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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】架線摩耗検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/08 20060101AFI20230214BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230214BHJP
   B60M 1/28 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G01B11/08 H
G01B11/00 H
B60M1/28 R
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021143581
(22)【出願日】2021-09-03
(62)【分割の表示】P 2018202427の分割
【原出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2022000643
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇介
(72)【発明者】
【氏名】深井 寛修
(72)【発明者】
【氏名】山本 大樹
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176746(JP,A)
【文献】特開2016-142540(JP,A)
【文献】特開2016-223882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B60M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフに接触する架線の下面を撮影する摩耗測定用カメラを電車屋根上に設置し、前記摩耗測定用カメラで撮影された水平摩耗部及び傾斜摩耗部を有する偏摩耗箇所を含む前記架線の下面の画像を画像処理して、前記架線の残存直径を求める架線摩耗検出方法において、
前記架線の下面の画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める境界点検出工程を有し、
前記境界点検出工程は、
前記摩耗測定用カメラにより取得した画像から前記架線の摺動面を抽出した摺動面画像を生成する摺動面抽出工程と、
前記摺動面画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める第一の境界点算出工程と、
前記第一の境界点算出工程のあとで、前記摺動面画像から予め設定した閾値以上で上位四つの特徴点を検出する特徴点検出工程と、
前記特徴点検出工程で検出した特徴点に基づいて前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との二つの境界点が得られた場合に、前記二つの境界点のうち、前記一方の端部側の境界点と前記架線の一方の端部との間、又は、前記他方の端部側の境界点と前記架線の他方の端部との間で、ユークリッド距離が大きいほうを前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点として採用し、当該境界点の画像上の位置を求める第二の境界点算出工程と
を含むことを特徴とする架線摩耗検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線摩耗検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車の屋根上からラインセンサカメラによりトロリ線の下面の幅を撮影し、この画像を処理することでトロリ線の摩耗を測定するトロリ線摩耗測定装置が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、このようなトロリ線摩耗測定装置として、特に、トロリ線のパンタグラフ摺動面が一部傾斜した偏摩耗部分について、トロリ線の寿命を知る指標となる残存直径相当値を求めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-142540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のトロリ線摩耗測定装置では、トロリ線の偏摩耗を測定する際に、ラインセンサカメラの画像上のトロリ線の境界点のピクセル位置を設定する必要がある一方、具体的な手法が記載されておらず、実質的に画像上から手作業で境界点のピクセル位置を指定する必要があった。しかしながら、長距離となる電車線の画像1枚1枚について手作業で境界点のピクセル位置を指定することは困難であるという問題があった。
【0006】
このようなことから本発明は、ラインセンサカメラでトロリ線を撮影した画像から自動的に偏摩耗箇所を抽出し、抽出された偏摩耗箇所に基づいて残存直径相当値を測定することが可能な架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る架線摩耗検出装置は、
パンタグラフに接触する架線の下面を撮影する摩耗測定用カメラを電車屋根上に設置し、前記摩耗測定用カメラで撮影された水平摩耗部及び傾斜摩耗部を有する偏摩耗箇所を含む前記架線の下面の画像を画像処理して、前記架線の残存直径を求める画像処理装置を備える架線摩耗検出装置において、
前記画像処理装置が、前記架線の下面の画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める境界点検出部を備え、
前記境界点検出部は、
前記摩耗測定用カメラにより取得した画像から前記架線の摺動面を抽出した摺動面画像を生成する摺動面抽出部と、
前記摺動面画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める第一の境界点算出部と、
前記摺動面画像から予め設定した閾値以上の最大で三つの特徴点を検出する特徴点検出部と、
前記特徴点検出部により検出した特徴点に基づいて前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点の画像上の位置を求める第二の境界点算出部と
を含むことを特徴とする。
【0008】
また、上記の課題を解決するための第2の発明に係る架線摩耗検出装置は、第1の発明において、
前記第二の境界点算出部は、前記特徴点検出部により検出した特徴点のうち、前記水平摩耗部の端部および前記傾斜摩耗部の端部に対応する特徴点を除外し、複数の特徴点が残った場合に、前記閾値を超える反応値が最大となる特徴点を前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点と判断する
ことを特徴とする。
【0009】
また、上記の課題を解決するための第3の発明に係る架線摩耗検出装置は、
パンタグラフに接触する架線の下面を撮影する摩耗測定用カメラを電車屋根上に設置し、前記摩耗測定用カメラで撮影された水平摩耗部及び傾斜摩耗部を有する偏摩耗箇所を含む前記架線の下面の画像を画像処理して、前記架線の残存直径を求める画像処理装置を備える架線摩耗検出装置において、
前記画像処理装置が、前記架線の下面の画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める境界点検出部を備え、
前記境界点検出部は、
前記摩耗測定用カメラにより取得した画像から前記架線の摺動面を抽出した摺動面画像を生成する摺動面抽出部と、
前記摺動面画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める第一の境界点算出部と、
前記摺動面画像から予め設定した閾値以上の最大で四つの特徴点を検出する特徴点検出部と、
前記特徴点検出部により検出した特徴点に基づいて前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との二つの境界点が得られた場合に、予め定めた条件に基づいて当該二つの境界点のうちの一方のみを前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点として採用し、当該境界点の画像上の位置を求める第二の境界点算出部と
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、上記の課題を解決するための第4の発明に係る架線摩耗検出方法は、
パンタグラフに接触する架線の下面を撮影する摩耗測定用カメラを電車屋根上に設置し、前記摩耗測定用カメラで撮影された水平摩耗部及び傾斜摩耗部を有する偏摩耗箇所を含む前記架線の下面の画像を画像処理して、前記架線の残存直径を求める架線摩耗検出方法において、
前記架線の下面の画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める境界点検出工程を有し、
前記境界点検出工程は、
前記摩耗測定用カメラにより取得した画像から前記架線の摺動面を抽出した摺動面画像を生成する摺動面抽出工程と、
前記摺動面画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める第一の境界点算出工程と、
前記摺動面画像から予め設定した閾値以上の最大で三つの特徴点を検出する特徴点検出工程と、
前記特徴点検出工程で検出した特徴点に基づいて前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点の画像上の位置を求める第二の境界点算出工程と
を含むことを特徴とする。
【0011】
また、上記の課題を解決するための第5の発明に係る架線摩耗検出方法は、第4の発明において、
前記第二の境界点算出工程は、前記特徴点検出工程により検出した特徴点のうち、前記水平摩耗部の端部および前記傾斜摩耗部の端部に対応する特徴点を除外し、複数の特徴点が残った場合に、前記閾値を超える反応値が最大となる特徴点を前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点と判断する
ことを特徴とする。
【0012】
また、上記の課題を解決するための第6の発明に係る架線摩耗検出方法は、
パンタグラフに接触する架線の下面を撮影する摩耗測定用カメラを電車屋根上に設置し、前記摩耗測定用カメラで撮影された水平摩耗部及び傾斜摩耗部を有する偏摩耗箇所を含む前記架線の下面の画像を画像処理して、前記架線の残存直径を求める架線摩耗検出方法において、
前記架線の下面の画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める境界点検出工程を有し、
前記境界点検出工程は、
前記摩耗測定用カメラにより取得した画像から前記架線の摺動面を抽出した摺動面画像を生成する摺動面抽出工程と、
前記摺動面画像から前記架線の一方の端部、前記水平摩耗部の端部、前記傾斜摩耗部の端部、及び前記架線の他方の端部の画像上の位置を求める第一の境界点算出工程と、
前記摺動面画像から予め設定した閾値以上の最大で四つの特徴点を検出する特徴点検出工程と、
前記特徴点検出工程で検出した特徴点に基づいて前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との二つの境界点が得られた場合に、予め定めた条件に基づいて当該二つの境界点のうちの一方のみを前記水平摩耗部と前記傾斜摩耗部との境界点として採用し、当該境界点の画像上の位置を求める第二の境界点算出工程と
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法によれば、ラインセンサカメラでトロリ線を撮影した画像から自動的に偏摩耗箇所を抽出し、抽出された偏摩耗箇所に基づいて残存直径相当値を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る架線摩耗検出装置の概要を示す模式図である。
図2図1に示す画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例1に係る架線摩耗検出装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図4】ラインセンサ画像の一例を示す説明図である。
図5図2に示す境界点検出部の構成を示すブロック図である。
図6図3に示す境界点検出処理の流れを示すフローチャートである。
図7】摺動面画像の一例を示す説明図である。
図8】ガウシアンフィルタ処理画像の一例を示す説明図である。
図9】傾斜摩耗部を有するトロリ線の一例を示す断面図である。
図10】本発明の実施例2における境界点検出処理の流れを示すフローチャートである。
図11】摺動面画像において境界点が複数検出された例を示す説明図である。
図12図13に示す境界点の中から最適な境界点を選択した例を示す説明図である。
図13】本発明の実施例3における境界点検出処理の流れを示すフローチャートである。
図14】台形摩耗部を有するトロリ線の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1から図9を用いて本発明の実施例1に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施例において架線摩耗検出装置は、電車車両(以下、単に車両と称する)10の屋根上に設置されたラインセンサカメラ(摩耗測定用カメラ)1と、照明装置2と、車両10の内部に設置された画像処理装置3とを備えている。
【0018】
ラインセンサカメラ1は、車両10の屋根上に鉛直上向きに、その走査線の方向1aが枕木方向と同じ方向になるように設置されている。これにより、ラインセンサカメラ1はその走査線がトロリ線(架線)4を横切るようになっている。ラインセンサカメラ1によって取得したパンタグラフ5に接触するトロリ線4の下面の画像信号は画像処理装置3に入力される。
【0019】
照明装置2は、ラインセンサカメラ1によって撮像される領域にあるトロリ線4を照らす。
【0020】
画像処理装置3は、例えば、コンピュータなどの装置であり、装置構成としては、演算装置、記憶装置、入出力装置などからなり、機能構成としては、図2に示す構成となっている。
【0021】
すなわち、画像処理装置3は、ラインセンサ画像作成部31と、境界点検出部32と、トロリ線中心点位置算出処理部33と、境界点位置算出処理部34と、摩耗断面積算出処理部35と、残存直径相当値算出処理部36と、記憶手段としてのメモリM1,M2とを含んで構成されている。
【0022】
画像処理装置3は、図3に示すフローチャートに従い、ラインセンサカメラ1から入力された画像信号を画像処理してトロリ線摩耗部の残存直径相当値H(図9参照)を算出する。
【0023】
すなわち、画像処理装置3では、まずステップS1で、ラインセンサカメラ1から入力された画像信号が、ラインセンサ画像作成部31により時系列に並べられラインセンサ画像I1(図4参照)としてメモリM1へ保存され、その後、メモリM2に保存される。
【0024】
ステップS1に続いてはステップS2で、境界点検出部32により、ラインセンサ画像I1に基づき、図4に示すラインセンサ画像I1上のトロリ線4の左端p1,水平摩耗部左端(水平摩耗部端部)p2,水平摩耗部と傾斜摩耗部の境界点p3,傾斜摩耗部右端(傾斜摩耗部端部)p4,トロリ線4の右端p5(図9に示す点P1,P2,P3,P4,P5に対応。以下、p1,p5を「トロリ線端部」、p2,p4を「摺動面端部」、p3を「偏摩耗境界点」と称し、p1~p5を総称する場合は「境界点」と称する)のピクセル位置を求める。なお、カメラパラメータ(焦点距離、センサ素子数およびセンサ幅)は予め設定されているものとする。
【0025】
以下、図5及び図6を用いて境界点検出部32による処理を具体的に説明する。
図5に示すように、境界点検出部32は、摺動面抽出部32Aと、第一の境界点算出部32Bと、ガウシアンフィルタ処理部32Cと、特徴点検出部32Dと、第二の境界点算出部32Eとを備えている。
【0026】
次に、境界点検出部32の具体的な機能について図6に示すフローチャートと共に説明する。
境界点検出部32では、まずステップS2-1で、摺動面抽出部32AにてメモリM2からラインセンサ画像I1を取得し、このラインセンサ画像I1に対して画像処理を行い、摺動面に対応する部分(摺動面部分)を抽出する処理を行う。ここで、ラインセンサ画像I1から摺動面部分を抽出する処理としては、既知の手法(例えば、特許第04779770号公報等参照)を用いるものとし、ここでの詳細な説明は省略する。図7に摺動面部分を抽出した画像(摺動面画像)I2の例を示す。
【0027】
続いて、ステップS2-2で第一の境界点算出部32Bにて、摺動面画像I2からトロリ線4の摺動面部分と摺動面以外の部分(摩耗していない部分)との境界点である摺動面端部p2,p4のピクセル位置を検出するとともに、検出した摺動面端部p2,p4のピクセル位置に基づいてラインセンサ画像I1に対しライン方向に沿って各々画像端に向かって所定の領域を設定し、設定した領域内で二値化を行うことによりトロリ線4の両端(背景とトロリ線4との境界)であるトロリ線端部p1,p5のピクセル位置を抽出する。得られた境界点p1,p2,p4,p5のピクセル位置の情報はメモリM2に保管される。
【0028】
続いて、ステップS2-3で、ガウシアンフィルタ処理部32Cにて、摺動面画像I2に対してガウシアンフィルタ処理を行い、ノイズを除去したガウシアンフィルタ処理画像I3(図8参照)を作成する。ガウシアンフィルタ処理画像I3はメモリM2に保管される。
【0029】
続いて、ステップS2-4で、特徴点検出部32Dにて、ガウシアンフィルタ処理画像I3に対し、特徴点検出器32d(例えば、特徴点検出の一手法であるAGASTを利用したもの)を用いて特徴点の検出を行う。ここで、特徴点検出器32dによる特徴点の検出においては、特徴量が予め設定したしきい値以上となる点(以下、反応点)の上位3点を特徴点として抽出するようにする。抽出した特徴点の情報はメモリM2に保管される。
【0030】
ここで、ステップS2-4では、通常の摩耗箇所では摺動面端部p2,p4のみが特徴点として検出され、偏摩耗箇所では摺動面端部p2,p4と、偏摩耗の特徴である摺動面内における大幅な濃淡値変化部分(偏摩耗境界点)p3とが検出されることとなる。そこで、ステップS2-5で、境界点の数が1か0か(特徴点検出部32Dにおいて検出された特徴点の数が3か2か)を判断し、境界点の数が0であれば(NO)偏摩耗していないとみなして後述するステップS3に移行し、境界点の数が1であれば(YES)偏摩耗状態にあるとみなして後述するステップS2-6に移行する。
【0031】
ステップS2-6では、第二の境界点算出部32Eにて、特徴点検出部32Dで検出した特徴点に基づいて偏摩耗境界点p3のピクセル位置を求める。
上述したステップS2-1~ステップS2-6の処理を行うことで、境界点検出部32により境界点p1~p5のピクセル位置が求められる。
【0032】
ステップS2に続いては、境界点検出部32にて求めたトロリ線端部p1,p5のピクセル位置がメモリM2を経てカメラパラメータと共にトロリ線中心点位置算出処理部33ヘ送られ、トロリ線中心位置算出処理部3bによりトロリ線5の中心点の実座標P0(x0,y0)が算出される(ステップS3)。
【0033】
ステップS3に続いては、境界点位置算出処理部34ヘカメラパラメータと共にラインセンサ画像I1上の境界点p1~p5のピクセル位置がメモリM2を経て送られ、境界点位置算出処理部34は境界点p1,p2,p3,p4,p5の実座標P1(x1,y1),P2(x2,y2),P3(x3,y3),P4(x4,y4),P5(x5,y5)が求められる(ステップS4)。
【0034】
ステップS4に続いては、摩耗断面積算出処理部35へトロリ線中心の実座標P0および境界点p2,p3,p4の実座標P2,P3,P4がメモリM2を経て送られ、摩耗断面積が算出される(ステップS5)。
【0035】
ステップS5に続いては、残存直径相当値算出処理部36へ摩耗断面積がメモリM2を経て送られ、残存直径相当値Hが算出される(ステップS6)。
【0036】
なお、上述したステップS3~ステップS6における処理は、例えば上記特許文献1に開示されている処理等、既知の手法を用いればよく、ここでの詳しい説明は省略する。
【0037】
このように構成される本実施例に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法によれば、ラインセンサカメラ1によってトロリ線4の下面を撮影したラインセンサ画像から、特徴点検出器32dを用いて自動的に偏摩耗箇所を判定し、判定された偏摩耗箇所を利用してトロリ線4の寿命を知る指標となる残存直径相当値Hを測定するようにしたことにより、従来技術では、トロリ線4の偏摩耗を測定する際にラインセンサ画像上の境界点p1~Ppを、実質的にラインセンサ画像上から手作業で指定するしかなく、長距離となる電車線の画像1枚1枚について偏摩耗箇所の特定と手作業による境界点の指定をしなければならなかったのに対して、偏摩耗箇所の摩耗測定に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【実施例2】
【0038】
図10から図12を用いて本発明の実施例2に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法について説明する。
【0039】
本実施例は、上述した実施例1に比較して境界点検出部32による処理が異なる。すなわち、特徴点検出部32Dによりあるしきい値以上の反応点の上位3点を検出すると、撮影状況によっては、特徴点として摺動面端点の2点(p2,p4)と偏摩耗境界点1点(p3)の3点ではなく、図11に破線で囲んで示すように、摺動面端点1点(p2又はp4)と偏摩耗境界点2点の3点が検出される可能性がある。このような場合、誤検出された境界点のピクセル位置に基づいて上述したステップS4~ステップS6における計算を行うと、計算結果に大きな誤差が生じてしまうおそれがある。そこで、本実施例では、第二の境界点算出部32Eにより確実に偏摩耗境界点p3のピクセル位置が得られるようにしている。
【0040】
本実施例における境界点検出部32の具体的な機能について、図10に示すフローチャートと共に説明する。
【0041】
まず、ステップS2-11~ステップS2-14における処理は、実施例1で説明したステップS2-1~ステップS2-4の処理と同様であり、重複する説明を省略する。
【0042】
ステップS2-14に続いては、ステップS2-15及びステップS2-16で、境界点の数が0なのか1なのか2なのかを判断し、境界点の数が0であれば偏摩耗していないとみなして実施例1で説明したステップS3に移行し、境界点の数が1であれば偏摩耗状態にあるとみなして後述するステップS2-18に移行し、境界点の数が2であれば偏摩耗状態にあってかつ特徴点に偏摩耗境界点2点が含まれているとみなして後述するステップS2-17に移行する。
【0043】
ステップS2-17では、第二の境界点算出部32Eにて、特徴点検出部32Dで検出した特徴点に基づいて偏摩耗境界点p3のピクセル位置を抽出する。ここで、本実施例では、偏摩耗境界点p3のピクセル位置を抽出する際に、特徴点の選定を行う。すなわち、まず、特徴点検出部32Dにおいて3つの特徴点が得られた場合、これら3つの特徴点のうち、摺動面端点(p2及び/又はp4)を除外し、除外した点を除いた特徴点のうち、しきい値を超える特徴量(反応値)が最大となる特徴点を偏摩耗境界点p3として選択し(図12参照)、そのピクセル位置を求める。なお、摺動面端点(p2及び/又はp4)の除外は、ステップS2-12で求めたp2およびp4のピクセル位置を利用し、特徴点の座標がp2又はp4の座標に対して予め設定した範囲内に存在する場合にこの特徴点を除外するものとする。求めた偏摩耗境界点p3のピクセル位置はメモリM2に保管される。
【0044】
ステップS2-18では、上述したステップS2-6と同様の処理を行う。
ステップS2-17,ステップS2-18に続いては、実施例1で説明したステップSS3に移行する。
【0045】
このように構成される本実施例に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法によれば、特徴点検出部32Dにおいて撮影状況によってあるしきい値以上の反応点の上位3点を検出した際に、特徴点として摺動面端点(p2,p4)の2点と偏摩耗境界点(p3)の3点ではなく、摺動面端点1点(p2又はp4)と偏摩耗境界点2点の3点が検出された場合であっても、正しい偏摩耗境界点p3を採用して摩耗測定を行うことが可能となり、測定誤差を低減することができる。
【実施例3】
【0046】
図13から図14を用いて本発明の実施例3に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法について説明する。
【0047】
本実施例は、上述した実施例1に比較して境界点検出部32における処理が異なる。すなわち、偏摩耗には、図9に示し上述したような傾斜摩耗部を有するものに加え、図14に示すような台形摩耗部(偏摩耗境界点が2点存在する摺動面)を有するものが存在する。このように台形摩耗部を有する偏摩耗においては、実施例1においてステップS5、ステップS6で説明した処理では残存直径相当値Hを算出することができない。そこで、本実施例では、台形摩耗部においては二つの偏摩耗境界点のうち一方のみを採用するようにして、残存直径相当値Hを算出するようにしている。
【0048】
以下、境界点検出部32における処理について図13に示すフローチャートと共に説明する。
【0049】
まず、ステップS2-21~ステップS2-23における処理は、実施例1で説明したステップS2-1~ステップS2-3の処理と同様であり、重複する説明を省略する。
【0050】
ステップS2-23に続いては、ステップS2-24で、特徴点検出部32Dにて、ガウシアンフィルタ処理画像I3に対し、特徴点検出器32dを用いて特徴点の検出を行う。ここで、特徴点検出器32dによる特徴点の検出においては、予め設定したしきい値以上の反応点の上位4点を特徴点として抽出するようにする。抽出した特徴点の情報はメモリM2に保管される。なお特徴点検出器32dを用いた特徴点の検出は、実施例1と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0051】
ここで、ステップS2-24においては、通常の摩耗箇所では摺動面の両端(p2,p4)のみが抽出され、偏摩耗箇所では摺動面端部p2,p4と、偏摩耗の特徴である摺動面内における大幅な濃淡値変化部分(偏摩耗境界点)p3とが検出され、台形摩耗箇所では摺動面端部p2,p4と、偏摩耗の特徴である摺動面内における大幅な濃淡値変化部分(偏摩耗境界点)p3,p3’とが検出されることとなる。
【0052】
そこで、ステップS2-25及びステップS2-26で、境界点の数が0なのか1なのか2なのかを判断し、境界点の数が0であれば偏摩耗していないとみなして実施例1で説明したステップS3に移行し、境界点の数が1であれば偏摩耗状態にあるとみなして後述するステップS2-30に移行し、境界点の数が2であれば台形摩耗状態にあるとみなして後述するステップS2-27に移行する。なお、本実施例において偏摩耗境界点p3はトロリ線端部p1に近い境界点、偏摩耗境界点p3’はトロリ線端部p5に近い境界点とする。
【0053】
ステップS2-27では、第二の境界点算出部32Eにて、特徴点検出部32Dにより検出した特徴点に基づいて偏摩耗境界点p3及び偏摩耗境界点p3’のピクセル位置を求め、続いてステップS2-28で予め定めた条件として偏摩耗境界点p3とトロリ線端部p1との間、偏摩耗境界点p3’とトロリ線端部p5との間のユークリッド距離をそれぞれ求め、ステップS2-29で偏摩耗境界点p3とトロリ線端部p1との間、偏摩耗境界点p3’とトロリ線端部p5との間のうち、ユークリッド距離が大きいほうの偏摩耗境界点(p3またはp3’)を選択する。これにより台形摩耗部を、例えば図14に破線で示すように、P1,P2,P3’,P4,P5を境界点とする偏摩耗部として扱う。
【0054】
ステップS2-30では、上述したステップS2-6と同様の処理を行う。
ステップS2-29,ステップS2-30に続いては、実施例1で説明したステップS3に移行する。
【0055】
すなわち、偏摩耗境界点が2点(p3及びp3’)存在する場合、実施例1においてステップS5、ステップS6で説明した処理では残存直径相当値Hを算出することができない。そこで本実施例では、可能な限り真値に近い残存直径相当値Hを算出するため、上述したように偏摩耗境界点p3とトロリ線端部p1との間、偏摩耗境界点p3’とトロリ線端部p5との間のうち、ユークリッド距離が大きいほうの偏摩耗境界点を選択し、選択した偏摩耗境界点を利用して残存直径相当値Hの算出を行う。これは、偏摩耗境界点p3とトロリ線端部p1との間、偏摩耗境界点p3’とトロリ線端部p5との間のうち、ユークリッド距離が大きいほうの偏摩耗境界点を採用したほうがステップS28の処理において真値に近い残存直径相当値Hを得られるためである。
【0056】
このように構成される本実施例に係る架線摩耗検出装置及び架線摩耗検出方法によれば、上述した実施例1による効果に加え、従来は測定が難しかった台形摩耗部について、偏摩耗境界点p3,p3’のうち一方のみを採用することで、真値に近い残存直径相当値Hを算出することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 ラインセンサカメラ
1a ラインセンサカメラの走査線の方向
2 照明装置
3 画像処理装置
4 トロリ線
5 パンタグラフ
10 車両
31 ラインセンサ画像作成部
32 境界点検出部
32A 摺動面抽出部
32B 第一の境界点算出部
32C ガウシアンフィルタ処理部
32D 特徴点検出部
32d 特徴点検出器
32E 第二の境界点算出部
33 トロリ線中心点位置算出処理部
34 境界点位置算出処理部
35 摩耗断面積算出処理部
36 残存直径相当値算出処理部
M1,M2 メモリ
図1
図2
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図14