(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】エレベーターの非常連絡システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/14 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
B66B5/14
(21)【出願番号】P 2022550094
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2020035102
(87)【国際公開番号】W WO2022059096
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長徳 典宏
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 研二
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓弥
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-83691(JP,A)
【文献】特開2007-331849(JP,A)
【文献】特開2011-126613(JP,A)
【文献】特許第6597949(JP,B1)
【文献】特許第6747626(JP,B1)
【文献】国際公開第2020/65764(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/14 B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を昇降するかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、
前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記かごが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記通信部が前記利用情報を受信してから予め設定された時間が経過するまでの間に前記かごが非常停止する場合に、前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
エレベーターの非常連絡システム。
【請求項2】
前記かごに乗車している利用者を検出する検出部
を備え、
前記制御部は、非常停止するかごに乗車している利用者を前記検出部が検出する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
請求項1に記載のエレベーターの非常連絡システム。
【請求項3】
昇降路を昇降するかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、
前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記かごが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、
前記かごに乗車している利用者を検出する検出部と、
を備え
、
前記制御部は、非常停止するかごに乗車している利用者を前記検出部が検出する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
エレベーターの非常連絡システム。
【請求項4】
昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、
前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記通信部が前記携帯端末から受信した前記利用情報に基づいて登録された呼びに応答するかごを前記利用者が乗車しているかごとして特定し、当該かごが非常停止する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
エレベーターの非常連絡システム。
【請求項5】
昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、
前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、
を備え
、
前記1つ以上の発信機は、前記複数のかごのいずれかに設けられるかご発信機を含み、
前記制御部は、前記利用情報が前記かご発信機の前記識別情報を含む場合に前記識別情報に基づいて前記利用者が乗車しているかごを特定し、当該かごが非常停止する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
エレベーターの非常連絡システム。
【請求項6】
昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、
前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、
を備え
、
前記1つ以上の発信機は、前記エレベーターの乗場に設けられる乗場発信機を含み、
前記制御部は、前記利用情報が前記乗場発信機の前記識別情報を含む場合に、前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記乗場が設けられる階床から出発したかごを前記利用者が乗車しているかごとして特定し、当該かごが非常停止する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
エレベーターの非常連絡システム。
【請求項7】
昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、
前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記通信部が前記利用情報を受信してから予め設定された時間が経過するまでの間に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
エレベーターの非常連絡システム。
【請求項8】
前記複数のかごの各々に乗車している利用者を検出する検出部
を備え、
前記制御部は、非常停止するかごに乗車している利用者を前記検出部が検出する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載のエレベーターの非常連絡システム。
【請求項9】
昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、
前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、
前記複数のかごの各々に乗車している利用者を検出する検出部と、
を備え
、
前記制御部は、非常停止するかごに乗車している利用者を前記検出部が検出する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える
エレベーターの非常連絡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの非常連絡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターシステムの例を開示する。エレベーターシステムは、緊急停止時に無線信号を発信する無線信号装置をかご内に備える。エレベーターシステムは、無線信号によって、利用者が所持している携帯端末の非常通報用のアプリケーションソフトウェアを起動させる。携帯端末は、当該アプリケーションソフトウェアによって、監視センターに接続する。携帯端末は、当該アプリケーションソフトウェアによって、利用者が閉じ込め状態にあることを監視センターに通報する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のエレベーターシステムの非常通報において、利用者と双方向で連絡を取ることができる監視センターのオペレーターは介在しない。このため、利用者は、自身の置かれた状況が監視センターにどのように伝わっているかを知ることができない。このとき、利用者は、不安を感じる場合がある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、エレベーターの非常時において利用者の不安感を低減しうる非常連絡システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターの非常連絡システムは、昇降路を昇降するかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報をエレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、携帯端末が1つ以上の発信機のいずれかから識別情報を受信するときに携帯端末から送信され識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、通信部が利用情報を受信した後にかごが非常停止する場合に、携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で設定情報に基づいて切り替える制御部と、を備え、前記制御部は、前記通信部が前記利用情報を受信してから予め設定された時間が経過するまでの間に前記かごが非常停止する場合に、前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える。
本開示に係るエレベーターの非常連絡システムは、昇降路を昇降するかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記かごが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、前記かごに乗車している利用者を検出する検出部と、を備え、前記制御部は、非常停止するかごに乗車している利用者を前記検出部が検出する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える。
【0007】
本開示に係るエレベーターの非常連絡システムは、昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報をエレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、携帯端末が1つ以上の発信機のいずれかから識別情報を受信するときに携帯端末から送信され識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、通信部が利用情報を受信した後に複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で設定情報に基づいて切り替える制御部と、を備え、前記制御部は、前記通信部が前記携帯端末から受信した前記利用情報に基づいて登録された呼びに応答するかごを前記利用者が乗車しているかごとして特定し、当該かごが非常停止する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える。
本開示に係るエレベーターの非常連絡システムは、昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、を備え、前記1つ以上の発信機は、前記複数のかごのいずれかに設けられるかご発信機を含み、前記制御部は、前記利用情報が前記かご発信機の前記識別情報を含む場合に前記識別情報に基づいて前記利用者が乗車しているかごを特定し、当該かごが非常停止する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える。
本開示に係るエレベーターの非常連絡システムは、昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、を備え、前記1つ以上の発信機は、前記エレベーターの乗場に設けられる乗場発信機を含み、前記制御部は、前記利用情報が前記乗場発信機の前記識別情報を含む場合に、前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記乗場が設けられる階床から出発したかごを前記利用者が乗車しているかごとして特定し、当該かごが非常停止する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える。
本開示に係るエレベーターの非常連絡システムは、昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、を備え、前記制御部は、前記通信部が前記利用情報を受信してから予め設定された時間が経過するまでの間に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える。
本開示に係るエレベーターの非常連絡システムは、昇降路を昇降する複数のかごを有するエレベーターに設けられ、各々を識別する識別情報を前記エレベーターの利用者が携帯する携帯端末に無線信号によって各々が発信する1つ以上の発信機と、前記携帯端末が前記1つ以上の発信機のいずれかから前記識別情報を受信するときに前記携帯端末から送信され前記識別情報および音声通話の可否を表す設定情報を含む利用情報を受信する通信部と、前記通信部が前記利用情報を受信した後に前記複数のかごのいずれかが非常停止する場合に、前記携帯端末との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で前記設定情報に基づいて切り替える制御部と、前記複数のかごの各々に乗車している利用者を検出する検出部と、を備え、前記制御部は、非常停止するかごに乗車している利用者を前記検出部が検出する場合に前記携帯端末との非常連絡の方法を前記設定情報に基づいて切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る非常連絡システムによれば、エレベーターの非常時において利用者の不安感を低減しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るエレベーターの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係るかご操作盤の正面図である。
【
図3】実施の形態1に係る非常連絡システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る携帯端末における表示の例である。
【
図5】実施の形態1に係る携帯端末における表示の例である。
【
図6】実施の形態1に係る非常連絡システムの動作の例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係る非常連絡システムの動作の例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る非常連絡システムの主要部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーター1の構成図である。
【0012】
エレベーター1は、例えば複数の階床を有する建物2に適用される。建物2において、エレベーター1の昇降路3が設けられる。昇降路3は、複数の階床にわたる鉛直方向に長い空間である。建物2の各々の階床において、昇降路3に隣接する乗場4が設けられる。
【0013】
エレベーター1の利用者Pは、出発階の乗場4から目的階の乗場4までの移動にエレベーター1を利用する。この例において、利用者Pは、携帯端末5を携帯している。携帯端末5は、無線通信を行う可搬な端末装置である。携帯端末5は、例えばスマートフォンなどの情報端末などである。携帯端末5は、無線信号を発信する機器から当該無線信号を受信する機能を搭載する。また、携帯端末5は、ネットワーク6を通じて他の装置などとの間で通信する機能を搭載する。ネットワーク6は、例えばインターネットまたは電話回線網などの通信網である。携帯端末5において、エレベーター1と連携する連携アプリケーションがインストールされている。連携アプリケーションは、例えばネットワーク6を通じて利用者Pが予めソフトウェアをダウンロードすることなどによって携帯端末5にインストールされる。連携アプリケーションは、例えばエレベーター1の呼びの登録についての機能などを搭載する。
【0014】
エレベーター1において、非常連絡システム7が適用される。非常連絡システム7は、エレベーター1の非常時における非常連絡の通信および制御などの処理を行うシステムである。エレベーター1の非常時は、例えば地震などの災害またはエレベーター1の故障などによってエレベーター1に非常停止が発生した場合などを含む。非常連絡は、例えば非常停止が発生したエレベーター1の利用者Pおよび当該エレベーター1の監視センター8のオペレーターQの間の双方向の連絡である。監視センター8は、エレベーター1の状態を監視する拠点である。監視センター8は、例えばエレベーター1が適用される建物2の外部の拠点である。非常連絡の方法は、例えば音声通話による音声連絡、または視覚情報によるメッセージ連絡などが利用者Pに応じて切り替えて行われる。視覚情報によるメッセージ連絡は、例えば文字情報によるチャットなどを含む。
【0015】
非常連絡システム7は、サーバ装置9を備える。サーバ装置9は、例えば監視センター8に配置される。サーバ装置9は、例えば1つまたは複数のハードウェアによって構成されていてもよい。サーバ装置9は、利用者PおよびオペレーターQの間の非常連絡の制御などを行う装置である。サーバ装置9は、非常連絡の他の機能を搭載していてもよい。この例において、サーバ装置9は、呼びの登録などのエレベーター1と連携する機能を搭載する。
【0016】
エレベーター1は、遠隔監視装置10を備える。遠隔監視装置10は、エレベーター1の状態を監視する装置である。遠隔監視装置10は、例えばエレベーター1が適用される建物2に配置される。遠隔監視装置10は、エレベーター1の状態の情報などを通信しうるように、ネットワーク6を通じて監視センター8のサーバ装置9などに接続される。
【0017】
エレベーター1は、少なくとも1つ以上のユニット11を備える。この例において、エレベーター1は、複数のユニット11を備える。各々のユニット11は、複数の乗場ドア12と、巻上機13と、主ロープ14と、かご15と、釣合い錘16と、制御盤17と、を備える。
【0018】
各々の乗場ドア12は、いずれかの階床の乗場4に配置される。各々の乗場ドア12は、乗場4および昇降路3を区画するドアである。
【0019】
巻上機13は、駆動力を発生させるモーター、およびモーターが発生させる駆動力によって回転するシーブを備える。巻上機13は、例えば昇降路3の上部または下部などに配置される。あるいは、エレベーター1において例えば昇降路3の上方などに機械室が設けられる場合に、巻上機13は機械室に配置されてもよい。
【0020】
主ロープ14は、昇降路3においてかご15および釣合い錘16の荷重を支持するロープである。主ロープ14は、巻上機13のシーブに巻きかけられる。主ロープ14は、巻上機13のシーブの一方側においてかご15の荷重を支持する。主ロープ14は、巻上機13のシーブの他方側において釣合い錘16の荷重を支持する。
【0021】
かご15は、昇降路3を鉛直方向に走行することでエレベーター1の利用者Pを複数の階床の間で輸送する機器である。かご15は、かごドア18と、ドアセンサー19と、かごカメラ20と、かご操作盤21と、を備える。かごドア18は、かご15がいずれかの階床に停止しているときに利用者Pが乗降しうるように、当該階床の乗場4に配置された乗場ドア12を連動させて開閉する機器である。ドアセンサー19は、開いているかごドア18のドアパネルの開閉方向にある物体などを検出する機器である。ドアセンサー19は、例えばかごドア18のドアパネルの端部に設けられる。かごカメラ20は、かご15の内部を撮影する装置である。かご操作盤21は、かご15に乗車している利用者Pの操作を受け付ける部分である。
【0022】
釣合い錘16は、巻上機13のシーブの両側にかかる荷重の釣合いをかご15との間でとる機器である。かご15および釣合い錘16は、巻上機13のモーターが発生させる駆動力によって昇降路3を互いに反対方向に走行する。
【0023】
制御盤17は、当該制御盤17を備えるユニット11の動作を制御する部分である。ユニット11の動作は、例えばかご15の昇降およびかごドア18の開閉を含む。制御盤17は、エレベーター1の状態としてユニット11の状態を通信しうるように、例えば遠隔監視装置10に接続される。ユニット11の状態は、かご15の位置、かごドア18の開閉状態、ドアセンサー19による物体の検出の有無、かごカメラ20が撮影する画像、およびかご操作盤21が受け付けた操作などを含む。制御盤17は、例えば昇降路3の上部または下部などに配置される。あるいは、エレベーター1において機械室が設けられる場合に、制御盤17は機械室に配置されてもよい。
【0024】
この例において、エレベーター1は、群管理装置22を備える。群管理装置22は、複数のユニット11の間で呼びへの応答などの運行状況を管理する装置である。群管理装置22は、エレベーター1の状態を通信しうるように、例えば遠隔監視装置10に接続される。群管理装置22は、各々のユニット11の制御盤17から取得する当該ユニット11の状態を遠隔監視装置10に中継してもよい。この場合に、各々のユニット11の制御盤17は遠隔監視装置10に直接接続されていなくてもよい。
【0025】
非常連絡システム7は、少なくとも1つ以上の発信機23を備える。この例において、エレベーター1は、複数の発信機23を備える。各々の発信機23は、利用者Pが携帯する携帯端末5との間で無線通信を行う装置である。各々の発信機23は、例えば無線ビーコン装置である。各々の発信機23について、識別情報が付与されている。識別情報は、各々の発信機23を識別するID(IDentification)などの情報である。各々の発信機23は、無線信号によって識別情報を発信する。この例において、各々の階床の乗場4に1つの発信機23が配置される。また、各々のユニット11のかご15に1つの発信機23が配置される。
【0026】
図2は、実施の形態1に係るかご操作盤21の正面図である。
【0027】
かご操作盤21は、行先階操作部24と、開閉操作部25と、非常連絡操作部26と、インターホン27と、インジケーター28と、を備える。行先階操作部24は、行先階を指定したかご呼びの操作を受け付ける部分である。行先階操作部24は、例えば各々の階床に対応する複数のボタンを有する。開閉操作部25は、かごドア18の開閉の操作を受け付ける部分である。開閉操作部25は、例えばかごドア18の戸開および戸閉に対応する2つのボタンを有する。非常連絡操作部26は、非常時において利用者PおよびオペレーターQの間の非常連絡の開始の操作を受け付ける部分である。非常連絡操作部26は、例えば非常連絡ボタンを有する。インターホン27は、音声連絡によって非常連絡が行われる場合に、かご15の内部の利用者Pからの音声の収音およびオペレーターQからの音声のかご15の内部への発音などを行う部分である。インジケーター28は、かご15に乗車している利用者Pに情報を表示する部分である。インジケーター28に表示される情報は、例えばかご15の走行方向およびかご15の現在位置に対応する階床などを含む。
【0028】
図3は、実施の形態1に係る非常連絡システム7の構成を示す機能ブロック図である。
図3において、携帯端末5およびサーバ装置9の構成の例が示される。
【0029】
サーバ装置9は、通信部29と、検出部30と、登録部31と、制御部32と、を備える。通信部29は、サーバ装置9の外部の機器などとの間で情報の通信を行う部分である。検出部30は、各々のユニット11においてかご15に乗車している利用者Pを検出する部分である。検出部30は、例えばかごカメラ20が撮影する画像などに基づいてかご15に乗車している利用者Pを検出する。登録部31は、エレベーター1に呼びを登録させる部分である。制御部32は、エレベーター1の非常連絡などの制御を行う部分である。制御部32が行う非常連絡の制御は、例えば非常連絡の方法の切り替えを含む。非常連絡の方法は、例えば音声連絡およびメッセージ連絡の間で切り替えられる。
【0030】
非常連絡システム7においてメッセージ連絡によって非常連絡が行われる場合に、利用者PおよびオペレーターQの間の非常連絡は、当該利用者Pが携帯する携帯端末5を通じて行われる。このとき、制御部32は、当該携帯端末5との非常連絡についてのネットワーク6を通じた通信を通信部29に行わせる。
【0031】
携帯端末5は、無線通信部33と、記憶部34と、表示部35と、入力部36と、を備える。無線通信部33は、携帯端末5の外部の機器などとの間で無線通信を行う部分である。記憶部34は、携帯端末5において情報を記憶する部分である。記憶部34において、例えば携帯端末5を携帯する利用者Pの特定情報、および当該利用者Pの設定情報などが記憶される。特定情報は、利用者Pを特定するIDなどの情報である。あるいは、特定情報は、利用者Pに携帯される携帯端末5を送信先とする通信の宛先情報などであってもよい。宛先情報は、例えば電話番号またはネットワーク6上のアドレス情報などである。設定情報は、利用者Pによって設定されたエレベーター1の利用に関する情報などである。設定情報は、例えば音声通話の可否の情報を含む。あるいは、設定情報は、利用者Pの属性を表す属性情報であってもよい。例えば利用者Pの属性として「聴覚障がい者」などの属性が設定されているときに、属性情報によって当該利用者Pの音声通話の可否が表されてもよい。設定情報は、利用者Pの行先階の情報を含んでいてもよい。表示部35は、携帯端末5を携帯する利用者Pに情報を表示する部分である。表示部35は、例えばディスプレイである。メッセージ連絡によって非常連絡が行われる場合に、オペレーターQから利用者Pへのメッセージは、例えば表示部35に表示される。入力部36は、携帯端末5を携帯する利用者Pの操作を受け付ける部分である。入力部36は、例えばボタンまたはタッチパネルなどである。メッセージ連絡によって非常連絡が行われる場合に、利用者PからオペレーターQへのメッセージは、携帯端末5の入力部36を通じて入力される。
【0032】
図4および
図5は、実施の形態1に係る携帯端末5における表示の例である。
【0033】
図4において、設定情報を設定する表示の例が示される。利用者Pは、
図4の設定画面において、チェックボックス37のチェックの有無を切り替えることによって、設定情報における音声通話の可否を切り替える。あるいは、設定画面は、利用者Pの属性を選択するインターフェイスを含む画面であってもよい。
【0034】
図5において、メッセージ連絡による非常連絡の表示の例が示される。利用者Pは、
図5の連絡画面に示されるように、例えば文字情報によって非常連絡を行う。連絡画面において、例えばオペレーターQおよび利用者Pの双方からのメッセージが表示される。各々のメッセージについて、送信時刻および既読情報などが表示されてもよい。
【0035】
続いて、
図6および
図7を用いて、非常連絡システム7の動作の例を説明する。
図6および
図7は、実施の形態1に係る非常連絡システム7の動作の例を示すフローチャートである。
図6および
図7において、連携アプリケーションによる携帯端末5の動作、サーバ装置9の動作、および建物2におけるエレベーター1の動作の例が示される。
【0036】
図6において、呼びの登録に係る非常連絡システム7の動作の例が示される。
【0037】
図6における呼びの登録の処理は、例えば携帯端末5を携帯する利用者Pがエレベーター1を利用するために出発階の乗場4まで移動することなどによって開始する。この例において、出発階の乗場4に設けられた発信機23の無線通信の通信範囲は、当該乗場4を含む。このため、利用者Pが乗場4に到着するときに、携帯端末5は当該発信機23から無線信号を受信しうる状態になる。
【0038】
ステップS10において、携帯端末5は、無線通信部33がいずれかの発信機23から無線信号によって識別情報を受信したかを判定する。判定結果がNoの場合に、携帯端末5の動作は、ステップS10に進む。一方、判定結果がYesの場合に、携帯端末5の動作は、ステップS11に進む。
【0039】
ステップS11において、携帯端末5は、サーバ装置9に利用情報を送信する。利用情報は、利用者Pのエレベーター1の利用に関する情報である。利用情報は、例えば無線通信部33が発信機23から受信した識別情報、ならびに記憶部34が記憶している特定情報および設定情報を含む。この例において、利用情報は、利用者Pが出発階の乗場4に到着するときに当該乗場4に設けられた発信機23から携帯端末5が受信した識別情報を含む。また、利用情報は、設定情報として利用者Pの音声通話の可否を表す情報を含む。利用情報は、設定情報として利用者Pの行先階の情報を含んでいてもよい。利用情報を送信した後に、呼びの登録に係る携帯端末5の動作は終了する。
【0040】
ステップS20において、サーバ装置9の制御部32は、通信部29が携帯端末5からネットワーク6を通じて利用情報を受信したかを判定する。判定結果がNoの場合に、サーバ装置9の動作は、ステップS20に進む。一方、判定結果がYesの場合に、サーバ装置9の動作は、ステップS21に進む。
【0041】
ステップS21において、制御部32は、通信部29が受信した利用情報に含まれる識別情報に基づいて、利用者Pが利用するエレベーター1を特定する。制御部32は、例えば識別情報によって識別される発信機23が設けられたエレベーター1を、利用者Pが利用するエレベーター1として特定する。その後、サーバ装置9の動作は、ステップS22に進む。
【0042】
ステップS22において、登録部31は、呼び登録要求を生成する。呼び登録要求は、例えば出発階および行先階の情報を含む。登録部31は、例えば利用情報に含まれる識別情報によって識別される発信機23が設けられる乗場4の階床を呼びの出発階とする。登録部31は、例えば利用情報に設定情報として含まれる行先階の情報に基づいて呼びの行先階を設定する。ここで、設定情報に行先階の情報が含まれない場合などに、呼び登録要求は、行先階の情報を含まなくてもよい。このとき、利用者Pの行先階は、例えば利用者Pがかご15に乗車したときにかご操作盤21において指定される。登録部31は、生成した呼び登録要求をエレベーター1の遠隔監視装置10に通信部29を通じて送信する。呼び登録要求を送信した後に、呼びの登録に係るサーバ装置9の動作は終了する。
【0043】
ステップS30において、エレベーター1の遠隔監視装置10は、サーバ装置9からネットワーク6を通じて呼び登録要求を受信したかを判定する。判定結果がNoの場合に、エレベーター1の動作は、ステップS30に進む。一方、判定結果がYesの場合に、エレベーター1の動作は、ステップS31に進む。
【0044】
ステップS31において、エレベーター1の群管理装置22は、遠隔監視装置10が受信した呼び登録要求に基づく呼びをいずれかのユニット11に割り当てる。群管理装置22は、例えばエレベーター1の利用率などの運行状況に応じて呼びの割当てを行う。群管理装置22は、呼びを割り当てたユニット11の制御盤17に当該呼びを登録する。群管理装置22は、呼びを割り当てたユニット11をサーバ装置9に通知してもよい。その後、エレベーター1の動作は、ステップS32に進む。
【0045】
ステップS32において、呼びが割り当てられた制御盤17は、割り当てられた呼びに応答する。制御盤17は、かご15を走行させて出発階に停止させる。制御盤17は、出発階においてかご15のかごドア18を戸開させる。利用者Pが出発階の乗場4からかご15に乗車した後に、制御盤17は、かご15のかごドア18を戸閉させる。制御盤17は、かご15を走行させて行先階に停止させる。制御盤17は、行先階においてかご15のかごドア18を戸開させる。利用者Pがかご15から行先階の乗場4に降車した後に、制御盤17は、かご15のかごドア18を戸閉させる。その後、呼びの登録に係るエレベーター1の動作は終了する。
【0046】
図7において、非常連絡に係る非常連絡システム7の動作の例が示される。
【0047】
図7における非常連絡の処理は、例えば非常停止が発生したエレベーター1の遠隔監視装置10からサーバ装置9の通信部29が通報を受けることなどによって開始する。遠隔監視装置10からの通報は、例えばいずれかのユニット11の制御盤17などにおいて非常停止が発生するときに行われる。あるいは、遠隔監視装置10からの通報は、例えば非常停止したかご15に乗車している利用者Pが非常連絡操作部26を操作するときに行われてもよい。また、非常連絡の処理は、エレベーター1が設けられる地域における地震発生の情報などに基づいて、遠隔監視装置10からの通報によらずに開始されてもよい。このとき、地震などによって非常停止が発生した可能性があるエレベーター1についても、非常停止が実際に発生したエレベーター1と同様に非常連絡の処理が行われてもよい。
【0048】
ステップS25において、サーバ装置9の制御部32は、利用者Pが乗車しているかご15を特定する。制御部32は、例えば携帯端末5からの利用情報に基づく呼び登録要求によって呼びを割り当てたユニット11が群管理装置22から通知される場合に、当該携帯端末5を携帯する利用者Pが乗車しているかご15として当該ユニット11のかご15を特定する。制御部32は、利用者Pが乗車しているとして特定したかご15が非常停止したかを判定する。判定結果がNoの場合に、非常連絡に係るサーバ装置9の動作は終了する。一方、判定結果がYesの場合に、サーバ装置9の動作は、ステップS26に進む。
【0049】
ステップS26において、制御部32は、非常停止したかご15に乗車している利用者Pは音声通話が可であるかを判定する。制御部32は、例えば非常停止したかご15のユニット11に呼び登録要求によって呼びが割り当てられた場合に、当該呼び登録要求に対応する利用情報の設定情報に基づいて音声通話の可否の判定を行う。利用者Pは音声通話が不可であると制御部32が判定する場合に、サーバ装置9の動作は、ステップS27に進む。一方、利用者Pは音声通話が可であると制御部32が判定する場合に、サーバ装置9の動作は、ステップS28に進む。
【0050】
ステップS27において、制御部32は、利用者Pとの非常連絡の方法をメッセージ連絡に切り替える。制御部32は、非常連絡に応答するオペレーターQにメッセージ連絡の開始を通知する。制御部32は、非常連絡を行う利用者Pの携帯端末5にメッセージ連絡の開始を通知する。制御部32は、メッセージ連絡によって非常連絡を行う携帯端末5の宛先の情報を、例えば利用情報に含まれる特定情報などに基づいて特定する。利用者Pとの間の非常連絡が終了した後に、サーバ装置9の動作は終了する。
【0051】
ステップS28において、制御部32は、利用者Pとの非常連絡の方法を音声連絡に切り替える。制御部32は、非常連絡に応答するオペレーターQに音声連絡の開始を通知する。制御部32は、閉じ込めが発生したかご15を備えるユニット11に音声連絡の開始を通知する。非常連絡は、例えば利用者Pが閉じ込めから救出された後に終了する。利用者PおよびオペレーターQの間の非常連絡が終了した後に、サーバ装置9の動作は終了する。
【0052】
ステップS15において、携帯端末5は、サーバ装置9からネットワーク6を通じてメッセージ連絡の開始が通知されたかを判定する。判定結果がNoの場合に、非常連絡に係る携帯端末5の動作は終了する。一方、判定結果がYesの場合に、携帯端末5の動作は、ステップS16に進む。
【0053】
ステップS16において、携帯端末5は、ネットワーク6を通じてメッセージ連絡による非常連絡を行う。携帯端末5の入力部36は、利用者Pによる利用者P自身の置かれた状況の入力を受けつける。携帯端末5の表示部35は、オペレーターQからの応答を表示する。利用者PおよびオペレーターQの間のメッセージ連絡による非常連絡が終了した後に、携帯端末5の動作は終了する。
【0054】
ステップS35において、エレベーター1の各々のユニット11の制御盤17は、サーバ装置9から音声連絡の開始が通知されたかを判定する。判定結果がNoの場合に、非常連絡に係るエレベーター1の動作は終了する。一方、判定結果がYesの場合に、エレベーター1の動作は、ステップS36に進む。
【0055】
ステップS36において、音声連絡の開始の通知を受けたユニット11の制御盤17は、かご15のインターホン27によって音声連絡による非常連絡を行う。利用者PおよびオペレーターQの間の音声連絡による非常連絡が終了した後に、エレベーター1の動作は終了する。
【0056】
以上に説明したように、実施の形態1に係る非常連絡システム7は、1つ以上の発信機23と、通信部29と、制御部32と、を備える。エレベーター1は、1つ以上のかご15を有する。各々のかご15は、昇降路3を昇降する。携帯端末5は、エレベーター1の利用者Pに携帯される。各々の発信機23は、エレベーター1に設けられる。各々の発信機23は、識別情報を携帯端末5に無線信号によって発信する。識別情報は、各々の発信機23を識別する情報である。携帯端末5は、いずれかの発信機23から識別情報を受信するときに利用情報を送信する。通信部29は、携帯端末5から送信される利用情報を受信する。利用情報は、携帯端末5が受信した識別情報、および音声通話の可否を表す設定情報を含む。制御部32は、通信部29が利用情報を受信した後にいずれかのかご15が非常停止する場合に、携帯端末5との双方向の非常連絡の方法を音声連絡および視覚情報によるメッセージ連絡の間で設定情報に基づいて切り替える。
【0057】
このような構成により、利用者Pの設定情報に基づいて非常連絡の方法が音声連絡またはメッセージ連絡の間で自動的に切り替えられる。非常連絡の方法をオペレーターQが速やかに把握できるため、利用者Pは、双方向の非常連絡によって自身の置かれた状況をオペレーターQに速やかに伝えることができる。利用者Pは、音声通話が困難な場合においても、オペレーターQを介在して双方向の非常連絡を行うことができるため、エレベーター1の状況のみならず、自身または同乗者の緊急度などの状況をオペレーターQに伝えられる。これにより、エレベーター1の非常時においても利用者Pの不安感が低減されうる。
【0058】
また、制御部32は、通信部29が携帯端末5から受信した利用情報に基づいて登録された呼びに応答するかご15を、当該携帯端末5を携帯する利用者Pが乗車しているかご15として特定する。制御部32は、当該かご15が非常停止する場合に当該携帯端末5との非常連絡の方法を設定情報に基づいて切り替える。なお、制御部32は、当該かご15が非常停止しない場合に、当該携帯端末5との非常連絡の方法の切り替えを保留してもよい。
【0059】
利用者Pは連携アプリケーションなどによって登録された呼びが割り当てられたかご15に乗車している可能性が高いので、利用者Pが乗車しているかご15の特定の精度が高くなる。これにより、非常連絡を要する利用者Pが精度よく特定される。利用者Pはより確実に非常連絡ができるようになるので、利用者Pの不安感がより低減される。
【0060】
なお、制御部32は、利用者Pが乗車しているかご15として特定したかご15が当該利用者Pの出発階から行先階まで走行している間に非常停止するときに、非常連絡の方法を切り替えてもよい。制御部32は、利用者Pが乗車しているかご15として特定したかご15が当該利用者Pの出発階に到着する前、または当該利用者Pの行先階に到着した後に非常停止するときに、非常連絡の方法の切り替えを保留してもよい。これにより、利用者Pがかご15に実際に乗車しているか否かがより精度よく判定される。
【0061】
また、1つ以上の発信機23は、いずれかのかご15に設けられる発信機23を含む。当該発信機23は、かご発信機の例である。このとき、制御部32は、利用情報がかご発信機の識別情報を含む場合に、当該識別情報に基づいて利用者Pが乗車しているかご15を特定してもよい。制御部32は、当該かご15が非常停止する場合に当該携帯端末5との非常連絡の方法を設定情報に基づいて切り替える。なお、制御部32は、当該かご15が非常停止しない場合に、当該携帯端末5との非常連絡の方法の切り替えを保留してもよい。
【0062】
かご15に設けられたかご発信機の無線通信の通信範囲は、当該かご15の内部を含む。このため、利用者Pがかご15に乗車しているときに、当該利用者Pの携帯端末5はかご発信機から無線信号を受信しうる状態になる。かご発信機の識別情報を受信した携帯端末5を携帯する利用者Pは、かご発信機が設けられたかご15に乗車している可能性が高い。これにより、利用者Pが実際に乗車しているかご15の特定の精度が高くなる。例えば利用者Pの呼びが割り当てられたかご15と違うかご15に利用者Pが乗車した場合においても、実際に利用者Pが乗車しているかご15が特定される。
【0063】
また、連携アプリケーションは、エレベーター1の呼びの登録についての機能を搭載していなくてもよい。連携アプリケーションは、例えばエレベーター1が設けられる建物2の設備などと連携するアプリケーションであってもよい。あるいは、連携アプリケーションは、例えばエレベーター1が設けられる建物2において提供されるサービスなどと連携するアプリケーションであってもよい。
【0064】
また、1つ以上の発信機23は、エレベーター1の乗場4に設けられる発信機23を含む。当該発信機23は、乗場発信機の例である。このとき、制御部32は、利用情報が乗場4の乗場発信機識別情報を含む場合に、通信部29が利用情報を受信した後に当該乗場4が設けられる階床から出発したかご15を利用者Pが乗車しているかご15として特定してもよい。制御部32は、当該かご15が非常停止する場合に当該携帯端末5との非常連絡の方法を設定情報に基づいて切り替える。なお、制御部32は、当該かご15が非常停止しない場合に、当該携帯端末5との非常連絡の方法の切り替えを保留してもよい。
【0065】
乗場4に到着した利用者Pは、その後に当該乗場4の階床から出発するかご15に乗車する可能性が高い。これにより、利用者Pが実際に乗車しているかご15の特定の精度が高くなる。例えば連携アプリケーションなどによって呼びの登録が行われていない場合においても、利用者Pが乗車しているかご15が特定される。また、制御部32は、特定したかご15が出発した後に、乗場発信機の識別情報を含む利用情報などに基づいて当該利用者Pが出発階にまだ滞在していると判定するときに、利用者Pが乗車しているかご15の特定を取り消してもよい。かご15の混雑などによって利用者Pが乗車を見送った場合などにおいても、利用者Pが実際に乗車するかご15の特定の精度が高くなる。
【0066】
また、制御部32は、通信部29が携帯端末5から利用情報を受信してから予め設定された時間が経過するまでの間にいずれかのかご15が非常停止する場合に、当該携帯端末5との非常連絡の方法を設定情報に基づいて切り替えてもよい。このとき、制御部32は、利用者Pが乗車しているかご15を特定しなくてもよい。また、制御部32は、通信部29が携帯端末5から利用情報を受信してから予め設定された時間が経過した後にいずれかのかご15が非常停止する場合に、当該携帯端末5との非常連絡の方法の切り替えを保留してもよい。
【0067】
通信部29が利用情報を受信してから予め設定された時間が経過する前に非常停止が発生する場合に、当該利用情報に対応する利用者Pは非常停止したかご15に乗車している可能性がある。このため、制御部32は、例えば通信部29が受信してから予め設定された時間が経過する前の利用情報について音声通話の可否の判定を予め行うことで、利用者Pが非常連絡操作部26を操作した場合などに非常連絡を速やかに開始できる。
【0068】
また、非常連絡システム7は、検出部30を備える。検出部30は、各々のかご15に乗車している利用者Pを検出する。制御部32は、非常停止するかご15に乗車している利用者Pを検出部30が検出する場合に、当該利用者Pの携帯端末5との非常連絡の方法を設定情報に基づいて切り替えてもよい。また、制御部32は、非常停止するかご15に乗車している利用者Pを検出部30が検出しない場合に、当該利用者Pの携帯端末5との非常連絡の方法の切り替えを保留してもよい。
【0069】
このような構成により、検出部30によってかご15に実際に利用者Pが乗車していることが確認されるので、無用な非常連絡を行うことが抑制される。
【0070】
なお、非常連絡システム7において、発信機23は、乗場4にのみ配置されてもよい。いずれかの階床において、発信機23が配置されていなくてもよい。あるいは、発信機23は、かご15にのみ配置されていてもよい。いずれかのユニット11のかご15において、発信機23が配置されていなくてもよい。
【0071】
また、登録部31は、呼びを割り当てるユニット11を指定した呼び登録要求を生成してもよい。登録部31は、例えば設定情報などに基づいて指定するユニット11を選択する。このとき、制御部32は、登録部31において指定されたユニット11のかご15を、利用者Pが乗車するかご15として特定してもよい。
【0072】
また、発信機23は、携帯端末5からの無線信号を受信する機能を搭載していてもよい。このとき、発信機23は、携帯端末5と、サーバ装置9またはエレベーター1との間の通信を中継してもよい。
【0073】
通信部29、検出部30、登録部31、および制御部32などの非常連絡システム7におけるサーバ装置9の機能の一部または全部は、エレベーター1が設けられる建物2に配置されるハードウェアに搭載されていてもよい。当該機能の一部または全部は、各々のユニット11の制御盤17、群管理装置22、または遠隔監視装置10などに搭載されていてもよい。利用者Pは、例えばエレベーター1が適用される建物2の管理室などに駐在している管理人との間で非常連絡を行ってもよい。
【0074】
また、エレベーター1は、1つのみのユニット11を備えていてもよい。このとき、エレベーター1は、群管理装置を備えていなくてもよい。
【0075】
続いて、
図8を用いて、非常連絡システム7のハードウェア構成の例について説明する。
図8は、実施の形態1に係る非常連絡システム7の主要部のハードウェア構成図である。
【0076】
非常連絡システム7の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0077】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、非常連絡システム7の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、非常連絡システム7の各機能を実現する。
【0078】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0079】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0080】
非常連絡システム7の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、非常連絡システム7の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。非常連絡システム7の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで非常連絡システム7の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示に係る非常連絡システムは、エレベーターに適用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 エレベーター、 2 建物、 3 昇降路、 4 乗場、 5 携帯端末、 6 ネットワーク、 7 非常連絡システム、 8 監視センター、 9 サーバ装置、 10 遠隔監視装置、 11 ユニット、 12 乗場ドア、 13 巻上機、 14 主ロープ、 15 かご、 16 釣合い錘、 17 制御盤、 18 かごドア、 19 ドアセンサー、 20 かごカメラ、 21 かご操作盤、 22 群管理装置、 23 発信機、 24 行先階操作部、 25 開閉操作部、 26 非常連絡操作部、 27 インターホン、 28 インジケーター、 29 通信部、 30 検出部、 31 登録部、 32 制御部、 33 無線通信部、 34 記憶部、 35 表示部、 36 入力部、 37 チェックボックス、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア、 P 利用者、 Q オペレーター