(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02255 20210101AFI20230214BHJP
G02B 27/14 20060101ALI20230214BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20230214BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01S5/02255
G02B27/14
H04N5/74 H
H04N9/31 290
(21)【出願番号】P 2020527407
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2019023831
(87)【国際公開番号】W WO2020004100
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018124791
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 陽平
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-015738(JP,A)
【文献】特開2010-211164(JP,A)
【文献】特開2017-098301(JP,A)
【文献】特開2018-010944(JP,A)
【文献】特表2015-525898(JP,A)
【文献】特開2018-085450(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110172(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0299956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
G02B 26/10 - 27/64
H04N 5/66 - 5/74
H04N 9/12 - 9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を出射する第1のレーザダイオードと、
前記第1の光とは波長の異なる第2の光を出射する第2のレーザダイオードと、
前記第2の光を反射することにより前記第1の光と前記第2の光とを合波するフィルタと、を備え
、
前記フィルタは、
前記第1の光が入射する第1の面と、
前記第1の面から入射した前記第1の光が出射し、前記第2の光が反射する第2の面と、
前記第1の面を構成する第1の誘電体多層膜と、
前記第2の面を構成する第2の誘電体多層膜と、を含み、
前記第1の誘電体多層膜は、前記第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有し、
前記第2の誘電体多層膜は、前記第2の光を反射する波長選択性を有する、光モジュール。
【請求項2】
第1の光を出射する第1のレーザダイオードと、
前記第1の光とは波長の異なる第2の光を出射する第2のレーザダイオードと、
前記第2の光を反射することにより前記第1の光と前記第2の光とを合波するフィルタと、を備え、
前記フィルタは、
前記第1の光が入射する第1の面と、
前記第1の面から入射した前記第1の光が出射し、前記第2の光が反射する第2の面と、
前記第2の面を構成する第2の誘電体多層膜と、を含み、
前記第2の誘電体多層膜は、前記第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性と、前記第2の光を反射する波長選択性とを有する、
光モジュール。
【請求項3】
前記第1の光の前記第1の面への入射角は、10°以上60°以下である、
請求項1または
請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記フィルタは、前記第1の光に含まれるp偏光成分の透過率が90%以上であり、前記第1の光に含まれるs偏光成分の透過率が10%以下である、請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記フィルタは、前記第2のレーザダイオードから出射した前記第2の光の90%以上を反射する、請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記フィルタによって合波された光を受光する受光素子をさらに備える、請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記第1の光および前記第2の光のうちの少なくともいずれか一方のスポットサイズを変換するレンズをさらに備える、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記第1のレーザダイオード、前記第2のレーザダイオードおよび前記フィルタを取り囲み、前記第1のレーザダイオード、前記第2のレーザダイオードおよび前記フィルタを封止する保護部材をさらに備える、請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項9】
青色の光を出射する第3のレーザダイオードをさらに備え、
前記第1のレーザダイオードは、赤色の光を出射し、
前記第2のレーザダイオードは、緑色の光を出射する、請求項1から
請求項8のいずれか1項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールに関する。本出願は、2018年6月29日出願の日本出願2018‐124791号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体発光素子からの光が合波されて出射される発光部と、発光部からの光を走査する走査部とを含む光モジュールが知られている(たとえば、特許文献1~3参照)。
このような光モジュールは、発光部からの光を所望の経路に沿って走査することにより、文字や図形などを描画することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-186068号公報
【文献】特開2014-56199号公報
【文献】国際公開第2007/120831号
【発明の概要】
【0004】
本開示の光モジュールは、第1の光を出射する第1のレーザダイオードと、第1の光とは波長の異なる第2の光を出射する第2のレーザダイオードと、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性と、第2の光を反射する波長選択性とを有し、第1の光と第2の光とを合波するフィルタと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施の形態1における光モジュールの構造を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す光モジュールにおいて、
図1に示すキャップを取り外した状態に対応する図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すキャップを取り外した状態における光モジュールを上面から見た図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すキャップを取り外した状態における光モジュールを側面から見た図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1における第2フィルタの拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1における光モジュールのうち、配置されたレーザダイオードと、レンズと、フィルタを簡略化して表した図である。
【
図7】
図7は、自動車に搭載されるHUDシステムの一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2における第2フィルタの拡大断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3における光モジュールのうち、配置されたレーザダイオードと、レンズと、フィルタを簡略化して表した図である。
【
図10】
図10は、実施の形態4における光モジュールのうち、配置されたレーザダイオードと、レンズと、フィルタを簡略化して表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
光モジュールは、一の方向および一の方向に垂直な方向に高速で周期的に揺動するミラーに光を反射させて走査することにより、文字や図形を描画する。半導体発光素子としてのレーザダイオードから出射される光は、出力に応じて偏光角が変化する場合がある。偏光角が変化すると、レーザダイオードから出射される光について、特定方向の直線偏光成分と特定方向以外の直線偏光成分との比率が変化する。そうすると、合波する光について、望み通りの明るさや色調を得ることができない場合がある。また、光モジュールについては、車両等に搭載される場合を考慮し、小型化が求められている。
【0007】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。光モジュールは、第1の光を出射する第1のレーザダイオードと、第1の光とは波長の異なる第2の光を出射する第2のレーザダイオードと、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性と、第2の光を反射する波長選択性とを有し、第1の光と第2の光とを合波するフィルタと、を備える。
【0008】
上記光モジュールによれば、小型化を図りながら、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することができる。
【0009】
このような光モジュールに備えられるフィルタは、第1の光を透過し、第2の光を反射する波長選択性を有する。よって、フィルタを透過する第1の光の光路と、フィルタを反射する第2の光の光路とが同じになるよう、第1のレーザダイオード、第2のレーザダイオードおよびフィルタを配置して、第1の光と第2の光とを合波することができる。フィルタは、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有する。よって、フィルタから出射される第1の光のうちの特定方向以外の直線偏光成分の影響を低減して、第1の光の強度を調整することができる。したがって、第1の光の偏光角が変化したとしても、合波する光における第1の光と第2の光との強度比を適切に調整することができる。また、フィルタが、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有するため、新たに光モジュール内に偏光子を設ける必要はない。このような光モジュールによれば、小型化を図りながら、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することができる。なお、偏光選択性について、選択的に透過するとは、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光の透過率が90%以上であり、第1の光に含まれる特定方向以外の直線偏光成分の光の透過率が10%以下であることをいう。このような偏光選択性を有するフィルタにおける消光比は1:9以上となり、例えば、車載用のHUD(Head Up Display)として用いる場合には、有効である。偏光選択性については、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光の透過率が95%以上であり、第1の光に含まれる特定方向以外の直線偏光成分の光の透過率が5%以下であることが好ましく、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光の透過率が98%以上であり、第1の光に含まれる特定方向以外の直線偏光成分の光の透過率が2%以下であることがさらに好ましい。
【0010】
上記光モジュールにおいて、フィルタは、第1の光が入射する第1の面と、第1の面から入射した第1の光が出射し、第2の光が反射する第2の面と、第1の面を構成する第1の誘電体多層膜と、第2の面を構成する第2の誘電体多層膜と、を含み、第1の誘電体多層膜は、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有し、第2の誘電体多層膜は、第2の光を反射する波長選択性を有してもよい。このようなフィルタは、第1の面を構成する誘電体多層膜の厚みと第2の面を構成する誘電体多層膜の厚みとの差を小さくすることができる。よって、誘電体多層膜の厚みの差に基づくフィルタの反りを小さくすることができる。したがって、合波する光の明るさや色調をより精度よく調整することができる。
【0011】
上記光モジュールにおいて、フィルタは、第1の光が入射する第1の面と、第1の面から入射した第1の光が出射し、第2の光が反射する第2の面と、第2の面を構成する第2の誘電体多層膜と、を含み、第2の誘電体多層膜は、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性と、第2の光を反射する波長選択性を有してもよい。このようなフィルタは、第2の面を構成する第2の誘電体多層膜が波長選択性および偏光選択性を有するため、フィルタの製造時において第1の誘電体多層膜と第2の誘電体多層膜とを形成する際のトータルの成膜時間の短縮化を図ることができる。
【0012】
上記光モジュールにおいて、第1の光の第1の面への入射角は、10°以上60°以下であってもよい。このような入射角の範囲では、特定方向の直線偏光成分の光の反射率と、特定方向以外の直線偏光成分の光の反射率との差が大きい。よって、偏光選択性を有する膜を比較的容易に形成することができる。したがって、偏光選択性を有するフィルタを効率的に製造することができる。なお、第1の光の第1の面への入射角は、35°以上55°以下とすることが、さらに好ましい。
【0013】
上記光モジュールにおいて、フィルタは、第1の光に含まれるp偏光成分の透過率が90%以上であり、第1の光に含まれるs偏光成分の透過率が10%以下であってもよい。
このようにすることにより、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光をp偏光成分の光として光学的なロスを少なくし、合波する光の効率的な調整を図ることができる。
【0014】
上記光モジュールにおいて、フィルタは、第2のレーザダイオードから出射した第2の光の90%以上を反射してもよい。このようにすることにより、第2の光を効率的に利用することができる。
【0015】
上記光モジュールにおいて、フィルタによって合波された光を受光する受光素子をさらに備えてもよい。受光素子は、フィルタによって合波された光を受光するため、第1の光について、選択的に透過した特定方向の直線偏光成分の光を受光することになる。よって、受光素子により受光した光の強度を基にレーザダイオードの出力へのフィードバックを図る際に、合波する光の強度比を適切に調整することができる。したがって、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することが容易となる。
【0016】
上記光モジュールにおいて、第1の光および第2の光のうちの少なくともいずれか一方のスポットサイズを変換するレンズを、さらに備えてもよい。このようにすることにより、所望のスポットサイズを有する光を光モジュールから出射することができる。
【0017】
上記光モジュールは、第1のレーザダイオード、第2のレーザダイオードおよびフィルタを取り囲み、第1のレーザダイオード、第2のレーザダイオードおよびフィルタを封止する保護部材をさらに備えてもよい。このようにすることにより、光モジュールを構成する第1のレーザダイオード、第2のレーザダイオードおよびフィルタを外部環境から有効に保護することができ、高い信頼性を確保することができる。
【0018】
上記光モジュールは、青色の光を出射する第3のレーザダイオードをさらに備え、第1のレーザダイオードは、赤色の光を出射し、第2のレーザダイオードは、緑色の光を出射するようにしてもよい。このようにすることにより、これらの光を合波し、所望の色の光を形成することができる。特に、赤色の光は、出力に対する偏光角の変化が大きいため、光モジュールにおける光の出力時に偏光角の変化の影響を低減して、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することができる。
【0019】
[実施形態の詳細]
次に、本開示にかかる光モジュールの実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
まず、
図1~
図4を参照して実施の形態1について説明する。
図1および
図2は、実施の形態1における光モジュールの構造を示す外観斜視図である。
図2は、
図1に示す光モジュールにおいて、
図1に示すキャップを取り外した状態に対応する図である。
図3は、
図2に示すキャップを取り外した状態における光モジュールを上面から見た図である。言い換えると
図3は、
図2に示すキャップを取り外した状態における光モジュールをZ軸方向に沿って見た図である。
図4は、
図3に示すキャップを取り外した状態における光モジュールを側面から見た図である。
図4は、X軸方向から見た図である。なお、
図3において、光路は破線で示している。
【0021】
図1~
図4を参照して、本実施の形態における光モジュール1は、光を形成する光形成部20と、光形成部20を取り囲み、光形成部20を封止する保護部材2とを備える。保護部材2は、ベース体としての基部10と、基部10に対して溶接された蓋部であるキャップ40と、を含む。光形成部20は、保護部材2によりハーメチックシールされている。基部10は、平板状の形状を有する。光形成部20は、ベース部材4と、赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83と、第1レンズ91,第2レンズ92,第3レンズ93と、第1フィルタ97,第2フィルタ98,第3フィルタ99とを含む。光形成部20は、基部10の一方の主面10A上に配置される。キャップ40は、光形成部20を覆うように基部10の一方の主面10A上に接触して配置される。基部10の他方の主面10B側から一方の主面10A側まで貫通し、一方の主面10A側および他方の主面10B側の両側に突出するように、複数のリードピン51が基部10に設置されている。基部10とキャップ40とにより取り囲まれる空間には、たとえば乾燥空気などの水分が低減(除去)された気体が封入されている。キャップ40には、出射窓42が形成されている。出射窓42には、たとえば平行平板状のガラス部材41が嵌め込まれている。本実施の形態において、保護部材2は、内部を気密状態とする気密部材である。これにより、光形成部20に含まれる各部材が外部環境から有効に保護され、高い信頼性を確保することができる。
【0022】
ベース部材4は、電子温度調整モジュール30と、レーザダイオードベース60とを含む。電子温度調整モジュール30は、吸熱板31、放熱板32および半導体柱33を含む。吸熱板31および放熱板32は、たとえばアルミナからなっている。基部10とレーザダイオードベース60との間に、電子温度調整モジュール30が配置される。放熱板32が基部10の一方の主面10Aに接触するように、電子温度調整モジュール30は基部10の一方の主面10Aに配置される。吸熱板31がレーザダイオードベース60に接触して配置される。電子温度調整モジュール30は、電子冷却モジュールであるペルチェモジュール(ペルチェ素子)である。電子温度調整モジュール30に電流を流すことにより、吸熱板31に接触するレーザダイオードベース60の熱が基部10へと移動し、レーザダイオードベース60が冷却される。電子温度調整モジュール30は、後述するチップ搭載領域61上に配置されたサーミスタ100により検出される温度に基づいて、赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83の温度制御を行う。
【0023】
レーザダイオードベース60は、板状の形状を有する。レーザダイオードベース60は、上面から見て長方形形状(正方形形状)を有する一方の主面60Aを有している。レーザダイオードベース60の一方の主面60Aは、チップ搭載領域61と、レンズ搭載領域62と、フィルタ搭載領域63とを含んでいる。チップ搭載領域61は、一方の主面60Aの一の辺を含む領域に、当該一の辺に沿って形成されている。レンズ搭載領域62は、チップ搭載領域61に隣接し、かつチップ搭載領域61に沿って配置されている。フィルタ搭載領域63は、一方の主面60Aの上記一の辺と向かい合う他の辺を含む領域に、当該他の辺に沿って配置されている。チップ搭載領域61、レンズ搭載領域62およびフィルタ搭載領域63は、互いに平行である。
【0024】
レンズ搭載領域62におけるレーザダイオードベース60の厚みと、フィルタ搭載領域63におけるレーザダイオードベース60の厚みとは、等しい。レンズ搭載領域62とフィルタ搭載領域63とは同一平面に含まれる。チップ搭載領域61におけるレーザダイオードベース60の厚みは、レンズ搭載領域62およびフィルタ搭載領域63に比べて大きい。その結果、レンズ搭載領域62およびフィルタ搭載領域63に比べて、チップ搭載領域61の高さ(レンズ搭載領域62を基準とした高さ、すなわちレンズ搭載領域62に垂直な方向における高さ)が高くなっている。
【0025】
チップ搭載領域61上には、平板状の第1サブマウント71、第2サブマウント72および第3サブマウント73が、X軸方向に並べて配置されている。第1サブマウント71と第3サブマウント73とに挟まれるように、第2サブマウント72が配置されている。
第1サブマウント71上に、第1のレーザダイオードとしての赤色レーザダイオード81が配置されている。第2サブマウント72上に、第2のレーザダイオードとしての緑色レーザダイオード82が配置されている。第3サブマウント73上に、第3のレーザダイオードとしての青色レーザダイオード83が配置されている。赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸の高さ(一方の主面60Aのレンズ搭載領域62を基準面とした場合の基準面と光軸との距離;Z軸方向における基準面との距離)は、第1サブマウント71、第2サブマウント72および第3サブマウント73により調整されて一致している。なお、チップ搭載領域61上において、第3サブマウント73からX軸方向に間隔をあけて、レーザダイオードベース60の温度を検出するサーミスタ100が配置されている。
【0026】
レンズ搭載領域62上には、第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93が配置されている。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれ表面がレンズ面となっているレンズ部91A,92A,93Aを有している。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、レンズ部91A,92A,93Aとレンズ部91A,92A,93A以外の領域とが一体成型されている。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93のレンズ部91A,92A,93Aの中心軸、すなわちレンズ部91A,92A,93Aの光軸は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸に一致する。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光のスポットサイズを変換する(ある投影面におけるビーム形状を所望の形状に整形する)。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93により、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光のスポットサイズが一致するようにスポットサイズが変換される。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93により、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光がコリメート光に変換される。
【0027】
フィルタ搭載領域63上には、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99が配置される。赤色レーザダイオード81と第1レンズ91とを結ぶ直線上に、第1フィルタ97が配置される。緑色レーザダイオード82と第2レンズ92とを結ぶ直線上に、第2フィルタ98が配置される。青色レーザダイオード83と第3レンズ93とを結ぶ直線上に、第3フィルタ99が配置される。第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99は、それぞれ互いに平行な主面を有する平板状の形状を有している。第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99は、それぞれ板厚方向から見て長方形形状(正方形形状)を有する。
【0028】
赤色レーザダイオード81、第1レンズ91のレンズ部91Aおよび第1フィルタ97は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。緑色レーザダイオード82、第2レンズ92のレンズ部92Aおよび第2フィルタ98は、緑色レーザダイオード82の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。青色レーザダイオード83、第3レンズ93のレンズ部93Aおよび第3フィルタ99は、青色レーザダイオード83の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。
【0029】
赤色レーザダイオード81の出射方向、緑色レーザダイオード82の出射方向および青色レーザダイオード83の出射方向は、互いに平行である。第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99の主面は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の出射方向(Y軸方向)に対して45°傾斜している。
【0030】
次に、第1フィルタ97,第2フィルタ98,第3フィルタ99の具体的な構成について説明する。第1フィルタ97は、板状部材97Aを含む。第1フィルタ97には、レンズ部91Aに向く側の面97Bを構成する誘電体多層膜97Cが形成されている(特に
図3参照)。誘電体多層膜97Cは、複数の膜を積層するようにして形成されている。第1フィルタ97は、誘電体多層膜97Cにより赤色の光を反射する。具体的には、第1フィルタ97の面97Bに入射した光のうち、誘電体多層膜97Cは、620~660nmの波長の光を90%以上反射する。この場合、赤色レーザダイオード81の出射方向に対して45°傾斜して第1フィルタ97が配置されているため、赤色の光の入射角は、45°である。なお、誘電体多層膜97Cの代替として、例えば、アルミニウムや銀といった金属の蒸着膜が採用されてもよい。
【0031】
次に、第2フィルタ98の構成について説明する。
図5は、実施の形態1における第2フィルタ98の拡大断面図である。
図5は、X-Y平面で第2フィルタ98を切断した場合の断面図である。併せて
図5を参照して、第2フィルタ98は、光を透過する部材で構成された板状部材98Aを含む。また、第2フィルタ98は、第1の面98Bと、第2の面98Cとを含む。第2フィルタ98は、第1の面98Bが第1フィルタ97側に向き、第2の面98Cが第3フィルタ99側に向くようにフィルタ搭載領域63上に配置される。第1の面98Bに、赤色レーザダイオード81から出射され、第1フィルタ97の面97Bで反射した第1の光である赤色の光が入射する。
【0032】
第2フィルタ98は、第1の面98Bを構成する第1の誘電体多層膜98Dを含む。第1の誘電体多層膜98Dは、赤色の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光であるp偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有する膜98Eを含む。具体的には、膜98Eでは、赤色の光のうちのp偏光成分の光の透過率が95%以上であり、特定方向以外の直線偏光成分の光であるs偏光成分の光の透過率が5%以下である。膜98Eは、複数の層から構成されていてもよいし、単層であってもよい。膜98Eは、第1の面98Bの表側に配置されていてもよいし、第1の誘電体多層膜98Dの内部に配置されていてもよい。このような膜98Eを含むことにより、第2フィルタ98は、赤色の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有する。
【0033】
第2フィルタ98は、第2の面98Cを構成する第2の誘電体多層膜98Fを含む。第2の誘電体多層膜98Fの赤色の光のうちのp偏光成分の光の透過率およびs偏光成分の光の透過率は、共に95%以上である。第2の誘電体多層膜98Fは、第2の光である緑色の光を反射する膜98Gを含む。具体的には、第2の光である緑色の光の波長である500~550nmの波長の光の膜98Gにおける反射率は、95%以上である。膜98Gは、複数の層から構成されていてもよいし、単層であってもよい。膜98Gは、第2の面98Cの表側に配置されていてもよいし、第2の誘電体多層膜98Fの内部に配置されていてもよい。このような膜98Gを含む第2の誘電体多層膜98Fおよび第1の誘電体多層膜98Dを含むことにより、第2フィルタ98は、赤色の光を透過し、緑色の光を反射する波長選択性を有する。
【0034】
第3フィルタ99は、光を透過する部材で構成された板状部材99Aを含む。また、第3フィルタ99は、第1の面99Bと、第2の面99Cとを含む。第3フィルタ99は、第1の面99Bが第2フィルタ98側に向き、第2の面99Cが出射窓42側に向くようにフィルタ搭載領域63上に配置される。第1の面99Bに、第2フィルタ98の第2の面98Cから出射した赤色の光が入射する。また、第1の面99Bに、緑色レーザダイオード82から出射され、第2フィルタ98の第2の面98Cで反射した緑色の光が入射する。
【0035】
第3フィルタ99は、第1の面99Bを構成する第1の誘電体多層膜99Dを含む。第1の誘電体多層膜99Dの赤色の光のうちのp偏光成分の光の透過率およびs偏光成分の光の透過率は、共に95%以上である。第1の誘電体多層膜99Dの緑色の光の透過率は、95%以上である。
【0036】
第3フィルタ99は、第2の面99Cを構成する形成される第2の誘電体多層膜99Eを含む。第2の誘電体多層膜99Eの赤色の光のうちのp偏光成分の光の透過率およびs偏光成分の光の透過率は、共に95%以上である。第2の誘電体多層膜99Eの緑色の光の透過率は、95%以上である。第2の誘電体多層膜99Eは、第3の光である青色の光を反射する。具体的には、第3の光である青色の光の波長である430~470nmの波長の光を、95%以上反射する。
【0037】
次に、本実施の形態における光モジュール1の動作について説明する。
図6は、実施の形態1における光モジュール1のうち、配置された赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83と、第1レンズ91,第2レンズ92,第3レンズ93と、第1フィルタ97,第2フィルタ98,第3フィルタ99を簡略化して表した図である。
【0038】
図6を併せて参照して、まず赤色の光について説明する。赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光は、光路L
1に沿って進行する。この赤色の光は、第1レンズ91のレンズ部91Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光がコリメート光に変換される。第1レンズ91においてスポットサイズが変換された赤色の光は、光路L
1に沿って進行し、第1フィルタ97に入射する。この場合、第1フィルタ97の第1の面97Bから入射する。
この場合、光路L
1に対して、第1の面97Bが45°傾斜しているため、赤色の光の入射角は、45°である。
【0039】
第1フィルタ97は第1の面97Bに形成された誘電体多層膜97Cにより赤色の光を90%以上反射するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は第1の面97Bによってそのほとんどが反射されて、光路L4に沿ってさらに進行する。そして、赤色の光は、第2フィルタ98に入射する。この場合、第2フィルタ98に含まれる第1の面98Bから第2フィルタ98に入射する。この場合、光路L4に対して、第1の面98Bが45°傾斜しているため、赤色の光の入射角は、45°である。
【0040】
ここで、第2フィルタ98は、第1の面98Bを構成する第1の誘電体多層膜98Dを含んでいる。第1の誘電体多層膜98Dは、第1の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光であるp偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有する膜98Eを含んでいる。したがって、第2フィルタ98の第1の面98Bから入射した赤色の光について、p偏光成分の光の95%以上が透過される。また、s偏光成分の光の透過率は、5%以下である。すなわち、赤色の光のうち、p偏光成分の光の大部分が第2フィルタ98を透過し、s偏光成分の光の大部分がカットされる。
【0041】
p偏光成分の光の大部分が透過し、s偏光成分の光の大部分がカットされた赤色の光は、第2フィルタ98内を透過する。第2フィルタ98は、第2の面98Cを構成する第2の誘電体多層膜98Fを含んでいる。第2の誘電体多層膜98Fのp偏光成分の光の透過率およびs偏光成分の光の透過率は、共に95%以上である。したがって、赤色の光はほとんどカットされることなく、第2の面98Cから出射される。赤色の光は、光路L4に沿ってさらに進行し、第3フィルタ99に入射する。この場合、第3フィルタ99に含まれる第1の面99Bから第3フィルタ99に入射する。
【0042】
第3フィルタ99は、第1の面99Bを構成する第1の誘電体多層膜99Dを含んでいる。第1の誘電体多層膜99Dの赤色の光におけるp偏光成分の光の透過率およびs偏光成分の光の透過率は、共に95%以上である。したがって、赤色の光はほとんどカットされることなく、第3フィルタ99内を透過する。第3フィルタ99は、第2の面99Cを構成する第2の誘電体多層膜99Eを含んでいる。第2の誘電体多層膜99Eの赤色の光のp偏光成分の光の透過率およびs偏光成分の光の透過率は、共に95%以上である。したがって、赤色の光はほとんどカットされることなく、第2の面99Cから出射される。赤色の光は、光路L4に沿ってさらに進行し、キャップ40の出射窓42に嵌め込まれたガラス部材41を通って光モジュール1の外部へと出射する。
【0043】
次に緑色の光について説明する。緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光は、光路L2に沿って進行する。この緑色の光は、第2レンズ92のレンズ部92Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光がコリメート光に変換される。第2レンズ92においてスポットサイズが変換された緑色の光は、光路L2に沿って進行し、第2フィルタ98に入射する。この場合、第2の面98Cから第2フィルタ98に入射する。
【0044】
ここで、第2フィルタ98は、第2の面98Cを構成する第2の誘電体多層膜98Fを含んでいる。第2の誘電体多層膜98Fは、第2の光である緑色の光を反射する波長選択性を有する膜98Gを含んでいる。したがって、第2フィルタ98の第2の面98Cから入射した緑色の光について、95%以上を反射する。したがって、緑色の光はほとんど透過することなく反射され、第2の面98Cから出射される。緑色の光は、光路L4に沿ってさらに進行する。ここで、第2の面98Cを出射して光路L4に沿って進行する赤色の光と、第2の面98Cを出射して光路L4に沿って進行する緑色の光とが、合波される。
【0045】
第2の面98Cから出射された緑色の光は、第3フィルタ99に入射する。この場合、第3フィルタ99に含まれる第1の面99Bから第3フィルタ99に入射する。第3フィルタ99は、第1の面99Bを構成する第1の誘電体多層膜99Dを含んでいる。第1の誘電体多層膜99Dの緑色の光の透過率は、95%以上である。したがって、緑色の光はほとんどカットされることなく、第3フィルタ99内を透過する。第3フィルタ99は、第2の面99Cを構成する第2の誘電体多層膜99Eを含んでいる。第2の誘電体多層膜99Eの緑色の光の透過率は、95%以上である。したがって、緑色の光はほとんどカットされることなく、第2の面99Cから出射される。緑色の光は、光路L4に沿ってさらに進行し、キャップ40の出射窓42に嵌め込まれたガラス部材41を通って光モジュール1の外部へと出射する。
【0046】
次に、青色の光について説明する。青色レーザダイオード83から出射された青色の光は、光路L3に沿って進行する。この青色の光は、第3レンズ93のレンズ部93Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば青色レーザダイオード83から出射された青色の光がコリメート光に変換される。第3レンズ93においてスポットサイズが変換された青色の光は、光路L3に沿って進行し、第3フィルタ99に入射する。この場合、第2の面99Cから第3フィルタ99に入射する。
【0047】
ここで、第3フィルタ99は、第2の面99Cを構成する第2の誘電体多層膜99Eを含んでいる。第2の誘電体多層膜99Eは、第3の光である青色の光を反射する波長選択性を有する。したがって、第3フィルタ99の第2の面99Cから入射した青色の光について、95%以上を反射する。したがって、青色の光はほとんど透過することなく反射され、第2の面99Cから出射される。青色の光は、光路L4に沿ってさらに進行する。ここで、第2の面99Cを出射して光路L4に沿って進行する赤色の光および緑色の光と、第2の面99Cを出射して光路L4に沿って進行する青色の光とが、合波される。青色の光は、キャップ40の出射窓42に嵌め込まれたガラス部材41を通って光モジュール1の外部へと出射する。
【0048】
このようにして、赤色、緑色および青色の光が合波されて形成された光(合波光)が光路L4に沿って光モジュール1から出射される。出射された光は、例えば、光モジュール1外に配置されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に入射される。MEMSでは、一の方向(水平方向)および一の方向に垂直な方向(垂直方向)に高速で周期的に揺動するミラーに光を反射させて走査する。揺動するミラーによる反射により光モジュール1から出射された合波光が走査され、文字や図形が描画される。
【0049】
このような光モジュール1に備えられる第2フィルタ98は、第1の光である赤色の光を透過し、第2の光である緑色の光を反射する波長選択性を有する。よって、第2フィルタ98を透過して出射する赤色の光の光路L4と、第2フィルタ98を反射して出射する緑色の光の光路L4とが同じになるよう、第1のレーザダイオード81、第2のレーザダイオード82および第2フィルタ98を配置して、赤色の光と緑色の光とを合波することができる。本実施形態においては、レーザダイオード83、第3フィルタ99等を含むため、赤色の光と緑色の光と青色の光とを合波することができる。また、第2フィルタ98は、赤色の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光であるp偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有するため、第2フィルタ98から出射される赤色の光のうちの特定方向以外の直線偏光成分であるs偏光成分の光の影響を低減して、赤色の光の強度を調整することができる。よって、合波する光における赤色の光と緑色の光、さらには青色の光との強度比を適切に調整することができる。また、第2フィルタ98が、赤色の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有するため、新たに光モジュール1内に偏光子を設ける必要はない。したがって、このような光モジュール1によれば、小型化を図りながら、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することができる。
【0050】
本実施形態において、第2フィルタ98は、赤色の光が入射する第1の面98Bと、第1の面98Bから入射した赤色の光が出射し、緑色の光が反射する第2の面98Cと、第1の面98Bを構成する第1の誘電体多層膜98Dと、第2の面98Cを構成する第2の誘電体多層膜98Fと、を含む。第1の誘電体多層膜98Dは、赤色の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光であるp偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有する膜98Eを含み、第2の誘電体多層膜98Fは、緑色の光を反射する波長選択性を有する膜98Gを含む。このような第2フィルタ98は、第1の面98Bを構成する誘電体多層膜98Dの厚みと第2の面98Cに形成される誘電体多層膜98Fの厚みとの差を小さくすることができる。よって、誘電体多層膜98D,98Fの厚みの差に基づく第2フィルタ98の反りを小さくすることができる。したがって、合波する光の明るさや色調をより精度よく調整することができる。
【0051】
本実施形態において、赤色の光の第1の面98Bへの入射角は、45°であり、10°以上60°以下の範囲内である。このような入射角では、特定方向の直線偏光成分の光、例えば、p偏光成分の光の反射率と、特定方向以外の直線偏光成分の光、例えば、s偏光成分の光の反射率との差が大きい。よって、偏光選択性を有する膜98Eを比較的容易に形成することができる。したがって、偏光選択性を有する第2フィルタ98を効率的に製造することができる。
【0052】
本実施形態において、第2フィルタ98は、赤色の光に含まれるp偏光成分の透過率が90%以上であり、赤色の光に含まれるs偏光成分の透過率が10%以下である。具体的には、第2フィルタ98は、赤色の光に含まれるp偏光成分の透過率が95%以上であり、赤色の光に含まれるs偏光成分の透過率が5%以下である。したがって、赤色の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光をp偏光成分の光として光学的なロスを少なくし、合波する光の効率的な調整を図ることができる。
【0053】
本実施形態において、第2フィルタ98は、緑色レーザダイオード82から出射した緑色の光の90%以上を反射するため、緑色の光を効率的に利用することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、
赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83
から出射される光のスポットサイズを変換する
第1レンズ91,第2レンズ92,第3レンズ93を備えるため、所望のスポットサイズを有する光を光モジュール1から出射することができる。
【0055】
本実施形態においては、複数のレーザダイオードは、赤色の光を出射する赤色レーザダイオード81と、緑色の光を出射する緑色レーザダイオード82と、青色の光を出射する青色レーザダイオード83とを含む。このようにすることにより、これらの光を合波し、所望の色の光を形成することができる。特に、赤色の光は、出力に対する偏光角の変化が大きいため、上記した構成を採用することにより、光モジュール1における光の出力時に偏光角の変化の影響を低減して、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、光モジュール1の外部に設けられ、合波された光を受光する受光素子により、光の強度を監視して各レーザダイオードの出力を制御して、合波する光の明るさや色調を精度よく調整する。
【0057】
このような光モジュール1については、車載用のHUDに用いる際に有効に利用される。次に、本実施の形態における光モジュール1を自動車に搭載されるHUDシステムの光源として用いた場合について説明する。
図7は、自動車に搭載されるHUDシステムの一例を示す概略図である。
【0058】
図7を参照して、HUDシステム3は、光モジュール1を含むMEMS5と、拡散板211と、拡大鏡213と、フロントガラス214と、を含む。MEMS5は、一の方向(水平方向)および一の方向に垂直な方向(垂直方向)に高速で周期的に揺動するミラーを含む。光モジュール1から出射された合波光、すなわち、赤色の光と緑色の光と青色の光とが合波された合波光を、一の方向(水平方向)および一の方向に垂直な方向(垂直方向)に高速で周期的に揺動するミラーに反射させて走査し、画像を投影する。MEMS5から投影される画像は、中間像として拡散板211の表面に結像される。中間像は、拡大鏡213によって拡大され、フロントガラス214の表示領域214aに投影される。表示領域214aに投影された画像は、フロントガラス214で反射されるとともに、フロントガラス214の運転者Pから見て奥側に虚像215が結像される。運転者Pは、虚像215を目視することで、フロントガラス214の虚像215が位置する側に画像が表示されているように見ることができる。
【0059】
ここで、実施の形態1における光モジュール1によれば、合波される光の強度や色調を精度よく調整することができるため、高精度の画像を投影することができる。特に、フロントガラス214に大きな入射角で合波光が入射する上記したHUDシステム3では、赤色の光のp偏光成分の光の反射率とs偏光成分の光の反射率との差に基づく光の強度比への影響を低減することができるため、有効である。また、小型化が図られているため、車内スペースの有効利用を図ることができる。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態2の光モジュール1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における光モジュール1は、以下の点において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0061】
実施の形態1における光モジュール1に備えられる第2フィルタ98において、第1の誘電体多層膜98Dは、偏光選択性を有する膜98Eを含み、第2の誘電体多層膜98Fが波長選択性を有する膜98Gを含むこととしたが、実施の形態2における光モジュール1に備えられる第2フィルタ98においては、第2の誘電体多層膜98Fが偏光選択性を有する膜98Eと、波長選択性を有する膜98Gと、を含む。
【0062】
図8は、実施の形態2における第2フィルタの断面図である。
図8を参照して、第2フィルタ98は、第2の面98Cを構成する第2の誘電体多層膜98Fが、偏光選択性を有する膜98Eと波長選択性を有する膜98Gとを含む。波長選択性を有する膜98Gの方が、偏光選択性を有する膜98Eよりも第2の面98C側に配置されている。このような第2フィルタ98は、第2の面98Cを構成する第2の誘電体多層膜98Fが波長選択性を有する膜98Gおよび偏光選択性を有する膜98Eを含むため、第2フィルタ98の製造時において第1の誘電体多層膜98Dと第2の誘電体多層膜98Fとを形成する際のトータルの成膜時間の短縮化を図ることができる。
【0063】
なお、上記の実施の形態において、第3フィルタ99に含まれる誘電体多層膜99D,99Eのいずれかが、偏光選択性を有するようにしてもよい。すなわち、第3フィルタ99に備えられる第1の誘電体多層膜99Dが、偏光選択性を有する膜98Eを含んでもよいし、第3フィルタ99に備えられる第2の誘電体多層膜99Eが、偏光選択性を有する膜98Eを含んでもよい。このようにすることにより、第3フィルタ99は、赤色の光に含まれる特定方向の直線偏光成分の光であるp偏光成分の光を選択的に透過する偏光選択性を有するため、第3フィルタ99から出射される赤色の光のうちの特定方向以外の直線偏光成分であるs偏光成分の光の影響を低減して、赤色の光の強度を調整することができる。よって、合波する光における赤色の光と緑色の光と青色の光との強度比を適切に調整することができる。したがって、このような光モジュール1によっても、小型化を図りながら、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することができる。
【0064】
(実施の形態3)
実施の形態3の光モジュール1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における光モジュール1は、以下の点において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0065】
実施の形態1においては、赤色レーザダイオードから出射される赤色の光の出射方向と、緑色レーザダイオードから出射される緑色の光の出射方向と、青色レーザダイオードから出射される青色の光の出射方向とを全て同じ方向(Y軸方向)としたが、実施の形態3においては、赤色レーザダイオードから出射される赤色の光の出射方向と、緑色レーザダイオードから出射される緑色の光の出射方向および青色レーザダイオードから出射される青色の光の出射方向とが変更されている。
図9は、実施の形態3における光モジュール1のうち、配置された赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83と、第1レンズ91,第2レンズ92,第3レンズ93と、第1フィルタ97,第2フィルタ98,第3フィルタ99を簡略化して表した図である。
【0066】
図9を参照して、赤色レーザダイオード81から出射される赤色の光の出射方向は、緑色レーザダイオード82から出射される緑色の光の出射方向および青色レーザダイオード83から出射される青色の光の出射方向に直交する方向とする。具体的には、赤色レーザダイオード81から出射される赤色の光の出射方向をX軸方向とし、緑色レーザダイオード82から出射される緑色の光の出射方向および青色レーザダイオード83から出射される青色の光の出射方向をY軸方向とする。
【0067】
このような構成によれば、第1フィルタ97を省略することができる。したがって、光モジュール1を構成する部品の数の削減を図ることができる。
【0068】
(実施の形態4)
実施の形態4の光モジュール1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態4における光モジュール1は、以下の点において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0069】
図10は、実施の形態4における光モジュール1のうち、配置された赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83と、第1レンズ91,第2レンズ92,第3レンズ933と、第1フィルタ97,第2フィルタ98,第3フィルタ99を簡略化して表した図である。
図10を参照して、光モジュール1は、受光素子としてのフォトダイオード94を備える。フォトダイオード94は、受光部94Aを含む。青色レーザダイオード83、第3レンズ93のレンズ部93A、第3フィルタ99およびフォトダイオード94の受光部94Aは、青色レーザダイオード83の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。本実施の形態において、第3フィルタ99は、第1の面99Bにおいて、赤色および緑色の光の大部分を透過するものの、一部を反射する。第3フィルタ99は、青色の光の大部分を反射するものの、一部を透過する。すなわち、第3フィルタ99に到達した赤色および緑色の光の一部は、第3フィルタ99において反射され、光路L
5に沿って進行してフォトダイオード94の受光部94Aへと入射する。また、第3フィルタ99に到達した青色の光の一部は、第3フィルタ99を透過し、光路L
6に沿って進行してフォトダイオード94の受光部94Aへと入射する。そして、フォトダイオード94において受光された赤色、緑色および青色の光の強度の情報に基づいて赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83に流れる電流値が調整される。すなわち、本実施の形態においては、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83は、APC(Auto Power Control)駆動により制御することができる。このようにすることにより、赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83の厳密な制御を行うことができる。すなわち、フォトダイオード94により受光される光の出力に基づいて、赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83の出力を適切に調整することができる。すなわち、本実施形態によると、フォトダイオード94により受光した光の強度を基に赤色レーザダイオード81,緑色レーザダイオード82,青色レーザダイオード83の出力へのフィードバックを図る際に、合波する光の強度比を適切に調整することができる。したがって、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することが容易となる。
【0070】
すなわち、本実施形態における光モジュール1において、フォトダイオード94は、第3フィルタ99によって合波された光を受光するため、赤色の光について、選択的に透過した特定方向の直線偏光成分の光であるp偏光成分の光を受光することになる。よって、フォトダイオード94により受光した光の強度を基に赤色レーザダイオード81の出力へのフィードバックを図る際に、合波する光の強度比を適切に調整することができる。すなわち、合波光を構成する各光の強度比を調整する際に、s偏光成分の光の影響を低減することができる。したがって、合波する光の明るさや色調を精度よく調整することが容易となる。
【0071】
上記実施の形態においては、3個のレーザダイオードからの光が合波される場合について説明したが、レーザダイオードは2個であってもよく、4個以上であってもよい。また、上記実施の形態においては、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99として波長選択性フィルタが採用される場合を例示したが、これらのフィルタは、たとえば偏波合成フィルタであってもよい。
【0072】
なお、上記の実施の形態においては、光モジュール1は、電子温度調整モジュール30を備えることとしたが、例えば、温度変化が小さい環境での使用では、電子温度調整モジュール30を備えない構成としてもよい。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 光モジュール、2 保護部材、3 HUDシステム、4 ベース部材、5 MEMS
10 基部、10A,10B,60A 主面、20 光形成部、30 電子温度調整モジュール、31 吸熱板、32 放熱板、33 半導体柱、40 キャップ、41 ガラス部材、42 出射窓、51 リードピン、60 レーザダイオードベース、61 チップ搭載領域、62 レンズ搭載領域、63 フィルタ搭載領域、71 第1サブマウント、72 第2サブマウント、73 第3サブマウント、81 赤色レーザダイオード、82 緑色レーザダイオード、83 青色レーザダイオード、91 第1レンズ、92 第2レンズ、93 第3レンズ、91A,92A,93A レンズ部、94 フォトダイオード
94A 受光部、97 第1フィルタ、98 第2フィルタ、99 第3フィルタ、97A,98A,99A 板状部材、97B 面、98B,99B 第1の面、98C,99C 第2の面、97C 誘電体多層膜、98D,99D 第1の誘電体多層膜、98F,99E 第2の誘電体多層膜、98E,98G 膜、100 サーミスタ、211 拡散板、213 拡大鏡、214 フロントガラス、214a 表示領域