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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】耐火性管体及び熱膨張性部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20230214BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20230214BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
F16L5/04
F16L5/02 J
E03C1/12 E
E03C1/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018101260
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019206975
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106771
【氏名又は名称】シーシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 達也
(72)【発明者】
【氏名】木下 直紀
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 貴斗
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-106936(JP,A)
【文献】特開2015-152067(JP,A)
【文献】特開平09-176498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/04
F16L 5/02
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画部を上下に貫通する金属製の区画部貫通管と接続して用いられる耐火性管体であって、
排水を流通する筒部を有する金属製の本体管と、
延焼時の熱により熱膨張する熱膨張材を有する熱膨張性部材と、を備え、
前記熱膨張性部材は、前記筒部内に配置され、
前記本体管は、排水の流路がL字状となる曲部を有するベンド管であり、
前記本体管の前記筒部は、
前記区画部貫通管の下端部が挿入される挿入部と、
前記挿入部の反対側となる下流側に位置し、樹脂製の横管が接続される端部と、を有し、
前記筒部の前記挿入部側の内径は、前記筒部の前記端部側の内径よりも小さく、
前記熱膨張性部材は、前記挿入部側に配置され
前記本体管は、前記筒部の内周面から突出する突出部をさらに有し、
前記突出部は、前記区画部貫通管の前記端部における端面と向かい合う位置に配置され、
前記熱膨張性部材は、前記区画部貫通管の前記端面と、前記突出部との間に配置され、
前記熱膨張材は、膨張黒鉛と熱可塑性エラストマーとポリカーボネート樹脂とを含有し、
前記熱膨張材中の前記熱可塑性エラストマーの含有量は、50質量%を超え、
前記熱膨張材中のポリカーボネート樹脂の含有量は、15質量%以上、30質量%以下の範囲内であることを特徴とする耐火性管体。
【請求項2】
前記熱膨張性部材は、前記熱膨張材を被覆する樹脂製のカバーをさらに有し、
前記カバーは、前記筒部の径方向において前記熱膨張材の内面側を覆う構成を有することを特徴とする請求項1に記載の耐火性管体。
【請求項3】
区画部を貫通する金属製の区画部貫通管と接続して用いられる金属製の本体管に装着される用途に用いられる熱膨張性部材であって、
前記本体管は、排水を流通する筒部を有し、
前記熱膨張性部材は、延焼時の熱により熱膨張する熱膨張材と、前記筒部の径方向において前記熱膨張材の内面側を覆うカバーとを備え、前記筒部に配置されるものであり、
前記カバーは、前記熱膨張材を挟み込むことで前記熱膨張材を保持し、
前記熱膨張材は、膨張黒鉛と熱可塑性エラストマーとポリカーボネート樹脂とを含有し、
前記熱膨張材中の前記熱可塑性エラストマーの含有量は、50質量%を超え
前記熱膨張材中のポリカーボネート樹脂の含有量は、15質量%以上、30質量%以下の範囲内であることを特徴とする熱膨張性部材。
【請求項4】
前記熱膨張材は、前記筒部の周方向に沿った長手方向を有し、
前記カバーは、前記熱膨張材の内面側を覆う内側壁部と、前記熱膨張材の外面側を覆う外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部とを連結する連結壁部とを有し、
前記内側壁部と前記外側壁部とによって前記熱膨張材の幅方向における両側面を挟み込むことで前記熱膨張材を保持することを特徴とする請求項に記載の熱膨張性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性管体及び熱膨張性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、区画部を貫通する金属製の区画部貫通管に接続される樹脂製管体の内周面に熱膨張材を配置した耐火性管体が知られている(特許文献1参照)。このような耐火性管体を備える耐火構造では、延焼時に樹脂製管体が熱変形するとともに熱膨張材が熱膨張することで、区画部貫通管の開口が閉塞される。これにより、区画部貫通管(区画部の貫通孔)を通じた延焼を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-152067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように区画部を貫通する金属製の区画部貫通管には、樹脂製管体ではなく、金属製管体が接続される場合がある。このような配管構造において、金属製管体の内部を通じて区画部貫通管へ向かう延焼が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、区画部貫通管と接続される金属製の本体管の内部を通じて区画部貫通管へ向かう延焼を抑えることのできる耐火性管体及び熱膨張性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する耐火性管体は、区画部を貫通する金属製の区画部貫通管と接続して用いられる耐火性管体であって、排水を流通する筒部を有する金属製の本体管と、延焼時の熱により熱膨張する熱膨張材を有する熱膨張性部材と、を備え、前記熱膨張性部材は、前記筒部内に配置される。
【0007】
この構成によれば、延焼時に金属製の本体管における筒部内において熱膨張材が熱膨張することで、金属製の本体管の筒部を閉塞することができる。
上記耐火性管体において、前記筒部は、前記区画部貫通管の端部が挿入される挿入部を有し、前記本体管は、前記筒部の内周面から突出する突出部をさらに有し、前記突出部は、前記区画部貫通管の前記端部における端面と向かい合う位置に配置され、前記熱膨張性部材は、前記区画部貫通管の前記端面と、前記突出部との間に配置されることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、熱膨張性部材は、金属製の本体管における突出部と、金属製の区画部貫通管の端面との間のスペーサとなるため、金属製の本体管における突出部と、金属製の区画部貫通管の端面との当接を回避することができる。
【0009】
上記耐火性管体において、前記熱膨張材は、膨張黒鉛と熱可塑性エラストマーとを含有し、前記熱膨張材中の前記熱可塑性エラストマーの含有量は、50質量%を超えることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、熱膨張材の柔軟性が高まることで、熱膨張材の割れを抑えることができる。
上記耐火性管体において、前記熱膨張性部材は、前記熱膨張材を被覆する樹脂製のカバーをさらに有し、前記カバーは、前記筒部の径方向において前記熱膨張材の内面側を覆う構成を有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、熱膨張材と排水との接触が樹脂製のカバーによって抑えられることで、例えば、熱膨張材の性能を維持することが容易となる。
上記熱膨張性部材は、区画部を貫通する金属製の区画部貫通管と接続して用いられる金属製の本体管に装着される熱膨張性部材であって、前記本体管は、排水を流通する筒部を有し、前記熱膨張性部材は、延焼時の熱により熱膨張する熱膨張材と、前記筒部の径方向において前記熱膨張材の内面側を覆うカバーとを備え、前記筒部に配置されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、樹脂製のカバーにより熱膨張材と排水との接触を抑えることで、例えば、熱膨張材の性能を維持することが容易となる。
上記熱膨張性部材において、前記カバーは、前記熱膨張材を挟み込むことで前記熱膨張材を保持することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、熱膨張材に対するカバーの位置決めが容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、区画部貫通管と接続される金属製管体の内部を通じて区画部貫通管へ向かう延焼を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の耐火構造を示す断面図である。
図2】(a)は、熱膨張性部材の分解斜視図であり、(b)は、熱膨張性部材の斜視図である。
図3】加熱後の耐火構造を示す断面図である。
図4】変更例の耐火構造を示す断面図である。
図5】(a),(b)は、熱膨張性部材の変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の耐火性管体及び熱膨張性部材の実施形態を説明する。
図1に示すように、耐火性管体11は、区画部41を貫通する金属製の区画部貫通管51と接続して用いられる。本実施形態の区画部41は、建築物の床であり、最下階と、最下階の直上の直上階とを区画する防火区画を構成している。区画部41には、区画部貫通管51が上下に貫通して配置される。区画部41は、貫通孔を有する床スラブ42と、貫通孔の内壁と区画部貫通管51との間に設けられる埋設部43とを有している。床スラブ42は、例えばコンクリート製であり、埋設部43は、例えばモルタルから形成される。
【0017】
区画部貫通管51は、建築物の排水システムを構成する。区画部貫通管51としては、例えば、鋳鉄製の耐火性継手管を用いることができる。区画部貫通管51は、上下方向に沿った流路を有し、区画部貫通管51の上端部及び下端部が接続部として構成されている。区画部貫通管51の上端部には、例えば、塩化ビニル樹脂等の樹脂製管体(立て管)を接続することができる。なお、区画部貫通管51は、床スラブ42の上方で横方向に沿った流路を構成する枝管接続部を有していてもよい。枝管接続部には、例えば、塩化ビニル樹脂等の樹脂製管体(枝管)を接続することができる。
【0018】
耐火性管体11は、金属製の本体管21と、熱膨張性部材31とを備えている。金属製の本体管21は、排水を流通する筒部22を有している。筒部22は、区画部貫通管51の端部52(下端部)が挿入される挿入部22aを有している。挿入部22aの開口端側(上端側)には、区画部貫通管51との間をシールするためのゴム製のシール部材Sを配置することができる。
【0019】
本実施形態の本体管21は、排水の流路がL字状となる曲部を有するベンド管(脚部継手)であり、上述した挿入部22aとは反対側(下流側)の端部22bには、樹脂製の横管61を接続することができる。耐火性管体11の筒部22において挿入部22a側の管径D1は、端部22b側の管径D2よりも小さい。
【0020】
耐火性管体11における本体管21は、筒部22の内周面から突出する突出部23をさらに有している。突出部23は、区画部貫通管51の端部52における端面52aと向かい合う位置に配置されている。突出部23は、区画部貫通管51の荷重を受けることが可能である。本実施形態の突出部23は、筒部22の周方向にわたって延在しているが、筒部22の周方向において部分的に配置されていてもよい。
【0021】
熱膨張性部材31は、本体管21の筒部22内に配置される。本実施形態の熱膨張性部材31は、区画部貫通管51の端面52aと、突出部23との間に配置されている。熱膨張性部材31は、延焼時の熱により熱膨張する熱膨張材32と、熱膨張材32を被覆する樹脂製のカバー33とを有している。熱膨張性部材31は、筒部22の内周に沿った環状を有している。カバー33は、筒部22の径方向において熱膨張材32の内面側を覆う構成を有している。
【0022】
図1及び図2(a)に示すように、本実施形態のカバー33は、熱膨張材32の内面側を覆う内側壁部33aと、熱膨張材32の外面側を覆う外側壁部33bと、内側壁部33aと外側壁部33bとを連結する連結壁部33cとを有している。
【0023】
カバー33は、樹脂の種類や、壁厚の設定によって、延焼時に熱変形又は燃焼されるように構成されている。カバー33を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。カバー33は、例えば、射出成形やプレス成形等の成形法により得ることができる。カバー33の壁厚は、例えば、0.5mm以上、5mm以下の範囲内である。
【0024】
図1及び図2(b)に示すように、カバー33の内側壁部33aと外側壁部33bとの間には、熱膨張材32が配置される。カバー33は、内側壁部33aと外側壁部33bとによって熱膨張材32を挟み込むことで、熱膨張材32を保持するように構成されている。詳述すると、熱膨張材32は、筒部22の周方向に沿って配置される長手方向を有し、熱膨張材32の幅方向における両側面をカバー33の内側壁部33aと外側壁部33bとによって挟み込む。
【0025】
筒部22の径方向において、熱膨張性部材31の内面(カバー33の内側壁部33aの内面)は、突出部23の内面と面一となるように配置されるか、突出部23の内面よりも外側となるように配置されることが好ましい。この場合、排水が流れる部分の径寸法を十分に確保することができる。
【0026】
熱膨張材32は、膨張黒鉛を含有する。熱膨張材32には、膨張黒鉛以外に、例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー等を含有させることもできる。
熱膨張材32は、膨張黒鉛と熱可塑性エラストマーとを含有することが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。熱膨張材32は、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0027】
熱膨張材32中の膨張黒鉛の含有量は、10質量%以上、30質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、25質量%以下の範囲内である。熱膨張材32中の熱可塑性エラストマーの含有量は、50質量%を超えることが好ましく、より好ましくは52質量%以上であり、さらに好ましくは54質量%以上である。熱膨張材32中の熱可塑性エラストマーの含有量は、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは65質量%以下である。
【0028】
熱膨張材32は、熱膨張後の膨張黒鉛の形状を安定化させる形状安定材を含有することが好ましい。形状安定材としては、ホウ酸、合成樹脂等が挙げられる。熱膨張材32は、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。熱膨張材32は、形状安定材(合成樹脂)としてポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。熱膨張材32中の形状安定材の含有量は、15質量%以上、30質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、25質量%以下の範囲内である。
【0029】
熱膨張材32は、例えば、塩化ビニル系エラストマー200質量部、膨張黒鉛75質量部、及びポリカーボネート樹脂65~80質量部を含有することで、緩衝性能、熱膨張による閉塞性能、熱膨張により形成される閉塞部の形状安定性(保形性)のいずれについても優れた性能を発揮する。
【0030】
熱膨張材32は、膨張黒鉛、熱可塑性エラストマー等を含有する原料組成物を成形することで得ることができる。詳述すると、原料組成物は、膨張黒鉛、熱可塑性エラストマー等を加熱しながら混練することで得ることができる。熱膨張材32は、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形等を用いることができる。例えば、図2(a)に示す断面形状を有する形状に押出成形した長尺物を所定の長さに切断することで、熱膨張材32を成形してもよいし、原料組成物をシート状に成形した後、打ち抜きや切断によって熱膨張材32を成形してもよい。
【0031】
図2(a)に二点鎖線で示すように、本実施形態では、両端を有する直線状の熱膨張材32を環状となるように曲げた後、カバー33の内側壁部33aと外側壁部33bとの間の凹部に嵌め込むことで、図2(b)に示すように、熱膨張性部材31を得ることができる。
【0032】
このようにして得られた熱膨張性部材31は、筒部22における挿入部22aの開口から筒部22内に挿入することで、本体管21に装着することができる。
次に、耐火性管体11の使用方法及び主な作用について説明する。
【0033】
耐火性管体11を使用するには、筒部22における挿入部22aに区画部貫通管51の端部52を挿入することで、耐火性管体11と区画部貫通管51とを接続する。このとき、区画部貫通管51の端面52aと耐火性管体11の熱膨張性部材31とを接触させることで、挿入部22aの所定の位置まで区画部貫通管51の端部52が挿入された状態であることを確認することができる。
【0034】
このように形成された耐火構造では、区画部貫通管51から耐火性管体11へ向かって排水を流通させることができる。ここで、区画部41の両側に形成されている両空間のうち、上方の空間は、火災時の延焼から保護する空間であり、下方の空間が火災の発生を想定した火災側の空間である。火災時には、火災側の空間に配置されている耐火性管体11の熱膨張性部材31が加熱される。
【0035】
このとき、図3に示すように、熱膨張材32が熱膨張することで、閉塞部71が形成される。なお、閉塞部71は、カバー33の分解生成物を含んでいてもよい。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
(1)耐火性管体11は、区画部41を貫通する金属製の区画部貫通管51と接続して用いられる。耐火性管体11は、排水を流通する筒部22を有する金属製の本体管21と、延焼時の熱により熱膨張する熱膨張材32を有する熱膨張性部材31とを備えている。熱膨張性部材31は、筒部22内に配置されている。
【0037】
この構成によれば、延焼時に金属製の本体管21における筒部22内において熱膨張材32が熱膨張することで、金属製の本体管21の筒部22を閉塞することができる。したがって、区画部貫通管51と接続される金属製の本体管21の内部を通じて区画部貫通管51へ向かう延焼を抑えることができる。
【0038】
(2)耐火性管体11の筒部22は、区画部貫通管51の端部52が挿入される挿入部22aを有し、耐火性管体11の本体管21は、筒部22の内周面から突出する突出部23をさらに有している。突出部23は、区画部貫通管51の端部52における端面52aと向かい合う位置に配置されている。耐火性管体11の熱膨張性部材31は、区画部貫通管51の端面52aと、突出部23との間に配置されている。
【0039】
この場合、熱膨張性部材31は、金属製の本体管21における突出部23と、金属製の区画部貫通管51の端面52aとの間のスペーサとなるため、金属製の本体管21における突出部23と、金属製の区画部貫通管51の端面52aとの当接を回避することができる。これにより、例えば、耐火性管体11と区画部貫通管51との接続の際に加わる衝撃を熱膨張性部材31によって緩和することができる。また、例えば、耐火性管体11と区画部貫通管51とを接続した後の耐火構造(配管構造)において外部から振動が加わった際に、金属製の本体管21における突出部23と、金属製の区画部貫通管51の端面52aとが擦れることを回避することができる。したがって、耐火性管体11又は区画部貫通管51を好適に保護することができる。
【0040】
(3)熱膨張材32は、膨張黒鉛と熱可塑性エラストマーとを含有し、熱膨張材32中の熱可塑性エラストマーの含有量は、50質量%を超えることが好ましい。この場合、熱膨張材32の柔軟性が高まることで、熱膨張材32の割れを抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態のように熱膨張性部材31が配置される場合、金属製の本体管21における突出部23と、金属製の区画部貫通管51の端面52aとの間における熱膨張材32の緩衝機能を高めることができる。これにより、金属製の本体管21における突出部23と、金属製の区画部貫通管51の端面52aとの間の衝撃をより緩和することができる。したがって、耐火性管体11又は区画部貫通管51をより好適に保護することができる。
【0042】
(4)熱膨張性部材31は、熱膨張材32を被覆する樹脂製のカバー33をさらに有している。カバー33は、本体管21の筒部22の径方向において熱膨張材32の内面側を覆う構成を有している。
【0043】
この場合、熱膨張材32と排水との接触が樹脂製のカバー33によって抑えられることで、例えば、熱膨張材32の性能を維持することが容易となる。したがって、熱膨張材32の性能を十分に発揮させることが可能となる。
【0044】
(5)耐火性管体11の筒部22において挿入部22a側の管径D1は、挿入部22aとは反対側の端部22b側の管径D2よりも小さい。熱膨張性部材31は、管径D1を有する挿入部22a側に配置されている。このように管径D1を有する挿入部22a側に熱膨張性部材31を配置することで、管径D2を有する端部22b側に熱膨張性部材31を配置するよりも、閉塞の求められる面積が小さくなるため、効率的に筒部22を閉塞することができる。
【0045】
(6)熱膨張性部材31のカバー33は、熱膨張材32を挟み込むことで熱膨張材32を保持している。この場合、熱膨張材32に対するカバー33の位置決めが容易となる。したがって、例えば、本体管21の筒部22内に配置された熱膨張性部材31において、熱膨張材32に対するカバー33の位置がずれることを抑えることができる。また、例えば、熱膨張材32とカバー33とを一体とした状態で熱膨張性部材31を取り扱うことができるため、熱膨張性部材31を本体管21に取り付ける作業が容易となる。
【0046】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
図4に示すように、熱膨張性部材31は、筒部22の挿入部22a側とは反対側となる端部22b側に配置してもよい。この場合であっても、延焼時に熱膨張材32が熱膨張することで、筒部22内を閉塞することが可能である。
【0048】
・熱膨張性部材31は、区画部貫通管51の端面52aと突出部23との間に配置される部分に加えて区画部貫通管51の外周面と、本体管21の内周面との間に配置される部分を有していてもよい。
【0049】
・上記熱膨張材32は、両端部を有する環状に形成されているが、無端環状の熱膨張材に変更することもできる。また、熱膨張材32は、筒部22の周方向に沿って配置される複数から構成することもできる。
【0050】
・熱膨張性部材31のカバー33を省略することもできる。
・カバー33は、熱膨張材32の内周面側のみを覆うように変更することもできる。この場合、カバーと熱膨張材32との間に接着層を設けることで、熱膨張材32とカバーとを接合することができる。また、熱膨張材32の内周面側のみを覆うように構成したカバーに凹凸を形成し、その凹凸に熱膨張材32の内周面側を嵌め込むことで、熱膨張材32とカバーとを接合することもできる。
【0051】
図5(a)に示すように、上記カバー33を上壁部34aと、下壁部34bと、上壁部34aと下壁部34bとを連結する連結壁部34cとを有するカバー34に変更することもできる。このカバー34のように、熱膨張材32を上下方向から上壁部34a及び下壁部34bによって挟み込むことで、熱膨張材32を保持することもできる。なお、熱膨張材32を挟み込むカバー33,34の連結壁部33c,34cは、熱膨張材32に接触していてもよいし、熱膨張材32と離間していてもよい。
【0052】
図5(b)に示すように、カバー34における上壁部34aと下壁部34bとのいずれか一方を省略してもよい。
・本体管21の突出部23を省略してもよい。この場合、熱膨張性部材31と筒部22の内周面との間に必要に応じて接着層を設けることで、熱膨張性部材31を筒部22内に固定することができる。
【0053】
・本体管21と区画部貫通管51との接続構造は、本体管21の筒部22に区画部貫通管51の端部52が挿入される接続構造に限定されず、区画部貫通管51の端部52に本体管21の筒部22が挿入される接続構造であってもよい。
【0054】
・区画部貫通管51が設けられる区画部41は、最下階と、最下階の直上の直上階とを区画する床に限定されず、その他の階を区画する床であってもよい。また、区画部41は、隣り合う室を区画する壁であってもよい。
【0055】
・耐火性管体11の筒部22において、挿入部22a側の管径D1と端部22b側の管径D2とは同じであってもよい。また、耐火性管体11の軸方向を横方向として使用する場合、挿入部22a側の管径D1は、端部22b側の管径D2よりも小さくてもよい。
【0056】
・耐火性管体11の本体管21は、ベンド管に限定されず、直管であってもよい。また、耐火性管体11の端部22bに接続される管の材質や形状についても適宜変更することができる。
【0057】
・熱膨張材32の組成は、上記実施形態の組成に限定されず、市販されている熱膨張材を用いてもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0058】
(イ)前記熱膨張材は、膨張黒鉛と熱可塑性エラストマーと形状安定材とを含有し、前記形状安定剤は、ポリカーボネート樹脂を含む耐火性管体。
(ロ)区画部と、前記区画部を貫通する金属製の区画部貫通管と、前記区画部貫通管と接続して用いられる耐火性管体と、を備える耐火構造であって、前記耐火性管体は、排水を流通する筒部を有する金属製の本体管と、延焼時の熱により熱膨張する熱膨張材を有する熱膨張性部材と、を備え、前記熱膨張性部材は、前記筒部内に配置される耐火構造。
【符号の説明】
【0059】
11…耐火性管体、21…本体管、22…筒部、22a…挿入部、23…突出部、31…熱膨張性部材、32…熱膨張材、33,34…カバー、41…区画部、51…区画部貫通管、52…端部、52a…端面。
図1
図2
図3
図4
図5