(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】シャフト-ハブ接続部
(51)【国際特許分類】
F16D 1/06 20060101AFI20230214BHJP
B23B 5/36 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
F16D1/06 210
B23B5/36
(21)【出願番号】P 2018564959
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2017065968
(87)【国際公開番号】W WO2018002122
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-29
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518434902
【氏名又は名称】コフシエク,グイード
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】コフシエク,グイード
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-47059(JP,A)
【文献】特開2002-310177(JP,A)
【文献】特開平10-19051(JP,A)
【文献】特開2009-190423(JP,A)
【文献】特開2011-7233(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102004004456(DE,A1)
【文献】特表2013-512394(JP,A)
【文献】特開2003-148503(JP,A)
【文献】国際公開第2012/152442(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第2406750(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/06
B23B 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の噛み合い部を有するアライメントギアリング部を備えたシャフト-ハブ接続部であって、前記噛み合い部は、断面内に外形を備え
、延長トロコイドに沿って動作し、非接触領域が前記噛み合い部の外形に形成されることを特徴とするシャフト-ハブ接続部。
【請求項2】
前記延長トロコイドが、延長内トロコイドであることを特徴とする、請求項1に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項3】
前記延長トロコイドが、延長外トロコイドであることを特徴とする、請求項1に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項4】
異なる外形を有する噛み合い部も存在することを特徴とする、請求項1~3のうち少なくとも一項に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項5】
異なる外形を有する前記噛み合い部が、インボリュートギアリング、平行歯車機構、及び/又は微細セレーションに属することを特徴とする請求項4に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項6】
前記シャフト及び前記ハブを、互いに対して軸方向に外すことができることを特徴とする、請求項1~5のうち少なくとも一項に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項7】
前記シャフト及び前記ハブは、互いに圧力をかけることを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項8】
前記噛み合い部が、逃げ溝を備えることを特徴とする、請求項1~7のうちいずれか一項に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項9】
前記シャフト及び前記ハブの前記噛み合い部の数が、同一基礎パラメータに基づいて画定されることを特徴とする、請求項1~8のうちいずれか一項に記載のシャフト-ハブ接続部。
【請求項10】
前記アライメントギアリング部が、前記軸方向に段状領域を備えることを特徴とする、請求項1~9のうちいずれか一項に記載のシャフト-ハブ接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメントギアリング部を備えるシャフト-ハブ接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなシャフト-ハブ接続部は、広く知られており、現況技術で使用される。アライメントギアリング部は、マルチプル駆動型の固定具である。トルクは、たいてい歯を有するフランクを用いて伝達される。シャフトの外側が噛み合わさり、ハブの内側が噛み合わさる。噛み合い部が、シャフト外側から、及びハブの内部から突き出ている。対応する溝は、それぞれ逆の要素上に形成される。噛み合い部の間に隙間が存在し、隙間は、逆の要素の材料によって埋められることになる。
【0003】
このようなアライメントギアリング部は、歯の構成及び外形に応じて、インボリュートギアリング、平行歯車機構、又は微細セレーションとして周知である。
【0004】
通常のシャフト-ハブ接続部では、中間要素を備えるフェザーキー差込型歯部接続部、円形圧着接続部、又は他の接続部が、広く使われている。中間要素の使用は、トルク伝達のために必要とされる外形との接触を確実なものとすることになる。現況技術において公知の他の取り付け接続部もまた、多角の外部輪郭を有する噛み合い部として公知であり、例えば、いわゆるH-又はP3G形状に属する。特に、高負荷及び大きな機械部品の場合、相当不利な点が見出されることになる。接続部は、全表面の型嵌め部を備える。動力伝達が、外形の法線のあらゆる位置で、すなわち表面の法線に対して垂直に行われる。理想的な方法及び特に高負荷の場合では、荷重伝達角度は、構造用部品の中心に対して接線方向でなければならない。しかし、これは、公知の多角形状に対する場合ではない。さらに、噛み合い部の多角形状は、製造が困難であるか又は複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の現況技術に基づいて、いかなる追加の伝達要素又は中間要素を必要とせず、負荷伝達角度のより良好な位置を保証し、必要な品質及び精度を備えて経済的に製造されることができるシャフト-ハブ接続部を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題の技術的解決のために、請求項1に記載の特徴を有するシャフト-ハブ接続部が提案される。他の利点および特徴は、従属請求項より明らかなになる。
【0007】
本発明により、噛み合い部の断面は、少なくとも部分的に、延長トロコイドに沿って動作する外形を有する。
【0008】
噛み合い部は、断面内に、すなわち外形の延長部に外形を備え、したがって、少なくとも所々で、又は、部分的に、延長トロコイドに沿って動作する。
【0009】
本発明という意味におけるシャフト-ハブ接続部は、トルク伝達のための内側と外側構造体の構成要素との間に、いかなる接続部も備える。これらの接続部は、例えば、一般的なクラッチ、マルチプレートクラッチ、風力技術の分野におけるブレーキディスク接続部、船のプロペラとドライブシャフトとの間の接続部、と同様に他の接続部組立体のようなディスク形状のバブも含む。
【0010】
サイクリック曲線とも呼ばれているサイクロイドは、誘導する曲線上の円の回転中に、円の定点によって追従される経路である。誘導する曲線は、例えば直線又は円でもよい。このように、例えば、内サイクロイド又は外サイクロイド、更には内トロコイド又は外トロコイドが作り出される。典型的な内サイクロイド又は内トロコイドは、半径Rを有する円の定点Pによって作り出され、滑ることのない他の円の内側上で定点が転動する。典型的外サイクロイド又は外トロコイドは、円の定点Pによって作り出され、滑ることのない他の円の外側上で定点が転動する。定点Pと半径Rの中心との距離aは、重要である。距離aが半径Rと異なる場合、これは、トロコイド、それ以外では通常サイクロイドと呼ばれる。aがRより小さい場合、これは短縮トロコイドと呼ばれる。aがRより大きい場合、これは延長トロコイドと呼ばれる。
【0011】
延長トロコイドは、それらの不連続な形状を特徴とし、すなわち曲線は、曲線の進行の間に互いと交差する。現況技術が、接続部外形の形式に対して閉じたサイクロイドを記載する一方で、本発明は、シャフトとハブとの間にコネクタ横断面を形成する、それぞれの延長トロコイドの副部品又は断面に関するものである。延長トロコイドを使用するおかげで、トルク伝達からの力の伝達は、他のサイクロイド型と比較して明らかに改良されることになる。特に、急勾配の噛み合い形状を作製することが可能となる。このように、特に、安定かつ効率的な接続部を製造すること可能となる。対応する製造処理の利用は、経済的だけではなく、非常に正確な製造も可能にし、それは延長トロコイドの利用を第一に考慮する理由でもある。複雑な加工作業はむしろ、専門家にこのような形状を避けさることになる。これは、幅の狭い曲線形状、直径急変等があてはまる。
【0012】
有利な提案によると、接続部は、適用事例に応じて、軸上で外れるように構成されることができ、又は、押し込まれることもできる。例えば、軸方向に一方を配置するより前に、他方が設計されなければならなかった異なるシャフト-ハブ接続部の場合、他の外形加工の噛み合い部に調整されて、嵌めることも可能である。
【0013】
さらに、特別な利点として、歯車機構がカム式旋削加工によって製造されることが示される。これは、少なくともシャフト又はハブ部品のうち1つに適用するが、好ましくは両方ともに適用する。これは、大量生産においても特別な経済的な実現可能性に結びつく。本発明の別の利点は、異なる材料を組み合わせてもよいことである。噛み合い部外形の形式が、最適なトルク伝達に結びつき、個々の噛み合い部に作用する力が必要以上に強くなることはない。
【0014】
本発明の別の有利な提案によると、噛み合い部は、逃げ溝を備えることができる。また、孤立したの他の領域は、本発明の範囲内に含まれる。形状において、孤立した領域は、シャフト及びハブが互いに接触していない領域でである。
【0015】
本発明は、旋削加工処理を用いて対応シャフト-ハブ接続部を一手に製造することを可能にする。外形は、最大にして可能な限りのピッチ及び曲線形状の精度を備えた高精度の旋削加工処理を用いる製造を通じて作り出される。ピッチ誤差は、実際には測定することはできない。
【0016】
すべての噛み合い部は、同一の機械加工処置によって製造されることができる。寸法取り作業が1つの噛み合い部まで減らされるように、すべての噛み合い部の形状は同一である。数学的に明らかに定められた外形のため、本発明は大量生産に好適であり、簡易な計測技術を用いて点検することができる。
【0017】
力の伝達ベクトルはむしろ、周辺方向に向いており、結果としてトルクの伝達のための最適化された加力になる。
【0018】
本発明は、シャフト-ハブ接続部の構造物及び製造に対して高い自由度を許容する。噛み合い部の数、工具軌道の半径、及び加工物への侵入深さは、好適な形状を製造することを可能にする製造パラメータである。
【0019】
実際には、特定の製造パラメータが、好適であると判明している。噛み合い部の数は、7~70の範囲内で噛み合い部を備え、ここで、15~40は典型的であると考えられることができる。噛み合い部の幅は、好ましくは>8mmであり、より好ましくは>12mmである。噛み合い高さに関しては、>5mmが好ましく、>8mmがより好ましいと判明している。噛み合い部間の隙間は、好ましくは>3mmであり、より好ましくは>5mmである。これらの仕様は、構造上の空間に応じた噛み合い部と隙間との間の比率、及び性能要件は、必ずしも1:1であるというわけではないことも示す。例えば、2:1、2.5:1、しかし逆に、1:2、1:2.5、及びいかなる中間の比率もが好適であり得る。
【0020】
逃げ溝は、形成されるとすれば、数ミリメートルになることが好ましい。
【0021】
特に有利な方法では、すべての噛み合い部は、同じ形状を有する。
【0022】
本発明の別の有利な提案によると、接続部は、シャフト及びハブの重なり合った軸の領域の50%未満を使用する。
【0023】
接続部は、個々の事例に対してそれぞれに適合させ、最適化されることができる。噛み合い部の数は別として、逃げ溝と同様に、その幅及び高さ、噛み合い部間の隙間の大きさ、機能的な内側及び外側の直径、シャフトの噛み合い部間の接触面、並びに接続部のハブを変更することができる。
【0024】
旋削加工処理を用いた、特にカム式旋削加工処理を用いた外形の製造は、高度にして可能な限りのピッチ正確度及び曲線形状精度を備えた高い製造精度をもたらす。起こり得るピッチ誤差は、測定することはできない。このように、高い均一性のあるコンタクトパターンの挙動が得られる。これは、工業的に再現可能な接続部を製造することができることを意味し、力の伝達表面は、最適な状態である。従来の対応するシャフト-ハブ接続部は、より長い慣らし期間の後のみ、それに応じて良好なコンタクトパターン挙動を生み出す一方で、このような挙動は、本発明によって実際には直ちにもたらし、主として効率を上昇させる。
【0025】
本発明は、特大の接続部(圧縮接続部)の製造を可能にし、そのため、シャフト及びハブの別々の膨張よる接触損は存在しない。表面の法線方向が外側へ向くことが好ましいところで、逃げ溝は、接続部が外れることのないように保証する。滑り嵌め接続部を備える逃げ溝を利用する場合、逃げ溝は、接続部のバックラッシュの最大値が、シャフト及びハブの別々の膨張により制限されることを保証する。
【0026】
ハブを備えたシャフトの組み立てを容易にするために、シャフト及びハブの両方で、階段状の内部又は外部形状を使用することができる。本目的のために、シャフト及びハブにおける少なくとも2つ工程を、接続部の第1の軸領域に明らかなバックラッシュが存在するように、必要な大きさにし、組み立て作業を非常に容易にする。構造構成要素が最終工程で接触する前に、接続部は、それ自体をすでに中央に合わせている。両方の構造構成要素は、半径方向又は軸方向の振れの品質に影響を及ぼすことなく、大きなオーバーサイズによって組み立てられることができる。最終的に取り付けられた状態では、設計によって画定されるオーバーサイズの接続部全体が、負荷に耐えるようになり、すなわち、接続部の全軸長が利用される。このオプションのため、及び、特に非常に大きな圧力を加えられた接続部の場合には、接続部に設けられた構造上の空間が、特に大きなオーバーサイズが接続部の機能性のために必要である場合、最適化されることができる。段階的な設計のおかげで、組み立て作業の間、加熱又は急速冷却を省略することができ、それは、少なからぬ利点である。
【0027】
本発明は、非常に経済的な方法で製造されることができて、トルク伝達の最も異なる適用事例に対して使用されることができるシャフト-ハブ接続部を提供する。
【0028】
本発明の他の利点及び特徴は、図によって以下の記載から明らかとなる。
【0029】
図中、同一要素は、同一参照番号によって参照される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】現況技術によるシャフトの多角形状の平面図である。
【
図2】現況技術によるシャフトの多角形状の平面図である。
【
図3】本発明によるシャフト-ハブ形状の例示的実施形態の(図式化された)断面図である。
【
図4】工具軌道の描写を伴う
図3による表示である。
【
図5】本発明によるシャフト-ハブ形状の例示的実施形態における法線の拡大表示である。
【
図6】逃げ溝を備える例示的実施形態の
図5による表示である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び2によれば、それ自体既知であるインボリュート歯形、平行な歯形、又は微細セレーションといった標準的な歯車機構に加えて、いわゆる多角歯車機構もある。示されたもののような多角形の外形は、現況技術において公知である。
図1は、いわゆるH6形状1を手本として示し、6つの角部2を有する外形が形成される。トルク伝達のためのこの断面は、表面の法線4を備える。
【0032】
図2によれば、いわゆるP3Gの形状が示され、そこに表面の法線7が形成される。
【0033】
図1及び2では、それぞれの法線が、周囲全体に渡って伸びているのを表示する。ここで、力の伝達又はトルク伝達にとって部分的に非常に好ましくない法線方向が、特に明らかにされる。
【0034】
図3及び4では、本発明による歯車機構の形状の例示的実施形態が示される。形状10は、噛み合い高さ13及び隙間12を有する噛み合い部11を備え、その中で形状10が、対応する逆形状を係合する。噛み合い部は、噛み合い幅14を備える。それらは、機能的な内側の直径16と機能的な外側の直径15との間に配置される。示された例示的実施形態では、噛み合い部が逃げ溝17を備え、根元の範囲においてテーパーがつく。工具軌道の円18が、
図3によって示される。示された拡大像では、噛み合い部11が、法線20の表示によって補われ、噛み合い部表面上の対応する半直線によって表される。法線が非常に好ましい方法で延在し、それによって、力及びトルクの伝達に対する特定の適合性が得られることが示される。
【0035】
図6に示される対応する表示は、放射状の法線21と同様に噛み合い部11を示す。逃げ溝17は、特にこの表示にて特徴づけられる。それは、噛み合い部の少なくとも直線の又は接線方向の摺り合わせ下方からのずれより生じる。逃げ溝の外形は、それに応じて記載されている利点を伴う。
【0036】
例示的実施形態は、
図7a~7cに示される。シャフト22は、噛み合い部23を備えており、その間に、隙間24が残存する。示された例示的実施形態では、噛み合い部23は、逃げ溝を備える。
【0037】
図7bに示されるハブ25は、対応する凹部26及び隙間又は噛み合い部27を備える。
【0038】
図7a及び7bの組み合わせの結果が、外形7cであり、ここでは、法線に沿った伝達接触点が最適化されることが分かる。
【0039】
例えば、示された例示的実施形態は、中央のハブ本体又はキャリパー22に対するブレーキディスク25のフリクションリングを示す。
【0040】
記載されている例示的実施形態は説明に役立つのみであり、制限されることはない。
【符号の説明】
【0041】
1 多角形状
2 角部
4 法線
5 多角形状
7 法線
10 シャフト-ハブ接続部
11 噛み合い部
12 隙間
13 噛み合い高さ
14 噛み合い幅
15 機能的な外部直径
16 機能的な内部直径
17 逃げ溝
18 工具のひと続きの円
20 法線
21 法線
22 シャフト
23 噛み合い部
24 隙間
25 ハブ
26 凹部
27 中間領域