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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】エレベーターの故障診断装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022558778
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040929
(87)【国際公開番号】W WO2022091376
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 史郎
(72)【発明者】
【氏名】志賀 諭
(72)【発明者】
【氏名】長徳 典宏
(72)【発明者】
【氏名】遠山 泰弘
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-96247(JP,A)
【文献】特表2019-503002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの装置に取り付けられた検出器が検出した複数の検出値の情報を前記装置ごとに取得し、前記複数の検出値と構造モデルとを用いて対象の前記装置における前記構造モデルの構造パラメータを演算する構造モデル部と、
時間モデルと前記構造モデル部で演算された前記構造パラメータとを用いて、前記対象の装置における前記時間モデルの時間パラメータを演算する時間モデル部と、
前記時間モデル部で演算された前記時間パラメータを用いて、前記時間パラメータに対応する前記対象の装置の閾値を作成する閾値作成部と、
前記構造モデル部で演算された前記構造パラメータおよび前記時間モデル部で演算された前記時間パラメータのうちいずれか一方と前記閾値作成部で作成された前記閾値とを用いて、前記対象の装置が故障する予兆があるかを診断する予兆診断部と、
を備え
前記構造モデル部は、複数の第1検出値を入力することで第2検出値の推定値を出力する前記構造モデルに対して、前記検出器で検出された前記複数の検出値のうちの複数の第1検出値と前記検出器で検出された前記複数の検出値のうちの第2検出値とを用いた回帰分析を行うことで、前記対象の装置における前記構造モデルの前記構造パラメータを演算するエレベーターの故障診断装置。
【請求項2】
前記構造モデル部は、前記構造モデルと前記装置が動き始めてから停止するまでの間に前記検出器が検出した前記複数の検出値とを用いて前記構造モデルの前記構造パラメータを演算する請求項1に記載のエレベーターの故障診断装置。
【請求項3】
前記構造モデル部は、前記複数の第1検出値と前記第2検出値との間における前記装置の機械的な特性および電気的な特性のうち少なくとも一方が反映された前記時間モデルを用いる請求項1または請求項2に記載のエレベーターの故障診断装置。
【請求項4】
前記構造モデル部は、前記構造モデルと前記検出器で異なる検出日時に検出された前記複数の検出値とを用いて複数の前記構造パラメータを演算し、
前記時間モデル部は、基準日時から検出日時までの間の経過時間を入力することで当該検出日時に対応する構造パラメータの推定値を出力する時間モデルに対して、前記構造モデル部で演算された前記複数の構造パラメータと前記複数の構造パラメータに対応する複数の検出日時とを用いた回帰分析を行うことで、前記時間モデルの前記時間パラメータを演算する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターの故障診断装置。
【請求項5】
エレベーターの装置に取り付けられた検出器が検出した複数の検出値の情報を前記装置ごとに取得し、前記複数の検出値と構造モデルとを用いて対象の前記装置における前記構造モデルの構造パラメータを演算する構造モデル部と、
時間モデルと前記構造モデル部で演算された前記構造パラメータとを用いて、前記対象の装置における前記時間モデルの時間パラメータを演算する時間モデル部と、
前記時間モデル部で演算された前記時間パラメータを用いて、前記時間パラメータに対応する前記対象の装置の閾値を作成する閾値作成部と、
前記構造モデル部で演算された前記構造パラメータおよび前記時間モデル部で演算された前記時間パラメータのうちいずれか一方と前記閾値作成部で作成された前記閾値とを用いて、前記対象の装置が故障する予兆があるかを診断する予兆診断部と、
を備え、
前記構造モデル部は、前記構造モデルと前記検出器で異なる検出日時に検出された前記複数の検出値とを用いて複数の前記構造パラメータを演算し、
前記時間モデル部は、基準日時から検出日時までの間の経過時間を入力することで当該検出日時に対応する構造パラメータの推定値を出力する時間モデルに対して、前記構造モデル部で演算された前記複数の構造パラメータと前記複数の構造パラメータに対応する複数の検出日時とを用いた回帰分析を行うことで、前記時間モデルの前記時間パラメータを演算するエレベーターの故障診断装置。
【請求項6】
前記時間モデル部は、前記構造パラメータが季節の変化によって周期的に変化する特性が反映された前記時間モデルを用いる請求項4または請求項5に記載のエレベーターの故障診断装置。
【請求項7】
前記時間モデル部は、前記構造パラメータが時間の経過によって単調に変化する特性が反映された前記時間モデルを用いる請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のエレベーターの故障診断装置。
【請求項8】
前記構造モデル部は、前記構造モデルと前記検出器で異なる検出日時に検出された前記複数の検出値とを用いて複数の前記構造パラメータを演算し、
前記閾値作成部は、前記構造モデル部で作成された前記複数の構造パラメータの情報と前記時間モデル部で作成された前記時間パラメータの情報とを取得し、前記時間パラメータが適用された前記時間モデルに対して前記複数の構造パラメータの値がどれだけばらついているかを表すばらつき値を演算し、前記時間モデルと前記ばらつき値とを用いて前記構造パラメータの前記閾値を作成する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエレベーターの故障診断装置。
【請求項9】
エレベーターの装置に取り付けられた検出器が検出した複数の検出値の情報を前記装置ごとに取得し、前記複数の検出値と構造モデルとを用いて対象の前記装置における前記構造モデルの構造パラメータを演算する構造モデル部と、
時間モデルと前記構造モデル部で演算された前記構造パラメータとを用いて、前記対象の装置における前記時間モデルの時間パラメータを演算する時間モデル部と、
前記時間モデル部で演算された前記時間パラメータを用いて、前記時間パラメータに対応する前記対象の装置の閾値を作成する閾値作成部と、
前記構造モデル部で演算された前記構造パラメータおよび前記時間モデル部で演算された前記時間パラメータのうちいずれか一方と前記閾値作成部で作成された前記閾値とを用いて、前記対象の装置が故障する予兆があるかを診断する予兆診断部と、
を備え、
前記構造モデル部は、前記構造モデルと前記検出器で異なる検出日時に検出された前記複数の検出値とを用いて複数の前記構造パラメータを演算し、
前記閾値作成部は、前記構造モデル部で作成された前記複数の構造パラメータの情報と前記時間モデル部で作成された前記時間パラメータの情報とを取得し、前記時間パラメータが適用された前記時間モデルに対して前記複数の構造パラメータの値がどれだけばらついているかを表すばらつき値を演算し、前記時間モデルと前記ばらつき値とを用いて前記構造パラメータの前記閾値を作成するエレベーターの故障診断装置。
【請求項10】
前記予兆診断部は、前記構造モデル部が作成した前記構造パラメータの値と前記閾値作成部が作成した前記構造パラメータの前記閾値とを比較することで、前記対象の装置が故障する予兆を診断する請求項8または請求項9に記載のエレベーターの故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターの故障診断装置を開示する。当該故障診断装置は、診断対象の装置の状態量が過去の状態量の分布からどれだけ逸脱しているかに基づいて、当該装置が故障する予兆があるかを診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2019-008354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の故障診断装置は、複数の装置に共通する計算モデルを用いて当該装置が故障の予兆があるかを診断する。このため、装置が故障する予兆を診断する精度が低下する。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、装置が故障する予兆を検出する精度を向上することができるエレベーターの故障診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターの故障診断装置は、エレベーターの装置に取り付けられた検出器が検出した複数の検出値の情報を装置ごとに取得し、複数の検出値と構造モデルとを用いて対象の装置における構造モデルの構造パラメータを演算する構造モデル部と、時間モデルと構造モデル部で演算された構造パラメータとを用いて、対象の装置における時間モデルの時間パラメータを演算する時間モデル部と、時間モデル部で演算された時間パラメータを用いて、時間パラメータに対応する対象の装置の閾値を作成する閾値作成部と、構造モデル部で演算された構造パラメータおよび時間モデル部で演算された時間パラメータのうちいずれか一方と閾値作成部で作成された閾値とを用いて、対象の装置が故障する予兆があるかを診断する予兆診断部と、を備え、構造モデル部は、複数の第1検出値を入力することで第2検出値の推定値を出力する構造モデルに対して、検出器で検出された複数の検出値のうちの複数の第1検出値と検出器で検出された複数の検出値のうちの第2検出値とを用いた回帰分析を行うことで、対象の装置における構造モデルの構造パラメータを演算する
また、本開示に係るエレベーターの故障診断装置は、エレベーターの装置に取り付けられた検出器が検出した複数の検出値の情報を装置ごとに取得し、複数の検出値と構造モデルとを用いて対象の装置における構造モデルの構造パラメータを演算する構造モデル部と、時間モデルと構造モデル部で演算された構造パラメータとを用いて、対象の装置における時間モデルの時間パラメータを演算する時間モデル部と、時間モデル部で演算された時間パラメータを用いて、時間パラメータに対応する対象の装置の閾値を作成する閾値作成部と、構造モデル部で演算された構造パラメータおよび時間モデル部で演算された時間パラメータのうちいずれか一方と閾値作成部で作成された閾値とを用いて、対象の装置が故障する予兆があるかを診断する予兆診断部と、を備え、構造モデル部は、構造モデルと検出器で異なる検出日時に検出された複数の検出値とを用いて複数の構造パラメータを演算し、時間モデル部は、基準日時から検出日時までの間の経過時間を入力することで当該検出日時に対応する構造パラメータの推定値を出力する時間モデルに対して、構造モデル部で演算された複数の構造パラメータと複数の構造パラメータに対応する複数の検出日時とを用いた回帰分析を行うことで、時間モデルの時間パラメータを演算する。
また、本開示に係るエレベーターの故障診断装置は、エレベーターの装置に取り付けられた検出器が検出した複数の検出値の情報を装置ごとに取得し、複数の検出値と構造モデルとを用いて対象の装置における構造モデルの構造パラメータを演算する構造モデル部と、時間モデルと構造モデル部で演算された構造パラメータとを用いて、対象の装置における時間モデルの時間パラメータを演算する時間モデル部と、時間モデル部で演算された時間パラメータを用いて、時間パラメータに対応する対象の装置の閾値を作成する閾値作成部と、構造モデル部で演算された構造パラメータおよび時間モデル部で演算された時間パラメータのうちいずれか一方と閾値作成部で作成された閾値とを用いて、対象の装置が故障する予兆があるかを診断する予兆診断部と、を備え、構造モデル部は、構造モデルと検出器で異なる検出日時に検出された複数の検出値とを用いて複数の構造パラメータを演算し、閾値作成部は、構造モデル部で作成された複数の構造パラメータの情報と時間モデル部で作成された時間パラメータの情報とを取得し、時間パラメータが適用された時間モデルに対して複数の構造パラメータの値がどれだけばらついているかを表すばらつき値を演算し、時間モデルとばらつき値とを用いて構造パラメータの閾値を作成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、予兆診断部は、対象の装置における時間モデルの時間パラメータに対応する閾値関数を用いて、対象の装置が故障する予兆があるかを診断する。このため、装置が故障する予兆を診断する精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における故障診断装置が適用されるエレベーターシステムと診断システムとの概要を表す図である。
図2】実施の形態1における故障診断装置のブロック図である。
図3】実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出された速度指令値の時間差分の値の起動ごとの推移を表すグラフである。
図4】実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出された速度偏差の値の起動ごとの推移を表すグラフである。
図5】実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出された補正トルクの値の起動ごとの推移を表すグラフである。
図6】実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出されたq軸電流の値の起動ごとの推移を表すグラフである。
図7】実施の形態1における故障診断装置が記憶する時間モデルの例を表すグラフである。
図8】実施の形態1における故障診断装置が作成する閾値の例を表すグラフである。
図9】実施の形態1における故障診断装置が行う予兆診断の動作を説明するためのフローチャートである。
図10】実施の形態1における故障診断装置が作成する閾値の変形例を表すグラフである。
図11】実施の形態1における故障診断装置のハードウェア構成図である。
図12】実施の形態2における故障診断装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における故障診断装置が適用されるエレベーターシステムと診断システムとの概要を表す図である。
【0011】
図1に示されるように、複数のエレベーターシステム1は、複数の建築物2の各々に設けられる。例えば、複数のエレベーターシステム1の各々は、同様の構成を備える。
【0012】
エレベーターシステム1において、昇降路3は、建築物2の各階を貫く。機械室4は、昇降路3の直上に設けられる。複数の乗場5の各々は、建築物2の各階に設けられる。複数の乗場5の各々は、昇降路3に対向する。複数の乗場ドア6は、複数の乗場5の各々の出入口に設けられる。駆動装置7は、機械室4に設けられる。
【0013】
主ロープ8は、駆動装置7に巻き掛けられる。かご9は、昇降路3の内部に設けられる。かご9は、主ロープ8の一側に吊るされる。釣合おもり10は、昇降路3の内部に設けられる。釣合おもり10は、主ロープ8の他側に吊るされる。
【0014】
複数の検出器11は、駆動装置7に取り付けられる。
【0015】
制御装置12は、機械室4に設けられる。制御装置12は、エレベーターを全体的に制御し得るように設けられる。
【0016】
監視装置13は、機械室4に設けられる。監視装置13は、制御装置12からの情報に基づいてエレベーターの状態を監視し得るように設けられる。
【0017】
複数の検出器11は、駆動装置7の運転に関する複数の検出値を検出する。制御装置12は、複数の検出器11からの複数の検出値に基づいて、駆動装置7を回転させる。主ロープ8は、駆動装置7の回転に追従して移動する。かご9と釣合おもり10とは、主ロープ8の移動に追従して昇降路3の内部を互いに反対方向に昇降する。利用者は、乗場ドア6を通って、かご9と乗場5との間を移動する。
【0018】
情報センター100は、エレベーターシステム1が設けられた建築物2から離れた場所に設けられる。例えば、情報センター100は、エレベーターの保守会社に設けられる。
【0019】
診断システム50は、情報センター100に設けられる。診断システム50は、データ記憶装置20と表示装置21とデータ収集装置22と故障診断装置30とを備える。
【0020】
データ記憶装置20は、情報を記憶する。
【0021】
例えば、表示装置21は、表示画面を備える。表示画面は、情報を表示する。
【0022】
データ収集装置22は、複数の監視装置13の各々から複数の検出値の情報を収集する。当該複数の検出値は、複数の駆動装置7ごとに検出された値である。当該複数の検出値の各々は、起動ごとに検出された値である。起動は、駆動装置7が回転の運動を始めてから停止するまでの間の動作である。データ収集装置22は、複数の検出値の情報をデータ記憶装置20に記憶させる。
【0023】
故障診断装置30は、データ記憶装置20の複数の検出値の情報を用いて予兆診断を行う。故障診断装置30は、予兆診断において、当該駆動装置が故障する予兆が検出されるか否かを診断する。故障診断装置30は、予兆診断の結果である診断情報を作成する。故障診断装置30は、診断情報を表示装置21に表示させる。
【0024】
次に、図2を用いて、故障診断装置30を説明する。
図2は実施の形態1における故障診断装置のブロック図である。
【0025】
図2に示されるように、故障診断装置30は、データ取得部31と構造モデル部32と時間モデル部33と閾値作成部34と予兆診断部35とを備える。
【0026】
データ取得部31は、データ記憶装置20から複数の検出値の情報を取得する。
【0027】
構造モデル部32は、構造モデルの情報を記憶する。構造モデルは、駆動装置7の検出値を推定するモデルである。例えば、構造モデルは、数式で表される。
【0028】
構造モデルにおいて、入力は、説明変数としての複数の第1検出値である。構造モデルにおいて、出力は、目的変数としての第2検出値の推定値である。複数の第1検出値は、複数の検出値の中から選択されたいくつかの検出値である。第2検出値は、複数の第1検出値以外の複数の検出値の中から選択された1つの検出値である。構造モデルは、駆動装置7における複数の第1検出値と第2検出値との間の特性を基に構築される。具体的には、当該特性は、機械的な特性、電気的な特性、制御上の特性、等である。
【0029】
構造モデル部32は、データ取得部31から複数の第1検出値と第2検出値との情報を取得する。構造モデル部32は、複数の第1検出値と第2検出値とを構造モデルの数式に代入して回帰分析を行う。当該回帰分析によって、構造モデル部32は、対象の駆動装置7に関して、1回の起動に対応する複数の種類の構造パラメータを演算する。構造モデル部32は、当該複数の種類の構造パラメータを1組の構造パラメータの情報として記憶する。1組の構造パラメータの情報は、検出日時の情報を含む。検出日時は、構造パラメータの導出に用いられた複数の検出値が検出された日時である。
【0030】
時間モデル部33は、複数の時間モデルの情報を記憶する。複数の時間モデルは、複数の種類の構造パラメータの各々に対応する。時間モデルは、当該種類の構造パラメータの値を推定するモデルである。例えば、時間モデルは、数式で表される。
【0031】
時間モデルにおいて、入力は、説明変数としての経過時間の値である。経過時間は、基準日時から検出日時までの時間である。基準日時は、あらかじめ任意に設定される。時間モデルにおいて、出力は、目的変数としてのある種類の構造パラメータである。
【0032】
時間モデル部33は、構造モデル部32から同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータの情報を取得する。時間モデル部33は、当該種類の複数の構造パラメータと複数の検出日時とを時間モデルの数式に代入して回帰分析を行う。時間モデル部33は、当該回帰分析において、当該種類の構造パラメータに対応する1組の時間パラメータを演算する。1組の時間パラメータは、複数の種類の時間パラメータを含む。
【0033】
閾値作成部34は、時間モデル部33が記憶する複数の時間モデルと同じ複数の時間モデルの情報を記憶する。
【0034】
閾値作成部34は、時間モデル部33から同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータの情報と1組の時間パラメータの情報とを取得する。閾値作成部34は、時間パラメータを時間モデルの数式に代入する。閾値作成部34は、時間モデルと同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータとを用いてばらつき値の情報を作成する。ばらつき値は、時間モデルに対して複数の構造パラメータの値がどれだけばらついているかを表す値である。
【0035】
閾値作成部34は、時間モデルとばらつき値とを用いてある種類の構造パラメータの閾値を作成する。閾値作成部34は、複数の種類の構造パラメータにそれぞれ対応する複数の閾値を作成する。
【0036】
予兆診断部35は、構造モデル部32から同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータの情報を取得する。予兆診断部35は、閾値作成部34から複数の閾値の情報を取得する。予兆診断部35は、複数の閾値の情報を記憶する。
【0037】
予兆診断部35は、同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータの各々について予兆診断を行う。予兆診断部35は、ある種類の構造パラメータの値と対応する閾値とを比較する。予兆診断部35は、閾値と比較することで、当該構造パラメータが異常であるか否かを判定する。
【0038】
予兆診断部35は、同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータについて、異常と判定された構造パラメータの数が規定の数よりも多いか否かを判定する。異常と判定された構造パラメータが規定の数よりも多い場合、予兆診断部35は、当該構造パラメータに関する対象の駆動装置7には故障の予兆があると診断する。異常と判定された構造パラメータが規定の数以下である場合、予兆診断部35は、当該構造パラメータに関する対象の駆動装置7には故障の予兆がないと診断する。
【0039】
予兆診断部35は、構造モデル部32が演算した全ての種類の構造パラメータに関する予兆診断を行う。
【0040】
予兆診断部35は、当該対象の駆動装置7に関する予兆診断の結果を含む診断情報を作成する。予兆診断部35は、診断情報を表示装置21に表示させる。
【0041】
次に、図3から図6を用いて、構造モデルの例を説明する。
【0042】
図3は実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出された速度指令値の時間差分の値の起動ごとの推移を表すグラフである。
【0043】
図3において、グラフの横軸は、駆動装置7が回転の運動を開始してから経過した時間である。グラフの縦軸は、駆動装置7に対する速度指令値の時間差分の値である。速度指令値は、駆動装置7に対する駆動速度の指令値である。速度指令値の時間差分の値は、速度指令値を時間で微分した値である。
【0044】
図4は実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出された速度偏差の値の起動ごとの推移を表すグラフである。
【0045】
図4において、グラフの横軸は、駆動装置7が回転の運動を開始してから経過した時間である。グラフの縦軸は、駆動装置7の速度偏差の値である。速度偏差の値は、駆動速度の指令値と実際の速度の値との差である。
【0046】
図5は実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出された補正トルクの値の起動ごとの推移を表すグラフである。
【0047】
図5において、グラフの横軸は、駆動装置7が回転の運動を開始してから経過した時間である。グラフの縦軸は、駆動装置7に与えられた補正トルクの値である。補正トルクは、運転を制御するために駆動装置7に与えられるトルクである。
【0048】
図6は実施の形態1における故障診断装置が適用される駆動装置で検出されたq軸電流の値の起動ごとの推移を表すグラフである。
【0049】
図6において、グラフの横軸は、駆動装置7が回転の運動を開始してから経過した時間である。グラフの縦軸は、駆動装置7におけるq軸電流の値である。q軸電流の値の推移は、実線で示される。
【0050】
例えば、構造モデルは、次の式(1)で表される。
【0051】
【数1】
【0052】
式(1)において、構造パラメータは、a、b、c、dである。目的変数は、駆動装置7のq軸電流の値q(t)である。説明変数は、速度指令値の時間差分の値d{sw(t)}/dtと速度偏差の値vd(t)と補正トルクの値fa(t)とである。
【0053】
構造モデル部32は、図3から図6に示される、1回の起動におけるq軸電流の値と速度指令値の時間差分の値と速度偏差の値と補正トルクの値とを式(1)に代入した回帰分析を行う。構造モデル部32は、当該回帰分析によって、構造パラメータa、b、c、dの組を演算する。
【0054】
構造パラメータが構造モデルの式(1)に代入された場合、q軸電流の推定値は、速度指令値の時間差分の値と速度偏差の値と補正トルクの値から演算される。図6において、q軸電流の推定値の推移は、破線で示される。
【0055】
次に、図7を用いて、時間モデルの例を説明する。
図7は実施の形態1における故障診断装置が記憶する時間モデルの例を表すグラフである。
【0056】
図7において、グラフの横軸は、経過時間である。グラフの縦軸は、構造パラメータaの値である。グラフにプロットされた点は、構造パラメータaの値と検出日時との関係を表す。グラフには、検出日時の異なる複数の構造パラメータaが示される。
【0057】
例えば、構造パラメータaに関して、時間モデルは、次の式(2)で表される。
【0058】
【数2】
【0059】
式(2)において、時間パラメータは、p、q、r、sである。目的変数は、ある経過時間における構造パラメータa(t´)である。説明変数は、経過時間t´である。sin(t´+q)は、構造パラメータaが経過時間に対して周期的に変化する特性を表す。具体的には、sin(t´+q)は、構造パラメータaの季節による変化を表す。この場合、例えば、qは、12か月に相当する値である。α(t´)は、構造パラメータaが経過時間に対して単調に変化する特性を表す関数である。具体的には、α(t´)は、経年劣化を原因とするaの値の変化を表す。例えば、α(t´)は、t´のべき乗を線形結合した関数、t´の対数関数、t´の指数関数、またはそれらの関数を組み合わせた関数である。β(t´)は、起動ごとの運動の条件が構造パラメータaに与える影響を表す関数である。具体的には、β(t´)は、かご9の起動時の重さがaの値に与える影響を表す。
【0060】
時間モデル部33は、検出日時の異なる複数の構造パラメータaと検出日時とを式(2)に代入した回帰分析を行う。時間モデル部33は、当該回帰分析によって、1組の時間パラメータp、q、r、sを演算する。当該1組の時間パラメータは、構造パラメータaに対応する。図7において、1組の時間パラメータが代入された時間モデルは、曲線で表される。
【0061】
時間モデル部33は、1組の時間パラメータに対応する適用期間の情報を作成する。適用期間は、1組の時間パラメータを演算する際に適用した複数の検出日時のうち最も過去の日時から最も直近の日時までの間の期間である。図7において、適用期間は、2017年11月から2018年10月までの期間である。
【0062】
次に、図8を用いて、閾値作成部34と予兆診断部35との動作の例を説明する。
図8は実施の形態1における故障診断装置が作成する閾値の例を表すグラフである。
【0063】
図8において、グラフの横軸は、経過時間t´である。グラフの縦軸は、構造パラメータaの値である。1組の時間パラメータが代入された時間モデルは、実線の曲線で表される。
【0064】
閾値作成部34は、式(2)に表される時間モデルの情報を予め記憶する。閾値作成部34は、時間モデル部33から、検出日時の異なる複数の構造パラメータaの情報と構造パラメータaに対応する1組の時間パラメータの情報とを取得する。
【0065】
閾値作成部34は、1組の時間パラメータを時間モデルに代入する。閾値作成部34は、時間モデルに対する複数の構造パラメータaの各々の残差を求める。閾値作成部34は、演算した複数の残差を用いてばらつき値σとして残差に関する標準偏差の値を演算する。
【0066】
閾値作成部34は、ばらつき値σと時間モデルとを用いて、構造パラメータaに対応する上限閾値関数を演算する。上限閾値関数は、ばらつき値σをn倍した値を、時間モデルに加えた関数である。ここで、nは正の数である。上限閾値関数は、経過時間t´の関数である。図8において、上限閾値関数は、破線の曲線Aで表される。
【0067】
閾値作成部34は、ばらつき値σと時間モデルとを用いて、構造パラメータaに対応する下限閾値関数を演算する。下限閾値関数は、ばらつき値σをn倍した値を、時間モデルから減じた関数である。ここで、nは正の数である。下限閾値関数は、経過時間t´の関数である。図8において、下限閾値関数は、破線の曲線Bで表される。
【0068】
構造パラメータaの値が上限閾値関数の曲線と下限閾値関数の曲線との間に存在する場合、予兆診断部35は、当該構造パラメータaを正常であると判定する。例えば、予兆診断部35は、図8の三角形のプロットで表される構造パラメータaを正常であると判定する。構造パラメータaの値が上限閾値関数の曲線と下限閾値関数の曲線との間に存在しない場合、予兆診断部35は、当該構造パラメータaを異常であると判定する。例えば、予兆診断部35は、図8の四角形のプロットで表される構造パラメータaを異常であると判定する。
【0069】
次に、図9を用いて、故障診断装置30が行う予兆診断の動作を説明する。
図9は実施の形態1における故障診断装置が行う予兆診断の動作を説明するためのフローチャートである。
【0070】
例えば、故障診断装置30は、規定の期間ごとに予兆診断の動作を行う。
【0071】
ステップS001において、データ取得部31は、データ記憶装置20から複数の駆動装置7のうち対象の駆動装置7の複数の検出値の情報を取得する。
【0072】
その後、ステップS002の動作が行われる。ステップS002において、構造モデル部32は、対象の駆動装置7に関する構造パラメータを演算する。
【0073】
その後、ステップS003の動作が行われる。ステップS003において、時間モデル部33は、ある種類の構造パラメータに対応する時間パラメータを演算する。
【0074】
その後、ステップS004の動作が行われる。ステップS004において、閾値作成部34は、閾値を作成する。
【0075】
その後、ステップS005の動作が行われる。ステップS005において、予兆診断部35は、構造モデル部32から同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータの情報を取得する。予兆診断部35は、閾値の情報を取得する。
【0076】
その後、ステップS006の動作が行われる。ステップS006において、予兆診断部35は、同じ種類かつ異なる検出日時の複数の構造パラメータについて予兆診断を行う。
【0077】
その後、ステップS007の動作が行われる。ステップS007において、予兆診断部35は、全ての種類の構造パラメータについて予兆診断が行われたか否かを判定する。
【0078】
ステップS007で予兆診断が行われていない種類の構造パラメータが存在する場合、ステップS003以降の動作が行われる。
【0079】
ステップS007で、全ての種類の構造パラメータについて予兆診断が行われた場合、ステップS008の動作が行われる。ステップS008において、予兆診断部35は、診断情報を表示装置21に表示させる。
【0080】
その後、故障診断装置30は、予兆診断の動作を終了する。
【0081】
以上で説明した実施の形態1によれば、故障診断装置30は、対象の駆動装置7に対応する時間パラメータを演算する。故障診断装置30は、対象の駆動装置7に対応した閾値を作成する。故障診断装置30は、対象の駆動装置7が故障する予兆があるかを診断する。このため、予兆診断を行う場合に、駆動装置7ごとに異なる設置環境などの状況を考慮した時間モデルを利用することができる。その結果、装置が故障する予兆を診断する精度を向上することができる。
【0082】
また、故障診断装置30は、構造モデルの情報を記憶する。このため、故障の予兆があると診断された場合、異常があると診断された構造パラメータは、駆動装置7の機械的または電気的な異常と関連している可能性が高い。その結果、当該故障の予兆の原因を容易に推定することができる。
【0083】
また、故障診断装置30は、起動ごとに検出された複数の検出値を用いて構造パラメータを演算する。このため、故障診断装置30は、実際の制御に基づいた構造モデルを使用することができる。その結果、構造パラメータを演算する回帰分析の精度を向上することができる。
【0084】
また、故障診断装置30は、時間モデルの情報を記憶する。このため、駆動装置7の機械的または電気的特性と経過した時間との関係を導出することができる。
【0085】
また、故障診断装置30は、構造パラメータが季節の変化によって周期的に変化する特性を反映する項を有する時間モデルを記憶する。このため、季節の変化を反映した予兆診断を行うことができる。その結果、予兆診断の精度を向上することができる。
【0086】
また、故障診断装置30の時間モデルは、構造パラメータが時間の経過によって単調に変化する特性を反映する項を有する時間モデルを記憶する。このため、駆動装置7の劣化、摩耗、等を反映した予兆診断を行うことができる。
【0087】
また、故障診断装置30は、時間パラメータを用いて、構造パラメータの閾値を作成する。故障診断装置30は、構造パラメータの値を用いて予兆診断を行う。このため、実際に検出された検出値に基づいた構造パラメータと構造パラメータの時間変化を反映した閾値とを用いて予兆診断を行うことができる。その結果、実際に検出された値のみを用いた診断手法と比較して、予兆診断の精度を向上することができる。
【0088】
また、故障診断装置30は、ばらつき値を演算する。故障診断装置30は、ばらつき値を用いて閾値関数を作成する。このため、実際の駆動装置7で生じるばらつきが考慮された閾値を用いて予兆診断を行うことができる。
【0089】
なお、建築物2において、複数のエレベーターシステム1が設けられてもよい。
【0090】
なお、検出器11は、タコメータの値、かご9の秤量値、機械室4の気温、等を検出してもよい。この場合、故障診断装置30は、タコメータの値、かご9の秤量値、機械室4の気温、等を用いて予兆診断を行ってもよい。
【0091】
なお、故障診断装置30は、駆動装置7以外のエレベーターの装置に適用されてもよい。この場合、故障診断装置30は、対象の装置に対応する構造モデルと時間モデルとの情報を記憶する。
【0092】
なお、故障診断装置30は、任意のタイミングで予兆診断を行ってよい。例えば、保守員は、定期的に予兆診断を実行する指令を故障診断装置30に送信してもよい。この場合、故障診断装置30は、予兆診断を実行する指令を受け取った場合に予兆診断を行う。
【0093】
なお、構造モデルの数式は、既に知られている物理的な特性、電気的な特性、等に基づいていればよい。例えば、複数の入力信号から出力信号が得られる機械に対して構造モデルを構築する場合、出力信号が目的変数として設定されればよい。この場合、複数の入力信号が複数の説明変数として設定されればよい。
【0094】
なお、構造モデル部32は、複数の構造モデルの情報を記憶してもよい。構造モデル部32は、駆動装置7の運転状態に適した構造モデルを選択してもよい。例えば、エレベーターシステム1において、かご9の総重量に応じた運転パターンが複数の運転パターンから選択される場合、構造モデル部32は、当該複数の運転パターンに対応する複数の構造モデルの情報を記憶すればよい。この場合、構造モデル部32は、選択された運転パターンの情報を取得すればよい。構造モデル部32は、運転パターンに応じた構造パラメータの組を演算すればよい。
【0095】
また、構造モデル部32は、複数の検出値を分類することで、運転パターンを特定してもよい。例えば、構造モデル部32は、クラスタリング等の統計手法を用いて複数の検出値を分類してもよい。構造モデル部32は、複数の検出値を分類することで、選択された運転パターンを特定すればよい。
【0096】
なお、時間モデルの数式は、経過時間に対する構造パラメータの変化を表していればよい。例えば、時間モデルの数式は、式(2)の右辺にuT(t´)という項を加えた数式としてもよい。ここで、T(t´)は、機械室4の温度を表す。uは、時間パラメータである。
【0097】
なお、閾値作成部34は、ばらつき値σを演算する場合に、用いる構造パラメータを選択してもよい。例えば、閾値作成部34は、対象の駆動装置7が保守点検された日時から3日以内の期間における検出日時を持つ構造パラメータを選択してもよい。
【0098】
なお、閾値作成部34は、マハラノビス距離等の一般的な統計的手法を利用して閾値を作成してもよい。
【0099】
なお、閾値作成部34の動作は、時間モデル部33が行ってもよい。この場合、時間モデル部33は、閾値作成部34と同様の動作を行うことで、閾値を作成すればよい。予兆診断部35は、時間モデル部33から閾値の情報を取得すればよい。
【0100】
なお、表示装置21は、故障の予兆があるという診断情報を取得した場合、情報センター100にいる保守員にその旨を発報してもよい。表示装置21は、故障の予兆があるとの診断情報を取得した場合、診断情報を対応する監視装置13へ送信してもよい。この場合、監視装置13は、故障の予兆があると診断された駆動装置7を利用者に発報してもよい。
【0101】
次に、実施の形態1の変形例を説明する。
【0102】
図10は実施の形態1における故障診断装置が作成する閾値の変形例を表すグラフである。
【0103】
図10において、グラフの横軸は、経過時間である。グラフの縦軸は、構造パラメータaの値である。グラフで示される2つの破線は、それぞれ上限閾値関数Aと下限閾値関数Bの例を表す。
【0104】
予兆診断部35は、予測期間における構造パラメータaと上限閾値関数および下限閾値関数とを比較する。予測期間は、適用期間より後の期間である。例えば、予兆診断部35は、図10の四角形のプロットで表される構造パラメータaを異常であると判定する。この場合、予兆診断部35は、当該構造パラメータaに関する駆動装置7に故障の予兆があると診断する。
【0105】
以上で説明した変形例において、故障診断装置30は、適用期間でない期間の構造パラメータについて異常の判定を行う。この場合、故障診断装置30は、時間パラメータの演算を行うことなく駆動装置7に関する予兆診断を行う。このため、故障診断装置30は、予兆診断の頻度を増加させることができる。
【0106】
次に、図11を用いて、故障診断装置30のハードウェア構成の例を説明する。
図11は実施の形態1における故障診断装置のハードウェア構成図である。
【0107】
故障診断装置30の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ200aと少なくとも1つのメモリ200bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア300を備える。
【0108】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ200aと少なくとも1つのメモリ200bとを備える場合、故障診断装置30の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ200bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ200aは、少なくとも1つのメモリ200bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、故障診断装置30の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ200aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ200bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0109】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア300を備える場合、処理回路は、例えば、単回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、故障診断装置30の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、故障診断装置30の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0110】
故障診断装置30の各機能について、一部を専用のハードウェア300で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、構造モデル部32の機能については専用のハードウェア300としての処理回路で実現し、構造モデル部32の機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ200aが少なくとも1つのメモリ200bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0111】
このように、処理回路は、ハードウェア300、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで故障診断装置30の各機能を実現する。
【0112】
図示されないが、データ収集装置22の各機能も、故障診断装置30の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。データ記憶装置20の各機能も、故障診断装置30の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。
【0113】
実施の形態2.
図12は実施の形態2における故障診断装置のブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0114】
図12において、閾値作成部34は、時間モデル部33から時間パラメータの組の情報を取得する。
【0115】
閾値作成部34は、時間パラメータの組に含まれる複数の時間パラメータの各々について、閾値を作成する。例えば、閾値作成部34は、取得した時間パラメータの値に一定の値を加えた値を閾値とする。
【0116】
予兆診断部35は、閾値作成部34から、時間パラメータについての閾値の情報を取得する。予兆診断部35は、当該閾値の情報を記憶する。
【0117】
予兆診断部35は、時間モデル部33から、複数の時間パラメータの情報を取得する。予兆診断部35は、複数の時間パラメータと対応する複数の閾値とを比較する。予兆診断部35は、閾値と比較することで、複数の時間パラメータの各々が異常であるか否かを判定する。
【0118】
時間パラメータが異常でないと判定された場合、予兆診断部35は、当該時間パラメータに関する対象の駆動装置7には故障の予兆がないと診断する。時間パラメータが異常であると判定された場合、予兆診断部35は、当該時間パラメータに関する対象の駆動装置7には故障の予兆があると診断する。
【0119】
予兆診断部35は、複数の種類の時間パラメータの各々が異常であるか否かを判定する。予兆診断部35は、複数の種類の構造パラメータに対応する複数の時間パラメータの各々が異常であるか否かを判定する。
【0120】
以上で説明した実施の形態2によれば、故障診断装置30は、時間パラメータの閾値を作成する。故障診断装置30は、時間パラメータの値を閾値と比較することで予兆診断を行う。時間パラメータの値は、長期的な構造パラメータの変化を反映する。このため、長期的な変化が原因となる故障の予兆を発見することができる。
【0121】
なお、閾値作成部34が作成する閾値は、実施の形態2で説明された閾値に限らない。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上のように、本開示に係るエレベーターの故障診断装置は、エレベーターシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0123】
1 エレベーターシステム、 2 建築物、 3 昇降路、 4 機械室、 5 乗場、 6 乗場ドア、 7 駆動装置、 8 主ロープ、 9 かご、 10 釣合おもり、 11 検出器、 12 制御装置、 13 監視装置、 20 データ記憶装置、 21 表示装置、 22 データ収集装置、 30 故障診断装置、 31 データ取得部、 32 構造モデル部、 33 時間モデル部、 34 閾値作成部、 35 予兆診断部、 50 診断システム、 100 情報センター、 200a プロセッサ、 200b メモリ、 300 ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12