(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】斫り装置
(51)【国際特許分類】
B24C 7/00 20060101AFI20230214BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20230214BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B24C7/00 D
B24C7/00 E
B24C5/02 C
B24C7/00 Z
B24C5/04 Z
(21)【出願番号】P 2019035119
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000235163
【氏名又は名称】範多機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593162291
【氏名又は名称】株式会社フタミ
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】畠中 徹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-001338(JP,A)
【文献】特開昭64-058498(JP,A)
【文献】特開2014-193217(JP,A)
【文献】特開2009-028892(JP,A)
【文献】特開2006-328347(JP,A)
【文献】特開平09-094764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削材を高圧水に混合して対象物を斫るための斫り装置であって、
前記研削材と前記高圧水とを混合して噴射する噴射部と、
前記研削材を貯蔵するホッパと、
前記ホッパに貯蔵された前記研削材を前記噴射部に供給するための配管となる研削材供給配管と、
前記研削材供給配管に空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管が前記研削材供給配管に供給する空気の量を調整する調整部とを備え、
前記高圧水が噴射される際に前記研削材供給配管で負圧が発生し、その負圧によって、前記ホッパから前記研削材供給管へ前記研削材が供給され、
前記調整部は、前記空気供給配管から前記研削材供給配管に供給する空気の量を調整することで、前記ホッパから前記研削材を吸引する負圧の大きさを調整可能としており、
前記ホッパに連通している前記研削材供給配管は、
前記ホッパから供給される前記研削材が鉛直下方向から上方向に向かうように、配管されている、斫り装置。
【請求項2】
前記ホッパに連通している前記研削材供給配管は、U字状、及び/又は、S字状に配管されていることを特徴とする、請求項1に記載の斫り装置。
【請求項3】
前記調整部は、第1の調整部と、第2の調整部とを有し、
前記第1の調整部によって調整可能な流量の調整量と、前記第2の調整部によって調整可能な流量の調整量とが、異なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の斫り装置。
【請求項4】
前記噴射部は、噴射ノズルを有し、
前記噴射ノズルを揺動させるための揺動機構部をさらに備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の斫り装置。
【請求項5】
前記揺動機構部は、前記噴射ノズルを揺動回転させることを特徴とする、請求項4に記載の斫り装置。
【請求項6】
前記揺動機構部は、
モータと、
前記モータの回転が回転軸に伝達される回転部と、
前記回転部に取り付けられており、前記回転部の前記回転軸の中心からずれた位置に揺動回転軸を有する揺動回転部と、
前記揺動回転部に取り付けられたフレームとを含み、
前記フレームに、噴射部が取り付けられている、請求項5に記載の斫り装置。
【請求項7】
前記ホッパは、アーチアクション防止ブラケットを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の斫り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータージェット中に研削材を混合させるアブレシブウォータージェット(「アブレイシブウォータージェット」ともいう。以下同様。)を用いた斫り(はつり)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1ないし4に記載のように、ウォータージェット中に研削材を混合させるアブレシブウォータージェットを用いた斫り装置が知られている。
【0003】
特許文献5は、噴射ノズルを左右に揺動させたり、小さく回転(揺動回転)させたりすることによって、コンクリート等を斫ることができるウォータージェットを用いた斫り装置を開示している。
【0004】
特許文献6及び7にも、噴射ノズルを揺動回転させることによって、コンクリート等を斫ることができるウォータージェットを用いた斫り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-138145号公報
【文献】特許第2903249号公報
【文献】特開2000-767号公報
【文献】特開2004-092060号公報
【文献】特開2003-025293号公報
【文献】特開2005-305566号公報
【文献】特開2010-264556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のアブレシブウォータージェットを用いた斫り装置では、研削材の投射量を調整することが困難であった。たとえば、必要以上に、研削材がウォータージェットに投射されたり、逆に、必要な量の研削材がウォータージェットに投射されなかったりしていたため、均一に、コンクリート等の斫り作業を行うのには、熟練を要していた。
【0007】
それゆえ、本発明は、アブレシブウォータージェットを用いた斫り装置において、研削材の投射量を均一にすることができ、かつ、投射量を調整することを可能とすることを目的とする。
【0008】
また、ウォータージェットの噴射ノズルを揺動させるによる従来の機構は、耐久性の面で、問題があった。
【0009】
そのため、本発明は、耐久性を有する揺動機構を有する斫り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、研削材を高圧水に混合して対象物を斫るための斫り装置であって、研削材と高圧水とを混合して噴射する噴射部と、研削材を貯蔵するホッパと、ホッパに貯蔵された研削材を噴射部に供給するための配管となる研削材供給配管と、研削材供給配管に空気を供給する空気供給配管と、空気供給配管が研削材供給配管に供給する空気の量を調整する調整部とを備え、高圧水が噴射される際に研削材供給配管で負圧が発生し、その負圧によって、ホッパから研削材供給管へ研削材が供給され、調整部は、空気供給配管から研削材供給配管に供給する空気の量を調整することで、ホッパから研削材を吸引する負圧の大きさを調整可能としており、ホッパに連通している研削材供給配管は、ホッパから供給される研削材が鉛直下方向から上方向に向かうように、配管されている。
【0011】
ホッパに連通している研削材供給配管は、U字状、及び/又は、S字状に配管されている。
【0012】
調整部は、第1の調整部と、第2の調整部とを有し、第1の調整部によって調整可能な流量の調整量と、第2の調整部によって調整可能な流量の調整量とが、異なる。
【0013】
噴射部は、噴射ノズルを有する。斫り装置は、噴射ノズルを揺動させるための揺動機構部をさらに備える。
【0014】
揺動機構部は、噴射ノズルを揺動回転させる。
【0015】
揺動機構部は、モータと、モータの回転が回転軸に伝達される回転部と、回転部に取り付けられており、回転部の回転軸の中心からずれた位置に揺動回転軸を有する揺動回転部と、揺動回転部に取り付けられたフレームとを含む。フレームに、噴射部が取り付けられている。
【0016】
ホッパは、アーチアクション防止ブラケットを有する。
【0017】
また、本発明は、少なくとも高圧水を用いて、対象物を斫るための斫り装置であって、少なくとも高圧水を噴射する噴射部と、噴射部の噴射ノズルを揺動させるための揺動機構部とを備える。揺動機構部は、モータと、モータの回転が回転軸に伝達される回転部と、回転部に取り付けられており、回転部の回転軸の中心からずれた位置に揺動回転軸を有する揺動回転部と、揺動回転部に取り付けられたフレームとを含み、フレームに、噴射部が取り付けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ホッパに連通している研削材供給配管は、鉛直下方向から上方向に向かうように、配管されているので、鉛直下方向から上方向に向かう部分で、一旦、研削材が受け止められることとなる。したがって、ホッパ内の研削材がいきなり噴射部にまで、落下することが防止されるので、研削材の投射量を均一にすることができる斫り装置が提供される。
【0019】
さらに、空気供給配管が研削材供給配管に供給する空気の量を調整する調整部を用いることで、噴射部で発生する負圧の大きさを調整することが可能となるので、投射量を調整することができる斫り装置が提供される。
【0020】
研削材供給配管を、U字状、及び/又は、S字状に配管することで、ホッパ内の研削材がいきなり噴射部にまで、落下することが防止される。
【0021】
第1の調整部によって調整可能な流量の調整量と、第2の調整部によって調整可能な流量の調整量とを異ならせることで、たとえば、第2の調整部として、微調整が可能な部材を用いることすれば、第1の調整部で大まかな負圧の大きさを調整し、第2の調整部で、負圧の大きさを微調整するようにすれば、負圧の大きさを細かく調整することが可能となり、結果、切削材の投射量の細かな調整が可能となる。
【0022】
揺動機構部を用いて、噴射ノズルを揺動させることで、幅を持たせた斫りが可能となる。
【0023】
揺動機構部の構造としては、モータ、回転部、及び揺動回転部を用いて、フレームを揺動させる構造が考えられる。このような構造は、回転機構を用いた耐久性を有する構造であり、耐久性を有する種々の部材を構成部材として用いることが可能である。よって、耐久性を有する揺動機構を備える斫り装置が提供されることとなる。
【0024】
揺動回転部を、回転部から偏心させることによって、噴射ノズルを揺動回転させることが可能となる。
【0025】
揺動回転によって、対象物を幅を持たせて、斫ることが可能となる。
【0026】
ホッパがアーチアクション防止ブラケットを有することで、研削材が円滑にホッパ下部に流れ落ちることとなる。
【0027】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における斫り装置1の概略正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における斫り装置1の概略右側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における斫り装置1の概略平面図である。
【
図4】
図4は、揺動機構部12の概略構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、揺動機構部12の概略内部構造を示す図である。
【
図6】
図6は、揺動回転部19b及び回転部20bの概略内部構造を示す断面図である。
【
図7】
図7は、揺動フレーム17が揺動するときの様子を示す図である。
【
図8】
図8は、鋼繊維補強コンクリートを斫った結果を示す図面代用写真である。
【
図9】
図9(a)は、ホッパ4の内部に設けられたアーチアクション防止ブラケットの構造を示すホッパ4の部分断面図であり、
図9(b)は、ホッパ4の内部を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施形態における斫り装置1の概略正面図である。
図2は、本発明の一実施形態における斫り装置1の概略右側面図である。
図3は、本発明の一実施形態における斫り装置1の概略平面図である。
図1及び
図3において、ハンドル部15aの記載は省略している。また、
図1ないし
図3において、発電機やエンジンなどの記載は省略している。以下、
図1ないし
図3を参照しながら、斫り装置1の構造について説明する。
【0030】
斫り装置1は、車輪2a,2b,2cと、噴射ボックス3と、吸引口3aと、ホッパ4、噴射部5、研削材供給配管6a,6b,6cと、空気供給配管7a,7b,7cと、継手8,10と、開閉バルブ9と、第1の調整バルブ9aと、第2の調整バルブ9bと、ストレーナ11aと、ストレーナ配管11b,11cと、揺動機構部12と、連結部13,18と、車体フレーム14と、移動用駆動部15と、ハンドル部15aとを備える。
【0031】
車輪2a,2bは、車体フレーム14に取り付けられている。車輪2cは、移動用駆動部15に設けられたモータによって回転可能となっている。当該モータは、電気モータであってもよし、油圧モータであってもよい。操作者は、ハンドル部15aを動かすことで、斫り装置1の移動方向を操作することができる。
【0032】
噴射部5は、配管の先端に取り付けられた噴射ノズル5bと、配管の他端に設けられたた高圧水供給口5aとを含む。高圧水供給口5aには、外部から高圧水が供給される。噴射ボックス3の内部に、噴射ノズル5bが設けられている。噴射ノズル5bは、アブレシブウォータージェット用のものであり、高圧水に、研削材(研磨材、メディア、アブレッシブ、ビーズ、ショット、玉、砂などという場合もある)を混合させることができる構造である。アブレシブウォータージェット用の噴射ノズル5bとしては、周知のあらゆる構造を採用することができる。
【0033】
噴射部5は、連結部13及び18を介して、揺動機構部12の揺動フレーム17(後述)に取り付けられている。揺動機構部12の揺動フレーム17が揺動することで、揺動機構部12から下部に伸びた連結部18も揺動し、合せて、連結部13も揺動し、連結部13に連結された噴射部5も揺動する構造となっている。
【0034】
噴射部5全体が揺動することで、噴射ノズル5bは、揺動しながら、研削材を混合した高圧水を噴射することができる。
【0035】
本実施形態では、揺動として、数ミリ~数十ミリ単位の半径で回転する回転揺動を一例として挙げる。ただし、本発明においては、回転揺動に限られるものではなく、噴射ノズル5bが、左右にジグザグに揺動する揺動も含まれるものとする。また、本発明においては、噴射ノズル5bが揺動することは、必須ではなく、噴射ノズル5bが揺動しない斫り装置も、本発明に含まれるものとする。揺動機構部12の具体的構成例については、後述する。
【0036】
噴射ボックス3内で、研削材を混入した高圧水が噴射されることで、コンクリートなどが、削られる。噴射ボックス3内で削られた破砕物や研削後の研削材は、吸引口3aから、外部の吸引装置(図示せず)などに吸引される。
【0037】
ホッパ4には、研削材が貯蔵されている。ホッパ4の下部は、研削材供給配管6bと連通している。研削材供給配管6bは、当該下部から、一旦、鉛直下方に下がった後、鉛直上方に上がるように、U字状に湾曲している(
図1参照)。そして、研削材供給配管6bは、継手を介して、別の研削材供給配管6cと連通している(
図1参照)。研削材供給配管6cは、鉛直上方向に上がった後、鉛直下方向に下がって、継手8と連通している(
図1参照)。すなわち、研削材供給配管6b及び6cによって、S字状の配管となっている。
【0038】
そして、継手8を介して、研削材供給配管6bからは、さらに、鉛直下方に向かって、研削材供給配管6aが延びている(
図2参照)。研削材供給配管6aの下端は、噴射ノズル5bに連通している。
【0039】
噴射ノズル5bから高圧水が噴射される際、研削材供給配管6aの先端で負圧が発生し、その負圧によって、研削材供給配管6a,6c,6b内の研削材が噴射ノズル5b側に吸い込まれていくように移動していくこととなる。それに合せて、ホッパ4内の研削材が、研削材供給配管6b側に移動していくこととなる。
【0040】
本実施形態では、ホッパ4の下部から、いきなり、下方に向かって、研削材供給配管が延びていって、噴射ノズル5bに連通していく構造を採用せず、研削材供給配管6bで、一旦、上方に延びるように湾曲させて、その後、研削材供給配管6cで、下方に延びるように湾曲する構造を採用している。
【0041】
ホッパ4の下部から、いきなり、下方に向かって、研削材供給配管が延びていって、噴射ノズル5bに連通する構造を採用した場合、ホッパ4から、研削材が、何ら落下量を調整されることなく、噴射ノズル5bに供給されていくことになる。しかし、本実施形態のように、一旦、上方に管を湾曲させる構造とすることで、必要以上の量の研削材が噴射ノズル5に供給されるのを防止することができる。結果、研削材の投射量を均一にすることが可能となる。
【0042】
継手8には、開閉バルブ9と、空気供給配管7aとが連通されている。開閉バルブ9は、全開又は全閉のどちらかを取ることができるバルブである。作業時、開閉バルブ9は、全閉で使用する。開閉バルブ9を全開にすると、噴射ノズル5bで負圧が発生したとしても、空気が開閉バルブ9から吸い込まれてしまって、負圧が研削材供給配管6c側には、伝わらないので、ホッパ4から、研削材が噴射ノズル5bに供給されない。たとえば、作業中に、研削材の供給を止めたい場合は、開閉バルブ9を全開にする。
【0043】
図2に示すように、空気供給配管7aには、継手10を介して、2本の空気供給配管7b,7cが連通している。空気供給配管7b,7cの一端には、それぞれ、第1の調整バルブ9a及び第2の調整バルブ9bが接続されている。継手10には、固定絞り10aが設けられている。
【0044】
図1及び
図3に示すように、第1の調整バルブ9a及び第2の調整バルブ9bには、ストレーナ配管11b,11cを介して、ストレーナ11aが取り付けられており、異物が、第1の調整バルブ9a及び第2の調整バルブ9bに入り込まないようにしている。
【0045】
第1の調整バルブ9aを調整することで、空気供給配管7b及び7aに供給される空気の量を調整することができる。また、第2の調整バルブ9bを調整することで、空気供給配管7c及び7aに供給される空気の量を調整することができる。第1の調整バルブ9a及び第2の調整バルブ9bは、それぞれ、流量の調整量を同じにするバルブであってもよいし、異なる調整量を有するバルブであってもよい。なお、空気の供給量を調整するためのバルブとして、たとえば、流量調整弁などを用いることができる。流量調整弁によって開く弁孔の大きさを変えたりすることで、異なる調整量を有する調整バルブが得られる。その他、周知の調整バルブを調整バルブ9a,9bに使用することができる。
【0046】
本実施形態では、第1の調整バルブ9a及び第2の調整バルブ9bを用い、それぞれの調整バルブでの流量の調整量を異なるものとすることで、供給される空気の量を微調整できる構成としている。たとえば、第2の調整バルブ9bよりも、第1の調整バルブ9aによる調整可能な空気の量が大きいとした場合、第1の調整バルブ9aで、大まかな空気の調整量を調整し、第2の調整バルブ9bで空気の量を微調整することが可能となる。
【0047】
ただし、本発明においては、少なくとも、一つの調整バルブが用いられることで、供給される空気の量を調整できる。また、3つ以上の調整バルブが用いられてもよい。
【0048】
なお、ここでは、調整バルブとの用語を使用しているが、流量を調整することが可能な部材であればバルブと称されるものに限定されるものではなく、バルブ以外の調整部が用いられてもよい。第1の調整バルブ9a及び第2の調整バルブ9bをまとめて、調整部と称してもよく、それぞれを、第1の調整部及び第2の調整部と称してもよい。
【0049】
固定絞り10は、空気供給配管7aに供給される最低限の空気の量を決定付ける絞りである。
【0050】
このように、本実施形態では、第1の調整バルブ9a及び第2の調整バルブ9bを用いて、空気供給配管7a,7b,7cから継手8に供給される空気の量を調整することで、研削材をホッパ4から吸引する負圧の大きさを調整することができる。よって、研削材供給配管6aに供給される研削材の量を調整することが可能となる。結果、噴射ノズル5bに供給される研削材の投射量を均一にすることができるだけでなく、投射量を調整することも可能となる。
【0051】
次に、揺動機構部12の構造について説明する。
図4は、揺動機構部12の概略構成を示す平面図である。
図5は、揺動機構部12の概略内部構造を示す図である。
図6は、揺動回転部19b及び回転部20bの概略内部構造を示す断面図である。なお、揺動回転部19a及び回転部20aの概略内部構造は、
図6と同様である。
図7は、揺動フレーム17が揺動するときの様子を示す図である。
【0052】
揺動機構部12は、モータ16と、チェーン16aと、一対の揺動回転部19a,19bと、一対の回転部20a,20bと、アイドラースプロケット21とを備える。モータ16の回転が、一対の回転部20a,20bに伝わるように、チェーン16aが掛けられている。なお、アイドラースプロケット21によって、チェーン16aの撓みが調整されているが、アイドラースプロケット21は、必須の構成ではない。一対の揺動回転部19a,19bに、揺動フレーム17が取り付けられている。
【0053】
モータ16は、電気式又は油圧式のモータである。モータ16は、揺動機構部12の筐体12aに取り付けられている。
【0054】
回転部20a,20bは、それぞれ、スプロケット20-1、回転軸20-2、軸受20-3、及び回転盤20-4、支持部20-6を有している。回転部20a,20bは、支持部20-6を介して、筐体12aに取り付けられている。支持部20-6の内部には、軸受20-3を介して、回転軸20-2が回転可能に支持されている。回転軸20-2の一端には、スプロケット20-1が取り付けられている。スプロケット20-1には、モータ16の回転軸に取り付けられたチェーン16aが、掛けられている。回転軸20-2の他端には、回転盤20-4が取り付けられている。このような構造により、モータ16の回転軸が回転することによって、回転部20a,20bのそれぞれの回転軸20-2が回転する機構となっている。
【0055】
なお、ここでは、伝達手段として、チェーン16を用いたが、ベルトや歯車など、周知の伝達手段であってもよい。また、回転部20a,20b自体に、直接、モータが取り付けられてもよい。さらに、何段階かの伝達手段を用いて、モータの回転が回転部20a,20bに伝わってもよい。
【0056】
揺動回転部19a,19bは、それぞれ、揺動回転盤19-1,19-3、揺動回転軸19-2、及び軸受19-4を有している。揺動回転軸19-2の中心19a-5,19b-5と、回転軸20-2の中心20a-5,20b-5とが、数ミリから数十ミリ程度ずれるように、揺動回転盤19-1及び揺動回転軸19-2が、回転部20a,20bの回転盤20-4に取り付けられている。揺動回転軸19-2には、軸受19-4を介して、揺動回転盤19-3が取り付けられている。
【0057】
このように、揺動回転部19a,19bの中心を、回転部20a,20bの中心から、偏心させることで、モータ16が回転すると、
図7の矢印で示したように、揺動回転軸19a,19bの中心19a-5,19b-5は、回転軸20a,20bの中心20a-5,20b-5を中心に、小さい円を描くように移動することとなる。その結果、
図7の点線で示したように、揺動フレーム17が、揺動することとなる。よって、最終的には、転結部18及び13を介して、連結されている噴射部5の先端の噴射ノズル5bが、小さい円を描くようにして、小刻みに揺れ動くように回転(揺動回転)することとなる。
【0058】
噴射ノズル5bを揺動するようにして、研削材が混合された高圧水をコンクリート等に噴射することで、幅を持たせて、コンクリート等を斫ることが可能である。
【0059】
なお、揺動機構部12による揺動機構は、アブレシブウォータージェットだけに使用されるものではなく、切削材を投射しないウォータージェットに用いてもよい。
【0060】
なお、上記実施形態では、二つの揺動回転部19b,19b及び二つの回転部20a,20bを用いることとしているが、どちらか一方を、スリットなどにしておいて、片方だけを用いることによっても、揺動フレーム17を揺動回転させることができる。そのため、本発明では、偏心している揺動回転部と回転部とは、少なくとも、それぞれ一つずつあればよい。
【0061】
また、回転部を介さず、直接、モータの回転軸を偏心させて、揺動回転部に取り付けることによっても、揺動フレーム17を揺動回転させることができる。
【0062】
なお、揺動機構部12としては、噴射ノズル5bを左右に揺動又は揺動回転させることができる機構であればよく、他の周知の揺動機構を用いてもよいことは、言うまでもない。
【0063】
なお、ホッパ4の内部の下部のニップル4bの上には、
図9に示すように、アーチアクション防止ブラケット4aが設けられていてもよい。アーチアクション防止ブラケット4aは、断面三角形状であり、上方からホッパ4を見た場合、少なくともニップル4bの穴が隠れる大きさを有している。アーチアクション防止ブラケット4aは、支持具4cとスライド具4dと用いて、上下にスライド可能となっており、適切な位置にスライドさせて使用する。アーチアクション防止ブラケット4aによって、研削材のアーチアクションによって空洞が生じるのを防止することができる。
【実施例】
【0064】
本発明は、コンクリート等の斫りに利用されるものであるが、その利用用途は、特に限定されるものではなく、アブレシブウォータージェットやウォータージェットを用いて斫ることが可能な対象物に広く利用される。
【0065】
本発明者らの実験によって、実施形態に係る斫り装置1が、鋼繊維補強コンクリート(SFRC:steel fiber reinforced concrete)を斫ることに有用であることが分かった。
【0066】
図8は、鋼繊維補強コンクリートを斫った結果を示す図面代用写真である。鋼繊維補強コンクリートは、たとえば、鋼板からなるデッキプレートの上に、施工されることがある。鋼繊維補強コンクリートは、コンクリートに鋼繊維を混合させることで、強度や耐衝撃性を高めている。
【0067】
道路橋などを補修する際には、この鋼繊維補強コンクリートを取り除く必要があるが、その際、鋼板であるところのデッキプレートを傷付けることなく、鋼繊維補強コンクリートのみを斫る必要がある。
【0068】
本実施形態の斫り装置1を用いれば、
図8に示すように、アブレシブウォータージェットによる効果によって、鋼繊維を斫りながら、かつ、揺動機構部12による効果によって、幅を持たせて、斫ることが可能となり、デッキプレートが傷付けられないことも確認できた。
【0069】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、斫り装置であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 斫り装置
2a,2b,2c 車輪
3 噴射ボックス
3a 吸引口
4 ホッパ
4a アーチアクション防止ブラケット
4b ニップル
4c 支持具
4d スライド具
5 噴射部
5a 高圧水供給口
5b 噴射ノズル
6a,6b,6c 研削材供給配管
7a,7b,7c 空気供給配管
8,10 継手
9 開閉バルブ
9a 第1の調整バルブ
9b 第2の調整バルブ
10a 固定絞り
11a ストレーナ
11b,11c ストレーナ配管
12 揺動機構部
13,18連結部
14 車体フレーム
15 移動用駆動部
15a ハンドル部
16 モータ
16a チェーン
17 揺動フレーム
19a,19b 揺動回転部
19b-1,19b-3 揺動回転盤
19b-2 揺動回転軸
19b-4 軸受
19a-5,19b-5 揺動回転軸中心
20a,20b 回転部
20b-1 スプロケット
20b-2 回転軸
20b-3 軸受
20b-4 回転盤
20a-5,20b-5 回転軸中心
20b-6 支持部
21 アイドラースプロケット