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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】育苗培土
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20180101AFI20230214BHJP
   A01G 22/35 20180101ALI20230214BHJP
   A01G 24/15 20180101ALI20230214BHJP
   A01G 24/28 20180101ALI20230214BHJP
【FI】
A01G9/00 K
A01G22/35 A
A01G24/15
A01G24/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019180452
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021052690
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】庄山 寿
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-187273(JP,A)
【文献】特開2018-139516(JP,A)
【文献】特開平01-117722(JP,A)
【文献】村山徹,春まきタマネギのリン酸・カリ減肥栽培における定植前のリン酸施用の収量への影響,園芸学研究,日本,一般社団法人園芸学会,2016年09月10日,第15巻,別冊2,pp. 403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/00
A01G 22/35
A01G 9/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植用の苗を育てる培土(S)を、殺菌処理した精土(E)と、窒素成分(N)と、リン酸成分(P)とで構成し、
該培土(S)の窒素成分(N)の含有量を500mg~1000mg/Lとし、該窒素成分(N)のうち、30~50%を前記種子(T)の播種後に一定期間を経ると苗の根部(R)が吸収可能になる遅効性窒素成分(Ns)とし、
前記培土(S)に作物の種子(T)を播種することを特徴とする育苗方法。
【請求項2】
育苗箱(200)に敷設した前記培土(S)に種子(T)を播種し、
該育苗箱(200)は、育苗箱(200)の下方に地面と接しない空間部が存在する状態で保持する栽培棚(210)に保持させ、根部(R)が下方に向かって伸びることを空気との接触により抑制することを特徴とする請求項1に記載の育苗方法。
【請求項3】
育苗箱(200)に敷設した前記培土(S)に種子(T)を播種し、
根部(R)を伸ばして成長させる育苗土壌に該育苗箱(200)を載置する際、根部(R)を絡み付かせながら下方の育苗土壌に向かって成長させる根切り部材(220)を育苗箱(200)と育苗土壌の間に載置し、
該根切り部材(220)を取り除くと、根部(R)のうち移植作業に不要な部分が共に除去されることを特徴とする請求項に記載の育苗方法。
【請求項4】
前記培土(S)に播種する種子(T)は、播種器具(300)を用いて散播し、前記育苗箱(200)一つにつき、900~1700粒程度の種子(T)を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の育苗方法。
【請求項5】
前記培土(S)に播種する種子(T)は、播種機(1)を用いて条播し、前記育苗箱(200)一つにつき、900~1700粒程度の種子(T)を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の育苗方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、玉ねぎ等の苗の育苗方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
育苗箱となるセルトレイの各セルに玉ねぎの種子を播種し、畝等の育苗土壌にセルトレイを載置し、根部をセルトレイから育苗土壌に亘って伸ばさせながら育苗すると共に、水稲等の根巻きしやすい苗を同時に育苗し、水稲の根部により苗の根鉢を薬剤を用いずに固める技術が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-258317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルトレイの各セルで一株ずつ育苗することにより、養分や水分の取り合いをすることなく苗は成長できるので、生育不良や立ち枯れにより移植に適さない苗になることが抑制される。また、根部をセルトレイの下方の孔から育苗土壌に伸ばさせることにより、成長中の苗に余分なストレスが生じにくく、苗の生育が安定する。
【0005】
しかしながら、苗が移植適期まで成長したとき、育苗土壌内の根部に長くまっすぐに伸びているので、そのまま投入すると移植機の植付装置から苗の一部がはみ出し、正常な姿勢で植え付けられないことや、植え付けられた苗の一部が地面から離間する植付装置に接触し、引き抜かれてしまう問題がある。
【0006】
この問題は、移植作業前に徒長した根部を切除し、適切な苗の丈とすることで解消できるが、移植機の使用に適した一般的なセルトレイでは、200~300本程度の苗が育っているので、徒長した根部の切除作業に多大な時間と労力を要する問題がある。
【0007】
また、一般的に使用されるセルトレイはセル同士を一定の間隔を空けて配置しているが、この間隔となる部分は育苗を行えない余分なスペースであり、セルトレイが占有する面積に対する育苗面積が狭くなる問題がある。
【0008】
本発明は、移植前に根部を切除する作業に要する時間と労力を軽減できると共に、育苗箱が占有する面積に対する育苗面積をできるだけ広くする育苗方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0010】
請求項1に係る発明は、移植用の苗を育てる培土(S)を、殺菌処理した精土(E)と、窒素成分(N)と、リン酸成分(P)とで構成し、該培土(S)の窒素成分(N)の含有量を500mg~1000mg/Lとし、該窒素成分(N)のうち、30~50%を前記種子(T)の播種後に一定期間を経ると苗の根部(R)が吸収可能になる遅効性窒素成分(Ns)とし、前記培土(S)に作物の種子(T)を播種することを特徴とする育苗方法とした。
請求項2に係る発明は、育苗箱(200)に敷設した前記培土(S)に種子(T)を播種し、該育苗箱(200)は、育苗箱(200)の下方に地面と接しない空間部が存在する状態で保持する栽培棚(210)に保持させ、根部(R)が下方に向かって伸びることを空気との接触により抑制することを特徴とする請求項1に記載の育苗方法とした。
【0011】
請求項3に係る発明は、育苗箱(200)に敷設した前記培土(S)に種子(T)を播種し、根部(R)を伸ばして成長させる育苗土壌に該育苗箱(200)を載置する際、根部(R)を絡み付かせながら下方の育苗土壌に向かって成長させる根切り部材(220)を育苗箱(200)と育苗土壌の間に載置し、該根切り部材(220)を取り除くと、根部(R)のうち移植作業に不要な部分が共に除去されることを特徴とする請求項に記載の育苗方法とした。
【0012】
請求項4にかかる発明は、前記培土(S)に播種する種子(T)は、播種器具(300)を用いて散播し、前記育苗箱(200)一つにつき、900~1700粒程度の種子(T)を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の育苗方法とした。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記培土(S)に播種する種子(T)は、播種機(1)を用いて条播し、前記育苗箱(200)一つにつき、900~1700粒程度の種子(T)を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の育苗方法とした。
【0014】
また、請求項に係る第1の関連発明は、移植用の苗を育てる培土(S)を、殺菌処理した精土(E)と、窒素成分(N)と、リン酸成分(P)とで構成し、該培土(S)のリン酸成分(P)は、50~75%を正リン酸(Pc)とし、25~50%を亜リン酸(Ps)とし、前記培土(S)に作物の種子(T)を播種することを特徴とする育苗方法とした。
【0015】
また、第1の関連発明に係る第2の関連発明は、前記培土(S)に播種する種子(T)は、播種機(1)を用いて条播し、前記育苗箱(200)一つにつき、900~1700粒程度の種子(T)を用いることを特徴とする育苗方法とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明により、窒素成分(N)が30~50%を遅効性窒素成分(Ns)であることにより、発芽した種子(T)が培土(S)中の窒素成分(N)を過剰に吸収し、育苗途中で窒素成分(N)の不足により成長不良を起こすことが防止できる。
【0017】
また、播種作業後に窒素成分(N)を追加する作業が不要になる、あるいは、必要であっても作業回数を減らすことができるので、労力の軽減が図られる。
【0018】
請求項2の発明により、請求項1の発明の効果に加えて、育苗箱(200)を栽培棚(210)に保持させ、根部(R)が地面に接さない状態で育苗することにより、育苗箱(200)の底面よりも下方、即ち培土(S)の無い場所には、根部(R)は伸びていくことができなくなる
【0019】
これにより、移植作業前に、不要となる根部(R)の徒長部分を切除する作業が不要となり、作業能率や植付精度の向上、労力の軽減が図られる
【0020】
請求項3の発明により、請求項の発明の効果に加えて、育苗土壌内で根部(R)を下方に向かって成長させることができるので、育苗中の苗に不要なストレスが生じにくく、苗の生育が安定する
また、育苗箱(200)を育苗土壌に設置する際、育苗箱(200)と育苗土壌の間に、成長する根部(R)が通過しつつ絡み付く根切り部材(220)を載置することにより、移植作業の前に根切り部材(220)を取り除く際に絡み付いた根部(R)の徒長部分を同時に取り除くことができる。
これにより、複数の苗の根部(R)の徒長部分を一度に切除できるので、作業能率が向上すると共に、労力の軽減が図られる。
【0021】
請求項4の発明により、請求項1から3のいずれか1項の発明の効果に加えて、育苗箱(200)に900~1700粒程度の種子(T)を散播することにより、セルトレイ等の栽培可能な苗の数が決められているものよりも大量の苗を育苗できるので、育苗に必要となるスペースの面積の軽減が図られる
【0022】
また、播種器具(300)を用いて手作業で播種ができるので、大規模な播種設備を用いる必要が無く、作業に要するコストの低減が図られる
【0023】
請求項5の発明により、請求項1から3のいずれか1項の発明の効果に加えて、育苗箱(200)に敷設した培土(S)に、播種機(1)を用いて種子(T)を条播させることにより、苗の生育スペースが均等に確保できるので、苗の生育が安定すると共に、育苗中に枯れる苗の発生が防止される
【0024】
また、播種機(1)に育苗箱(200)、培土(S)及び種子(T)をセットしておけば、自動的に播種や覆土作業を行うことができるので、労力の軽減が図られる
【0025】
また、請求項1に関連する、第1の関連発明の効果により、リン酸成分(P)を、50~75%の正リン酸(Pc)に、25~50%の亜リン酸(Ps)を加えて構成することにより、正リン酸(Pc)のみを用いるときよりもリン酸成分(P)の使用量を減らすことができるので、育苗にかかるコストの低減が図られる
また、亜リン酸(Ps)には、培土(S)中に同量以上の正リン酸(Pc)が含まれていると、苗の生育を促進すると共に病害への耐性を高める作用があるので、苗の生育が良好になると共に、育苗中に病害により枯れる苗が減少する。
【0026】
第2の関連発明により、第1の関連発明の効果に加えて、リン酸成分(P)の使用量が従来よりも抑えられることにより、苗を移植する時期には根部(R)の周囲を覆う培土(S)にリン酸成分(P)が殆ど残らなくなるので、圃場に持ち込まれたリン酸成分(P)が圃場外の土や水を汚染することが防止される
【0027】
(削除)
【0028】
(削除)
【0029】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】播種機を示す側面図
図2】播種機を示す平面図
図3】育苗箱供給装置の要部を示す平面図
図4】育苗箱供給装置の要部を示す側面図
図5】下受板、上受板及び落とし板を示す斜視図
図6】播種装置の穴開け突起部を備える播種繰出ローラを示す要部側面図
図7】別構成例の播種装置の穴開け突起部を備える播種繰出ローラを示す要部側面図
図8】別構成例の播種機のレイアウトを示す側面図
図9】別構成例の播種機のレイアウトを示す平面図
図10】別構成例の播種機のレイアウトを示す側面図
図11】別構成例の播種機のレイアウトを示す平面図
図12】(a)育苗箱に玉ねぎの種子を散播した状態を示す平面図、(b)玉ねぎの種子が発芽して成長した状態を示す平面図
図13】(a)播種直後の育苗箱を載置した栽培ベンチを示す図、(b)玉ねぎの種子が発芽して成長し、根部は栽培ベンチの下方に伸びていない状態を示す平面図
図14】玉ねぎの育苗に用いる育苗箱を示す平面図
図15】(a)畝上に根切りシートを介して播種直後の育苗箱を載置した状態を示す図、(b)玉ねぎの種子が発芽して成長し、根切りシートを貫通して畝内に根部が伸びた状態を示す図
図16】(a)裸種子の模式図、(b)コート種子の模式図
図17】(a)裸種子同士の左右間隔を15mmとし、条数を10条としたときの育苗箱への播種状態を示す平面図、(b)裸種子同士の左右間隔を15mmとし、条数を12条としたときの育苗箱への播種状態を示す平面図
図18】(a)裸種子同士の左右間隔を20mmとし、条数を10条としたときの育苗箱への播種状態を示す平面図、(b)裸種子同士の左右間隔を20mmとし、条数を12条としたときの育苗箱への播種状態を示す平面図
図19】(a)コート種子同士の左右間隔を8mmとし、条数を18条としたときの育苗箱への播種状態を示す平面図、(b)コート種子同士の左右間隔を8mmとし、条数を24条としたときの育苗箱への播種状態を示す平面図
図20】コート種子同士の左右間隔を12mmとし、条数を18条としたときの育苗箱への播種状態を示す平面図
図21】玉ねぎを育苗する培土の成分比率を示す円グラフ
図22】別例の玉ねぎを育苗する培土の成分比率を示す円グラフ
図23】(a)裸種子を播種するハンドシーダーのスライド板に種子を貯留した状態を示す要部側面図、(b)ハンドシーダーから育苗箱に種子を播種する状態を示す要部側面図
図24】ハンドシーダーのスライド板と固定板を示す分解図
図25】コート種子を播種するハンドシーダーのスライド板に種子を貯留した状態を示す要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
【0032】
まず、図1から図5を用いて、床土詰め、播種及び覆土の作業を行う播種機1について説明する。
【0033】
播種機1は、育苗箱200を一方向に搬送する搬送経路3を備え、該搬送経路3上に支持され該搬送経路3に沿って該搬送経路3の上手側から順に、上下に複数枚に積み重ねられた育苗箱200を下側から順に繰り出して搬送経路3上に供給する育苗箱供給装置4と、育苗箱200に床土を詰める床土詰装置6と、床土を詰めた育苗箱200に灌水する灌水装置29と、育苗箱200に播種する播種装置7と、育苗箱200に覆土する覆土装置8を設けている。
【0034】
なお、育苗箱供給装置4及び床土詰装置6及び播種装置7及び覆土装置8の各々の装置は、他の装置と独立して単独で設置できるように前後左右計4本の脚部9,10で支持されている。
【0035】
また、覆土装置8の前側の左右の脚部10には上下に回動するアーム11を介して該脚部10の下端より下方に突出させることができる車輪12を各々取り付けており、該車輪12を下方に突出させ播種機1を持ち上げて他の脚部9を地面から浮かせることにより、播種機1を容易に移動させることができる。
【0036】
搬送経路3は、左右の搬送ガイド15で構成され、この左右の搬送ガイド15の間で長手方向を前後に向けた育苗箱200を搬送する構成となっている。搬送経路3には、駆動するコンベアとして、ベルト式の育苗箱搬送コンベアである育苗箱供給部搬送コンベア16及び床土詰部搬送コンベア17と、ローラ式の育苗箱搬送コンベアである播種部搬送コンベア18及び覆土部搬送コンベア28を備えている。
【0037】
そして、非駆動でフリーで回転するローラ式のコンベアとして、育苗箱供給部搬送コンベア16と床土詰部搬送コンベア17の間に床土詰前コンベア62を設け、床土詰部搬送コンベア17と播種部搬送コンベア18の間に灌水部コンベア63を設け、播種部搬送コンベア18と覆土部搬送コンベア28の間に覆土前コンベア64を設け、覆土部搬送コンベア28の後側に育苗箱送出コンベア88を設けている。
【0038】
育苗箱供給装置4は、上下に複数枚に積み重ねられた育苗箱群を下側から受ける下受板34と、前記育苗箱群の下から2枚目の育苗箱200を下側から受ける上受板35と、育苗箱群の最下位の育苗箱200を強制的に下方へ落とす落とし板36を備え、人手等により上受板35上に供給された育苗箱群を先ず下受板34上に引き継ぎ、上受板35で育苗箱群の下から2枚目の育苗箱200から上側の育苗箱200を支持した状態で下受板34による育苗箱群の最下位の育苗箱200の支持を解除し、その状態で落とし板36が最下位の育苗箱200を上側から下方に押して育苗箱群から分離して落下させて繰り出して育苗箱供給部搬送コンベア16上に供給し、以下この作動工程を繰り返すことにより育苗箱群の下側の育苗箱200から順に育苗箱供給部搬送コンベア16上に供給する構成としている。
【0039】
なお、下受板34、上受板35及び落とし板36は、育苗箱群に作用する各々の部分が前後方向で重複しないように各々育苗箱群の前後左右4箇所に設けられ、育苗箱群の左右外側から作用し、育苗箱供給部搬送コンベア16の作動に連動し、育苗箱供給部搬送コンベア16上において先に供給した育苗箱200と次に供給する育苗箱200との間に隙間が生じないように作動する。
【0040】
前記伝動構成について説明すると、育苗箱供給モータ94に設けた出力スプロケット95から搬送伝動チェーン96及び駆動スプロケット38へ伝動し、該駆動スプロケット38と一体回転する搬送上手側のローラ37を介して育苗箱供給部搬送コンベア16を駆動する。
【0041】
そして、駆動スプロケット38からチェーン39及び従動スプロケット40を介して第一のカウンタ軸41へ伝動し、該第一のカウンタ軸41と一体回転する駆動スプロケット42からチェーン43、従動スプロケット44及び一方向クラッチを介して第二のカウンタ軸45へ伝動し、該第二のカウンタ軸45の左右両端部に設けた駆動ベベルギヤ46から従動ベベルギヤ47を介して左右各々の落とし用軸48を互いに反対側に駆動回転させる。この落とし用軸48と落とし板36とが一体回転し、落とし板36が左右内側で下側に移行する方向に回転する。
【0042】
また、落とし用軸48の他端部からアーム49,51及びリンク50等を介して落とし用軸48の上方に位置する各々の受板用軸52を所定角度範囲内で揺動させ、該受板用軸52と一体回転する下受板34及び上受板35を揺動させ、下受板34と上受板35とを育苗箱群に交互に作用させて、育苗箱群を順次下降させる。
【0043】
また、第二のカウンタ軸45を手動で回転させるための手動供給操作具となる手動供給レバー53を設けており、該手動供給レバー53により作業者が任意に育苗箱供給部搬送コンベア16上に育苗箱200を落下させて供給することができる。
【0044】
床土詰装置6は、床土となる培土Sを貯留する床土タンク54と、該床土タンク54内の床土を所定量ずつ繰り出して育苗箱200へ落下させて供給する床土繰出具となる床土繰出ベルト55と、育苗箱200上で溢れる床土を均す均平具となる均平ブラシ19と、育苗箱200内に突入して床土を鎮圧する床土鎮圧具となる床土鎮圧ローラ57と、床土繰出ベルト55上の隙間を調節して床土の繰出量を変更調節する床土量調節具となる床土量調節レバーを備え、床土繰出ベルト55が床土を供給する搬送経路3上の床土詰位置の搬送下手側に均平ブラシ19が位置し、均平ブラシ19の搬送下手側に床土鎮圧ローラ57が位置する。
【0045】
床土詰装置6の伝動構成について説明すると、床土繰出モータ20により床土繰出ベルト55が駆動し、該床土繰出ベルト55から歯車伝動機構を介して均平ブラシ19が駆動する。また、床土詰搬送モータ21に設けた出力スプロケット97から搬送伝動チェーン59を介して駆動スプロケット60へ伝動し、該駆動スプロケット60と一体回転する搬送下手側のローラ61により床土詰部搬送コンベア17を駆動する。なお、均平ブラシ19と床土繰出ベルト55とが互いに逆方向に回転する構成としている。
【0046】
なお、床土繰出モータ20又は床土詰搬送モータ21の一方の駆動で、床土繰出ベルト55と均平ブラシ19と床土詰部搬送コンベア17へ伝動する構成としてもよい。
【0047】
播種装置7は、図6に示すとおり、種子タンク68の下部に調節板68bを設けて、種子を所定量ずつ流下口に繰り出し、反時計方向に回転する播種繰出ローラ69の凹溝に種子を取り込み、播種繰出ローラ69の表面に付着した余分の種子を第1ブラシ68dにより落下させる構成とする。該播種繰出ローラ69の外周縁部には、苗トレイ2の床土に接触して種子が入り込む穴開け突起部69a…が、左右方向の所定間隔毎で、且つ円周方向の所定間隔毎に形成される。左右方向の所定間隔、及び円周方向の所定間隔は、苗トレイ2を構成する複数の育苗セル121の左右方向の所定間隔、及び円周方向の所定間隔に対応するものとする。
【0048】
そして、播種繰出ローラ69の上部には回転ブラシ68eをバネにより弾圧的に圧接し、播種繰出ローラ69の凹溝から溢れた種子を除去して種子収容タンク68fに回収し、播種繰出ローラ69の下方に回転した凹溝から搬送中の苗トレイ2の床土に播種する構成としている。
【0049】
また、播種繰出ローラ69の播種位置から種子取り込み位置までの間に固定状の落下ブラシ70を設け、播種できなかった種子を苗トレイ2の床土上に掻き落とし、播種精度の向上と湿った種子の播種精度の向上を図る。
【0050】
また、図7に示すとおり、播種繰出ローラ69の播種位置から種子取り込み位置までの間に回転する第2落下ブラシ68gを設け、播種繰出ローラ69の外周部に第2落下ブラシ68gの外周部を接触させて、播種繰出ローラ69により第2落下ブラシ68gを回転させながら播種残りの種子を落下するように構成してもよい。
【0051】
また、播種装置7は、播種繰出ローラ69に臨む種子タンク68の出口の隙間を調節して播種繰出ローラ69への種子の供給状態を変更調節する種子供給調節具となる種子供給調節ハンドル72を備える。
【0052】
よって、該種子供給調節ハンドル72で調節される種子タンク68の出口から播種繰出ローラ69の繰出溝に種子が供給され、播種繰出ローラ69の回転により該繰出溝が上方へ移動することにより該繰出溝で所定量の種子を移送し、芒、枝梗が付いた種子や芽の伸び過ぎた種子等の播種に不適な種子を繰出溝から除去し、該繰出溝は播種繰出ローラ69の回転により下方へ移動してその下死点位置(播種位置H)で育苗箱200に種子を落下供給する構成となっている。
【0053】
なお、一般的に播種繰出ローラ69の繰出溝は、左右方向(播種繰出ローラ69の回転軸心方向)に長い溝で播種繰出ローラ69の外周に複数配列された構成となっている。種籾の長手方向(長径部)が育苗箱200の長手方向に向くべく、種籾の向きを揃えて育苗箱200へ播種する際は、播種繰出ローラ69の繰出溝を、前後方向(播種繰出ローラ69の回転外周方向)に長い溝で左右に複数配列した構成とすれば、種籾の長手方向(長径部)が繰出溝の方向(前後方向)に沿い、所望の向きで種籾を播種できる。
【0054】
また、播種直後に種籾を床土に軽く押し付ける際は、押付ローラを播種位置Hの直後に設け、押付ローラにより種籾を押し付ける構成とすればよい。
【0055】
播種装置7の伝動構成について説明すると、播種モータ65に設けた出力スプロケット66から繰出伝動チェーン67を介して播種繰出ローラ69へ伝動され、前記出力スプロケット66から第一除去チェーン73及び第二除去チェーン74を介して除去ブラシ70へ伝動され、前記出力スプロケット66から搬送伝動チェーン71を介して播種部搬送コンベア18の搬送下手側のローラ75へ伝動し、該搬送下手側のローラ75からチェーン77を介して搬送上手側のローラ76へ伝動する。尚、搬送上手側のローラ76と搬送下手側のローラ75の間に、播種繰出ローラ69が種子を繰り出して供給する播種位置Hがある。尚、除去ブラシ70及び播種部搬送コンベア18と播種繰出ローラ69とが互いに逆方向に回転するべく、第一除去チェーン73と搬送伝動チェーン71を側面視で交差するように巻き掛けている。尚、播種繰出ローラ69の外周部において除去ブラシ70の位置と播種位置との間には、繰出溝から種子が脱落しないように該繰出溝を覆うガイド体を設けている。
【0056】
覆土装置8は、覆土となる培土Sを貯留する覆土タンク84と、該覆土タンク84内の覆土を所定量ずつ繰り出して育苗箱200へ落下させて覆土位置で供給する覆土繰出具となる覆土繰出ベルト85と、育苗箱200上で溢れる覆土を均す均平具となる均平板86と、覆土繰出ベルト85上の隙間を調節して覆土の繰出量を変更調節する覆土量調節具となる覆土量調節レバーとを備え、覆土繰出ベルト85が覆土を供給する搬送経路3上の覆土位置の搬送下手側に均平板86が位置する。覆土装置8の伝動構成について説明すると、覆土モータ78により覆土繰出ベルト85が駆動し、覆土モータ78に設けた出力スプロケット79から搬送伝動チェーン80を介して覆土部搬送コンベア28の搬送下手側のローラ81へ伝動し、該搬送下手側のローラ81からチェーン98を介して搬送上手側のローラ82へ伝動する。尚、搬送上手側のローラ82と搬送下手側のローラ81の間に、覆土位置がある。尚、覆土繰出ベルト85と覆土部搬送コンベア28とが互いに逆方向に回転するべく、搬送伝動チェーン80を側面視で交差するように巻き掛けている。
【0057】
覆土装置8の前側の脚部10には、育苗箱搬送コンベアを手動で回転させるための操作具となる手動搬送ハンドル92をフック93を介して保持している。この手動搬送ハンドル92により、播種装置7で播種をしている途中で故障で播種機1が停止したときや播種作業を終了するために播種機1を停止させたとき、手動で育苗箱200を搬送して該育苗箱200を播種機1から容易に取り出すことができる。
【0058】
灌水装置29は、灌水部コンベア63の上側に設けられ、灌水部コンベア63の左右の搬送ガイド15から各々立ち上がる左右の支持フレーム100を設け、左右に配列される複数のノズルを備える左右に延びる灌水パイプ99を、左右の支持フレーム100で両持ち支持している。該灌水パイプ99すなわち灌水位置は、灌水部コンベア63の搬送上手寄りの位置に配置されている。
【0059】
床土詰前コンベア62及び灌水部コンベア63及び覆土前コンベア64及び育苗箱取出コンベア88の各々のコンベアは、左右の搬送ガイド15の前後端部で搬送上手側及び搬送下手側の装置に嵌る嵌合部材101により、播種機1本体に対して独立して個別に着脱可能に設けられている。従って、灌水部コンベア63を播種装置7と覆土装置8の間に組み付けることにより、播種装置7と覆土装置8の間に灌水装置29を配置することができる。あるいは、灌水部コンベア63を覆土装置8の後側に組み付けることにより、覆土後に灌水する構成とすることもできる。
【0060】
播種装置7と覆土装置8の間に灌水装置29を配置する際は、灌水装置29と覆土装置8の間隔が十分に得られるように、覆土前コンベア64を灌水部コンベア63の後側に組み付けたり、灌水装置29の後側に組み付けられる覆土前コンベア64を長いコンベアに交換したりすることが望ましい。これにより、床土に吸水性の悪い田土を使用しても、灌水装置29の灌水を床土に浸透させることができ、床土の上面の水がひいた状態で覆土できるので、播種した種籾が酸素欠乏状態になりにくく、安定した発芽率が得られる。また、覆土前コンベア64を非駆動のローラで構成し、この非駆動のローラを任意の位置に組み付けできる構成とすることにより、覆土前コンベア64を伸縮できる構成としてもよい。尚、床土詰装置6と播種装置7の間に灌水装置29を配置する際は、上述と同様の理由から、灌水装置29と播種装置7の間のコンベアを長くすることが望ましい。
【0061】
なお、種子タンク68の上端の開口より覆土タンク84の上端の開口を低位に設け、覆土タンク84の上端の開口より床土タンク54の上端の開口を低位に設けている。これにより、使用量が多いため作業者が頻繁に床土タンク54へスコップで床土を供給しなければならないが、この床土供給作業を低位で容易に行え、次いで供給頻度が高い覆土タンク84への覆土供給作業を容易に行える。しかも、種子タンク68の上端の開口が高位となるので、床土供給作業又は覆土供給作業を行うとき、誤って種子タンク68へ床土又は覆土を供給するようなことを防止でき、土が供給されることで播種装置7が故障するようなことを防止できる。
【0062】
また、左右幅がコンベアの左右幅より小さい(30cm未満の)育苗箱110に播種作業を行うときは、図2に示すように、コンベアの左右一方側にコンベア搬送方向の適宜間隔で複数の規制ガイド112を取り付け、コンベア上の育苗箱110の左右位置を規制するようにすればよい。このとき、播種装置7で繰り出される種子が前記左右一方側の部分で無駄になるので、この種子を受ける受け容器111を播種装置7下方で前記左右一方側の位置に配置すればよい。
【0063】
なお、栽培する作物の品種や、栽培に用いる培土Sの成分比等の条件によっては、覆土装置8で供給する覆土に成長に必要な水分が不足していることがある。
【0064】
不足する水分を供給すべく、図8及び図9に示すとおり、覆土装置8の搬送下手側に、第2灌水装置102を設ける。該第2灌水装置102は、育苗箱送出コンベア88の上側に設けられ、育苗箱送出コンベア88の左右の搬送ガイド15から各々立ち上がる左右の灌水支持フレーム103を設け、左右に配列される複数のノズルを備える左右に延びる第2灌水パイプ104を、左右の灌水支持フレーム103で両持ち支持している。該第2灌水パイプ104の灌水位置は、育苗箱送出コンベア88の搬送上手寄りの位置に設定される。
【0065】
これにより、水分の不足により種子Tの発芽率が低下することや、苗の成長に悪影響が生じることが防止され、苗の成長を安定させることができる。
【0066】
上記とは逆に、育苗箱200の底に敷き詰める培土Sに灌水すると、種子Tの周囲に水分が溜まり過ぎ、種子Tが腐って発芽しなくなるおそれがあるときは、図10及び図11に示すとおり、灌水装置29を配置せず、第2潅水装置102のみを配置し、覆土装置8で覆土した後に灌水を行うとよい。
【0067】
これにより、水分過多により種子Tの発芽率が低下することを防止できるので、培土Sに空きスペースが生じることが無く、栽培計画に即した数の苗を育苗できる。
【0068】
野菜用の苗移植機が用いる玉ねぎ等の野菜類の苗は、露地、あるいはセルトレイで移植可能な段階まで育苗している。
【0069】
しかしながら、露地での育苗は、育苗土壌に生えてくる雑草の処理や、日照や地温、風通し等の影響で生育の悪い苗の間引き等、管理作業に多くの工数を要し、作業者の労力や作業コストが多く必要になる。さらに、生育した苗を移植に使用する前に、育苗土壌から掘り出す作業や、移植時に根部を適切な長さにする根切り作業が必要になるので、いっそう作業者の労力や作業コストが必要になる。
【0070】
セルトレイによる栽培は、育苗ハウス等の閉鎖空間で行われるものであり、さらには成分が調整された培土で育つので、雑草の除去や間引き等の作業工数は低減される。また、セルトレイにより根部が徒長しにくいので根切り作業が不要であると共に、苗を一株ずつ取り出すことができるので、掘り起こす作業も不要である。
【0071】
しかしながら、市販の標準的なセルトレイは、一つ当たりの栽培可能な苗の数が決まっている。例えば、200穴、288穴、448穴等のものがあり、セルトレイ一つ当たりの苗の栽培数は、この穴の数と同数である。
【0072】
一方、セルトレイは、セル同士に間隔を設ける仕切り部分や、縁部分があるので、セルトレイの面積に比べて苗の栽培数が少なくなる問題がある。
【0073】
上記の栽培方法の利点を得つつ、問題の発生を防止すべく、次の栽培方法が考えられる。
【0074】
図12(a)に示すとおり、水稲と野菜の育苗に兼用できる育苗箱200を用意し、該兼用育苗箱200に培土Sを敷設し、この培土S上にハンドシーダー等の道具を利用して玉ねぎの種子Tをばら蒔いて播種する。このとき、育苗箱200の寸法が短辺30cm×
長辺60cmを例とすると、600粒から1000粒の種子Tを、なるべく偏りなく播種すると、苗の生育スペースが確保され、均等且つ安定した苗に成長しやすくなる。これらの種子Tが成長すると、図12(b)で示すとおり、育苗箱200内に相当数の苗が立ち並ぶ。
【0075】
前記育苗箱200の底部は、培土Sは落下しないが、苗の根部Rが略直下に向かって成長が可能な、複数の細かい孔部が底部に形成されたもの、あるいは細かい網目状の底部を有するものが望ましい。
【0076】
なお、玉ねぎの苗の出芽から移植適期における丈は、品種により多少差はあるものの、水稲苗の生育段階において、第三葉が生えた「稚苗」から第四葉が生えた「中葉」と称される段階のものと同程度の丈(例:12~18cm)の範囲に収まるので、水稲苗の稚苗用、または中苗用の育苗箱を利用すると、上下幅も抑えられ、育苗を行わない時期に多数積み重ねても収納スペースが抑えられる。
【0077】
そして、図13(a)(b)及び図14に示すとおり、種子Tを培土Sで覆土した後、この育苗箱200を、地面からある程度上方に離間した位置で支持する、育苗箱200を支持可能な枠を有しつつ底部が開放されている、あるいは目の大きな網目状の底部を有する栽培ベンチ210に載置し、成長により根部Rが育苗箱200の底部よりも下方に伸びようとすると、空気や光に接してそれ以上下方に伸びず、周囲の培土Sに絡みながらに伸びる、エアプルーニング(空気根切り)に適した環境で栽培するものとする。
【0078】
セルトレイで一株ずつ苗を栽培する方法では、栽培ベンチ上で栽培し、エアプルーニングにより培土中に根を張らせようとしても、セル一つ当たりの培土の量が少なく、また根部がまっすぐ伸びようとする玉ねぎの苗では周囲の培土に根が張りにくく、移植機で植え付ける際に必要な根鉢が弱く、植え付けた苗が倒伏姿勢になりやすい。
【0079】
したがって、畝などの上に播種後のセルトレイ育苗箱を載置し、根部を培土よりも下方の土中まで伸ばさせ、培土への根部の絡み付きを強くして、根鉢の強い苗を作る栽培方法が存在する。しかしながら、この従来の育苗方法では、セルトレイ育苗箱の下方に伸びた根部が移植機の植付具の内に入り込む際に邪魔になるので、移植作業の前に不要な根部の除去作業が必要になり、作業者の労力が増加する問題がある。
【0080】
これに対して、本願は、育苗箱200内の培土Sを仕切ることなく多数の種子Tを播種しているので、少なくとも下方空間に十分な空気の流入がある栽培ベンチ210に育苗箱200を載置して下方への根部Rの成長を規制しても、複数の苗の根部R同士を培土S中に絡み付かせることで根鉢を移植機での移植に適した強固なものとすることができる。
【0081】
さらに、根部Rが育苗箱200の下方に突出しないので、移植作業前に不要な根部Rの除去作業が不要になるので、余分な労力が不要になると共に、根部Rの処理忘れによる植付不良の発生が防止される。
【0082】
そして、上記玉ねぎの種子Tの発芽率を80%とすると共に、発芽したものは順調に移植適期まで成長すると仮定すると、1つの育苗箱200から480本から800本の玉ねぎの苗を得ることができる。
【0083】
これは、同サイズのセルトレイ育苗(200本~288本)に比べると、2倍から4倍の数であり、従来よりも育苗作業スペースを狭くすることが可能になる。育苗作業スペースが狭くなると、育苗箱200の使用数や栽培施設の面積を削減でき、栽培コストの低減が図られると共に、育苗作業者が移動する距離、あるいは面積を抑えられるので、作業者の労力の低減や作業能率の向上が図られる。
【0084】
448穴のセルトレイであれば、数値上の差は確かに小さくなるが、市販の448穴のセルトレイはその寸法が619mm×315mmであり、1枚当たりの面積は約19500平方mmである。一方、本件の育苗箱200の寸法は600mm×300mmであり、1枚当たりの面積は約18000平方mmであるので、育苗箱1つ当たり約8%面積の差が生じることになる。したがって、本件の育苗箱200は栽培作業時の占有スペースが抑えられるので、同一面積ではさらに多くの苗を育てることが可能になる。
【0085】
上記では、栽培ベンチ210に育苗箱200を載置し、エアプルーニングにより余分な根部Rの除去作業を抑えることが可能な育苗方法を示したが、玉ねぎの品種や栽培環境(風通しや気温、湿度等)によっては、育苗方法が適切でなく、発芽率の低下や生育不良の発生が考えられることもある。
【0086】
次に示すのは、従来の育苗作業と同様に、畝の上に育苗箱200を載置し、根部Rを下方の畝内に伸ばさせる方法である。玉ねぎの根部Rは遮るものが無ければ直線的に伸びやすく、土壌内に自然に伸びていくので、苗にかかるストレスが低減され、おおよその玉ねぎの品種の栽培に適している。
【0087】
畝上での育苗時には、余分に伸びた根部Rの除去作業にかかる時間や労力を低減すべく、畝と育苗箱200の間に根切りシート220を敷設して育苗作業を行う。該根切りシート220は、根部Rが成長に伴い貫通可能であり、且つ細根が絡みやすい不織布や合成樹脂で構成されるものであり、移植に適した段階まで苗が成長した際には根部Rを介して育苗箱200の底面に張り付いた状態となる。
【0088】
この状態で根切りシート220を育苗箱200から引き剥がすと、育苗箱200から下方に突出している移植作業に適さない根部Rが根切りシート220により引きちぎられるので、数百本(複数)の苗の根部Rの除去作業を略同時に行うことができ、作業時間や労力の軽減が図られる。
【0089】
なお、根部Rの張り方によっては根切りシート220を剥がした際に根切りシート220によって引きちぎられなかったものは、手作業で処理する。
【0090】
上記では、育苗箱200に敷設した培土Sに、ハンドシーダー等を用いて種子を手作業で播種しており、作業者が気を付けていても苗の発生箇所に偏りが生じやすく、密集して苗が育つ箇所と、生育可能なスペースでありながら苗が生えない場所が発生する。
【0091】
苗が密集している箇所では、水分や養分の奪い合いにより苗の成長不良や立ち枯れが生じやすく、苗の量が減少してしまう問題がある。さらに、成長した苗の根部R同士が絡み合い、移植作業時に苗を一本ずつに分ける際に根部Rが傷付き、玉ねぎが実らない、実っても商品に適さない等、収穫量が減少する問題がある。
【0092】
この問題を解消すべく、播種機1を用いて育苗箱200に種子Tを所定間隔毎に条播し、種子T同士の成長スペースを均等にする方法が考えられる。
【0093】
このとき、播種される種子Tは、図16(a)に示す、収穫後に特段の処理が行われていない裸種子Tn、あるいは図16(b)に示す、発芽時期を揃えるプライミング処理が施された種子Tをペレットでコーティングして大きさを均一にしたコート種子Tcのどちらかを用いることが多い。
【0094】
前記播種装置7を用いて、裸種子Tnを育苗箱200に播種するとき、短辺方向(左右方向)において10~12条の条播を行うものとする。なお、裸種子Tcは、一条の一カ所につき3~4粒を同時に播種するものとし、この一カ所の径を約2mmとする。
【0095】
このとき、裸種子Tn同士の左右間隔は、15mm~20mmの範囲で設定するが、育苗箱200の外周の壁部分付近では根部Rの成長範囲が制限されるので、播種は育苗箱200の左右壁部分から各々所定間隔を空けて行うものとする。
【0096】
このとき、図17(a)に示すとおり、裸種子Tn同士の左右間隔を15mmとし、条数を10条とすると、10カ所の裸種子Tnが占める幅が2mm×10で20mm、裸種子Tn同士の左右間隔部が9カ所で15mm×9で135mm、合計155mmの左右幅が必要となる。このとき、左右両外側の播種条と育苗箱200の左右壁部とは、各々72.5mmの間隔を形成する。
【0097】
条数が12条であるときは、図17(b)に示すとおり、12カ所の裸種子Tnが占める幅が2mm×12で24mm、裸種子Tn同士の左右間隔部が11カ所で15mm×11で165mm、合計189mmの左右幅が必要となる。このとき、左右両外側の播種条と育苗箱200の左右壁部とは、各々55.5mmの間隔を形成する。
【0098】
次に、裸種子Tn同士の左右間隔を20mmとし、条数を10条とすると、図18(a)に示すとおり、10カ所の裸種子Tnが占める幅が2mm×10で20mm、裸種子Tn同士の左右間隔部が9カ所で20mm×9で180mm、合計200mmの左右幅が必要となる。このとき、左右両外側の播種条と育苗箱200の左右壁部とは、各々50mmの間隔を形成する。
【0099】
条数が12条であるときは、図18(b)に示すとおり、12カ所の裸種子Tnが占める幅が2mm×12で24mm、裸種子Tn同士の左右間隔部が11カ所で20mm×11で220mm、合計244mmの左右幅が必要となる。このとき、左右両外側の播種条と育苗箱200の左右壁部とは、各々33mmの間隔を形成する。
【0100】
そして、育苗箱200の前後長さ方向においては、裸種子Tn同士の前後間隔を約13mmの間隔を空けて播種するものとする。育苗箱200の長辺の長さを上記と同様に600mmとし、前後の壁部分から各々30mm程度離間させて播種するものとすると、裸種子Tnが約2mm、前後間隔が13mmであるので、540÷15mmで約36列に亘って播種される。
【0101】
これにより、10条播種するときは、10条×4粒×36列で1440粒、12条であれば12条×4粒×36列で約1728粒の裸種子Tnが播種されることになる。但し、発芽しないものや、密集して成長することにより生存競争により淘汰されるものが発生することを考慮すると、最終的に移植用として得られる苗は6~7割程度の数になることが推定される。
【0102】
裸種子Tnは発芽時期が一定でなく、発芽しない可能性もあるが、一か所に複数の裸種子Tnを播種することにより、苗が全く発生しない可能性を抑えることができる。また、水分や養分の取り合いにより一部の苗が淘汰されることはあり得るが、生存競争に勝ち残った強い苗を移植作業に使用できるので、玉ねぎが収穫されるまでに枯れにくく、また品質の良い状態で収穫が可能になる可能性が向上する。
【0103】
次に、前記播種装置7を用いて、コート種子Tcを育苗箱200に播種するとき、短辺方向(左右方向)において18~24条の条播を行うものとする。コート種子Tcは、上記のとおりプライミング処理により発芽時期が略一定となるよう調整されていると共に、コーティング剤により気温や発芽後の養分不足の影響を受けにくいので、1カ所につき1粒播種するものとする。
【0104】
このとき、コート種子Tc同士の左右間隔は、8mm~12mmの範囲で設定するが、育苗箱200の外周の壁部分付近では根部Rの成長範囲が制限されるので、播種は育苗箱200の左右壁部分から各々所定間隔を空けて行うものとする。
【0105】
このとき、コート種子Tc同士の左右間隔を8mmとし、条数を18条とすると、図19(a)に示すとおり、18粒のコート種子Tcが占める幅が4mm×18で72mm、コート種子Tc同士の左右間隔部が17カ所で8mm×17で136mm、合計208mmの左右幅が必要となる。このとき、左右両外側の播種条と育苗箱200の左右壁部とは、各々46mmの間隔を形成する。
【0106】
条数が24条であるときは、図19(b)に示すとおり、24粒のコート種子Tcが占める幅が4mm×24で96mm、コート種子Tc同士の左右間隔部が23カ所で8mm×23で184mm、合計280mmの左右幅が必要となる。このとき、左右両外側の播種条と育苗箱200の左右壁部とは、各々10mmの間隔を形成する。
【0107】
次に、コート種子Tc同士の左右間隔を12mmとし、条数を18条とすると、図20に示すとおり、18粒のコート種子Tcが占める幅が4mm×18で72mm、コート種子Tc同士の左右間隔部が17カ所で12mm×17で204mm、合計276mmの左右幅が必要となる。このとき、左右両外側の播種条と育苗箱200の左右壁部とは、各々62mmの間隔を形成する。
【0108】
なお、条数が24条であるときは、24粒のコート種子Tcが占める幅が4mm×24で96mmであり、仮に育苗箱200の左右幅300mmを完全に使用するとしても、猶予は204mmである。仮に9mmに設定した場合、9×23で207mmが必要となるので、条数を24条とするときは、コート種子Tc同士の左右間隔は8mm以外選択できない。
【0109】
そして、育苗箱200の前後長さ方向においては、コート種子Tc同士の前後間隔を約8mmの間隔を空けて播種するものとする。育苗箱200の長辺の長さを上記と同様に600mmとし、前後の壁部分から各々30mm程度離間させて播種するものとすると、コート種子Tcが約4mm、前後間隔が8mmであるので、540÷12mmで約45列に亘って播種される。
【0110】
これにより、18条播種するときは、18条×45列で900粒、24条であれば24条×45列で約1080粒の裸種子Tnが播種されることになる。
【0111】
コート種子Tcは発芽不良が生じにくく、成長速度も均質化されていると共に、前後左右に生育スペースが確保されているので、苗が生育途中に枯れることや、移植に適さなくなることが生じにくくなるので、作業コストの低減が図られると共に、収穫される玉ねぎの品質の低下が防止される。
【0112】
以上により、同一面積におけるセルトレイによる育苗に対して、3~6倍程度の苗を育苗でき、育苗箱200の必要個数を低減できる。これに伴い、育苗作業に要する労力や作業コストの低減が図られる。
【0113】
なお、播種機1を用いて育苗箱200に播種したときも、上記の栽培ベンチ210を用いる育苗方法、畝と育苗箱200の間に根切りシート220を敷設する育苗方法のどちらも選択可能である。
【0114】
上記の育苗に用いる培土Sは、玉ねぎの苗の成長を促進すべく、下記のとおり調整したものを用いる。
【0115】
玉ねぎの育苗時には、図21及び図22に示すとおり、吸水性、透水性、通気性が良い土質が望ましいので、比重が0.4~1.0の範囲内となるよう、土砂を殺菌加工した精土EにピートモスSpやバーミキュライトSvを含有させる。
【0116】
玉ねぎの苗が成長する際、主に茎葉部Lの成長に必要な窒素成分Nは必須であるが、培土S中の窒素成分Nの含有量が高いと、根部Rが徒長しやすくなる。上記の栽培方法であれば、根部Rが長く成長しても育苗箱200の底部から突出しない、あるいは根切りシート220によって簡単に切除できるが、不要な部分に栄養が行き渡ることになるので、茎葉部Lの成長が悪くなる問題がある。
【0117】
したがって、培土Sに含有させる窒素成分Nの量は、1リットルの培土Sにつき500~1000mg程度とすると、過剰に苗に窒素成分Nが吸収されることがなく、根部Rと茎葉部Lの成長が共に安定する。
【0118】
なお、窒素成分Nを発芽直後から全量吸収可能とすると、成長初期に過剰に吸収されて根部Rの徒長、ならびに成長途中で窒素成分Nが枯渇して生育不良を起こす可能性がある。
【0119】
この問題に対応すべく、図22に示すとおり、培土Sに含有させる窒素成分Nのうち、50~70%を即効性窒素成分Niとし、30~50%をカプセルやコーティング剤に封入された遅効性窒素成分Nsとする。
【0120】
即効性窒素成分Niは液剤でもよいが、水に溶けやすい粉体や粒体でもよい。遅効性窒素成分Nsは、根部Rから分泌されるクエン酸等と化学反応により溶解するカプセルやコーティング剤とし、苗がある程度成長して培土S中の窒素成分Nが不足し始める頃に効果を発揮し始めるものとする。なお、カプセルやコーティング剤は、接触した根部Rから水分を奪いにくい性質のものとすると、脱水作用により根部Rが傷むことが防止される。
【0121】
これにより、苗が移植適期になるまで窒素成分Nが急激に吸収されることや、窒素成分Nが不足することが防止され、苗の根部R及び茎葉部Lの生育が安定する。
【0122】
一方、玉ねぎの苗、ひいては収穫部の成長を促進するリンについては、供給過多に気を付けつつ、限界近くまで培土Sに含有させる。このとき、1リットルの培土S中には、3000~10000mgのリン酸成分Pを含有させる。上記のリン酸成分Pの含有量は、移植先の圃場の含有用に比べて高濃度とする。
【0123】
育苗用の培土Sにリン酸成分Pを高濃度に含有させることにより、発芽後から移植適期になるまでリン酸成分Pの枯渇が防止され、苗の生育が安定すると共に、収穫物の品質向上が図られる。
【0124】
また、育苗用の培土Sに含有させたリン酸成分Pは、移植可能な段階に成長するまでに大部分が使い切られるので、圃場に余分なリン酸成分Pが持ち込まれることが防止される。
【0125】
圃場に余分なリン酸成分Pが持ち込まれていると、風雨により成分を含有した土が圃場外に移動し、周辺環境を一時的に汚染する可能性があるが、育苗作業時のリン酸成分Pがほぼ持ち込まれないことにより、周辺環境の汚染が抑制される。
【0126】
上記のリン酸成分Pは、培土Sで発芽した苗に吸収されるが、即効性であるので早期に消費される可能性が高く、追加の供給を防止すべく多めに供給している。これにより、移植可能な段階まで成長した苗の根鉢部分に高濃度のリン酸成分Pが残り、圃場に余分なリン酸成分Pが持ち込まれる可能性が高くなる問題がある。
【0127】
この問題の発生を防止すべく、図22に示すとおり、1リットルの培土S中のリン酸成分Pの含有量を1000~2000mgとし、且つ、リン酸成分Pの50~75%を正リン酸Pcとし、残りの25~50%を亜リン酸Psとする。
【0128】
亜リン酸Psは、玉ねぎの生育の促進、収穫部分の健全な肥大化、病害耐性の向上などの効果を、正リン酸Pcよりも少ない量で発揮できる成分である。但し、亜リン酸Psの濃度に対して正リン酸Pcの濃度が低いと効果が発揮されにくいので、上記のとおり正リン酸Pcと亜リン酸Psは多くても1:1、基本的には亜リン酸Psの含有量を低くして、補助剤として用いることが望ましい。
【0129】
上記により、リン酸成分Pの使用量を抑えることができるので、圃場に持ち込まれるリン酸成分Pの減少が図られると共に、培土Sに使用するリン酸成分Pの使用量が減少することで、コストの低減が図られる。
【0130】
なお、培土Sには、上記窒素成分Nやリン酸成分Pに加えて、カリウムや硫黄等の植物に必須な成分を少量ずつ添加し、肥料成分の偏りの発生を防止すると共に、害虫に対する忌避剤や培土S内に発生し得る菌やウイルスに対応する薬剤を添加し、病害虫により苗が枯れたり生育不良を起こしたりすることを防止するものとする。
【0131】
ハンドシーダーには、対象の播種作業により様々な種類があるが、培土Sを敷設した育苗箱200の上部にセットし、縦横に形成された供給孔から、培土S上に所定の前後及び左右間隔を空けて条播するものがある。
【0132】
しかしながら、このタイプのハンドシーダーは、コーティング剤により大径化させたコート種子Tcの使用を考慮しており、形成されている供給孔は多くの場合、一般的な一粒のコート種子Tcが通過可能な4~5mmに設定されている。このハンドシーダーで粒の小さい裸種子Tnを供給しようとすると、裸種子Tnが非常に小さいことにより、一か所に供給されるべき数を上回る裸種子Tnが供給されることになり、苗一本当たりの生育面積が狭くなり、淘汰されて無駄になる裸種子Tnの数が増加することになる。また、裸種子Tnが偏って供給されることにより、苗の無い空間部が生じてしまうことになる。
【0133】
この問題に対応すべく、図23(a)(b)及び図24に示すハンドシーダー300は、アクリル等の樹脂、金属、あるいは木材で構成するスライド板310に、所定間隔毎にスライド供給孔320を形成し、このスライド板310を、所定間隔毎に落下供給孔340を形成した、育苗箱200上に積載する固定板330上に摺動自在に装着して構成する。
【0134】
固定板330には所定間隔毎にガイド溝350が形成されており、このガイド溝350には、スライド板310の下面に所定間隔毎に形成されるガイドプレート360を入り込ませている。このガイドプレート360は、落下供給孔340とずれた位置でスライド供給孔320から裸種子Tnが放出される際、裸種子Tnが遠くに移動することを防止する効果も有する。
【0135】
このスライド板310の板厚は約3mmとし、スライド板310の下面から上方に向けて穴径φ2.6~φ3.0のスライド供給孔320を2.0~2.5mmに亘って形成する。そして、このスライド供給孔320の上部で、且つスライド板310の上面から下方に向かって、皿モミ加工により深さ0.5~1.0mm、断面の傾斜角度が90~120度となる投入孔321を形成する。
【0136】
これにより、粒の小さな裸種子Tnは、投入孔321の傾斜面に沿ってスライド供給孔320内に入り込み、スライド供給孔320に3~4粒が上下に並んだ状態で入り込める構成となる。スライド供給孔320に複数の裸種子Tnが入り込んだ状態では、次に入ろうとしていた裸種子Tnは投入孔321の傾斜面からスライド板310上に戻され、別の投入孔321に移動して空きがあればスライド供給孔320内に入り込む。
【0137】
このハンドシーダー300により育苗箱200に播種作業を行うときは、スライド供給孔320と落下供給孔340が重複し合わない位置にスライド板310を移動させておき、この状態で複数の裸種子Tnをスライド板310上に袋やバケツ等の種子収容部材から供給する。そして、この状態でハンドシーダー300全体を揺らし、裸種子Tnを複数のスライド供給孔320内に入り込ませ、スライド板310上の裸種子Tnが無くなる、あるいは僅かな数になると、スライド板310を摺動させ、スライド供給孔320と落下供給孔340を重複させる。
【0138】
これにより、スライド供給孔320内に入り込んでいた裸種子Tnは、落下供給孔340を通過して育苗箱200内の培土S上の決まった位置に、所定間隔を空けて3~4粒ずつ供給されることになる。
【0139】
これにより、播種機1を用いることなく育苗箱200に裸種子Tnを条播することができるので、少量の播種作業を低コストで行えると共に、多数の苗を低い労力で得ることが可能になる。
【0140】
上記構成では、複数の裸種子Tnを各播種位置に案内するものであるが、キャベツ等の他の作物では、裸種子Tnを一か所につき一粒播種したい場合がある。
【0141】
こうした作物に対応するハンドシーダー300については、図25に示すとおり、スライド板310の板厚3mmに対して、スライド供給孔320と投入孔321を各々1.0~1.5mm、合計3mmになるよう形成する。このとき、スライド供給孔320の穴径はφ2.4~φ2.8とし、投入孔321の傾斜角度は115~155度とする。そして、ガイドプレート360の幅は20~30mmとし、ガイド溝350を形成する間隔は6~16mmとする。
【0142】
これにより、スライド供給孔320に裸種子Tnが入っていない状態で投入孔321に裸種子Tnが入り込むと、裸種子Tnはハンドシーダー300が摺動を繰り返しても投入孔321から抜け出しにくくなるので、裸種子Tnのスライド供給孔320へのセットに要する時間が短くなる。
【0143】
また、スライド供給孔320に裸種子Tnが入った状態で投入孔321に入り込んだ裸種子Tnは、ハンドシーダー300の摺動時にスライド板310上に戻りやすくなるので、一か所のスライド供給孔320に複数の裸種子Tnが入り込みにくくなる。
【0144】
さらに、培土S上に所定間隔毎に一粒の裸種子Tnが播種されることにより、成長する際に淘汰されて無駄になる種子が生じず、コストの削減が図られると共に、栽培計画に沿った数の苗が確実に確保される。
【0145】
なお、キャベツの苗は複数の葉部が放射状に発生するので、玉ねぎの苗のように複数の苗が密集した状態で移植可能な段階まで育つことは非常に困難である。
【符号の説明】
【0146】
1 播種機
200 育苗箱
210 栽培ベンチ(栽培棚)
220 根切りシート(根切部材)
E 精土
N 窒素成分
Ns 遅効性窒素成分
P リン酸成分
Pc 正リン酸
Ps 亜リン酸
R 根部
S 培土
T 種子
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