(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】めっき洗浄プロセスのオゾン処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/78 20230101AFI20230214BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20230214BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20230214BHJP
C25D 21/20 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C02F1/78
C02F1/50 531R
C02F1/50 510A
C02F1/50 520P
C02F1/50 550H
C02F1/50 550L
C02F1/50 540B
B08B3/04 Z
C25D21/20
(21)【出願番号】P 2020127854
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2021-11-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年2月21日に関東学院大学小田原キャンパスにおいて開催された、2019年度 第3回公開進捗報告会にて公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】599141227
【氏名又は名称】学校法人関東学院
(73)【特許権者】
【識別番号】591041369
【氏名又は名称】多田電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 治
(72)【発明者】
【氏名】山内 四郎
(72)【発明者】
【氏名】福井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】田鍬 紘信
(72)【発明者】
【氏名】中峠 美華
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-175340(JP,A)
【文献】特開2017-083135(JP,A)
【文献】特開2013-043135(JP,A)
【文献】実開平06-072695(JP,U)
【文献】特開2015-085211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70- 1/78
C02F 1/50
B08B 3/04
C25D 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽でめっき処理した被めっき品を洗浄水で洗浄する水洗槽と、オゾンガスを発生するオゾン発生装置と、前記オゾン発生装置で発生したオゾンガスを水溶液に溶解してオゾン溶解水を生成するオゾン溶解槽を備え、前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水を前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行い、
予め測定された、前記めっき槽の水質汚損濃度及びオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水温、及び前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のpHに基づいて、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入による、前記水洗槽のCOD濃度またはTOC濃度のいずれか一つである水質汚損濃度の変化を示す第1計算式と、前記水洗槽のオゾン水濃度変化を示す第2計算式と、前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化を示す第3計算式と、前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を示す第4計算式を導出し、
前記第1計算式は、めっき槽および前記オゾン溶解槽からそれぞれ前記水洗槽に流入する水質汚損濃度および水量と、前記水洗槽から流出する水質汚損濃度および水量と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および前記水洗槽の水質汚損濃度および前記水洗槽のオゾン水濃度と、前記水洗槽の容積とを用いて、前記水洗槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第2計算式は、前記めっき槽および前記オゾン溶解槽からそれぞれ前記水洗槽に流入するオゾン水濃度および水量と、前記水洗槽から流出するオゾン水濃度および水量と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および前記水洗槽の水質汚損濃度および前記水洗槽のオゾン水濃度と、前記水洗槽の容積とを用いて、前記水洗槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第3計算式は、前記オゾン溶解槽から前記水洗槽に流出する水質汚損濃度および水量と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、前記オゾン溶解槽の容積とを用いて、前記オゾン溶解槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第4計算式は、前記オゾン発生装置から前記オゾン溶解槽へのオゾンガス供給量およびオゾンガス濃度と、前記オゾン溶解槽から前記水洗槽へ流出するオゾン水濃度および水量と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、前記オゾン溶解槽の容積とを用いて、前記オゾン溶解槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第1、第2、第3及び第4計算式に基づき、前記水洗槽の水質汚損濃度の変化および前記水洗槽のオゾン濃度変化、並びに前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を導出
し、前記オゾン溶解槽へのオゾン投入量を決定するめっき洗浄プロセスのオゾン処理システム。
【請求項2】
前記水洗槽の洗浄水の一部は供給管を通して前記オゾン溶解槽に供給されており、
前記第1計算式は、前記めっき槽および前記オゾン溶解槽からそれぞれ前記水洗槽に流入する水質汚損濃度および水量と、前記水洗槽から前記オゾン溶解槽に流出および排出する水質汚損濃度および水量と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および前記水洗槽の水質汚損濃度および前記水洗槽のオゾン水濃度と、前記水洗槽の容積とを用いて、前記水洗槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第2計算式は、前記めっき槽および前記オゾン溶解槽からそれぞれ前記水洗槽に流入するオゾン水濃度および水量と、前記水洗槽から前記オゾン溶解槽に流出するオゾン水濃度および水量と、
前記水洗槽から排出するオゾン水濃度および水量と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および前記水洗槽の水質汚損濃度および前記水洗槽のオゾン水濃度と、前記水洗槽の容積とを用いて、前記水洗槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第3計算式は、前記水洗槽から前記オゾン溶解槽に流入する水質汚損濃度および水量と、前記オゾン溶解槽から前記水洗槽に流出する水質汚損濃度および水量と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、前記オゾン溶解槽の容積とを用いて、前記オゾン溶解槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第4計算式は、前記オゾン発生装置から前記オゾン溶解槽へのオゾンガス供給量およびオゾンガス濃度と、前記水洗槽から前記オゾン溶解槽に流入するオゾン水濃度および水量と、前記オゾン溶解槽から前記水洗槽へ流出するオゾン水濃度および水量と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、前記オゾン溶解槽の容積とを用いて、前記オゾン溶解槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第1、第2、第3及び第4計算式に基づき、前記水洗槽の水質汚損濃度の変化および前記水洗槽のオゾン濃度変化、並びに前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を導出
し、前記オゾン溶解槽へのオゾン投入量を決定する請求項1に記載のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システム。
【請求項3】
めっき槽でめっき処理した被めっき品を洗浄水で洗浄する水洗槽と、オゾンガスを発生するオゾン発生装置と、前記オゾン発生装置で発生したオゾンガスを水溶液に溶解してオゾン溶解水を生成するオゾン溶解槽を備え、前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水を前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行い、
前記水洗槽として、第1水洗槽、第2水洗槽、・・・第n水洗槽(nは整数)が多段に配置され、めっき処理した前記被めっき品は前記第1水洗槽、前記第2水洗槽、・・・前記第n水洗槽に順次浸漬されるとともに、それぞれの前記水洗槽に対応した前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水をそれぞれ前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行い、
予め測定された、前記めっき槽の水質汚損濃度及びオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水温、及び前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のpHに基づいて、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入による、各前記水洗槽のCOD濃度またはTOC濃度のいずれか一つである水質汚損濃度の変化を示す第1計算式と、各前記水洗槽のオゾン水濃度変化を示す第2計算式と、各前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化を示す第3計算式と、各前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を示す第4計算式を導出し、
前記第1計算式は、前段のめっき槽または前段の水洗槽および当該オゾン溶解槽からそれぞれ当該水洗槽に流入する水質汚損濃度および水量と、当該水洗槽からの排出および次段の水洗槽にそれぞれ流出する水質汚損濃度および水量と、当該水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および当該水洗槽の水質汚損濃度および当該水洗槽のオゾン水濃度と、当該水洗槽の容積とを用いて、当該水洗槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第2計算式は、前段のめっき槽または前段の水洗槽および当該オゾン溶解槽からそれぞれ当該水洗槽に流入するオゾン水濃度および水量と、当該水洗槽からの排出および次段の水洗槽にそれぞれ流出するオゾン水濃度および水量と、当該水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および当該水洗槽の水質汚損濃度および当該水洗槽のオゾン水濃度と、当該水洗槽の容積とを用いて、当該水洗槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第3計算式は、当該オゾン溶解槽から当該水洗槽に流出する水質汚損濃度および水量と、当該オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および当該オゾン溶解槽の水質汚損濃度および当該オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、当該オゾン溶解槽の容積とを用いて、当該オゾン溶解槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第4計算式は、前記オゾン発生装置から当該オゾン溶解槽へのオゾンガス供給量およびオゾンガス濃度と、当該オゾン溶解槽から当該水洗槽へ流出するオゾン水濃度および水量と、当該オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および当該オゾン溶解槽の水質汚損濃度および当該オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、当該オゾン溶解槽の容積とを用いて、当該オゾン溶解槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第1、第2、第3及び第4計算式に基づき、前記水洗槽の水質汚損濃度の変化および前記水洗槽のオゾン濃度変化、並びに前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を導出
し、前記オゾン溶解槽へのオゾン投入量を決定するめっき洗浄プロセスのオゾン処理システム。
【請求項4】
前記水洗槽の洗浄水の一部は供給管を通して前記オゾン溶解槽に供給されており、
前記第1計算式は、前段のめっき槽または前段の水洗槽および当該オゾン溶解槽からそれぞれ当該水洗槽に流入する水質汚損濃度および水量と、当該水洗槽からの排出および次段の水洗槽および当該オゾン溶解槽にそれぞれ流出する水質汚損濃度および水量と、当該水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および当該水洗槽の水質汚損濃度および当該水洗槽のオゾン水濃度と、当該水洗槽の容積とを用いて、当該水洗槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第2計算式は、前段のめっき槽または前段の水洗槽および当該オゾン溶解槽からそれぞれ当該水洗槽に流入するオゾン水濃度および水量と、当該水洗槽からの排出および次段の水洗槽および当該オゾン溶解槽にそれぞれ流出するオゾン水濃度および水量と、当該水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および当該水洗槽の水質汚損濃度および当該水洗槽のオゾン水濃度と、当該水洗槽の容積とを用いて、当該水洗槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第3計算式は、当該水洗槽から当該オゾン溶解槽に流入する水質汚損濃度および水量と、当該オゾン溶解槽から当該水洗槽に流出する水質汚損濃度および水量と、当該オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および当該オゾン溶解槽の水質汚損濃度および当該オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、当該オゾン溶解槽の容積とを用いて、当該オゾン溶解槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第4計算式は、前記オゾン発生装置から当該オゾン溶解槽へのオゾンガス供給量およびオゾンガス濃度と、当該水洗槽から当該オゾン溶解槽に流入するオゾン水濃度および水量と、当該オゾン溶解槽から当該水洗槽へ流出するオゾン水濃度および水量と、当該オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および当該オゾン溶解槽の水質汚損濃度および当該オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、当該オゾン溶解槽の容積とを用いて、当該オゾン溶解槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第1、第2、第3及び第4計算式に基づき、前記水洗槽の水質汚損濃度の変化および前記水洗槽のオゾン濃度変化、並びに前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を導出
し、前記オゾン溶解槽へのオゾン投入量を決定する請求項3に記載のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システム。
【請求項5】
前記水洗槽の残存オゾン濃度が、前記水洗槽に存在する細菌の最低致死オゾン濃度以上である請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システム。
【請求項6】
前記水洗槽において、残存オゾン濃度Cと、細菌との反応時間tとの積であるC・t値を用いたオゾンによる前記細菌の除去率を表した式である(1-10
kCt)×100(%)が、90%以上となるようにする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システム。ただし、kはChick-Watson係数。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、めっき洗浄プロセスのオゾン処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
めっきプロセスでは被めっき品を洗浄する多くの水洗工程が存在する。水洗行程の目的は、直前の処理液槽から上がってきた被めっき品表面を水洗槽でゆすいできれいな表面とし、次の工程に引き渡すことである。
めっき洗浄プロセスに使用される水洗槽では、補給水中に含まれる細菌がめっき薬液成分を栄養源として繁殖し、光が当たることで藻が発生し、被めっき品表面に付着し、めっき品質を低下させる。従来、藻の発生抑止、並びに、藻の発生要因となる細菌を殺菌するためにサラシ粉などの塩素系薬剤が投与されていた。塩素系殺菌剤は殺菌効果が十分ではなく、大量の投与が必要であった。また、塩素系殺菌剤は残留性があるために、処理後の水処理が必要であった。
水中の細菌を殺菌する方法は薬剤を用いる報告(下記の特許文献1参照)もあるが、薬剤自身並びに薬剤と水中溶存物質との反応生成物が水洗槽内部に残留する可能性があり、人体に有害な可能性もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、優れた水質浄化能力を有し、投与後の残留性がないめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に開示されるめっき洗浄水のオゾン処理システムは、
めっき槽でめっき処理した被めっき品を洗浄水で洗浄する水洗槽と、オゾンガスを発生するオゾン発生装置と、前記オゾン発生装置で発生したオゾンガスを水溶液に溶解してオゾン溶解水を生成するオゾン溶解槽を備え、前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水を前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行い、
予め測定された、前記めっき槽の水質汚損濃度及びオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水温、及び前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のpHに基づいて、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入による、前記水洗槽のCOD濃度またはTOC濃度のいずれか一つである水質汚損濃度の変化を示す第1計算式と、前記水洗槽のオゾン水濃度変化を示す第2計算式と、前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化を示す第3計算式と、前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を示す第4計算式を導出し、
前記第1計算式は、めっき槽および前記オゾン溶解槽からそれぞれ前記水洗槽に流入する水質汚損濃度および水量と、前記水洗槽から流出する水質汚損濃度および水量と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および前記水洗槽の水質汚損濃度および前記水洗槽のオゾン水濃度と、前記水洗槽の容積とを用いて、前記水洗槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第2計算式は、前記めっき槽および前記オゾン溶解槽からそれぞれ前記水洗槽に流入するオゾン水濃度および水量と、前記水洗槽から流出するオゾン水濃度および水量と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および前記水洗槽の水質汚損濃度および前記水洗槽のオゾン水濃度と、前記水洗槽の容積とを用いて、前記水洗槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第3計算式は、前記オゾン溶解槽から前記水洗槽に流出する水質汚損濃度および水量と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、前記オゾン溶解槽の容積とを用いて、前記オゾン溶解槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第4計算式は、前記オゾン発生装置から前記オゾン溶解槽へのオゾンガス供給量およびオゾンガス濃度と、前記オゾン溶解槽から前記水洗槽へ流出するオゾン水濃度および水量と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、前記オゾン溶解槽の容積とを用いて、前記オゾン溶解槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第1、第2、第3及び第4計算式に基づき、前記水洗槽の水質汚損濃度の変化および前記水洗槽のオゾン濃度変化、並びに前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を導出し、前記オゾン溶解槽へのオゾン投入量を決定するものである。
また、本願に開示されるめっき洗浄水のオゾン処理システムは、
めっき槽でめっき処理した被めっき品を洗浄水で洗浄する水洗槽と、オゾンガスを発生するオゾン発生装置と、前記オゾン発生装置で発生したオゾンガスを水溶液に溶解してオゾン溶解水を生成するオゾン溶解槽を備え、前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水を前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行い、
前記水洗槽として、第1水洗槽、第2水洗槽、・・・第n水洗槽(nは整数)が多段に配置され、めっき処理した前記被めっき品は前記第1水洗槽、前記第2水洗槽、・・・前記第n水洗槽に順次浸漬されるとともに、それぞれの前記水洗槽に対応した前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水をそれぞれ前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行い、
予め測定された、前記めっき槽の水質汚損濃度及びオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度、前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽の水温、及び前記水洗槽及び前記オゾン溶解槽のpHに基づいて、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入による、各前記水洗槽のCOD濃度またはTOC濃度のいずれか一つである水質汚損濃度の変化を示す第1計算式と、各前記水洗槽のオゾン水濃度変化を示す第2計算式と、各前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化を示す第3計算式と、各前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を示す第4計算式を導出し、
前記第1計算式は、前段のめっき槽または前段の水洗槽および当該オゾン溶解槽からそれぞれ当該水洗槽に流入する水質汚損濃度および水量と、当該水洗槽からの排出および次段の水洗槽にそれぞれ流出する水質汚損濃度および水量と、当該水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および当該水洗槽の水質汚損濃度および当該水洗槽のオゾン水濃度と、当該水洗槽の容積とを用いて、当該水洗槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第2計算式は、前段のめっき槽または前段の水洗槽および当該オゾン溶解槽からそれぞれ当該水洗槽に流入するオゾン水濃度および水量と、当該水洗槽からの排出および次段の水洗槽にそれぞれ流出するオゾン水濃度および水量と、当該水洗槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および当該水洗槽の水質汚損濃度および当該水洗槽のオゾン水濃度と、当該水洗槽の容積とを用いて、当該水洗槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第3計算式は、当該オゾン溶解槽から当該水洗槽に流出する水質汚損濃度および水量と、当該オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数および当該オゾン溶解槽の水質汚損濃度および当該オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、当該オゾン溶解槽の容積とを用いて、当該オゾン溶解槽における水質汚損濃度の変化を導出し、
前記第4計算式は、前記オゾン発生装置から当該オゾン溶解槽へのオゾンガス供給量およびオゾンガス濃度と、当該オゾン溶解槽から当該水洗槽へ流出するオゾン水濃度および水量と、当該オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応を示す係数およびオゾンの自己分解係数および当該オゾン溶解槽の水質汚損濃度および当該オゾン溶解槽のオゾン水濃度と、当該オゾン溶解槽の容積とを用いて、当該オゾン溶解槽におけるオゾン水濃度の変化を導出し、
前記第1、第2、第3及び第4計算式に基づき、前記水洗槽の水質汚損濃度の変化および前記水洗槽のオゾン濃度変化、並びに前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化および前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を導出し、前記オゾン溶解槽へのオゾン投入量を決定するものである。
【発明の効果】
【0006】
本願に開示されるめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムによれば、優れた水質浄化能力を有し、投与後の残留性がない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本願のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムの基本構成を示す図である。
【
図2】オゾン濃度と殺菌効果のある菌初期濃度の関係を表した図である。
【
図3】溶存オゾン濃度と菌とオゾンの接触時間を基にオゾンによるレジオネラ属菌の除去率を求めた図である。
【
図4】本願の多段向流水洗槽を有するめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムの構成と処理フロー図を示した図である。
【
図5】本願の3段の多段向流水洗槽を有するめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムの構成と処理フロー図を示した図である。
【
図6】
図7の試験条件の下でオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の実測値と、本願の計算式によるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の計算値との比較を示す図である。
【
図8】
図9および
図10の試験条件の下で、オゾン濃度変化およびCOD濃度変化の実測値と、本願の計算式によるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の計算値との比較を示す図である。
【
図11】
図9及び
図10の試験条件の下で、オゾン処理の前後の一般細菌の濃度変化を示した図である。
【
図12】実施例1による各オゾン溶解槽および各水洗槽のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の計算値を示した図である。
【
図13】実施例2による各水洗槽のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の計算値を示した図である。
【
図14】実施例3による各水洗槽のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の計算値を示した図である。
【
図15】実施例4による第1水洗槽のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の計算値を示した図である。
【
図16】実施例5による第1水洗槽のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の計算値を示した図である。
【
図17】実施例6による第1水洗槽のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の計算値を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本願のオゾン処理システムの基本構成]
図1は本願のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムの基本構成を示す図である。
図1に示すめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムは、めっき槽10に浸漬されてめっき処理される被めっき品20を洗浄水で洗浄する水洗槽WTと、オゾンガスを発生するオゾン発生装置OGと、オゾン発生装置OGで発生したオゾンガスを水溶液に溶解してオゾン溶解水を生成するオゾン溶解槽OTとを備え、オゾン溶解槽OTで生成したオゾン溶解水を水洗槽WTに供給して洗浄水の水質浄化を行うものである。
【0009】
図1において、オゾン発生装置OGで発生したオゾンガスは供給管30を通してオゾン溶解槽OTに供給される。オゾン溶解槽OTで生成したオゾン溶解水は供給管40を通して水洗槽WTに供給される。オゾン発生装置OGから水洗槽WTへ高濃度オゾンガスが直接供給されると、オゾンガスと接触する被めっき品20の表面の酸化が急速に進み品質が劣化する。また、水洗槽WT内で溶けきれなかった高濃度オゾンガスが作業環境に流れ出て作業者の健康に悪影響を与える。これらを避けるためオゾン溶解槽OTにオゾンガスを供給してオゾン溶解水を生成し、生成したオゾン溶解水を水洗槽WTへ供給する。オゾン溶解槽OTの未溶解オゾンガスはオゾン分解槽ODへ送出され、酸素に分解されて大気放出される。
【0010】
また、水洗槽WTの底部から表面部に向かって洗浄水を循環する循環管50とポンプPが配置されている。さらに、水洗槽WTの洗浄水の一部はポンプPにより供給管60を通してオゾン溶解槽OTに供給されている。また、水洗槽WTには補給水Winが供給され、水洗槽WT1からは排出水Woutが排出される。
【0011】
[オゾン濃度と殺菌効果のある菌初期濃度の関係]
次に、オゾン濃度と殺菌効果のある菌初期濃度の関係について説明する。
水洗槽WT内に藻が発生するのは細菌の存在と密接な関係がある。オゾン濃度と殺菌効果のある菌初期濃度の関係を
図2に示す。菌の種類により殺菌に必要なオゾン濃度は異なる。本願の創作の過程で藻の発生を抑制するには細菌として比較的オゾンに対して抵抗性のあるレジオネラ属菌を指標細菌とすることで、殺藻効果のあるオゾン濃度を設定できることが明らかになった。
図2のレジオネラ属菌の直線A2よりも上側であれば、殺菌が不十分であることを示している。それとは反対に、
図2のレジオネラ属菌の直線A2よりも下側であれば、殺菌が有効であることを示している。なお、
図2において(細胞/100ml)の細胞は細胞数の意味である。
【0012】
殺菌可能なオゾン濃度領域でレジオネラ属菌濃度が1/10になるまでのオゾン濃度C(ppm)と反応時間t(min)の積C・tは1.88であるとEdelsteinが報告している。C・t値を用いた菌残存率(N/N0)の算出式はChick-Watsonの関係式(1)で表される。ここにN0は殺菌前の菌濃度、Nは殺菌後の菌濃度、kはChick-Watson係数である。この式(1)から殺菌剤濃度C(ppm)と反応時間t(min)を与えれば菌残存率(N/N0)がN0の濃度に関わらず求まる。
log(N/N0)=k・C・t ・・・(1)
【0013】
オゾンによる殺菌の場合Edelsteinが報告した値N/N0=1/10のときのCt=1.88を用いてkは-0.532となる。
したがって、式(1)よりN/N0=10
kCtであるので、この式を用いて、反応時間tをパラメータとしたオゾン濃度とレジオネラ属菌除去率((N0-N)/N0)×100%の関係を
図3に示す。即ち藻の除去率を90%以上とするには、オゾン濃度が0.5ppmのとき反応時間を4.2min、オゾン濃度が1.0ppmのとき反応時間を2.0min、オゾン濃度が2.0ppmのとき反応時間を1.2min、とればよいことが明らかになった。
【0014】
[多段水洗の場合のオゾン処理システム]
めっきプロセスの水洗工程において、通常、2回以上の水洗を行う多段水洗が実施される。多段水洗の方式には、各水洗槽ごとに給水する並列多段水洗と、一番最後の水洗槽だけに給水する直列多段水洗があり、後者は多段向流水洗と呼ばれる。
多段水洗の場合、各水洗槽の温度、pH、水質汚損濃度(COD濃度またはTOC濃度)が異なっているため、各水洗槽の温度、pH、水質汚損濃度を考慮したオゾン処理が必要となる。なお、水質汚損濃度(COD濃度またはTOC濃度)については後述する。
【0015】
図4は、多段向流水洗槽を有するめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムの構成と処理フロー図を示した図である。
図4において、水洗槽WTとして、第1水洗槽WT1、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3、・・・第n水洗槽WTnが多段に配置されている。めっき槽10に浸漬した被めっき品20は第1水洗槽WT1、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3、・・・第n水洗槽WTnに順次浸漬し、前の水洗槽のめっき浴成分をくみ出し量θとして伴いながら次の水洗槽へ移動し、被めっき品20はめっき浴成分が除かれていく。
補給水Winは一番最後の第n水洗槽WTnに供給され、オーバーフロー水Wovは、被めっき品20の移動とは逆方向、つまり第n水洗槽WTn、・・・第3水洗槽WT3、第2水洗槽WT2に移動し、最終的に第1水洗槽WT1から系外に排出水Woutとして排出される。
オゾン発生装置OGはオゾンガスを生成し、オゾン発生装置OGで発生したオゾンガスは供給管30を通して、それぞれ第1オゾン溶解槽OT1、第2オゾン溶解槽OT2、第3オゾン溶解槽OT3、・・・第nオゾン溶解槽OTnに供給される。第1~第nオゾン溶解槽OT1~OTnで生成したオゾン溶解水はそれぞれ供給管40を通して第1~第n水洗槽WT1~WTnに供給され、当該水洗槽の不純物成分の酸化分解、及び殺菌に寄与する。
第1~第n水洗槽WT1~WTnには、各水洗槽の底部から表面部に向かって洗浄水を循環する管50とポンプPが配置されている。また、第1~第n水洗槽WT1~WTnの洗浄水の一部はポンプPにより供給管60を通して第1~第nオゾン溶解槽OT1~OTnに供給される。
第1~第nオゾン溶解槽OT1~OTnの未溶解オゾンガスは、オゾン分解槽ODへ送出され、酸素に分解して無害なガスとして系外に排出される。
【0016】
図4における符号及び記号は、それぞれ以下の内容を表している。
C
00:めっき槽のCOD濃度(単位は[mg/L])、
C
01~C
0n:第1水洗槽~第n水洗槽のCOD濃度(単位は[mg/L])、
C
11~C
1n:第1オゾン溶解槽~第nオゾン溶解槽のCOD濃度(単位は[mg/L])、
D
00:めっき槽のオゾン水濃度(単位は[mg/L])、
D
01~D
0n:第1水洗槽~第n水洗槽のオゾン水濃度(単位は[mg/L])、
D
10:オゾン発生装置のオゾンガス濃度(単位は[mg/L])、
D
11~D
1n:第1オゾン溶解槽~第nオゾン溶解槽のオゾン水濃度(単位は[mg/L])、
Q
01~Q
0n:第1水洗槽~第n水洗槽の循環水量(単位は[L/min])、
L
01~L
0n:第1水洗槽~第n水洗槽から第1オゾン溶解槽~第nオゾン溶解槽への供給水量、並びに、第1オゾン溶解槽~第nオゾン溶解槽から第1水洗槽~第n水洗槽への供給水量(単位は[L/min])、
G
01~G
0n:オゾン発生装置から第1オゾン溶解槽~第nオゾン溶解槽へのオゾンガス供給量(単位は[L/min])、
G
00:オゾン発生装置から全オゾン溶解槽へのオゾンガス供給量(単位は[L/min])、
V
01~V
0n:第1水洗槽~第n水洗槽の容積(単位は[L])、
V
11~V
1n:第1オゾン溶解槽~第nオゾン溶解槽の容積(単位は[L])。
【0017】
ここで、CODは、代表的な水質の指標の一つであり、化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand)を意味し、水中の被酸化性物質を酸化するために必要とする酸素量で示されるものである。
そして、本願でいう「COD濃度」とは、特許請求の範囲に記載した「水質汚損濃度」の一つとして位置づけられ、化学的酸素要求量として測定された酸化剤、特に過マンガン酸カリウムの消費量に反応した「被酸化性物質(汚損成分)」の濃度を表す。
また、TOCも、代表的な水質の指標の一つであり、全有機炭素(Total Organic Carbon)を意味し、「TOC濃度」は水中の酸化されうる有機物の全量を単位水溶液当たりの炭素の量(mg/Lまたはppm)で示したものである。オゾンにより酸化され、有機化合物(アルデヒド、カルボン酸、一酸化炭素、二酸化炭素など)になりうる。
さらに、本願でいう「TOC濃度」とは、特許請求の範囲に記載した「水質汚損濃度」の一つとして位置づけられ、TOCはCODと同様にオゾン消費物質となる。
【0018】
[3段水洗の場合のオゾン処理システム]
次に、3段向流水槽の場合のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムについて説明する。
図5は、3段向流水洗槽を有するめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムの構成と処理フロー図を示した図である。
図5の3段向流水洗槽を有するオゾン処理システムは、
図4のn段向流水洗槽を有するオゾン処理システムにおいて、n=3としたもので、
図5に示した符号および記号は
図4に示したものと同様であり、その説明は適宜省略する。
【0019】
以下の計算式は、3段の多段向流水槽の場合のめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムの各水洗槽及び各オゾン溶解槽における、水質汚損濃度(COD濃度[mg/L])の変化とオゾン濃度(D[mg/L])の変化を求める計算式である。
ここで、パラメータとして、各水洗槽の水温[絶対温度:K]、pH値、オゾンの自己分解係数その1:K1、オゾンの自己分解係数その2:K2、オゾンと汚損成分(COD等)との反応係数K3、水中から散逸するオゾンの割合:散逸係数r、補給水量W(L/min)、めっき品に随伴して持ち出される汲出し量θ[L/min]である。
【0020】
[3段水洗の場合の計算式]
[1]水洗槽のCOD濃度変化(なお、水洗槽の水質汚損濃度(COD濃度)変化を表す計算式を特許請求の範囲では第1計算式と呼んでいる)
(1)第1水洗槽のCOD濃度変化
dC01/dt=C00θ/V01+C02W/V01+L01C11/V01-K3C01D01-WC01/V01-L01C01/V01-C01θ/V01・・・式(11)
(第1水洗槽のCOD濃度変化)=(めっき槽からの流入)+(第2水洗槽からの流入)+(第1オゾン溶解槽からの流入)-(第1水洗槽のオゾンの反応・分解)-(第1水洗槽からのオーバーフロー)-(第1オゾン溶解槽への返送)-(第2水洗槽への流出)
(2)第2水洗槽のCOD濃度変化
dC02/dt=C01θ/V02+C03W/V02+L02C12/V02-K3C02D02-WC02/V02-L02C02/V02-C02θ/V02・・・式(12)
(第2水洗槽のCOD濃度変化)=(第1水洗槽からの流入)+(第3水洗槽からの流入)+(第2オゾン溶解槽からの流入)-(第2水洗槽のオゾンの反応・分解)-(第2水洗槽からのオーバーフロー)-(第2オゾン溶解槽への返送)-(第3水洗槽への流出)
(3)第3水洗槽のCOD濃度変化
dC03/dt=C02θ/V03+0W/V03+L03C13/V03-K3C03D03-WC03/V03-L03C03/V03-C03θ/V03・・・式(13)
(第3水洗槽のCOD濃度変化)=(第2水洗槽からの流入)+(補給水からの流入)+(第3オゾン溶解槽からの流入)-(第3水洗槽のオゾンの反応・分解)-(第3水洗槽からのオーバーフロー)-(第3オゾン溶解槽への返送)-(第3水洗槽からの流出)
【0021】
[2]オゾン溶解槽のCOD濃度変化(なお、オゾン槽の水質汚損濃度(COD濃度)変化を表す計算式を特許請求の範囲では第3計算式と呼んでいる)
(1)第1オゾン溶解槽のCOD濃度変化
dC11/dt=L01C01/V11-K3C11D11-L01C11/V11・・・式(21)
(第1オゾン溶解槽のCOD濃度変化)=(第1水洗槽からの流入)-(第1オゾン溶解槽のオゾンの反応・分解)-(第1オゾン溶解槽への返送)
(2)第2オゾン溶解槽のCOD濃度変化
dC12/dt=L02C02/V12-K3C12D12-L02C12/V12・・・式(22)
(第2オゾン溶解槽のCOD濃度変化)=(第2水洗槽からの流入)-(第2オゾン溶解槽のオゾンの反応・分解)-(第2オゾン溶解槽への返送)
(3)第3オゾン溶解槽のCOD濃度変化
dC13/dt=L03C03/V13-K3C13D13-L03C13/V13・・・式(23)
(第3オゾン溶解槽のCOD濃度変化)=(第3水洗槽からの流入)-(第3オゾン溶解槽のオゾンの反応・分解)-(第3オゾン溶解槽への返送)
【0022】
[3]水洗槽のオゾン水濃度変化(なお、水洗槽のオゾン水濃度変化を表す計算式を特許請求の範囲では第2計算式と呼んでいる)
(1)第1水洗槽のオゾン水濃度変化
dD01/dt=D00θ/V01+D02W/V01+L01D11/V01-(1/48000)0.5K1D01
1.5-K2D01-K3C01D01-Q01D01r/V01-WD01/V01-L01D01/V01-D01θ/V01・・・式(31)
(第1水洗槽のオゾン水濃度変化)=(めっき槽からの流入)+(第2水洗槽からの流入)+(第1オゾン溶解槽からの流入)-(第1水洗槽のオゾンの反応・分解)―(気相へのオゾン散逸)―(第1水洗槽からのオーバーフロー)-(第1オゾン溶解槽への返送)-(第2水洗槽への流出)
(2)第2水洗槽のオゾン水濃度変化
dD02/dt=D01θ/V02+D03W/V02+L02D12/V02-(1/48000)0.5K1D02
1.5-K2D02-K3C02D02-Q02D02r/V02-WD02/V02-L02D02/V02-D02θ/V02・・・式(32)
(第2水洗槽のオゾン水濃度変化)=(第1水洗槽からの流入)+(第3水洗槽からの流入)+(第2オゾン溶解槽からの流入)-(第2水洗槽のオゾンの反応・分解)―(気相へのオゾン散逸)―(第2水洗槽からのオーバーフロー)-(第2オゾン溶解槽への返送)-(第3水洗槽への流出)
(3)第3水洗槽のオゾン水濃度変化
dD03/dt=D02θ/V03+0W/V02+L03D13/V03-(1/48000)0.5K1D03
1.5-K2D03-K3C03D03-Q03D03r/V03-WD03/V03-L03D03/V03-D03θ/V03・・・式(33)
(第3水洗槽のオゾン水濃度変化)=(第2水洗槽からの流入)+(補給水からの流入)+(第3オゾン溶解槽からの流入)-(第3水洗槽のオゾンの反応・分解)―(気相へのオゾン散逸)―(第3水洗槽からのオーバーフロー)-(第3オゾン溶解槽への返送)―(第3水洗槽からの流出)
【0023】
[4]オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化(なお、オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を表す計算式を特許請求の範囲では第4計算式と呼んでいる)
(1)第1オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化
dD11/dt=L01D01/V11+G01D10η11/V11-(1/48000)0.5K1D11
1.5-K2D11-K3C11D11-L01D11/V11・・・式(41)
(第1オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化)=(第1水洗槽からの流入)+(オゾン発生装置からの供給)-(第1オゾン溶解槽のオゾンの反応・分解)-(第1オゾン溶解槽への供給)
(2)第2オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化
dD12/dt=L02D02/V12+G02D10η12/V12-(1/48000)0.5K1D12
1.5-K2D12-K3C12D12-L02D12/V12・・・式(42)
(第2オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化)=(第2水洗槽からの流入)+(オゾン発生装置からの供給)-(第2オゾン溶解槽のオゾンの反応・分解)-(第2オゾン溶解槽への供給)
(3)第3オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化
dD13/dt=L03D03/V13+G03D10η13V13-(1/48000)0.5K1D13
1.5-K2D13-K3C13D13-L03D13/V13・・・式(43)
(第3オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化)=(第3水洗槽からの流入)+(オゾン発生装置からの供給)-(第3オゾン溶解槽のオゾンの反応・分解)-(第3オゾン溶解槽への供給)
【0024】
上記計算式における各係数は以下の通りである。
K
1、K
2はオゾンの自己分解係数(rate constants of ozone decomposition)、K
3はオゾンと汚損成分(COD成分等)の反応係数を表している。なお、K
3の単位は[1/60min]である。
例えば、第1水洗槽のオゾン水濃度変化の式(31)における
(第1水洗槽のオゾンの反応・分解)=(1/48000)
0.5K
1D
01
1.5+K
2D
01+K
3C
01D
01、の項において、
(第1水洗槽のオゾンの分解)=(1/48000)
0.5K
1D
01
1.5+K
2D
01・・・式(A)、
(第1水洗槽のオゾンの反応)=K
3C
01D
01・・・式(B)であり、
式(A)は諸岡成治らの論文(諸岡成治ら、化学工学論文集、第4巻、第5号、p377、1978)によるものである。
ここで、K
1とK
2は下式に示すように水酸イオン濃度[OH](単位は[gイオン/L]と、絶対温度T(単位は[K])の関数である。
K
1=4.6×10
13[OH]
0.28exp(-9013/T)[mol
-0.5L
0.5(1/60min)
-0.5]、
K
2=1.8×10
18[OH]exp(-10373/T)[1/60min]、
である。なお、
図7、
図10においても、K
1、K
2、K
3の単位は前記と同じである。
【0025】
また、rは散逸係数を表している。
η11、η12、η13は第1~第3オゾン溶解槽内のオゾン吸収効率を表している。
【0026】
上記計算式では、水質汚染濃度の変化として、COD濃度変化を使用したが、TOC濃度変化も同様に適用することができる。なお、K3はオゾンと汚損成分(TOC成分)の反応係数を表すことになる。
【0027】
[上記計算式による予測可能性]
図6は、
図7の試験条件の下において、第1水洗槽WT1におけるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の実測値と、上記計算式によるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の計算値との比較を示す図である。
図6において、第1水洗槽WT1におけるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の実測値と、上記計算式によるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の計算値とは比較的良い一致を示した。この結果から、上記計算式により各水洗槽のオゾン濃度変化及びCOD濃度変化の予測が可能となり、上記計算式に基づいてオゾン処理システムの最適設計に反映することができるようになった。
【0028】
[オゾン処理と殺菌の関係]
図8は、
図9及び
図10の試験条件(電解水洗1段)の下において、第1水洗槽WT1及び第1オゾン溶解槽OT1におけるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の実測値と、上記計算式によるオゾン濃度変化およびCOD濃度変化の計算値との比較を示す図である。
さらに、
図11は、同じく
図9及び
図10の試験条件(電解水洗1段)の下において、オゾン処理の前後の一般細菌の濃度変化を示したものである。
ここで、一般細菌とは、水中に存在する細菌の総数を表すものではなく、特定の培養条件下で集落を形成する細菌数を表したものである。具体的には、JISK0350-10-10の用水・排水中の一般細菌試験方法で検出される細菌である。
図2および
図3で説明したレジオネラ属菌は専用の培養条件で培養されるので一般細菌と同じとは断定できない。しかし、一般細菌の殺菌に必要とされるオゾン濃度は大腸菌の場合よりも高く、レジオネラ属菌の殺菌に必要なオゾン濃度も大腸菌の場合より高い(
図2参照)ので、一般細菌を指標とした。
図11に示すように、
図8に示すオゾン濃度変化により、
図2および
図3で説明したオゾン濃度と殺菌時間の関係から十分に殺菌できることが予想され、実際に殺菌効果を確認した。
ここで、水洗槽において、投入オゾン量=(汚損成分(COD成分またはTOC成分)と反応した量)+(オゾンが自己分解した量)+(大気中に散逸した量)+(残存オゾン量)の式が成り立つ。
上式の右辺を水洗槽の水量で割った値がそれぞれの濃度になる。
図2および
図3に記載の溶存オゾン濃度は上式の未反応の残存オゾン濃度に対応している。大腸菌、レジオネラ属菌の殺菌において、初期菌数濃度が与えられたとき、汚損成分(COD成分等)が多い場合は残存オゾン量が減り、より多くの投入オゾン量が必要となり、汚損成分(COD成分)が少ない場合は、少ない投入オゾン量で済ませることができることがわかる。
【0029】
[実施例]
実施例1.
図12(実施例1)は、本願で提案した複数水洗槽内へオゾン溶解槽からオゾンを供給した場合の計算式を用いて、各オゾン溶解槽並びに各水洗槽内のオゾン濃度変化とCOD濃度変化を示した図である。第1水洗槽WT1の水温T1は22℃、第2水洗槽WT2の水温T2は20℃、第3水洗槽WT3の水温T3は18℃である。第1水洗槽WT1のpHは2、第2水洗槽WT2のpHは3、第3水洗槽WT3のpHは7とした。各オゾン溶解槽からの各水洗槽へのオゾン供給水量は、第1水洗槽WT1は0.7L/min、第2水洗槽WT2は2.0L/min、第3水洗槽WT3は2.1L/minとした。
【0030】
実施例2.
図13(実施例2)は、各オゾン溶解槽へのオゾンガスの供給量が等しい場合の各水洗槽内のオゾン濃度変化とCOD濃度の変化を示した図である。第1水洗槽WT1、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3の水温T1、T2、T3は20℃である。第1水洗槽WT1のpHは2、第2水洗槽WT2のpHは3、第3水洗槽WT3のpHは6とした。各オゾン溶解槽からの各水洗槽へのオゾン供給水量は、各水洗槽あたり2.0L/minとした。
【0031】
実施例3.
図14(実施例3)は、各オゾン溶解槽へのオゾンガスの供給量が異なった場合の各水洗槽のオゾン濃度変化とCOD濃度変化を示した図である。第1水洗槽WT1、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3の水温T1、T2、T3は20℃である。第1水洗槽WT1のpHは2、第2水洗槽WT2のpHは3、第3水洗槽WT3のpHは6とした。各オゾン溶解槽からの各水洗槽へのオゾン供給水量は、第1水洗槽は4.5L/min、第2水洗槽は1.0L/min、第3水洗槽は0.5L/minとした。
【0032】
図12(実施例1)は、多段向流水槽の段数が3段の場合の各水洗槽の温度、pH、COD濃度が異なる場合の実際の条件下での計算結果である。今回提案した計算式を適用することにより、各水洗槽並びに各オゾン溶解槽内のオゾン濃度変化とCOD濃度変化を予想できるようになり、無駄のない経済的な適用が可能となった。
多段向流水槽は第1水洗槽WT1のCOD濃度が一番高く、順次、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3と濃度が下がっていく。またpHの値、温度もそれぞれの水槽で異なる。
図13(実施例2)と
図14(実施例3)は多段向流水槽の段数が3段の場合の同じ条件下で、各オゾン溶解槽へのオゾンガスの供給比率を同じにした場合(
図13)と異なった場合(
図14)の比較したものである。
図13における各水洗槽内のCOD濃度の値が1mg/L~7mg/Lとなるのに比較して、
図14の場合は0.5mg/L~3mg/L程度と低い値になっている。即ち、各水洗槽へのオゾンガス供給量を各水洗槽の水質に応じて配分することにより、オゾンが効果的に水質浄化に供せられることを示している。
【0033】
実施例4.
図15(実施例4)は水洗槽への補給水量が大(1L/min)の場合のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の関係を示した図である。第1水洗槽WT1、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3の水温T1、T2、T3は20℃である。第1水洗槽WT1のpHは2、第2水洗槽WT2のpHは3、第3水洗槽WT3のpHは6とした。各オゾン溶解槽からの各水洗槽へのオゾン供給水量は、各水洗槽あたり2.0L/minとした。補給水量は1L/minとした。
【0034】
実施例5.
図16(実施例5)は、水洗槽への補給水量が中(0.1L/min)の場合のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の関係を示した図である。第1水洗槽WT1、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3の水温T1、T2、T3は20℃である。第1水洗槽WT1のpHは2、第2水洗槽WT2のpHは3、第3水洗槽WT3のpHは6とした。各オゾン溶解槽からの各水洗槽へのオゾン供給水量は、各水洗槽あたり2.0L/minとした。補給水量は0.1L/minとした。
【0035】
実施例6.
図17(実施例6)は、水洗槽への補給水量が小(0.01L/min)の場合のオゾン濃度変化とCOD濃度変化の関係を示した図である。第1水洗槽WT1、第2水洗槽WT2、第3水洗槽WT3の水温T1、T2、T3は20℃である。第1水洗槽WT1のpHは2、第2水洗槽WT2のpHは3、第3水洗槽WT3のpHは6とした。各オゾン溶解槽からの各水洗槽へのオゾン供給水量は、各水洗槽あたり2.0L/minとした。補給水量は0.01L/minとした。
【0036】
図15、
図16、
図17は、多段向流水槽の段数が3段の場合の補給水量を1L/min、0.1L/min、0.01L/minと変え、その他は同じ条件での第1水洗槽WT1のオゾン濃度変化とCOD濃度変化を比較したものである。補給水量を1/100分の1に絞ってもCOD濃度は3.2から7程度に上昇するのみであるため、補給水量を減らすことができ、またコストを低減することが可能となった。
【0037】
[本願のオゾン処理システムの変形例]
前述にて説明したオゾン処理システムは、水洗槽WT(WT1、WT2、WT3、・・・)の洗浄水の一部をオゾン溶解槽OT(OT1、OT2、OT3、・・・)に供給している構成となっているが、水洗槽WT(WT1、WT2、WT3、・・・)の洗浄水をオゾン溶解槽OT(OT1、OT2、OT3、・・・)に供給しない構成であっても本願が適用可能であることは明らかである。なお、この場合、オゾン溶解槽OT(OT1、OT2、OT3、・・・)には補給水が供給されることになる。
この場合、前述した計算式は、下記のようになる。
(1)水洗槽のCOD濃度変化を表す第1計算式において、例えば、第1水洗槽のCOD濃度変化の計算式(11)は、(第1オゾン溶解槽への返送)の項が消えて、
dC01/dt=C00θ/V01+C02W/V01+L01C11/V01-K3C01D01-WC01/V01-C01θ/V01・・・式(11-1)
(第1水洗槽のCOD濃度変化)=(めっき槽からの流入)+(第2水洗槽からの流入)+(第1オゾン溶解槽からの流入)-(第1水洗槽のオゾンの反応・分解)-(第1水洗槽からのオーバーフロー)-(第2水洗槽への流出)
となる。
(2)また、オゾン溶解槽のCOD濃度を表す第3計算式は、考慮しなくて良くなる。
(3)さらに、水洗槽のオゾン水濃度変化を表す第2計算式において、例えば、第1水洗槽のオゾン水濃度変化の計算式(31)(第2計算式)は、(第1オゾン溶解槽への返送)の項が消えて、
dD01/dt=D00θ/V01+D02W/V01+L01D11/V01-(1/48000)0.5K1D01
1.5-K2D01-K3C01D01-Q01D01r/V01-WD01/V01-D01θ/V01・・・式(31-1)
(第1水洗槽のオゾン水濃度変化)=(めっき槽からの流入)+(第2水洗槽からの流入)+(第1オゾン溶解槽からの流入)-(第1水洗槽のオゾンの反応・分解)―(気相へのオゾン散逸)―(第1水洗槽からのオーバーフロー)-(第2水洗槽への流出)
となる。
(4)また、オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を表す第4計算式において、例えば、第1オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化の計算式(41)は、
dD11/dt=G01D10η11/V11-(1/48000)0.5K1D11
1.5-K2D11-K3C11D11・・・式(41-1)
(第1オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化)=(オゾン発生装置からの供給)-(第1オゾン溶解槽のオゾンの反応・分解)
となる。
以上のように、水洗槽WT(WT1、WT2、WT3、・・・)の洗浄水をオゾン溶解槽OT(OT1、OT2、OT3、・・・)に供給しない構成であっても、前述の計算式を適用することができる。
【0038】
[本願のオゾン処理システムの効果]
以上のように、本願によれば、めっき処理された被めっき品を洗浄水で洗浄する水洗槽と、オゾンガスを発生するオゾン発生装置と、前記オゾン発生装置で発生したオゾンガスを水溶液に溶解してオゾン溶解水を生成するオゾン溶解槽を備え、前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水を前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行うようにしたので、優れた水質浄化能力を有し、薬剤等のような投与後の残留性がないめっき洗浄プロセスのオゾン処理システムを提供することができる。
【0039】
また、前記水洗槽として、第1水洗槽、第2水洗槽、・・・第n水洗槽(nは整数)が多段に配置され、めっき処理した前記被めっき品は前記第1水洗槽、前記第2水洗槽、・・・前記第n水洗槽に順次浸漬されるとともに、前記オゾン溶解槽で生成したオゾン溶解水をそれぞれ前記水洗槽に供給して前記洗浄水の水質浄化を行うようにしたので、多段の水洗槽を有するシステムであっても、優れた水質浄化能力を有し、薬剤等のような投与後の残留性がないシステムを提供することができる。
【0040】
また、前記水洗槽の洗浄水の一部は供給管を通して前記オゾン溶解槽に供給されているので、前記オゾン溶解槽に供給する補給水量を節約することができる。
【0041】
また、前記水洗槽のCOD濃度またはTOC濃度のいずれか一つの水質汚損濃度、前記水洗槽の水温、及び前記水洗槽のpHに基づいて、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入量を決定するようにしたので、前記水洗槽の水質汚損濃度、水温、及びpHに応じて優れた水質浄化効果を得ることができる。
【0042】
また、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入による、前記水洗槽の水質汚損濃度の変化を示す第1計算式と、前記水洗槽のオゾン水濃度変化を示す第2計算式を導出し、前記第1及び第2計算式に基づき、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入量を決定するようにしたので、オゾン投入による優れた水質浄化効果を得るとともに、経済的なオゾンの投入量を決定することができる。
【0043】
また、前記第1計算式は、前記水洗槽に流入する水質汚損濃度の変化と、前記水洗槽から流出する水質汚損濃度の変化と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応による水質汚損濃度の変化により表され、
前記第2計算式は、前記水洗槽に流入するオゾン水濃度の変化と、前記水洗槽から流出するオゾン水濃度の変化と、前記水洗槽でのオゾンの分解および反応によるオゾン水濃度の変化により表されるので、適切な計算式を作成することができる。
【0044】
また、前記水洗槽の洗浄水の一部は供給管を通して前記オゾン溶解槽に供給されており、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入による、前記オゾン溶解槽の水質汚損濃度の変化を示す第3計算式と、前記オゾン溶解槽のオゾン水濃度変化を示す第4計算式を導出し、前記第1、第2、第3及び第4計算式に基づき、前記オゾン溶解槽へのオゾンガス投入量を決定するようにしたので、前記水洗槽の洗浄水の一部は供給管を通して前記オゾン溶解槽に供給されていた場合でも、オゾン投入による優れた水質浄化効果を得るとともに、経済的なオゾンの投入量を決定することができる。
【0045】
また、前記第3計算式は、前記オゾン溶解槽に流入する水質汚損濃度の変化と、前記オゾン溶解槽から流出する水質汚損濃度の変化と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応による水質汚損濃度の変化により表され、
前記第4計算式は、前記オゾン溶解槽に流入するオゾン水濃度の変化と、前記オゾン溶解槽から流出するオゾン水濃度の変化と、前記オゾン溶解槽でのオゾンの分解および反応によるオゾン水濃度の変化により表されるので、適切な計算式を作成することができる。
【0046】
また、前記水洗槽の残存オゾン濃度が、前記水洗槽に存在する細菌の最低致死オゾン濃度以上であるようにしたので、前記水洗槽の細菌を有効に殺菌することができる。
【0047】
また、前記水洗槽において、残存オゾン濃度Cと、細菌との反応時間tとの積であるC・t値が、細菌の90%殺菌に必要な値以上であるようにしたので、前記水洗槽の細菌を有効に殺菌することができる。
【0048】
なお、前述のオゾン処理システムにおいては、各水洗槽に対応してそれぞれオゾン溶解槽が設置されている例を示したが、複数の水洗槽に対して一つのオゾン溶解槽を設置したシステムであっても同様に適用することができ、同様の効果を奏することができる。
【0049】
また、前述のオゾン処理システムでは、多段水洗の方式として一番最後の水洗槽だけに給水する直列多段水洗について説明したが、各水洗槽ごとに給水する並列多段水洗の場合であっても、同様に適用することができ、同様の効果を奏することができる。
【0050】
本願は、例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、実施の形態および実施例に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態および実施例の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態および実施例に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0051】
10 めっき槽、20 被めっき品、30 供給管、40 供給管、50 循環管、
60 供給管、OG オゾン発生装置、OT オゾン溶解槽、WT 水洗槽、
OD オゾン分解槽。