング10には、第1端子保持部材21の嵌合動作を許容し、かつ第2端子保持部材32の嵌合動作を規制する規制部16が設けられている。第1端子保持部材21には、第1端子保持部材21の嵌合動作が開始した状態(第1端子保持部材21が正規嵌合した状態)において規制部16による規制を解除する規制解除部27が設けられている。
【0049】
この構成によれば、第1ハウジング10と第2ハウジング20の嵌合前期は、第2端子保持部材32の嵌合動作が規制部16により規制され、嵌合抵抗は第1ハウジング10と第1端子保持部材21との間のみに生じる。第1ハウジング10と第2ハウジング20の嵌合後期は、第2端子保持部材32に対する嵌合動作の規制が規制解除部27によって解除され、第2端子保持部材32の嵌合動作が行われ、第1ハウジング10と第2端子保持部材32との間に嵌合抵抗が生じる。
【0050】
本実施例1のコネクタは、嵌合過程における第1端子保持部材21と第2端子保持部材32の嵌合開始のタイミング(つまり、嵌合抵抗が最大値になるタイミング)を異ならせている。したがって、第1端子保持部材21と第2端子保持部材32の嵌合が同時に開始する場合に比べると、本実施例1のコネクタは、嵌合抵抗のピーク値(最大値)が低減されている。本実施例1のコネクタは、レバーを用いた倍力機構が不要なので、小型化を図ることができる。
【0051】
規制解除部27は、第1端子保持部材21が正規嵌合したときに規制部16の規制を解除する位置に配されている。この構成によれば、第2端子保持部材32の嵌合動作は、第1端子保持部材21が正規嵌合したときに開始することができる。つまり、第2端子保持部材32が、第1端子保持部材21の嵌合状態を検知する機能を発揮する。
【0052】
第1端子保持部材21には、第1ハウジング10と第2ハウジング20が未嵌合の状態で第2端子保持部材32を収容する収容空間25が形成されている。この構成によれば、第2端子保持部材32に対する異物の干渉を防止できる。また、第2端子保持部材32が嵌合動作を規制されている状態で第1端子保持部材21が嵌合したときに、第2端子保持部材32の嵌合方向後端部は、第1端子保持部材21の後方へ突出するように配される。この構成によれば、第1端子保持部材21の嵌合後は、第2端子保持部材32の後端部を押し込むことによって第2端子保持部材32の嵌合を行うことができるので、嵌合作業を行い易い。
【0053】
第1端子保持部材21は、第1ハウジング10に係止するロックアーム23と、第2端子保持部材32を挟むように配された一対の弾性係止片29と、一方向に並ぶように配された複数の第1端子収容室22とを有する。ロックアーム23と一対の弾性係止片29は、複数の第1端子収容室22の並び方向(左右方向)と交差する上下方向に一列に並ぶように配されている。
【0054】
かかる第1端子保持部材21において、第1端子収容室22が、ロックアーム23と弾性係止片29との間、又は一対の弾性係止片29の間に配されている場合には、第2ハウジング20がロックアーム23と弾性係止片29の並び方向(上下方向)において大型化する。そこで、本実施例のコネクタは、ロックアーム23と一対の弾性係止片29のうち少なくとも1つ(ロックアーム23)を、隣り合う2つの第1端子収容室22の間に配した。この構成によれば、ロックアーム23と弾性係止片29の並び方向(上下方向)において、第2ハウジング20の小型化を図ることができる。
【0055】
第2端子保持部材32は、第1端子保持部材21の弾性係止片29に係止する係止突起35を有する。同じく、第2端子保持部材32は、第1端子保持部材21に対して正規の向きに取り付けられたときにのみ第1端子保持部材21の溝部30に嵌入する突起部36を有している。突起部36は、第2端子保持部材32の外面から下側の係止突起35と同じ方向(下向き)に突出している。本実施例のコネクタは、突起部36の突出方向が係止突起35と同じ方向なので、突起部36が係止突起35とは異なる方向へ突出する場合に比べると、第2端子保持部材32の小型化を図ることができる。
【0056】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、規制部を第1ハウジングに一体に形成したが、規制部は、第1ハウジングとは別体の部品であってもよい。
上記実施例では、規制解除部を第1端子保持部材に一体に形成したが、規制解除部は、第1端子保持部材とは別体の部品であってもよい。
上記実施例では、第1端子保持部材が正規嵌合したときに規制部による規制が解除されるようにしたが、第1端子保持部材が正規嵌合する前に、規制部による規制が解除されるようにしてもよい。この場合、規制部の規制を解除するタイミングは、第1端子保持部材の嵌合抵抗のピークが過ぎた後にすることが好ましい。
上記実施例では、第1ハウジングと第2ハウジングが未嵌合の状態では、第2端子保持部材の全体が第1端子保持部材内に収容されるが、両ハウジングが未嵌合の状態で、第2端子保持部材の一部のみが第1端子保持部材内に収容されるようにしてもよく、第2端子保持部材の全体が第1端子保持部材の外部に露出していてもよい。
上記実施例では、第1ハウジングと第2ハウジングが未嵌合の状態では、第2端子保持部材が第1端子保持部材内に収容されるが、両ハウジングが未嵌合の状態で、第1端子保持部材の少なくとも一部が第2端子保持部材内に収容されるようにしてもよい。
上記実施例では、極数(雄端子金具と雌端子金具の数)が8極である場合について説明したが、本発明は、極数が7極以下の場合や9極以上の場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10…第1ハウジング
11…ハウジング本体部
12…フード部
13…第1キャビティ
14…第2キャビティ
15…ロック部
16…規制部
17…係止解除部
18…雄端子金具
19…タブ
20…第2ハウジング
21…第1端子保持部材
22…第1端子収容室
23…ロックアーム
24…ロック突起
25…収容空間
26…逃がし凹部
27…規制解除部
28…型抜き空間
29…弾性係止片
30…溝部
31…前止まり部
32…第2端子保持部材
33…第2端子収容室
34…規制突起
35…係止突起
36…突起部
37…雌端子金具
38…弾性接触片
F…雌側コネクタ
M…雄側コネクタ
W…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12