(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】結束線切断装置
(51)【国際特許分類】
B23D 33/12 20060101AFI20230214BHJP
B65B 69/00 20060101ALI20230214BHJP
B23D 33/02 20060101ALI20230214BHJP
B23D 23/00 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
B23D33/12
B65B69/00 102
B23D33/02 C
B23D23/00 A
(21)【出願番号】P 2019099527
(22)【出願日】2019-05-28
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391029624
【氏名又は名称】滝川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 伸一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 元裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 一雄
(72)【発明者】
【氏名】加納 弥
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-295628(JP,A)
【文献】特開平4-279442(JP,A)
【文献】特開2009-29479(JP,A)
【文献】特開2010-280011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 23/00,33/00-35/00;
B65B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の長尺鋼材を束ねている結束線を切断するための装置であって、
前記結束線を前記長尺鋼材の長手方向から挟んで切断する切断機構と、
前記切断機構による前記結束線の切断位置の両側の二箇所を掴むクランプ機構と、
前記切断機構及び前記クランプ機構を移動させる移動機構と、
前記結束線によって束ねられている複数本の前記長尺鋼材からなる長尺鋼材束を走査し、前記長尺鋼材及び前記結束線を検出するためのセンサと、
前記切断位置を設定する処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、前記センサによる検出結果に基づいて、前記結束線のうち、前記長手方向に直交する横断方向で隣り合う前記長尺鋼材の間に相当する位置を、切断位置として設定する、
結束線切断装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記長尺鋼材束のうち、前記横断方向で隣り合う二つの高い位置を検出し、当該二つの高い位置の間を当該横断方向についての切断面位置として設定すると共に、前記長尺鋼材束のうち、前記長手方向で高さが変化した位置を前記結束線の存在範囲として検出し、当該存在範囲における前記切断面位置を前記切断位置として設定する、請求項1に記載の結束線切断装置。
【請求項3】
前記クランプ機構は、前記切断機構により前記結束線を切断している間、当該結束線の前記二箇所を掴み、切断の後、当該二箇所の内の一方を掴んだまま他方を解除し、
前記クランプ機構が前記結束線の一箇所を掴んだ状態で、前記移動機構は、前記クランプ機構を、前記長尺鋼材束から離れた所定位置へ移動させ、
前記クランプ機構は、前記所定位置に到達すると、前記結束線の前記一箇所を掴んだ状態を解除する、請求項1又は2に記載の結束線切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の長尺鋼材を束ねている結束線を切断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄圧延工場において、異形棒鋼、丸棒鋼、鋼管、形鋼等の長尺鋼材は、所定本数が結束線(ワイヤ)によって束ねられて、各工程間を搬送される。特許文献1に、複数本の長尺鋼材を結束線によって結束する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結束線によって束ねられた長尺鋼材は、例えば、検査、特殊加工、熱処理、矯正、明細束作成等のために、一旦解束され、一本ずつ取り出される。そのために、結束線を切断する必要がある。長尺鋼材の束は、その長手方向の複数箇所で結束線によって結束(仮結束)されている。このため、作業員が一つずつ結束線を切断する場合、その作業に手間を要する。結束線の切断を機械設備によって自動化すればよいが、この場合、切断の際に切断刃によって長尺鋼材に傷をつけてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、長尺鋼材に傷をつけないで、結束線の切断が可能となる結束線切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発明は、複数本の長尺鋼材を束ねている結束線を切断するための装置であって、前記結束線を前記長尺鋼材の長手方向から挟んで切断する切断機構と、前記切断機構による前記結束線の切断位置の両側の二箇所を掴むクランプ機構と、前記切断機構及び前記クランプ機構を移動させる移動機構と、前記結束線によって束ねられている複数本の前記長尺鋼材からなる長尺鋼材束を走査し、前記長尺鋼材及び前記結束線を検出するためのセンサと、前記切断位置を設定する処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記センサによる検出結果に基づいて、前記結束線のうち、前記長手方向に直交する横断方向で隣り合う前記長尺鋼材の間に相当する位置を、切断位置として設定する。
【0007】
前記結束線切断装置によれば、結束線が、長尺鋼材の間に相当する位置で切断される。この位置は、長尺鋼材の表面から比較的離れているので、長尺鋼材に傷をつけないで済み、また、切断が容易となる。
【0008】
隣り合う長尺鋼材同士が接触していれば、これらが接触している部分が、横断方向で隣り合う長尺鋼材の間の位置であり、その位置で長尺鋼材と結束線とが離れていて、その位置で結束線を切断すればよい。このように長尺鋼材同士が正しく接触していれば、その接触位置をセンサによって特定し、切断位置を設定することが可能である。
しかし、実際の長尺鋼材束では、隣り合う長尺鋼材同士の間には隙間が生じていることが多い。この場合、直接的に、隣り合う長尺鋼材の間の位置を、センサによって特定することは困難である。
【0009】
そこで、前記処理装置は、前記長尺鋼材束のうち、前記横断方向で隣り合う二つの高い位置を検出し、当該二つの高い位置の間を当該横断方向についての切断面位置として設定すると共に、前記長尺鋼材束のうち、前記長手方向で高さが変化した位置を前記結束線の存在範囲として検出し、当該存在範囲における前記切断面位置を前記切断位置として設定するのが好ましい。この構成によれば、結束線のうち、横断方向で隣り合う長尺鋼材の間に相当する位置が、長尺鋼材束の表面における横断方向で隣り合う二つの高い位置に基づいて、間接的に特定される。このため、実際の長尺鋼材束において、隣り合う長尺鋼材同士の間に隙間が生じていても、結束線のうち、横断方向で隣り合う長尺鋼材の間に相当する位置、つまり、長尺鋼材の表面から比較的離れている位置が特定され、その位置が切断位置として設定される。
【0010】
また、好ましくは、前記クランプ機構は、前記切断機構により前記結束線を切断している間、当該結束線の前記二箇所を掴み、切断の後、当該二箇所の内の一方を掴んだまま他方を解除し、前記クランプ機構が前記結束線の一箇所を掴んだ状態で、前記移動機構は、前記クランプ機構を、前記長尺鋼材束から離れた所定位置へ移動させ、前記クランプ機構は、前記所定位置に到達すると、前記結束線の前記一箇所を掴んだ状態を解除する。
この構成によれば、切断された結束線を、定まった場所に回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の結束線切断装置によれば、長尺鋼材に傷をつけないで、結束線の切断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】複数本の長尺鋼材、及びこれら長尺鋼材を束ねている結束線を示すイメージ図である。
【
図5】切断位置の設定を行う処理を説明するためのイメージ図である。
【
図6】切断位置の設定を行う処理を説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、結束線切断装置の一例を示す側面図である。
図1に示す結束線切断装置10は、複数本の長尺鋼材7を束ねている結束線8を切断するための装置である。
図2は、複数本の長尺鋼材7、及びこれら長尺鋼材7を束ねている結束線8を示すイメージ図である。本開示では、結束線8によって束ねられている複数本の長尺鋼材7を「長尺鋼材束9」と称する。本開示では、長尺鋼材7は丸棒鋼であるが、長尺鋼材7は、異形棒鋼、丸棒鋼、鋼管、形鋼等である。結束線8は、金属製ワイヤである。
【0014】
複数本の長尺鋼材7は、結束線8によって、長尺鋼材7の長手方向について複数箇所(
図1の場合、5箇所)で結束されている。結束線8は、複数本の長尺鋼材7の周囲を囲むようにしてループ状となっている。結束線切断装置10は、複数箇所(5箇所)の結束線8を順に切断する。
【0015】
図1において、結束線切断装置10は、装置ベース盤17、切断機構11、クランプ機構12、移動機構13、及び処理装置14を備える。長尺鋼材7の長手方向が水平方向と一致するようにして、装置ベース盤17上に長尺鋼材束9が載せられる。本開示では、切断機構11、クランプ機構12、及びセンサ15によって、これらが一体となって切断ユニット30が構成されている。移動機構13が切断ユニット30を、相互で直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の三方向に移動させる。
【0016】
図1に示すように、長尺鋼材束9に含まれる長尺鋼材7の長手方向が、結束線切断装置10のX軸方向と一致した状態となって、長尺鋼材束9は装置ベース盤17上に載せられる。Y軸方向は、水平面に沿った方向であって、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向である。Z軸方向は高さ方向に相当する。
【0017】
図3は、切断ユニット30の側面図である。
図4は、切断機構11及びその周囲の説明図である。
図4において、切断機構11は、一対の刃18,18と、一対のアーム19,19と、切断用アクチュエータ20と、切断用のフレーム21とを有する。切断用アクチュエータ20は、伸縮する構成を有する。本開示では切断用アクチュエータ20は、エアシリンダであるが、他の形式によるものであってもよい。
【0018】
アーム19は、その途中部において、フレーム21が有する第一部材21aに揺動可能に支持されている。一方のアーム19の一端に刃18が取り付けられていて、そのアーム19の他端に切断用アクチュエータ20の一端部20aが取り付けられている。他方のアーム19の一端に刃18が取り付けられていて、そのアーム19の他端に切断用アクチュエータ20の他端部20bが取り付けられている。切断用アクチュエータ20が短縮すると、一対の刃18,18は相互で接近し、結束線8を切断する。切断用アクチュエータ20が伸長すると、一対の刃18,18は相互で離れる。一対の刃18,18が相互で接近し、離れる方向が、X軸方向となるように、切断機構11は構成されている。切断機構11は、図示した形態以外であってもよいが、結束線8をX軸方向から挟んで切断するように構成される。
【0019】
フレーム21の第一部材21aは、一対の刃18,18、一対の切断用のアーム19,19、及び切断用アクチュエータ20を、一体として搭載する。第一部材21aは、フレーム21の第二部材21bに、Z軸方向の中心線Cz回りに回転可能に支持されている。第一部材21aと第二部材21bとの間に、副アクチュエータ22が設けられている。副アクチュエータ22は、伸縮する構成を有し、例えばエアシリンダである。
【0020】
副アクチュエータ22が動作すると、第二部材21bに対して第一部材21aは中心線Cz回りに小角度について回転する。切断用アクチュエータ20と副アクチュエータ22とは、同期して動作する。このため、一対の刃18,18が接近する動作(つまり、結束線8の切断動作)に併せて、刃18,18は、中心線Cz回りに小角度(例えば10度程度)について回転する。これにより、一対の刃18,18は、結束線8を切断する際、角度を少し変えることができ、切れ味が良くなる。
【0021】
フレーム21の一部に、センサ15が取り付けられている。このため、センサ15は、切断機構11と共に移動する。本開示のセンサ15は、非接触式のレーザセンサであり、対象物までの距離を測定する。センサ15は、レーザを平面に沿って照射し、対象物における直線方向に沿った各位置までの距離を測定する。センサ15から出力されるレーザは、Y-Z平面上にある。このため、Y軸方向に沿った各位置におけるセンサ15からの距離、つまり、Y軸方向に沿った各位置におけるZ軸方向の座標値が求められる。
【0022】
これにより、センサ15を有する処理装置14は、長尺鋼材7の束のY軸方向に沿った表面形状を検出することができる。また、センサ15をX軸方向に走査させることで、処理装置14は、X軸方向に部分的に(5箇所)存在する結束線8を検出することができる。センサ15の測定信号は、処理装置14(
図1参照)に入力され、処理装置14が各種の処理を行う。処理装置14はコンピュータ装置により構成されている。
【0023】
クランプ機構12は、切断機構11による結束線8の切断位置の両側の二箇所を掴む。そのために、
図3において、クランプ機構12は、クランプ用のフレーム41と、結束線8を掴む把持部42と、把持部42に掴み動作を行わせる第一アクチュエータ43と、把持部42を搭載しフレーム41に支持されているクランプ用のアーム44と、アーム44の動作用の第二アクチュエータ45とを有する。切断機構11とクランプ機構12とが一体となって移動機構13により移動するために、クランプ用のフレーム41と切断用のフレーム21とは連結されている。
【0024】
刃18を中心としてY軸方向の一方側(例えば、
図3において左側)の把持部42、第一アクチュエータ43、アーム44、及び第二アクチュエータ45が一つのセットとされる。クランプ機構12は、前記セットを二つ備えていて、二つの当該セットは、Y軸方向について、一対の刃18,18を中央に挟んで両側に設けられている。
【0025】
前記セットそれぞれにおいて、第二アクチュエータ45は、伸縮する構成を有する。第第二アクチュエータ45の一端部45aがフレーム41に取り付けられていて、その他端部45bがアーム44に取り付けられている。第二アクチュエータ45が伸縮すると、アーム44が揺動する。アーム44の揺動方向はY-Z平面に沿った方向であり、把持部42が刃18,18に接近したり、離れたりする。把持部42は、刃18,18に接近した状態で、刃18,18による結束線8の切断位置のY軸方向の両側の二箇所を掴むことができる。
【0026】
図1において、移動機構13は、切断機構11及びクランプ機構12を含む切断ユニット30を移動させる。本開示では、センサ15も、切断機構11等と一体となって移動する。切断ユニット30の移動の方向は、装置ベース盤17上にある長尺鋼材7の長手方向(X軸方向)、その長手方向に直交する横断方向(Y軸方向)、これら長手方向及び横断方向の双方に直交する方向(Z軸方向)である。そのために、移動機構13は、第一移動手段31、第二移動手段32、及び第三移動手段33を備える。第一移動手段31、第二移動手段32、及び第三移動手段33は、図示する形態以外であってもよい。
【0027】
第一移動手段31は、切断ユニット30をX軸方向に移動させる。そのために、第一移動手段31は、装置ベース盤17の上方に設けられているX軸方向に長いレール31aと、レール31aに沿って設けられている環状のワイヤーロープ31bと、ワイヤーロープ31bを周回動作させる回転駆動部31cと、切断ユニット30を搭載する移動体31dとを有する。移動体31dは、レール31aに沿ってX軸方向に走行可能である。移動体31dにワイヤーロープ31bの一部が取り付けられている。回転駆動部31cは、サーボモータと、そのサーボモータによって回転し、ワイヤーロープ31bを周回動作させる滑車とを有する。処理装置14からの指令信号によって、前記サーボモータが回転し、X軸方向の所定の位置に切断ユニット30を移動させることができる。
【0028】
第三移動手段33について先に説明する。第三移動手段33は、切断ユニット30をZ軸方向に移動させる。そのために、
図3において、第三移動手段33は、Z軸方向に長い縦ガイド33aと、縦ガイド33aをZ軸方向に移動させるサーボモータを含む駆動部33bとを有する。縦ガイド33aは、移動体31dにZ軸方向に移動可能として設けられている。縦ガイド33aに、切断ユニット30が搭載されている。処理装置14からの指令信号によって、前記サーボモータが回転し、Z軸方向の所定の位置に縦ガイド33a及び切断ユニット30を移動させることができる。第三移動手段33は、例えば、縦ガイド33aに沿ってラックが設けられていて、このラックに噛み合うピニオンが前記サーボモータによって回転する構成であってもよい。
【0029】
第二移動手段32は、切断ユニット30をY軸方向に移動させる。そのために、第二移動手段32は、Y軸方向に長い横ガイド32aと、横ガイド32aをY軸方向に移動させるサーボモータを含む駆動部32bとを有する。横ガイド32aは、移動体31dに(縦ガイド33aを介して)Y軸方向に移動可能として設けられている。横ガイド32aに、切断ユニット30が取り付けられている。処理装置14からの指令信号によって、前記サーボモータが回転し、Y軸方向の所定の位置に横ガイド32a及び切断ユニット30を移動させることができる。第二移動手段32は、例えば、横ガイド32aに沿ってラックが設けられていて、このラックに噛み合うピニオンが前記サーボモータによって回転する構成であってもよい。
【0030】
移動機構13は、前記のとおり各サーボモータを有して構成されている。センサ15を含む切断機構11のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の移動位置は、処理装置14によって制御される。また、処理装置14は、移動位置の座標を取得することができる。
【0031】
前記のとおり、センサ15は、非接触式のレーザセンサであり、Y-Z平面に沿ってレーザを出力する。センサ15によって、測定の対象物となる長尺鋼材束9のY軸方向に沿った複数の位置それぞれのセンサ15からの距離を計測することができる。前記「センサ15からの距離」は、センサ15の基準位置からの距離であり、本開示の場合、センサ15に設定された基準位置からのZ軸方向の距離である。
【0032】
センサ15は、移動機構13によって、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動する。センサ15は、長尺鋼材束9を走査し、長尺鋼材束9の各位置までの距離を計測することで、処理装置14は、長尺鋼材7の束のY軸方向に沿った表面形状、及び結束線8の存在位置を検出することができる。検出した前記表面形状及び結束線8の存在位置により、結束線8の切断位置が、処理装置14によって設定される。このように、処理装置14は、センサ15による計測結果を取得し、その計測結果に基づいて切断機構11による結束線8の切断位置を設定する。
【0033】
切断位置が設定されると、処理装置14は、切断ユニット30の刃18,18を前記切断位置に移動させる。そのために、移動機構13が有する前記各サーボモータに対して、切断ユニット30の刃18,18を前記切断位置に位置させるための動作信号を出力する。そして、処理装置14は、切断機構11及びクランプ機構12を動作させる動作信号を出力する。これにより、結束線8の切断が行われる。
【0034】
処理装置14が行う切断位置の設定について説明する。なお、以下において、特に説明がない処理の主体は、処理装置14である。
図5及び
図6は、切断位置の設定を行う処理を説明するためのイメージ図である。
図5及び
図6は、長尺鋼材束9をY-Z平面の断面で示している。
図5は、長尺鋼材束9のうちの結束線8が存在していない位置(
図1、
図2において、矢印X1の位置)の断面図である。
図6は、長尺鋼材束9のうちの結束線8が存在している位置(
図1、
図2において、矢印X2の位置)の断面図である。
図5及び
図6それぞれにおいて、説明のために、センサ15からのレーザが上から下に延びる矢印線で示されている。
【0035】
図1に示すように、装置ベース盤17上に、長尺鋼材7が水平となるようにして長尺鋼材束9が載せられる。その長尺鋼材束9の上方をセンサ15がX軸方向に進む。センサ15は刻々と測定を行い、測定結果が刻々と処理装置14に送信される。長尺鋼材束9が測定の対象物とされ、長尺鋼材束9のY軸方向に沿った各位置におけるセンサ15からの距離が求められる。
図1において、矢印X1を含む結束線8が存在しない領域では、Y軸方向に沿った各位置におけるセンサ15からの距離は、X軸方向に沿って、変化しない。
【0036】
このように、結束線8が存在しない領域をセンサ15が走査している際、センサ15によって、
図5に示すように、Y軸方向の各位置におけるセンサ15からの距離が測定される。この測定結果に基づいて、処理装置14は、長尺鋼材束9のうち、Y軸方向で隣り合う二つの長尺鋼材7,7それぞれの表面で、高い位置(最も高い位置)を検出する。
図5の場合、一方の長尺鋼材7Bの高い位置がPbであり、他方の長尺鋼材7Cの高い位置がPcである。これら高い位置Pb,Pcは、長尺鋼材束9の中心を通る面(水平面)を基準とした場合に、高い位置に相当する。
【0037】
切断ユニット30の位置(座標)は処理装置14によって数値制御されている。センサ15は切断ユニット30に搭載されていて、処理装置14は、センサ15の位置(座標)及びセンサ15による対象物(長尺鋼材束9)の測定位置の座標を求めることができる。処理装置14は、センサ15の測定結果に基づいて、二つの高い位置Pb,PcそれぞれのY軸方向の座標値を取得する。更に、処理装置14は、二つの高い位置Pb,PcのY軸方向における中間位置の座標値を求める。具体的に説明すると、一方の位置PbのY軸方向の座標値がPbyであり、他方の位置PcのY軸方向の座標値がPcyであるとすると、二つの高い位置Pb,PcのY軸方向における中間位置の座標値は、PbyとPcyとの平均値〔(Pby+Pcy)/2〕である。処理装置14は、前記中間位置を、切断面位置Pa-2に設定する。つまり、切断面位置Pa-2のY軸方向の座標値が〔(Pby+Pcy)/2〕であると設定される。切断面位置Pa-2は、その位置を含むX-Z平面のどこかの位置で、結束線8の切断が行われる位置(候補位置)である。
【0038】
センサ15がX軸方向に更に進む。センサ15から出力されるレーザが、
図1における矢印X2の位置に到達すると、各位置におけるセンサ15からの距離が変化(急変)する。これは、センサ15が、
図6に示すように、複数本の長尺鋼材7の上に存在する結束線8を検出するためである。前記のように距離が変化したX軸方向における位置が、結束線8が存在する位置であると、処理装置14は検出することができる。つまり、結束線8が存在するX軸方向の座標値が求められる。
【0039】
また、処理装置14は、結束線8の存在により、前記のようにセンサ15からの距離が変化(急変)したと判定する。処理装置14は、その判定した位置における、その距離に基づいて、結束線8のZ軸方向の位置を検出することができる。特に、結束線8のZ軸方向の位置として、前記高い位置Pb,Pcの間におけるZ軸方向の位置が検出される。本開示では、結束線8の最も高い位置、つまり、センサ15から最も近い位置のZ軸方向の座標値が、求められる。この座標値が、結束線8が存在するZ軸方向の座標値である。つまり、結束線8が存在するZ軸方向の座標値が求められる。
【0040】
以上より、結束線8が存在するX軸方向及びZ軸方向の座標値、及び、二つの高い位置Pb,PcのY軸方向における中間位置の座標値〔(Pby+Pcy)/2〕が求められる。そして、処理装置14によって、
図6に示すように、X軸方向及びZ軸方向については結束線8が存在する位置(座標値)であって、かつ、Y軸方向については二つの高い位置Pb,PcのY軸方向における中間位置が、切断位置Paに設定される。このようにして、実際の結束線8の切断位置PaのXYZ座標が設定される。
【0041】
切断位置PaのXYZ座標が設定されると、移動機構13が有する各サーボモータに対して、処理装置14は、切断ユニット30の刃18,18を前記切断位置Paに位置させるための動作信号を出力する。そして、切断ユニット30の刃18,18が前記切断位置Paに到達すると、処理装置14は、切断機構11及びクランプ機構12を動作させる動作信号を出力する。これにより、結束線8の切断が行われる。
【0042】
本開示では、
図3に示すように、切断機構11が有する刃18,18のY軸方向の両側に、把持部42,42が設けられている。把持部42,42は、刃18,18に接近した状態で、刃18,18による結束線8の切断の前に、その結束線8のうちの前記切断位置PaのY軸方向の両側の位置を掴む。把持部42,42が結束線8を掴んだ状態で、切断機構11が結束線8を切断位置Paで切断する。
【0043】
長尺鋼材束9の一箇所における結束線8が切断されると、クランプ機構12の第二アクチュエータ45(
図3参照)が作動し、一対の把持部42,42が刃18,18から離れる。この際、一対の把持部42,42それぞれは切断済みの結束線8を掴んだ状態にある。一対の把持部42,42が刃18,18から離れると、
図7に示すように、一方(
図7では左側)の把持部42が、結束線8の掴んだ状態を解除する。これにより、他方(
図7では右側)の把持部42のみで、結束線8を掴んだ状態となる。
【0044】
次に、移動機構13が、クランプ機構12を含む切断ユニット30を、装置ベース盤17から離れた位置に設けられている回収部37(
図8参照)の上方位置へ搬送する。回収部37は、例えば切断済みの結束線8を溜める箱である。そして、他方の把持部42が、結束線8の掴んだ状態を解除する。これにより、切断済みの結束線8を回収部37に落下させ、回収することができる。
【0045】
このように、クランプ機構12は、切断機構11により結束線8を切断している間、その結束線の二箇所を掴む。クランプ機構12は、結束線8の切断の後、前記二箇所の内の一方を掴んだまま他方を解除する(
図7参照)。クランプ機構12が結束線8の一箇所を掴んだ状態で、移動機構13は、クランプ機構12を、長尺鋼材束9から離れた回収部37の上方の位置(所定位置)へ移動させる(
図8参照)。クランプ機構12は、回収部37の上方の位置に到達すると、結束線8の前記一箇所を掴んだ状態を解除する。この構成により、切断された結束線8を、定まった場所に回収することが可能となる。
【0046】
結束線切断装置10が、切断済みの結束線8を回収部37に落下させると、切断ユニット30は、再び長尺鋼材束9の上方に移動し、X軸方向に移動し、次の結束線8を切断するための動作が行われる。切断ユニット30がX軸方向に移動する間に、前記説明と同様の処理により、次の結束線8の切断位置が設定される。以上の処理を繰り返し、結束線切断装置10は、長尺鋼材束9の全ての結束線8を切断し、切断した結束線8を、回収部37に回収する。
【0047】
以上のように、本開示の結束線切断装置10は、切断機構11と、クランプ機構12と、移動機構13と、処理装置14とを備える。切断機構11は、結束線8を長尺鋼材7の長手方向(X軸方向)から挟んで切断する。クランプ機構12は、切断機構11による結束線8の切断位置の両側の二箇所を掴む。移動機構13は、切断機構11及びクランプ機構12を移動させる。処理装置14は、センサ15を有すると共に、結束線8の切断位置を設定する機能を有する。センサ15は、長尺鋼材束9を走査し、長尺鋼材7及び結束線8を検出可能である。
【0048】
処理装置14は、センサ15による検出結果に基づいて、
図6に示すように、結束線8のうち、長尺鋼材7の長手方向(X軸方向)に直交する横断方向(Y軸方向)で隣り合う長尺鋼材7B,7Cの間に相当する位置を、切断位置Paとして設定する。この結束線切断装置10によれば、結束線8が、隣り合う長尺鋼材7B,7Cの間に相当する位置で切断される。この位置は、長尺鋼材7B,7Cそれぞれの表面から比較的離れているので、長尺鋼材7B,7Cに傷をつけないで済み、また、切断が容易となる。本開示の結束線切断装置10によれば、結束線8の切断が自動化され、切断の作業が安全である。
【0049】
ここで、
図9に示すように、隣り合う長尺鋼材7B,7C同士が接触していれば、これらが接触している部分7aが、Y軸方向で隣り合う長尺鋼材7B,7Cの間の位置であり、その位置が結束線8から離れていて、その位置で結束線8を切断すればよい。このように長尺鋼材7B,7C同士が正しく接触していれば、その接触位置(7a)をセンサ15によって直接的に特定することが可能である。結束線8の切断位置Paを直接的に特定することが可能となる。
【0050】
しかし、実際の長尺鋼材束9では、
図10に示すように、隣り合う長尺鋼材7B,7C同士の間には隙間dが生じていることが多い。この場合、直接的に、隣り合う長尺鋼材7,7の間の位置を、センサ15によって特定することは困難である。つまり、長尺鋼材束9の中心を通る面(水平面)を基準とした場合に、高い位置Pb,Pcは、長尺鋼材7B,7Cが存在するので、センサ15によって正確に検出できる。これに対して、長尺鋼材束9の中心を通る面(水平面)を基準とした場合に、長尺鋼材7B,7Cの間に隙間dが形成されていると、その低い位置がセンサ15によって正確に検出できない可能性がある。
【0051】
そこで、本開示では、前記のとおり、処理装置14は、長尺鋼材束9のうち、Y軸方向で隣り合う二つの高い位置Pb,Pcを検出し、これら二つの高い位置Pb,Pcの間をY軸方向についての切断面位置Pa-2として設定する。そして、長尺鋼材束9のうち、X軸方向で高さが変化した位置を、結束線8の存在範囲として検出し、その存在範囲における前記切断面位置Pa-2を切断位置Paとして設定する。
【0052】
この構成によれば、結束線8のうち、Y軸方向で隣り合う長尺鋼材7B,7Cの間に相当する位置が、長尺鋼材束9の表面におけるY軸方向で隣り合う二つの高い位置Pb,Pcに基づいて、間接的に特定される。このため、
図10に示すように、実際の長尺鋼材束9において、隣り合う長尺鋼材7B,7C同士の間に隙間dが生じていても、結束線8のうち、Y軸方向で隣り合う長尺鋼材7B,7Cの間に相当する位置、つまり、長尺鋼材7,7の表面から比較的離れている位置が特定され、その位置が切断位置Paとして設定される。
【0053】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
7:長尺鋼材 7B:長尺鋼材 7C:長尺鋼材
8:結束線 9:長尺鋼材束 10:結束線切断装置
11:切断機構 12:クランプ機構 13:移動機構
14:処理装置 15:センサ Pa:切断位置
Pa-2:切断面位置 Pb,Pc:高い位置