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特許7226621導電性組成物、導電性シート、金属補強板、金属補強板つき配線板、および電子機器
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  • 特許-導電性組成物、導電性シート、金属補強板、金属補強板つき配線板、および電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】導電性組成物、導電性シート、金属補強板、金属補強板つき配線板、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20230214BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20230214BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20230214BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230214BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20230214BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01B1/22 A
C09J201/02
C09J9/02
C09J7/35
H01B5/14 Z
H05K1/02 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022053710
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永井 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】西之原 聡
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-019452(JP,A)
【文献】特表2008-521963(JP,A)
【文献】特開2020-197665(JP,A)
【文献】特開2015-185717(JP,A)
【文献】特開2001-131527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0295943(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0036165(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー(A)と、金属粒子(B)と、樹脂粒子(C)とを含み、
樹脂粒子(C)の復元率が5%以上、95%以下であり、
前記金属粒子(B)を40~90質量%含む、
シート状導電性組成物。
【請求項2】
バインダー(A)が、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1記載のシート状導電性組成物。
【請求項3】
バインダー(A)が、エポキシ基、オキセタン基、エピスルフィド基、およびアジリジン基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1または2記載のシート状導電性組成物。
【請求項4】
前記樹脂粒子(C)を0.1~35質量%含む、請求項1~3いずれか1項記載のシート状導電性組成物。
【請求項5】
前記樹脂粒子(C)の平均粒子径D50が1~15μmである、請求項1~4いずれか1項記載のシート状導電性組成物。
【請求項6】
厚みが5~200μmである、請求項1~5いずれか1項に記載のシート状導電性組成物。
【請求項7】
前記樹脂粒子(C)の復元率が30%以上、95%以下である、請求項1~6いずれか1項に記載のシート状導電性組成物。
【請求項8】
前記樹脂粒子(C)の平均粒子径D 50 が1μm以上、4μm未満である、請求項1~7いずれか1項記載のシート状導電性組成物。
【請求項9】
シート状導電性組成物の厚みを前記金属粒子(B)の平均粒子径D 50 で除した値Xが1~35である、請求項1~8いずれか1項記載のシート状導電性組成物。
【請求項10】
シート状導電性組成物の厚みを前記樹脂粒子(C)の平均粒子径D 50 で除した値Yが70以下である、請求項1~9いずれか1項記載のシート状導電性組成物。
【請求項11】
前記バインダー(A)は、熱硬化性樹脂(a-2)100質量部に対し、1~70質量部の硬化剤(D)を含む、請求項1~10いずれか1項記載のシート状導電性組成物。
【請求項12】
請求項1~11いずれか1項に記載のシート状導電性組成物と、剥離性フィルムとを含む、導電性シート。
【請求項13】
請求項1~11いずれか1項に記載のシート状導電性組成物と、金属板とを含む、金属補強板。
【請求項14】
請求項13に記載の金属補強板を具備する、金属補強板付配線板。
【請求項15】
請求項14に記載の金属補強板付配線板を具備する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、導電性シート、金属補強板、金属補強板つき配線板、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部に搭載される配線板は、柔軟性を有するが、コネクタ部などは部品間の接続を行う観点から、補強板を配置して変形を抑えることが知られている。従来、補強板としてはエポキシガラス等が用いられてきたが、電磁波ノイズの抑制機能を付与する点から金属板が用いられるようになってきている。配線板と金属板の接続には、樹脂を主成分とする導電性組成物が接合剤として使用されている。
【0003】
当該接合剤は、金属板と配線板との間を導通する目的や、弾性率制御等の目的から、フィラーを添加することがある。
例えば特許文献1では、導体回路と補強版とを接合剤層を介して接続することが開示されており、前記接合剤層として、導電粒子と接着剤を含む導電性接着材を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2021/167047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合剤は、金属板と配線板との間を導通する目的から、接合剤が高い導電性を有することが求められている。近年は車載部品や携帯電話部品へ適用する観点から、過酷な環境でも高い導電性を発現し続けることが特に求められる。特許文献1では、細孔を有する無機粒子を添加することにより、温度変化や振動等に起因する導電性フィラーの定位置ずれを抑制でき、高い導電性(接続安定性)を発現する導電性組成物が開示されている。
【0006】
金属板と接合剤(導電性組成物)を接合させた金属補強板は、様々な形状の配線板への実装されるため、各配線板に適合した形状に加工される。加工は主に元となる金属補強板の原版を打ち抜き刃にて打ち抜く方法(打ち抜き加工)が適用されるが、例えば導電性組成物が硬質な無機粒子を含有する場合、当該粒子が綺麗に切断されずにクラック等を生じ、そのクラックを起点として導電性組成物にクラック等の欠陥が生じてしまう問題があった。
【0007】
打ち抜き加工後の金属補強板は、加熱プレス工程にて配線板に接合されるが、加熱プレス時の圧力によって導電性組成物の樹脂が変形、流動し、金属板からはみ出し、配線板の意図せぬ箇所と接触して回路が短絡してしまう問題も生じていた。(レジンフロー)
【0008】
また、加熱プレス時の圧力で導電性組成物が押し潰されることで、当該組成物の厚みが加熱プレス前よりも大幅に減少し、完成した金属補強板つき配線板の総厚みが設計値から大きく乖離してしまう問題があり、加熱プレス前後で厚みの変化が少ない導電性組成物が求められていた。(膜厚担保性)
【0009】
本発明は、レジンフロー抑制に優れ、高い接着性及び導電性を有し、優れた打ち抜き加工性と膜厚担保性を両立できる導電性組成物、導電性シート、金属補強板、金属補強板つき配線板、および電子機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る導電性組成物は、バインダー(A)、金属粒子(B)、樹脂粒子(C)を含み、樹脂粒子(C)の復元率が5%以上、95%以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、レジンフロー抑制に優れ、高い接着性及び導電性を有し、優れた打ち抜き加工性と膜厚担保性を両立できる導電性組成物、及び導電性シートが提供される。
前述の導電性組成物、及び導電性シートを用いてなる金属補強板は打抜き加工時に欠陥を生じることなく加工できるため生産効率を向上させることができる。また、本発明の金属補強板を具備する金属補強板つき配線板の製造においては、加熱プレス時の厚み変化を生じることなく効率的な生産を実現できる。更に、レジンフローが抑制され部材のはみ出しに起因するショートがなく、高い接着性と導電性によって誤作動の生じない高品質な電子機器を歩留まりよく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の金属補強板つき配線板の断面を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る導電性組成物、導電性シート、金属補強板、金属補強板つき配線板、および電子機器について順に説明する。なお、数値範囲を示す「~」は特に断りのない限りその下限値及び上限値を含むものとする。
また、説明を明確にするため、図面は、適宜、簡略化されている。また、説明のため図面中の各構成は縮尺が大きく異なることがある。
【0014】
[導電性組成物]
本発明の導電性組成物は、バインダー(A)、金属粒子(B)、樹脂粒子(C)を含む。
【0015】
[バインダー(A)]
バインダー(A)は、導電性組成物の基体となり金属粒子(B)や樹脂粒子(C)を分散担持する機能を有する。バインダー(A)は前述した機能を有するものであれば、特に組成等は制限されないが、樹脂(a-1)を含むことが好ましい。本発明における樹脂(a-1)は、通常は固体、半固体、又は凝固体であり、軟化又は溶融範囲を有する、重量平均分子量(Mw)が5,000以上の有機材料、と定義される。
【0016】
[樹脂(a-1)]
樹脂(a-1)は、前述した重量平均分子量(Mw)以外には、特に組成、分子構造等は制限されないが、これらの中でも、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上の化学結合を有する樹脂が好ましい。イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合は、結合中に含まれる窒素原子の非共有電子対が、被着体と相互作用することによって強固な接着力を実現することができる。前述の化学結合群を有する樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂などが例として挙げられる。
【0017】
また、樹脂(a-1)がイミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することがより好ましい。バインダー(A)がイミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することで、被着体への相互作用が多重化し、より強固な密着力を発現することが可能となる。イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂とは、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンウレア樹脂などである。
【0018】
樹脂(a-1)は前述の通り、組成、分子構造の観点から適宜選択することが可能であるが、樹脂の性質によって好適なものを選択することも可能である。導電性組成物に対し熱刺激を与えて接着性を発現させる観点から、樹脂(a-1)は、熱硬化性樹脂(a-2)や熱可塑性樹脂(a-3)、であることが好ましい。
【0019】
[熱硬化性樹脂(a-2)]
熱硬化性樹脂(a-2)は、樹脂(a-1)のうち、熱硬化性を有するものである。熱硬化性とは「加熱又は放射線、触媒などのようなその他の手段によって硬化される際に、実質的に不融性かつ不溶性製品に変化し得ること」と定義される。
【0020】
前述した熱硬化性は、熱硬化性樹脂(a-2)が酸性基等の反応性官能基を有する場合には、反応性官能基同士が反応することで発現してもよく、また、熱硬化性樹脂(a-2)と後述する硬化剤(D)のそれぞれに組み込まれた反応性官能基が反応することによって発現してもよい。
【0021】
前記熱硬化性樹脂(a-1)は、酸価が5~40mgKOH/gであることが好ましい。酸価が前述の範囲内であることで、架橋構造の密度が好適な範囲となり、柔軟性と強靭性を両立することが可能となる。酸価は10~20mgKOH/gであることがより好ましい。
【0022】
[熱可塑性樹脂(a-3)]
熱可塑性樹脂(a-3)は、樹脂(a-1)のうち、熱可塑性を有するものである。熱可塑性とは「プラスチックに特有の温度範囲を通じて加熱による軟化及び冷却による硬化を繰り返すことができ、かつ軟化状態で流動によって形を合わせて成形、押出し又は成形によって繰り返し物品の状態にし得ること」と定義される。
【0023】
バインダー(A)は、エポキシ基、オキセタン基、エピスルフィド基、およびアジリジン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。前述の官能基群は樹脂(a-1)が酸性基等の反応性官能基を有する場合には、その反応性官能基、あるいは当該官能基同士で硬化反応を起こし、高い接着性を発現できる。バインダー(A)に前述の官能基群を含有させる方法としては、例えば、前述の官能基群を有する樹脂(a-1)をバインダー(A)に添加する、あるいは後述する硬化剤(D)のうち、前述の官能基群を有するものをバインダー(A)に添加する、といった方法をとることができる。
【0024】
[硬化剤(D)]
本発明における硬化剤(D)は、硬化反応を促進し又は調節する物質であり、分子量、あるいは重量平均分子量(Mw)が5,000未満の物質と定義される。硬化反応とは「加熱又は放射線、触媒などのようなその他の手段によって、プリポリマー又は重合組成物を重合及び又は架橋させ、不可逆的に弾性率を上昇させること」と定義される。バインダー(A)中において、熱等の刺激によって重合及び又は架橋を形成し、導電性組成物に強固な接着性を発現させる観点から、本発明のバインダー(A)は硬化剤(D)を含むことが好ましい。
【0025】
前述の硬化反応は、硬化剤(D)同士が自己反応するものであってもよく、例えば樹脂(a-1)などのバインダー(A)中の他の成分と反応してもよい。樹脂(a-1)と硬化剤(D)が硬化反応する場合、反応を効率よく行う観点から、樹脂(a-1)は熱硬化性樹脂(a-2)であることが好ましい。
【0026】
保管時には硬化反応が進行せず、加熱時のみに硬化反応を生じさせる観点から、前記熱硬化性樹脂(a-2)と、硬化剤(D)の組み合わせとしては、50℃では架橋反応をせず、150℃で硬化反応が促進される組み合わせを選択することが好ましい。
又、硬化反応の開始温度が異なる2種以上の硬化剤を適宜組み合わせることで、各温度帯における導電性組成物の架橋密度をコントロールしてもよい。
硬化剤(D)は、エポキシ硬化剤、オキセタン硬化剤、エピスルフィド硬化剤、アジリジン硬化剤、アミン硬化剤、イソシアネート硬化剤、およびイミダゾール硬化剤が挙げられる。なかでも、エポキシ硬化剤、オキセタン硬化剤、エピスルフィド硬化剤、およびアジリジン硬化剤が、熱硬化性樹脂(a-2)と効率的に硬化反応が進行し、高い接着性を発現できるため、好ましい。
【0027】
エポキシ硬化剤としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等が好ましい。
【0028】
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、a-1-ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0029】
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0030】
前記グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0031】
前記環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0032】
オキセタン硬化剤は、例えば、1,4-ビス{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,3-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールとテレフタル酸とのエステル化物、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールとフェノールノボラック樹脂とのエーテル化物、(2-エチル-2-オキセタニル)エタノールと多価カルボン酸化合物とのエステル化物等が挙げられる。
【0033】
エピスルフィド硬化剤は、例えば、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)スルフィド、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)ジスルフィド、1,4-ジチアン-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)-2-(2,3-エピチオプロピルジチオエチルチオ)-4-チアヘキサン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオ)プロパン等が挙げられる。
【0034】
アジリジン硬化剤は、例えばトリメチロールプロパン-トリ-a-2-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-a-2-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0035】
アミン硬化剤は、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビス(2-クロロアニリン)、メチレンビス(2-メチル-6-メチルアニリン)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-ブチルベンジルフタル酸等が挙げられる。
【0036】
イソシアネート硬化剤は、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0037】
イミダゾール硬化剤は、例えば2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトなどが挙げられる。
【0038】
硬化剤(D)は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記硬化剤(D)は、分子量又は重量平均分子量が100以上のものを用いることが、導電性組成物の貯蔵弾性率やガラス転移温度を調整する点から好ましい。
【0039】
硬化剤(D)は、熱硬化性樹脂(a-2)100質量部に対し、1~70質量部を配合することが好ましく、3~50質量部がより好ましい。硬化剤(D)の添加量を1質量部以上とすることで、導電性組成物の架橋構造の密度を最適なものにし、接着性を向上できるとともに、レジンフローの抑制や膜厚担保性を向上することが可能となる。硬化剤(D)の添加量を70質量部以下とすることで、導電性組成物が過度に硬くなるのを防ぎ、接着性と打ち抜き加工性を向上することができる。
【0040】
[金属粒子(B)]
金属粒子(B)は、金、白金、銀、銅およびニッケル等の導電性金属、およびその合金、が好ましい。また単一組成の微粒子ではなく核体となる金属に対し、前記核体の表面を被覆する被覆層を核体よりも導電性が高い素材で形成した複合微粒子がコストダウンの観点から好ましい。
核体は、ニッケル、シリカ、銅およびこれらの合金から選択することが好ましい。被覆層は、例えば、金、白金、銀、錫、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。なかでも、導電性と材料コストの観点からは銀を用いることが好ましい。
【0041】
金属粒子(B)は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
複合微粒子は、核体100質量部に対して、1~40質量部の割合で被覆層を有することが好ましく、5~30質量部がより好ましい。1~40質量部で被覆すると、導電性を維持しながら、よりコストダウンができる。なお複合微粒子は、被覆層が核体を完全に覆うことが好ましい。しかし、実際には、核体の一部が露出する場合がある。このような場合でも核体表面面積の70%以上を導電性物質が覆っていれば、導電性を維持しやすい。
【0043】
金属粒子(B)の形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状、不定形塊状が挙げられる。なお、導電性を向上させる観点からは、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状がより好ましい。
【0044】
金属粒子(B)の平均粒子径は、平均粒子径D50が、1~50μmであることが好ましく、3~30μmがより好ましく、5~20μmがさらに好ましい。平均粒子径D50がこの範囲にあることで、好適な導通パスが形成でき、導電性を向上することができる。なお、平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置によって求めることができる。
【0045】
金属粒子(B)の平均粒子径は、平均粒子径D90が、1~120μmであることが好ましく、5~70μmがより好ましい。平均粒子径D90がこの範囲にあることでブロッキングが起こることを抑制することができる。例えば、剥離性フィルム上に導電性組成物を有する導電性シートは、ロール状に巻き取られた状態で運搬等される。ブロッキングとは、このロール状の導電性シートから、導電性シートを巻き出す際に、導電性組成物が剥離性フィルムの裏面に付着する現象のことである。
【0046】
導電性組成物が層状を成す場合、導電性組成物の厚みを金属粒子(B)の平均粒子径D50で除した値Xは、1~35であることが好ましい。Xが35以下であることで、導電性組成物内で金属粒子(B)の導電パスが効果的に形成され、導電性が向上する。導電性向上の観点では、Xは18以下であることがより好ましい。また、Xが1以上であることで、被着体と金属粒子(B)との接触点が過度に増えることなく、被着体とバインダー(A)との接触面積が増大するため、接着性が向上する。Xは5以上であることがより好ましい。
【0047】
金属粒子(B)は、導電性組成物の全固形分中、40~90質量%含むことが好ましい。上記含有量とすることで導電性と接着性、打ち抜き加工性を両立することができる。金属粒子(B)の含有量は、45~80質量%がより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。
【0048】
[樹脂粒子(C)]
本発明における樹脂粒子(C)は、有機樹脂が粒子状を成した物質と定義される。樹脂粒子(C)はバインダー(A)に分散した状態で担持されるものでバインダー(A)とは相溶しない。樹脂粒子(C)は、復元率が5%以上、95%以下である。復元率がこの範囲内であることで、加熱プレス後の除荷後に樹脂粒子(C)が形状復元する作用によって導電性組成物全体が形状復元し、厚み減少を抑制することができる。さらに、樹脂粒子(C)を添加することにより、導電性組成物が加熱プレスされた際のバインダー(A)の過度な流動を抑制し、レジンフローを抑制することは可能となる。
【0049】
前述のレジンフロー抑制効果は、樹脂粒子(C)の復元率が5%未満でも発現し得る効果であるが、復元率が5%未満の粒子では、加熱プレス時に樹脂粒子(C)が圧縮されて生じる空間にバインダー(A)が充填されてしまい、導電性組成物の厚みが減少してしまう。樹脂粒子(C)の復元率が5%以上、95%以下であれば、前述の推定作用によって、導電性組成物の厚み減少の抑制(膜厚担保性)の効果を奏することができる。樹脂粒子(C)の復元率は、30%以上、95%以下であることが好ましく、40%以上、95%以下であることがより好ましい。復元率が前述の範囲内であることで、膜厚担保性が一層向上する。
【0050】
樹脂粒子(C)の復元率は、実施例の項目にて後述する微小圧縮試験機を用いた負荷-除荷試験によって求めることができる。
【0051】
樹脂粒子(C)の復元率は、有機樹脂の種類、用いる原料(モノマー)の種類、粒子内での架橋構造形成の有無、無機微粒子の添加等を適宜選択することにより制御することができる。
【0052】
樹脂粒子(C)を製造する方法は、例えば、(1)原料となるモノマーから有機樹脂を合成する際に粒子を形成する、(2)塊状の有機樹脂を粉砕する、等の方法が適用できる。なかでも、(1)原料となるモノマーから有機樹脂を合成する際に粒子を形成する方法は、樹脂粒子(C)の粒度分布を精密に制御できる観点から好ましい。
【0053】
樹脂粒子(C)を構成する有機樹脂は、所望の復元率を発現可能であれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド樹脂、スチレン樹脂は製造の容易さから好ましい。
【0054】
樹脂粒子(C)の平均粒子径D50は、1μm以上15μm以下であることが好ましい。樹脂粒子(C)の平均粒子径D50がこの範囲にあることで、加熱プレス後の形状復元効果を効果的に導電性組成物に反映することができ、膜厚担保性が向上するため、好ましい。なお、平均粒子径D50は、金属粒子(B)と同様にレーザー回折・散乱法粒度分布測定装置によって求めることができる。樹脂粒子(C)の平均粒子径D50は、1μm以上、4μm未満であることがより好ましく、2μm以上、3μm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
導電性組成物が層状を成す場合、導電性組成物の厚みを樹脂粒子(C)の平均粒子径D50で除した値Yは、70以下であることが好ましい。Yが70以下であることで、導電性組成物内の厚み方向における樹脂粒子(C)の存在比率が増大し、樹脂粒子(C)の復元効果がより効率的に発現するため、膜厚担保性が向上する。膜厚担保性向上の観点では、Yは60以下であることがより好ましく、25以下であることがさらに好ましい。
【0056】
樹脂粒子(C)は、導電性組成物の全固形分中に対して、0.1~35質量%含むことが好ましい。樹脂粒子(C)の含有量を0.1質量%以上とすることで、レジンフローと打ち抜き加工性、および膜厚担保性が良好なものとなり、35%質量%以下とすることで、接着性が向上する。樹脂粒子(C)の含有割合は、1~30質量%がより好ましく、2~15質量%がさらに好ましい。
【0057】
樹脂粒子(C)は、硬さの調整や着色を目的として酸化チタン、酸化鉄などの無機微粒子、顔料を内包させたり、樹脂粒子(C)同士の凝集、結着を抑制する目的として表面にシリカなどの無機微粒子、顔料を付着させたりしてもよい。
【0058】
本実施の形態における導電性組成物は、他の任意成分として耐熱安定剤、無機フィラー、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤等を配合してもよい。
【0059】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、タルク、モンモロリナイト、カオリン、ベントナイト等が挙げられる。当該導電性組成物が無機フィラーを含有することで、硬化前の貯蔵弾性率を制御し最適なフロー量にコントロールすることができる。
【0060】
[導電性シート]
本実施の形態にかかる導電性シートは、剥離性フィルム上に導電性組成物を有する導電性シートである。なお、導電性シートに具備される導電性組成物は、室温で非流動性の固形物であり、かつ一定の厚みの層状を成している。
【0061】
[剥離性フィルム]
剥離性フィルムは、片面あるいは両面に離型処理をしたフィルムであれば制限なく使用することができる。
剥離性フィルムの一例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリブテン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のプラスチックシート等、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、コート紙等の紙類、各種の不織布、合成紙、金属箔や、これらを組み合わせた複合フィルムなどが挙げられる。
【0062】
剥離性フィルムの表面は必要に応じてマット処理してもよい。マット処理の方法はサンドマット、エッチングマット、コーティングマット、ケミカルマット、練り込みマットなどが挙げられる。
【0063】
剥離性フィルムは、基材に離型剤を塗布して得る事ができる。離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素系樹脂、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸石鹸、ワックス、動植物油脂、マイカ、タルク、シリコーン系界面活性剤、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素系界面活性剤、フッ素樹脂、フッ素含有シリコーン樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などが用いられる。離型剤の塗布方法としては、従来公知の方式、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等により行うことができる。
【0064】
導電性シートにおける導電性組成物の厚みは、薄膜性と導電性を両立する観点から、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、30~70μmであることがさらに好ましい。
【0065】
[導電性シートの製造方法]
本発明の導電性シートは、例えば、導電性組成物を剥離性フィルム上に塗工し、乾燥し、更に必要に応じてBステージ硬化することで得ることができる。上記乾燥後の導電性組成物を導電性樹脂層ともいう。塗工方法は、公知の方法の中から、接合剤の膜厚等を考慮して適宜選択すればよい。塗工方法の具体例としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0066】
Bステージ硬化とは、導電性組成物を所定の温度、時間で加熱することにより、硬化反応を部分的に生じさせる方法である。Bステージ硬化を行うことにより、導電性組成物の接着力を維持しつつ、強度を高めることができる。
【0067】
[金属補強板]
本発明の金属補強板は、金属板に導電性組成物が貼り合わされている。前述の金属板は、例えば金、銀、銅、鉄およびステンレス等の導電性金属が挙げられる。これらの中で金属板としての強度、コストおよび化学的安定性の面でステンレスが好ましい。金属板の厚みは、一般的に0.04~1mm程度である。金属板は、ニッケル層が金属板の全表面に形成されていることが好ましい。ニッケル層は、電解ニッケルめっき法で形成することが好ましい。ニッケル層の厚みは、0.5~5μm程度であり、1~4μmがより好ましい。なお、金属補強板に具備される導電性組成物は、室温で非流動性の固形物であり、かつ一定の厚みの層状を成している。
【0068】
[金属補強板つき配線板]
本実施の形態にかかる金属補強板つき配線板100(図1参照)は、絶縁性フィルム21上にグランド回路22が配置されており、前述のグランド回路22をカバーレイ23が被覆し、当該グランド回路22の一部が開口部30を介して露出している配線板20と、当該配線板20上に金属補強板が配置される。金属補強板の導電性組成物1は層状を成し配線板20と金属板2を接合する。本実施の形態にかかるプリント配線板は、導電性組成物1の一部が開口部30に充填されることで、グランド回路22と金属板2とが導電性組成物1を介して電気的に接続されている。配線板20には更に信号配線が設けられていてもよい。
【0069】
配線板20の開口部30の面積は、0.16mm以上0.81mm以下としてもよい。開口部30の面積を0.16mm以上とすることで、開口部30への導電性組成物の充填性を良好にすることができる。また、開口部30の面積を0.81mm以下とすることで、配線板20に占める開口部30の面積を小さくすることができる。開口部30の面積は、好ましくは0.25mm以上0.64mm以下、更に好ましくは0.36mm以上0.49mm以下としてもよい。開口部30の面積がこの範囲である場合、開口部30への導電性組成物の充填性を良好にすることができ、導電性組成物とグランド回路22との接触抵抗を低くすることができる。
【0070】
平面視した際の開口部30の形状は、矩形状であってもよく、円形状であってもよい。開口部30の形状が矩形状である場合は、矩形状の開口部の四隅に導電性組成物を充填することが特に困難になり、四隅に隙間が形成されやすい。しかしながら、レジンフローが好適な範囲に制御された本実施の形態にかかる導電性組成物を用いることで、矩形状の開口部であっても導電性組成物を開口部内に良好に充填することができる。
【0071】
[電子機器]
このような金属補強板つき配線板は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートPC、デジタルカメラ、液晶ディスプレイ等の電子機器に搭載することができる。また、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機器にも好適に搭載できる。
【実施例
【0072】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「重量%」に基づく値である。また、樹脂(a-1)の酸価と重量平均分子量(Mw)、および金属粒子(B)、樹脂粒子(C)、および比較例用シリカ粒子(Z)のD50平均粒子径の測定は次の方法で行なった。
【0073】
[樹脂(a-1)の酸価]
JIS K 0070の中和滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算することで求めた。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、テトラヒドロフラン/エタノール(容量比:テトラヒドロフラン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、指示薬が淡紅色を30秒間保持した時を終点とした。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0074】
[樹脂(a-1)の重量平均分子量(Mw)]
Mwの測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)「HPC-8020」(東ソー社製)により行った。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフである。本測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6mL/min、カラム温度40℃の条件で行った。Mwの決定はポリスチレン換算で行った。
【0075】
[金属粒子(B)、樹脂粒子(C)、および比較例用シリカ粒子(Z)のD50平均粒子径]
50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用した。トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性フィラーを測定して得た数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。なお、屈折率の設定は1.6とした。
【0076】
[樹脂粒子(C)の復元率]
樹脂粒子(C)の復元率は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機「MCT-211」を用いた負荷-除荷試験によって求めた。まず、樹脂粒子(C)を下部加圧板(SKS平板)上に載置し、「MCTM-211」の光学顕微鏡(対物レンズ倍率50倍)で一個の独立した樹脂粒子(C)を選び出す。選び出した樹脂粒子(C)の直径dを、「MCTM-211」の粒子径測定カーソルで測定した。選び出す樹脂粒子(C)は、測定対象とする粒子径に応じて決定する。
次に、選び出した樹脂粒子(C)の頂点に試験用圧子を下記の負荷速度で降下させることにより、最大試験力20mNまで樹脂粒子(C)に荷重をかけたときの粒子径Aと、その後、最小試験力0.3mNまで除荷したときの粒子径Bを測定する。粒子径A及び粒子径Bから得られる変位量(復元量)Lと、粒子径測定カーソルで測定された直径dとから、次の復元率の算出式
復元率(%)=復元量L(μm)/直径d(μm)×100
により、個別の樹脂粒子(C)の復元率を求める。3つの樹脂粒子(C)に対して復元率の測定を行い、平均値を復元率とする。
【0077】
<復元率の測定条件>
試験温度:常温(20℃)、相対湿度65%
上部加圧圧子:直径50μmの平面圧子(材質:ダイヤモンド)
下部加圧板:SKS平板
試験種類:負荷-除荷試験
最大試験力:20mN
最小試験力:0.3mN
負荷速度:4.5mN/sec
負荷保持時間:3sec
除荷保持時間:1min
【0078】
<原料>
[樹脂(a-1)]
(a-1)-1:ポリエステル樹脂:酸価36mgKOH/g、Mw=27,000(トーヨーケム製)
(a-1)-2:ポリイミド樹脂:酸価18mgKOH/g、Mw=55,000(トーヨーケム製)
(a-1)-3:ポリアミド樹脂:酸価22mgKOH/g、Mw=49,000(トーヨーケム製)
(a-1)-4:ポリウレタン樹脂:酸価16mgKOH/g、Mw=98,000(トーヨーケム製)
(a-1)-5:ポリウレタンウレア樹脂:酸価15mgKOH/g、Mw=100,000(トーヨーケム製)
(a-1)-6:ポリアクリル樹脂:酸価55mgKOH/g、Mw=120,000(トーヨーケム製)
[硬化剤(D)]
D1:ビスフェノールA型エポキシ化合物(jER828、分子量=370、三菱ケミカル製)
D2:イソフタル型オキセタン化合物(ETERNACOLL OXIPA、分子量=362、宇部興産製)
D3:水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(TBIS-AHS、分子量=384、田岡化学工業製)
D4:多官能型アジリジン化合物(ケミタイトPZ-33、分子量=425、日本触媒製)
D5:ポリカルボジイミド化合物(カルボジライトV―05、分子量=1200、日清紡ケミカル製)
[金属粒子(B)]
B1:銀被覆銅粉:D50=5.7μm、樹枝状(三井金属鉱業製)
B2:銀被覆銅粉:D50=31.2μm、樹枝状(三井金属鉱業製)
B3:銀被覆銅粉:D50=10.8μm、球状(昭和電工マテリアル製)
B4:銀被覆銅粉:D50=7.5μm、球状(昭和電工マテリアル製)
B5:銀被覆銅粉:D50=11.3μm、フレーク状(DOWAホールディングス製)
[樹脂粒子(C)]
C1:ウレタン樹脂粒子:D50=3μm、復元率91%(トーヨーケム製)
C2:アクリル樹脂粒子:D50=3μm、復元率87%(トーヨーケム製)
C3:アクリル樹脂粒子:D50=3μm、復元率45%(トーヨーケム製)
C4:アクリル樹脂粒子:D50=3μm、復元率38%(トーヨーケム製)
C5:アクリル樹脂粒子:D50=3μm、復元率6%(トーヨーケム製)
C6:アクリル樹脂粒子:D50=3μm、復元率3%(トーヨーケム製)
C7:アクリル樹脂粒子:D50=4μm、復元率83%(トーヨーケム製)
C8:アクリル樹脂粒子:D50=16μm、復元率76%(トーヨーケム製)
C9:アクリル樹脂粒子:D50=1.0μm、復元率90%(トーヨーケム製)
C10:アクリル樹脂粒子:D50=1.2μm、復元率88%(トーヨーケム製)
C11:アクリル樹脂粒子:D50=2.7μm、復元率86%(トーヨーケム製)
C12:アクリル樹脂粒子:D50=3.9μm、復元率85%(トーヨーケム製)
C13:ポリイミド樹脂粒子:D50=3μm、復元率75%(トーヨーケム製)
[比較例用シリカ粒子(Z)]
Z1:D50=2.6μm(アドマファインSO-6、アドマテックス製)
【0079】
<導電性組成物、及び導電性シートの作成>
[実施例1]
樹脂(a-1)として((a-1)-5)100質量部、金属粒子(B)として(B1)212質量部、および樹脂粒子(C)として(C1)10.5質量部を容器に仕込み、不揮発分濃度が40質量%となるように溶媒としてメチルエチルケトンを加えて混合した。次いで、硬化剤(D)として(D1)30質量部を加え、攪拌機により10分間攪拌して導電性組成物溶液を調製した。
次に、上記調製した導電性組成物溶液を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルム(基材の材質:発泡ポリエチレンテレフタレート、基材の厚み50μm、離型剤:アルキッド系離型剤)の剥離処理された一方の面上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで剥離性フィルム上に導電性組成物が形成された導電性シートを得た。
【0080】
[実施例2~55、比較例1、3]
配合する各成分の種類および配合量を表1~表8に記載した通りとした以外は実施例1と同様に操作し、各実施例2~55および比較例1、3の導電性シートを得た。
【0081】
[比較例2]
配合する各成分のうち、樹脂粒子(C)をシリカ粒子(Z1)に変え、その他成分の種類および配合量を表8に記載した通りとした以外は実施例1と同様に操作し、比較例2の導電性シートを得た。
【0082】
<評価>
得られた各導電性組成物(導電性シート)について、レジンフロー、接着性、導電性、打ち抜き加工性、膜厚担保性を下記方法に従って評価した。その評価結果を表2~表8に示す。
【0083】
[レジンフロー]
各実施例および比較例にて作製した導電性シートを用い、これを幅40mm、長さ100mmの大きさに切断し、その導電性組成物が露出した面が幅50mm、長さ120mmの金属板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記導電性シートを上記金属板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm、0.5m/minの条件下で、上記導電性シートと上記金属板とをロールラミネートした後、上記導電性組成物から剥離性フィルムを剥がして導電性組成物付金属板を得た。
【0084】
次に、打ち抜き加工機を用いて上記導電性組成物付金属板(金属補強板)を5mm×12mmのサイズにカットした後、その導電性組成物が露出した面を厚さ125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、「カプトン500H」)に100℃で熱ラミネートして積層体を得た。次いで、耐熱離型フィルム(オピュラン CR1012MT4 150μm、三井化学東セロ製)を上記積層体の金属板上の上下にそれぞれ1枚ずつ載置し、これを170℃、2.0MPa、5分間の条件下で熱圧着することで評価用試料(「ポリイミドフィルム/導電性組成物/金属板」の積層体)を得た。
【0085】
次に、倍率200倍~1000倍の拡大鏡を用いて上記評価用試料を観察し、金属板の端部からはみ出した導電性組成物のフロー量(導電性組成物の縁部の最大移動距離、金属板の端部とはみ出した導電性組成物の端部との最大長さ)を測定し、この測定値を指標として下記評価基準に従い外観を評価した。
◎:非常に優れている(フロー量が100μm以下)
○:優れている(フロー量が100μmを超え、200μm以下)
△:実用可能である(フロー量が200μmを超え、300μm以下)
×:実用不可能である(フロー量が300μmを超える)
【0086】
[接着性]
各実施例および比較例にて作製した導電性シートを用い、これを幅25mm、長さ100mmの大きさに切断し、その導電性組成物が露出した面が幅30mm、長さ150mmの金属板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記導電性シートを上記金属板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm、0.5m/minの条件下で、上記導電性シートと上記金属板とをロールラミネートした後、上記導電性組成物から剥離性フィルムを剥がし、導電性組成物が露出した面に銅箔(厚さ25μm)を重ね、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm、0.5m/minの条件下で、導電性組成物と銅箔をロールラミネートし、評価用試料を得た。
【0087】
次いで、引張試験機(小型卓上試験機 EZ-TEST、島津製作所製)を用い、引っ張り速度50mm/minの条件下で、90°ピール剥離試験における評価用試料の金属板に対する導電性組成物の接着強度を指標として、下記評価基準に従い接着性を評価した。
◎:非常に優れている(接着強度が3N/cm以上)
〇:優れている(接着強度が2N/cm以上3N/cm未満)
△:実用可能である(接着強度が1N/cm以上2N/cm未満)
×:実用不可能である(接着強度が1N/cm未満)
【0088】
[導電性]
各実施例および比較例にて作製した導電性シート(幅20mm、長さ20mm)を用い、その導電性組成物が露出した面が幅20mm、長さ20mmの金属板(厚さ0.1mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記導電性シートを上記金属板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm、1m/minの条件下で、上記導電性シートと上記金属板とをロールラミネートして導電性シート付金属板を得た。
【0089】
次に、上記導電性シート付金属板における導電性シートの剥離性フィルムを剥がして除去した後、打ち抜き加工機で1辺が10mmの正方形に打ち抜き、導電性組成物付金属板(以下、「導電性組成物付金属板」と称する)を得た。次いで、別に作製したフレキシブルプリント配線板を用い、導電性組成物付金属板の導電性組成物が露出した面(導電性組成物の金属板と反対の面)を配線板に重ね、ロールラミネーターを用いて130℃、3kgf/cm、1m/minの条件下で、上記導電性組成物付金属板と上記配線板とを貼り付けた。次いで、これらを170℃、2MPa、5分の条件下で熱圧着した後、これを電気オーブンを用いて160℃、60分間加熱することで評価用試料を得た。なお、上述の配線板は、厚み75μmのポリイミドフィルムの両面それぞれに厚み32μmの銅箔回路が形成され、銅箔回路上には、一辺が0.7mmの正方形であって開口面積が0.49mmのスルーホール(開口部)を有する厚み37.5μmの接着剤付き絶縁性カバーフィルム(カバーレイ)が積層されている。また、もう一方の銅箔回路上にはスルーホールを有さない接着剤付きの厚み37.5μmの絶縁性のカバーフィルムが積層されたものである(フレキシブルプリント配線板が反らないように、ポリイミドフィルムに対して銅箔回路およびカバーフィルムを対称に配置した)。
【0090】
次に、抵抗値測定器およびBSPプローブ(型番:MCP-TP05P、三菱ケミカルアナリテック製)を用い、評価用試料の金属板と銅箔回路との間の電気抵抗(接続抵抗値)を測定し、この測定値を指標として下記評価基準に従い導電性を評価した。
◎:良好である(接続抵抗値が20mΩ未満)
○:実用可能である(接続抵抗値が20mΩ以上100mΩ未満)
△:実用可能である(接続抵抗値が100mΩ以上500mΩ未満)
×:実用不可能である(接続抵抗値が500mΩ以上)
【0091】
[打ち抜き加工性]
各実施例および比較例にて作製した導電性シートを用い、その導電性組成物が露出した面が金属板(厚さ0.1mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記導電性シートを上記金属板に重ねた。次いで、ロールラミネーター(小型卓上テストラミネーター「SA-1010」、テスター産業製、以下同じ)を用い、130℃、3kgf/cm、1m/minの条件下で、上記導電性シートと上記金属板とをロールラミネートして導電性シート付金属板を得た。
【0092】
次に、打ち抜き加工機(型番:ハンドプレス機QCDタイプ、協栄プリント技研製、以下同じ)を用い、クリアランスが2.5μmの条件で、上記導電性シート付金属板を5mm×12mmのサイズに50ピース型抜きすることで評価用試料を得た。
【0093】
次に、倍率200倍~1000倍の拡大鏡を用い、上記評価用試料の不良率(不良品の混入率)を指標として下記評価基準に従い打ち抜き加工性を評価した。なお、不良品とは、型抜きの形に加工された後、部分的に抜けていないもの、金属板と導電性組成物とが剥がれたもの、および打ち抜いた導電性組成物の端部の形状が歪でいるもののうちの少なくともいずれかを有するもののことである。
◎:非常に優れている(不良率が10%未満)
○:優れている(不良率が10%以上15%未満)
△:実用可能である(不良率が15%以上25%未満)
×:実用不可能である(不良率が25%以上)
【0094】
[膜厚担保性]
各実施例および比較例にて作製した導電性シートを用い、これを幅40mm、長さ100mmの大きさに切断し、その導電性組成物が露出した面が幅50mm、長さ120mmの金属板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記導電性シートを上記金属板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、130℃、3kgf/cm、0.5m/minの条件下で、上記導電性シートと上記金属板とをロールラミネートした後、上記導電性組成物から剥離性フィルムを剥がして導電性組成物付金属板(金属補強板)を得た。
【0095】
次に、打ち抜き加工機を用いて上記導電性組成物付金属板(金属補強板)を5mm×12mmのサイズにカットした後、その導電性組成物が露出した面を厚さ125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、「カプトン500H」)に100℃で熱ラミネートして積層体を得た。次いで、耐熱離型フィルム(オピュラン CR1012MT4 150μm、三井化学東セロ製)を上記積層体の金属板上の上下にそれぞれ1枚ずつ載置し、これを170℃、2.0MPa、5分間の条件下で熱圧着することで評価用試料(「ポリイミドフィルム/導電性組成物/金属板」の積層体)を得た。
【0096】
次に、評価用試料を長辺中央部付近で切断し、更に断面付近をクロスセクションポリッシャを用いて切削し、加工された断面をSEMで観察し、導電性組成物の厚み(H1)を測定した。金属板への貼付け前の導電性シートにおける導電性組成物の厚みをH2として、各実施例、および比較例のΔH=H1/H2を求め、下記評価基準に従い評価した。
◎:非常に優れている(ΔHが0.6以上)
○:優れている(ΔHが0.5以上0.6未満)
△:実用可能である(ΔHが0.4以上0.5未満)
×:実用不可能である(ΔHが0.4未満)
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
【表8】
【符号の説明】
【0105】
1 導電性組成物
2 金属板
20 配線板
21 絶縁性フィルム
22 グランド回路
23 カバーレイ
30 開口部
100 金属補強板つき配線板

【要約】      (修正有)
【課題】レジンフロー抑制に優れ、高い接着性及び導電性を有し、優れた打ち抜き加工性と膜厚担保性を両立できる導電性組成物、導電性シート、金属補強板、金属補強板つき配線板及び電子機器を提供する。
【解決手段】絶縁性フィルム21上にグランド回路22が配置されており、グランド回路22をカバーレイ23が被覆し、グランド回路22の一部が開口部30を介して露出している配線板20と、配線板20上に金属補強板が配置される金属補強板つき配線板100において、金属補強板の導電性組成物1は、バインダー、金属粒子、樹脂粒子を含み、樹脂粒子の復元率が5%以上、95%以下である。加えて、バインダーが、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
【選択図】図1
図1