(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】圧力調整弁構造及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/317 20210101AFI20230214BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20230214BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20230214BHJP
H01M 50/325 20210101ALI20230214BHJP
【FI】
H01M50/317 201
H01G11/14
H01G11/10
H01M50/325
(21)【出願番号】P 2019213038
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 賢志
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064843(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065000(WO,A1)
【文献】特表2013-525959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30
H01G 11/14
H01G 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、セパレータ及び電解液が収容された内部空間を有するセルを複数含む蓄電モジュールに用いられる圧力調整弁構造であって、
複数の前記内部空間にそれぞれ連通する複数の連通孔を有する壁部と、
前記壁部の壁面を基端としてそれぞれの前記連通孔を囲んで外方に突出する複数の筒部と、
第1端面及び前記第1端面と逆側の第2端面を有し、それぞれの前記筒部内に収容され、前記第1端面によって前記連通孔を閉塞する弾性弁体と、
前記複数の筒部を一括して囲む外周壁と、
前記外周壁に固定され、前記壁部に向かって前記弾性弁体の前記第2端面を押圧する蓋体と、を備え、
前記筒部と前記蓋体とは互いに離間しており、
前記筒部の内壁面には、前記弾性弁体の圧縮方向を水平に沿わせた状態で前記筒部の基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜する傾斜面が形成されている、圧力調整弁構造。
【請求項2】
前記筒部の断面は、前記圧縮方向から見て略円形をなしており、
前記筒部の内壁面は、前記筒部の基端から先端に向かって直径が大きくなるように形成されている、請求項1に記載の圧力調整弁構造。
【請求項3】
前記複数の筒部の内壁面は、前記傾斜面が前記筒部の基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態において、前記圧縮方向から見たときに左右方向に互いにずれて配置されている、請求項1又は2に記載の圧力調整弁構造。
【請求項4】
前記外周壁の内壁面には、前記圧縮方向における前記筒部から前記蓋体までの間に、前記傾斜面が前記筒部の基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態で、前記蓋体側に向かって重力方向下方に傾斜する底面が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力調整弁構造。
【請求項5】
前記蓋体には、外周壁に囲まれた空間と外部とを連通する開口が設けられており、
前記傾斜面が前記蓋体側に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態において、前記開口の少なくとも一部の領域は、前記連通孔が形成されている位置よりも低い位置に形成されている、請求項4に記載の圧力調整弁構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の圧力調整弁構造を備える蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整弁構造及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された蓄電モジュールが知られている。この蓄電モジュールは、蓄電モジュールの複数の内部空間の圧力(内圧)を調整するための圧力調整弁を備えている。それぞれの内圧は、各内部空間におけるガスの発生によって上昇し得る。圧力調整弁は、各内部空間に連通した開口(連通孔)を塞ぐための弾性弁体を含んでいる。各弾性弁体は、それぞれの開口の一端が形成されたケース内において、ケースに固定されるカバー部材(蓋体)によって押圧された状態で収容されている。カバー部材によって押圧された各弾性弁体は、弾性変形した状態でそれぞれの開口の一端を塞いでいる。複数の内部空間のうち、内圧が設定圧以上に上昇した内部空間では、当該内部空間の開口からのガスの圧力によって弾性弁体が変形し、当該内部空間の開口から当該内部空間のガスが排出され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールの複数の内部空間の圧力調整が行われる場合、それぞれの内部空間で発生したガスと共にそれぞれの内部空間に収容されている電解液がそれぞれの連通孔を介して排出される場合がある。この場合、それぞれ異なる連通孔から排出された電解液が互いに接続されることによって、それぞれ異なる内部空間に収容されている電極同士が電解液を介して短絡することが考えられる。
【0005】
本発明の一側面は、排出された電解液によって生じる短絡を抑制できる圧力調整弁構造及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る圧力調整弁構造は、正極、負極、セパレータ及び電解液が収容された内部空間を有するセルを複数含む蓄電モジュールに用いられる圧力調整弁構造であって、複数の内部空間にそれぞれ連通する複数の連通孔を有する壁部と、壁部の壁面を基端としてそれぞれの連通孔を囲んで外方に突出する複数の筒部と、第1端面及び第1端面と逆側の第2端面を有し、それぞれの筒部内に収容され、第1端面によって連通孔を閉塞する弾性弁体と、複数の筒部を一括して囲む外周壁と、外周壁に固定され、壁部に向かって弾性弁体の第2端面を押圧する蓋体と、を備え、筒部と蓋体とは互いに離間しており、筒部の内壁面には、弾性弁体の圧縮方向を水平に沿わせた状態で筒部の基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜する傾斜面が形成されている。
【0007】
上記圧力調整弁構造では、複数の弾性弁体のそれぞれの第2端面が蓋体によって押圧されることで、それぞれの連通孔が対応する弾性弁体の第1端面により閉塞される。蓄電モジュールの内圧調整がされる場合、蓄電モジュール内で発生したガスが連通孔から外部に排出されるともに、蓄電モジュール内の電解液も連通孔から外部に排出され得る。一側面に係る圧力調整弁構造では、連通孔を囲んで突出する筒部内に弾性弁体が収容されている。この場合、電解液は、連通孔から筒部内に排出されることになる。弾性弁体の圧縮方向が水平に沿っている状態では、筒部内に排出された電解液が、筒部の内壁面に形成された傾斜面に沿って流動し、蓋部との間隙を介して筒部外に排出される。このように、電解液が筒部内に滞留することなく、筒部外に排出されるので、連通孔に対応する電極同士が電解液を介して短絡することが抑制される。
【0008】
筒部の断面は、圧縮方向から見て略円形をなしており、筒部の内壁面は、筒部の基端から先端に向かって直径が大きくなるように形成されていてもよい。この構成では、弾性弁体の圧縮方向を水平に沿わせた状態にすると、筒体の内壁面における下側の面が傾斜面となる。
【0009】
複数の筒部の内壁面は、傾斜面が筒部の基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態において、圧縮方向から見たときに左右方向に互いにずれて配置されてもよい。この構成では、隣り合う筒部同士が上下方向に重なり合うことがない。
【0010】
外周壁の内壁面には、圧縮方向における筒部から蓋体までの間に、傾斜面が筒部の基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態で、蓋体側に向かって重力方向下方に傾斜する底面が形成されてもよい。この構成では、筒部と蓋体との間隙から底面に排出された電解液が傾斜にそって筒部から離れる方向に流動し得る。
【0011】
蓋体には、外周壁に囲まれた空間と外部とを連通する開口が設けられており、傾斜面が蓋体側に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態において、開口の少なくとも一部の領域は、連通孔が形成されている位置よりも低い位置に形成されてもよい。この構成では、底面に排出された電解液が、蓋体に形成された開口から外部に排出されやすい。
【0012】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、上記のいずれかの圧力調整弁構造を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、排出された電解液によって生じる短絡を抑制できる圧力調整弁構造及び蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一例の蓄電モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図4】一例の蓄電モジュールの一部を示す分解斜視図である。
【
図9】ケースとカバーが組み合わされた状態を示す断面模式図である。
【
図10】ケースとカバーが組み合わされた状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図中には、必要に応じてXYZ直交座標系が示される。
【0016】
図1は、本実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール2を含むモジュール積層体4と、モジュール積層体4に対してモジュール積層体4の積層方向Dに拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0017】
モジュール積層体4は、複数(ここでは4つ)の蓄電モジュール2と、複数(ここでは3つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール2は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て矩形状をなしている。蓄電モジュール2は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0018】
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール2同士は、導電板5を介して電気的に直列に接続されている。モジュール積層体4の積層方向Dの両端には、蓄電モジュール2に電気的に接続された導電板Pと、絶縁板Fとが順に積層されている。一方の導電板Pには正極端子6が接続され、他方の導電板Pには負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板Pの縁部から積層方向Dに交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0019】
蓄電モジュール2間に配置された導電板5の内部には、空気等の冷却用媒体を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向Dと、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール2同士を電気的に接続する接続部材としての機能を有している。また、導電板5は、これらの流路5aに冷却用媒体を流通させることにより、蓄電モジュール2で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。
図1の例では、積層方向Dから見た導電板5の面積は、積層方向Dから見て蓄電モジュール2の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール2の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール2の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0020】
拘束部材3は、モジュール積層体4を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール2、導電板5、及び導電板Pの面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。各エンドプレート8と導電板Pとの間には、電気絶縁性を有する絶縁板Fが設けられているため、この絶縁板Fにより、エンドプレート8と導電板Pとの間が絶縁されている。
【0021】
エンドプレート8の縁部には、積層方向Dから見てモジュール積層体4よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通されている。他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール2、導電板5、及び導電板Pがエンドプレート8によって挟持され、モジュール積層体4としてユニット化されている。また、モジュール積層体4に対し、積層方向Dに拘束荷重が付加されている。
【0022】
次に、蓄電モジュール2の構成について詳細に説明する。
図2は、蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3は、蓄電モジュールの概略斜視図である。
図2及び
図3において、蓄電モジュール2は、積層方向Dにおいて複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。なお、「セル」とは、電池を構成する最小単位であり、正極、負極、セパレータ及び電解液が収容された内部空間を有する。一例においては、1つの正極と、1つの負極と、正極と負極との間に配置されるセパレータと、電解液とが内部空間に収容されることで一つのセルが構成され得るが、例えば、複数の正極、複数の負極、複数のセパレータ、及び電解液が内部空間に収容されることで一つのセルが構成されてもよい。
【0023】
蓄電モジュール2は、モジュール本体11と、モジュール本体11に取り付けられた複数(ここでは4つ)の圧力調整弁12とを備える。モジュール本体11は、電極積層体15と、電極積層体15を取り囲むように配置された枠体16とを備える。電極積層体15は、セパレータ14を介して蓄電モジュール2の積層方向Dに沿って積層された複数の電極を備える。複数の電極は、複数のバイポーラ電極13と、負極終端電極21と、正極終端電極20とを含む。
【0024】
バイポーラ電極13は、一方面17a及び一方面17aの逆側の他方面17bを含む電極板17と、一方面17aに設けられた正極活物質層18と、他方面17bに設けられた負極活物質層19とを有している。正極活物質層18は、正極活物質を含む正極スラリーが電極板17に塗工されることにより形成されている。正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極活物質層19は、負極活物質を含む負極スラリーが電極板17に塗工されることにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。
【0025】
本実施形態では、電極板17の他方面17bにおける負極活物質層19の形成領域は、電極板17の一方面17aにおける正極活物質層18の形成領域に対して一回り大きくなっている。電極積層体15において、1つのバイポーラ電極13の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。電極積層体15において、1つのバイポーラ電極13の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。
【0026】
負極終端電極21は、電極板17と、電極板17の他方面17bに設けられた負極活物質層19とを有している。負極終端電極21は、他方面17bが電極積層体15における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極21の電極板17の一方面17aは、電極積層体15の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール2に隣接する一方の導電板5又は導電板P(
図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極21の電極板17の他方面17bに設けられた負極活物質層19は、セパレータ14を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。
【0027】
正極終端電極20は、電極板17と、電極板17の一方面17aに設けられた正極活物質層18とを有している。正極終端電極20は、一方面17aが電極積層体15における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極20の電極板17の他方面17bは、電極積層体15の積層方向Dにおける他方の外側面を構成し、蓄電モジュール2に隣接する他方の導電板5又は導電板P(
図1参照)と電気的に接続されている。正極終端電極20の一方面17aに設けられた正極活物質層18は、セパレータ14を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。
【0028】
電極板17は、水平方向に延在する板形状を有する導電体であり、可撓性を示す。このため水平方向は、電極板17の延在方向とも言える。電極板17は、例えばニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板である。鋼板としては、例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)が挙げられる。ステンレス鋼板としては、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304等が挙げられる。電極板17の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。なお、電極板17がニッケル箔である場合、当該ニッケル箔にメッキ処理が施されてもよい。電極板17の縁部17c(バイポーラ電極13の縁部)は、矩形枠状をなし、正極スラリー及び負極スラリーが塗工されない未塗工領域となっている。
【0029】
セパレータ14は、例えばシート状に形成されている。セパレータ14としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0030】
枠体16は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の枠状に形成されている。枠体16は、それぞれの電極板17の縁部17cを包囲し、かつ電極積層体15の側面15aを包囲するように設けられている。枠体16は、縁部17cを保持している。枠体16は、電極板17の縁部17cに結合された複数の第1封止部22と、積層方向Dに沿って延び、第1封止部22のそれぞれに結合された第2封止部23と、を有している。第1封止部22及び第2封止部23は、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂によって構成されている。第1封止部22及び第2封止部23の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0031】
第1封止部22は、電極板17の一方面17aにおいて縁部17cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状をなしている。本実施形態では、バイポーラ電極13の電極板17のみならず、負極終端電極21の電極板17及び正極終端電極20の電極板17に対しても第1封止部22が設けられている。負極終端電極21では、電極板17の一方面17aの縁部17cに第1封止部22が設けられ、正極終端電極20では、電極板17の一方面17a及び他方面17bの双方の縁部17cに第1封止部22が設けられている。
【0032】
第1封止部22は、電極板17の縁部17cに重ねられ、重なり部分Kが形成されている。重なり部分Kにおいて、第1封止部22は、例えば超音波又は熱圧着によって電極板17に気密に溶着されている。第1封止部22は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムを用いて形成されている。第1封止部22の内側は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板17の縁部17c同士の間(電極積層体15の側面15aよりも内側)に位置している。第1封止部22の外側は、電極板17の縁よりも外側(電極積層体15の側面15aよりも外側)に張り出しており、その先端部分は、第2封止部23によって保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部22同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第1封止部22の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合していてもよい。
【0033】
電極積層体15において、積層方向Dについて内層に位置する第1封止部22の内縁側には、セパレータ14の縁部を載置するための段部22sが設けられている。段部22sは、第1封止部22を構成するフィルムの外縁部分を内側に折り返すことによって形成されていてもよい。段部22sは、下段を構成するフィルムに上段を構成するフィルムを重ね合わせることによって形成されていてもよい。
【0034】
第2封止部23は、電極積層体15及び第1封止部22の外側に設けられ、蓄電モジュール2の外壁(筐体)を構成している。第2封止部23は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体15の全長にわたって延在している。第2封止部23は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の枠状である。第2封止部23は、例えば射出成型時の熱によって第1封止部22の外縁部分に溶着されている。
【0035】
第2封止部23は、積層方向Dにおける両端部にオーバーハング部23aをそれぞれ有している。一方のオーバーハング部23aは、積層方向Dの一端部において第1封止部22の内縁側に張り出し、負極終端電極21を構成する電極板17の一方面17aに溶着された第1封止部22に結合している。他方のオーバーハング部23aは、積層方向Dの他端部において第1封止部22の内縁側に張り出し、正極終端電極20を構成する電極板17の他方面17bに溶着された第1封止部22に結合している。一方及び他方のオーバーハング部23aの張り出し長さは、互いに等しくなっており、これらのオーバーハング部23aの先端23bは、積層方向Dから見て電極板17と第1封止部22との重なり部分Kに重なるように位置している。
【0036】
第1封止部22及び第2封止部23は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に、内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部23は、第1封止部22と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極13の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極21とバイポーラ電極13との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極20とバイポーラ電極13との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極13の間、負極終端電極21とバイポーラ電極13との間、及び正極終端電極20とバイポーラ電極13との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。本実施形態では、電極板17の一方面17aと、当該電極板17と隣り合う一の電極板17の他方面17bと、第1封止部22とによって囲われた空間が内部空間Vとなっている。この内部空間Vには、電解液が収容される。
【0037】
すなわち、電極板17と当該電極板17の一方面17aに形成された正極活物質層18、当該電極板17と隣り合う一の電極板17と当該一の電極板17の他方面17bに形成された負極活物質層19、当該正極活物質層18と当該負極活物質層19との間に配置されたセパレータ14、及び電解液によって1つのセルが構成されている。換言すると、1つのセルは隣り合う電極の間に第1封止部22及び第2封止部23によって封止された内部空間Vを有する。そして、電極板17の一方面17aに形成された正極活物質層18、当該電極板17と隣り合う一の電極板17の他方面17bに形成された負極活物質層19、当該正極活物質層18と当該負極活物質層19との間に配置されたセパレータ14、及び電解液が当該内部空間Vに収容される。電解液は、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む水系の電解液である。電解液は、セパレータ14、正極活物質層18、及び負極活物質層19内に含浸されている。蓄電モジュール2は、積層方向Dに順に配列された複数(図示例では24個)の内部空間Vを含む。すなわち、蓄電モジュール2は積層方向Dに配列された複数のセル(図示例では24個)を含む。
【0038】
図4~
図8を更に参照して、圧力調整弁12の構成、すなわち圧力調整弁構造について説明する。
図4は、一例の蓄電モジュールの一部を示す分解斜視図である。
図5は、一例の圧力調整弁を示す分解斜視図である。
図6は、一例の圧力調整弁の底面図である。
図7は、圧力調整弁を構成するケースの平面図である。
図8は、圧力調整弁を構成するカバーの平面図である。
【0039】
図3及び
図4に示されるように、枠体16を構成する1つの壁部16aには、圧力調整弁12を取り付けるための複数(ここでは4つ)の取付領域24が設けられている。一例においては、Y方向に隣り合った2つの取付領域24に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられる。各取付領域24において、枠体16は、内部空間V(
図2参照)まで貫通した貫通孔16bを有する。各取付領域24には、複数(ここでは6つ)の貫通孔16bが設けられている。貫通孔16bは、各取付領域24において3列2段(Y方向に3列、Z方向に2段)に配列されている。したがって、貫通孔16bは、壁部16aにおいて12列2段に配列されている。各貫通孔16bは、異なるセルの内部空間Vとそれぞれ連通されている。
【0040】
各貫通孔16bは、第1封止部22に設けられた貫通孔25と、第2封止部23に設けられた貫通孔26とを含む。貫通孔16bは、内部空間Vに電解液を注入するための注液孔として機能する。また、貫通孔16bは、電解液が注入された後は、内部空間Vで発生したガス(例えば水素ガス)が流れる流路となる。
【0041】
第2封止部23の各取付領域24の外側面には、略枠状の接合用突起27がそれぞれ設けられている。接合用突起27は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路28を貫通孔26と協働して形成する。したがって、流路28は、各取付領域24において3列2段に配列されている。流路28は、X方向に垂直な面に沿った断面において矩形状を有している。接合用突起27は、X方向から見て、格子状に形成されている。
【0042】
図4及び
図5に示されるように、圧力調整弁12は、ケース29と、複数(ここでは12個)の弁体30と、カバー31とを有している。ケース29は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。ケース29は、ケース29とカバー31とが対向する対向方向から見て略矩形状に形成されている。対向方向は、モジュール本体11(壁部16a)に対する圧力調整弁12の取付方向であり、後述する弁体30の圧縮方向でもある。圧力調整弁12は、壁部16aに垂直な方向に、モジュール本体11に取り付けられる。このため、対向方向は、X方向と一致している。
【0043】
ケース29は、底壁部(壁部)32を有している。底壁部32には、モジュール本体11側の外壁面32aからカバー31側の内壁面32b(壁面)に向けて対向方向に貫通した複数(ここでは12個)の貫通孔33が設けられている。これらの貫通孔33は、モジュール本体11の各貫通孔16bと空間を介してそれぞれ接続されている。すなわち、貫通孔33及び貫通孔16bによって、モジュール本体11に形成された内部空間Vに連通する連通孔49が構成される。換言すると、貫通孔33及び貫通孔16bのそれぞれは、連通孔49の一部を構成している。貫通孔33は、連通孔49の出口に相当しており、X方向に垂直な面(YZ平面)に沿った断面で円形状を有している(
図6参照)。
【0044】
図6に示されるように、底壁部32の外壁面32aには、略枠状の一対の接合用突起34が設けられている。一対の接合用突起34は、接合用突起27に対応する間隔でY方向に離間して形成されている。一対の接合用突起34は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは12個)の流路35を形成する。接合用突起34は、モジュール本体11の接合用突起27と接合される。接合用突起34は、接合用突起27に対応する形状及び寸法を有している。したがって、流路35は、X方向に垂直な面(YZ平面)に沿った断面において矩形状を有している。また、接合用突起34は、X方向から見て、格子状に形成されている。なお、モジュール本体11と圧力調整弁12とは、例えば熱板溶着によって接合される。具体的には、モジュール本体11と圧力調整弁12との間に熱板を配置し、その後、接合用突起27及び接合用突起34の先端を熱板に当接させることで、接合用突起27及び接合用突起34の先端が溶融する。続いて、接合用突起27及び接合用突起34が溶融している間に、接合用突起27の先端に対して接合用突起34の先端を押し付けることにより、接合用突起27と接合用突起34とを溶着(接合)する。その結果、モジュール本体11と圧力調整弁12とが接合される。
【0045】
図4、
図5及び
図7に示されるように、ケース29は、それぞれ底壁部32からカバー31側に突出した外周壁36及び隔壁部(筒部)37を有している。本実施形態では、外周壁36及び隔壁部37は、底壁部32と一体的に形成されている。外周壁36は、複数(ここでは12個)の弁体30を一括して包囲するように、底壁部32の内壁面32bの縁部に立設されている。具体的には、外周壁36は、底壁部32の外周縁部の全周にわたって形成されており、ケース29の外壁を構成している。より具体的には、外周壁36は、対向方向から見て、略矩形状に形成された底壁部32の外周縁部に沿って、略矩形枠状に形成されている。
【0046】
隔壁部37は、各弁体30の側面30cを覆うように底壁部32の内壁面32bを基端として立設されている。一例において、隔壁部37は、各弁体30が収容される略円柱状(より正確には、円錐台状)の収容空間S1を形成している。すなわち、隔壁部37は、断面略円形状を有する筒状をなしている。なお、筒状とは、X方向に延在する弾性弁体を収容するための略柱状の空間を内側に形成し得る形状であればよく、それぞれの隔壁部37が独立して筒状に形成される必要はない。本実施形態では、隔壁部37と外周壁36の一部とが弁体30の側面30cを包囲することによって、収容空間S1が形成されている。また、本実施形態では、一の弁体30を収容する隔壁部37と当該一の弁体30に隣接する位置に配置された他の弁体30を収容する隔壁部37とは、一体的に形成されている。このように、互いに異なる弁体30を収容する隔壁部37同士は、共有する部分を有していてもよい。なお、それぞれの隔壁部37の外周面は、互いに離間していてもよく、さらに、外周壁36の内壁面36bから離間していてもよい。
【0047】
本実施形態では、底壁部32の内壁面32bを基準として、外周壁36のカバー31側の端面36aは、隔壁部37のカバー31側の端面37aよりも対向方向において高い位置にある。したがって、ケース29にカバー31が固定された状態において、カバー31が外周壁36の端面36aに接する一方で、カバー31と隔壁部37の端面37aとは互いに離間している。すなわち、カバー31と隔壁部37の端面37aとの間には空間S2が形成されている。当該空間S2は、内部空間Vから圧力調整弁12の内部に流入したガスの流路として機能する。
【0048】
弁体30(弾性弁体)は、貫通孔33を塞ぐように、収容空間S1に収容されている。弁体30は、ゴム等の弾性部材によって形成された円柱状部材である。弁体30は、底壁部32の内壁面32b側において貫通孔33を塞ぐ第1端面30aと、第1端面30aとは逆側に位置する第2端面30bと、第1端面30a及び第2端面30bを接続する側面30cとを有している。第2端面30bは、カバー31によって押圧される被押圧面である。弁体30は、第1端面30aが底壁部32の内壁面32bに対して押し付けられた状態で配置されることで、貫通孔33を塞いでいる。弁体30は、内部空間Vの圧力に応じて、貫通孔33を開閉させる。弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面37b又は外周壁36の内壁面36bとの間には、隙間Gが設けられている。
【0049】
図5及び
図7に示されるように、隔壁部37の内壁面37bには、弁体30を位置決めするための突出部38が形成されている。突出部38は、隔壁部37の内壁面37bから内周に向かって突出している。すなわち、突出部38は、内壁面37bから収容空間S1の中心に向かって突出している。突出部38は、貫通孔33の中心軸線の延びる方向(X軸方向)に沿って隔壁部37の内壁面37b全体にわたって設けられている。突出部38は、弁体30の側面30cと接触するように形成されている。突出部38が弁体30と接触することにより、弁体30の中心位置と貫通孔33の中心軸線とが互いに一致し得る。このような突出部38により、弁体30の位置ずれを一定の範囲内に抑えることができる。本実施形態では、複数(ここでは6つ)の突出部38が、貫通孔33の中心軸線回りに等ピッチで形成されている。図示例では、X方向から見て、貫通孔33の中心を通るZ軸に沿った線上(すなわち、6時の位置と12時の位置)に形成された2つの突出部38を含む6つの突出部38が60°のピッチで配置されている。
【0050】
図7に示されるように、収容空間S1において、底壁部32の内壁面32bには、当該内壁面32bから外方に突出するシール部(突起)39が形成されている。すなわち、シール部39は、対向方向から見たときに、隔壁部37に囲まれている。また、複数のシール部39は、一括して外周壁36によって囲まれている。なお、一例においては、上述のとおり、2つの取付領域24に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられる構成であるため、複数のシール部39は、Y方向の中央から一方側と他方側とに分けて配置されている。Y方向の中央から一方側に配置されたシール部39を囲む隔壁部37と、他方側に配置されたシール部39を囲む隔壁部37とは、Y方向の中央において互いに離間している。また、複数の貫通孔33においては、Z方向の中央よりも下側に形成された貫通孔33と上側に形成された貫通孔33とがY方向に沿って交互に並んでいる。そのため、Y方向に隣り合うシール部39同士では、Z方向における位置が互いにずれている。また、複数の隔壁部37は、Y方向(左右方向)において互いにずれた位置に配置されている。一例では、Y方向に互いに隣り合う一方の隔壁部37の軸芯(貫通孔33の中央を通りX方向に延びる線)と他方の隔壁部37の軸芯とのY方向における距離は、隔壁部37の半径よりも大きくなっていてよい。
【0051】
シール部39は、当該シール部39に対して押し付けられた弁体30の第1端面30aと接触することで、貫通孔33と隙間Gとの間を開閉可能に閉塞している。シール部39は、内壁面32bにおける貫通孔33の開口端を囲むように形成されている。シール部39は、貫通孔33の縁部に沿って、貫通孔33の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。シール部39は、貫通孔33の全周を隙間無く囲むように形成されている。これにより、シール部39は、弁体30の第1端面30aと隙間無く接触しており、気密性が確保されている。
【0052】
図5及び
図7に示されるように、ケース29には、カバー31に形成された一対の切り欠き31a(後述)に沿った、カバー31の縁部と溶着(接合)される接合用壁部40が形成されている。一例の接合用壁部40は、対向方向から見て、一方の対角位置に形成されている。接合用壁部40は、外周壁36と一体的に形成されている。接合用壁部40のカバー31側の端面40aは、外周壁36の端面36aと同一平面上に形成されている。
【0053】
カバー(蓋体)31は、ケース29の開口を塞ぐ板状部材である。カバー31は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。一例において、カバー31は射出成形によって製造され得る。
図8に示すように、カバー31には、ケース29の接合用壁部40に対応した一対の切り欠き31aが形成されている。対向方向から見て、カバー31の外周縁部のうち切り欠き31aに沿った縁部以外の部分の位置は、ケース29の外周縁部(外周壁36の外側縁部)の位置と略一致している。
【0054】
カバー31は、ケース29の開口端面に溶着により接合されている。具体的には、カバー31の縁部42のうち、切り欠き31aに沿った部分は、接合用壁部40の端面40aに溶着されており、切り欠き31a以外に沿った部分は、外周壁36の端面36aに溶着されている。カバー31の縁部42は、例えば超音波溶着によってケース29の開口端面に接合されている。
【0055】
カバー31には、圧力調整弁12の内部のガスを圧力調整弁12の外部に排気するための排気口41が設けられている。本実施形態では一例として、カバー31のY方向の中央に矩形状の排気口41が設けられている。排気口41は、対向方向から見て弁体30と重ならないように配置されている。排気口41は、対向方向から見て、例えば矩形状に形成されている。
【0056】
カバー31は、弁体30の第2端面30bを押圧する平坦な内面43を有している。それぞれの弁体30は、対応するシール部39に向けて、内面43によって圧縮される。一例において、カバー31の内面43は、カバー31の縁部42に囲まれた範囲であってよい。カバー31において、内面43とは逆側の外面45には、カバー31を補強するための補強部50が形成されている。一例の補強部50は、カバー31を部分的に厚肉にして形成されている。図示例では、Z方向(第1の方向)に延在する複数の補強部51と、Y方向(第2の方向)に延在する一対の補強部52と、が示されている。また、図示例では、切り欠き31aに沿って補強部53が形成されている。
【0057】
続いて、
図9及び
図10を参照して、圧力調整弁12の構成について更に説明する。
図9はケースとカバーが組み合わされた状態を示す断面図である。
図9は、圧力調整弁12のZ方向の中央よりも上側に形成された貫通孔の位置に沿った断面図である。
図10は、ケースとカバーが組み合わされた状態を示す断面図である。
図10は、カバーに形成された排気口の位置に沿った断面図である。なお、
図9及び
図10では、弁体30を省略している。
【0058】
図9に示すように、それぞれの隔壁部37の内壁面37bには、弁体30の圧縮方向(X方向)を水平に沿わせた状態で基端から先端に向かって重力方向(Z方向)下方に傾斜する傾斜面が形成されている。一例においては、隔壁部37の内壁面37bは、基端から先端に向かって直径が大きくなる逆テーパ状に形成されている。そのため、図示のようにX方向及びY方向を水平に沿わせた状態では、内壁面37bのうちの下側を構成する面は、基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜する傾斜面37cとなる。また、内壁面37bのうちの上側を構成する面は、基端から先端に向かって上方に傾斜している。X方向及びY方向を水平に沿わせた状態において、水平面に対する傾斜面37cの角度は、貫通孔33から排出された電解液がカバー31側に流動し得る角度であり、例えば約0.1°~5°程度であってよい。
【0059】
図示されるように、内壁面37bからの突出部38の高さは、隔壁部37の基端から先端にかけて一定となっている。そのため、内壁面37b内に形成された複数(ここでは6つ)の突出部38は、隔壁部37の基端から先端にかけて互いの間隔が大きくなるように配置されている。また、X方向及びY方向を水平に沿わせた状態では、下側(例えば6時の位置)に配置された突出部38は、カバー31側に向かって下方に傾斜する。
【0060】
また、外周壁36の内壁面36bには、圧縮方向における隔壁部37の端面37aからカバー31までの間に、底面36cが形成されている。底面36cは、傾斜面37cが基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態で、基端から先端向かって(すなわち、カバー31側に向かって)重力方向下方に傾斜している。X方向及びY方向を水平に沿わせた状態において、水平面に対する傾斜面37cの角度は、隔壁部37内から排出された電解液がカバー31側に流動し得る角度であり、例えば約0.1°~5°程度であってよい。一例においては、底面36cの角度は、傾斜面37cの角度と同じであってよい。
【0061】
図10に示すように、カバー31に形成された排気口41は、外周壁36に囲まれた空間S2とカバー31の外部とを連通する開口となっている。一例の圧力調整弁12においては、排気口41は、貫通孔33から排出されたガスだけでなく、貫通孔33から排出された電解液の排出口にもなっている。傾斜面37cが基端から先端に向かって重力方向下方に傾斜するように配置されている状態において、排気口41の下側端面41aの位置は、底面36cのカバー31側の端縁の位置以下である。図示例では、排気口41の下側端面41aは、Y方向に沿っており、底面36cのカバー31側の端縁と同一平面上に形成されている。なお、排気口41は、例えば切欠き状に形成されてもよい。
【0062】
以上説明した圧力調整弁12の構造では、複数の弁体30のそれぞれの第2端面30bが、カバー31によって押圧されることで、第1端面30aが貫通孔33(連通孔49)を囲むシール部39に当接する。これにより、弁体30の第1端面30aとシール部39とが密着し、それぞれの貫通孔33が対応する弁体30によって閉塞され得る。ケース29の貫通孔33は、第2封止部23の貫通孔26及び第1封止部22の貫通孔25を介してモジュール本体11の内部空間Vと連通されている。内部空間Vの圧力が設定圧よりも低いときは、貫通孔33が弁体30によって塞がれた閉弁状態に維持される。内部空間Vの圧力が上昇して設定圧以上になると、弁体30が底壁部32から離間するように弾性変形し、貫通孔33の閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、内部空間Vからのガスは、弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面37bとの隙間G(収容空間S1)を介して、隔壁部37とカバー31との間に形成された空間S2へと流通する。そして、当該ガスは、空間S2から排気口41を介して圧力調整弁12の外部へと排気される。
【0063】
モジュール本体11の内圧調整がされる場合、内部空間Vで発生したガスが貫通孔33から隔壁部37の収容空間S1に排出されるともに、内部空間V内の電解液も貫通孔33から収容空間S1に排出され得る。この場合、2つの連通孔から排出された電解液が互いに接続されると、当該2つの連通孔が同時に開弁された時に、対応する電極同士が電解液を介して短絡することが考えられる。
【0064】
上述の圧力調整弁構造において、電極の積層方向が鉛直方向に一致し、弁体30の圧縮方向が水平に沿っている状態では、収容空間S1に排出された電解液が、隔壁部37の内壁面37bに形成された傾斜面37cに沿って流動し、カバー31との間隙を介して収容空間S1外に排出される。このように、電解液が収容空間S1内に滞留することないので、貫通孔33に対応する電極同士が電解液を介して短絡することが抑制される。
【0065】
また、収容空間S1の断面は、略円形をなしており、隔壁部37の内壁面37bは、基端から先端に向かって直径が大きくなる逆テーパ状に形成されている。この構成では、弁体30の圧縮方向(X方向)を水平に沿わせた状態にすると、内壁面37bにおける下側の面が傾斜面37cとなる。この場合、圧力調整弁12のY方向が水平に沿っていない状態であっても、傾斜面37cがカバー31側に向かって下方に傾斜する。
【0066】
また、複数の隔壁部37は、Y方向において互いにずれた位置に配置されている。すなわち、複数の隔壁部37は、傾斜面37cが基端から先端に向かって下方に傾斜するように配置されている状態において、圧縮方向から見たときに左右方向に互いにずれて配置されている。この構成では、隣り合う隔壁部37同士が上下方向に重なり合うことがない。すなわち、Z方向の中央よりも上側に配置された隔壁部37から、Z方向の中央よりも下側に配置された隔壁部37に向かって電解液が排出されることが抑制される。特に、互いに隣り合う一方の隔壁部37の軸芯と他方の隔壁部37の軸芯とのY方向における距離が、隔壁部37の半径よりも大きい場合、上側に配置された隔壁部37の最下端の位置が、下側に配置された隔壁部37とY方向において重複しない。この場合、上側の隔壁部37から排出される電解液は、下側の隔壁部37を経由せずに底面36cに流れ落ちやすい。
【0067】
また、外周壁36の内壁面36bには、圧縮方向における隔壁部37からカバー31までの間に、底面36cが形成されている。この構成では、隔壁部37とカバー31との間隙から底面36cに排出された電解液が底面36cの傾斜にそって隔壁部37の端面37aから離れる方向に流動し得る。排出された電解液が端面37aから離間し易くなるため、電解液を介して異なる貫通孔33同士が接続されることが抑制される。
【0068】
カバー31には、外周壁36に囲まれた空間S2と外部とを連通する開口として、排気口41が設けられている。傾斜面37cが底壁部32の内壁面32bに接続される基端から先端に向かって下方に傾斜するように配置されている状態において、排気口41の少なくとも一部の領域は、最も低い位置に形成された貫通孔33の位置よりも低い位置に形成されている。一例の排気口41の下側端面41aの位置は、外周壁36における底面36cのカバー31側の端縁の位置以下となっている。上記の構成では、収容空間S1から底面36cに排出された電解液が、底面36c上に溜まることが抑制される。すなわち、電解液が排気口41から外部に排出されやすい。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られない。
【0070】
一例では、2つの取付領域24に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられる構成を示したが、例えば、1つの取付領域に対して1つの圧力調整弁が取り付けられてもよい。また、4つの取付領域に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられてもよい。
【0071】
また、モジュール本体11の枠体16に圧力調整弁12を構成するケース29が取り付けられる構成を示したが、例えば、モジュール本体の枠体と圧力調整弁のケースとが射出成形によって一体的に形成されてもよい。
【0072】
また、弁体30が収容される収容空間Sの断面形状は、略円形に限定されず、例えば、四角形、六角形等の多角形状であってもよい。
【0073】
また、排気口41の下側端面41aの位置が、外周壁36における底面36cのカバー31側の端縁の位置以下となっている例を示したが、例えば、排気口41の下側端面41aの位置は、底面36cのカバー31側の端縁の位置よりも高い位置にあってもよい。
【符号の説明】
【0074】
2…蓄電モジュール、12…圧力調整弁、49…連通孔、30…弁体(弾性弁体)、30a…第1端面、30b…第2端面、31…カバー(蓋体)、32b…内壁面(壁面)、36…外周壁、37…隔壁部(筒部)、37b…内壁面、39…シール部(突起)、V…内部空間。