IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特許7226505電力変換装置及び最大電力点追従制御方法
<>
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図1
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図2
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図3
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図4
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図5
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図6
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図7
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図8
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図9
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図10
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図11
  • 特許-電力変換装置及び最大電力点追従制御方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】電力変換装置及び最大電力点追従制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/67 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
G05F1/67 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021178697
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2018064811の分割
【原出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2022009818
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鵜殿 直嗣
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-077065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069840(US,A1)
【文献】国際公開第2016/129464(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/181983(WO,A1)
【文献】特開2014-067258(JP,A)
【文献】特開平07-334260(JP,A)
【文献】特開平09-230952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
H02M 7/48
H02M 3/00
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルと、電力を引き込む負荷との間に設けられる電力変換装置であって、
前記太陽光発電パネルから電力を取り出す電力変換部と、
前記電力変換部を制御して最大電力点追従制御を行う機能を有する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記最大電力点追従制御において、前記太陽光発電パネルの出力曲線における値域の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、前記値域の範囲内で、離れた他の値に移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、前記最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行
前記制御部は、前記第1のピーク電力点と前記他のピーク電力点とが互いに同じ位置であるとき、さらなる探索を中止する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記太陽光発電パネルから取り出される電力が所定値以上変化した場合には、現在の最大電力点をリセットして前記最大電力点追従制御をやり直す請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記最大電力点を決定した後、所定時間経過すれば、現在の最大電力点をリセットして前記最大電力点追従制御をやり直す請求項1または請求項に記載の電力変換装置。
【請求項4】
太陽光発電パネルと、電力を引き込む負荷との間に設けられる電力変換装置における、最大電力点追従制御方法であって、
前記太陽光発電パネルから電力を取り出す電力変換部を制御して最大電力点追従制御を行い、
前記最大電力点追従制御において、前記太陽光発電パネルの出力曲線における値域の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、
電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、前記値域の範囲内で、離れた他の値に移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、前記最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行
前記第1のピーク電力点と前記他のピーク電力点とが互いに同じ位置であるとき、さらなる探索を中止する、
最大電力点追従制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及び最大電力点追従制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽光発電パネルには電力変換装置としてのパワーコンディショナが接続され、このパワーコンディショナを介して商用電力系統との系統連系を行うことができる。パワーコンディショナは、太陽光発電パネルから、その時点での最大の電力を引き出すため、最大電力点追従制御(MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御)を行っている(例えば、特許文献1~5参照。)。
【0003】
家庭等の小規模需要家では、一般には屋根に太陽光発電パネルが設置される。近隣に高い建物や樹木があると、太陽光発電パネルが、部分的に影に入る場合がある。このような場合も、MPPT制御により、その時点の最大電力を引き出すことは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開番号WO2016/129464A1
【文献】国際公開番号WO2014/002476A1
【文献】特開2010-278036号公報
【文献】特許第6037585号公報
【文献】特開2013-105318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、太陽光発電パネルが複数のストリングの並列体によって構成されている場合には、並列体全体としての出力曲線が、複雑な形になることがある。このような場合には、最大電力点を捉えきれず、発電効率が低下する場合がある。
【0006】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、複数ストリングで構成され共通の最大電力点追従制御の対象となる太陽光発電パネルについて、その一部が影になることで生じる、発電機会の無駄を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【0008】
本発明の一表現に係る電力変換装置とは、太陽光発電パネルと、電力を引き込む負荷との間に設けられる電力変換装置であって、前記太陽光発電パネルから電力を取り出す電力変換部と、前記電力変換部を制御して最大電力点追従制御を行う機能を有する制御部と、を備え、前記制御部は、前記最大電力点追従制御において、前記太陽光発電パネルの出力曲線における値域の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、前記値域の範囲内で、離れた他の値に移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、前記最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行する、電力変換装置である。
【0009】
また、本発明の一表現に係る方法は、太陽光発電パネルと、電力を引き込む負荷との間に設けられる電力変換装置における、最大電力点追従制御方法であって、前記太陽光発電パネルから電力を取り出す電力変換部を制御して最大電力点追従制御を行い、前記最大電力点追従制御において、前記太陽光発電パネルの出力曲線における値域の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、前記値域の範囲内で、離れた他の値に移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、前記最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行する、最大電力点追従制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数ストリングで構成され共通の最大電力点追従制御の対象となる太陽光発電パネルについて、その一部が影になることで生じる、発電機会の無駄を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電力変換装置を中心とした回路図である。
図2】太陽光発電パネルの標準的な出力曲線の一例を示す図である。
図3】建物や樹木等の影に入って、太陽光発電パネルに部分影ができた状態の一例を概念的に示す略図である。
図4】太陽光発電パネルに部分影ができた状態における出力曲線の一例を示す図である。
図5】太陽光発電パネルに部分影ができた状態における出力曲線の他の例を示す図である。
図6図2と同様の出力曲線において、新方式のMPPT制御を行う一例を示すグラフである。
図7図4と同様の出力曲線において、新方式のMPPT制御を行う一例を示すグラフである。
図8図5と同様の出力曲線において、新方式のMPPT制御を行う一例を示すグラフである。
図9】新方式のMPPT制御の一例を示すフローチャート(1/4)である。
図10】新方式のMPPT制御の一例を示すフローチャート(2/4)である。
図11】新方式のMPPT制御の一例を示すフローチャート(3/4)である。
図12】新方式のMPPT制御の一例を示すフローチャート(4/4)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0013】
(1)これは、太陽光発電パネルと、電力を引き込む負荷との間に設けられる電力変換装置であって、前記太陽光発電パネルから電力を取り出す電力変換部と、前記電力変換部を制御して最大電力点追従制御を行う機能を有する制御部と、を備え、前記制御部は、前記最大電力点追従制御において、前記太陽光発電パネルの出力曲線における値域の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、前記値域の範囲内で、離れた他の値に移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、前記最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行する、電力変換装置である。
【0014】
上記のように構成された電力変換装置では、例えば太陽光発電パネルの全体を構成する複数ストリングの一部のストリングに部分影ができる等の現象により、太陽光発電パネルの出力曲線にピーク電力点が2以上ある場合において、電力点が、第1のピーク電力点に到達しても、もっと高い電力値が得られるかもしれない他のピーク電力点を探索することができる。制御部は、探索の結果、最も高い電力値が得られるピーク電力点を最大電力点として制御すればよい。このようにして、より高い電力値が得られるかもしれないピーク電力点を追い求めることにより、複数のピーク電力点を持つ出力曲線となる太陽光発電パネルの発電電力を、より良く活用することができる。従って、複数ストリングで構成され共通の最大電力点追従制御の対象となる太陽光発電パネルについて、その一部が影になることで生じる、発電機会の無駄を抑制することができる。
【0015】
(2)また、(1)の電力変換装置において、前記制御部は、前記他のピーク電力点としての第2のピーク電力点を探索した後、さらに第3のピーク電力点を探索するか否かを判定するようにしてもよい。
太陽光発電パネルの出力曲線にピーク電力点が1点又は2点以上あるか否かは、時々刻々変化する。例えば、ピーク電力点が1点の場合は、第1のピーク電力点と、第2のピーク電力点とは結果的に同じ位置になるので、第3のピーク電力点を探索することにメリットが無い。従って、このような判定を行うことで、無駄な探索を省略することができる。
【0016】
(3)また、(2)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1のピーク電力点と前記第2のピーク電力点との、電圧差及び電流差のいずれか一方に基づいて前記判定を行うようにしてもよい。
例えば、第1のピーク電力点と、第2のピーク電力点とで、電圧差(又は電流差)が、僅差であれば、他に、もっと高いピーク電力点がある可能性は低い。従って、そのような場合には、第3のピーク電力点の探索を回避することが合理的である。逆に、第1のピーク電力点と、第2のピーク電力点とで、電圧差(又は電流差)が大きいのであれば、他に、もっと高いピーク電力点がある可能性がある。従って、そのような場合には、第3のピーク電力点の探索を行うことが、より高いピーク電力点を得る点で合理的である。
【0017】
(4)また、(1)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1のピーク電力点と前記他のピーク電力点とが互いに同じ位置であるとき、さらなる探索を中止するようにしてもよい。
この場合、さらに他のピーク電力点を探索することにメリットが無いので、無駄な探索を省略することができる。
【0018】
(5)また、(1)~(4)のいずれかの電力変換装置において、前記制御部は、前記太陽光発電パネルから取り出される電力が所定値以上変化した場合には、現在の最大電力点をリセットして前記最大電力点追従制御をやり直すようにしてもよい。
日照条件の大きな変化により太陽光発電パネルから取り出される電力が所定値以上変化した場合には、出力曲線も変化しているので、その時点で最大電力点追従制御をやり直すことにより、適切な電力点にて電力を取り出すことができる。
【0019】
(6)また、(1)~(4)のいずれかの電力変換装置において、前記制御部は、前記最大電力点を決定した後、所定時間経過すれば、現在の最大電力点をリセットして前記最大電力点追従制御をやり直すようにしてもよい。
所定時間経過すれば、日照条件の変化により太陽光発電パネルの出力曲線が大きく変化している場合もあるので、その時点で最大電力点追従制御をやり直すことにより、適切な電力点にて電力を取り出すことができる。
【0020】
(7)一方、方法の観点からは、太陽光発電パネルと、電力を引き込む負荷との間に設けられる電力変換装置における、最大電力点追従制御方法であって、前記太陽光発電パネルから電力を取り出す電力変換部を制御して最大電力点追従制御を行い、前記最大電力点追従制御において、前記太陽光発電パネルの出力曲線における値域の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、前記値域の範囲内で、離れた他の値に移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、前記最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行する、最大電力点追従制御方法である。
【0021】
上記のような最大電力点追従制御方法では、例えば太陽光発電パネルの全体を構成する複数ストリングの一部のストリングに部分影ができる等の現象により、太陽光発電パネルの出力曲線にピーク電力点が2以上ある場合において、第1のピーク電力点に到達しても、もっと高い電力値が得られるかもしれない他のピーク電力点を探索することができる。探索の結果、最も高い電力値が得られるピーク電力点を最大電力点として制御すればよい。このようにして、より高い電力値が得られるかもしれないピーク電力点を追い求めることにより、複数のピーク電力点を持つ出力曲線となる太陽光発電パネルの発電電力を、より良く活用することができる。従って、複数ストリングで構成され共通の最大電力点追従制御の対象となる太陽光発電パネルについて、その一部が影になることで生じる、発電機会の無駄を抑制することができる。
【0022】
[実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態に登場する数値・数量はいずれも一例に過ぎず、記載した値に限定される訳ではない。
【0023】
《電力変換装置の回路構成例》
図1は、電力変換装置1(パワーコンディショナ)を中心とした回路図である。図において、電力変換装置1は、太陽光発電パネル2と、交流電路3との間に設けられている。交流電路3は、商用電力系統4と接続されている。また、交流電路3には需要家の負荷Lが接続されている。太陽光発電パネル2は複数の(図示の例では3)ストリング2a,2b,2cの並列体となっており、電力変換装置1は、ストリング2a,2b,2cの並列体に対して、共通の最大電力点追従制御を行う。
【0024】
電力変換装置1は、DC/DCコンバータ(昇圧チョッパ)5と、DCバス6と、インバータ7とを備えている。主回路要素から順に説明すると、太陽光発電パネル2と接続される直流入力端側には、直流側コンデンサ8が入力に対して並列に設けられている。入力された電圧はDC/DCコンバータ5により所望の電圧に変換され、DCバス6に出力される。DC/DCコンバータ5は、DCリアクトル9と、スイッチング素子Qbと、ダイオード10とを備えている。スイッチング素子Qbは、例えばMOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であり、ボディダイオードを有する。なお、図1の例では、他のスイッチング素子Q1~Q6も全てMOS-FETであるが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等、他の半導体スイッチであってもよい。DCバス6の2線間には、中間コンデンサ11が接続されている。
【0025】
DCバス6の電圧すなわち中間コンデンサ11の両端電圧は、フルブリッジ回路を成すスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6によって構成されるインバータ7に与えられる。インバータ7は、DCバス6の直流電圧を、単相3線の交流電圧に変換する。ACリアクトル12,13,14及び交流側コンデンサ15,16は、インバータ7の発生する高周波ノイズが交流電路3に出ることを防止するフィルタ回路として機能している。交流電路U-W線間には例えば202V、U-O線間、及びW-O線間にはそれぞれ、O線を0電位として+101V、-101Vが出力される。
【0026】
計測・制御用の回路要素としては、例えば、電圧センサ17と、電流センサ18とが設けられている。電圧センサ17は、太陽光発電パネル2の発電電圧を検出して、検出出力を制御部20に送る。電流センサ18は、太陽光発電パネル2から引き出される電流を検出して、検出出力を制御部20に送る。なお、他にも、計測・制御用の電圧センサ及び電流センサは随所に設けられているが、ここでは図示を省略している。制御部20は、各センサから送られてくる検出出力に基づいてスイッチング素子Qb及びQ1~Q6のオン・オフを制御する。
【0027】
制御部20は例えば、コンピュータを含み、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータが実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部20の記憶装置(図示せず。)に格納される。
【0028】
太陽光発電パネル2の発電中には、電力変換装置1は、交流電路3との系統連系運転を行う。これにより、交流電路3に接続されている需要家の負荷Lへの給電、及び、商用電力系統4への逆潮(売電)を行うことができる。
【0029】
《基本的なMPPT制御》
ここで、インバータ9と共に電力変換部を構成するDC/DCコンバータ6は、制御部20の制御により、最大電力点追従制御(以下、MPPT制御という。)を行う。MPPT制御を行うことにより、太陽からの日射の状況によって発電量が変動する太陽光発電パネル2から、その時点での最大電力を引き出すことができる。
【0030】
図2は、太陽光発電パネル2の、標準的な出力曲線の一例を示す図である。図において、点線は、横軸の電圧[V]に対して、太陽光発電パネル2から引き出せる電力[W]を縦軸に取った出力曲線のグラフである。実線は、横軸の電圧[V]に対して、太陽光発電パネル2から引き出せる電流[A]を縦軸に取った出力曲線のグラフである。MPPT制御は、電流及び電圧が、点線のピーク電力点の位置になるようにする制御である。電流と電圧とは実線で示す一対一の関係にあるので、MPPT制御は、電流を少しずつ変化させる電流ステップの制御、及び、電圧を少しずつ変化させる電圧ステップの制御のいずれか一方により行うことができる。実線の出力曲線の右端は、太陽光発電パネル2の出力の2線間の開放(電流0A、電圧約360V)を意味し、左端は短絡(電流約7.8A、電圧0V)を意味する。一般には、開放側からMPPT制御を行う方が制御しやすい。
【0031】
例えば、太陽光発電パネル2から引き出す電流が0のときは、実線の出力曲線上の開放(電流0A、電圧が約360V)に相当する。そこで、点線の出力曲線を「山」に例えると、例えば電流ステップでは、実線の出力曲線の開放側から徐々に電流を増加させ、山登りする。そして、電流指令値を例えば一定値Δi増加させると前回より電力が増えれば、さらに電流指令値を一定値Δiだけ増加させる、という繰り返しにより、迅速に最大電力点P(電流指令値はI)に到達することができる。その後、電流指令値をΔi増加させると前回より電力が減少した場合は最大電力点Pを通過したことになるので、以後は、電流指令値の減少/増加を繰り返しながら、最大電力点P又はその直近にとどまることができる。日照条件が変われば出力曲線も変わるが、その都度、最大電力点Pを追い求めることができる。
【0032】
《部分影の影響》
図3は、建物や樹木等の影に入って、太陽光発電パネル2に部分影ができた状態の一例を概念的に示す略図である。このように、複数ストリング2a,2b,2cのうちの一部のストリング2aに部分影ができた場合、発電の出力曲線が図2のような標準的な形状ではなくなることがわかっている。具体的には、主にストリングの数の範囲内で複数のピーク電力点ができる場合がある。
【0033】
図4は、太陽光発電パネル2に部分影ができた状態における出力曲線の一例を示す図である。図において、点線は、横軸の電圧[V]に対して、太陽光発電パネル2から引き出せる電力[W]を縦軸に取った出力曲線のグラフである。実線は、横軸の電圧[V]に対して、太陽光発電パネル2から引き出せる電流[A]を縦軸に取った出力曲線のグラフである。点線の出力曲線に示すように、ピーク電力点としては、第1のピーク電力点P1と、第2のピーク電力点P2とがある。2つのピーク電力点P1,P2の間には、バレイ(谷)V1がある。
【0034】
図5は、太陽光発電パネル2に部分影ができた状態における出力曲線の他の例を示す図である。図において、点線は、横軸の電圧[V]に対して、太陽光発電パネル2から引き出せる電力[W]を縦軸に取った出力曲線のグラフである。実線は、横軸の電圧[V]に対して、太陽光発電パネル2から引き出せる電流[A]を縦軸に取った出力曲線のグラフである。点線の出力曲線に示すように、ピーク電力点としては、第1のピーク電力点P1、第2のピーク電力点P2、及び、第3のピーク電力点P3、がある。ピーク電力点P1,P2の間、及び、ピーク電力点P2,P3の間には、それぞれ、バレイV1及びV2がある。
【0035】
図4の場合、ピーク電力点P2の電力の方が、ピーク電力点P1の電力より大きい。しかし、通常通り、開放側からMPPT制御を行うと、ピーク電力点P1には到達できるが、ピーク電力点P2には到達できない。
また、図5の場合、電力の大きさに関しては、ピーク電力点P2,P3,P1の順である。しかし、通常通り、開放側からMPPT制御を行うと、ピーク電力点P1には到達できるが、ピーク電力点P2には到達できない。逆に、短絡側からMPPT制御を行っても、ピーク電力点P3には到達できるが、ピーク電力点P2には到達できない。
【0036】
そこで、本開示では、複数のピーク電力点がある場合において、より高いピーク電力点に到達すること、及び、開放側又は短絡側から最大電力点にアプローチしても到達できない他のピーク電力点に到達することを、MPPT制御の工夫により可能にしたい。
【0037】
《新方式のMPPT制御》
そこで、制御部20は、例えば以下のような新方式のMPPT制御を行う。
すなわち、制御部20は、MPPT制御において、太陽光発電パネル2の出力曲線における電流の値域(電圧ステップの場合は電圧の値域、以下同様。)の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、電流の値域の範囲内で、離れた他の値にジャンプするように移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行する。
【0038】
図6は、図2と同様の出力曲線において、新方式のMPPT制御を行う一例を示すグラフである。図6において、まず、MPPT制御の電力点は、開放側から電流ステップにより最大電力点P(電流指令値I)に到達する。但し、もし部分影により複数のピーク電力点がある場合には、電流指令値Iが、最大電力点Pとなる電流指令値とは限らない。また、制御部20自身は、その時点での出力曲線の全体形状を把握している訳ではないので、ピーク電力点が1個なのか、あるいは、複数あるのかについては、不明である。
【0039】
そこで、制御部20は、MPPT制御上で電流指令値Iに到達した場合、その時点での実際の電流及び電圧を、電流センサ18及び電圧センサ17の検出出力に基づいて記憶する。例えば電流値は、電流指令値と同じIであるとし、電圧値はVであるとする(以下同様に、電流指令値と実際の電流値とは同じである、とする。)。そして次に、制御部20は、電流指令値を定格最大電流値Iに変更する。すなわち、制御部20のステップ処理としては、Iから、離れた他の値Iにジャンプするように移動することになる。
【0040】
その結果、電流指令値Iは、点線で示す出力曲線の山の反対側(Pの左側)に行く。そして、ここからMPPT制御による山登りが行われ、再び最大電力点Pとなる電流指令値Iに到達する。そして、その時点での電流値I及び電圧値Vを記憶する。この場合、今記憶した電流値及び電圧値並びに電力値(I×V)は、前回記憶した値と同じである。つまり、ピーク電力値が1つであれば、出力曲線の値域内で異なるアプローチをしても、結果的には同じ最大電力点に行き着く。従って、制御部20は、この場合にはさらなるピーク電力値の探索を行う必要は無いと判定することができる。
【0041】
次に、図7は、図4と同様の出力曲線において、新方式のMPPT制御を行う一例を示すグラフである。図7において、まず、MPPT制御の電力点は、開放側から電流ステップによりピーク電力点P1(電流指令値IP1)に到達する。そして、制御部20は、その時点での電流値IP1及び電圧値VP1並びに電力値(IP1×VP1)を記憶する。
【0042】
次に、制御部20は、電流指令値を定格最大電流値Iに変更する。すなわち、ステップ処理としては、IP1から、離れた他の値Iにジャンプするように移動することになる。そして、MPPT制御の電力点は、電流値IP2,電圧値VP2のピーク電力点P2に到達する。ここで、制御部20は、電流値IP2及び電圧値VP2並びに電力値(IP2×VP2)を記憶する。そして、制御部20は、今記憶したピーク電力点P2の電力値、及び、前回記憶したピーク電力点P1の電力値のうち、大きい方を最大電力点とする。すなわち、図示の例のように電力値に関してP2>P1でああれば、制御部20は、ピーク電力点P2にとどまるよう制御し、P2<P1であればピーク電力点P1に戻るよう、制御する。
【0043】
次に、図8は、図5と同様の出力曲線において、新方式のMPPT制御を行う一例を示すグラフである。図8において、まず、MPPT制御の電力点は、開放側から電流ステップによりピーク電力点P1(電流値IP1,電圧値VP1)に到達する。そして、制御部20は、その時点での電流値IP1及び電圧値VP1並びに電力値(IP1×VP1)を記憶する。
【0044】
次に、制御部20は、電流指令値を定格最大電流値Iに変更する。すなわち、ステップ処理としては、IP1から、離れた他の値Iにジャンプするように移動することになる(図8の移動1)。そして、MPPT制御の電力点は、電流値IP3,電圧値VP3のピーク電力点P3に到達する。ここで、制御部20は、電流値IP3及び電圧値VP3並びに電力値(IP3×VP3)を記憶する。このとき、制御部20は、今記憶したピーク電力点P3の電圧値VP3と、前回記憶したピーク電力点P1の電圧値VP1とを互いに比較して、その差が、例えば所定値より小さい(僅差の)ときは、電力値に関して大きい方を最大電力点として、以後のMPPT制御を行うことができる。一方、図8に示すように、上記の差が大きい場合は、その間に、他のピーク電力値が存在する可能性が十分にある。
【0045】
そこで、記憶した2つの電圧値の差が所定値より大きい場合には、出力曲線の値域の範囲内でさらに移動してみる。但し、最初の移動と等量の移動をすると、元に戻るので、最初の移動より移動量を減らす。減らす目安としては例えば、図8における「移動2」の移動量を、IP1,IP3の中間点IPXにすることが考えられる。「移動2」の結果、MPPT制御の電力点は、電流値IP2,電圧値VP2のピーク電力点P2に到達する。ここで、制御部20は、電流値IP2及び電圧値VP2並びに電力値(IP2×VP2)を記憶する。そして、制御部20は、これまでに記憶したピーク電力点P1,P3,P2の電力値のうち、最大の値を、最大電力点とする。
【0046】
上記の「移動2」の適切な移動量は、既に発見したピーク電力点P1,P3の電流値の中間点のほか、中間点の前後、例えば中間点を50%とすれば40~60%程度で設定してもよい。また、移動2で新しいピーク電力点が見つからない場合、さらに、移動する範囲を変更しながら、移動を繰り返してもよい。1つの移動法としては、移動量を徐々に減らすことが考えられる。また、IP1からIP3までの範囲内でランダムに移動することも考えられる。但し、あまり移動回数を増やすと、トータル的な効率低下も考えられるので、移動回数を制限して、真の最大電力点が発見できなかったとしても、相対的に、より高いピーク電力点が発見できれば、実用上は十分な電力有効活用ができる。
【0047】
《まとめ》
以上のように、この制御部20は、MPPT制御において、太陽光発電パネル2の出力曲線における値域(電流の値域又は電圧の値域)の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、電流の値域の範囲内で、離れた他の値にジャンプするように移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行する。
【0048】
このようなMPPT制御によれば、例えば太陽光発電パネル2の全体を構成する複数ストリング2a,2b,2cの一部のストリングに部分影ができる等の現象により、太陽光発電パネル2の出力曲線にピーク電力点が2以上ある場合において、第1のピーク電力点に到達しても、もっと高い電力値が得られるかもしれない他のピーク電力点を探索することができる。制御部20は、探索の結果、いずれか最も高い電力値が得られるピーク電力点を最大電力点として制御すればよい。このようにして、より高い電力値が得られるかもしれないピーク電力点を追い求めることにより、複数のピーク電力点を持つ出力曲線となる太陽光発電パネル2の発電電力を、より良く活用することができる。
【0049】
また、制御部20は、他のピーク電力点としての第2のピーク電力点を探索した後、さらに第3のピーク電力点を探索するか否かを判定するようにしてもよい。
太陽光発電パネル2の出力曲線にピーク電力点が1点又は2点以上あるか否かは、時々刻々変化する。例えば、ピーク電力点が1点の場合は、第1のピーク電力点と、第2のピーク電力点とは結果的に同じ位置になるので、第3のピーク電力点を探索することにメリットが無い。従って、このような判定を行うことで、無駄な探索を省略することができる。
【0050】
また、制御部20は、第1のピーク電力点と第2のピーク電力点との電圧差又は電流差に基づいて判定を行ってもよい。例えば、電流ステップの制御であれば電圧差、電圧ステップの制御であれば電流差、である。
例えば、第1のピーク電力点と、第2のピーク電力点とで、電圧差(又は電流差)が、僅差であれば、他に、もっと高いピーク電力点がある可能性は低い。従って、そのような場合には、第3のピーク電力点の探索を回避することが合理的である。逆に、第1のピーク電力点と、第2のピーク電力点とで、電圧差(又は電流差)が大きいのであれば、他に、もっと高いピーク電力点がある可能性がある。従って、そのような場合には、第3のピーク電力点の探索を行うことが、より高いピーク電力点を得る点で合理的である。
【0051】
《その他の補足》
また、制御部20は、太陽光発電パネル2から取り出される電力が所定値以上変化した場合には、現在の最大電力点をリセットしてMPPT制御をやり直すようにしてもよい。例えば、日照条件の大きな変化により太陽光発電パネル2から取り出される電力が所定値以上変化した場合には、出力曲線も変化しているので、その時点でMPPT制御をやり直すことにより、適切な電力点にて電力を取り出すことができる。
【0052】
また、制御部20は、最大電力点を決定した後、所定時間経過すれば、現在の最大電力点をリセットしてMPPT制御をやり直すようにしてもよい。すなわち、所定時間経過すれば、日照条件の変化により太陽光発電パネルの出力曲線が大きく変化している場合もあるので、その時点で最大電力点追従制御をやり直すことにより、適切な電力点にて電力を取り出すことができる。
【0053】
《フローチャートの一例》
次に、上記のような新方式のMPPT制御の具体的な一例を示す。但し、これは一例に過ぎず、普遍的には既に述べた通りである。
図9図12は、新方式のMPPT制御の一例を示すフローチャートであり、一つのフローチャートを、図示の便宜上4枚の図面で表している。図9の、丸で囲んだA,B,Cは、図10のA,B,Cのところへ繋がっている。図10のDは、図11のDに繋がっている。図11のEは、図12のEに繋がっている。
【0054】
(ピーク判別処理)
図9において、制御部20は、接続されているストリング数を確認し(ステップS1)、太陽光発電パネル2の電圧値、電流値、電力値を取得する(ステップS2)。そして、制御部20は、再探索までの時限のカウントダウンを行う再探索カウンタが、0か否かを判定する(ステップS3)。再探索カウンタの初期値は0であり、所定値の設定は後述の、図12のステップS42において行われる。従って、再探索カウンタが0となるのは、最初にステップS3の判定を行うとき、及び、それ以降は、設定された値がカウントダウンにより0になったときである。ステップS3において、例えば、「NO」すなわち0でない場合には、制御部20は、再探索カウンタを、カウントダウン(-1)する(ステップS4)。続いて、制御部20は、ピーク探索フラグを0に設定し(ステップS7)、図11の処理に向かう。一方、再探索カウンタが0の場合には、制御部20は、現在の電圧値及び電流値を記録し(ステップS5)、現在の電力値が平均電力値(誤差範囲を考慮した値)より大きいか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6での判定が「YES」の場合は、制御部20は、ピーク探索フラグを0に設定し(ステップS7)、図11の処理に向かう。
【0055】
ステップS6での判定が「NO」の場合には、制御部20は、現在の電圧値が平均電圧値(誤差範囲を考慮した値)と同等であり、かつ、現在の電流値が平均電流値(誤差範囲を考慮した値)と同等であるか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8の判定が「NO」の場合には、制御部20は、図11の処理に向かい、また、「YES」の場合にはピークカウンタを(+1)する(ステップS9)。続いて、制御部20は、ピークカウンタが所定数であるm回より多いか否かを判定し(ステップS10)、「NO」の場合には、図11の処理に向かう。「YES」の場合には、制御部20は、MPPT制御上、現在はピークに留まっているとしてピーク探索フラグを1とし(ステップS11)、過去に訪れた(記録した)ことのないピークか否かを判定する(ステップS12)。
【0056】
ステップS12の判定が「YES」の場合には、制御部20は、ピーク履歴に電圧値及び電流値を登録し(ステップS13)、残り探索数n(初期値はストリング数)を1減らした後(ステップS14)、図10の処理に向かう。
ステップS12の判定が「NO」の場合には、制御部20は、同じピーク帰還カウンタを(+1)し(ステップS15)、同じピーク帰還カウンタが所定数kより大きいか否かを判定し(ステップS16)、「NO」の場合は図10の処理に向かい、「YES」の場合はピーク探索フラグを0に設定して(ステップS17)、図11の処理に向かう。
【0057】
(ピーク探索処理)
次に、図10において、制御部20は、ピーク探索フラグが1か否かを判定し(ステップS18)、「NO」であれば図11の処理に向かうが、「YES」であれば探索回数は1以上か否かを判定する(ステップS19)。制御部20は、ステップS19において「NO」であれば、図11の処理に向かうが、「YES」であれば最初のピークではないか否かを判定する(ステップS20)。
【0058】
ステップS20において、最初のピークである場合は、制御部20は、定格電流値を電流指令値に設定する(ステップS22)。これは、図7で言えば「移動」、及び、図8で言えば最初の「移動1」に相当する処理である。最初のピークでない場合は、制御部20は、1つ前のピーク電流値と現在のピーク電流値との平均値を計算し(ステップS21)、その結果のピーク電流平均値を電流指令値に設定する(ステップS23)。これは、図8で言えば2回目の「移動2」に相当する処理である。
【0059】
次に制御部20は、現在の電流値が電流指令値と同じであるか否かを判定し(ステップS24)、「NO」であれば図11の処理に向かい、「YES」であればピーク探索フラグを0に設定してから(ステップS25)図11の処理に向かう。
【0060】
(MPPT制御の電流ステップ)
次に、図11において、制御部20は、現在の電力値が前回の電力値より大きいか否かを判定し(ステップS26)、判定が「YES」であれば、MPPT制御による現在位置は最大電力点(MPP点)を通り越したか否かを判定する(ステップS27)。ステップS27の判定が「YES」であれば、制御部20は、MPPTの方向を「山下り」方向に向けて(ステップS28)、電流ステップを山下り方向に設定する(ステップS29)。一方、ステップS27の判定が「NO」であれば、制御部20は、電流ステップを山登り方向に設定する(ステップS30)。
【0061】
また、ステップS26での判定が「NO」であれば、制御部20は、MPPT制御による現在位置が、最大電力点より手前か否かを判定する(ステップS31)。ステップS31の判定が「YES」であれば、制御部20は、MPPTの方向を山登り方向に向けて(ステップS32)、電流ステップを山登り方向に設定する(ステップS33)。一方、ステップS31の判定が「NO」であれば、制御部20は、電流ステップを山下り方向に設定する(ステップS34)。
【0062】
なお、図11は電流ステップの例であるが、電圧ステップの場合は、ステップS29,S30,S33,S34における「電流ステップを・・・」が、「電圧ステップを・・・」に置き換わるだけで、それ以外は同様である。
【0063】
(ピーク探索終了判定処理、再探索カウンタ設定処理)
次に図12において、制御部20は、現在のピーク電圧値が1つ前のピーク電圧値の±Δ%(Δは、所定の微小値)以内か否かを判定し(ステップS35)、「YES」であれば、ピークがこれ以上存在しないと考えてピーク探索フラグを0に設定し(ステップS36)、残り探索回数をリセットする(ステップS37)。そして制御部20は、現在の電流値が、最大電力となるピーク電流値の又はその近傍の値か否かを判定し(ステップS38)、「YES」の場合は、MPPT制御の結果より、電流指令値を決定する(S39)。その後、制御部20は、再探索カウンタを設定し(ステップS42)、スイッチングのデューティ比を更新して(ステップS43)、処理終了となる。
【0064】
一方、ステップS35において判定が「NO」の場合には、制御部20は、MPPT制御の結果より、電流指令値を決定し(S40)、スイッチングのデューティ比を更新して(ステップS43)、処理終了となる。また、ステップS38において判定が「NO」の場合には、制御部20は、ピーク履歴の中で電力値が最大となるピーク電流値を電流指令値に設定し(ステップS41)、スイッチングのデューティ比を更新して(ステップS43)、処理終了となる。
【0065】
《補記》
なお、上記実施形態の電力変換装置1は、商用電力系統に系統連系するパワーコンディショナであるが、系統連系しないスタンドアローンの太陽光発電システムにおける電力変換装置であっても、上記のMPPT制御を適用することができる。但し、負荷が接続された状態でなければ電流が流れないので、スタンドアローンの場合は、電力変換装置が太陽光発電パネルから引き出そうとする電流を自在に流してくれる負荷が必要となる。系統連系して逆潮している場合は、商用電力系統が一種の負荷となるので、電流はどのようにでも引き出すことができる。
すなわち、電力変換装置には、電力を引き込む負荷が接続されていることが必要である。
【0066】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 電力変換装置
2 太陽光発電パネル
2a,2b,2c ストリング
3 交流電路
4 商用電力系統
5 DC/DCコンバータ
6 DCバス
7 インバータ
8 直流側コンデンサ
9 DCリアクトル
10 ダイオード
11 中間コンデンサ
12,13,14 ACリアクトル
15,16 交流側コンデンサ
17 電圧センサ
18 電流センサ
20 制御部
L (需要家の)負荷
Qb,Q1~Q6 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12