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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20230214BHJP
   A62B 35/00 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
A41D13/00 107
A62B35/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019032366
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020133080
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】506393422
【氏名又は名称】ハイドサイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】吉井 秀雄
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021289(JP,A)
【文献】特開2019-099963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00
A62B35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用可能な上着である衣服であって、
衣服本体の背面において、複数の高さ位置に、前記フルハーネス型安全帯の連結部材を外部に導出する挿通口が設けられており、
前記衣服本体の背面に設けられた開口部と、前記開口部を塞ぐように設けられた複数枚の平布とを備え、
前記複数枚の平布は、上下にずらすように並べて配置され、上段の平布と下段の平布とがオーバーラップして、上段の平布と下段の平布との間を前記挿通口として、前記連結部材を外部に導出し、
上段の平布の内側に、下段の平布の上部が向き合うように位置する関係にあり、
最下段の平布と前記衣服本体との間をさらに前記挿通口として、前記連結部材を外部に導出する構成であることを特徴とする衣服。
【請求項2】
フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用可能な上着である衣服であって、
衣服本体の背面において、複数の高さ位置に、前記フルハーネス型安全帯の連結部材を外部に導出する挿通口が設けられており、
前記衣服本体の背面に設けられた開口部と、前記開口部を塞ぐように設けられた複数枚の平布とを備え、
前記複数枚の平布は、上下にずらすように並べて配置され、上段の平布と下段の平布とがオーバーラップして、上段の平布と下段の平布との間を前記挿通口として、前記連結部材を外部に導出し、
上段の平布の内側に、下段の平布の上部が向き合うように位置する関係にあり、
前記複数枚の平布のうち、最上段の平布は、その上縁部及び左右縁部が前記衣服本体に縫合されており、他の平布は、その左右縁部が前記衣服本体に縫合されていることを特徴とする衣服。
【請求項3】
フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用可能な上着である衣服であって、
衣服本体の背面において、複数の高さ位置に、前記フルハーネス型安全帯の連結部材を外部に導出する挿通口が設けられており、
前記衣服本体の背面に設けられた開口部と、前記開口部を塞ぐように設けられた複数枚の平布とを備え、
前記複数枚の平布は、上下にずらすように並べて配置され、上段の平布と下段の平布とがオーバーラップして、上段の平布と下段の平布との間を前記挿通口として、前記連結部材を外部に導出し、
前記平布は、伸縮性を有する素材からなることを特徴とする衣服。
【請求項4】
フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用可能な上着である衣服であって、
衣服本体の背面において、複数の高さ位置に、前記フルハーネス型安全帯の連結部材を外部に導出する挿通口が設けられており、
前記衣服本体の背面に設けられた開口部と、前記開口部を塞ぐように設けられた複数枚の平布とを備え、
前記複数枚の平布は、上下にずらすように並べて配置され、上段の平布と下段の平布とがオーバーラップして、上段の平布と下段の平布との間を前記挿通口として、前記連結部材を外部に導出し、
前記平布は、左右に長い矩形状を有することを特徴とする衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用可能な衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
今後、高所作業を行う際には、墜落制止用器具であるフルハーネス型安全帯を装着することが義務付けられる。フルハーネス型安全帯100は、図7に示すように、肩や腿等を通すようにした複数のベルトにより構成され、その背面側にD環等の連結部材101が設けられる。不図示のランヤード(命綱)の一端のフック等を連結部材101に連結し、ランヤードの他端のフック等を構造物に連結する。フルハーネス型安全帯100では、宙吊り状態となったときに、装着者が逆さま姿勢にならないように、装着者の背面側であって、身体の重心位置(腰部付近)よりも上方に連結部材101が位置する。
【0003】
このようなフルハーネス型安全帯100を装着すると、次のような不都合が生じることある。
例えばワークウェアを着用した上からフルハーネス型安全帯100を装着すると、ワークウェアの胸ポケット等にフルハーネス型安全帯100が重なり、収納性が損なわれることがある。
また、再帰性反射材が取り付けられた高視認性安全服を着用した上からフルハーネス型安全帯100を装着すると、再帰性反射材にフルハーネス型安全帯100が重なり、視認性が損なわれることがある。
また、熱中症対策として電動ファン内蔵上着を着用することがあるが、電動ファン内蔵上着を着用した上からフルハーネス型安全帯100を装着すると、フルハーネス型安全帯100により締め付けられて、上着の内側での風の流れが妨げられ、冷却機能が損なわれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6233674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような不都合を避けるために、フルハーネス型安全帯100を装着した状態で上着を着用したいという要求がある。
ここで、フルハーネス型安全帯100を装着した状態で上着を着用する場合、連結部材101にどのようにしてランヤードを連結させるかが問題となる。
例えば上着の背面に開口部を設けておき、この開口部を介して連結部材101にランヤードを連結させる構成が考えられる。
特許文献1には、フルハーネス安全帯を身につけ、その上から着用する冷却衣服であって、命綱をフルハーネス安全帯に取り付ける際、取出し筒部を冷却衣服の外側に引き出す構成が開示されている。取出し筒部の基端は、冷却衣服の背面に固定されており、冷却衣服の内側と外側を連通し、命綱が挿入される開口部を有している。
【0006】
しかしながら、例えばフルハーネス型安全帯100の装着者の体格や製品の種類によって、連結部材101の高さ位置にはばらつきがある。そして、連結部材101の高さ位置と開口部の高さ位置とが合わないときには、連結部材101やランヤードによって開口部の縁部が引っ張られて、上着に引っ張るような力が作用して、着心地が悪くなってしまう。一方、開口部を大きくして、連結部材101の高さ位置のばらつきに対応しようとすると、例えば電動ファン内蔵上着では開口部から空気が大量に流出し、冷却機能が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用するのに適した衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の衣服の一つは、フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用可能な上着である衣服であって、衣服本体の背面において、複数の高さ位置に、前記フルハーネス型安全帯の連結部材を外部に導出する挿通口が設けられており、前記衣服本体の背面に設けられた開口部と、前記開口部を塞ぐように設けられた複数枚の平布とを備え、前記複数枚の平布は、上下にずらすように並べて配置され、上段の平布と下段の平布とがオーバーラップして、上段の平布と下段の平布との間を前記挿通口として、前記連結部材を外部に導出し、上段の平布の内側に、下段の平布の上部が向き合うように位置する関係にあり、最下段の平布と前記衣服本体との間をさらに前記挿通口として、前記連結部材を外部に導出する構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フルハーネス型安全帯を装着した状態で着用するのに適した衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る衣服を着用した状態を示す図である。
図2】導出部を示す正面図である。
図3】導出部の断面における構成を説明するための図である。
図4】導出部の衣服本体の内側における構成を説明するための図である。
図5】挿通口からD環を外部に導出する状態を示す図である。
図6】他の実施形態に係る衣服を着用した状態を示す図である。
図7】フルハーネス型安全帯を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る衣服1を着用した状態を示す図であり、(a)が正面図、(b)が背面図である。本実施形態に係る衣服1は、フルハーネス型安全帯100を装着した状態で着用可能なベストタイプの上着である。衣服1を構成する衣服本体2は、着用Pの胴を被う前身頃3a及び後身頃3bからなる胴部を有し、スライドファスナ等による前開き構造となっている。
【0012】
本実施形態に係る衣服1は、高視認性安全服であり、衣服本体2が、イエロー、オレンジレッド、レッド等の蛍光生地を用いて縫製される。衣服本体2には、背面から両肩部を通って前面にかけて延びるベルト状の再帰性反射材4が取り付けられる。また、衣服本体2には、胴部まわりにベルト状の再帰性反射材5が取り付けられる。
【0013】
また、本実施形態に係る衣服1は、電動ファン内蔵上着であり、衣服本体2の腰部の装着部6に電動ファンを取り外し可能に装着でき、衣服本体2の内側に送風する機能を有する。なお、衣服本体2のアームホールは、ゴム等により着用者Pの腕まわりに密着するようにし、衣服本体2の内側の空気の流出を抑えるようになっている。また、衣服本体2の裾がリブになっており、着用者Pの胴まわりに密着するようにし、衣服本体2の内側の空気の流出を抑えるようになっている。
【0014】
衣服本体2の胸部分には、不図示のランヤードのフックを掛け止めておくことのできるフック7が設けられる。
【0015】
本実施形態に係る衣服1は、衣服本体2の背面、すなわち後身頃3bに導出部9が設けられ、導出部9からフルハーネス型安全帯100の連結部材であるD環101を外部に導出することができる。
以下、導出部9について詳述する。以下に述べるように、導出部9には、複数の高さ位置に、D環101を外部に導出する挿通口10a~10cが設けられる。図2は、導出部9を示す正面図である。図3は、導出部9の断面における構成を説明するための図である。図4は、導出部9の衣服本体2の内側(着用者P側)における構成を説明するための図である。図5は、挿通口10a~10cからD環101を外部に導出する状態を示す図である。
なお、図1(b)に示すように、衣服本体2の背面上部には、導出部9を覆うようにカバー11が取り付けられる。カバー11は、後身頃3bの外側に設けられた別布であり、その上縁部及び左右縁部が衣服本体2に縫合されるが、下縁部は縫いとめられておらずフリーとなっている。カバー11は、導出部9に雨がかからないようにする等の目的で取り付けられる。図2では、導出部9の全体が見えるように、カバー11を取り除いた状態を示す。
【0016】
図2乃至図5に示すように、導出部9は、衣服本体2の背面に設けられた矩形状の開口部12と、開口部12を塞ぐように設けられた3枚の平布13a~13cとにより構成される。
平布13a~13cは、平ゴム等の伸縮性を有する素材からなり、左右に長い矩形状を有する。3枚の平布13a~13cは、上下にずらすように並べて配置され、上段の平布と下段の平布とがオーバーラップして、上段の平布の内側(着用者P側)に、下段の平布の上部が向き合うように位置する関係にある。すなわち、図3図4に示すように、最上段の平布13aと、中段の平布13bとをオーバーラップさせるように配置し、平布13aの内側に平布13bの上部を向き合わせる。また、中段の平布13bと、最下段の平布13cとをオーバーラップさせるように配置し、平布13bの内側に平布13cの上部を向き合わせる。
【0017】
より詳細には、図4に示すように、衣服本体2の後身頃3bは、中央の上布14a及び下布14bと、左右の側部布15とを縫合することにより構成される。上布14aを左右の側部布15に縫合した状態で、上布14aの下方に、左右の側部布15で挟まれた開口部12が形成される。そして、最上段の平布13aは、その上縁部及び左右縁部が上布14a及び左右の側部布15に縫合される。また、中段の平布13b、最下段の平布13cは、図4中の矢印に示すように、その左右縁部が左右の側部布15に縫合される。このように3枚の平布13a~13cを縫合した状態で、下布14bを左右の側部布15に縫合する。このとき、平布13cと、下布14bとをオーバーラップさせるように配置し、平布13cの内側に下布14bの上部を向き合わせる。
【0018】
このように、3枚の平布13a~13c及び下布14bは、ホリゾンタルブラインドの羽のような多段構造を有し、平布13aと平布13bとの間、平布13bと平布13cとの間、及び、平布13cと衣服本体2(上布14b)との間の3箇所に、挿通口10a~10cが構成される。
【0019】
このようにした衣服1では、通常時において、平布13a~13cの伸縮性により挿通口10a~10cは閉じた状態にある。したがって、例えばフルハーネス型安全帯100を装着しない状態で衣服1を着用して、電動ファンを駆動させたときに、衣服本体2の内側の空気の流出を抑えることができる。
【0020】
そして、フルハーネス型安全帯100を装着した状態で衣服1を着用するときは、図5(a)~(c)に示すように、3箇所の挿通口10a~10cのうちのいずれかの挿通口からD環101を下方に引き出すようにして、外部に導出することができる(図2及び図3の矢印も参照)。このようにD環101の高さ位置に応じて、適宜な高さ位置にある挿通口10a~10cを選択して、そこからD環101を外部に導出し、不図示のランヤードを連結させることができる。既述したように、例えばフルハーネス型安全帯100の装着者の体格や製品の種類によって、D環101の高さ位置にはばらつきがあるが、複数の高さ位置に挿通口10a~10cがある構成により、高さ位置のばらつきに対応することが可能であり、着心地が悪くなるのを避けることができる。
【0021】
また、挿通口10a~10cからD環101を外部に導出した状態でも、平布13a~13cの伸縮性により挿通口10a~10cの開いた状態を最小限に抑えることができる。したがって、電動ファンを駆動させたときに、衣服本体2の内側の空気の流出を抑えることができる。
【0022】
また、挿通口10a~10cは左右に延びる横長の開口であり、その範囲においてD環101が左右に移動することができる。したがって、着用者が向きを変えるようなときに、D環101が左右に移動するので、着用者の動きを妨げないようにすることができる。
【0023】
以上述べたように、フルハーネス型安全帯100を装着した状態で着用するのに適した衣服を提供することができる。
なお、本実施形態では、高視認性安全服かつ電動ファン内蔵上着である衣服1を例にしたが、これに限られるものではない。
例えば図6に示す衣服51は、ベストタイプの高視認性安全服であり、衣服本体52が通気性に優れたメッシュ蛍光生地を用いて縫製され、再帰性反射材54、55が取り付けられる。この衣服本体52の背面に、上述したのと同様の導出部9が設けられる。
さらにいえば、本発明を適用可能な衣服は、高視認性安全服や電動ファン内蔵上着に限られるものではなく、これらの機能を有していないワークウェア等の上着であってもよい。また、上着のタイプもベストに限られるものではなく、長袖タイプや半袖タイプであってもよい。
【0024】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
例えば平布13a~13cの数、換言すれば挿通口10a~10cの数は限定されるものではなく、複数の高さ位置に挿通口が設けられる構成であればよい。
【0025】
また、上記実施形態では、上段の平布の内側(着用者P側)に、下段の平布の上部が向き合うように位置する関係にして、挿通口10a~10cからD環101を下方に引き出すようにした形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば連結部材の種類等によっては、その関係を逆にしてもよい。すなわち、上段の平布の外側に、下段の平布の上部が向き合うように位置する関係にして、挿通口から連結部材を上方に引き出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1:衣服、2:衣服本体、9:導出部、10a~10c:挿通口、12:開口部、13a~13c:平布、100:フルハーネス型安全帯、101:D環
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7