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特許7226572エレベーターのロープ張力測定装置を把持する取付治具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】エレベーターのロープ張力測定装置を把持する取付治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/12 20060101AFI20230214BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20230214BHJP
   B66B 7/12 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B66B5/12 A
B66B5/00 D
B66B7/12 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021550345
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026235
(87)【国際公開番号】W WO2021065132
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/038590
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】関 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直
(72)【発明者】
【氏名】大野 佳子
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲士
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】福永 寛
(72)【発明者】
【氏名】小出 靖征
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-257610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0343434(US,A1)
【文献】特開2010-066237(JP,A)
【文献】特開2001-031345(JP,A)
【文献】米国特許第2735728(US,A)
【文献】国際公開第2019/138547(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0042285(US,A1)
【文献】特開2013-177107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 7/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのロープを把持する第1把持体と、
前記ロープの張力を測定するロープ張力測定装置を把持する第2把持体と、
前記ロープ張力測定装置が前記ロープから離れた位置に配置されるように前記第1把持体と前記第2把持体とを連結する連結体と、
を備え
前記連結体は、前記第1把持体が手前側および奥側の一方のロープを把持した際に前記ロープ張力測定装置が手前側および奥側の他方のロープに対して手前側および奥側の一方のロープとは反対側に配置されるように前記第1把持体と前記第2把持体とを連結するエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項2】
前記第2把持体は、前記ロープ張力測定装置による振動の検出方向が前記ロープの振動方向に一致するように前記ロープ張力測定装置を把持する請求項1に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項3】
前記第1把持体は、上下方向に並んだ一対の把持部により前記ロープを把持し、前記一対の把持部における前記ロープの把持位置の距離と上側の把持部における前記ロープの把持力との積が前記ロープ張力測定装置の自重による回転モーメントよりも大きい請求項1または請求項2に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項4】
前記連結体に連結された一側と前記ロープ張力測定装置よりも高い位置で測定を実施するロープ以外の隣接ロープまたはエレベーターの構造体に取り付けられる他側とを備えた第1落下抑制体、
を備えた請求項1から請求項のいずれか一項に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項5】
前記連結体に連結された一側と前記ロープ張力測定装置に取り付けられる他側とを備えた第2落下抑制体、
を備えた請求項1から請求項のいずれか一項に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項6】
前記第1把持体は、ロープの外径に合わせた曲率を持つクリップである請求項1から請求項のいずれか一項に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項7】
前記第1把持体は、複数のロープの外径のそれぞれに合わせた複数の曲率を持つクリップである請求項に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項8】
エレベーターのロープを把持する第1把持体と、
前記ロープの張力を測定するロープ張力測定装置を把持する第2把持体と、
前記ロープ張力測定装置が前記ロープから離れた位置に配置されるように前記第1把持体と前記第2把持体とを連結する連結体と、
を備え、
前記第1把持体は、ロープの外周の凹凸に嵌まる凹凸状の先端部を備えたエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項9】
前記連結体は、ロープの振動数よりも大きい固有振動数を有した請求項1から請求項のいずれか一項に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項10】
前記連結体は、一側において前記第2把持体の一側と連結され、前記第2把持体と直交する請求項1から請求項のいずれか一項に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【請求項11】
前記第2把持体は、
水平方向に移動自在に設けられ、前記ロープ張力測定装置を側方から把持する第1把持部と、
前記第1把持部に対して前記ロープ張力測定装置を把持する力を与えるように水平方向の荷重を発生させる第2把持部と、
を備えた請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのロープ張力測定装置を把持する取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターのロープ張力測定装置の取付治具を開示する。当該取付治具によれば、センサをロープに取り付け得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開平9-257610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の取付治具においては、大きなセンサを測定対象に取り付けると、当該センサが測定対象のロープに隣接したロープと干渉する場合がある。この場合、ロープの張力を正確に測定できない。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、ロープ張力測定装置が測定対象のロープに隣接したロープと干渉することを抑制できるエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具は、エレベーターのロープを把持する第1把持体と、前記ロープの張力を測定するロープ張力測定装置を把持する第2把持体と、前記ロープ張力測定装置が前記ロープから離れた位置に配置されるように前記第1把持体と前記第2把持体とを連結する連結体と、を備え、前記連結体は、前記第1把持体が手前側および奥側の一方のロープを把持した際に前記ロープ張力測定装置が手前側および奥側の他方のロープに対して手前側および奥側の一方のロープとは反対側に配置されるように前記第1把持体と前記第2把持体とを連結する
また、本開示に係るエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具は、エレベーターのロープを把持する第1把持体と、前記ロープの張力を測定するロープ張力測定装置を把持する第2把持体と、前記ロープ張力測定装置が前記ロープから離れた位置に配置されるように前記第1把持体と前記第2把持体とを連結する連結体と、を備え、前記第1把持体は、ロープの外周の凹凸に嵌まる凹凸状の先端部を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、連結体は、ロープ張力測定装置がロープから離れた位置に配置されるように第1把持体と第2把持体とを連結する。このため、ロープ張力測定装置が測定対象のロープに隣接したロープと干渉することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムが適用されるエレベーターシステムの構成図である。
図2】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置のブロック図である。
図3】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の斜視図である。
図4】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による加速度の検出結果を示す図である。
図5】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による加速度の検出結果を示す図である。
図6】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による加速度の検出結果を示す図である。
図7】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の斜視図である。
図8】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の管理方法を説明するための図である。
図9】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第1例の斜視図である。
図10】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第1例の斜視図である。
図11】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第1例の側面図である。
図12】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第1例の平面図である。
図13】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第2例の平面図である。
図14】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第2例の側面図である。
図15】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第3例の斜視図である。
図16】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第4例の平面図である。
図17】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第5例の斜視図である。
図18】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第6例の斜視図である。
図19】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第6例の要部の平面図である。
図20】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第7例の要部の斜視図である。
図21】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第8例の要部の斜視図である。
図22】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第9例の要部の斜視図である。
図23】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第10例の要部の斜視図である。
図24】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第11例の要部の平面図である。
図25】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるエレベーターシステムのロープの振動波を説明するための図である。
図26】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるエレベーターシステムのロープの振動波形のフーリエ変換を説明するための図である。
図27】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるエレベーターシステムのロープの振動波形の自己相関関数を説明するための図である。
図28】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の周波数の算出方法を説明するための図である。
図29】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による曲線補間方法を説明するための図である。
図30】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図31】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムを利用したロープの調整方法を説明するためのフローチャートである。
図32】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムの変形例を示すブロック図である。
図33】実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムが適用されるエレベーターシステムの制御装置のハードウェア構成図である。
図34】実施の形態2におけるエレベーターのロープ張力測定システムのブロック図である。
図35】実施の形態2におけるエレベーターのロープ張力測定システムの変形例を示すブロック図である。
図36】実施の形態3におけるエレベーターのロープ張力測定システムのブロック図である。
図37】実施の形態3におけるエレベーターのロープ張力測定システムの変形例を示すブロック図である。
図38】実施の形態4におけるエレベーターのロープ張力測定システムのブロック図である。
図39】実施の形態4におけるエレベーターのロープ張力測定システムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムが適用されるエレベーターシステムの構成図である。
【0011】
図1のエレベーターシステムにおいて、昇降路1は、図示されない建築物の各階を貫く。複数の乗場2の各々は、建築物の各階に設けられる。複数の乗場2の各々は、昇降路1に対向する。
【0012】
巻上機3は、昇降路1の下部に設けられる。一対のかご側返し車4は、昇降路1の上部に設けられる。おもり側返し車5は、昇降路1の上部に設けられる。
【0013】
複数のロープ6は、巻上機3と一対のかご側返し車4とおもり側返し車5とに巻き掛けられる。複数のロープ6の両端部は、昇降路1の上部に固定される。なお、図1においては、1本のロープ6のみが示される。
【0014】
一対のかご側吊り車7は、一対のかご側返し車4よりもロープ6の一端部の側でロープ6に支持される。なお、図1においては、1つのかご側吊り車7のみが示される。おもり側吊り車8は、おもり側返し車5よりもロープ6の他端部の側でロープ6に支持される。
【0015】
かご9は、昇降路1の内部に設けられる。かご9の下部は、一対のかご側吊り車7に支持される。釣合おもり10は、昇降路1の内部に設けられる。釣合おもり10の上部は、おもり側吊り車8に支持される。
【0016】
制御装置11は、昇降路1の下部に設けられる。制御装置11は、巻上機3等に電気的に接続される。制御装置11は、エレベーターを全体的に制御し得るように設けられる。
【0017】
監視装置12は、昇降路1の下部に設けられる。監視装置12は、制御装置11に電気的に接続される。監視装置12は、制御装置11からの情報に基づいてエレベーターの状態を監視し得るように設けられる。
【0018】
情報センター装置13は、エレベーターが設けられた建築物から離れた場所に設けられる。例えば、情報センター装置13は、エレベーターの保守会社に設けられる。情報センター装置13は、監視装置12からの情報に基づいてエレベーターの状態を把握し得るように設けられる。
【0019】
複数のロープ6の張力のばらつきの調整時において、作業員は、かご9の天井に乗った状態でロープ張力測定システムを利用する。ロープ張力測定システムは、ロープ張力測定装置14と取付治具15とを備える。
【0020】
例えば、ロープ張力測定装置14は、スマートフォン等の携帯端末である。取付治具15は、ロープ張力測定装置14を把持した状態で測定対象のロープ6に取り付けられる。
【0021】
この状態において、作業員は、当該ロープ6を揺らす。この際、ロープ張力測定装置14は、当該ロープ6の振動波形を収集する。
【0022】
複数のロープ6の各々に対して振動波形が収集された後、ロープ張力測定装置14は、複数のロープ6の振動波形に基づいて複数のロープ6の張力のばらつきを算出する。ロープ張力測定装置14は、複数のロープ6の張力のばらつきに基づいて当該張力の調整の要否を表示する。
【0023】
作業員は、調整が必要であると表示されたロープ6の張力を調整する。
【0024】
次に、図2を用いて、ロープ張力測定装置14を説明する。
図2は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置のブロック図である。
【0025】
図2に示されるように、ロープ張力測定装置14は、タッチパネル部16と記憶部17と振動波形収集部18と精度算出部19と判定部20と周波数算出部21と抽出部22と調整量算出部23とバッテリ部24と筐体部25とを備える。ロープ張力測定装置14において、少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つのメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
【0026】
タッチパネル部16は、外部からの入力操作を受け付け得るように設けられる。タッチパネル部16は、情報を表示し得るように設けられる。記憶部17は、各種の情報を記憶し得るように設けられる。
【0027】
振動波形収集部18は、ロープ6の振動波形を収集する。例えば、振動波形収集部18は、加速度センサである。この場合、振動波形収集部18は、加速度検出部と加速度収集部との機能を備える。加速度検出部は、加速度を検出する機能を備える。加速度収集部は、加速度検出部により検出された加速度を収集する機能を備える。例えば、振動波形収集部18は、外部から入力された昇降路1の高さあるいはロープ6の長さの情報に基づいてロープ6の振動波形を収集する時間を設定する。例えば、振動波形収集部18は、収集された振動波形をリサンプリング処理する。
【0028】
事前点検時において、精度算出部19は、振動波形収集部18により収集された加速度の情報から加速度の検出精度を算出する。事前点検時において、判定部20は、精度算出部19により算出された検出精度に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。
【0029】
ロープ6の張力測定時において、周波数算出部21は、振動波形収集部18での振動波形の収集時間と収集周期とから算出される測定分解能に基づいて、振動波形収集部18により収集された振動波形の周波数の算出方法を選択する。例えば、周波数算出部21は、振動波形収集部18により収集された振動波形の自己相関関数およびフーリエ変換の算出結果に基づいて振動波形の周波数を算出する。
【0030】
抽出部22は、周波数算出部21の算出結果の情報からロープ6毎の張力のばらつきを算出したうえで張力が規定値から外れたロープ6を抽出する。調整量算出部23は、抽出部22により抽出されたロープ6の調整量を算出する。
【0031】
バッテリ部24は、タッチパネル部16と記憶部17と振動波形収集部18と周波数算出部21と抽出部22と調整量算出部23とに電力を供給する。筐体部25は、ロープ張力測定装置14の外郭をなす。筐体部25は、タッチパネル部16と記憶部17と振動波形収集部18と周波数算出部21と抽出部22と調整量算出部23とバッテリ部24とを収納する。
【0032】
次に、図3図4とを用いて、ロープ張力測定装置14の事前点検の第1例を説明する。
図3は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の斜視図である。図4は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による加速度の検出結果を示す図である。
【0033】
図3に示されるように、ロープ張力測定装置14は、振動波形収集部18におけるロープ6の張力を測定する軸の方向が重力加速度の方向と一致するように静止状態に維持される。この状態において、振動波形収集部18は、一定時間の加速度を収集する。
【0034】
図4に示されるように、精度算出部19は、振動波形収集部18により収集された加速度と重力加速度との差分を算出する。判定部20は、精度算出部19により算出された差分に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。具体的には、判定部20は、精度算出部19により算出された差分が予め設定された閾値よりも小さい場合にロープ6の張力の測定に当該ロープ張力測定装置14を利用できると判定する。判定部20は、精度算出部19により算出された差分が予め設定された閾値以上である場合にロープ6の張力の測定に当該ロープ張力測定装置14を利用できないと判定する。なお、ロープ張力測定装置14の表裏をかえすことで振動波形収集部18により+側及び-側の加速度を収集し、両者を用いて判定することもできる。
【0035】
次に、図5を用いて、ロープ張力測定装置14の事前点検の第2例を説明する。
図5は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による加速度の検出結果を示す図である。
【0036】
第2例においても、第1例と同様に、ロープ張力測定装置14は、振動波形収集部18におけるロープ6の張力を測定する軸の方向が重力加速度の方向と一致するように静止状態に維持される。この状態において、振動波形収集部18は、一定時間の加速度を収集する。
【0037】
図5に示されるように、精度算出部19は、振動波形収集部18により収集された加速度の分散を算出する。判定部20は、精度算出部19により算出された分散に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。具体的には、判定部20は、精度算出部19により算出された分散が予め設定された閾値よりも小さい場合にロープ6の張力の測定に当該ロープ張力測定装置14を利用できると判定する。判定部20は、精度算出部19により算出された分散が予め設定された閾値以上である場合にロープ6の張力の測定に当該ロープ張力測定装置14を利用できないと判定する。なお、ロープ張力測定装置14の表裏をかえすことで振動波形収集部18により+側及び-側の加速度を収集し、両者を用いて判定することもできる。
【0038】
次に、図6を用いて、ロープ張力測定装置14の事前点検の第3例を説明する。
図6は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による加速度の検出結果を示す図である。
【0039】
第3例においても、第1例と同様に、ロープ張力測定装置14は、振動波形収集部18におけるロープ6の張力を測定する軸の方向が重力加速度の方向と一致するように静止状態に維持される。この状態において、振動波形収集部18は、一定時間の加速度を複数回収集する。
【0040】
図6に示されるように、精度算出部19は、各回に対する振動波形収集部18により収集された加速度の平均値と、各回の平均値同士の絶対差の最大値とを算出する。判定部20は、精度算出部19により算出された最大値に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。具体的には、判定部20は、精度算出部19により算出された最大値が予め設定された閾値よりも小さい場合にロープ6の張力の測定に当該ロープ張力測定装置14を利用できると判定する。判定部20は、精度算出部19により算出された最大値が予め設定された閾値以上である場合にロープ6の張力の測定に当該ロープ張力測定装置14を利用できないと判定する。なお、ロープ張力測定装置14の表裏をかえすことで振動波形収集部18により+側及び-側の加速度を収集し、両者を用いて判定することもできる。
【0041】
尚、第1から第3例において、ロープ張力測定装置14の表裏をかえすことで振動波形収集部18により+側及び-側の加速度を収集し、両者を用いて判定することもできる。振動波形収集部18により+側または-側の加速度を収集完了した後にスピーカーSにより音で測定者に知らせる。またはタッチパネル部16に収集完了の旨を表示させ、作業者に次の測定に移行させるよう促す。また、精度、分散、誤差の測定、判定完了後にもスピーカーSにより音で測定者に知らせる。またはタッチパネル部16に判定完了の旨を表示させる。
【0042】
次に、図7を用いて、ロープ張力測定装置14の事前点検の第4例を説明する。
図7は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の斜視図である。
【0043】
図7に示されるように、ロープ張力測定装置14がジャイロ等の角度検出部26を備えている場合、振動波形収集部18は、角度検出部26により検出された角度に基づいて加速度検出部により検出された加速度から重力加速度の成分を算出する。判定部20は、振動波形収集部18により算出された重力加速度の成分に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。この際の判定方法は、第1例から第3例とのいずれかの判定方法と同様の方法でよい。
【0044】
次に、図8を用いて、ロープ張力測定装置14の管理方法を説明する。
図8は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の管理方法を説明するための図である。
【0045】
図8において、記憶装置27は、エレベーターの保守会社等に設けられる。記憶装置27は、複数の機種のロープ張力測定装置14から振動波形収集部18としての加速度センサを特定し得る製品情報とロープ6の張力の測定可否に関するスペック判定結果の情報とを受信し、当該製品情報と当該スペックの判定結果の情報とを対応付けて記憶して測定装置選定テーブルを作成する。
【0046】
次に、図9から図12を用いて、取付治具15の第1例を説明する。
図9図10とは実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第1例の斜視図である。図11は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第1例の側面図である。図12は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第1例の平面図である。
【0047】
図9から図11に示されるように、取付治具15は、第1把持体28と第2把持体29と連結体30と第1落下抑制体31aと第2落下抑制体31bを備える。
【0048】
例えば、第1把持体28は、一対の把持部28aを備える。一対の把持部28aは、上下方向に並ぶ。例えば、一対の把持部28aは、ロープ6の外径に合わせた曲率の把持面を持つクリップである。一対の把持部28aは、ロープ6を把持する。
【0049】
例えば、第2把持体29は、第1把持部29aと第2把持部29bとを備える。第1把持部29aは、第2把持体29の一側に設けられる。第1把持部29aは、水平方向に移動自在に設けられる。第1把持部29aは、ロープ張力測定装置14を側方から把持する。第2把持部29bは、第1把持部29aに対してバネ等の弾性体の応力によってロープ張力測定装置14を把持する力を与えるように水平方向の荷重を発生させる。
【0050】
例えば、連結体30は、矩形状に形成される。連結体30は、第1把持体28と第2把持体29とを連結する。例えば、連結体30の一側は、六角ボルト等により一対の把持部28aと連結される。例えば、連結体30の他側は、第2把持体29の一側と連結する。連結体30は、第2把持体29と直交する。連結体30は、ロープ6の振動数よりも大きい固有振動数を有する板厚を備えている。なお、連結体30は、ロープ6の振動数よりも大きい固有振動数を有していれば、必ずしも矩形状である必要はない。
【0051】
連結体30は、第1取付穴30aと第2取付穴30bとを備える。第1取付穴30aは、連結体30における第2把持体29の側の上部に形成される。第2取付穴30bは、連結体30における第2把持体29の側の下部に形成される。
【0052】
なお、軽量化を目的として、連結体30にパンチ穴等を設けてもよい。また、補強を目的として、連結体30にリブを設けてもよい。
【0053】
例えば、第1落下抑制体31aは、カールコードである。第1落下抑制体31aの一側は、取付治具15に連結される。この第1例においては、第1落下抑制体31aの一側は、第1取付穴30aを介して連結体30に連結される。例えば、第1落下抑制体31aの他側は、ロープ張力測定装置14よりも高い位置で測定を実施するロープ6以外の隣接ロープ6またはエレベーターの構造体に取り付けられる。例えば、第1落下抑制体31の他側は、作業者のベルト等に取り付けられる。例えば、第1落下抑制体31の他側は、かご9の天井に設けられた手摺等に取り付けられる。第1落下抑制体31は、取付治具15が落下することを防止する。
【0054】
例えば、第2落下抑制体31bは、カールコードである。第2落下抑制体31bの一側は、取付治具15に連結される。この第1例においては、第2落下抑制体31bの一側は、第2取付穴30bを介して連結体30に連結される。例えば、第2落下抑制体31bの他側は、ロープ張力測定装置14の下部に取り付けられる。
【0055】
図11に示されるように、取付治具15において、一対の把持部28aにおけるロープ6の把持位置の距離L1と上側の把持部28aにおけるロープ6の把持力Fとの積は、ロープ張力測定装置14の自重Mgによる回転モーメントMgL2よりも大きくなるように設定される。
【0056】
図12の(a)から(c)に示されるように、複数のロープ6は、第1列と第2列とに分かれて並ぶ。第1列のロープ6と第2列のロープ6とは、間隔L3をあけて配置される。
【0057】
連結体30の幅L4は、第1列のロープ6と第2列のロープ6との間隔L3よりも広い。このため、第1把持体28が第1列のロープ6のいずれかを把持した際、第2把持体29は、第2列のロープ6に対して第1列のロープ6とは反対側に配置される。その結果、ロープ張力測定装置14は、第2列のロープ6と干渉しない位置に配置される。
【0058】
例えば、図12の(a)に示されるように、第1列のロープ6が奥側にあり、第2列のロープ6が手前側にあり、昇降路1の壁が右側にある場合、第1把持体28は、第2把持体29が連結体30の左側に配置されるように第1列における最も右側のロープ6を把持する。その結果、ロープ張力測定装置14は、壁と干渉しない位置に配置される。
【0059】
例えば、図12の(b)に示されるように、第1列のロープ6が奥側にあり、第2列のロープ6が手前側にあり、昇降路1の壁が左側にある場合、第1把持体28は、第2把持体29が連結体30の右側に配置されるように第1列における最も左側のロープ6を把持する。その結果、ロープ張力測定装置14は、壁と干渉しない位置に配置される。
【0060】
例えば、図12の(c)に示されるように、第1列のロープ6が左側にあり、第2列のロープ6が右側にあり、昇降路1の壁が第1列のロープ6の左側にある場合、第1把持体28は、第2把持体29が第2列のロープ6の右側に配置されるように第1列における中央のロープ6を把持する。その結果、ロープ張力測定装置14は、壁と干渉しない位置に配置される。
【0061】
次に、図13図14とを用いて、取付治具15の第2例を説明する。
図13は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第2例の平面図である。図14は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第2例の側面図である。
【0062】
図13図14とに示されるように、第1把持体28の把持部28aは、複数のロープ6の外径のそれぞれに合わせた複数の曲率の把持面を持つクリップである。具体的には、第1把持体28は、第1把持面と第2把持面と第3把持面とを備える。第1把持面と第2把持面と第3把持面とは、クリップの支点の側から順々に連続的に形成される。
【0063】
第1把持面の曲率は、Rである。第2把持面の曲率は、Rである。Rは、Rよりも大きくなるように設定される。第3把持面の曲率は、Rである。Rは、Rよりも大きくなるように設定される。なお、第2例においては、曲率の異なる3つの把持面を備えているが、把持面は2つでもよく、4つ以上であってもよい。
【0064】
これらの曲率に関しては、幅をもたせてもよい。例えば、R1は、直径が19mmから24mmのロープ6に適用できるようにしてもよい。例えば、R2は、直径が13mmから18mmのロープ6に適用できるようにしてもよい。例えば、R3は、直径が8mmから12mmのロープ6に適用できるようにしてもよい。
【0065】
次に、図15を用いて、取付治具15の第3例を説明する。
図15は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第3例の斜視図である。
【0066】
図15に示されるように、第1把持体28において、把持部28aの先端部は、ロープ6の外周の凹凸に嵌まるように凹凸状に形成される。
【0067】
次に、図16を用いて、取付治具15の第4例を説明する。
図16は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第4例の平面図である。
【0068】
図16に示されるように、第1把持体28において、把持部28aの内面は、ロープ6の外周の凹凸に嵌まる複数の突起部32を備える。
【0069】
次に、図17を用いて、取付治具15の第5例を説明する。
図17は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第5例の斜視図である。
【0070】
図17に示されるように、第1把持体28において、一対の把持部28aの各々は、一対の把持片33を備える。
【0071】
連結体30は、一対の連結部を備える。一対の連結部の各々は、一対の連結片34を備える。
【0072】
各把持片33と各連結片34とは、線材により一体で形成される。
【0073】
次に、図18図19とを用いて、取付治具15の第6例を説明する。
図18は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第6例の斜視図である。図19は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第6例の要部の平面図である。
【0074】
図18図19とに示されるように、第1把持体28において、一対の把持部28aの各々は、一対の把持片33を備える。
【0075】
連結体30は、一対の連結部を備える。一対の連結部の各々は、一対の連結片34を備える。
【0076】
各把持片33と各連結片34とは、板材により一体で形成される。一対の把持片33の先端部の側は、ロープ6の挿入性を向上させることを目的として広げられる。
【0077】
次に、図20を用いて、取付治具15の第7例を説明する。
図20は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第7例の斜視図である。
【0078】
図20に示されるように、取付治具15は、回転体35と遮光体36と角度調整体37とを備える。
【0079】
例えば、回転体35は、蝶ネジである。例えば、回転体35は、クラッチである。回転体は、連結体30に対して第2把持体29を回転自在に連結する。回転体35は、連結体30に対する第2把持体29の角度を調整し得るように設けられる。その結果、ロープ張力測定装置14の画面の操作性が向上する。
【0080】
例えば、遮光体36は、板状に形成される。遮光体36の下縁部は、第2把持体29の上縁部に隣接する。
【0081】
角度調整体37は、第2把持体29の上縁部に対して遮光体36の下縁部を回転自在に連結する。角度調整体37は、第2把持体29に対する遮光体36の角度を調整し得るように設けられる。角度調整体37は、外部からの光がロープ張力測定装置14の画面に照射されることを抑制し得るように設けられる。その結果、ロープ張力測定装置14の画面の視認性が向上する。
【0082】
なお、回転体35と遮光体36との両方を設けてもよいし、いずれか一方を設けてもよい。
【0083】
次に、図21を用いて、取付治具15の第8例を説明する。
図21は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第8例の斜視図である。
【0084】
図21に示されるように、連結体30は、軽量化を目的として、第1分割部30cと第2分割部30dとに分割される。
【0085】
第1分割部30cは、長手方向を鉛直方向にして配置される。第1分割部30cの上部は、上側の把持部28aに連結される。第1分割部30cの下部は、下側の把持部28aに連結される。
【0086】
第2分割部30dは、六角ボルト等により第1分割部30cの長手方向の中央と連結する。第2分割部30dの先端部は、六角ボルト等により第2把持体29の一側と連結する。
【0087】
次に、図22を用いて、取付治具15の第9例を説明する。
図22は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第9例の斜視図である。
【0088】
図22に示されるように、取付治具15は、回転抑制体38と第3落下抑制体39とを備える。
【0089】
例えば、回転抑制体38は、矩形状に形成される。例えば、回転抑制体38は、ウレタンゴムで形成される。例えば、回転抑制体38は、シリコンゴムで形成される。回転抑制体38は、一対の把持部28aの間かつロープ6と連結体30との間に配置される。この際、回転抑制体38は、ロープ6と連結体30とが並んだ方向に弾性変形しながら配置される。その結果、ロープ6に対するロープ張力測定装置14の回転が抑制される。
【0090】
第3落下抑制体39は、第2把持体29の下方において連結体30と連結する。第3落下抑制体39は、溝を備える。当該溝は、上側に開口する。第3落下抑制体39は、ロープ張力測定装置14の下部を溝に受け入れた状態でロープ張力測定装置14を下方から支持する。その結果、ロープ張力測定装置14の落下が抑制される。
【0091】
なお、回転抑制体38と第3落下抑制体39との両方を設けてもよいし、いずれか一方を設けてもよい。
【0092】
次に、図23を用いて、取付治具15の第10例を説明する。
図23は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第10例の斜視図である。
【0093】
図23に示されるように、連結体30は、第2把持体29の裏面における幅方向の中央と連結する。その際、連結体30は、第2把持体29を介してロープ張力測定装置14の幅方向に対してバランスよくロープ張力測定装置14を支持する。その結果、ロープ6に対して振動が与えられた際に、取付治具15回転することを抑制できる。
【0094】
次に、図24を用いて、取付治具15の第11例を説明する。
図24は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用される取付治具の第11例の平面図である。
【0095】
図24に示されるように、複数のロープ6は、かご9の奥側に配置される。複数のロープ6は、かご9の奥側の側面の法線と平行な線に沿って並ぶ。
【0096】
連結体30は、ロープ張力測定装置14の画面がかご9の側を向くように第2把持体29と連結する。その結果、作業者に対するロープ張力測定装置14の画面の視認性が向上する。
【0097】
次に、図25から図28を用いて、ロープ張力測定装置14による振動波形の周波数の算出方法を説明する。
図25は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるエレベーターシステムのロープの振動波を説明するための図である。図26は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるエレベーターシステムのロープの振動波形のフーリエ変換を説明するための図である。図27は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるエレベーターシステムのロープの振動波形の自己相関関数を説明するための図である。図28は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の周波数の算出方法を説明するための図である。
【0098】
図25に示されるように、ロープ6が長い場合、進行波が発生しやすい。ロープ6が短い場合、定在波が発生しやすい。周波数算出部21は、ロープ6の揺れ方に適した分析手法を採用する。例えば、ロープ張力測定装置14は、フーリエ変換と自己相関関数とのうちからロープ6の揺れ方に適した分析手法を採用する。
【0099】
フーリエ変換においては、明確な正弦波成分がない進行波は分析できないが、定在波は分析できる。この際、図26に示されるように、周波数算出部21は、ロープ6の振動波形を周波数の異なる正弦波の足し合わせとして表現した際に各周波数成分がどの程度含まれているかをフーリエ変換により解析する。周波数算出部21は、フーリエ変換により求められる周波数スペクトルのピークの位置からロープ6の振動波形の周波数を算出する。
【0100】
自己相関関数においては、明確な正弦波成分がない進行波も分析でき、定在波も分析できる。この際、図27に示されるように、ロープ張力測定装置14は、ロープ6の振動波形を時間的にシフトした際に当該振動波形自身にどの程度一致するかを自己相関関数により計算する。具体的には、サンプル点数N点の波形x(i)(ここでi=1、2、・・・N)の自己相関関数は、次の(1)式により表される。
【0101】
【数1】
【0102】
ただし、(1)式において、kは時間方向のシフト量を表す整数である。
【0103】
周波数算出部21は、自己相関関数のピークの位置からロープ6の振動波形の周期を算出する。そして、周波数算出部21は、次の(2)式を用いてロープ6の振動原波形の周波数を算出する。
【0104】
【数2】
【0105】
ただし、(2)式において、Tは振動波形の周期(秒)である。fは、周波数(Hz)である。
【0106】
図28に示されるように、周波数算出部21は、フーリエ変換と自己相関関数とを、それぞれ分解能が高い範囲で使い分ける。
【0107】
ロープ6の振動周波数の測定値fに対する、周波数の測定分解能をΔf/f(%)と表す。自己相関関数を用いて周波数を求めるときの測定分解能は、次の(3)式で表される。フーリエ変換を用いて周波数を求めるときの測定分解能は、次の(4)式で表される。
【0108】
【数3】
【0109】
【数4】
【0110】
ただし、(3)式と(4)式とにおいて、fsは、振動波形収集部18のサンプリング周波数(Hz)である。(4)式において、Nは、フーリエ変換を行う振動波形のサンプル点数である。
【0111】
(3)式と(4)式より、ロープ6の振動周波数fが高いときにはフーリエ変換の方が、振動周波数fが低いときには自己相関関数の方が、振動周波数を求める際の測定分解能が高い、すなわちΔf/fの値が小さい。図28のグラフは、この特性を示したものである。(3)式と(4)式より、フーリエ変換と自己相関関数の分解能特性曲線の交点は、振動波形収集部18での振動波形の収集時間と収集周期、すなわちサンプル点数Nとサンプリング周波数fによって決まる。特性曲線の交点となる周波数を、ここでは切換周波数とよぶ。周波数算出部21は、(3)式と(4)式とからフーリエ変換と自己相関関数とを使い分ける際の切換周波数Aを算出する。
【0112】
なお、周波数算出部21は、フーリエ変換で算出される周波数のスペクトルから前記振動波形収集部18により収集された振動波形の周波数を求める際に、自己相関関数から算出された周波数の近傍に限定して周波数のスペクトルのピークを探索する。
【0113】
また、周波数算出部21は、算出した周波数に基づいて前記振動波形収集部18での振動波形の収集時間の過不足を判定し、振動波形収集部18での振動波形の収集時間が不足していると判定した場合には、算出した周波数の情報を出力しない。
【0114】
次に、図29を用いて、曲線補間方法を説明する。
図29は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置による曲線補間方法を説明するための図である。
【0115】
周波数算出部21は、振動波形収集部18により収集された振動波形の周波数を算出する際に、周波数のピークの近傍において数値補間を行うことによりピークの位置を求める。
【0116】
具体的には、進行波に対して自己相関関数を用いて周波数を算出する際、周波数が高いほど分解能が悪化し、測定誤差が大きくなる。このため、周波数算出部21は、自己相関関数に対する曲線補間により疑似的に分解能を上げることで測定誤差を小さくする。
【0117】
次に、図30を用いて、ロープ張力測定装置14の動作の概要を説明する。
図30は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムに利用されるロープ張力測定装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0118】
ステップS1では、ロープ張力測定装置14は、測定対象の振動波形の前処理を行う。その後、ステップS2の動作を行う。ステップS2では、ロープ張力測定装置14は、自己相関関数の計算を行う。その後、ステップS3の動作を行う。ステップS3では、ロープ張力測定装置14は、自己相関関数から概算された周波数が切換周波数Aよりも低いか否かを判定する。
【0119】
ステップS3で自己相関関数から概算された周波数が切換周波数Aよりも低い場合、ステップS4の動作を行う。ステップS4では、ロープ張力測定装置14は、自己相関関数のピーク位置から周波数を算出する。その後、ステップS5に進む。ステップS5では、ロープ張力測定装置14は、当該周波数を測定値とする。
【0120】
ステップS3で自己相関関数から概算された周波数が切換周波数Aよりも低くない場合、ステップS6の動作を行う。ステップS6では、ロープ張力測定装置14は、フーリエ変換の計算を行う。その後、ステップS7の動作を行う。ステップS7では、ロープ張力測定装置14は、ステップS3で自己相関関数から概算された周波数をもとに、分析する周波数帯を絞り込む。その後、ステップS8の動作を行う。ステップS8では、ロープ張力測定装置14は、周波数スペクトル上にピークがあるか否かを判定する。
【0121】
ステップS8で周波数スペクトル上にピークがない場合、ステップS4の動作を行う。ステップS4では、自己相関関数のピーク位置から周波数を算出する。その後、ステップS5に進む。ステップS5では、ロープ張力測定装置14は、当該周波数を測定値とする。
【0122】
ステップS8で周波数スペクトル上にピークがある場合、ステップS9の動作を行う。ステップS9では、ロープ張力測定装置14は、周波数スペクトルのピーク位置から周波数を算出する。その後、ステップS5に進む。ステップS5では、ロープ張力測定装置14は、当該周波数を測定値とする。
【0123】
次に、図31を用いて、ロープ6の張力の調整方法を説明する。
図31は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムを利用したロープの調整方法を説明するためのフローチャートである。
【0124】
ステップS11では、作業員は、かご9でロープ6の張力を測定する位置まで移動する。その後、作業員は、ステップS12の動作を行う。ステップS12では、作業員は、ロープ張力測定装置14のアプリケーション起動したうえで基本情報を設定する。
【0125】
その後、作業員は、ステップS13の動作を行う。ステップS13では、作業員は、ロープ張力測定装置14を取付治具15によりロープ6に取り付ける。その後、作業員は、ステップS14の動作を行う。ステップS14では、作業員は、ロープ6の張力の測定に必要な設定を行う。その後、作業員は、ステップS15の動作を行う。ステップS15では、作業員は、ロープ6の張力の測定を開始する。その後、作業員は、ステップS16の動作を行う。ステップS16では、作業員は、ロープ6の振動の5周期の時間を確認する。なお、ステップS13からステップS16の動作は、ロープ6の本数分だけ繰り返される。
【0126】
ステップS17では、作業員は、ロープ張力測定装置14の表示において複数のロープ6の張力のばらつきを確認する。その後、作業員は、ステップS18の動作を行う。ステップS18では、作業員は、複数のロープ6の張力のばらつきに基づいて複数のロープ6の張力を調整する。その後、作業員は、複数のロープ6の張力の調整の作業を終了する。
【0127】
以上で説明した実施の形態1によれば、ロープ張力測定装置14は、ロープ6の振動波形の収集時間と収集周期とから算出される測定分解能に基づいて、ロープ6の振動波形の周波数の算出方法を選択する。このため、ロープ6の張力を定量的に測定する際の測定誤差を小さくすることができる。
【0128】
また、ロープ張力測定装置14は、ロープ6の振動波形の自己相関関数およびフーリエ変換の算出結果に基づいてロープ6の振動波形の周波数を算出する。このため、定在波と進行波の双方の周波数を算出することができる。
【0129】
なお、周波数の算出方法として、短時間フーリエ変換、ウェーブレット変換等、他の方法を採用してもよい。
【0130】
また、ロープ張力測定装置14は、外部から入力された昇降路1の高さあるいはロープ6の長さの情報に基づいてロープ6の振動波形を収集する時間を設定する。このため、ロープ6の張力を測定する際の作業を効率よく行うことができる。
【0131】
また、ロープ張力測定装置14は、ロープ6の振動波形の周波数を算出する際に、周波数のピークの近傍において数値補間を行うことによりピークの位置を算出する。このため、周波数を算出する際の分解能を向上させることができる。
【0132】
また、ロープ張力測定装置14は、フーリエ変換で算出される周波数のスペクトルからロープ6の振動波形の周波数を求める際に、自己相関関数から求めた周波数の近傍に限定して周波数のスペクトルのピークを探索する。このため、周波数の測定値として、高次の周波数成分が誤って出力されることを抑制できる。
【0133】
また、ロープ張力測定装置14は、ロープ6の振動波形の収集時間が不足していると判定した場合には、算出した周波数の情報を出力しない。このため、特に周波数が低い場合の周波数の測定精度を担保することができる。
【0134】
また、ロープ張力測定装置14は、ロープ6の振動波形をリサンプリング処理する。このため、ロープ6の振動波形のサンプリング間隔にばらつきがある場合でも、サンプリングを等間隔に補正することができる。その結果、ロープ6の張力を精度よく測定することができる。
【0135】
また、ロープ張力測定装置14は、外部からの入力操作を受け付け、算出した周波数を文字または画像により表示する。このため、ロープ張力測定装置14を直感的に操作することができる。
【0136】
また、ロープ張力測定装置14は、エレベーターの複数のロープ6に対する算出結果の情報を記憶する。このため、複数のロープ6の張力のばらつきをロープ張力測定装置14で確認することができる。
【0137】
また、ロープ張力測定装置14は、張力が規定値から外れたロープ6を抽出する。このため、張力のばらつきが大きいロープ6から調整を開始することができる。
【0138】
また、ロープ張力測定装置14は、張力が規定値から外れたロープ6の調整量を算出する。このため、ロープ6のシャックルナットの締め込み量を容易に把握することができる。その結果、ロープ6の調整をより早く終了させることができる。
【0139】
また、筐体部25は、振動波形収集部18と周波数算出部21とタッチパネル部16と記憶部17と抽出部22と調整量算出部23とを収納する。このため、ロープ張力測定装置14のみでロープ6の張力を測定することができる。
【0140】
また、バッテリ部24は、筐体部25に収納される。バッテリ部24は、前記筐体部25に収納された各部に電力を供給する。このため、ロープ張力測定装置14に電源線を接続する必要がない。その結果、ロープ6の張力を測定する際の作業手順が簡略化されることで、作業者の作業性を向上することができる。
【0141】
また、判定部20は、加速度の検出精度に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。この際、表示部としてのタッチパネル部16に判定結果を示す情報を文字または画像により表示すればよい。この場合、ロープ張力測定装置14のスペックがロープ6の張力の測定に対して足りているか否かを容易に把握することができる。
【0142】
なお、判定部20において、当該ロープ張力測定装置14の製品の情報と当該ロープ張力測定装置14にインストールされたオペレーティングシステムの情報と前記加速度検出部としての加速度センサの情報とに基づいてロープ6の張力を測定する際に利用できるロープ張力測定装置14の型番群を抽出してもよい。この場合、ロープ張力測定装置14の選定に必要な労力を低減できる。
【0143】
また、判定部20は、収集された加速度と重力加速度との差分に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。このため、測定装置のスペックがロープ6の張力の測定に対して足りているか否かをより容易に把握することができる。
【0144】
また、判定部20は、収集された加速度の分散に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。このため、振動波形収集部18の出力のばらつきがロープ6の張力の測定に対して足りているか否かをより容易に把握することができる。
【0145】
また、判定部20は、各回に対する加速度の平均値の絶対差の最大値に基づいてロープ6の張力の測定可否を判定する。このため、振動波形収集部18の繰り返し誤差がロープ6の張力の測定に対して足りているか否かをより容易に把握することができる。
【0146】
また、振動波形収集部18は、角度検出部26により検出された角度に基づいて重力加速度の成分を算出する。このため、ロープ張力測定装置14が任意の向きに設置された場合でも振動波形収集部18の出力の精度を算出することができる。
【0147】
なお、判定部20において、ロープ6の張力の累積測定回数に基づいて当該ロープ張力測定装置14のスペックを判定してもよい。例えば、累計使用回数が0回であり、かつロープ6の張力測定に使用できないと判定された場合、当該ロープ張力測定装置14のスペックがロープ6の張力の測定に対して足りていないと判定すればよい。この場合、ロープ張力測定装置14のスペックがロープ6の張力の測定に対して足りているか否かをより容易に把握することができる。
【0148】
また、記憶装置27は、ロープ張力測定装置14から加速度検出部を特定し得る製品情報とスペックの判定結果の情報とを受信し、当該製品情報と当該スペックの判定結果の情報とを対応付けて記憶する。このため、ロープ6の張力の測定に利用できるスペックを備えたロープ張力測定装置14の機種群を示すテーブルを自動的に入手することができる。
【0149】
なお、判定部20において、各回に対する加速度と重力加速度との差分と各回に対する加速度の分散と各回に対する加速度の平均値の絶対差の最大値との組み合わせに基づいてロープ6の張力の測定可否を判定してもよい。この場合、測定装置のスペックがロープ6の張力の測定に対して足りているか否かをより正確に把握することができる。
【0150】
また、取付治具15において、連結体30は、ロープ張力測定装置14がロープ6から離れた位置に配置されるように第1把持体28と第2把持体29とを連結する。このため、ロープ張力測定装置14が測定対象のロープ6に隣接したロープ6と干渉することを抑制できる。その結果、既存のスマートフォン等の携帯端末をロープ張力測定装置14として利用することができる。
【0151】
また、取付治具15において、第2把持体29は、ロープ張力測定装置14による振動の検出方向がロープ6の振動方向に一致するようにロープ張力測定装置14を把持する。このため、ロープ6の振動を精度よく測定することができる。
【0152】
また、取付治具15において、一対の把持部28aにおけるロープ6の把持位置の距離と上側の第1把持部28aにおけるロープ6の把持力との積がロープ張力測定装置14の自重による回転モーメントよりも大きい。このため、回転モーメントによるロープ張力測定装置14の落下を抑制することができる。
【0153】
また、取付治具15において、連結体30は、第1把持体28が手前側および奥側の一方のロープ6を把持した際にロープ張力測定装置14が手前側および奥側の他方のロープ6に対して手前側および奥側の方のロープ6とは反対側に配置されるように第1把持体28と第2把持体29とを連結する。このため、取付治具15がロープ6と干渉することを抑制できる。
【0154】
また、取付治具15において、第1落下抑制体31の一側は、連結体30に連結される。第1落下抑制体31の他側は、ロープ張力測定装置14よりも高い位置でロープ6に取り付けられる。このため、ロープ張力測定装置14の落下を抑制することができる。
【0155】
また、取付治具15において、第1把持体28は、クリップである。このため、ロープ6に対して取付治具15を片手で容易に着脱することができる。さらに、第1把持体28が損傷した際に第1把持体28を容易に取り換えることができる。第1把持体28は、ロープ6の外径に応じて選定すればよい。具体的には、ロープ6の外径に合わせた曲率を持つクリップを選定すればよい。この場合、第1把持体28は、ロープ6を確実に把持する。その結果、ロープ張力測定装置14がずれたり落下したりすることを抑制できる。
【0156】
また、取付治具15において、第1把持体28は、複数のロープ6の外径のそれぞれに合わせた複数の曲率を持つクリップである。この際、ロープ6の外径に応じて、適切な曲率の把持面でロープ6を把持すればよい。この場合、ロープ6の外径に応じて第1把持体28を取り換えなくても、ロープ張力測定装置14がずれたり落下したりすることを抑制できる。なお、曲率に幅を持たせることで、様々な直径のロープ6に対応することができる。
【0157】
また、取付治具15において、第1把持体28は、ロープ6の外周の凹凸に嵌まる凹凸状の先端部を備える。このため、ロープ6を把持する状態が安定することで、ロープ6に対して取付治具15が回転することを抑制できる。
【0158】
また、取付治具15において、第1把持体28は、ロープ6の外周の凹凸に嵌まる突起状の内面部を備える。このため、ロープ6を把持する状態が安定することで、ロープ6に対して取付治具15が回転することを抑制できる。
【0159】
また、取付治具15において、第1把持体28は、ロープ6の外径に合わせた凹みを持つ線材または板材である。このため、取付治具15を軽くすることができる。さらに、ロープ6に対して取付治具15を容易に着脱することができる。
【0160】
また、取付治具15において、連結体30は、ロープ6の振動数よりも大きい固有振動数を有する。このため、ロープ張力測定装置14が共振することを抑制できる。その結果、ロープ6の張力の測定誤差を小さくすることができる。
【0161】
また、取付治具15において、連結体30の一側は、第2把持体29の一側と連結する。連結体30は、第2把持体29と直交する。このため、ロープ張力測定装置14は、連結体30の一側に配置される。このため、昇降路1の壁に隣接したロープ6に取付治具15を取り付けた場合でも、ロープ張力測定装置14が昇降路1の壁に干渉することを抑制できる。この際、ロープ6と昇降路1の壁との位置関係に応じて取付治具15を上下反転させて使用すれば、ロープ6の左側に昇降路1の壁が隣接している場合とロープ6の右側に昇降路1の壁が隣接している場合とのいずれの場合にも対応することができる。
【0162】
また、取付治具15において、第1把持部29aは、水平方向に移動自在に設けられる。第1把持部29aは、ロープ張力測定装置14を側方から把持する。第2把持部29bは、第1把持部29aに対してロープ張力測定装置14を把持する力を与えるように水平方向の荷重を発生させる。このため、ロープ張力測定装置14の大きさに関わらず、ロープ張力測定装置14を確実に把持することができる。その結果、既存のスマートフォン等の携帯端末をロープ張力測定装置14として利用した場合でも携帯端末の種類に関わらず、携帯端末を確実に把持することができる。
【0163】
また、実施の形態1において、図32のように、ロープ張力測定装置14において、振動波形収集部18は筐体部25内に格納されない構成としてもよい。タッチパネル部16と記憶部17と精度算出部19と判定部20と周波数算出部21と抽出部22と調整量算出部23とバッテリ部24とを収納する筐体部25と振動波形収集部18は、通信ケーブルなどで接続され、振動波形収集部18への電源供給、取得波形の通信等を行うことができる。
【0164】
次に、図33を用いて、制御装置11の例を説明する。
図33は実施の形態1におけるエレベーターのロープ張力測定システムが適用されるエレベーターシステムの制御装置のハードウェア構成図である。
【0165】
制御装置11の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0166】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、制御装置11の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置11の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、算出装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0167】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置11の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置11の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0168】
制御装置11の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、制御部9bの機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、制御部9bの機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0169】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置11の各機能を実現する。
【0170】
図示されないが、監視装置12の各機能も、制御装置11の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。情報センター装置13の各機能も、制御装置11の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。
【0171】
実施の形態2.
図34は実施の形態2におけるエレベーターのロープ張力測定システムのブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0172】
実施の形態2において、ロープ張力測定装置14は、通信部40を備える。通信部40は、外部の機器と通信し得るように設けられる。また、図35のようにロープ張力測定装置14において、振動波形収集部18は筐体部25内に格納されない構成としてもよい。具体的には、ロープ6に対して取付治具15を介して振動波形収集部18が取り付く構造とし、振動波形収集部18とタッチパネル部16、精度算出部19、判定部20、周波数算出部21、抽出部22、調整量算出部23、バッテリ部24、通信部40を含む筐体部25は通信ケーブルなどで接続され、振動波形収集部18への電源供給、取得波形の通信等を行うことができる。
【0173】
サーバー41は、エレベーターの保守会社等に設けられる。サーバー41は、記憶部17を収納する。記憶部17は、実施の形態1の記憶部17と同様の機能を備える。
【0174】
ロープ張力測定装置14は、通信部40を介してサーバー41と通信を行う。
【0175】
以上で説明した実施の形態2によれば、サーバー41は、記憶部17を収納する。記憶部17は、ロープ張力測定装置14がロープ6の張力を測定するたびに張力の測定結果を記憶する。この際、張力測定結果の情報に測定時の時刻情報を対応付けて記憶すれば、過去の張力のばらつきを確認することができる。
【0176】
実施の形態3.
図36は実施の形態3におけるエレベーターのロープ張力測定システムのブロック図である。なお、実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0177】
実施の形態3において、サーバー41は、周波数算出部21と抽出部22と調整量算出部23とを収納する。周波数算出部21と抽出部22と調整量算出部23とは、実施の形態2の周波数算出部21と抽出部22と調整量算出部23と同様の機能を備える。また、図37のようにロープ張力測定装置14において、振動波形収集部18は筐体部25内に格納されない構成としてもよい。具体的には、ロープ6に対して取付治具15を介して振動波形収集部18が取り付く構造とし、振動波形収集部18とタッチパネル部16、バッテリ部24、通信部40を含む筐体部25は通信ケーブルなどで接続され、振動波形収集部18への電源供給、取得波形の通信等を行うことができる。
【0178】
ロープ張力測定装置14は、通信部40を介してサーバー41と通信を行う。
【0179】
以上で説明した実施の形態3によれば、サーバー41は、周波数算出部21と記憶部17と抽出部22と調整量算出部23とを収納する。このため、物件毎の測定結果や周波数を解析するためのアルゴリズムが流出することを抑制できる。また、アルゴリズムの閾値の変更や改修、判定基準の変更が生じた場合に、端末側でのアプリ改修が不要となり、改修が容易となる。
【0180】
実施の形態4.
図38は実施の形態4におけるエレベーターのロープ張力測定システムのブロック図である。なお、実施の形態3の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0181】
実施の形態4において、通信装置42は、タッチパネル部16と通信部40とを収納する。タッチパネル部16と通信部40とは、実施の形態3のタッチパネル部16と通信部40と同様の機能を備える。
【0182】
ロープ張力測定装置14は、通信部40を介して通信装置42と通信を行う。通信装置42は、通信回線を介してサーバー41と通信を行う。
【0183】
以上で説明した実施の形態4によれば、筐体部25は、振動波形収集部18と通信部40とを収納する。通信装置42は、タッチパネル部16と通信部40とを収納する。このため、振動波形収集部18と取付治具15とを一体化して販売することでロープ張力測定装置14を安価に製造することができる。また、図39のように、振動波形収集部18は筐体部25内に格納されない構成としてもよい。具体的には、ロープ6に対して取付治具15を介して振動波形収集部18が取り付く構造とし、振動波形収集部18とバッテリ部24、通信部40を含む筐体部25は通信ケーブルなどで接続され、振動波形収集部18への電源供給、取得波形の通信等を行うことができる。
【0184】
なお、実施の形態1から実施の形態4において、振動波形収集部18として、撮影部と画像処理部とを備えてもよい。この際、カメラ等の撮影部においてロープ6が振動している状態を撮影し、画像処理部において撮影部により撮影された画像を処理すればよい。この場合、ロープ6に対して、非接触で振動波形を収集することができる。
【0185】
また、実施の形態1から実施の形態4において、振動波形収集部18として、音、変位計、速度計、磁気センサ等を用いてもよい。この場合、離れた位置からロープ6をカメラで撮影する場合に比べ、測定対象のロープ6を容易に認識することができる。
【0186】
また、実施の形態1から実施の形態4において、巻上機3と制御装置11と監視装置12との配置は限定されない。例えば、昇降路1の上部に巻上機3と制御装置11と監視装置12とを配置してもよい。例えば、昇降路1の直上に設けられた機械室に巻上機3と制御装置11と監視装置12とを配置してもよい。
【0187】
また、実施の形態1から実施の形態4において、ロープ6のローピング方式は、限定されない。例えば、2:1ローピング方式、1:1ローピング方式、その他のローピング方式のロープ6に対し、取付治具15を利用してもよい。
【0188】
なお、実施の形態1から実施の形態4におけるロープ張力測定システムをエレベーター以外のビル設備の振動を測定する際に利用してよい。例えば、実施の形態1から実施の形態4におけるロープ張力測定システムのロープ張力測定装置14をビル設備の振動測定装置としてエスカレーターの振動を測定する際に利用してよい。例えば、実施の形態1から実施の形態4におけるロープ張力測定システムのロープ張力測定装置14をビル設備の振動測定装置として動く歩道の振動を測定する際に利用してよい。例えば、実施の形態1から実施の形態4におけるロープ張力測定システムのロープ張力測定装置14をビル設備の振動測定装置として空調装置の振動を測定する際に利用してよい。
【産業上の利用可能性】
【0189】
以上のように、本開示のエレベーターのロープ張力測定装置の取付治具は、エレベーターシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0190】
1 昇降路、 2 乗場、 3 巻上機、 4 かご側返し車、 5 おもり側返し車、 6 ロープ、 7 かご側吊り車、 8 おもり側吊り車、 9 かご、 10 釣合おもり、 11 制御装置、 12 監視装置、 13 情報センター装置、 14 ロープ張力測定装置、 15 取付治具、 16 タッチパネル部、 17 記憶部、 18 振動波形収集部、 19 精度算出部、 20 判定部、21 周波数算出部、 22 抽出部、 23 調整量算出部、 24 バッテリ部、 25 筐体部、 26 角度検出部、 27 記憶装置、 28 第1把持体、 28a 把持部、 29 第2把持体、 29a 第1把持部、 29b 第2把持部、 30 連結体、 30a 第1取付穴、 30b 第2取付穴、 30c 第1分割部、 30d 第2分割部、 31a 第1落下抑制体、 31b 第2落下抑制体、 32 突起部、 33 把持片、 34 連結片、 35 回転体、 36 遮光体、 37 角度調整体、 38 回転抑制体、 39 第3落下抑制体、 40 通信部、 41 サーバー、 42 通信装置、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図18
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