(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】立坑排土装置、及び立坑排土方法
(51)【国際特許分類】
E21D 1/00 20060101AFI20230214BHJP
E02F 7/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
E21D1/00 C
E02F7/00 Z
(21)【出願番号】P 2022145026
(22)【出願日】2022-09-13
【審査請求日】2022-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141015
【氏名又は名称】株式会社かんでんエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】598009843
【氏名又は名称】株式会社マルジン
(73)【特許権者】
【識別番号】000240547
【氏名又は名称】米山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】乾 英仁
(72)【発明者】
【氏名】森鎌 慎大
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正昭
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀平
(72)【発明者】
【氏名】梅田 剛弘
(72)【発明者】
【氏名】米山 徹太
(72)【発明者】
【氏名】里路 久幸
(72)【発明者】
【氏名】武智 竜幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 祥太
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-210636(JP,A)
【文献】特開2000-159498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 7/00
E21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記支持部は、前記傾斜レールに対し、下方、かつ平行に設けられる棒状の縦梁と、前記傾斜レールの下方から延出するとともに、前記傾斜レールと前記縦梁の間に介在して、前記傾斜レールを前記縦梁上で支持する脚材とを有し、
前記脚材は、下端に板状のスライド部材を有し、
前記排土リフトと前記傾斜レールは、前記傾斜レールに前記脚材を固定した状態で、前記傾斜レールを前記排土リフトに挿通して、一体とすることができ、
一体とした前記排土リフトと前記傾斜レールは、前記傾斜レールと平行な縦梁上に載置して、当該縦梁の傾斜を利用し斜め下方にスライドさせて曲げレールと傾斜レールとを接続可能に構成されている立坑排土装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記曲げレールを下方から支持する主柱部を含み、
前記立坑が、開口部に連続する大径部と、前記大径部の下方に連続する大径部より径の小さい小径部と、前記大径部と前記小径部の間に設けられる段差部とを備え、
前記主柱部が、前記段差部に立設される請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項3】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記バケットは、前方、及び上方に開口する後方バケットと、後方、及び上方に開口する前方バケットの前後2つに分割して構成され、前記前方バケットの上端が、前後に回動して、前記バケットの前後方向の開口長さを伸縮可能な請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項4】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記バケットは、左右方向のバケット背転軸周りに、上部側を後方、かつ前記一対のラックレール間へ背転させて排土を行うよう構成され、前記バケット背転軸が前記バケットの重心より前側に設けられている請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項5】
前記駆動装置が電動モータからなり、
前記電動モータに電力を供給するケーブルと、前記ケーブルを巻き上げるケーブルリールとを有し、
前記ケーブルリールが前記傾斜レールの下側に配設される請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項6】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記駆動装置が電動モータからなり、
前記排土リフトが、電動モータを制御する制御盤と、前記制御盤を回動可能に枢支する制御盤回転軸とを有し、
前記制御盤が、前記制御盤回動軸周りに、上方へ回動して退避する作業位置と、前方へ回動して収納される収納位置との間で回動する請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項7】
前記駆動装置が、左右一対の走行機構の間に配設される請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項8】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記排土リフトの上昇に伴って作動するバケット背転機構と、
前記バケットを左右から支持するバケット支持フレームと
を備え、
前記バケット背転機構は、
左右方向のアーム回動軸まわりに回動するロックアームと、
前記ロックアームの回動方向により、前記ロックアームに係脱するロックローラと、
前記ロックアームを前記ロックローラに係止する向きに付勢する左右一対のアーム付勢手段と、
前記レール部に固定され前記ロックアームに直接的、又は間接的に当接することで前記ロックアームを回動させて、前記ロックローラから前記ロックアームを解放するストッパーを有し、
前記ロックアーム、及び前記ロックローラが、前記バケット支持フレームと前記バケットの間に配設される請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項9】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記ラックレールは、表面にラックギアを有し、
前記走行機構は、前記ラックギアに噛合するとともに上下に離間する駆動ピニオンギア、及び従動ピニオンギアと、前記ラックレールの裏面を走行する上側ローラ、及び下側ローラとにより前記ラックレールを挟持してなり、
前記駆動ピニオンギアと前記従動ピニオンギアの上下方向の距離が、前記上側ローラと前記下側ローラの上下方向の距離より大きい請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項10】
前記バケットがバケット収納ローラを有し、
前記レール部が、バケット収納レールを有し、
前記バケット収納レールが前記バケット収納ローラを案内することで前記バケットが背転前の収納姿勢に復帰させるバケット収納機構を備える請求項8に記載の立坑排土装置。
【請求項11】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記バケット収納機構が作用する間、前記排土リフトを減速する減速センサーを有する請求項10に記載の立坑排土装置。
【請求項12】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記バケットの収納姿勢と背転姿勢を検知するバケット姿勢検知センサーを有し、前記減速センサーにより前記排土リフトが減速したのち、前記バケット姿勢検知センサーが、前記バケットの背転を検知して前記排土リフトを停止させるよう構成されている請求項11に記載の立坑排土装置。
【請求項13】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記バケットを左右から支持するとともに上下方向に延びる筒状部材からなるバケット支持フレームと、
前記バケット支持フレーム内を上下方向に摺動する棒状部材からなり、下端が立坑の床に当接すると前記バケット支持フレームに対し相対的に上昇するセンサーロッドと、
前前記センサーロッドの上端に突き上げられて前記センサーロッドの着床を検知するバケット着床停止センサーと
を有する請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項14】
前記立坑の周壁が、円筒状のライナープレートを複数上下に連結して土留めされており、前記鉛直レールは、複数の直線レールを連結して構成されており、前記ライナープレート1つと前記直線レール1本の長さが実質的に等しい請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項15】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記ラックレールと前記ピニオンギアの噛合個所に上方から注油を行う注油ノズルと、
前記注油ノズルに供給する油を貯留するオイルタンクと、
前記オイルタンクから、前記注油ノズルに油を供給する注油ポンプと
を有し、
前記注油ポンプが、前記走行機構を収容する駆動ケース内に収容されている請求項1に記載の立坑排土装置。
【請求項16】
立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える立坑排土装置であって、
前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、
前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、
前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備え、
前記排土リフトを緊急停止する電磁ブレーキ機構を備え、
前記電磁ブレーキ機構は、ピニオンギアの回転数を計測する回転センサーと、前記ピニオンギアをロックするソレノイドユニットとを有し、
前記回転センサーが前記ピニオンギアの回転数が所定の回転数を超えたことを検知すると、前記ソレノイドユニットのソレノイドがOFFに切り替えるよう構成され。
前記ソレノイドユニットは、ソレノイドがOFFに切り替わるとブレーキピンが摺動して前記ピニオンギアを直接的、又は間接的にロックするよう構成されている請求項1に記載の排土装置。
【請求項17】
請求項1に記載の立坑排土装置を用いて行う立坑排土方法であって、
前記支持部は、前記傾斜レールに対し、下方、かつ平行に設けられる棒状の縦梁と、前記傾斜レールの下方から延出するとともに、前記傾斜レールと前記縦梁の間に介在して、前記傾斜レールを前記縦梁上で支持する脚材とを有し、
前記脚材は、下端に板状のスライド部材を有し、
前記傾斜レールに前記脚材を固定した状態で、前記傾斜レールを前記排土リフトに挿通し、一体とした前記排土リフトと前記傾斜レールを、前記傾斜レールと平行な縦梁上に置き、当該縦梁の傾斜を利用し斜め下方にスライドさせて曲げレールと傾斜レールとを接続して前記立坑排土装置を組み立てる立坑排土方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立坑から掘削土を排出するための排土装置に関し、特に、鉛直方向に延びるレールを昇降するバケットにより排土を行う排土装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧鉄塔の基礎埋設用の立坑工事においては、立坑の外側に設置したジブクレーンにより立坑内でバケットを昇降して掘削土を排出するようにしている。ところが、高圧鉄塔の建替え工事では、新設鉄塔の立坑掘削は、既存鉄塔に懸架された高圧線の下で行うこととなるため、ジブクレーンと高圧線からの離隔距離を確保するためにジブクレーンによる排土作業に支障が生じるという問題や、離隔範囲を明示するためのレーザーバリアや明示旗を設置する必要があるという問題があった。
【0003】
そこで、本発明者らは、かかる問題を解決すべく、ジブクレーンの代わりに、バケットをリフト式(レール式)で昇降させる排土装置に想到する。かかる排土装置は、高圧鉄塔以外の立坑工事では広く利用されるものである(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
例えば、特許文献1では、左右一対の昇降案内レールに沿ってバケットを上昇させる搬出リフトが提案されている。特許文献2の搬出リフトでは、立坑外に設けた巻上機で搬出リフトに連結したワイヤを巻き上げることで搬出リフトを上昇させるようにしている。
【0005】
また、非特許文献1では、立坑の壁面にラックレールからなるモノレールを設けてバケットを昇降させる運搬装置が掲載されている(
図21参照)。非特許文献1の運搬装置は、排土用のバケットと人間の乗車用ステップとを備えた人荷兼用で、モノレールの上端が立坑の開口を出たところで、円弧状に湾曲して水平に方向転換し、バケットが水平部分に達したところで転倒して土を排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】株式会社嘉穂製作所「カホオートシェルパ(KAHO AUTO SHERPA/KAS-1」カタログ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の搬出リフトでは、立坑外に巻上機等の搬出リフトの上昇に必要な機構を設けるため、立坑周辺のスペースが狭い山間の工事では、巻上げ機等が邪魔になるという問題や、昇降案内レールが立坑から外部へ出るところで折れ曲がるため、スムーズに搬出リフトを走行させられないという問題がある。また、非特許文献1の運搬装置では、バケットを転倒して排土する位置が、土がモノレールに被らないようモノレールの終端を超えた位置になるため、立坑から排土位置まで広いスペースが必要で、山間の高圧鉄塔工事には、使いにくいという問題がある。さらに、レールの上端が水平になっていると、山の傾斜側にレール上端側を延ばすことができないという問題や、レールの折れ曲がり部をリフトがスムーズに通過しないというがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、山間部で立坑周辺に十分なスペースを確保できない場合や、傾斜面に立坑を設ける場合に利用可能で、かつリフトをスムーズに昇降可能な排土装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、立坑内を昇降して掘削土を運搬する排土リフトと、前記排土リフトを案内するレール部とを備える排土装置であって、前記レール部は、左右一対のラックレールと、前記ラックレールを支持する支持部とを備え、前記排土リフトは、前記ラックレールに噛合するピニオンギアを備えてなる左右一対の走行機構と、前記走行機構を駆動する駆動装置と、掘削土を収容するバケットとを有し、前記一対のラックレールは、立坑の周壁に沿って垂設される鉛直レールと、前記鉛直レールに下端が連結されるとともに上端側が立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレールと、前記曲げレールの上端に下端が連結されるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レールとを備えることを前提とする。
本発明は、前記前提に加え、前記支持部が、前記傾斜レールに対し、下方、かつ平行に設けられる棒状の縦梁と、前記傾斜レールの下方から延出するとともに、前記傾斜レールと前記縦梁の間に介在して、前記傾斜レールを前記縦梁上で支持する脚材とを有し、前記脚材は、下端に板状のスライド部材を有し、前記排土リフトと前記傾斜レールは、前記傾斜レールに前記脚材を固定した状態で、前記傾斜レールを前記排土リフトに挿通して、一体とすることができ、一体とした前記排土リフトと前記傾斜レールは、前記傾斜レールと平行な縦梁上に載置して、当該縦梁の傾斜を利用し斜め下方にスライドさせて曲げレールと傾斜レールとを接続可能に構成されている立坑排土装置を含む。
【0010】
本発明の排土装置は、このように、一対のラックレールの上端側に、立坑の径方向外側に向かって直線状に高くなる傾斜レールを設けたので、立坑が傾斜地に設けられる場合であっても、傾斜地をかわしてラックレールを配設することができ、また、傾斜レール部分を水平なレールにする場合に比べて、曲げレールの曲がりが小さくてすむため、排土リフトをスムーズに上昇させられる。
【0011】
本発明の立坑排土装置は、前記支持部が、前記曲げレールを下方から支持する主柱部を含み、前記立坑が、開口部に連続する大径部と、前記大径部の下方に連続する大径部より径の小さい小径部と、前記大径部と前記小径部の間に設けられる段差部とを備え、前記主柱部が、前記段差部に立設されることが好ましい。
このように、レールの中央に設けられる湾曲部に、下方から支持する主柱部を設けることで、レール全体のモーメント荷重をバランスよく配置できる。また、立坑内側の段差部に主柱部を立設することで、立坑周辺のスペースを節約できる。
【0012】
本発明は、前記前提に加え、前記バケットが、前方、及び上方に開口する後方バケットと、後方、及び上方に開口する前方バケットの前後2つに分割して構成され、前記前方バケットの上端が、前後に回動して、前記バケットの前後方向の開口長さを伸縮可能であるものを含む。こうすることで、狭い立坑内で掘削作業を行う際には、バケットが邪魔にならないようバケットの前後長さを短くし、立坑が広い場合には、バケットの前後長さを延ばしてバケットの容積を増やし、排土効率を上げることができる。
【0013】
本発明は、前記前提に加え、前記バケットが、左右方向のバケット背転軸周りに、上部側を後方、かつ前記一対のラックレール間へ背転させて排土を行うよう構成され、前記バケット背転軸が前記バケットの重心より前側に設けられているものを含む。
このように、バケットを後方へ背転させるバケット背転軸を、バケットの重心より前側
に設けることで、バケットを自重により背転させることができ、また背転したバケットが
レールの下側へ突出する長さを短くできるので、レール下のスペースを節約できる。また
、このようにバケットの重心をバケット背転軸よりレールに近い側に設けることで、バケ
ットに積載した排土によりレールに加わるモーメントを小さくできるので、レールを軽量
コンパクトに構成して、立坑内のスペースを節約できる。
【0014】
前記駆動装置が電動モータからなり、前記電動モータに電力を供給するケーブルと、前記ケーブルを巻き上げるケーブルリールとを有する場合には、前記ケーブルリールが前記傾斜レールの下側に配設されることが好ましい。こうすることで、立坑周辺のスペースを節約できる。
【0015】
本発明は、前記前提に加え、前記駆動装置が電動モータからなり、前記排土リフトが、電動モータを制御する制御盤と、前記制御盤を回動可能に枢支する制御盤回転軸とを有し、前記制御盤が、前記制御盤回動軸周りに、上方へ回動して退避する作業位置と、前方へ回動して収納される収納位置との間で回動するものを含む。
こうすることで、作業時には、制御盤を作業位置に回動して立坑内の作業スペースを拡
張でき、排土リフトの運搬時には、制御盤を収納位置に収納してコンパクトにした状態で
排土リフトを運搬できるので、ヘリコプターでの運搬時の揺れを防止し、トラック運搬時
の荷台スペースを節約できる。
【0016】
前記駆動装置が、前記左右一対の走行機構の間に配設されることが好ましい。こうすることで、排土リフトをコンパクトにして立坑内のスペースを節約できる。
【0017】
本発明は、前記前提に加え、前記排土リフトの上昇に伴って作動するバケット背転機構と、前記バケットを左右から支持するバケット支持フレームとを備え、前記バケット背転機構は、左右方向のアーム回動軸まわりに回動するロックアームと、前記ロックアームの回動方向により、前記ロックアームに係脱するロックローラと、前記ロックアームを前記ロックローラに係止する向きに付勢する左右一対のアーム付勢手段と、前記レール部に固定され前記ロックアームに直接的、又は間接的に当接することで前記ロックアームを回動させて、前記ロックローラから前記ロックアームを解放するストッパーを有し、前記ロックアーム、及び前記ロックローラが、前記バケット支持フレームと前記バケットの間に配設されるものを含む。
このように、排土リフトが傾斜レールを上昇することを利用して、バケットを背転させることで、バケットを背転するための駆動モータを省略して、排土リフトを小型化できる。また、ロックアーム、及びロックローラを、バケット支持フレームとバケットの間に配設することで、排土リフトを小さくして、立坑内のスペースを節約できる。
【0018】
本発明の排土装置は、前記前提に加え、前記バケット背転機構が作用する間、前記排土リフトを減速する減速センサーを有するものを含む。バケットに土が入った状態で急停止するのは、バケット背転機構やバケット支持フレームに加わる負担が大きいため、かかる減速センサーを設けることで、このような負担を小さくできるので、バケット支持フレームやバケット背転機構をコンパクトにして排土リフトを小さくできる。
【0019】
本発明の排土装置は、前記前提に加え、前記バケットがバケット収納ローラを有し、前記レール部が、バケット収納レールを有し、前記バケット収納レールが前記バケット収納ローラを案内することで前記バケットが背転前の収納姿勢に復帰させるバケット収納機構を備えるものを含む。
こうすることで、排土リフトが傾斜レールを降下することを利用してバケットを収納で
きるため、バケットを収納するための駆動装置を省略して排土リフトを小さくできる。
また、収納機構やバケット支持フレームにかかる負担を小さくできるので、バケット支持
フレームやバケット収納機構をコンパクトにして、排土リフトを小さくできる。
【0020】
本発明の立坑排土装置は、前記前提に加え、前記ラックレールが、表面にラックギアを有し、前記走行機構は、前記ラックギアに噛合するとともに上下に離間する駆動ピニオンギア、及び従動ピニオンギアと、前記ラックレールの裏面を走行する上側ローラ、及び下側ローラとにより前記ラックレールを挟持してなり、前記駆動ピニオンギアと前記従動ピニオンギアの上下方向の距離が、前記上側ローラと前記下側ローラの上下方向の距離より大きいものを含む。こうすることで、走行機構がよりスムーズに曲げレールを通過することができる。
【0021】
本発明の排土装置は、前記前提に加え、前記バケットの収納姿勢と背転姿勢を検知するバケット姿勢検知センサーを有し、前記減速センサーにより前記排土リフトが減速したのち、前記バケット姿勢検知センサーが、前記バケットの背転を検知して前記排土リフトを停止させるよう構成されているものを含む。こうすることで、排土リフトが減速して停止するまでの間に排土を行うことができるため、排土リフトが減速して停止した後に排土を行う場合に比べて、傾斜レールの長さを短くできる。
【0022】
本発明の排土装置は、前記前提に加え、前記バケットを左右から支持するとともに上下方向に延びる筒状部材からなるバケット支持フレームと、前記バケット支持フレーム内を上下方向に摺動する棒状部材からなり、下端が立坑の床に当接すると前記バケット支持フレームに対し相対的に上昇するセンサーロッドと、前前記センサーロッドの上端に突き上げられて前記センサーロッドの着床を検知するバケット着床停止センサーとを有するものを含む。このように、センサーロッドをバケット支持フレーム内を摺動させることで、排土リフト上のスペースを節約できるので、排土リフトを小型化できる。
【0023】
前記立坑の周壁が、円筒状のライナープレートを複数上下に連結して土留めされており、前記鉛直レールは、複数の直線レールを連結して構成されており、前記ライナープレート1つと前記直線レール1本の長さが実質的に等しいことが好ましい。こうすることで、ライナープレートの下端と鉛直レールの下端の高低差を一定にできるため、掘削を連続して行うことができ、作業性が向上する。
【0024】
本発明の排土装置は、前記前提に加え、前記ラックレールと前記ピニオンギアの噛合個所に上方から注油を行う注油ノズルと、前記注油ノズルに供給する油を貯留するオイルタンクと、前記オイルタンクから、前記注油ノズルに油を供給する注油ポンプとを有し、前記注油ポンプが、前記走行機構を収容する駆動ケース内に収容されているものを含む。このように、発駆動ケース内にオイルタンクを収納することで、排土リフトを小型化できる。
【0025】
本発明の立坑排土装置は、前記前提に加え、前記排土リフトを緊急停止する電磁ブレーキ機構を備え、前記電磁ブレーキ機構は、ピニオンギアの回転数を計測する回転センサーと、前記ピニオンギアをロックするソレノイドユニットとを有し、前記回転センサーが前記ピニオンギアの回転数が所定の回転数を超えたことを検知すると、前記ソレノイドがOFFに切り替えるよう構成され、前記ソレノイドユニットは、ソレノイドがOFFに切り替わるとブレーキピンが摺動して前記ピニオンギアを直接的、又は間接的にロックするよう構成されているものを含む。
このように、ブレーキ機構を電磁式とすることで、ソレノイドにより瞬間的にブレーキ
を作動できるので、ブレーキ機構を機械式とする場合に比べて、トラブル時における排土
リフトの落下距離を短くできる。また、ソレノイドがOFFの場合に、ブレーキピンがピ
ニオンギアをロックするようにしたので、回転センサーが過剰な回転数を検知した場合だ
けでなく、排土装置全体の電源がOFFになった場合も、ブレーキを作動できる。
【0026】
本発明は、前記前提の立坑排土装置を用いて行う立坑排土方法であって、前記支持部が、前記傾斜レールに対し、下方、かつ平行に設けられる棒状の縦梁と、前記傾斜レールの下方から延出するとともに、前記傾斜レールと前記縦梁の間に介在して、前記傾斜レールを前記縦梁上で支持する脚材とを有し、前記脚材は、下端に板状のスライド部材を有し、前記傾斜レールに前記脚材を固定した状態で、前記傾斜レールを前記排土リフトに挿通し、一体とした前記排土リフトと前記傾斜レールを、前記傾斜レールと平行な縦梁上に置き、当該縦梁の傾斜を利用し斜め下方にスライドさせて曲げレールと傾斜レールとを接続して前記立坑排土装置を組み立てる立坑排土方法を含む。こうすることで、傾斜レールと排土リフトを同時に縦梁に設置できるので、曲げレール部に固定済みの傾斜レールに排土リフトを差し込む場合に比べて、排土リフトをクレーンで持ち上げる高さが少なくて済む。
【発明の効果】
【0027】
以上、本発明の排土装置によれば、山間の狭小地や傾斜地に設ける立坑に用いることができ、また、排土リフトをレールに沿ってスムーズに昇降できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る排土装置の使用状態を側面視で示した模式図である。
【
図2】(a)は、
図1の排土リフトの内部構造を、一部透過して示した側面視透過図であり、(b)は、(a)の前方バケットが前方へ回動した様子を示す部分側面図である。
【
図3】
図1のバケット周辺を一部の部材を省略して示した部分平面図である。
【
図4】
図1の排土リフトの内部構造を一部省略して透過した正面視透過図である。
【
図5】
図1の走行機構をピニオンギアの軸芯に沿って切断した横断面図である。
【
図6】
図1の走行機構が曲げレール部を走行する際の作用を示した説明図である。
【
図7】
図1のレール部を示す(a)平面図、(b)側面図である。
【
図8】
図1の排土リフトにおいて、重心の位置による効果を示す説明図である。
【
図9】
図1の排土リフトの車体を実戦で、その他の部材を二点鎖線で示す(a)側面図、(b)正面図である。
【
図10】
図1の排土リフトの車体を実戦で、その他の部材を二点鎖線で示す平面図である。
【
図11】
図1の排土リフトのバケット背転機構において、(a)ロックアーム(アーム連結ロッド)がストッパーに当接を開始した状態、(b)ロックアームがストッパーにより回動してロックローラとの係合が外れた状態、(c)バケットが背転した状態を、側面視で示す説明図である。
【
図12】バケットの収納姿勢を検知する収納姿勢検知センサーの(a)拡大正面視、(b)側面視における模式図である。
【
図13】
図2の減速センサーの作用を正面視で示した部分透過図である。
【
図14】
図1の排土リフトのバケット収納機構において、(a)バケット収納ローラがバケット収納レール上を走行し始め、バケットが収納姿勢へと回動し始めた状態、(b)さらにバケットが回動し、ロックローラがロックアームのフック部を押圧し始めた状態、(c)ロックローラがロックアームのフック部内に係合し、バケットが収納姿勢に復帰した状態を示す説明図である。
【
図15】(a)レール上限センサー、及びレール下限センサーを正面視で示した部分透過図である。(b)左側の下限ストッパーを示す部分透過平面図である。
【
図16】着床減速センサー、及び着床停止センサーを正面視で示す部分透過図である。
【
図17】制御盤が回動して収納位置と作業位置の間で位置変更する様子を側面視で示した模式図である。
【
図18】電磁ブレーキが作動する仕組みを示した説明図である。
【
図19】本発明の一の実施形態に係る排土装置組立て方法を側面視で示す説明図である。
【
図20】注油機構を正面視で示す部分透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、要旨を変更しない範囲で適宜変更が可能である。
【0030】
(排土装置100)
図1は、本発明の一の実施形態に係る排土装置100を示している。排土装置100は、主に山間に設ける高圧鉄塔の主柱埋設用の立坑掘削に用いられるため、立坑Aには、
図1に示すように、高圧鉄塔の傾斜した主柱(不図示)と周壁の衝突を防止するために、上部開口に下側の小径部A2より径の大きい大径部A1が設けられている。大径部A1と小径部A2の間には略水平な段差部A3が設けられ、大径部A1、及び小径部A2の周壁には、それぞれの径に合わせた波板円筒状のライナープレートA4で土留めがされている。
【0031】
排土装置100は、
図1に示すように、立坑Aを昇降して掘削土Bを運搬する排土リフト10と、排土リフト10を案内するレール部20とを主に備え、レール部20は、左右一対のラックレール2,2とこれを支える支持部30とを有している。
尚、以下の説明に置いて「左右」とは、立坑Aの径方向の中心から立坑Aの周壁方向を見た際の左右をいい、「前側」及び「後側」は、それぞれ、立坑Aの径方向の内側、及び外側をいうものとする。また、排土装置100は、レール部20に取り付けた状態を前提として説明を行う。
【0032】
(排土リフト10)
排土リフト10は、
図2、乃至
図4に示すように、左右一対の走行機構1,1と、走行機構1,1を駆動する駆動装置3と、掘削土Bを収容するバケット4と、これらを載設する車体5とを有している。
【0033】
(走行機構1)
走行機構1は、
図4に示すように、排土リフト10の左右(
図4の左右)両側の上半分を占めるよう左右一対に設けられる上側駆動ケース51,51内に、ラックレール2を上下方向に挿通するよう構成し、上側駆動ケース51内に、ラックレール2のラックギア2aに噛合するピニオンギアからなる駆動ギア11、及び従動ギア12と、ラックレール2の裏面側を走行する上下一対ずつ計4個のローラ13,13,…(
図5参照)とを枢支して構成されている。
図5に示すように、ローラ13は、周面中央に鍔13aを備えた鍔付ローラからなり、左右一対のローラ13,13でラックレール2を挟むようにして、駆動ギア11、従動ギア12とともに、車体5をラックレール2に対し脱輪不能に係着している。
【0034】
走行機構1は、
図6に示すように、駆動ギア11と従動ギア12の上下方向の離間距離Xが、上下のローラ13A,13Bの離間距離Yよりも長く設定されている。こうすることで、走行機構1が、曲げレール22をスムーズに通過できる。
【0035】
(駆動装置3)
駆動装置3は、減速機付き電動モータからなり、
図4に示すように、モータ部3aと減速機部3bを直列に配した縦長形状を有し、減速機部3bから左右に延出する駆動軸14により駆動ギア11,11を駆動するよう構成されている。駆動装置3は、左右の上側駆動ケース51,51間に懸架されたモータ支持フレーム53に、下側を後方(ラックレール2側)に傾斜させて、左右の上側駆動ケース51,51に架け渡したバケット支持ビーム56とモータ保護ビーム57(
図9(a)参照)に隠れるよう支持されている。
【0036】
(バケット4)
バケット4は、
図2、
図3に示すように、上方に開口した箱状をなし、上部開口から掘削土Bを投入し、左右方向に延びるバケット背転軸6回りに背転して、掘削土Bを排出するよう構成されている。バケット4は、
図3に示すように、後端部が一対のラックレール2,2に挟まれ、概ね全体がラックレール2,2の前方に突出するよう配設されている。
尚、以下の説明に置いて、バケット4が掘削土Bを運搬するために車体5に固定された状態をバケット4の収納姿勢、バケット4が排土のために背転した状態をバケット4の背転姿勢というものとする。
【0037】
バケット4は、
図2、
図3に示すように、後方バケット41と、前方バケット42の前後2つに分割して構成されている。後方バケット41は、底壁41a、後壁41b、及び左右の側壁41c,41cにより、前方、及び上方に開口するよう設けられ、前方バケット42は、左右の側壁42a,42a、及び前壁42bにより、後方、及び上方に開口するよう設けられている。バケット4は、前方バケット42の前壁42bの下縁を蝶番4a,4a,…により後方バケット41の底壁41aの前縁に連結することで、1つの槽状に形成されるとともに、前方バケット42を後方バケット41に対し前後に回動可能として、バケット4の開口部の前後長を変更可能に構成している。前方バケット42の側壁42aの上端部には、円弧状に並んだ多数の係止受け孔42c,42c,…が穿設されており、後方バケットの側壁41cの上端部に設けたプランジャやボルト・ナット等の係止手段41dを適宜の係止受け孔42cに係合することでバケット4の開口長さを調節可能に構成されている。
【0038】
バケット4の重心Gは、
図8に示すように、前方バケット42が前後いずれに回動した場合であっても、バケット背転軸6より後方かつ上方に位置するよう設けられている。こうすることで、自重によりバケット4を背転させることができる。また、
図8に示すように、レール2と重心Gとの前後方向の距離をL1、上側のローラ13Aと従動ギア12との上下方向の距離をL2、バケット4の重量をWとすると、レール2に加わる力Fは、左右方向(
図8の奥行き方向)の軸周りのモーメントを考慮すると、F=(W×L1)/L2と算出される。レール2と重心Gとの距離L1を小さくすることで、レール2に加わる力Fを抑制できるので、レールの構造を軽量・コンパクトにできる。また、
図4に示すように、重心Gは、排土リフト10の左右方向の中央に配設されており、これにより、左右の走行機構に加わる力を均等にして、ギアやラックの摩耗を抑制できる。
【0039】
(バケット背転機構43、及びバケット収納機構44)
次に、バケット4を排土リフト10の上昇に合わせて背転させて排土を行うバケット背転機構43と、排土したのち、排土リフト10の下降に合わせ、バケット4を起立させて収納姿勢にロックするバケット収納機構44について説明する。バケット背転機構43、及びバケット収納機構44は、主に、バケット4とバケット支持フレーム55,55の間に設けられている。
【0040】
(バケット背転機構43)
バケット背転機構43は、
図2、
図4、及び
図11に示すように、くの字の板状をなす左右一対のロックアーム431,431と、ロックアーム431,431をくの字の中央の折れ曲がり部分で回動可能に支持するアーム回動軸432,432と、ロックアーム431に係脱する左右一対のロックローラ433,433と、ロックアーム431をロックローラ433に係止させる方向に付勢する左右一対のコイルばねからなるアーム付勢手段434,434と、バケット4を背転・復帰のために回動させるバケット背転軸6と、左右一対のロックアーム431,431を連結するアーム連結ロッド436(
図4参照)と、アーム連結ロッド436に当接して、ロックアーム431を回動させるストッパー437(
図11参照)と、バケット背転機構43が駆動する間、排土リフト10の昇降速度を減速し、低速で維持する減速センサー439(
図2、
図13参照)とを備えている。アーム付勢手段434は、上端がロックアーム431の折れ曲がり部に、下端がバケット支持フレーム55に金具434aで固定されている。
【0041】
ロックアーム431は、
図4に示すように、バケット支持フレーム55と後方バケット41側壁41cの間に厚み方向を左右方向にして配設され、バケット支持フレーム55から左右方向の内側へ延出するアーム回動軸432,432に枢支されている。ロックアーム431は、基端(
図2(a)の下側)部に設けられた「つ」の字状のフック部431aにより、ロックローラ433に係脱する。また、ロックアーム431は、上側駆動ケース51に干渉しないよう、先端部431bが左右方向の内側にクランク状に屈曲している。
【0042】
ストッパー437は、
図11に示すように、板状部材からなり、左右の傾斜レール23,23の間に、面方向を傾斜レール23に平行にして固定されている。
【0043】
減速センサー439は、
図13に示すように、上側駆動ケース51内に配設され、傾斜レール23の下方に延出させた減速区間検知レバー439aの先端のローラ439bが傾斜レール23の下面に設けられた立板状のカム439cの側面439dに乗り上げると、駆動装置3を減速させるよう構成されている。
【0044】
(バケット背転機構43の作用について)
排土リフト10は、
図11(a)に示すように、レール2に沿って上昇する際は、ロックアーム431をロックローラ433に係合してバケット4を回動不能にロックして上昇する。そして、排土リフト10は、排土位置(
図11(c)参照)近傍まで上昇すると、減速センサー439の作用を受けて減速する。排土リフト10は、減速した後も上昇を継続し、排土リフト10のアーム連結ロッド436がストッパー437に当接してロックアーム431が
図11(b)に示す向きに回動すると、ロックローラ433からフック部431aが脱落する。すると、バケット4が、
図11(c)に示したように、自重によりバケット背転軸6回りに背転して、掘削土Bを排出する。
【0045】
図12(a)に示すように、バケット支持フレーム55の後面には、バケット4が収納姿勢にあることを検知するバケット収納姿勢検知センサー438が設けられ、バケット4の左側の側壁41cの外面には、その検知レバー438aを操作するプッシュプレート438bが突設されている。
図12(b)に示すように、バケット4が二点鎖線で示した収納姿勢にあるときは、プッシュプレート438bが検知レバー438aを押圧し、バケット収納姿勢検知センサー438をONにして、バケット4の収納姿勢が確認される。バケット4が
図12(b)に実線で示すように、背転してプッシュプレート438bが検知レバー438aから離間すると、検知レバー438aが付勢方向に回動し、バケット収納姿勢検知センサー438をOFFにして、バケット4が収納されていないことを制御部へ送信する。排土リフト10が走行中にセンサー438のOFF状態を検知すると、駆動装置3を停止して、排土リフト10の走行中に不意にバケット4が背転する事故を防止するよう構成されている。
【0046】
バケット4は、
図4に示すように、前壁42bに板状の支持部材452,452により左右に延びるよう支持される棒状のバケットストッパー451を有している。一方、バケット支持フレーム55に固定されたストッパー基板454には、前方へ突出する弾性体453が設けられており、バケット4が排土のために回転すると、
図12(b)に示すように、バケットストッパー451が、弾性体453に衝突して、バケット4の回動を停止するよう構成されている。これにより、前方バケット42を回動させて、バケット4の重心位置が変わってもバケット4の排土時の傾斜角度を一定範囲に保つことができる。また、弾性体453は、
図4に示すように、バケット4の開口長さの変更に伴いバケットストッパー451の衝突位置が移動するのに合わせて、ストッパー基板454の幅方向の中央に設けられた上下方向に延びるスリット454aに沿って上下に位置変更可能に設けられている。
【0047】
バケット背転機構43は、ロックアーム431、アーム回動軸432、ロックローラ―433、アーム付勢手段434を、すべて、バケット4と下側駆動ケース52との間に収容することで、排土リフト10を小型化している。
【0048】
(バケット収納機構44)
バケット収納機構44は、
図14に示すように、バケット4の後部上端に設けられる左右一対のバケット収納ローラ441,441と、これを案内するバケット収納レール442,442とを有している。バケット収納ローラ441は、左右の外側(
図14(a)の例では手前側)にやや突設され、曲げレール22の内側面に吊設された矩形板状のバケット収納レール442の側縁442a上を走るよう構成されている。この側縁442aは、曲げレール22に略直交するように設けられ、バケット収納ローラ441を、下方への移動を拘束しながら曲げレール22に接近するよう案内して、バケット4を収納姿勢に復帰させる。バケット収納ローラ441をレール2よりも左右の内側に設けることで、排土リフト10を小型化している。
【0049】
バケット4が収納姿勢に復帰するに従い、ロックローラ433は、
図14(a)に示すように徐々にロックアーム431のフック部431aに接近し、
図14(b)に示すように、フック部431aに当接すると、
図12(c)に示すように、フック部431aを押圧して回動させ、フック部431a内に係留する。こうして、ロックアーム431は、ロックローラ433を介してバケット4を収納姿勢にロックする。
【0050】
バケット4が収納姿勢へ復帰すると、減速センサー439の検知レバー439aが、カム439cから離脱して、駆動装置3を通常速度に切り替える。
【0051】
(レール上限リミットスイッチ71,下限リミットスイッチ72)
上側駆動ケース51内には、
図15に示すように、レール上限リミットスイッチ71と、レール下限リミットスイッチ72が設けられており、上側駆動ケース51の天壁、又は底壁から突出するプッシュバー71a,72aが、ラックレール2の上端、又は下端に設けられた上限ストッパー711や下限ストッパー721に当接すると、駆動装置3を停止して、排土リフト10がラックレール2から脱線することを防止する。また、上限ストッパー711、及び下限ストッパー721は、上側駆動ケース51のレール通過室51bの幅より大きく形成されており、リミットスイッチ71,72が働かない場合は、上側駆動ケース51が上限ストッパー711、及び下限ストッパー721に衝突することによって排土リフト10の脱線を防止する。
【0052】
(着床減速センサー74、着床停止センサー75)
排土リフト10は、立坑Aの床面への衝突事故を防止するため、
図16に示すように、着床減速センサー74と着床停止センサー75を備えている。
左右のバケット支持フレーム55,55には、角パイプ材からなるセンサーロッド73,73が、バケット支持フレーム55,55の内部を摺動可能に設けられており、その上方の上側駆動ケース51,51の前面51c,51cに、着床減速センサー74,74、及び着床停止センサー75,75が下から順に列設されている。センサーロッド73の下端には、板状のベース部材73aが水平に固定されている。排土リフト10が立坑Aを降下して、センサーロッド73のベース部材73aが立坑Aの底床GLに到達すると、センサーロッド73の先端が、まず着床減速センサー74の検知レバー74aを作動させて、排土リフト10の下降を減速させる。排土リフト10がさらに降下すると、センサーロッド73の先端が着床停止センサー75の検知レバー75aを作動させて、排土リフト10を停止させる。
【0053】
(レール部20)
レール部20は、
図7に示すように、左右一対のラックレール2,2からなり、ラックレール2は、
図4、
図5に示すように、金属製の角パイプの前面(
図5における下面)に、金属製の帯材から切削加工したラックギアが溶接やボルト・ナット締めにより張設されている。ラックギアをプレス加工ではなく、旋削加工により形成することで、ラックギアの歯型精度と強度を高めることができる。
【0054】
ラックレール2は、
図7に示すように、立坑Aの周壁に沿って垂設される鉛直レール21と、鉛直レール21の上端に連結される曲げレール22と、曲げレールの上端側に連結される傾斜レール23とを有している。曲げレール22は、上端側が立坑Aの開口部の上方において立坑Aの径方向外方へ湾曲し、傾斜レール23は、上端側に向かって直線状に高くなるよう傾斜している。
【0055】
(支持部30)
レール部20は、左右一対のラックレール2,2を支持する支持部30を備えている。
支持部30は、
図7に示すように、鉛直レール21を支持する鉛直レール支持部31と、曲げレール22を支持する曲げレール支持部32と、傾斜レール23を支持する傾斜レール支持部33とを有している。
【0056】
鉛直レール支持部31は、鉛直レール21の後面に垂設されるコの字、又はヨの字の板材からなる脚材31a,31a,…と、左右の脚材31a,31aを連結する横梁31b(
図3、
図7(a)参照)と、ライナープレートA4から水平に延出して脚材31aを支持する支持ブラケット31cとを有している。
このように、左右一対の脚材31a,31aを横梁31bで連結することで、左右のレール2,2の間隔が開くことを防止できる。また、排土リフト10の走行中にバケット4のロックローラ433が外れても、横梁31bによりバケット4の背転を防止できる。
ライナープレートA4の1本の長さPと鉛直レール21の1本の長さQは、実質的に同じに設けられている。ライナープレートA4と、鉛直レール21は、立坑Aを掘り進めるのに従い1本ずつ追加するところ、これらの長さP、Qを同じにすることで、ライナープレートA4の下端と鉛直レール21の下端の高低差を常に一定に保持できるため、互いの取り合い関係を一定にでき、作業性が向上する。
【0057】
曲げレール支持部32は、曲げレール22の後面に垂設される脚材32a,32aと、曲げレール22を補強すべく、曲げレール22に沿って延びるよう脚材32a,32aに連結される縦梁32bと、縦梁32bを介して、排土装置100の全重量の最大部分を支持する主柱部34とを有している。主柱部34は、
図6(b)に示すように、左右一対の有蓋円筒状の主柱341,341の頂壁間に、H形鋼342を架け渡し、H形鋼342のフランジ342aから突出させた係止板342bと脚材31aの間に、ターンバックル付鋼線343を張設することで立坑Aの段差部A3に固定されている。
【0058】
傾斜レール支持部33は、縦梁33aと、横梁33bとを梯子状に組んで、傾斜レール23から下方へ延出する脚材33c,33cに連結した支持フレーム331と、足場パイプをパイプクランプで適宜の形状に組立て、足場ベースやH型鋼で支持した、一又は複数の足場332,332,…とを備えている。
【0059】
曲げレール支持部32の縦梁32bと、傾斜レール支持部33の縦梁33aには、駆動装置3に電力を供給する電気ケーブル8aを案内する案内ローラ81,81が設けられている。この電気ケーブルを巻き上げるケーブルリール8は、
図1に示すように、傾斜レール23の下方にある足場332に設置されて、排土装置100の設置スペースを節約している。
【0060】
(排土装置の組立て方法)
次に、本実施形態に係る排土装置100の組立て方法について説明する。排土装置100の組立て方法は、排土装置100をレール部20に設置する方法に特徴がある。
すなわち、レール部20は、鉛直レール21、鉛直レール支持部31、曲げレール22、曲げレール支持部32、及び傾斜レール支持部33まで、予め立坑Aへの設置を完了しておく。一方、排土リフト10は、2本の直線ラックレール2A,2Aを連結し、下面に脚材33c,33cを溶接、又はボルト・ナットにより取付けて形成した左右一対の傾斜レール23,23を、排土リフト10の上下の駆動ケース51,52に挿通しておく。脚材33c,33cの下端には、板材からなるスライド部材33d,33dを固定しておく。
【0061】
排土リフト10を吊り下げる際には、
図19に示すような吊り下げ治具18を用いる。吊り下げ治具18は、水平棒材18aの両端のフック18b,18bの片側だけをチェーン18cに下げて、排土リフト10に差し込んだ傾斜レール23の傾きが、傾斜レール支持部33の縦梁33aの傾きに合わせて支持できるよう構成されている。
【0062】
排土リフト10を傾斜レール23,23とともにクレーンCで吊上げ、傾斜レール23の下端23bが、曲げレール22の上端22bとやや離間する位置で、縦梁33a上に、傾斜レール23を載置する。しかるのち、スライド部材33dを縦梁33aの上面をスライドさせるようにして、傾斜レール23の下端23bを曲げレール22の上端22bに雄雌結合して、傾斜レール23と、曲げレール22及び縦梁33aをボルト・ナットで連結する。
【0063】
本発明の排土装置の組立て方法では、このように、傾斜レール23を排土リフト10に差し込んだ状態でレール部20に排土リフト10を設置するので、傾斜レール23を先にレール部20に取る付けた状態で排土リフトを設置する場合に比べて、排土リフトを持ち上げる高さが小さくすむ。
【0064】
(車体5)
車体5は、
図9に示すように、上下方向に長い直方体状の箱体からなる左右一対の上側駆動ケース51,51、及び上側駆動ケース51,51の下側に連続する下側駆動ケース52,52と、アングル材からなり左右の上側駆動ケース51,51を連結するモータ支持フレーム53と、長方形断面の角パイプにより形成され上側駆動ケース51の下面から延出する側面視L字の脚フレーム54,54と、上側駆動ケース51,51の前面51cから下方へ延出する側面視L字の角パイプからなるバケット支持フレーム55,55と、左右に延びバケット支持フレーム55,55の両端部を連結する角パイプ製のバケット支持ビーム56と、バケット支持ビームの後方において駆動装置3の下端部を保護するモータ保護ビーム57と、脚フレーム54の下端の水平部54aと、バケット支持フレーム55の下端の水平部55aを左右方向に連結する補強パイプ58、59とを、適宜の個所で溶接、ボルト・ナット締めして構成されている。
【0065】
上側駆動ケース51は、
図10に示すように、水平断面における中央をラックレール2が通るよう構成されるところ、曲げレール22が干渉しないよう後方に上下方向の全長に渡る帯状のレール窓51aを有している。
【0066】
下側駆動ケース52は、
図10に示すように、ラックレール2の前面と左右の外側を覆う水平断面がL字のスカート状に形成されており、後方を背転して曲げレール22が干渉しないよう構成されている。
【0067】
(電磁ブレーキ機構76)
排土リフト10は、
図4に示すように、従動ギア12の左右方向の外側に、左右一対の電磁ブレーキ機構76,76を備えている。電磁ブレーキ機構76は、
図18に示すように、従動ギア12とともに回転する円盤状をなし周縁に係止歯761aを有するブレーキ761と、係止歯761aに係止してブレーキ761を制止するブレーキピン762aと、ブレーキピン762aを吸引により引き上げ、ブレーキを解除するソレノイド726bと、ソレノイドユニット762をブレーキピン762aの摺動方向と垂直な方向のスライドを検出するスライドスイッチ763と、ブレーキ761(従動ギア12)の回転数を測定する回転センサー764とを備えている。
【0068】
電磁ブレーキ機構76の電源をONにすると、ソレノイド762bがブレーキピン762aを吸引してブレーキ761を解除する。排土リフト10は、この状態で昇降を行う。従動ギア12(ブレーキ761)の回転数が設定回転数を超え、回転センサー764がこれを検知すると、回転センサー764からの異常検出信号によりソレノイドユニット762がブレーキピン762aの吸引を停止して、スプリング762cによりブレーキピン762aをブレーキ761側へ押し出す。こうしてブレーキピン762aが係止歯761aに係合して、ブレーキ761、及び従動ギア12が緊急停止する。これと同時にスライドスイッチ763がONに切り替わり異常警報音を発信する。
【0069】
このように、緊急停止用のブレーキ機構を電磁式にしたので、ガバナブレーキ等の機械式ブレーキを用いる場合に比べてブレーキ機構をコンパクトにできるので、排土リフト10を小型化できる。ソレノイドユニット762が瞬間的に作動することから、機械式に比べて、緊急時における排土リフト10の落下距離を短くできる。また、ソレノイド762bがOFFの場合に、ブレーキピン762aがブレーキ761をロックするようにしたので、回転センサー764が過剰な回転数を検知した場合だけでなく、排土装置100全体の電源がOFFになった場合も、ブレーキ761をロックできる。
また、回転センサー764がブレーキ761をロックする回転数を、排土装置が落下していると判断するための必要最小限の回転数とできるので、ブレーキ作動時における排土リフト10の速度が遅いうちにブレーキを作動できるため、電磁ブレーキ機構76の構成部品を小型化できる。
【0070】
(制御盤9)
排土リフト10は、
図17に示すように、その電気系統を制御する制御盤9を有している。制御盤9は、制御盤フレーム91に固定されており、制御盤フレーム91と共に支持板53a,53aに設けられた回動軸9a回りに回動し、上側駆動ケース51の上方に退避する作業位置と、上側駆動ケース51の前方に収納される収納位置の間で位置変更できる。作業位置に制御盤を回動することで立坑A内のスペースを拡張でき、また、収納位置に制御盤を収納することで、排土リフトをコンパクトにして運搬しやすくできる。
【0071】
(注油機構77)
排土リフト10は、
図20に示すように、走行機構1に注油を行う注油機構77を備えている。注油機構77は、潤滑油を噴出する注油ノズル771と、注油ノズル771に供給する潤滑油を貯留するオイルタンク772と、オイルタンク772から潤滑油を汲み揚げて注油ノズルへ流送する注油ポンプ773と、オイルタンク772から注油ノズルへ潤滑油が流れる注油ホース774とを備えている。注油ノズル771は、駆動ギア11とラックレール2の噛み合い部に、上方から潤滑油を噴射するよう構成されている。注油ノズルの操作は、無線のコントローラにより行い、排土リフト10の上昇時のみ注油可能に構成されている。排土リフト10の上昇時に駆動ギア11とラックレール2の間に潤滑油を噴射することで、潤滑油が従動ギア12とラックギアの間にも浸透する。排土リフト10の上昇時のみ注油可能としたのは、下降時に上方から注油を行っても、潤滑油が上方へ掃き出されるためである。
【0072】
オイルタンク772は、下側駆動ケース52内に収納されているため、排土リフト10のサイズを小さくできる。
【0073】
以上、本発明の排土装置は、上述した実施例に限らず、例えば、主柱部を曲げレール以外の部分に連結してもよいし、立坑の外部に設けてもよく、大径部を有さない立坑に設置することもできる。バケットは前後2つに分割しなくともよい。駆動装置は、電動でなくともよいし、左右の走行機構の間以外の場所に配設してもよい。ケーブルリールは、傾斜レールの下方以外の場所に配設してもよい。制御盤は固定されてもよい。バケット背転機構とバケット収納機構は、上述した構成とは別の構成を用いてもよい。注油機構や各種のセンサーは省略することができる。電磁ブレーキ機構において、ピニオンギアを直接的にロックするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
排土装置100、排土リフト10、走行機構1、駆動ピニオンギア11、従動ピニオンギア12、上側ローラ13A、下側ノーラ13B
レール部20、ラックレール2、直線レール2A、鉛直レール21、曲げレール22、傾斜レール23
支持部30、駆動装置3、縦梁33a、脚材33c、スライド部材33d、主柱部34
バケット4、後方バケット41、前方バケット42
バケット背転機構43、ロックアーム431、アーム回動軸432、ロックローラ433、アーム付勢手段434、ストッパー437、バケット姿勢検知センサー438、減速センサー439
バケット収納機構44、バケット収納ローラ441、バケット収納レール442
バケット支持フレーム55
バケット背転軸6
センサーロッド73、着床停止センサー75
注油機構77、注油ノズル771、オイルタンク772、注油ポンプ773
ケーブルリール8、ケーブル8a
制御盤9、制御盤回転軸9a
電磁ブレーキ機構76、ソレノイドユニット762、ブレーキピン762a、ソレノイド762b、回転センサー764
立坑A、大径部A1、小径部A2、段差部A3、ライナープレートA4
掘削土B
バケットの重心G
駆動ピニオンギアと従動ピニオンギアの上下方向の距離X
上側ローラと下側ローラの上下方向の距離Y
【要約】 (修正有)
【課題】山間の狭小な場所や傾斜地に設ける立坑に用いることができる立坑排土装置を提供する。
【解決手段】本発明は、立坑A内を昇降する排土リフト10と、排土リフト10を案内するレール部20とを備える立坑排土装置である。レール部20は、左右一対のラックレール2と、ラックレール2を支持する支持部30とを備える。排土リフト10は、ラックレール2上を走行する左右一対の走行機構1と、走行機構1を駆動する駆動装置3と、掘削土Bを収容するバケット4とを有している。一対のラックレール2,2は、立坑Aの周壁に沿って垂設される鉛直レール21と、鉛直レール21に上側に連続して設けられ、上端側が立坑の開口部の上方において立坑の径方向外方へ湾曲する曲げレール22と、曲げレール22の上側に連続して設けられるとともに上端側に向かって直線状に高くなる傾斜レール23とを備える。
【選択図】
図1