(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】レーザー印刷された支持体、レーザー印刷された貼付剤及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
A61F13/02 370
A61F13/02 310A
A61F13/02 390
(21)【出願番号】P 2019549957
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035346
(87)【国際公開番号】W WO2019087620
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2017213172
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】東山 裕太郎
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503065(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121910(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0337213(US,A1)
【文献】特開2003-102773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/14
A61K9/70
C09J7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変色誘起酸化物を含
有し、繊維
を含み、伸縮性を有する支持体であって、
前記支持体は、その一面に薬物を含有する粘着剤層が配置されており、
前記変色誘起酸化物は、前記支持体
中に均一に含有され、
前記支持体の前記粘着剤層と反対側の表面の一部
において、前記変色誘起酸化物
がレーザー印刷により変色していることを特徴とするレーザー印刷された支持体。
【請求項2】
前記変色誘起酸化物が、酸化チタンである請求項
1に記載のレーザー印刷された支持体。
【請求項3】
変色誘起酸化物を含
有し、繊維
を含み、伸縮性を有する支持体、
該支持体の一面に配置され
、薬物を含有する粘着剤層、
該粘着剤層の一面を被覆する剥離ライナーが積層されてなり、
前記支持体は、
前記粘着剤層と反対側の表面の一部
において、前記変色誘起酸化物
がレーザー印刷により変色していることを特徴とするレーザー印刷された貼付剤。
【請求項4】
一面に薬物を含有する粘着剤層が配置され、変色誘起酸化物を含
有し、繊維
を含み、伸縮性を有する支持体に
、前記粘着剤層が配置されていない面に対してレーザー光を照射して、前記支持体の表面の一部を、前記変色誘起酸化物により変色させることを含むレーザー印刷された支持体又は貼付剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー印刷された支持体、レーザー印刷された貼付剤及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、貼付剤として、テープ剤、パップ剤等が汎用されている。これらの貼付剤は、その形態が殆ど同一であり、外形、色彩も互いに近似することから、一旦包装袋から取り出された後は、この貼付剤に含まれる成分等を判別することが困難である。また、種々の規制によって、包装袋から取り出した貼付剤の薬物名が認識できる表示が求められることもある。
これに対して、支持体である不織布にエンボス加工を施す方法(例えば、特許文献1)、支持体にレーザー照射により直接印字する方法(例えば、特許文献2)等が提案されている。また、貼付剤の支持体である不織布に、直接文字をインク等で印刷し、識別する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-231812号公報
【文献】特開2003-102773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エンボス加工やレーザー印字は、識別しにくく、識別を容易にするために大きなエネルギーが負荷されることとなり、支持体の変質を招き、薬剤に対する影響が懸念される。また、インクによる印刷ではインクが薬物含有層に滲み出す恐れがあり、また、インクの溶解により文字等の判読ができなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、支持体を変質させず、インク等が薬物含有層に滲み出す恐れがなく、また、インク等の溶解による文字等の判読不能となることを回避することができ、さらにその表面に識別しやすい文字等が印刷されてなるレーザー印刷された支持体及び貼付剤ならびに簡便かつ容易にレーザー印刷された貼付剤を製造し得る、レーザー印刷された支持体又は貼付剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は以下の発明を含む。
(1)変色誘起酸化物を含み、繊維により構成された支持体であって、
該支持体は、表面の一部が、前記変色誘起酸化物により変色していることを特徴とするレーザー印刷された支持体。
(2)前記変色誘起酸化物が、前記支持体中に均一に含有されている上記に記載のレーザー印刷された支持体。
(3)前記変色誘起酸化物が、酸化チタンである上記に記載のレーザー印刷された支持体。
(4)変色誘起酸化物を含み、繊維により構成された支持体、
該支持体の一面に配置された粘着剤層、
該粘着剤層の一面を被覆する剥離ライナーが積層されてなり、
前記支持体は、表面の一部が、前記変色誘起酸化物により変色していることを特徴とするレーザー印刷された貼付剤。
(5)前記粘着剤層に、薬物が含有されている上記に記載のレーザー印刷された貼付剤。
(6)変色誘起酸化物を含み、繊維により構成された支持体にレーザー光を照射して、前記支持体の表面の一部を、前記変色誘起酸化物により変色させることを含むレーザー印刷された支持体又は貼付剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本願のレーザー印刷された支持体及び貼付剤は、支持体を変質させず、インク等が薬物含有層に滲み出す恐れがなく、また、インク等の溶解による文字等の判読不能となることを回避することができ、その表面に識別しやすい文字等の印刷を維持することができる。
また、本願のレーザー印刷された支持体又は貼付剤の製造方法によれば、簡便かつ容易にレーザー印刷によって、識別しやすい文字等の印刷された貼付剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本願のレーザー印刷された支持体の一実施形態を示す写真である。
【
図2】本願のレーザー印刷された支持体の変色形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本願のレーザー印刷された支持体の別の実施形態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔レーザー印刷された支持体〕
本願におけるレーザー印刷された支持体は、その表面の一部が、変色誘起酸化物により変色することによって、任意の文字、形状等が適所に配置されている。これによって、インクを用いた印刷等によって生じる文字等のにじみを回避することができ、細かい又は小さい字、線、図形などを鮮明に表示することができる。また、インクは通常有機物質を含有することから、高温に対して劣化する等により、色落ち等が生じることがあるが、レーザー印刷では、高温による変色又は色落ちを回避することができる。さらに、支持体自体の構成材料が劣化するような印字形態を採用しないために支持体の劣化、変質を回避することができ、支持体の表面形態を、印刷前後で維持することができる。
【0010】
本願のレーザー印刷された支持体は、当該分野において貼付剤の支持体として用いられるものであればよく、繊維を含んでいればよい。支持体の形態は、織布、編布又は不織布、これらの組み合わせ又は積層体等の種々のものが挙げられる。また、支持体には、高分子フィルム等が含まれていてもよい。この場合、高分子フィルムは少なくとも一面が織布、編布又は不織布で被覆されているものが好ましい。なかでも、支持体は、伸縮性を有するものが好ましく、一方向又は二方向への伸縮性を有する編布が好ましい。
【0011】
支持体の繊維素材は、例えば、天然繊維単独、熱可塑性繊維単独、非熱可塑性繊維単独、これらの2以上の混紡であってもよい。
天然繊維としては、木綿、麻等の植物繊維、羊毛、絹等の動物繊維、石綿等の鉱物繊維等が挙げられる。
熱可塑性繊維としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ナイロンなど熱可塑性樹脂からなる素材、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維等が挙げられる。
非熱可塑性繊維としては、レーヨン、キュプラ等が挙げることができる。
これらの繊維を用いた不織布は、ウォータージェット、ニードルパンチ法等の公知の方法により製造することができる。
具合的には、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維等が70%以上からなる、均一な厚みの編布状のものが好ましい。
【0012】
このような支持体は、通常、外用貼付剤の支持体として使用されるものであり、その厚みは、例えば、0.1mm~3mmが挙げられ、0.2mm~2mmが好ましく、400~800μmがより好ましい。
【0013】
支持体に含有される変色誘起酸化物は、レーザー光の照射を受けることにより変色を誘起する酸化物を意味する。変色誘起酸化物は、酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄等からなる群より選択される1種以上の酸化物が挙げられる。なかでも、酸化チタンが好ましい。
【0014】
変色誘起酸化物は、この変色誘起酸化物の変色前においては、支持体中に、つまり、面内及び厚み方向において、均一に含有されていることが好ましい。このような含有により、任意の文字、形状等を適所に配置するように変色させることができる。
【0015】
変色誘起酸化物を支持体中に均一に含有させるために、例えば、支持体を準備した後、変色誘起酸化物を含む溶液又は分散液等に支持体を浸漬する方法、支持体を構成する繊維を準備する際に、変色誘起酸化物を含む溶液又は分散液等に繊維を浸漬、塗布、噴霧等する方法、支持体を構成する繊維材料を溶融又は溶解させ、その溶融物又は溶解液に変色誘起酸化物を添加して均一に混合する方法などが挙げられる。
このような支持体中への均一性及び取り扱い性を考慮して、変色有機酸化物は、例えば、粒状又は粉末状のものが好ましい。
【0016】
変色誘起酸化物は、例えば、支持体を構成する全繊維100質量部に対して、0.05質量部~30質量部(0.05体積%~30体積%)の割合で用いることができ、0.1質量部~10質量部(0.1体積%~10体積%)が好ましく、0.2質量部~5質量部(0.2体積%~5体積%)がより好ましくい。あるいは、別の観点から、変色誘起酸化物は、支持体への目付量として1g/m2~200g/m2とすることができ、5g/m2~150g/m2とすることが好ましい。
【0017】
支持体において、変色誘起酸化物を変色させ、任意の文字、形状等を適所に配置するために、変色誘起酸化物に対して、レーザー光を照射する方法が挙げられる。
ここでのレーザー光の種類、波長、出力等は、意図する変色を誘起するために適宜調整することができる。例えば、レーザー光は、紫外線レーザー光であることが好ましく、その光源としては、ArF(波長193nm)、KrCl(波長222nm)、KrF(波長248nm)、XeCl(波長308nm)、XeF(波長350nm)等の近紫外域から遠紫外域の光子エネルギーを有するエキシマレーザーが挙げられ、銅蒸気レーザー、YAGレーザー等の高調波のものであってもよい。
【0018】
照射するレーザー光のエネルギーは、例えば、50mJ/cm2~21000mJ/cm2、100mJ/cm2~18000mJ/cm2が好ましい。300mJ/cm2~10000mJ/cm2がより好ましい。このような範囲とすることにより、支持体等への熱的なダメージを回避することができる。なお、レーザー光の照射は、室温、それよりも低温又は高温下に、大気中、窒素ガス、真空下等のいずれの雰囲気中で行ってもよい。また、レーザー光の周波数は、例えば、10000Hz~60000Hzが挙げられ、20000Hz~30000Hzが好ましい。
【0019】
レーザー光の支持体表面への照射は、直接照射する方法、レーザー光を透過するガラス板等を介して照射する方法、レンズを用いて集光又は拡大した光を照射する方法、レーザー光と支持体表面との間にマスクを介して全面にレーザー光を照射する方法等が挙げられる。通常、支持体に必要なマスキングを施した後、レーザー光を照射する方法、レーザー光のビーム径を絞り、レーザー走査により必要なマーキング個所にレーザー光を照射する方法が用いられる。
【0020】
変色誘起酸化物は、レーザー光の照射を受けた場合に、変色誘起酸化物中の酸素原子が脱離し、この酸素原子の脱離により、変色誘起酸化物中の酸素原子と非酸素原子との比率が変化し、目視で、その変色が認められる。例えば、酸化チタンの場合には、酸素原子とチタン原子との比率2:1が、レーザー光の照射により変化し、目視で、白色からグレーへの変色が認められる。なお、このような酸素原子の脱離は、支持体のレーザー光が照射される表面のみであることから、その表面下の支持体の厚み方向においては、変色誘起酸化物は、変色した部分以外の支持体中と同様の濃度で、均一に分散されている。このことは、後述するように、例えば、レーザー光の照射により変色した部分で、支持体を切断した場合の断面における目視又は顕微鏡による観察によって、確認することができる。
【0021】
〔レーザー印刷された貼付剤〕
本願における貼付剤は、第十七改正日本薬局方による皮膚などに適用する製剤であり、主として、上述した支持体、粘着剤層、剥離ライナーがこの順に積層された、例えば、テープ剤及びパップ剤と称されるものを意味する。
上述した支持体を、貼付剤が備えることにより、インクを用いた印刷等に起因する薬物の汚染及び文字等の判読不能を回避することができる。また、支持体自体の構成材料が劣化するような印字形態を採用しないために、薬物の汚染が生じない。さらに、インクを用いない印刷に相当する文字等を、色誘起酸化物により変色により付与することができるために、装袋から取り出した貼付剤の薬物名等の認識を確実に行うことができる。
【0022】
粘着剤層は、上述した支持体の変色していない表面に積層されており、通常、薬物を含有する。薬物としては、例えば、アセトアミノフェノン、フェナセチン、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アミノピリン、アルクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アンフェナクナトリウム、メピリゾール、インドメタシン、ピロキシカム、ロキソプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、フェルビナク、スリンダク、エトドラク、トルメチン、アンピロキシカム、アザプロパゾン、バルデコキシブ、ロフェコキシブ等の消炎鎮痛剤、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイド系抗炎症剤、アミノ安息香酸エチル、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ブロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸オキシブプロカイン、塩酸プロピトカイン等の局所麻酔剤、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェニルピラリン等の抗ヒスタミン剤、サリチル酸、シクロピロクスオラミン、塩酸コロコナゾール等の寄生性皮膚疾患用剤、尿素等の皮膚軟化剤、カルシトリオール、塩酸チアミン、リン酸リボフラピンナトリウム、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド、パンテノール、アスコルビン酸等のビタミン剤等が挙げられる。
【0023】
粘着剤としては、当該分野で公知のものであり、上述した薬物に影響を与えない成分により構成されていることが好ましい。例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤及び水溶性粘着剤等が挙げられる。
【0024】
ゴム系粘着剤のゴム成分としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、ブチルゴム等が挙げられる。
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー等が挙げられる。
水溶性粘着剤としては、ゼラチン、ペクチン、アガロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸及びその塩又はそれらの架橋体等の天然高分子、その変性物等が挙げられる。
これらの成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
粘着剤は、上述した成分以外に、当該分野で用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
薬物は、例えば、粘着剤を構成する全質量に対して、0.1質量%~80質量%、好ましくは0.5~10質量%で含有させることができる。
粘着剤層は、例えば、10μm~3mmの厚みとすることができ、10μm~1mmの厚みとすることが好ましく、30~300μmの厚みとすることがより好ましい。
【0026】
粘着剤層の支持体とは反対側の表面に、貼付剤の使用時まで粘着剤層の粘着面を保護するため、剥離ライナーが積層されている。剥離ライナーとしては、充分に軽い剥離性を確保できればよい。例えば、粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、上質紙又はグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が挙げられる。
【0027】
〔レーザー印刷された支持体又は貼付剤の製造方法〕
レーザー印刷された支持体又は貼付剤の製造方法では、上述したように、変色誘起酸化物を含み、繊維からなる支持体を準備し、その支持体にレーザー光を照射して、支持体の表面の一部を、変色誘起酸化物により変色させることを含む。この変色により、任意の文字又は図形等を印刷することができる。
支持体へのレーザー光の照射は、上述したとおりであるが、特に、貼付剤を製造する場合、支持体を準備した後であれば、支持体に粘着剤層を形成する前後、剥離ライナー上に粘着剤層を形成したものを、支持体上に転写する前後等、任意のタイミングで、支持体にレーザー光の照射を行うことができる。
このような製造方法によって、簡便かつ自在に、さらに、薬物を支持体に適用した後においても、薬物を変質又は劣化させることなく、迅速に印刷することができる。
【実施例】
【0028】
実施例1
ポリエステル製のニットを準備した。このニットは、通常、テープ剤に用いられるものであり、ニットの全質量に対して、0.3%の酸化チタンを含む。このニットは、ポリエステルの溶融液に酸化チタン粉末を混合、撹拌し、繊維状の紡糸したものによって形成されたものである。
準備したニットの一面に、UVレーザーマーキング装置(型式:LIS-250D(クオリカプス株式会社製))にて、パルスエネルギー48%、20kHzの条件でレーザー印刷した。
【0029】
実施例1の結果、
図1に示すように、目視によって明確に判別することができるグレーの印字が認められた。そして、その印刷表面は、レーザー光の照射前から全く変質しておらず、凹凸、焼けなどが発生せず、平坦であった。
また、この印字された部分の支持体を切断し、その断面を目視で観察したところ、
図2に示すように、支持体1表面からその厚み方向の1/2程度に、その表面と同様のグレーの変色部位2が認められ、支持体1の表面とは反対側の裏面側においては、その厚みの1/2程度に全く変色が認められなかった。
【0030】
実施例2
レーザー印刷する時の条件として、描画の際に使用しているデザインデータ(CAD)の描画線数を実施例1の2倍とし、線と線との隙間を無くすこと以外は実施例1と同様の条件でレーザー印刷した。
【0031】
実施例2の結果、
図3に示すように、目視によって明確に判別することができるグレーの印字が認められ、実施例1より濃い印字が得られた。
【0032】
実施例3
実施例1で用いたポリエステル製のニットを準備した。また、剥離ライナー上に塗厚厚みが100μmの粘着剤層を形成した。ニットの一面に、粘着剤層を貼り付け、貼付剤を形成した。
得られた貼付剤の粘着剤層が積層されていない面に、実施例1と同様にレーザー光を照射し、印字した。
その結果、実施例1と同様の結果が得られた。
なお、支持体に隣接する粘着剤層における薬物の変質は認められなかった。
【符号の説明】
【0033】
1 支持体
2 変色部位