(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】キャリアテープ本体及びキャリアテープ
(51)【国際特許分類】
B65D 85/90 20060101AFI20230214BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B65D85/90 300
B65D75/36
(21)【出願番号】P 2018214925
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】相沢 純一
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171898(JP,A)
【文献】特開2008-120436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0289427(US,A1)
【文献】特開平09-249284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/90
B65D 75/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納可能なポケット部がそれぞれ長手方向に所定間隔で設けられたキャリアテープ本体であって、
前記長手方向で複数の前記ポケット部の間に凹部を有し、
前記長手方向に沿う前記ポケット部の並びの、前記キャリアテープ本体の幅方向における位置と、前記長手方向に沿う前記凹部の並びの、前記幅方向における位置とが一致しており、
前記凹部は、
前記ポケット部に対して前記長手方向に垂直な幅が略同じであり、トップカバーテープが前記ポケット部及び前記凹部を覆う態様で貼り付けられる際に前記トップカバーテープが接合される接合部として機能する、キャリアテープ本体。
【請求項2】
前記長手方向で複数の前記ポケット部の間の距離は、1.6mm以上3.0mm以下であり、
前記凹部の深さは、0.2mm以上0.3mm以下である、請求項1に記載のキャリアテープ本体。
【請求項3】
前記長手方向で複数の前記ポケット部の間の距離は、1.0mm以上1.6mm未満であり、
前記凹部の深さは、0.05mm以上0.2mm以下である、請求項1に記載のキャリアテープ本体。
【請求項4】
電子部品を収納可能な複数のポケット部がそれぞれ長手方向に所定間隔で設けられ、前記長手方向で複数の前記ポケット部の間に凹部を有するキャリアテープ本体と、
前記ポケット部及び前記凹部を覆う態様で前記キャリアテープ本体に貼り付けられるトップカバーテープとを含み、
前記長手方向に沿う前記ポケット部の並びの、前記キャリアテープ本体の幅方向における位置と、前記長手方向に沿う前記凹部の並びの、前記幅方向における位置とが一致しており、
前記凹部は、前記ポケット部に対して前記長手方向に垂直な幅が略同じであり、
前記トップカバーテープは、前記凹部に接合される、キャリアテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャリアテープ本体及びキャリアテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベアチップ(ベアダイ)やICチップなどの電子部品は、キャリアテープ本体のポケット部に収納されて、輸送や保管、また、電子部品の実装装置への供給などが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
一般的にキャリアテープ本体は、ポケット部に電子部品が収納された状態で上面カバーテープによりシールされ、キャリアテープを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ベアダイなどの低背部品を収容するキャリアテープにおいては、上面カバーテープによるシール後に、ポケット部の側壁上部の角Rに、ポケット部内の電子部品が乗り上げてしまう場合がある。この点、角Rを小さくすることで乗り上げの抑制を図ることが可能であるが、低背化が更に進むと角Rの調整だけでは、乗り上げを適切に抑制することが難しくなる。
【0006】
そこで、1つの側面では、本発明は、比較的厚みの小さい電子部品に対しても乗り上げを適切に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
(1)電子部品を収納可能なポケット部がそれぞれ長手方向に所定間隔で設けられたキャリアテープ本体であって、
前記長手方向で複数の前記ポケット部の間に凹部を有し、該凹部は、トップカバーテープが前記ポケット部及び前記凹部を覆う態様で貼り付けられる際に前記トップカバーテープが接合される接合部として機能する、キャリアテープ本体である。
【0009】
(2)上記(1)の構成において、前記長手方向で複数の前記ポケット部の間の距離は、1.6mm以上3.0mm以下であり、前記凹部の深さは、0.2mm以上0.3mm以下であることを特徴とする。
【0010】
(3)上記(1)の構成において、前記長手方向で複数の前記ポケット部の間の距離は、1.0mm以上1.6mm未満あり、前記凹部の深さは、0.05mm以上0.2mm以下であることを特徴とする。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの構成において、前記凹部は、前記ポケット部に対して、前記長手方向に垂直な幅が略同じであることを特徴とする。
【0012】
(5)電子部品を収納可能な複数のポケット部がそれぞれ長手方向に所定間隔で設けられ、前記長手方向で複数の前記ポケット部の間に凹部を有するキャリアテープ本体と、
前記ポケット部及び前記凹部を覆う態様で前記キャリアテープ本体に貼り付けられるトップカバーテープとを含み、
前記トップカバーテープは、前記凹部に接合される、キャリアテープである。
【発明の効果】
【0013】
1つの側面では、本発明によれば、比較的厚みの小さい電子部品に対しても乗り上げを適切に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るキャリアテープ本体を示す斜視図である。
【
図3】トップカバーテープの接合領域の説明図である。
【
図4A】トップカバーテープが貼り付けられた状態のキャリアテープ本体を示す断面図である。
【
図6B】電子部品の乗り上げの説明図(比較例)である。
【
図8】ポケット部の側壁上部への電子部品の乗り上げが生じなかったときの、各種パラメータを示す表図である。
【
図9】本実施形態によるキャリアテープ本体の製造に好適な金型の一部を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら各実施形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態に係るキャリアテープ本体110を示す斜視図である。
図2は、キャリアテープ本体110の3面図である。
図3は、トップカバーテープ70の接合領域の説明図である。
図4Aは、トップカバーテープ70が貼り付けられた状態のキャリアテープ本体110を示す断面図である。なお、
図4Aで(後出の
図4Bも同様)は、電子部品の図示は省略されている。
図1及び
図2等には、キャリアテープ本体110の長手方向がX方向で示され、幅方向がY方向で示されている。以下で、上面視とは、XY平面に垂直な方向に視た場合を意味する。以下、「長手方向」とは、キャリアテープ本体110の長手方向、すなわちX方向を意味する。なお、
図1及び
図2には、キャリアテープ本体110は、長手方向で一部だけが図示されている。
【0017】
キャリアテープ本体110は、0.2mmから0.6mmの厚さのテープ状の基材を加工して形成されている。テープ状の基材は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アモルファスポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの合成樹脂、これらの樹脂にカーボンを練り込んで導電性を付与したもの、表面に導電コーティングを施したものなどで形成されている。なお、キャリアテープ本体110の幅は、8mmから24mm程度が一般的である。
【0018】
このキャリアテープ本体110には、電子部品を収納するポケット部(エンボス)11が長手方向に所定間隔で設けられている。このポケット部11は、収納する電子部品の形状・寸法に応じたものとされ、本実施形態では、上面視で矩形である。なお、ポケット部11の形状は、楕円形や円形等であってもよい。
【0019】
ポケット部11は、非貫通式の凹部であり、底部を有する。ポケット部11の深さは、任意であるが、収納対象の電子部品の高さに応じて決定される。すなわち、ポケット部11の深さは、収納対象の電子部品の高さよりもわずかに大きくてよい。
【0020】
ポケット部11は、4方に側壁11aを有し(
図6A参照)、側壁11aの上部(以下、「側壁上部」とも称する)には、角Rが付けられる。
【0021】
ポケット部11は、長手方向で等間隔に所定ピッチPt1で設けられる。所定ピッチPt1は任意であるが、いくつかの例は後述する。
【0022】
また、キャリアテープ本体110には、実装装置などで位置決めに用いられる複数の送り孔(スプロケット孔)12が、長手方向に所定間隔でポケット部11の一方又は両側に穿設されている。送り孔12の形状や間隔は、スプロケットなどの送り機構に合わせて形成されるとよい。なお、送り孔12の直径は、0.8mmから1.5mm程度である。
【0023】
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、キャリアテープ本体110は、長手方向のポケット部11間に、凹部20を有する。
【0024】
凹部20は、非貫通式であり、底部22を有する。凹部20の深さは、底部22を有する限り任意であるが、ポケット部11の間隔(所定ピッチ)に応じて決定されてもよい。凹部20は、ポケット部11と同様の形態であるが、機能が異なる。凹部20の機能は後で詳説するが、凹部20は、底部22にトップカバーテープ70が接合されることで、電子部品の乗り上げを抑制する機能を有する。
【0025】
凹部20は、長手方向で等間隔に所定ピッチPt1で設けられる。所定ピッチPt1は、ポケット部11のピッチPt1と同じである。
【0026】
このようにして、本実施形態では、X方向で凹部20とポケット部11との間には、Y方向に視て上側に凸状となる凸部14が形成される。凸部14は、Y方向に直線状に延在する。凸部14のX方向の寸法は、例えば0.03mm~1.5mmの範囲内であってよい。なお、凸部14は、あくまでポケット部11を通るX方向の断面で凸状の形態であり、キャリアテープ本体110の基本部位110aの上面と面一の上面を有する。すなわち、凸部14は、キャリアテープ本体110の基本部位110aの一部と言うことができる。
【0027】
なお、
図4Aでは、凹部20の深さは、ポケット部11の深さよりも小さいが、凹部20の深さは、ポケット部11の深さと同じであってもよいし、凹部20の深さは、ポケット部11の深さよりも大きくてもよい。特に本実施形態では、凹部20は、後述のようにトップカバーテープ70にX方向の張力を付与する機能を有するので、かかる機能を高めるために、比較的大きい深さを有することが有用である。この観点から、凹部20の深さは、ポケット部11の深さよりも大きいことは好適である。凹部20の深さの好ましい範囲は後述する。
【0028】
凹部20の形状は、本実施形態では、上面視で矩形である。なお、凹部20の形状は、楕円形や円形等であってもよい。
【0029】
トップカバーテープ70は、
図4Aに示すように、キャリアテープ本体110の上側表面に貼り付けられる。トップカバーテープ70は、ポケット部11内に電子部品を配置した後に、キャリアテープ本体110に貼り付けられる(ポケット部11を覆うようにキャリアテープ本体110に被せられる)。なお、トップカバーテープ70が貼り付けられた状態のキャリアテープ本体110は、「キャリアテープ」と称される。
【0030】
トップカバーテープ70は、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリアミド(PA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂を用いて形成されたテープ状の基材である。なお、これらの合成樹脂にカーボンを練り込んで導電性を付与したり、テープ状の基材の表面に導電コーティングを施したり、あるいは、帯電防止性を付与したりするものなどを用いてもよい。
【0031】
トップカバーテープ70は、キャリアテープ本体110側の表面の接合領域71に接着剤又は粘着剤により形成された接着剤層を有している。接着剤としては、アクリル樹脂系、天然ゴム系、ウレタン系、エポキシ系、ポリビニルアルコール系などのものを用いることができる。
【0032】
接合領域71は、線状領域71a、71bと、点状領域71cとを含む。
【0033】
線状領域71a、71bは、Y方向で所定距離Lだけ離間して、X方向に平行に延在する。なお、線状領域71a、71bは、X方向に連続しているが、X方向に不連続的に設定されてもよい。所定距離Lは、ポケット部11のY方向の寸法以上である限り任意であるが、好ましくは、ポケット部11のY方向の寸法と略同一である。この場合、トップカバーテープ70がキャリアテープ本体110に貼り付けられた状態では、線状領域71a、71bは、Y方向でポケット部11の両側の位置で、X方向に沿って連続的に延在する。
【0034】
点状領域71cは、Y方向で線状領域71a、71bの間に位置する態様で設定される。点状領域71cは、X方向で等間隔に所定ピッチPt2で設けられる。所定ピッチPt2は、ポケット部11のピッチPt1と略同じである。点状領域71cは、トップカバーテープ70がキャリアテープ本体110に貼り付けられた状態で、凹部20の底部22の略中心に位置するように形成される。なお、変形例では、点状領域71cは、1つの凹部20に対して2カ所以上設定されてもよい。この場合、2つ以上の点状領域71cは、X方向に並ぶ態様で設定されてもよい。あるいは、2つ以上の点状領域71cは、1つの線状領域で置換されてもよい。
【0035】
トップカバーテープ70は、基本的に、上述した線状領域71a、71bによって、Y方向でポケット部11の両側の位置で、X方向に沿って連続的にキャリアテープ本体110にシールされる。
【0036】
また、本実施形態では、トップカバーテープ70は、更に、上述した点状領域71cによって、
図4Aに示すように、凹部20の位置で、キャリアテープ本体110にシールされる。
図4Aでは、ポケット部11のY方向の中心位置を通る断面が示される。
【0037】
次に、比較例と対比して、本発明の効果について説明する。ここでは、まず、
図5を参照して、電子部品の乗り上げの原理を説明してから、
図4A及び
図4B(並びに
図6A及び
図6B)を用いて、比較例と対比した本発明の効果について説明する。
【0038】
図4Bは、比較例によるキャリアテープ本体110Aと、トップカバーテープ70Aとの関係を示す断面図であり、
図4Aの断面図に相当する。比較例によるキャリアテープ本体110Aは、本実施形態によるキャリアテープ本体110に対して、凹部20を有さない点が異なる。従って、キャリアテープ本体110Aでは、X方向でポケット部11間は平坦な土手部90となる。また、比較例によるトップカバーテープ70Aは、本実施形態によるトップカバーテープ70に対して、点状領域71cを有さない点が異なる。
【0039】
図5は、電子部品の乗り上げの説明図であり、ポケット部11の側壁上部上へ乗り上げた電子部品Sを示す断面図である。
【0040】
ポケット部11内の電子部品Sは、搬送中等に生じる振動等に起因して、ポケット部11内で移動し、
図5に示すように、ポケット部11の側壁11aの上部(側壁上部)上に乗り上げる場合がある。なお、電子部品Sがポケット部11の側壁11aの上部(側壁上部)上に乗り上げる態様としては、
図5に示すように、電子部品Sの側部がポケット部11の側壁上部に乗り、電子部品Sの側部が、トップカバーテープ70とポケット部11の側壁上部との間に挟まってしまう態様がある。このような乗り上げが生じると、実装装置の吸着手段等によりキャリアテープから電子部品Sをピックアップする際に支障が生じうる。
【0041】
電子部品Sの側部は、ポケット部11の側壁上部の角Rとトップカバーテープ70との間に形成される隙間に挟まりうるが、かかる隙間は、角Rを小さくすることで低減が可能である。なお、一般的に、角Rは、製造上の観点から下限値がある。従って、本実施形態では、角Rは0よりも大きい値とされ、製造上の観点から下限値に設定されてよい。
【0042】
また、ポケット部11の側壁上部の角Rの上側端点(
図5の点Pt参照、以下、「Rエンド」と称する)でトップカバーテープ70が、ポケット部11の側壁上部から上側に離れており、当該上下方向の隙間が、電子部品Sの側部の厚み(すなわち電子部品Sの厚み)よりも大きければ、その上下方向の隙間に、電子部品Sの側部が挟まれやすくなる。
【0043】
従って、ポケット部11の側壁上部への電子部品Sの乗り上げは、Rエンドでのトップカバーテープ70の上方への浮き上がりが、電子部品Sの側部の厚み(すなわち電子部品Sの厚み)よりも大きければ、発生しやすくなる。電子部品の厚みが比較的小さいと、Rエンドでのトップカバーテープ70の上方への浮き上がりが比較的小さくても乗り上げが生じうるので、電子部品の厚みが小さいほど(すなわち低背化が進むほど)、乗り上げが発生しやすいといえる。
【0044】
図6A及び
図6Bは、電子部品の乗り上げの模式的な説明図であり、それぞれ、
図4A及び
図4BのQ部の拡大図に相当する概略図(模式図)である。
図6Aは、本実施形態の場合を示し、
図6Bは、比較例(
図4B)の場合を示す。
図6A及び
図6Bでは、ポケット部11内の電子部品Sが示される。
【0045】
比較例では、
図6Bに示すように、トップカバーテープ70Aがポケット部11の側壁11aの上部(側壁上部)上に、電子部品Sが乗り上げてしまいやすい。これは、トップカバーテープ70Aは、X方向でポケット部11間の領域では、略平らに延在するが、ポケット部11の側壁上部の角R付近へと積極的にトップカバーテープ70Aを当接させる手段が存在しないため、RエンドPtでの微少な浮き上がりによって隙間Δ1が生じやすいためである。
【0046】
これに対して、本実施形態では、
図6Aに示すように、トップカバーテープ70がポケット部11の側壁上部上に、電子部品Sが乗り上げ難い。これは、トップカバーテープ70は、X方向でポケット部11間の領域では、凹部20での点状領域71cでキャリアテープ本体110に接合するためである。すなわち、この場合、トップカバーテープ70は、X方向でポケット部11間の領域で下方に向けて延在するので、ポケット部11の側壁上部で微少な浮き上がり(RエンドPtでの微少な浮き上がり)が発生し難いためである。
【0047】
より具体的には、本実施形態では、
図4A及び
図6Aに示すように、X方向で凹部20とポケット部11との間の凸部14の上面がトップカバーテープ70に接触しやすくなる。これは、特に、凹部20での点状領域71cでトップカバーテープ70をキャリアテープ本体110に接合させることで生じる効果である。凹部20での点状領域71cでトップカバーテープ70をキャリアテープ本体110に接合させる場合、トップカバーテープ70に対してX方向の張力を発生させやすくなり、かかる張力が発生する場合は、より確実に、凸部14の上面がトップカバーテープ70に接触する傾向となる。
【0048】
このようにして、本実施形態によれば、トップカバーテープ70が接合される凹部20を設けることで、比較例に比べて、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げが生じる可能性を低減できる。以下、凹部20の底部22でトップカバーテープ70を接合することでトップカバーテープ70にX方向の張力を発生させる機能を、「ドットシールによる張力発生機能」とも称する。
【0049】
また、本実施形態によれば、上述したように、ドットシールによる張力発生機能によってポケット部11の側壁上部のRエンドPtでのトップカバーテープ70の微少な浮き上がりを抑制できる。これにより、比較的厚みの小さい電子部品に対しても乗り上げを適切に抑制することが可能である。
【0050】
ここで、上述のような、X方向でのポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げは、X方向両側でのポケット部11の側壁上部におけるY方向の任意の位置で生じうる。従って、本実施形態では、凹部20は、好ましくは、Y方向に関して、ポケット部11の延在範囲の略全体にわたって延在する。すなわち、凹部20は、ポケット部11に対して、Y方向の幅が略同じである。略同じとは、ポケット部11のY方向の幅の10%程度の相違を許容する概念である。これにより、ポケット部11の側壁上部におけるY方向の略全体にわたって、ドットシールによる張力発生機能の効果を発生させることができる。すなわち、ポケット部11の側壁上部におけるY方向の略全体にわたって、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げを抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、上述のように、X方向でのポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げは、凹部20でのドットシールによる張力発生機能によって抑制されているが、かかる乗り上げは、Y方向でも生じうる。Y方向でのポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げは、凹部20でのドットシールによる張力発生機能によっては抑制できない。
【0052】
この点、本実施形態では、Y方向でポケット部11に隣接して凹部20のような凹部は設けられないものの、上述のように、キャリアテープ本体110に対するトップカバーテープ70のシール位置を、Y方向でポケット部11の縁部近傍に設定することで、Y方向両側でのポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げを抑制できる。なお、Y方向でトップカバーテープ70に張力を付与することは難しいため、シール位置により、Y方向両側でのポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げを抑制することが効果的である。ただし、変形例では、Y方向でのポケット部11に隣接して凹部を形成し、当該凹部でトップカバーテープ70を接合することで、Y方向でトップカバーテープ70に張力を付与してもよい。
【0053】
【0054】
試験では、電子部品の厚み(
図7A及び
図7Bでは、「PKG厚」と表記)を0.05mm~0.50mmまで複数種類変化させ、かつ、ポケット部11の側壁上部の角R(
図7A及び
図7Bでは、「キャリアテープ開口部R」と表記)を0.1mm、0.2mm、0.3mmの3種類変化させ、振動試験を行って乗り上げの有無を検証した。なお、凸部14のX方向の寸法は、0.3mmとした。
【0055】
図7A及び
図7Bにおいて、「×」は、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げが発生したことを示し、「○」は、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げが発生しなかったことを示す。
【0056】
上述したように、一般的に、電子部品の厚みが小さいほど(すなわち低背化が進むほど)乗り上げが発生しやすく、かつ、ポケット部11の側壁上部の角Rが大きいほど乗り上げが発生しやすい。
【0057】
この点、比較例では、
図7Bから分かるように、このような傾向に当てはまっており、ポケット部11の側壁上部の角Rが比較的大きい0.3mmでは、電子部品の厚みが0.3mm以下で乗り上げが生じており、ポケット部11の側壁上部の角Rが比較的小さい0.1mmでも、電子部品の厚みが0.1mm以下で乗り上げが生じている。
【0058】
これに対して、本実施形態によれば、
図7Aから分かるように、ポケット部11の側壁上部の角Rが比較的大きい0.3mmであり、かつ、電子部品の厚みが比較的小さい0.05mmである場合であっても、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げが抑制されている。
【0059】
ところで、トップカバーテープ70における凹部20上の長さが同じであるとき、凹部20の深さは、深いほどトップカバーテープ70にX方向の張力を付与しやすくなる。また、凹部20の深さが同じであるとき、X方向でのポケット部11間の距離(以下、「ポケット間距離」とも称する)は、小さいほどトップカバーテープ70にX方向の張力を付与しやすくなる。
【0060】
このような観点から、ポケット間距離を変化させることで、凹部の深さの適切値を試験により確認した。
【0061】
図8は、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げが生じなかったときの、各種パラメータを示す表図である。
図8において、“A(ポケットX寸法)”は、ポケット部11のX方向の寸法であり、“ピッチ”は、所定ピッチPt1であり、“ポケット間”は、ポケット間距離を表し、“ポケット間深さ”は、凹部20の深さである。
【0062】
図8に示すように、ポケット間距離が1.6mm以上3.0mm以下であるとき(ケース12~28参照)、凹部20の深さが、0.2mm以上0.3mm以下であれば、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げが生じなかった。従って、ポケット間距離と凹部20の深さとの関係を、このような関係に設定することで、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げを効果的に抑制できることを期待できる。
【0063】
また、
図8に示すように、ポケット間距離が1.0mm以上1.6mm未満であるとき(ケース1~11参照)、凹部20の深さが、0.05mm以上0.2mm以下であれば、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げが生じなかった。従って、ポケット間距離と凹部20の深さとの関係を、このような関係に設定することで、ポケット部11の側壁上部への電子部品の乗り上げを効果的に抑制できることを期待できる。
【0064】
次に、本実施形態によるキャリアテープ本体110の製造方法について概説する。
【0065】
図9は、本実施形態によるキャリアテープ本体110の製造に好適な金型900の一部を模式的に示す斜視図である。
【0066】
金型900は、真空成形用であり、ポケット部11を成形するための部位902と、凹部20を形成するための部位904とを含む。
【0067】
本実施形態によるキャリアテープ本体110は、
図9に示すような金型900を用いて容易に製造できる。
【0068】
なお、キャリアテープ本体110は、真空成形以外にも他の方法で形成されてもよい。例えば、キャリアテープ本体110は、プレス成形や圧空成形等により成形されてもよい。
【0069】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
11 ポケット部(エンボス)
11a 側壁
12 送り孔
14 凸部
20 凹部
22 底部
70 トップカバーテープ
70A トップカバーテープ
71 接合領域
71a 線状領域
71b 線状領域
71c 点状領域
110 キャリアテープ本体
110A キャリアテープ本体