(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】判定システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230214BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B66B5/02 S
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2022541384
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029867
(87)【国際公開番号】W WO2022029898
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 陽太
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156134(JP,A)
【文献】特開2017-165527(JP,A)
【文献】特開2009-214994(JP,A)
【文献】特開2018-177473(JP,A)
【文献】特開2010-83629(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーター装置を特定するための識別情報と当該エレベーター装置が設置されている建物に関する建物情報とが複数のエレベーター装置のそれぞれに対して登録された管理テーブルを記憶する記憶手段と、
保守員の派遣が必要なエレベーター装置を前記複数のエレベーター装置の中から特定する特定手段と、
前記特定手段が特定したエレベーター装置を、閉じ込めが発生している第1グループと閉じ込めが発生していない第2グループとに分ける分割手段と、
前記管理テーブルに建物情報が登録された建物のそれぞれに設けられた加速度計から加速度データを取得可能な取得手段と、
前記第2グループに含まれるエレベーター装置について、前記管理テーブルに登録された建物情報と前記取得手段が取得した加速度データとに基づいて、保守員を派遣するための優先度を判定する判定手段と、
を備えた判定システム。
【請求項2】
前記管理テーブルに、建物情報として、建物の用途と建物の固有振動数とが登録され、
前記第2グループに含まれるエレベーター装置は、建物の用途が病院である第3グループと建物の用途が病院ではない第4グループとに分けられ、
前記判定手段は、前記第4グループに含まれるエレベーター装置について、前記管理テーブルに登録された建物の固有振動数と前記取得手段が取得した加速度データとに基づいて優先度を判定する請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記第4グループに含まれるエレベーター装置のそれぞれについて、前記管理テーブルに登録された建物の固有振動数と前記取得手段が取得した加速度データとに基づいて建物に発生した揺れの強さを示す値を算出する算出手段を更に備え、
前記第4グループに含まれるエレベーター装置は、前記算出手段が算出した値が規定値を超える第5グループと前記算出手段が算出した値が前記規定値を超えない第6グループとに分けられ、
前記判定手段は、前記第5グループに含まれるエレベーター装置より前記第6グループに含まれるエレベーター装置の方が保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する請求項2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記取得手段は、地震後の診断運転で異常が検出されなかったことを示す仮復旧情報を取得可能であり、
前記管理テーブルに、建物情報として、建物の用途と建物の固有振動数とが登録され、
前記第2グループに含まれるエレベーター装置は、建物の用途が病院である第3グループと建物の用途が病院ではない第4グループとに分けられ、
前記第4グループに含まれるエレベーター装置は、前記取得手段が仮復旧情報を取得した第5グループと前記取得手段が仮復旧情報を取得していない第6グループとに分けられ、
前記判定手段は、前記第5グループに含まれるエレベーター装置より前記第6グループに含まれるエレベーター装置の方が保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する請求項1に記載の判定システム。
【請求項5】
前記第1グループに含まれるエレベーター装置は、建物の用途が病院である第7グループと建物の用途が病院ではない第8グループとに分けられ、
前記判定手段は、前記第8グループに含まれるエレベーター装置について、前記第4グループに含まれるエレベーター装置について優先度を判定する基準とは異なる基準に基づいて優先度を判定する請求項2から請求項4の何れか一項に記載の判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、監視システムが記載されている。特許文献1に記載されたシステムは、多数のエレベーター装置と通信可能な監視センターを備える。例えば、広域地震が発生すると、複数のエレベーター装置で閉じ込めが発生する。監視センターは、弱者がかごに閉じ込められたエレベーター装置から優先的に復旧が行われるように、復旧のための優先順位を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広域地震が発生した際に復旧が必要になるエレベーター装置には、閉じ込めが発生していないエレベーター装置も含まれる。特許文献1に記載されたシステムでは、広域地震等が発生した際に、閉じ込めが発生していないエレベーター装置に関して、効率的に復旧を行うための判定を実施できないといった問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、広域地震等が発生した際に、閉じ込めが発生していないエレベーター装置を含めて、効率的に復旧を行うための判定を実施できる判定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る判定システムは、エレベーター装置を特定するための識別情報と当該エレベーター装置が設置されている建物に関する建物情報とが複数のエレベーター装置のそれぞれに対して登録された管理テーブルを記憶する記憶手段と、保守員の派遣が必要なエレベーター装置を複数のエレベーター装置の中から特定する特定手段と、特定手段が特定したエレベーター装置を、閉じ込めが発生している第1グループと閉じ込めが発生していない第2グループとに分ける分割手段と、管理テーブルに建物情報が登録された建物のそれぞれに設けられた加速度計から加速度データを取得可能な取得手段と、第2グループに含まれるエレベーター装置について、管理テーブルに登録された建物情報と取得手段が取得した加速度データとに基づいて、保守員を派遣するための優先度を判定する判定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る判定システムであれば、広域地震等が発生した際に、閉じ込めが発生していないエレベーター装置を含めて、効率的な復旧を行うための判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1における判定システムの例を示す図である。
【
図2】エレベーター装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】判定装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】判定装置のハードウェア資源の例を示す図である。
【
図6】判定装置のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における判定システムの例を示す図である。
図1に示す判定システムは、複数のエレベーター装置1と情報センター2とを備える。エレベーター装置1のそれぞれは、情報センター2と双方向の通信が可能である。
【0011】
エレベーター装置1は、例えばかご3及びつり合いおもり4を備える。かご3は、昇降路5を上下に移動する。つり合いおもり4は、昇降路5を上下に移動する。かご3及びつり合いおもり4は、主ロープ6によって昇降路5に吊り下げられる。
【0012】
主ロープ6は、巻上機7に巻き掛けられる。かご3は、巻上機7によって駆動される。巻上機7は、制御装置8によって制御される。
図1は、巻上機7及び制御装置8が昇降路5の上方の機械室9に設置される例を示す。巻上機7及び制御装置8は、昇降路5に設置されても良い。巻上機7が昇降路5に設置される場合、巻上機7は、昇降路5の頂部に設置されても良いし、昇降路5のピットに設置されても良い。
【0013】
制御装置8に、通信装置10が接続される。通信装置10は、エレベーター装置1が外部と通信するための装置である。エレベーター装置1と情報センター2との通信は、通信装置10を介して行われる。通信装置10が情報センター2と通信する方式は、如何なる方式でも良い。通信装置10は、特定のネットワークを介して情報センター2と通信する。上記特定のネットワークは、IPネットワークでも良い。IPネットワークは、通信プロトコルとしてIP(Internet Protocol)を用いた通信ネットワークである。
【0014】
かご3は、インターホン11及びカメラ12を備える。インターホン11は、かご3の中にいる人が情報センター2にいるオペレーター13と通話するための装置である。カメラ12は、かご3の中を撮影する。カメラ12によって撮影された画像は、通信装置10を介して情報センター2に送信される。オペレーター13は、カメラ12によって撮影された画像を端末14で確認することができる。
【0015】
エレベーター装置1が備えられた建物に、加速度計15が設けられる。
図1は、加速度計15が機械室9に設置される例を示す。加速度計15の設置場所は、機械室9でなくても良い。加速度計15は、建物の加速度を検出する。加速度計15が検出した加速度データは、通信装置10を介して情報センター2に送信される。
【0016】
図2は、エレベーター装置1の動作例を示すフローチャートである。エレベーター装置1では、地震が発生したか否かが判定される(S101)。地震が発生していなければ、制御装置8は通常運転を行う(S102)。通常運転では、制御装置8は、登録された呼びにかご3を順次応答させる。
【0017】
上述したように、建物の加速度は、加速度計15によって検出される。加速度計15が第1基準値より大きい加速度を検出すると、S101でYesと判定される。S101でYesと判定されると、制御装置8は通常運転を停止する。制御装置8は、通常運転を停止すると地震時管制運転を開始する(S103)。地震時管制運転において、かご3は最寄り階に停止する。かご3が最寄り階に停止すると、ドアが開閉される。これにより、乗客は、かご3から降りることができる。
【0018】
何らかの理由により地震時管制運転が正常に終了せず、乗客がかご3に閉じ込められると、通信装置10から情報センター2に対して閉じ込め信号が送信される。閉じ込め信号には、例えば、エレベーター装置1を特定するための情報と、閉じ込めが発生したことを示す情報と、加速度計15からの加速度データとが含まれる。以下においては、エレベーター装置1を特定するための情報のことを識別情報ともいう。
【0019】
地震時管制運転が正常に終了すると、特定の復帰条件が成立するか否かが判定される(S104)。復帰条件は予め設定される。例えば、加速度計15によって検出された加速度が第2基準値より小さければ、S104でYesと判定される。第2基準値は、第1基準値より大きな値である。S104でYesと判定されると、制御装置8は、通常運転を再開する(S102)。
【0020】
S104でNoと判定されると、特定の診断条件が成立するか否かが判定される(S105)。診断条件は予め設定される。例えば、加速度計15によって検出された加速度が第3基準値より大きければ、S105でNoと判定される。第3基準値は、第2基準値より大きな値である。S105でNoと判定されると、制御装置8は、エレベーターを休止させる(S106)。
【0021】
S106でエレベーターが休止する場合、かご3に乗客は閉じ込められていない。また、S106でエレベーターが休止すると、通常運転を再開するためには保守員による現場での復旧作業が必要になる。このため、S106でエレベーターが休止すると、通信装置10から情報センター2に対して復旧要求信号が送信される。復旧要求信号には、例えば、エレベーター装置1の識別情報と、エレベーターが休止したことを示す情報と、加速度計15からの加速度データとが含まれる。
【0022】
一方、加速度計15によって検出された加速度が第2基準値より大きく且つ第3基準値より小さければ、S105でYesと判定される。S105でYesと判定されると、制御装置8は、診断運転を開始する(S107)。診断運転では、異常の有無を判定するために様々なデータが測定される。
【0023】
診断運転が開始されると、特定の仮復帰条件が成立したか否かが判定される(S108)。仮復帰条件は予め設定される。例えば、診断運転で測定されたデータに基づいて異常が検出されると、S108でNoと判定される。S108でNoと判定されると、制御装置8は、エレベーターを休止させる(S106)。また、S106でエレベーターが休止すると、通信装置10から情報センター2に対して上述の復旧要求信号が送信される。
【0024】
診断運転で測定されたデータに基づいて異常が全く検出されなければ、S108でYesと判定される。S108でYesと判定されると、制御装置8は、エレベーターを仮復旧する(S109)。S109では、制御装置8は、通常運転と同様の運転を開始する。制御装置8は、S109において、通常運転で行われる機能の一部を制限した運転を開始しても良い。
【0025】
S109の後にエレベーターを完全に復旧させるためには、保守員による現場での確認作業が必要になる。このため、S109でエレベーターが仮復旧すると、通信装置10から情報センター2に対して仮復旧信号が送信される。仮復旧信号には、例えば、エレベーター装置1の識別情報と、エレベーターが仮復旧したことを示す情報と、加速度計15からの加速度データとが含まれる。
【0026】
なお、加速度計15によって検出された加速度データは、地震が発生した直後に通信装置10から情報センター2に送信されても良い。例えば、S101でYesと判定されると、通信装置10から情報センター2に対して地震信号が送信される。この地震信号には、エレベーター装置1の識別情報と、加速度計15からの加速度データとが含まれる。
【0027】
情報センター2には、端末14の他に、判定装置16が更に備えられる。
図3は、判定装置16の例を示す図である。判定装置16は、広域地震等が発生した場合に、閉じ込めが発生していないエレベーター装置1を含めて、効率的に復旧を行うための判定を行う機能を有する。例えば、判定装置16は、広域地震が発生すると、I1からI7に示す情報の全て或いは一部を用いて、保守員を派遣するための優先度を判定する。判定装置16は、優先度の判定のために他の情報を更に用いても良い。
I1:閉じ込めの有無
I2:閉じ込められている人の属性及び状態(子供、老人、障がい者、体調不良者等)
I3:かご内への防災備品箱の設置の有無
I4:建物の用途
I5:建物に発生した揺れの強度
I6:エレベーター装置の耐震基準
I7:地盤増幅率
【0028】
このような機能を実現するため、判定装置16は、記憶部20、特定部21、取得部22、分割部23、判定部24、解析部25、及び算出部26を備える。記憶部20に、管理テーブルが記憶される。表1は、記憶部20に記憶された管理テーブルの例を示す。
【0029】
【0030】
表1に示す例では、管理テーブルに、情報センター2が管理するエレベーター装置1のそれぞれの識別情報が登録される。情報センター2が管理するエレベーター装置1には、情報センター2と通信可能な全てのエレベーター装置1が含まれる。
【0031】
管理テーブルには、情報センター2が管理するエレベーター装置1のそれぞれに対して、エレベーター装置1の耐震強度情報とそのエレベーター装置1が設置されている建物に関する建物情報とが識別情報に紐付けて登録される。表1は、建物情報に、建物の用途と建物の固有振動数とが含まれる例を示す。建物情報に、表1に示す情報以外の情報が含まれても良い。以下に、
図4も参照し、本判定システムが有する機能について詳しく説明する。
【0032】
図4は、判定装置16の動作例を示すフローチャートである。広域地震等が発生すると、特定部21は、情報センター2が管理するエレベーター装置1の中から、保守員の派遣が必要なエレベーター装置1を特定する(S201)。
【0033】
保守員の派遣が必要なエレベーター装置1には、閉じ込めが発生している全てのエレベーター装置1が含まれる。例えば、取得部22は、エレベーター装置1からの閉じ込め信号を取得する。閉じ込め信号を送信してきたエレベーター装置1は、保守員の派遣が必要なエレベーター装置1として特定部21に特定される。
【0034】
保守員の派遣が必要なエレベーター装置1には、閉じ込めが発生していないエレベーター装置1も含まれる。例えば、取得部22は、エレベーター装置1からの復旧要求信号を取得する。復旧要求信号を送信してきたエレベーター装置1は、保守員の派遣が必要なエレベーター装置1として特定部21に特定される。他の例として、取得部22は、エレベーター装置1からの仮復旧信号を取得する。仮復旧信号を送信してきたエレベーター装置1は、保守員の派遣が必要なエレベーター装置1として特定部21に特定される。
【0035】
なお、あるエレベーター装置1で閉じ込めが発生すると、かご3に閉じ込められた乗客は、インターホン11を介してオペレーター13に連絡する。オペレーター13は、端末14を操作することによって当該エレベーター装置1で閉じ込めが発生している旨の情報を入力する。取得部22は、端末14から入力された情報を取得する。特定部21は、取得部22が取得した端末14からの入力情報に基づいて、当該エレベーター装置1を保守員の派遣が必要なエレベーター装置1として特定しても良い。
【0036】
また、
図2に示す一連の動作は、全てのエレベーター装置1において実施される訳ではない。例えば、一部のエレベーター装置1は、地震後の自動診断機能を備えていない。このようなエレベーター装置1が地震によって休止すると、建物の管理人は電話等によってオペレーター13に連絡する。オペレーター13は、端末14を操作することによって当該エレベーター装置1が休止している旨の情報を入力する。特定部21は、取得部22が取得した端末14からの入力情報に基づいて、当該エレベーター装置1を保守員の派遣が必要なエレベーター装置1として特定しても良い。
【0037】
分割部23は、S202で特定部21が特定したエレベーター装置1を複数のグループに分ける。先ず、分割部23は、特定部21が特定したエレベーター装置1を、閉じ込めが発生しているAグループと閉じ込めが発生していないBグループとに分ける(S202)。
【0038】
判定部24は、保守員の派遣が必要なエレベーター装置1について、保守員を派遣するための優先度を判定する。判定部24は、分割部23が分割したグループ毎に優先度を判定する。例えば、判定部24は、Aグループに含まれるエレベーター装置1の方がBグループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する。判定部24は、特定のグループに関しては、そのグループに含まれるエレベーター装置1のそれぞれについて、優先度を判定しても良い。
【0039】
例えば、判定部24は、管理テーブルに登録された登録情報及び取得部22が取得した取得情報に基づいて優先度の判定を行う。当該登録情報には、少なくとも建物情報が含まれる。当該取得情報には、少なくとも、加速度計15からの加速度データが含まれる。なお、取得部22は、管理テーブルに建物情報が登録された建物のそれぞれに設けられた加速度計15から加速度データを取得することができるように構成される。
【0040】
図4に示す例では、Aグループに含まれるエレベーター装置1は、分割部23によってCグループとDグループとに更に分けられる(S203)。Cグループには、建物の用途が病院であるエレベーター装置1のみが含まれる。Dグループには、Aグループに含まれるエレベーター装置1のうち、Cグループに含むことができないエレベーター装置1が含まれる。即ち、Dグループには、建物の用途が病院ではないエレベーター装置1が含まれる。
【0041】
他の例として、Cグループに、建物の用途が公共施設であるエレベーター装置1が更に含まれても良い。かかる場合、Dグループには、建物の用途が病院及び公共施設ではないエレベーター装置1が含まれる。判定部24は、Cグループに含まれるエレベーター装置1の方がDグループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する(S204)。
【0042】
例えば、判定部24は、Cグループに含まれるエレベーター装置1に対して、最も高い優先度P1を判定する。即ち、保守員の派遣が必要なエレベーター装置1の中でCグループに含まれるエレベーター装置1への保守員の派遣が最優先される。
【0043】
判定部24は、Dグループに含まれるエレベーター装置1に対して、優先度P1より低い優先度P2を判定する。Dグループに含まれるエレベーター装置1が更に細かいグループに分けられることにより、判定部24は、そのグループ毎に優先度の判定を行っても良い。上述したように、判定部24は、Dグループに含まれるエレベーター装置1のそれぞれに対して優先度の判定を行っても良い。
【0044】
例えば、閉じ込めが発生しているエレベーター装置1から情報センター2に対して、カメラ12によって撮影された画像が送信される。解析部25は、エレベーター装置1から送信されてきた画像を解析し、閉じ込められている人の属性及び状態を特定する。判定部24は、解析部25が特定した結果に基づいて優先度の判定を行っても良い。
【0045】
一例として、Dグループに含まれるエレベーター装置1が、特定の人が閉じ込められているD1グループと上記特定の人以外の人が閉じ込められているD2グループとに分けられる。上記特定の人には、障がい者及び体調不良者が含まれる。上記特定の人に、子供及び老人が更に含まれても良い。判定部24は、S204において、D1グループに含まれるエレベーター装置1の方がD2グループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する。
【0046】
他の例として、算出部26は、Dグループに含まれるエレベーター装置1のそれぞれについて、建物に発生した揺れの強さを示す値Vを算出する。値Vは、管理テーブルに登録された建物の固有振動数と取得部22が取得した加速度データとに基づいて特定の算出式から算出される。上記算出式は予め設定される。値Vの算出において、管理テーブルに登録された耐震強度情報が更に用いられても良い。同様に、値Vの算出において、建物がある地域の地盤増幅率が更に用いられても良い。例えば、耐震強度情報に応じた係数又は地盤増幅率に応じた係数が上記算出式に代入される。
【0047】
この例では、Dグループに含まれるエレベーター装置1が、値Vが規定値V1を超えるD1グループと値Vが規定値V1を超えないD2グループとに分けられる。規定値V1は予め設定される。判定部24は、S204において、D1グループに含まれるエレベーター装置1の方がD2グループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する。
【0048】
また、他の例として、算出部26は、Dグループに含まれるエレベーター装置1のそれぞれについて、建物に発生した共振現象の度合いを示す値Wを算出しても良い。一般に、建物の固有周期と地震の固有周期とが等しくなる程、建物の揺れが増幅される。このような現象を共振現象という。例えば、建物に発生した共振現象が大きい程、値Wは大きくなる。値Wは、管理テーブルに登録された建物の固有振動数と取得部22が取得した加速度データとに基づいて特定の算出式から算出される。上記算出式は予め設定される。値Wの算出において、管理テーブルに登録された耐震強度情報が更に用いられても良い。同様に、値Wの算出において、建物がある地域の地盤増幅率が更に用いられても良い。例えば、耐震強度情報に応じた係数又は地盤増幅率に応じた係数が上記算出式に代入される。
【0049】
この例では、Dグループに含まれるエレベーター装置1が、値Wが規定値W1を超えるD1グループと値Wが規定値W1を超えないD2グループとに分けられる。規定値W1は予め設定される。判定部24は、S204において、D1グループに含まれるエレベーター装置1の方がD2グループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する。
【0050】
一方、Bグループに含まれるエレベーター装置1は、分割部23によってEグループとFグループとに更に分けられる(S205)。Eグループには、建物の用途が病院であるエレベーター装置1のみが含まれる。Fグループには、Bグループに含まれるエレベーター装置1のうち、Eグループに含むことができないエレベーター装置1が含まれる。即ち、Fグループには、建物の用途が病院ではないエレベーター装置1が含まれる。
【0051】
他の例として、Eグループに、建物の用途が公共施設であるエレベーター装置1が更に含まれても良い。かかる場合、Fグループには、建物の用途が病院及び公共施設ではないエレベーター装置1が含まれる。判定部24は、Eグループに含まれるエレベーター装置1の方がFグループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する(S206)。
【0052】
例えば、判定部24は、Eグループに含まれるエレベーター装置1に対して、優先度P1及びP2より低い優先度P3を判定する。優先度P3は、Bグループに含まれるエレベーター装置1に対して判定される優先度の中では最も高い優先度である。
【0053】
判定部24は、Fグループに含まれるエレベーター装置1に対して、優先度P3より低い優先度P4を判定する。Fグループに含まれるエレベーター装置1が更に細かいグループに分けられることにより、判定部24は、そのグループ毎に優先度の判定を行っても良い。上述したように、判定部24は、Fグループに含まれるエレベーター装置1のそれぞれに対して優先度の判定を行っても良い。
【0054】
一例として、算出部26は、Fグループに含まれるエレベーター装置1のそれぞれについて、建物に発生した揺れの強さを示す値Vを算出する。上述したように、値Vは、管理テーブルに登録された建物の固有振動数と取得部22が取得した加速度データとに基づいて特定の算出式から算出される。値Vの算出において、管理テーブルに登録された耐震強度情報が更に用いられても良い。同様に、値Vの算出において、建物がある地域の地盤増幅率が更に用いられても良い。
【0055】
この例では、Fグループに含まれるエレベーター装置1が、値Vが規定値V2を超えるF1グループと値Vが規定値V2を超えないF2グループとに分けられる。規定値V2は予め設定される。判定部24は、S206において、F1グループに含まれるエレベーター装置1の方がF2グループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する。
【0056】
また、他の例として、算出部26は、Fグループに含まれるエレベーター装置1のそれぞれについて、建物に発生した共振現象の度合いを示す値Wを算出しても良い。値Wは、管理テーブルに登録された建物の固有振動数と取得部22が取得した加速度データとに基づいて特定の算出式から算出される。値Wの算出において、管理テーブルに登録された耐震強度情報が更に用いられても良い。同様に、値Wの算出において、建物がある地域の地盤増幅率が更に用いられても良い。例えば、耐震強度情報に応じた係数又は地盤増幅率に応じた係数が上記算出式に代入される。
【0057】
この例では、Fグループに含まれるエレベーター装置1が、値Wが規定値W2を超えるF1グループと値Wが規定値W2を超えないF2グループとに分けられる。規定値W2は予め設定される。判定部24は、S204において、F1グループに含まれるエレベーター装置1の方がF2グループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定する。
【0058】
規定値V2は規定値V1と同じ値でも良い。かかる場合、判定部24は、Fグループに含まれるエレベーター装置1について、Dグループに含まれるエレベーター装置1について優先度を判定する基準と同じ基準に基づいて優先度を判定することになる。
【0059】
同様に、規定値W2は規定値W1と同じ値でも良い。かかる場合、判定部24は、Fグループに含まれるエレベーター装置1について、Dグループに含まれるエレベーター装置1について優先度を判定する基準と同じ基準に基づいて優先度を判定することになる。
【0060】
なお、Dグループに含まれるエレベーター装置1では閉じ込めが発生している。一方、Fグループに含まれるエレベーター装置1では、閉じ込めは発生していない。このため、判定部24は、Fグループに含まれるエレベーター装置1について、Dグループに含まれるエレベーター装置1について優先度を判定する基準とは異なる基準に基づいて優先度を判定しても良い。例えば、判定部24は、S206において、F2グループに含まれるエレベーター装置1の方がF1グループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定しても良い。この例であれば、早期の復旧が可能なエレベーター装置1に対して保守員の派遣を優先的に行うことができる。
【0061】
他の例として、分割部23は、Fグループに含まれるエレベーター装置1を、仮復旧信号の有無に応じて更に細かいグループに分けても良い。例えば、Fグループに含まれるエレベーター装置1は、取得部22が仮復旧信号を取得したF1グループと取得部22が仮復旧信号を取得していないF2グループとに分けられる。即ち、F1グループには、通信装置10から仮復旧信号が送信されたエレベーター装置1のみが含まれる。
【0062】
仮復旧信号は、地震後の診断運転において異常が検出されなかったことを示す。このため、仮復旧したエレベーター装置1では、登録された呼びに応答するための運転が行われる。この例では、判定部24は、F2グループに含まれるエレベーター装置1の方がF1グループに含まれるエレベーター装置1より保守員の派遣が優先されるように優先度を判定することが好ましい。判定部24は、F2グループに含まれるエレベーター装置1について、算出部26が算出した値Vに基づいて優先度を判定しても良い。判定部24は、F2グループに含まれるエレベーター装置1について、算出部26が算出した値Wに基づいて優先度を判定しても良い。
【0063】
このように、本実施の形態に示す例では、保守員の派遣が必要なエレベーター装置1が、閉じ込めが発生しているAグループと閉じ込めが発生していないBグループとに分けられる。そして、Bグループに含まれるエレベーター装置1について、管理テーブルに登録された建物情報と取得部22が取得した加速度データとに基づいて、保守員を派遣するための優先度が判定される。このため、本実施の形態に示す例であれば、広域地震等が発生した際に、閉じ込めが発生していないエレベーター装置1を含めて、効率的な復旧を行うための判定を行うことができる。
【0064】
なお、Aグループに含まれるエレベーター装置1の台数は、Bグループに含まれるエレベーター装置1の台数より少ないことが多い。Aグループに含まれるエレベーター装置1の台数が極めて少ない場合、判定部24は、Aグループに含まれるエレベーター装置1に対して、1つの優先度P1を判定しても良い。
【0065】
本実施の形態において、符号20~26に示す各部は、判定装置16が有する機能を示す。
図5は、判定装置16のハードウェア資源の例を示す図である。判定装置16は、ハードウェア資源として、例えばプロセッサ31とメモリ32とを含む処理回路30を備える。記憶部20の機能は、メモリ32によって実現される。判定装置16は、メモリ32に記憶されたプログラムをプロセッサ31によって実行することにより、符号21~26に示す各部の機能を実現する。メモリ32として、半導体メモリ等が採用できる。
【0066】
図6は、判定装置16のハードウェア資源の他の例を示す図である。
図6に示す例では、判定装置16は、例えばプロセッサ31、メモリ32、及び専用ハードウェア33を含む処理回路30を備える。
図6は、判定装置16が有する機能の一部を専用ハードウェア33によって実現する例を示す。判定装置16が有する機能の全部を専用ハードウェア33によって実現しても良い。専用ハードウェア33として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示に係る判定システムは、エレベーター装置の復旧を効率的に行うためのシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 エレベーター装置、 2 情報センター、 3 かご、 4 つり合いおもり、 5 昇降路、 6 主ロープ、 7 巻上機、 8 制御装置、 9 機械室、 10 通信装置、 11 インターホン、 12 カメラ、 13 オペレーター、 14 端末、 15 加速度計、 16 判定装置、 20 記憶部、 21 特定部、 22 取得部、 23 分割部、 24 判定部、 25 解析部、 26 算出部、 30 処理回路、 31 プロセッサ、 32 メモリ、 33 専用ハードウェア