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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】創外固定器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/64 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
A61B17/64
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019079620
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020174920
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】517125649
【氏名又は名称】ネオメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】倉本 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 和彰
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4968316(US,A)
【文献】特表2012-501776(JP,A)
【文献】特開平5-184598(JP,A)
【文献】特開2018-183326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/60 ― 17/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に刺入される第1のピンと第2のピンを体外で固定するための創外固定器であって、
前記第1のピンが係合する第1溝と、前記第2のピンが係合する第2溝とを有する固定器本体と、
前記第1のピンと前記第2のピンを前記固定器本体に固定するためのピン固定部材と、を備え、
前記固定器本体は、前記ピン固定部材を前記固定器本体に固定するためのネジ孔を有し、
前記第1溝は、前記第1のピンの前記第1溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第1のピンを受け入れ可能であり、
前記第2溝は、前記第2のピンの前記第2溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第2のピンを受け入れ可能であり、
前記ネジ孔は、前記固定器本体の外側の面から前記第1溝の内面に連通する第1ネジ孔と、前記固定器本体の外側の面から前記第2溝の内面に連通する第2ネジ孔とを含み、
前記ピン固定部材は、前記第1ネジ孔にねじ込まれ、前記第1溝の内面との間で前記第1のピンを挟むことで前記第1のピンを前記固定器本体に固定する第1ネジと、前記第2ネジ孔にねじ込まれ、前記第2溝の内面との間で前記第2のピンを挟むことで前記第2のピンを前記固定器本体に固定する第2ネジとを含み、
前記第1溝の深さは、前記第1のピンの径よりも大きく、
前記第2溝の深さは、前記第2のピンの径よりも大きく、
前記第1溝および前記第2溝は、前記固定器本体の同一面において開口していることを特徴とする創外固定器。
【請求項2】
骨に刺入される第1のピンと第2のピンを体外で固定するための創外固定器であって、
前記第1のピンが係合する第1溝と、前記第2のピンが係合する第2溝とを有する固定器本体と、
前記第1のピンと前記第2のピンを前記固定器本体に固定するためのピン固定部材と、を備え、
前記固定器本体は、前記ピン固定部材を前記固定器本体に固定するためのネジ孔を有し、
前記第1溝は、前記第1のピンの前記第1溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第1のピンを受け入れ可能であり、
前記第2溝は、前記第2のピンの前記第2溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第2のピンを受け入れ可能であり、
前記ネジ孔は、前記固定器本体の外側の面から前記第1溝の内面に連通する第1ネジ孔と、前記固定器本体の外側の面から前記第2溝の内面に連通する第2ネジ孔とを含み、
前記ピン固定部材は、前記第1ネジ孔にねじ込まれ、前記第1溝の内面との間で前記第1のピンを挟むことで前記第1のピンを前記固定器本体に固定する第1ネジと、前記第2ネジ孔にねじ込まれ、前記第2溝の内面との間で前記第2のピンを挟むことで前記第2のピンを前記固定器本体に固定する第2ネジとを含み、
前記第1ネジ孔は、前記第1溝を挟んで前記第2溝および前記第2ネジ孔と反対側に位置しており、
前記第2ネジ孔は、前記第2溝を挟んで前記第1溝および前記第1ネジ孔と反対側に位置していることを特徴とする創外固定器。
【請求項3】
前記第1溝および前記第2溝は、前記軸線方向から見て、互いの間隔が溝の底部から開口部に向かうにつれて徐々に広がっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の創外固定器。
【請求項4】
前記第1ネジ孔は、中心軸線が、前記固定器本体に固定された前記第1のピンと前記第2のピンの中心軸線同士を通る平面に対し前記第1溝の開口部側に位置するように、前記平面に対して傾斜しており、
前記第2ネジ孔は、中心軸線が、前記平面に対し前記第2溝の開口部側に位置するように、前記平面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の創外固定器。
【請求項5】
骨に刺入される第1のピンと第2のピンを体外で固定するための創外固定器であって、
前記第1のピンが係合する第1溝と、前記第2のピンが係合する第2溝とを有する固定器本体と、
前記第1のピンと前記第2のピンを前記固定器本体に固定するためのピン固定部材と、を備え、
前記固定器本体は、前記ピン固定部材を前記固定器本体に固定するためのネジ孔を有し、
前記第1溝は、前記第1のピンの前記第1溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第1のピンを受け入れ可能であり、
前記第2溝は、前記第2のピンの前記第2溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第2のピンを受け入れ可能であり、
前記ピン固定部材は、前記固定器本体との間で前記第1のピンおよび前記第2のピンを挟むように配置されており、前記ネジ孔と向かい合う貫通孔を有し、
前記創外固定器は、頭部と軸部を有し、前記軸部が前記貫通孔に挿通されて前記ネジ孔にねじ込まれるネジをさらに備え、
前記固定器本体は、前記ピン固定部材が嵌合する嵌合部を有し、
前記ピン固定部材は、略十字形状に形成され、
前記嵌合部は、略十字形状の凹部であることを特徴とする創外固定器。
【請求項6】
前記貫通孔、前記ネジ孔および前記ネジは、前記第1溝と前記第2溝を挟むように前記第1溝と前記第2溝の両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の創外固定器。
【請求項7】
前記ピン固定部材は、前記第1溝と対向して前記第1のピンが係合する第3溝と、前記第2溝と対向して前記第2のピンが係合する第4溝とを有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の創外固定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨に刺入されるピン同士を体外で固定するための創外固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折部位の固定に用いる創外固定器として、特許文献1には、第1のピンが挿通される第1ピン孔と、第2のピンが挿通される第2ピン孔と、固定器本体の外側の面から第1ピン孔に連通する第1ネジ孔と、固定器本体の外側の面から第2ピン孔に連通する第2ネジ孔と、第1ネジ孔に螺挿された第1ネジと、第2ネジ孔に螺挿された第2ネジとを有するものが開示されている。この技術では、骨に刺入した第1のピンの端部を第1ピン孔に挿入するとともに第2のピンの端部を第2ピン孔に挿入し、第1ネジと第2ネジを締めることで、ピン同士を固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-183326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、骨折治療の現場においては、骨に刺入したピンに創外固定器を手早く取り付けられることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、ピンに手早く取り付けることができる創外固定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するための創外固定器は、骨に刺入される第1のピンと第2のピンを体外で固定するための創外固定器であって、前記第1のピンが係合する第1溝および前記第2のピンが係合する第2溝を有する固定器本体と、前記第1のピンと前記第2のピンを前記固定器本体に固定するためのピン固定部材と、を備え、前記固定器本体は、前記ピン固定部材を前記固定器本体に固定するためのネジ孔を有し、前記第1溝は、前記第1のピンの前記第1溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第1のピンを受け入れ可能であり、前記第2溝は、前記第2のピンの前記第2溝に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部から前記第2のピンを受け入れ可能であることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、固定器本体を溝の開口部からピンに係合させて取り付けることができるので、創外固定器をピンに手早く取り付けることができる。
【0008】
前記した創外固定器において、前記ネジ孔は、前記固定器本体の外側の面から前記第1溝の内面に連通する第1ネジ孔と、前記固定器本体の外側の面から前記第2溝の内面に連通する第2ネジ孔とを含み、前記ピン固定部材は、前記第1ネジ孔にねじ込まれ、前記第1溝の内面との間で前記第1のピンを挟むことで前記第1のピンを前記固定器本体に固定する第1ネジと、前記第2ネジ孔にねじ込まれ、前記第2溝の内面との間で前記第2のピンを挟むことで前記第2のピンを前記固定器本体に固定する第2ネジとを含む構成とすることができる。
【0009】
これによれば、ネジを締めることでピンを簡単に固定することができ、また、締めたネジを緩めることでピンの位置や姿勢を再調整することができる。
【0010】
前記した創外固定器において、前記第1溝および前記第2溝は、前記軸線方向から見て、互いの間隔が溝の底部から開口部に向かうにつれて徐々に広がっている構成とすることができる。
【0011】
これによれば、ピンを溝に係合させやすくなるので、創外固定器をピンにより手早く取り付けることができる。
【0012】
前記した創外固定器において、前記第1ネジ孔は、中心軸線が、前記固定器本体に固定された前記第1のピンと前記第2のピンの中心軸線同士を通る平面に対し前記第1溝の開口部側に位置するように、前記平面に対して傾斜しており、前記第2ネジ孔は、中心軸線が、前記平面に対し前記第2溝の開口部側に位置するように、前記平面に対して傾斜している構成とすることができる。
【0013】
これによれば、ネジを締めたときにピンを溝の底部側に向けて押す力を発生させることができるので、ピンをしっかりと固定することができる。
【0014】
また、前記した創外固定器において、前記ピン固定部材は、前記固定器本体との間で前記第1のピンおよび前記第2のピンを挟むように配置されており、前記ネジ孔と向かい合う貫通孔を有し、前記創外固定器は、頭部と軸部を有し、前記軸部が前記貫通孔に挿通されて前記ネジ孔にねじ込まれるネジをさらに備える構成とすることができる。
【0015】
これによれば、ネジを締めることで、ピンと、固定器本体およびピン固定部材との接触面積を確保しつつ、ピンを固定器本体とピン固定部材とにより挟んだ状態でしっかりと固定することができる。
【0016】
前記した創外固定器において、前記貫通孔、前記ネジ孔および前記ネジは、前記第1溝と前記第2溝を挟むように前記第1溝と前記第2溝の両側にそれぞれ設けられている構成とすることができる。
【0017】
これによれば、ピンをよりしっかりと固定することができる。
【0018】
前記した創外固定器において、前記固定器本体は、前記ピン固定部材が嵌合する嵌合部を有する構成とすることができる。
【0019】
これによれば、固定器本体とピン固定部材との位置がずれるのを抑制することができるので、ピンをよりしっかりと固定することができる。
【0020】
前記した創外固定器において、前記ピン固定部材は、前記第1溝と対向して前記第1のピンが係合する第3溝と、前記第2溝と対向して前記第2のピンが係合する第4溝とを有する構成とすることができる。
【0021】
これによれば、ピンとピン固定部材とを安定した状態で接触させることができるので、ピンをよりしっかりと固定することができる。
【0022】
また、創外固定器は、ピンをしっかりと固定できるものであることが望まれる。そこで、ピンをしっかりと固定するという目的を達成するための創外固定器は、骨に刺入される第1のピンと第2のピンを体外で固定するための創外固定器であって、前記第1のピンが挿通される第1挿通孔および前記第2のピンが挿通される第2挿通孔を有する固定器本体と、頭部と軸部を有する第1ネジと、を備え、前記固定器本体は、間隔をあけて対向して配置された一対の第1対向部であって、その間に、前記第1挿通孔と、前記第1挿通孔につながる第1の空隙とが形成された一対の第1対向部と、前記一対の第1対向部の一方の外側の面から前記第1の空隙に連通する第1貫通孔と、前記一対の第1対向部の他方に設けられ、前記第1貫通孔と向かい合う第1ネジ孔とを有し、前記第1ネジは、軸部が前記第1貫通孔に挿通されて前記第1ネジ孔にねじ込まれる構成とすることができる。
【0023】
このような構成によれば、第1ネジを締めることで一対の第1対向部の間隔が狭くなり、これによって、第1挿通孔に挿通した第1のピンを一対の第1対向部により挟んだ状態でしっかりと固定することができる。
【0024】
前記した創外固定器において、前記一対の第1対向部の一方は、前記一対の第1対向部の他方よりも厚みが小さい構成とすることができる。
【0025】
これによれば、一対の第1対向部の一方が変形しやすくなるので、第1ネジを締めることで一対の第1対向部の間隔を確実に狭くすることができ、第1挿通孔に挿通した第1のピンを一対の第1対向部によりしっかりと固定することができる。
【0026】
前記した創外固定器は、頭部と軸部を有する第2ネジをさらに備え、前記第1の空隙は、前記第1挿通孔の前記第2挿通孔と反対側に位置し、前記固定器本体は、間隔をあけて対向して配置された一対の第2対向部であって、その間に、前記第2挿通孔と、前記第2挿通孔につながるとともに前記第2挿通孔の前記第1挿通孔と反対側に位置する第2の空隙とが形成された一対の第2対向部と、前記一対の第2対向部の一方の外側の面から前記第2の空隙に連通する第2貫通孔と、前記一対の第2対向部の他方に設けられ、前記第2貫通孔と向かい合う第2ネジ孔とを有し、前記第2ネジは、軸部が前記第2貫通孔に挿通されて前記第2ネジ孔にねじ込まれる構成とすることができる。
【0027】
これによれば、第2ネジを締めることで一対の第2対向部の間隔が狭くなり、これによって、第2挿通孔に挿通した第2のピンを一対の第2対向部により挟んだ状態でしっかりと固定することができる。また、第1ネジを締めることで第1のピンを固定することができ、第2ネジを締めることで第2のピンを固定することができるので、第1のピンと第2のピンを個別に固定することができる。
【0028】
前記した創外固定器において、前記一対の第2対向部の一方は、前記一対の第2対向部の他方よりも厚みが小さい構成とすることができる。
【0029】
これによれば、一対の第2対向部の一方が変形しやすくなるので、第2ネジを締めることで一対の第2対向部の間隔を確実に狭くすることができ、第2挿通孔に挿通した第2のピンを一対の第2対向部によりしっかりと固定することができる。
【0030】
前記した創外固定器において、前記一対の第1対向部は、その間に、前記第1挿通孔、前記第2挿通孔および前記第1の空隙が形成されており、前記第1の空隙は、前記第1挿通孔と前記第2挿通孔の間に形成され、前記第1挿通孔および前記第2挿通孔の両方につながる構成とすることができる。
【0031】
これによれば、第1ネジを締めることで第1のピンと第2のピンをまとめて固定することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、創外固定器をピンに手早く取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】創外固定器の使用状態の一例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る創外固定器の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る創外固定器の断面図である。
図4】第2実施形態に係る創外固定器の斜視図である。
図5】第2実施形態に係る創外固定器の断面図である。
図6】第3実施形態に係る創外固定器の斜視図(a)と分解斜視図(b)である。
図7】第3実施形態に係る創外固定器の断面図である。
図8】第4実施形態に係る創外固定器の斜視図である。
図9】第4実施形態に係る創外固定器の断面図である。
図10】第5実施形態に係る創外固定器の斜視図(a)と断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、創外固定器の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、創外固定器1は、骨Bに刺入される第1のピンP1と第2のピンP2を体外で固定するための器具である。図2に示すように、第1実施形態に係る創外固定器1は、固定器本体10と、ピン固定部材20とを備えている。
【0035】
固定器本体10は、金属からなる。一例として、固定器本体10は、純アルミニウム(例えば、A1050)などから形成することができる。固定器本体10には、引っ掛かりを抑制するための平面による面取り10Gが形成されている。なお、面取りの形状は、平面による面取りに限定されず、例えば、丸み付けによる面取りなどであってもよい。また、固定器本体10は、面取り10Gが形成されていない構成であってもよい。
【0036】
固定器本体10は、第1溝11と、第2溝12と、ネジ孔13とを有している。
図3に示すように、第1溝11は、第1のピンP1が係合する溝であり、第1のピンP1の当該第1溝11に配置される部分の軸線方向(中心軸線A1が延びる方向)と直交する方向に開口する開口部11Aを有している。第1溝11は、この開口部11Aから第1のピンP1を受け入れ可能である。すなわち、第1のピンP1は、開口部11Aを通って第1溝11に係合可能である。
【0037】
第2溝12は、第2のピンP2が係合する溝であり、第2のピンP2の当該第2溝12に配置される部分の軸線方向(中心軸線A2が延びる方向)と直交する方向に開口する開口部12Aを有している。第2溝12は、この開口部12Aから第2のピンP2を受け入れ可能である。すなわち、第2のピンP2は、開口部12Aを通って第2溝12に係合可能である。
【0038】
第1溝11および第2溝12は、図3に示すように軸線方向から見て、互いの間隔が溝11,12の底部11B,12Bから開口部11A,12Aに向かうにつれて徐々に広がっている。具体的には、第1溝11は、底部11Bから開口部11Aに向かうにつれて、第2溝12から離れるように徐々に図3の左に位置するように形成されている。また、第2溝12は、底部12Bから開口部12Aに向かうにつれて、第1溝11から離れるように徐々に図3の右に位置するように形成されている。これにより、第1溝11および第2溝12は、軸線方向から見て、略V字形状をなすように形成されている。
【0039】
第1溝11は、中心軸線A1に沿うように延びており、第2溝12は、中心軸線A2に沿うように延びている。これにより、第1溝11および第2溝12は、互いに略平行となるように形成されている。一例として、第1溝11および第2溝12は、直径1.8mmのピンP1,P2がちょうど嵌るようなサイズに形成されている。
【0040】
図2および図3に示すように、ネジ孔13は、ピン固定部材20を固定器本体10に固定するための孔であり、内周面にネジ山が形成されている。ネジ孔13は、第1ネジ孔13Aと、第2ネジ孔13Bとを含む。
【0041】
第1ネジ孔13Aは、固定器本体10の外側の面である第1面10Aから第1溝11の内面に連通する孔である。第1ネジ孔13Aは、第1溝11を挟んで第2溝12や第2ネジ孔13Bと反対側に位置している。また、第1ネジ孔13Aは、中心軸線X1が第1のピンP1の中心軸線A1に対して略直交するように延びている。第1ネジ孔13Aの中心軸線X1は、固定器本体10に固定された第1のピンP1と第2のピンP2の中心軸線A1,A2同士を通る平面PL上に位置している。
【0042】
第2ネジ孔13Bは、固定器本体10の外側の面である第2面10Bから第2溝12の内面に連通する孔である。第2ネジ孔13Bは、第2溝12を挟んで第1溝11や第1ネジ孔13Aと反対側に位置している。また、第2ネジ孔13Bは、中心軸線X2が第2のピンP2の中心軸線A2に対して略直交するように延びている。第2ネジ孔13Bの中心軸線X2は、平面PL上に位置している。
【0043】
ピン固定部材20は、第1のピンP1と第2のピンP2を固定器本体10に固定するための部材であり、第1ネジ21と、第2ネジ22とを含む。第1ネジ21および第2ネジ22は、頭部が軸部と同じ大きさの、いわゆるイモネジであり、外周面にネジ山20Aが形成されている。また、第1ネジ21および第2ネジ22は、頭部の端面に六角形の穴20Bが形成されている(一方のみ図示)。ネジ21,22は、金属からなる。一例として、ネジ21,22は、ステンレス鋼などから形成することができる。
【0044】
第1ネジ21は、第1ネジ孔13Aにねじ込まれて第1ネジ孔13A内に配置されている。第1ネジ21は、その先端と第1溝11の内面との間で第1溝11に係合した第1のピンP1を挟むことで第1のピンP1を固定器本体10に固定する。また、第2ネジ22は、第2ネジ孔13Bにねじ込まれて第2ネジ孔13B内に配置されている。第2ネジ22は、その先端と第2溝12の内面との間で第2溝12に係合した第2のピンP2を挟むことで第2のピンP2を固定器本体10に固定する。
【0045】
なお、図示は省略するが、創外固定器1は、輸送中の細かい振動などでネジ21,22が固定器本体10から抜けてしまうのを抑制するため、創外固定器1の製造工程の途中において、ネジ孔13内にネジ21,22をねじ込んだ後、例えば、ネジ孔13の外側(溝11,12の内面側と反対側)の開口の近くにおいて内周面に形成されたネジ山の一部をネジ孔13の軸線方向内側や径方向外側に潰すなどして変形させている。また、創外固定器1の製造工程の途中において、ネジ孔13の内周面やネジ21,22の外周面に、例えば、ヘンケルジャパン株式会社のロックタイト(登録商標)222などのネジ緩み止め用の接着剤を塗布した後、ネジ21,22をネジ孔13にねじ込むようにしてもよい。これにより、ネジ21,22が固定器本体10から抜けて脱落してしまうのを抑制することができる。
【0046】
次に、創外固定器1の使用方法の一例について説明する。
まず、図1に示すように、骨折部B1を挟んで骨Bに第1のピンP1および第2のピンP2を刺入する。次に、図3に示すように、創外固定器1の固定器本体10を、第1溝11の開口部11Aから第1のピンP1の端部に係合させるとともに、第2溝12の開口部12Aから第2のピンP2の端部に係合させて、創外固定器1をピンP1,P2に取り付ける。このとき、ピンP1,P2が簡単には抜けない程度にネジ21,22を軽く締めておいてもよい。
【0047】
次に、骨折部B1がつながるように、例えば、骨折部B1を圧迫しながら、ピンP1,P2の位置や姿勢を決める。そして、ピンP1,P2の位置や姿勢が決まったら、ドライバを用いてネジ21,22を締める。これにより、第1ネジ21は、先端が第1のピンP1を押圧し、第1溝11の内面との間で第1のピンP1を挟むことで第1のピンP1を固定する。また、第2ネジ22は、先端が第2のピンP2を押圧し、第2溝12の内面との間で第2のピンP2を挟むことで第2のピンP2を固定する。その結果、図1に示すような状態に骨Bの骨折部位を固定することができる。
【0048】
なお、ネジ21,22を締めた後にピンP1,P2の位置や姿勢を変更する必要が生じた場合には、ネジ21,22を緩め、ネジ21,22によるピンP1,P2の押圧を解除する。これにより、ピンP1,P2の位置や姿勢を再調整することが可能となる。そして、ピンP1,P2の位置や姿勢がより良い位置や姿勢に決まったら、ネジ21,22を再び締めることで、ピンP1,P2の位置や姿勢を再度固定することができる。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、固定器本体10を溝11,12の開口部11A,12AからピンP1,P2に係合させて取り付けることができるので、例えば、ピンP1,P2を固定器本体に設けられた貫通孔に挿通させて取り付ける場合と比較して、創外固定器1をピンP1,P2に手早く取り付けることができる。
【0050】
また、ネジ21,22を締めることでピンP1,P2を簡単に固定することができ、また、締めたネジ21,22を緩めることでピンP1,P2の位置や姿勢を再調整することができる。
【0051】
また、溝11,12の間隔が底部11B,12Bから開口部11A,12Aに向かうにつれて徐々に広がっているので、ピンP1,P2を溝11,12に係合させやすい。これにより、創外固定器1をピンP1,P2により手早く取り付けることができる。
【0052】
また、図3に二点鎖線で示すように、ピンP1,P2よりも径の小さいピンP3を、例えば、第2溝12に係合させた場合でも、第2ネジ22を締めることで、第2ネジ22の先端と第2溝12の内面との間でピンP3を挟むことができ、これによって、径の小さいピンP3も固定することができる。すなわち、創外固定器1は、ピンP1,P2よりも径の小さいピンP3であっても固定することができる。
【0053】
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下では、先に説明した形態と同様の点については、例えば、図面に同一の符号を付すなどして適宜説明を省略し、先に説明した形態と異なる点について詳細に説明する。
【0054】
図4に示すように、第2実施形態に係る創外固定器2は、固定器本体10と、ピン固定部材20とを備えており、固定器本体10は、第1溝11と、第2溝12と、ネジ孔14とを有している。
【0055】
ネジ孔14は、ピン固定部材20を固定器本体10に固定するための孔であり、内周面にネジ山が形成されている。ネジ孔14は、第1ネジ21がねじ込まれる第1ネジ孔14Aと、第2ネジ22がねじ込まれる第2ネジ孔14Bとを含む。第1ネジ孔14Aは、固定器本体10の外側の面から第1溝11の内面に連通する孔であり、第2ネジ孔14Bは、固定器本体10の外側の面から第2溝12の内面に連通する孔である。
【0056】
図5に示すように、第1ネジ孔14Aは、中心軸線X3が、平面PLに対し第1溝11の開口部11A側(図5の上側)に位置するように、平面PLに対して角度θ1をなした状態で傾斜している。同様に、第2ネジ孔14Bは、中心軸線X4が、平面PLに対し第2溝12の開口部12A側(図5の上側)に位置するように、平面PLに対して角度θ2で傾斜している。一例として、角度θ1,θ2は、10°である。
【0057】
このような本実施形態によれば、ネジ孔14A,14Bの中心軸線X3,X4が平面PLに対して角度θ1,θ2をなすように傾斜していることで、創外固定器2を骨折部位に取り付けた後であっても、ネジ孔14が向く方向を患者の体からずらすことができる。これにより、ネジ孔14に対してドライバなどの工具を差し込みやすくなり、かつ、工具を回転させやすくなるので、ネジ21,22を回しやすい。
【0058】
また、ネジ孔14A,14Bの中心軸線X3,X4が平面PLに対して傾斜していることで、ネジ21,22を締めたときにピンP1,P2を溝11,12の底部11B,12B側に向けて押す力を発生させることができる。これにより、ネジ21,22によって固定された後のピンP1,P2が溝11,12から抜けにくくなるので、ピンP1,P2をしっかりと固定することができる。
【0059】
次に、第3実施形態について説明する。
図6(a)に示すように、第3実施形態に係る創外固定器3は、固定器本体110と、ピン固定部材120と、ネジ130とを備えている。
【0060】
図6(b)に示すように、固定器本体110は、第1のピンP1が係合する第1溝111と、第2のピンP2が係合する第2溝112と、ネジ孔113と、嵌合部114とを有している。
【0061】
図7に示すように、第1溝111は、前記した実施形態の溝11,12と同様に、第1のピンP1の当該第1溝111に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部11Aを有しており、この開口部11Aから第1のピンP1を受け入れ可能である。また、第2溝112は、第2のピンP2の当該第2溝112に配置される部分の軸線方向と直交する方向に開口する開口部12Aを有しており、この開口部12Aから第2のピンP2を受け入れ可能である。
【0062】
ネジ孔113は、ピン固定部材120を固定器本体110に固定するための孔であり、内周面にネジ山が形成されている。
図6(b)に戻り、嵌合部114は、略十字状に形成されたピン固定部材120が嵌合する略十字状の凹部である。
【0063】
ピン固定部材120は、第1のピンP1と第2のピンP2を固定器本体110に固定するための部材である。ピン固定部材120は、固定器本体110の嵌合部114に嵌合した状態において、図7に示すように、固定器本体110との間で第1のピンP1および第2のピンP2を挟むように配置されている。ピン固定部材120は、第3溝121と、第4溝122と、貫通孔123とを有している。
【0064】
第3溝121は、第1溝111と対向して設けられた溝であり、第1のピンP1が係合する。本実施形態において、第1のピンP1は、図7における下側部分が固定器本体10の第1溝111に係合し、図7における上側部分が第3溝121に係合する。
第4溝122は、第2溝112と対向して設けられた溝であり、第2のピンP2が係合する。本実施形態において、第2のピンP2は、図7における下側部分が固定器本体10の第2溝112に係合し、図7における上側部分が第4溝122に係合する。
【0065】
貫通孔123は、ネジ孔113と図7の上下方向において向かい合うように設けられている。ネジ孔113と貫通孔123は、略同軸上に位置する。
【0066】
ネジ130は、頭部130Hと軸部130Sを有するネジである。ネジ130は、頭部130Hの径が軸部130Sの径よりも大きい。軸部130Sは、先端部の外周面にネジ山130Aが形成されており、ピン固定部材120の貫通孔123に挿通されて固定器本体110のネジ孔113にねじ込まれる。頭部130Hの端面には、六角形の穴130B(図6(b)参照)が形成されている。
【0067】
創外固定器3において、ネジ130、ピン固定部材120の貫通孔123および固定器本体110のネジ孔113は、第1溝111と第2溝112を挟むように第1溝111と第2溝112の両側にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0068】
次に、創外固定器3の使用方法の一例について説明する。
まず、固定器本体10を、骨Bに刺入された第1のピンP1の端部に第1溝111の開口部11Aから係合させるとともに、骨Bに刺入された第2のピンP2の端部に第2溝112の開口部12Aから係合させる。次に、ピン固定部材120を固定器本体110の嵌合部114に嵌合して、第3溝121を第1のピンP1の端部に係合させるとともに、
第4溝122を第2のピンP2の端部に係合させる。
【0069】
そして、ネジ130を、軸部130Sからピン固定部材120の貫通孔123に挿通し、固定器本体110のネジ孔113にねじ込む。これにより、創外固定器3をピンP1,P2に取り付けることができる。そして、ピンP1,P2の位置や姿勢を決めた後、ネジ130を締めることでピンP1,P2を固定器本体110とピン固定部材120との間で挟んだ状態で固定し、これによって、骨Bの骨折部位を固定することができる。
【0070】
以上説明した本実施形態によれば、ネジ130を締めることで、ピンP1,P2と、固定器本体110およびピン固定部材120との接触面積を確保しつつ、ピンP1,P2を固定器本体110とピン固定部材120とにより挟んだ状態でしっかりと固定することができる。
【0071】
また、貫通孔123、ネジ孔113およびネジ130が第1溝111と第2溝112の両側にそれぞれ設けられているので、ピンP1,P2をよりしっかりと固定することができる。
【0072】
また、固定器本体110にピン固定部材120が嵌合する嵌合部114が設けられているので、固定器本体110とピン固定部材120との位置がずれるのを抑制することができる。これにより、ピンP1,P2をよりしっかりと固定することができる。
【0073】
また、ピン固定部材120にピンP1,P2が係合する溝121,122が設けられているので、このような溝121,122が設けられていない場合と比較して、ピンP1,P2とピン固定部材120とを安定した状態で接触させることができる。これにより、ピンP1,P2をよりしっかりと固定することができる。
【0074】
なお、本実施形態の創外固定器3は、次のように使用することもできる。
すなわち、図6(b)に示すように、予め、固定器本体110の嵌合部114にピン固定部材120を嵌合させ、ネジ130の軸部130Sをピン固定部材120の貫通孔123に挿通して固定器本体110のネジ孔113に抜けない程度にねじ込んでおき、図6(a)に示す創外固定器3を予め組み立てておく。
【0075】
そして、骨Bに刺入された第1のピンP1の端部に第1溝111と第3溝121により形成される孔を挿通させるとともに、骨Bに刺入された第2のピンP2の端部に第2溝112と第4溝122により形成される孔を挿通させて、創外固定器3をピンP1,P2に取り付ける。そして、ピンP1,P2の位置や姿勢を決めた後、ネジ130を締めることでピンP1,P2を固定器本体110とピン固定部材120との間で挟んだ状態で固定し、これによって、骨Bの骨折部位を固定することができる。
【0076】
次に、第4実施形態について説明する。
図8に示すように、第4実施形態に係る創外固定器4は、固定器本体200と、第1ネジ131と、第2ネジ132とを備えている。
【0077】
固定器本体200は、第1挿通孔201と、第2挿通孔202と、第1貫通孔203と、第1ネジ孔204(図9参照)と、第2貫通孔205と、第2ネジ孔206(図9参照)とを有している。また、固定器本体200は、一対の第1対向部210と、一対の第2対向部220と、第1対向部210と第2対向部220をつなぐ接続部230とを有している。
【0078】
図9に示すように、第1挿通孔201は、第1のピンP1が挿通される略円形の孔であり、第2挿通孔202は、第2のピンP2が挿通される略円形の孔である。第1挿通孔201および第2挿通孔202は、固定器本体200を貫く貫通孔として形成されている。また、第1挿通孔201および第2挿通孔202は、略平行に延びるように形成されている。第1挿通孔201および第2挿通孔202の径は、一例として、1.9mmである。
【0079】
一対の第1対向部210は、一対の第1対向部210の一方である第1部分211と、一対の第1対向部210の他方である第2部分212とを有し、第1部分211と第2部分212が図9の上下に所定の間隔をあけて対向して配置されている。第1部分211は、第2部分212よりも厚みが小さい。
【0080】
一対の第1対向部210の第1部分211と第2部分212の間には、第1挿通孔201と、第1の空隙213とが形成されている。第1の空隙213は、第1挿通孔201の第2挿通孔202と反対側に位置している。第1の空隙213は、第1挿通孔201につながって第1挿通孔201に連通するとともに、固定器本体200の外側に向けて開口している。第1部分211と第2部分212の第1の空隙213を形成する部分の距離は、第1挿通孔201の径よりも小さく、さらに言えば、第1挿通孔201に挿通可能な最大サイズの第1のピンP1の径よりも小さい。第1部分211と第2部分212の第1の空隙213を形成する部分の距離は、一例として、0.5mmである。
【0081】
一対の第2対向部220は、一対の第2対向部220の一方である第3部分221と、一対の第2対向部220の他方である第4部分222とを有し、第3部分221と第4部分222が図9の上下に所定の間隔をあけて対向して配置されている。第3部分221は、第4部分222よりも厚みが小さい。なお、本実施形態において、第3部分221は、第1対向部210の第1部分211と略同じ厚みであり、第4部分222は、第1対向部210の第2部分212と略同じ厚みである。
【0082】
一対の第2対向部220の第3部分221と第4部分222の間には、第2挿通孔202と、第2の空隙223とが形成されている。第2の空隙223は、第2挿通孔202の第1挿通孔201と反対側に位置している。第2の空隙223は、第2挿通孔202につながって第2挿通孔202に連通するとともに、固定器本体200の外側に向けて開口している。第3部分221と第4部分222の第2の空隙223を形成する部分の距離は、第2挿通孔202の径よりも小さく、さらに言えば、第2挿通孔202に挿通可能な最大サイズの第2のピンP2の径よりも小さい。第3部分221と第4部分222の第2の空隙223を形成する部分の距離は、一例として、0.5mmである。
【0083】
第1貫通孔203は、第1対向部210の第1部分211の外側の面(図9の上側の面)から第1の空隙213に連通するように設けられており、第2貫通孔205は、第2対向部220の第3部分221の外側の面(図9の上側の面)から第2の空隙223に連通するように設けられている。
【0084】
第1ネジ孔204は、第1貫通孔203と向かい合うように第1対向部210の第2部分212に設けられており、第2ネジ孔206は、第2貫通孔205と向かい合うように第2対向部220の第4部分222に設けられている。第1ネジ孔204および第2ネジ孔206の内周面には、ネジ山が形成されている。第1貫通孔203と第1ネジ孔204は、略同軸上に位置しており、第2貫通孔205と第2ネジ孔206は、略同軸上に位置している。
【0085】
第1ネジ131および第2ネジ132は、それぞれ、頭部130Hと軸部130Sを有している。第1ネジ131は、軸部130Sが第1貫通孔203に挿通されて第1の空隙213を通り、第1ネジ孔204にねじ込まれる。また、第2ネジ132は、軸部130Sが第2貫通孔205に挿通されて第2の空隙223を通り、第2ネジ孔206にねじ込まれる。
【0086】
次に、創外固定器4の使用方法の一例について説明する。
まず、骨Bに刺入された第1のピンP1の端部に第1挿通孔201を挿通させるとともに、骨Bに刺入された第2のピンP2の端部に第2挿通孔202を挿通させて、創外固定器4をピンP1,P2に取り付ける。そして、ピンP1,P2の位置や姿勢を決めた後、ネジ131,132を締めることで、骨Bの骨折部位を固定することができる。
【0087】
以上説明した本実施形態によれば、第1ネジ131を締めることで第1部分211や第2部分212が変形して、一対の第1対向部210の間隔が狭くなる。これにより、第1挿通孔201に挿通した第1のピンP1を一対の第1対向部210により挟んだ状態でしっかりと固定することができる。
【0088】
本実施形態では、一対の第1対向部210の第1部分211の厚みが第2部分212の厚みよりも小さいので、第1部分211が変形しやすくなっている。第1部分211が変形しやすくなることで、第1ネジ131を締めることで一対の第1対向部210の間隔を確実に狭くすることができるため、第1挿通孔201に挿通した第1のピンP1を一対の第1対向部210によりしっかりと固定することができる。
【0089】
また、第2ネジ132を締めることで第3部分221や第4部分222が変形して、一対の第2対向部220の間隔が狭くなる。これにより、第2挿通孔202に挿通した第2のピンP2を一対の第2対向部220により挟んだ状態でしっかりと固定することができる。
【0090】
本実施形態では、一対の第2対向部220の第3部分221の厚みが第4部分222の厚みよりも小さいので、第3部分221が変形しやすくなっている。第3部分221が変形しやすくなることで、第2ネジ132を締めることで一対の第2対向部220の間隔を確実に狭くすることができるため、第2挿通孔202に挿通した第2のピンP2を一対の第2対向部220によりしっかりと固定することができる。
【0091】
また、第1ネジ131を締めることで第1のピンP1を固定することができ、第2ネジ132を締めることで第2のピンP2を固定することができるので、第1のピンP1と第2のピンP2を個別に固定することができる。
【0092】
次に、第5実施形態について説明する。
図10(a),(b)に示すように、第5実施形態に係る創外固定器5は、固定器本体200と、第1ネジ131とを備えている。
固定器本体200は、第1挿通孔201と、第2挿通孔202と、第1貫通孔203と、第1ネジ孔204と、一対の第1対向部240と、第1接続部250と、第2接続部260とを有している。
【0093】
一対の第1対向部240は、一対の第1対向部240の一方である第1部分241と、一対の第1対向部240の他方である第2部分242とを有し、第1部分241と第2部分242が図10の上下に所定の間隔をあけて対向して配置されている。第1部分241は、第2部分242よりも厚みが小さい。第1部分241と第2部分242の間には、第1挿通孔201、第2挿通孔202および第1の空隙243が形成されている。
【0094】
第1の空隙243は、第1挿通孔201と第2挿通孔202の間に形成されており、第1挿通孔201および第2挿通孔202の両方につながっている。第1の空隙243は、挿通孔201,202と略平行に延び、固定器本体200を貫く略矩形の断面を有する貫通孔として形成されている。第1部分241と第2部分242の第1の空隙243を形成する部分の距離は、挿通孔201,202の径よりも小さく、さらに言えば、挿通孔201,202に挿通可能な最大サイズのピンP1,P2の径よりも小さい。
【0095】
第1貫通孔203は、第1部分241の外側の面から第1の空隙243に連通するように設けられており、第1ネジ孔204は、第1貫通孔203と向かい合うように第2部分242に設けられている。
【0096】
第1接続部250は、第1対向部240の第1部分241と第2部分242の一端部同士をつなぐ部分であり、第1接続部250は、第1部分241と第2部分242の他端部同士をつなぐ部分である。
【0097】
このような本実施形態によれば、第1ネジ131を締めることで第1部分241や第2部分242が変形して、一対の第1対向部210の間隔が狭くなり、これによって、挿通孔201,202に挿通したピンP1,P2を一対の第1対向部240により挟んだ状態でしっかりと固定することができる。そして、本実施形態によれば、第1ネジ131を締めることで第1のピンP1と第2のピンP2をまとめて固定することができる。
【0098】
以上に実施形態について説明したが、創外固定器は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
【0099】
例えば、第1および第2実施形態では、ネジ21,22として、頭部が軸部と同じ大きさのイモネジを例示したが、ネジは、頭部の径が軸部の径よりも大きいタイプのネジであってもよい。
【0100】
また、第1および第2実施形態では、第1溝11の内面に連通する第1ネジ孔13A,14Aが1つだけ設けられていたが、第1ネジ孔は、第1溝に対して複数設けられていてもよい。第2ネジ孔についても同様である。なお、1つの溝に対してネジ孔を複数設ける場合、各ネジ孔が延びる方向(ネジ孔が向く方向)は、異なる方向とすることができる。これによれば、ピンを固定する際に、ドライバなどの工具が使いやすい向きを向くネジ孔を使用することができるので、使い勝手を向上させることができる。また、第1ネジ孔の数と第2ネジ孔の数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0101】
また、第1および第2実施形態では、第1溝11および第2溝12が、軸線方向から見て、互いの間隔が底部11B,12Bから開口部11A,12Aに向かうにつれて徐々に広がっていたが、第1溝および第2溝は、軸線方向から見て、互いの間隔が底部から開口部まで略一定であってもよい。
【0102】
また、第3実施形態では、固定器本体110が、ピン固定部材120が嵌合する嵌合部114を有していたが、このような嵌合部114を備えない構成であってもよい。また、第3実施形態では、ピン固定部材120が第3溝121と第4溝122を有していたが、このような溝を備えない構成であってもよい。
【0103】
また、第3実施形態では、貫通孔123、ネジ孔113およびネジ130が第1溝111と第2溝112の両側に1つずつ設けられていたが、複数設けられていてもよい。
【0104】
また、第4および第5実施形態では、一対の対向部210,220,240の一方が他方よりも厚みが小さかったが、一対の対向部の一方と他方は、同じ厚みであってもよい。
【0105】
また、前記実施形態では、ネジ孔の内周面にネジ山が形成されていたが、ネジ孔は、内周面にネジ山が形成されておらず、ネジがねじ込まれる際にネジ溝が切られる孔であってもよい。
【0106】
また、前記実施形態では、ネジの穴が六角穴形状であったが、ネジの穴は、すりわり形状や十字穴形状、四角穴形状などであってもよい。
【0107】
また、前記実施形態では、創外固定器は、第1のピンP1と第2のピンP2を同じ手段により固定する構成であったが、第1のピンP1と第2のピンP2を異なる手段により固定する構成であってもよい。例えば、第1のピンP1を、第1実施形態の手段、すなわち、第1溝11に係合させて第1ネジ21で押圧する方法により固定し、第2のピンP2を、第4実施形態の手段、すなわち、第2挿通孔202に挿通させて第2ネジ132を締め、一対の第2対向部220で挟む方法により固定するようにしてもよい。
【0108】
また、前記実施形態では、骨折部B1を挟んで骨BにピンP1,P2を刺入し、骨折部B1を圧迫した状態で、創外固定器1によりピンP1,P2同士を固定する使用方法を例示したが、これに限定されない。例えば、関節を跨いで骨にピンを刺入し、骨同士を引き離すように牽引した状態で、創外固定器によりピン同士を固定してもよい。
【0109】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1~5 創外固定器
10,110,200 固定器本体
10A 第1面
10B 第2面
11,111 第1溝
11A,12A 開口部
11B,12B 底部
12,112 第2溝
13,14,113 ネジ孔
13A,14A 第1ネジ孔
13B,14B 第2ネジ孔
20,120 ピン固定部材
21,131 第1ネジ
22,132 第2ネジ
114 嵌合部
121 第3溝
122 第4溝
123 貫通孔
130 ネジ
130H 頭部
130S 軸部
201 第1挿通孔
202 第2挿通孔
203 第1貫通孔
204 第1ネジ孔
205 第2貫通孔
206 第2ネジ孔
210,240 第1対向部
211,241 第1部分
212,242 第2部分
213,243 第1の空隙
220 第2対向部
221 第3部分
222 第4部分
223 第2の空隙
A1,A2 中心軸線
B 骨
P1 第1のピン
P2 第2のピン
PL 平面
X3,X4 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10