(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布および衛生材料
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20230214BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20230214BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
D04H3/16
A41D13/11 Z
A61F13/511 300
(21)【出願番号】P 2022544073
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2022028000
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2021149996
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】勝田 大士
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健太郎
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-042057(JP,A)
【文献】特開2016-141929(JP,A)
【文献】国際公開第02/061192(WO,A1)
【文献】特表2017-512918(JP,A)
【文献】特開2011-067602(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167882(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230646(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/256146(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
A41D 13/11
A61F 13/511
A61F 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融着部と非融着部とを有し、一方の表面(A)において、融着部が他方の表面(B)に向かう凹部を形成しており、前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)の、他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)に対する比(Da/Db)が1.1以上であって、以下の条件を満たすスパンボンド不織布。
(1)前記非融着部の最小内接円の直径が1.0mm以下である
(2)前記非融着部の最大内接円の直径が2.0mm以上である
(3)前記融着部が列状に連なって配置されている
(4)前記融着部におけるスパンボンド不織布の厚み(Tm)とスパンボンド不織布の厚み(T)との比(Tm/T)が、0.30以下である
(5)前記融着部の異形度が1.1以上である
【請求項2】
前記非融着部の最大内接円の直径が10.0mm以下である請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記融着部が間欠的に配置されている請求項1または請求項2
に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記非融着部の最小内接円の直径が0.2mm以上である請求項1
または請求項2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
前記一方の表面(A)および前記他方の表面(B)の、水との接触角がともに30°以下である請求項1
または請求項2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
請求項1
または請求項2に記載のスパンボンド不織布で少なくとも一部が構成されてなる衛生材料。
【請求項7】
前記衛生材料がおむつである請求項6記載の衛生材料。
【請求項8】
前記少なくとも一部がトップシートである請求項7記載の衛生材料。
【請求項9】
前記少なくとも一部がウエスト部の少なくとも一部である請求項7記載の衛生材料。
【請求項10】
前記衛生材料がマスクである請求項6記載の衛生材料。
【請求項11】
前記少なくとも一部がマスクの内面層である請求項10記載の衛生材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ性および速乾性に優れ、特に衛生材料用途に好適なスパンボンド不織布およびこれを使用した衛生材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に紙おむつや生理用ナプキン、マスク等の衛生材料においては、尿や汗などの水分を素早く取り除き、肌に触れる表面をドライに保つことが快適性への鍵となる。
【0003】
このため、直接肌に触れる部材においては、水分を素早く吸収する吸水性と、吸収した水分を最表面層から移行させ、表面をドライな状態にするドライ性の両立が要求される。さらに、上記の水分移動は素早く行われることが肝心であり、いわゆる速乾性も重要となる。
【0004】
従来、この表面部材には、親水化処理を施した各種不織布が広く使用されてきた。これらは、最表面層から内層の不織布や吸収体へ水分を誘導できるものの、最表面層に水分が残存しやすく、ドライ性に劣るものであった。
【0005】
この課題に対して、特許文献1では、細繊度繊維からなる繊維層(肌面側)と、太繊度繊維からなる繊維層が積層され、境界面で一部が交絡した不織布が提案されている。また、特許文献2では、複数の繊維の混率と繊維径の差により平均繊維非占有空隙が異なるシートを積層させ、肌に触れる第1層の平均繊維非占有空隙を第1層以外の層よりも大きくしたシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-042057号公報
【文献】特開平7-178133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、肌面側の細繊度繊維からなる繊維層がそれ以外の層に対して緻密な構造となるため、肌面側の繊維層に水分が残存しやすく、ドライ性を得ることが困難である。さらに、肌面側の緻密な繊維層のため透液性が低下し、水分を迅速に吸収することができず、吸水性を得ることが困難である。
【0008】
一方、特許文献2の技術では、層間で平均繊維非占有空隙に差を設けることで、毛細管作用により、第1層で吸収した水分を第2層(肌面と逆の層)に誘導することが可能であると記載されている。しかしながら、肌面層側の特許文献2が開示している平均繊維非占有空隙は繊維が占める空間を除く空間の総体積を示すため、毛細管力に重要である繊維間の空隙のサイズを示す指標ではなく、層間で差があるからといって毛細管力に差が生じることにはならない。
【0009】
さらに、表裏の毛細管力差が作用したとしても、水分が不織布面内で拡散しにくいため、吸水量の増加に伴って非肌面層の毛細管力が徐々に低下し、肌面からの水分の移行は限定的な効果となるため、ドライ性および速乾性は不十分なものである。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、衛材用不織布を用いた部材内の快適性を保つために十分な吸水性およびドライ性を有し、かつ速乾性に優れたスパンボンド不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明のスパンボンド不織布は、次の構成を有する。すなわち、
融着部と非融着部とを有し、一方の表面(A)において、融着部が他方の表面(B)に向かう凹部を形成しており、前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)の、前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)に対する比(Da/Db)が1.1以上であって、以下の条件を満たすスパンボンド不織布、である。
【0012】
(1)前記非融着部の最小内接円の直径が1.0mm以下である
(2)前記非融着部の最大内接円の直径が2.0mm以上である
(3)前記融着部が列状に連なって配置されている
(4)前記融着部におけるスパンボンド不織布の厚み(Tm)とスパンボンド不織布の厚み(T)との比(Tm/T)が、0.30以下である
(5)前記融着部の異形度が1.1以上である。
【0013】
また、本発明の衛生材料は、次の構成を有する。すなわち、
前記スパンボンド不織布で少なくとも一部が構成されてなる衛生材料、である。
【0014】
本発明のスパンボンド不織布は、前記非融着部の最大内接円の直径が10.0mm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明のスパンボンド不織布は、前記融着部が間欠的に配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明のスパンボンド不織布は、前記非融着部の最小内接円の直径が0.2mm以上であることが好ましい。
【0017】
本発明のスパンボンド不織布は、前記表面(A)および表面(B)の、水との接触角がともに30°以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の衛生材料は、おむつであることが好ましい。
【0019】
本発明のおむつである衛生材料は、前記少なくとも一部がトップシートであることが好ましい。
【0020】
本発明のおむつである衛生材料は、前記少なくとも一部がウエスト部の少なくとも一部であることが好ましい。
【0021】
本発明の衛生材料は、マスクであることが好ましい。
【0022】
本発明のマスクである衛生材料は、前記少なくとも一部がマスクの内面層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、衛材用不織布として用いるのに十分な吸水性およびドライ性を有し、かつ優れた速乾性を有するスパンボンド不織布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1-1】本発明のスパンボンド不織布の一実施態様における非融着部の最大内接円および、最小内接円の決定方法を例示する上面概念図である。
【
図1-2】本発明のスパンボンド不織布の別の実施態様における非融着部の最大内接円および、最小内接円の決定方法を例示する上面概念図である。
【
図1-3】本発明のスパンボンド不織布のさらに別の実施態様における非融着部の最大内接円および、最小内接円の決定方法を例示する上面概念図である。
【
図2】本発明のスパンボンド不織布の一実施態様における融着部が列状に連なって配置されているか決定する方法を例示する上面概念図である。
【
図3-1】本発明のスパンボンド不織布の実施例1で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【
図3-2】本発明のスパンボンド不織布の実施例2で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【
図3-3】本発明のスパンボンド不織布の実施例3で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【
図3-4】本発明のスパンボンド不織布の実施例4で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【
図4-1】本発明のスパンボンド不織布の比較例4で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【
図4-2】本発明のスパンボンド不織布の比較例5で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【
図4-3】本発明のスパンボンド不織布の比較例6で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【
図4-4】本発明のスパンボンド不織布の比較例7で使用したエンボスロールのパターン様態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のスパンボンド不織布は、融着部と非融着部とを有し、一方の表面(A)において、融着部が他方の表面(B)に向かう凹部を形成しており、前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)の、前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)に対する比(Da/Db)が1.1以上であって、以下の条件を満たす。
【0026】
(1)前記非融着部の最小内接円の直径が1.0mm以下である。
【0027】
(2)前記非融着部の最大内接円の直径が2.0mm以上である。
【0028】
(3)前記融着部が列状に連なって配置されている。
【0029】
(4)前記融着部におけるスパンボンド不織布の厚み(Tm)とスパンボンド不織布の厚み(T)との比(Tm/T)が、0.30以下である。
【0030】
(5)前記融着部の異形度が1.1以上である。
【0031】
以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
【0032】
[繊維]
まず、本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、常法の通り熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂は1種類であってもよいし、複数の熱可塑性樹脂からなるものであってもよい。
【0033】
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維に用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体;ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6-12等の脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体、エチレン単位を25モル%から70モル%含有する水不溶性のエチレン-ビニルアルコール共重合体系ポリマー、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー系ポリマー等であり、これらの中から選んで用いることができる。また、上記のポリマーにおいては、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。さらに、不織布の触感を良好にする観点から、炭素数が15以上50以下の脂肪酸アミド化合物が含有されていてもよい。さらに、汗や尿などの水分との親和性を向上する観点から、親水化剤が含有されていてもよい。
【0034】
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、単成分繊維はもとより、2種類以上の樹脂を複合した複合繊維であってもよい。上記繊維が複合繊維の場合、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではなく、芯鞘型や海島型、サイドバイサイド型、偏心芯鞘型、などから適宜選択すればよい。さらには、繊維の一部もしくは全体が一本の繊維から複数本の繊維に分割される割繊型複合繊維であってもよい。
【0035】
本発明に係る繊維の断面形状は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではなく、丸断面はもとより、三角や扁平、六角形、中空などの異形断面であっても良い。
【0036】
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、いずれも水との接触角が90°以下であることが好ましい。繊維における水との接触角は、後述する不織布表面における水との接触角とは異なる指標であり、該接触角が90°を超えれば疎水性、90°以下であれば親水性となる。繊維の水との接触角が90°以下の繊維で構成されることによって、不織布表面の水との接触角を容易に30°以下とすることができる。
【0037】
なお、本発明の繊維の水との接触角は、例えば、室温20℃、相対湿度65%の室内に24時間以上放置した不織布から取り出した繊維に対し、インクジェット方式水滴吐出部を搭載した自動接触角計を用いて極少量(15pL)の水滴を繊維表面に着液させた際の、液滴の空気界面と繊維のなす角を測定することにより求められる。
【0038】
なお、一方の表面(A)を構成する繊維と他方の表面(B)を構成する繊維とで、繊維を構成する熱可塑性樹脂や繊維断面が同一であっても、異なっていてもよい。
【0039】
[表面(A)]
本発明のスパンボンド不織布の一方の表面(A)は、前記の熱可塑性樹脂からなる繊維で構成される。
【0040】
本発明のスパンボンド不織布は、常法の通り、長繊維からなることが好ましく、前記一方の表面(A)の構成繊維が長繊維であることが好ましい。長繊維からなることにより、高い生産性と優れた力学物性を両立しやすいためである。
【0041】
本発明において前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)は、3.0~30.0μmであることが好ましい。前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)は、好ましくは3.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、さらに好ましくは10.0μm以上である。前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)を3.0μm以上とすることにより、衛生材料として使用した場合、隣接する吸水体に水分が移行しやすくなる。また、前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)は、好ましくは30.0μm以下、より好ましくは28.0μm以下、さらに好ましくは25.0μm以下である。前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)を30.0μm以下とすることにより、ソフトな風合いを得やすい。
【0042】
本発明でいう平均単繊維直径(Da)は以下のようにして求めるものである。
【0043】
まず、前記一方の表面(A)を構成する繊維の横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1本の単繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された繊維断面画像を用い、画像解析ソフトウェア(三谷商事(株)製「WinROOF2015」)を用いて、単繊維の断面輪郭が形成する面積Af(μm2)を計測し、この面積Afと同一の面積となる真円の直径を算出する。これを前記一方の表面(A)から任意に抽出した単繊維20本について測定し、単純な数平均を求め、単位をμmとして、小数点第2位を四捨五入した値を前記一方の表面(A)の繊維の平均単繊維直径(Da)とする。
【0044】
[表面(B)]
本発明のスパンボンド不織布の他方の表面(B)は、前記一方の表面(A)と同様に、前記の熱可塑性樹脂からなる繊維で構成される。
【0045】
本発明のスパンボンド不織布は、常法の通り、長繊維からなることが好ましく、前記他方の表面(B)の構成繊維が、表面(A)と同様に、長繊維であることが好ましい。長繊維からなることにより、高い生産性と優れた力学物性を両立しやすいためである。
【0046】
本発明において前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)は、1.0~25.0μmであることが好ましい。前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)は、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上、さらに好ましくは5.0μm以上である。1.0μm以上とすることにより、繊維の配置が緻密になり過ぎず、紙おむつ用材料として使用した場合、隣接する吸水体に水分が移行しやすいためである。また、前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)は、好ましくは25.0μm以下、より好ましくは20.0μm以下、さらに好ましくは16.0μm以下である。25.0μm以下とすることにより、高い毛管力を得やすく、優れた吸水性となるためである。
【0047】
[表面(A)および表面(B)の平均単繊維直径]
本発明のスパンボンド不織布において、前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)の、前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)に対する比(Da/Db、以下、単に「平均単繊維直径比」と略することがある)がは、1.1以上である。
【0048】
ここでいう平均単繊維直径比とは、前述の手法を用いて、前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)と、前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)を測定し、その比(Da/Db)を算出し、小数点第2位を四捨五入した値である。
【0049】
一般に、不織布においては、構成繊維の平均単繊維直径に応じて、繊維同士が織りなす空隙サイズが変化する。このため、平均単繊維直径が異なる層が形成した場合には繊維間空隙サイズが異なる層が形成されることとなり、水分が付着した場合には、毛管力の差により、太い繊維からなる層に吸収された水分を、細い繊維からなる層に移行させることができる。さらに、この平均単繊維直径比を特定の範囲とすることで、毛細管効果の差による吸水性向上効果のみならず、太い繊維からなる不織布層の表面にドライ性が付与されることを見出した。
【0050】
本発明において、前記平均単繊維直径比(Da/Db)は、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.4以上がさらに好ましい。平均単繊維直径比(Da/Db)を1.1以上にすることによって、上述の毛細管効果が作用し、良好な吸水性および前記一方の表面(A)におけるドライ性を得ることができる。なお、本発明における平均単繊維直径比の上限は特に制限されないが、工程安定性や生産性の観点から10.0以下が好ましい。
【0051】
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布は、融着部と非融着部を有する。ここでいう融着部とは、前記一方の表面(A)を構成する繊維と前記他方の表面(B)を構成する繊維とが融着している箇所のことであり、非融着部とはスパンボンド不織布上における融着部以外の箇所であって、かつ融着部に囲まれた箇所のことである。
【0052】
本発明において、スパンボンド不織布上のある一部分において、その箇所が融着部であるかどうか、すなわち、前記一方の表面(A)を構成する繊維と、前記他方の表面(B)を構成する繊維とが融着している箇所であるかどうかは、スパンボンド不織布の当該部分の横断面を、走査型電子顕微鏡でスパンボンド不織布の厚さ方向が視野に入る倍率として画像を観察し、任意に選んだ、前記一方の表面(A)が融着している部位について、面方向における同じ位置で前記他方の表面(B)が融着していれば、その箇所が融着部であると判断する。
【0053】
融着部においては、前記一方の表面(A)を構成する繊維と、前記他方の表面(B)を構成する繊維とが融着している箇所であるため、その周囲は繊維密度が高くなりやすい。このため、相対的に低密度である非融着部に吸収された水分は、相対的に高密度である融着部周辺へ毛管力差により導水することができ、面方向への水の移動が出来るようになる。
【0054】
さらに、融着部を特定の形態および特定の配列とすることにより、融着部を利用した面方向への水の移動をより顕著なものとし、特に優れた速乾性を発現できることを見出した。すなわち、融着部の形態および配列の制御により、ある融着部周辺に導水された水分をその他の融着部へも移動出来るようにすることで、吸水部で水が滞留することなく不織布面内に拡散するため、単純な厚み方向の水の移動のみよりも効率的にドライ性を発現しやすくし、優れた速乾性とすることができるのである。
【0055】
本発明のスパンボンド不織布では、前記非融着部の最小内接円の直径が、1.0mm以下であり、かつ、前記非融着部の最大内接円の直径が、2.0mm以上である。
【0056】
ここでいう前記非融着部に描ける最小内接円および最大内接円とは、以下のようにして求めるものである。
【0057】
図1-1~
図1-3に例示されるように、スパンボンド不織布1の表面をその上方から観察した際に、マイクロスコープで融着部11に囲まれた非融着部が観察できる10mm×10mm以上の大きさの視野を撮影する。続いて、撮影した画像を用い、画像解析ソフトウェア(三谷商事(株)製「WinROOF2015」)を用いて、非融着部12上に配置できる最小内接円13および最大内接円14の直径を測定する。これを任意に抽出した同じ表面を構成する20箇所について測定し、単純な数平均を求め、単位をmmとして、小数点第2位を四捨五入した値が本発明でいうその表面の最小内接円の直径および最大内接円の直径とする。
【0058】
前記最小内接円の直径は、値が小さいほど融着部同士が近接していることを示している。本発明のスパンボンド不織布では前記非融着部の最小内接円の直径が1.0mmを超えると、融着部付近に導水された水分がその隣の融着部付近に移動し難くなり、効率的な面内拡散が期待できない。本発明のスパンボンド不織布では前記最小内接円の直径は0.8mm以下が好ましい範囲として挙げられる。一方、前記最小内接円の直径は0.2mm以上とすることが好ましい。前記最小内接円の直径下限を上記好ましい範囲とすれば、融着部同士が過剰に近接するのを防ぎ、融着点間を水分が通り抜けやすい。
【0059】
また、前記最大内接円の直径は、値が大きいほど、融着している箇所から十分離れた箇所に低密度の部分を形成しやすいことを示している。本発明のスパンボンド不織布では前記非融着部の最大内接円の直径2.0mmに満たないと、繊維密度の粗密が明瞭化せず、融着部へ導水され難くなるとともに、高い吸水速度が期待できない。前記最大内接円の直径は3.0mm以上が好ましい。一方、前記最大内接円の直径は10.0mm以下とすることが好ましい。前記最大内接円の直径上限を上記好ましい範囲とすれば、融着部同士が過剰に離れるのを防ぎ、水分が残存し難くなる。
【0060】
また、本発明のスパンボンド不織布では、前記融着部が列状に連なって配置されている。
【0061】
本発明でいう、「列状に連なって配置される」とは、以下に示す様態であることを意味する。
【0062】
図2に例示されるように、スパンボンド不織布2の表面をその上方から観察した際に、マイクロスコープで融着部21が10個以上観察できる10mm×10mm以上の大きさの視野を撮影する。続いて、撮影した画像を用い、画像解析ソフトウェア(アメリカ国立衛生研究所「ImageJ」)を用いて、画像の二値化処理を行い、画像内に観察できるすべての融着部について、それぞれ幾何学的な重心を求める。融着部21の重心と最も重心間距離が近い融着部を融着部22と定める。続いて、融着部21を除き、融着部22と最も重心間距離が近い融着部を融着部23と定める。続いて、融着部21および融着部22を除き、融着部23と最も重心間距離が近い融着部を融着部24と定める。ここで、前記工程で定めた各融着部21~24それぞれの重心点をM21~M24とし、M21とM22を結んだ直線L12、M22とM23を結んだ直線L23、M23とM24を結んだ直線L34を引く。L12と、L23およびL34とが織りなす鋭角側の角度をそれぞれ計測し、θ1、θ2とする。このとき、θ1およびθ2がそれぞれ30°以下であるとき、本発明でいう列状に連なって配置される状態である。
【0063】
本発明のスパンボンド不織布では、融着部をこのように列状に連なって配置しない場合には、近接した融着部が直線的に配置されていることとはならず、融着部間での水の移動効率の向上は期待できず、水の面内拡散を促進することができない。
【0064】
さらに、本発明のスパンボンド不織布では、融着部が間欠的に配置されることが好ましい。
【0065】
本発明でいう、「融着部が間欠的に配置される」とは以下のような様態であることを意味する。
【0066】
まず、スパンボンド不織布2の表面をその上方から観察した際に、マイクロスコープで融着部21が10個以上観察できる10mm×10mm以上の大きさの視野を撮影する。続いて、撮影した画像を用いて、前述の方法と同様にして、M21~M25を定める。ここで、M21とM22の距離(D12)および、M22とM23の距離(D23)および、M23とM24の距離(D34)および、M24とM25の距離(D45)を、単位をmmとして計測し、小数点第2位を四捨五入する。そして、以下の式(1)~(3)をともに満たすときが、本発明でいう融着部が間欠的に配置される状態である
0.8×D12≦ D23 ≦1.2×D12 ・・・式(1)
0.8×D12≦ D34 ≦1.2×D12 ・・・式(2)
0.8×D12≦ D45 ≦1.2×D12 ・・・式(3)。
【0067】
本発明のスパンボンド不織布では、このように融着部が間欠的に配置されることにより、融着部同士の水分移動が途切れることなく、より遠くまで水分を移動できるため、好ましい。
【0068】
また、本発明のスパンボンド不織布では、融着部の異形度が1.1以上である。
【0069】
前記融着部の異形度とは以下のようにして求めるものである。
【0070】
まず、スパンボンド不織布の表面をその上方から観察した際に、マイクロスコープで融着部が3個以上観察できる倍率にて撮影する。続いて、撮影した画像を用い、画像解析ソフトウェア(前記「ImageJ」)を用いて、画像の二値化処理を行う。処理後の画像において、前記融着部に内接する最大内接円の直径および、前記融着部に外接する最小外接円の直径を、単位をmmとして計測し、最小外接円直径/最大内接円直径の値を算出する。これを任意に抽出した融着部20か所について測定し、単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入した値を本発明でいう、融着部の異形度とする。
【0071】
本発明のスパンボンド不織布は、融着部異形度が1.1に満たないと、融着部の輪郭が十分に長くならず、融着部周囲の高密度部領域が拡大しないため、水を引き込む能力を向上することができない。好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.7以上である。一方、融着部異形度を10.0以下にすることが好ましい。融着部異形度上限を上記好ましい範囲とすれば、スパンボンド不織布の触感を良好に保つことができる。
【0072】
本発明のスパンボンド不織布では、前記融着部におけるスパンボンド不織布の厚み(Tm)とスパンボンド不織布の厚み(T)との比(Tm/T)は、0.30以下である。
【0073】
本発明におけるスパンボンド不織布の厚みT(μm)は、形状測定機(例えば、(株)キーエンス製「VR3000」)で測定した、無荷重での厚みを、任意の10枚のサンプルについて、単位をμmとして測定し、単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値である。
【0074】
また、融着部の厚みTm(μm)は、以下のようにして求めるものである。
【0075】
まず、スパンボンド不織布の機械方向と直行する断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でスパンボンド不織布の厚みが観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された不織布断面画像を用いて、融着部の厚み(単位はμm)を測定する。これと同様の動作を異なる10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値が融着部の厚みTm(μm)である。
【0076】
上記操作により計測したTおよびTmを用いて、Tm/Tの値を計算し、小数点第3位を四捨五入した値を算出する。
【0077】
本発明のスパンボンド不織布では、スパンボンド不織布の厚みとスパンボンド不織布の厚みとの比(Tm/T)が0.30を超えると、融着部周囲の繊維密度を十分に高くすることができなくなるため、水を引き込む能力を向上することができない。
【0078】
融着部周囲をより高密度化し、非融着部からの導水効率を向上させる観点から、Tm/Tは0.25以下とすることが好ましく、より好ましくは0.20以下である。一方、Tm/Tは0.01以上とすることが好ましい。Tm/Tの下限を上記好ましい範囲とすれば、融着部が過剰に薄くならず、スパンボンド不織布の強度低下を防止できる。
【0079】
また、本発明のスパンボンド不織布では、融着部の面積比率が5%以上であることが好ましい。融着部の面積比率を係る範囲とすれば、融着部が十分に存在するため、非融着部に水分が残存しにくくなる。一方、前記面積比率は30%以下とすることが好ましい。前記面積比率の上限を上記好ましい範囲とすれば、不織布の触感を損ねることがない。
【0080】
さらに、本発明のスパンボンド不織布では、前記一方の表面(A)において、融着部が前記他方の表面(B)に向かう凹部を形成している。前記一方の表面(A)において、融着部が前記他方の表面(B)に向かう凹部を形成していないと、相対的に繊維径が太い繊維から構成される表面(A)の繊維間空隙サイズを拡張できず、表裏の粗密差が拡大せず、ドライ性の向上が期待できない。
【0081】
また、本発明のスパンボンド不織布は、スパンボンド不織布の前記一方の表面(A)および前記他方の表面(B)の、水との接触角がともに30°以下であることが好ましい。より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下である。前記水との接触角が上記好ましい範囲であると、スパンボンド不織布表面に接触した水が不織布に吸水されやすい。また、本発明における水との接触角の下限は0°であるが、水との接触角が0°とは、後述の測定方法においてすべての水が不織布に吸水された状態をいう。
【0082】
なお、スパンボンド不織布の表面の水との接触角は、スパンボンド不織布を構成する繊維に用いられる熱可塑性樹脂の親水性や後工程による親水性油剤付与によって制御することができる。例えば、上記熱可塑性樹脂の親水性が高いほど、また親水性油剤の付着量が多いほど、水との接触角は小さくなる傾向にある。
【0083】
本発明におけるスパンボンド不織布の表面の水との接触角は、以下の方法で測定し、算出された値を指す。
【0084】
(1)スパンボンド不織布を、室温20℃、相対湿度65%の室内に24時間以上放置する。
【0085】
(2)上記処理を施したスパンボンド不織布を、同室に設置した接触角計のステージ上に、前記一方の表面(A)が測定面となるようにセットする。
【0086】
(3)イオン交換水からなる2μLの液滴を針先に作製し、不織布に着液させる。
【0087】
(4)不織布に液滴が着液してから2秒後の画像より、液滴との接触角を求める。なお、2秒以内にすべての水が不織布に吸水された場合は、液滴の空気との界面が不織布層の表面と同一面に存在すると判断し、水との接触角を0°と定義する。
【0088】
(5)1水準につき測定位置を変更して5回測定を行い、その算術平均値を前記一方の表面(A)と水との接触角とする。
【0089】
(6)(1)と同様の処理を施したスパンボンド不織布を、前記一方の表面(A)が裏面となるようにセットし、上記(2)~(5)の操作を繰り返し行い、その算術平均値を前記他方の表面(B)と水との接触角とする。
【0090】
本発明のスパンボンド不織布は、前記一方の表面(A)で測定された吸水速度が20秒以下であることが好ましい。吸水速度を好ましくは20秒以下、より好ましくは15秒以下、さらに好ましくは10秒以下とすることにより、表面に付着した水分を取り除く性能が良好である、すなわち吸水性に優れる不織布となる。
【0091】
ここでいう吸水速度とは、JIS L 1907:2010「繊維製品の吸水性試験方法」の「7.1.1 滴下法」に基づき測定されるものである。スパンボンド不織布に水滴を1滴滴下し、吸収されて表面の鏡面反射が消失するまでの時間を測定し、これを異なる10箇所で測定した値の単純平均を算出し、単位を秒として、小数点第1位を四捨五入した値を、本発明で言う吸水速度とする。
【0092】
また、本発明のスパンボンド不織布の目付は、10~100g/m2とすることが好ましい。
【0093】
目付を好ましくは10g/m2以上、より好ましくは13g/m2以上、さらに好ましくは15g/m2以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、目付を好ましくは100g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下とすることにより、衛生材料用の不織布としての使用に適した適度な柔軟性を有するスパンボンド不織布とすることができる。
【0094】
なお、本発明におけるスパンボンド不織布の目付(g/m2)とは、JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値から算出する1m2当たりの質量を指すこととする。
【0095】
本発明のスパンボンド不織布は、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じてスパンボンド不織布の層(S)とメルトブロー不織布の層(M)とを積層して配置することができる。これらの積層配置の例としては、SMS、SMMS、SSMMS、およびSMSMSなどのような態様が挙げられる。これらの場合は、積層した不織布の一方の表面をスパンボンド不織布の表面(A)、もう一方の表面を、表面(B)とみなす。
【0096】
なお、本発明のスパンボンド不織布は、吸水性をより高くすることを目的として、親水化剤を付与しても良い。親水化剤の種類としては、界面活性剤などが挙げられるが、中でも非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0097】
[スパンボンド不織布の製造方法]
次に、本発明のスパンボンド不織布を製造する好ましい態様を、具体的に説明する。
【0098】
本発明のスパンボンド不織布は、原料である熱可塑性樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化して得られた糸条に対し、エジェクターで牽引し延伸して、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブ化した後、熱融着する工程を要する、スパンボンド法によって製造される。
【0099】
用いられる紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。中でも、圧縮エアの使用量が比較的少なく、糸条同士の融着や擦過が起こりにくいという観点から、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせを用いることが好ましい態様である。
【0100】
本発明における、紡糸温度は、(原料である熱可塑性樹脂の融解温度+10℃)以上(原料である熱可塑性樹脂の融解温度+100℃)以下とすることが好ましい。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0101】
紡出された糸条は、次に冷却されるが、紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
【0102】
次に、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
【0103】
本発明のスパンボンド不織布では、前記一方の表面(A)および前記他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径の制御が重要となる。
【0104】
繊維の平均単繊維直径は、紡糸口金の吐出孔当たりの吐出量と牽引速度、すなわち紡糸速度によって決定される。このため、所望の平均単繊維直径に応じて、吐出量と紡糸速度を決定することが好ましい。
【0105】
紡糸速度においては、2,000m/分以上であることが好ましく、より好ましくは3,000m/分以上である。紡糸速度を2,000m/分以上とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み高い強度の長繊維を得ることができる。
【0106】
このように牽引により延伸された長繊維糸条は、移動するネットに捕集されることでシート化された後に、熱融着する工程に供される。
【0107】
本発明のスパンボンド不織布は、構成繊維の繊維径の異なる前記一方の表面(A)と前記他方の表面(B)を有する。このようなスパンボンド不織布を得る方法としては、例えば、前記一方の表面(A)用の紡糸口金から、前記のとおり捕集ネット上に捕集して得た繊維ウェブの上に、捕集ネットの下流側に配された、前記他方の表面(B)用の紡糸口金から、繊維ウェブを堆積させ、これらを一気に熱融着させて、固定する方法などを採用することができる。2つの不織布層を積層する方法としては、例えば、上記のとおり捕集ネット上にスパンボンド法により第1の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層の上に、スパンボンド法により第2の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層をインラインで連続的に捕集し、積層一体化する方法、別々に得た前記一方の表面(A)および前記他方の表面(B)を構成する不織ウェブをオフラインで重ね合わせ、熱圧着などにより積層一体化する方法などを採用することができる。中でも生産性に優れているということから、捕集ネット上にスパンボンド法により前記一方の表面(A)を構成する熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織ウェブの上に、スパンボンド法により前記他方の表面(B)を構成する熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織ウェブをインラインで連続的に捕集、熱接着により積層一体化する方法が好ましい様態である。
【0108】
本発明のスパンボンド不織布を熱接着により積層一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱接着する方法や、ホーンの超音波振動により熱溶着させる超音波接着などの熱圧着による方法を採用することができる。
【0109】
中でも、エンボスロールで熱融着することにより本発明のスパンボンド不織布を製造した場合には、エンボスロールの凸部に対応する位置で、前記一方の表面(A)と前記他方の表面(B)を構成する繊維を、ともに融着させやすいため好ましい。また、エンボスロールの凸部の位置や形状を設計することによって、融着部の配置、形状を容易に制御できる点でも、好ましい態様である。
【0110】
本発明のスパンボンド不織布を、エンボスロールによる熱圧着にて製造する場合には、ロール間でスパンボンドが受ける線圧を50N/cm以上とすることで、融着部の周囲を十分に緻密化できるため、好ましい。より好ましくは、100N/cmである。
【0111】
また、融着部を十分に接着させ、緻密化できる観点から、エンボスロールの表面温度は、(原料である熱可塑性樹脂の融解温度-80℃)以上(原料である熱可塑性樹脂の融解温度-10℃)以下とすることが好ましい。
【0112】
さらに、本発明のスパンボンド不織布においては、前記一方の表面(A)側を彫刻が施された熱エンボスロール、前記他方の表面(B)側をフラットロールとして加工することが好ましい。
【0113】
このようにして得られたスパンボンド不織布に対し、巻取り前に親水化剤を付与しても良い。スパンボンド不織布への親水化剤の付与方法としては、キスロールやスプレーによる塗布やディップコーティングなどが挙げられるが、均一性や付着量制御の容易さからキスロールによる塗布が好ましい。
【実施例】
【0114】
次に、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前述の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0115】
(1)目付
目付は、JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に基づき測定した。
【0116】
(2)前記一方の表面(A)の平均単繊維直径(Da)に対する前記他方の表面(B)の平均単繊維直径(Db)の比(Da/Db)
それぞれの繊維について、ネット上に捕集した不織繊維ウェブからランダムに繊維サンプル採取し、繊維の横断面を(株)日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「S-5500」で1本の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。その後、画像解析ソフトウェアとして、前記「WinROOF2015」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0117】
(3)融着部の有無
作製したスパンボンド不織布の表面(A)側を、(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープ「VHX-6000」で15mm×15mmの視野範囲について画像を撮影し、前述の通り測定を行った。
【0118】
(4)非融着部の最大内接円の直径および最大内接円の直径
作製したスパンボンド不織布の表面(A)側を、前記デジタルマイクロスコープ「VHX-6000」で15mm×15mmの視野範囲について画像を撮影した。その後、画像解析ソフトウェアとして、前記「WinROOF2015」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0119】
(5)融着部の異形度
作製したスパンボンド不織布の前記一方の表面(A)側を、前記デジタルマイクロスコープ「VHX-6000」で融着部が4箇所観察できる倍率として画像を撮影した。その後、画像解析ソフトウェアとして、前記「WinROOF2015」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0120】
(6)スパンボンド不織布の厚みに対する融着部の厚み比率(Tm/T)
スパンボンド不織布の厚みについては、(株)キーエンス製の3D形状測定機「VR-3050」を用い、前述の通り測定を行った。
【0121】
作製したスパンボンド不織布の横断面を、繊維の横断面を(株)日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「S-5500」で1本の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。その後、画像解析ソフトウェアとして、前記「WinROOF2015」を用い、前述のとおり融着部の厚み測定を行った。
【0122】
(7)スパンボンド不織布の水との接触角
協和界面科学(株)製の接触角計「DMo-501」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0123】
(8)ドライ性
作製したスパンボンド不織布について、以下の測定を行った。
手順1:スパンボンド不織布から、5cm×5cmのサンプルを切り出す。
手順2:JIS P 3801の2種に準拠したろ紙を5cm×5cmに切り出したものを1回の測定につき2枚用意し、それぞれ質量を測定する。
手順3:ポリプロピレン製のフィルムの上に、生理食塩水0.250±0.005mLを滴下する。この際、滴下する生理食塩水の質量を測定しておく。
手順4:滴下した生理食塩水の上から、前記一方の表面(A)を下向きにしてスパンボンド不織布を乗せ、1分間保持する。
手順5:前記手順4の保持後にスパンボンド不織布を前記ポリプロピレン製のフィルムから外し、前記ろ紙の1枚目の上に前記一方の表面(A)を上向きにして乗せ、さらにその上から前記ろ紙の2枚目を速やかに乗せる。
手順6:前記2枚目のろ紙の上から圧力が5g/cm2となるように125gの重りをのせ、1分間保持する。
手順7:前記手順6の保持後に重りを外し、各ろ紙の質量を測定し、それぞれのろ紙の質量増加分を算出する。
手順8:下記式から、前記スパンボンド不織布におけるそれぞれの表面の配水比率を算出する。
配水比率(%)=100×W1/W0
ここに、
W0:上記手順3において滴下した生理食塩水の質量(g)
W1:上記手順7において表面(A)に当てたろ紙の質量増加分(g)。
以上の動作を異なる10サンプルについて実施し、単純な数平均を算出し、小数点第1位で四捨五入した値を、配水比率とした。
得られた配水比率をもとに、次の4段階で評価した。
【0124】
4:配水比率20%未満
3:配水比率20%以上、30%未満
2:配水比率30%以上、40%未満
1:配水比率40%以上。
【0125】
(9)速乾性
作製したスパンボンド不織布を、前記一方の表面(A)を上にしてポリプロピレン製のフィルムの上におき、その上から0.1ccの水滴を1滴滴下し、30秒間経過した後の表面の触感について健康な一般成人(男女15名ずつ計30名)が手で触り、次の3段階で評価した。各不織布について評価結果の平均点を算出し、そのスパンボンド不織布の肌触りとした。
【0126】
5:表面がサラサラしており、水分を感じない
3:表面に水分はないが、しっとりしている
1:表面に水分があり、しっとりしている。
【0127】
[実施例1]
(一方の表面(A)を形成する繊維ウェブ)
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、孔径φが0.4mmの丸孔を有した矩形口金から、単孔吐出量が0.8g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.08MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られた一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径は20.4μmであった。
【0128】
(他方の表面(B)を形成する繊維ウェブ)
ポリプロピレンを押出機で溶融し、孔径が0.4mmφの丸孔を有した矩形口金から、単孔吐出量が0.3g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷風にて冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.12MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネット上で、一方の表面(A)を形成する繊維ウェブ上に捕集した。得られた他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径は10.6μmであった。
【0129】
(スパンボンド不織布)
このようにして得た積層繊維ウェブを、上ロールには、
図3-1のパターン1に示すように、長方形の凸部が形成する直線配列が直交して配置される格子柄の金属製エンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の加熱機構を有するエンボスロールを用いて、上ロール側を一方の表面(A)を形成する繊維ウェブ、下ロール側を他方の表面(B)を形成する繊維ウェブとし、線圧が200N/cmで、熱融着温度が130℃の温度で熱融着し、目付が40g/m
2のスパンボンド不織布を得た。
【0130】
その後、親水加工として非イオン性界面活性剤をスパンボンド不織布重量に対して有効成分が0.5wt%となるよう、キスロールを用いて不織布に塗布した。
【0131】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表1に示す。
【0132】
[実施例2]
上ロールに、
図3-2のパターン2に示すように、長方形の凸部が斜めに並んで形成する直線配列が直行して配置される格子柄のパターンの金属製エンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0133】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表1に示す。
【0134】
[実施例3]
上ロールに、
図3-3のパターン3に示すように、長方形の凸部が形成する直線配列が平行して配置されており、一部の間隔が広くなっているパターンの金属製エンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0135】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表1に示す。
【0136】
[実施例4]
上ロールに、
図3-4のパターン4に示すように、長方形の凸部が形成する直線配列が直交して配置されており、直線を形成する凸部間の距離がパターン1よりも近い格子柄のパターンの金属製エンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0137】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表1に示す。
【0138】
[実施例5]
親水加工として非イオン性界面活性剤をスパンボンド不織布重量に対して有効成分が0.3wt%となるよう、他方の表面(B)にのみスプレーを用いて不織布に塗布した以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0139】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表1に示す。
【0140】
[比較例1]
エンボスロールを用いた熱融着の代わりに、得られた繊維ウェブを150℃の熱風で加熱して熱融着した以外は実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0141】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0142】
[比較例2]
一方の表面(A)を構成する繊維ウェブと他方の表面(B)を構成する繊維、繊維ウェブのいずれも、単孔吐出量0.6g/分として紡出し、矩形エジェクターにおけるエジェクターでの圧力を0.10MPaとした以外は実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0143】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0144】
[比較例3]
上ロール側を他方の表面(B)を形成する繊維ウェブ、下ロール側を一方の表面(A)を形成する繊維ウェブとして熱接着した以外は実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0145】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0146】
[比較例4]
上ロールに、
図4-1のパターン5に示すように、長方形の凸部が形成する直線配列が直交して配置されており、直線を形成する凸部間の距離がパターン1よりも離れている格子柄のパターンの金属製エンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0147】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0148】
[比較例5]
上ロールに、
図4-2のパターン6に示すように、長方形の凸部が形成する直線配列が、2mmの間隔で平行して配置されている金属製エンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0149】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0150】
[比較例6]
上ロールに、
図4-3のパターン7に示すように、4つの長方形の凸部が形成する配列がMDおよびCDの両方向に同じピッチで配置された金属製エンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0151】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0152】
[比較例7]
上ロールに、
図4-4のパターン8に示すように、凸部の形状を正円形とした以外はパターン1と同様の配列とした金属製エンボスロールを用いた以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0153】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0154】
[比較例8]
エンボスロールを用いて、線圧が10N/cmで熱融着した以外は、実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0155】
得られたスパンボンド不織布の評価結果を表2に示す。
【0156】
【0157】
【0158】
実施例1~5は、平均単繊維直径比(Da/Db)が大きく、一方の表面(A)の繊維と他方の表面(B)の繊維がともに融着している場所を有しており、かつ、融着部が特定の形状および配列に制御されているため、優れたドライ性と、優れた速乾性を有していることが分かる。
【0159】
一方、比較例1は、一方の表面(A)の繊維と他方の表面(B)の繊維がともに融着している場所を有していないため、面内への水の移動を生じにくく、ドライ性および速乾性が劣っている。また、比較例2は、平均単繊維直径比が小さいため不織布内で水分が他方の表面(B)側に移行されず、ドライ性および速乾性に劣る。比較例3は、融着部が表面(B)側から一方の表面(A)側に形成されることにより他方の表面(B)側の繊維間空隙サイズが拡張したため、不織布内で水分が他方の表面(B)側に移行されにくく、ドライ性および速乾性に劣るものであった。
【0160】
比較例4は、非融着部の最小内接円の直径が大きいため、融着部間での水移動が弱く、面内での水の拡散が生じにくいため、速乾性に劣る。また、比較例5は、最大内接円直径が小さいため、非融着部に水が残留しやすく、速乾性に劣る。比較例6は、融着部が直線的につながっていないため、面内での水拡散ができず、速乾性に劣る。また、比較例7は、融着部の異形度が小さいため、融着部での融着部間での水移動が弱く、面内での水の拡散が生じにくいため、速乾性に劣るものであった。
【0161】
また、比較例8では、融着部周囲の繊維密度が大きくなり、非融着部からの導水が行われず、面内での水拡散が行われないため、速乾性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明のスパンボンド不織布は、衛生材料として好適に用いることができる。本発明の衛生材料は、優れた吸水性、ドライ性および速乾性が得られるものである。なお、本発明の衛生材料は、医療・介護など健康に関わる目的で使用される、主に使い捨ての物品であり、紙おむつ、生理用ナプキン、ガーゼ、包帯、マスク、手袋、絆創膏等が挙げられ、その構成部材、例えば、紙おむつのトップシート、バックシート、サイドギャザー等も含まれる。中でも、以下の態様が好適な態様として挙げられる。
【0163】
第1の好適な実施態様としては、トップシートが前記のスパンボンド不織布で構成されてなる、おむつである。特に前記のスパンボンド不織布を、前記一方の表面(A)がおむつのトップシートの肌面側として設置されるように用いた場合には、排泄された尿を素早く吸収し、前記他方の表面(B)に迅速に液が移行されるため、スパンボンド不織布の表面をドライに保つことができる。
【0164】
第2の好適な実施態様としては、ウエスト部の一部が前記スパンボンド不織布で構成されてなる、おむつである。特に前記のスパンボンド不織布を、前記一方の表面(A)がおむつのトップシートウエスト部の肌面側として設置されるように用いた場合には、汗を素早く吸収し、前記他方の表面(B)に迅速に液が移行されるため、スパンボンド不織布の表面をドライに保つことができる。
【0165】
第3の好適な実施態様としては、内面層が前記のスパンボンド不織布で構成されてなる、マスクである。本発明でいう内面層とは、口を覆う面体のうち、最も口側に設置される層のことを指す。前記のスパンボンド不織布を、前記一方の表面(A)が肌面側として設置されるように用いた場合には、汗や呼気が結露し、肌面側に水分が付着しても、スパンボンド不織布内部にすぐに吸収され、肌面をドライに保つことができるため、着用した際の不快感がなく、好ましい使用用途として挙げられる。
【符号の説明】
【0166】
1:スパンボンド不織布
11:融着部
12:非融着部
13:非融着部の最小内接円
14:非融着部の最大内接円
21~24:近接する融着部
M1~M4:融着部21~24それぞれの幾何学的重心点
L12:M1とM2を結んだ線分
L23:M2とM3を結んだ線分
L34:M3とM4を結んだ線分
【要約】
融着部と非融着部とを有し、一方の表面(A)において、融着部が他方の表面(B)に向かう凹部を形成しており、前記一方の表面(A)を構成する繊維の平均単繊維直径(Da)の、他方の表面(B)を構成する繊維の平均単繊維直径(Db)に対する比(Da/Db)が1.1以上であって、以下の条件を満たすスパンボンド不織布。
(1)前記非融着部の最小内接円の直径が1.0mm以下である
(2)前記非融着部の最大内接円の直径が2.0mm以上である
(3)前記融着部が列状に連なって配置されている
(4)前記融着部におけるスパンボンド不織布の厚み(Tm)とスパンボンド不織布の厚み(T)との比(Tm/T)が、0.30以下である
(5)前記融着部の異形度が1.1以上である。
衛材用不織布を用いた部材内の快適性を保つために十分な吸水性およびドライ性を有し、かつ優れた速乾性を有するスパンボンド不織布を提供する。